(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】液化ガス用貯蔵タンクの液体ドーム
(51)【国際特許分類】
F17C 3/04 20060101AFI20241126BHJP
F17C 13/00 20060101ALI20241126BHJP
B63B 25/16 20060101ALI20241126BHJP
B65D 90/02 20190101ALI20241126BHJP
【FI】
F17C3/04 B
F17C13/00 302E
B63B25/16 K
B65D90/02 Q
(21)【出願番号】P 2022570605
(86)(22)【出願日】2021-05-19
(86)【国際出願番号】 EP2021063266
(87)【国際公開番号】W WO2021233986
(87)【国際公開日】2021-11-25
【審査請求日】2023-01-16
(32)【優先日】2020-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】515220317
【氏名又は名称】ギャズトランスポルト エ テクニギャズ
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【氏名又は名称】山下 和也
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン、クトー
(72)【発明者】
【氏名】エドワール、デュクロイ
【審査官】森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/002812(WO,A1)
【文献】特表2015-501756(JP,A)
【文献】特開平09-126393(JP,A)
【文献】特表2016-531793(JP,A)
【文献】特開2016-074976(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-2060718(KR,B1)
【文献】米国特許第03339783(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 3/04
F17C 13/00
B63B 25/16
B65D 90/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガス用の貯蔵設備(1)であって、耐荷重構造体と、前記耐荷重構造体の内側に配置された密封断熱タンク(71)と、を備え、
前記密封断熱タンク(71)は、互いに接続されかつ前記耐荷重構造体に固定された複数のタンク壁で形成された主構造体
と、流体荷積み/荷降ろしパイプが通過するように意図された荷積み/荷降ろし開口部(10)を画定するシャフト(15)であって、前記シャフト(15)の耐力壁を構成するパイプ(30)を含むシャフト(15)と、を備え、前記主構造体は内部貯蔵空間を画定し、前記主構造体は少なくとも密封膜(17,19)および少なくとも断熱障壁(16,18)を備え、
前記密封膜(17,19)および前記断熱障壁(16,18)は、前記パイプ(30)の内側に配置され、前記断熱障壁(16,18)は、前記密封膜(17,19)と前記耐荷重構造体との間に配置され、
前記耐荷重構造体は
、平坦な上側耐力壁を備え
、
前記パイプ(30)の
上端
は、前記耐荷重構造体の前記上側耐力壁に接続されるとともに前記荷積み/荷降ろし開口部(10)
を形成し、前記タンク(71)は、前記荷積み/荷降ろし開口部(10)内に配置されたカバー(12)を備え、
前記カバー(12)は、上部カバー壁(23)と、下部カバー壁(22)と、前記下部カバー壁(22)と前記上部カバー壁(23)との間に位置する断熱構造体(24)と、を備え、
前記パイプ(30)および前記上部カバー壁(23)が、異なる性質の鉄系合金から作製され、前記上部カバー壁(23)
に接続された少なくとも1つの固定タブ(50)が、
前記内部貯蔵空間を密封
するように、前記下部カバー壁(22)に直接的または間接的に固定されることを特徴とする、貯蔵設備(1)。
【請求項2】
前記固定タブ(50)は、L字形断面を有し、かつ前記上部カバー壁(23)
に接続された直線状の近位部分(51)と
、前記近位部分(51)から90°±10
°の角度で
延在する遠位部分(52)
と、を備えた、請求項1に記載の貯蔵設備(1)。
【請求項3】
前記断熱障壁は二次断熱障壁(16)であり、前記
主構造体は、前記タンク(71)の内部から前記パイプに向かって、一次密封膜(19
)、一次断熱障壁(18)
、二次密封膜(17)および二次断熱障壁(16)をこの順番の配置で備え、前記固定タブ(50)はまた、
前記内部貯蔵空間を密封
するように、前記二次密封膜(17)に固定される、請求項
2に記載の貯蔵設備(1)。
【請求項4】
前記固定タブ(50)の前記二次密封膜(17)への固定は、前記固定タブ(50)の前記遠位部分(52)で行われる、請求項
3に記載の貯蔵設備(1)。
【請求項5】
前記固定タブ(50)の前記二次密封膜(17)への固定は、接着によって達成される、請求項3または4に記載の貯蔵設備(1)。
【請求項6】
前記固定タブ(50)が前記下部カバー壁(22)に直接固定される場合、前記固定は、前記固定タブ(50)の前記近位部分(51)で溶接することによって達成される、請求項
3から5のいずれか一項に記載の貯蔵設備(1)。
【請求項7】
前記一次密封膜(19)は
、前記内部貯蔵空間を密封
するように、前記下部カバー壁(22)に固定される
、請求項
3から6のいずれか一項に記載の貯蔵設備(1)。
【請求項8】
前記固定タブ(50)が前記下部カバー壁(22)に間接的に固定される場合、接合片(26)が
、前記内部貯蔵空間を密封
するように、前記下部カバー壁(22)と、前記密封膜(19)と、前記固定タブ(50)と、を接続する、請求項
2から5のいずれか一項に記載の貯蔵設備(1)。
【請求項9】
前記固定タブ(50)は、前記近位部分(51)から
延在し、かつ前記近位部分(51)に対して90°±10°の角度で延在するフランジ(53)を備え、前記接合片(26)は、前記固定タブ(50)の前記フランジ(53)に固定される、請求項
8に記載の貯蔵設備(1)。
【請求項10】
前記パイプ(30)は炭素鋼で作製さ
れる、請求項1から9のいずれか一項に記載の貯蔵設備(1)。
【請求項11】
前記パイプ(30)は、IGCコードに従ってグレードA、B、D、AH、DH、EH、FHまたはEの鋼で作製される、請求項10に記載の貯蔵設備(1)。
【請求項12】
前記上部カバー壁(23)ならびに前記固定タブ(50)は、重量で、0<C<0.08%、0%<Mn≦2%、0%<Si<0.5%、0%<P<0.045%、0%<S<0.030%、8%<Ni<14%、16%<Cr<50%、0%<N<0.02
%を含み、残部は製造から不可避的に生じる鉄および不純物である、オーステナイト鋼からなる鉄系合金から作製される、請求項1から11のいずれか一項に記載の貯蔵設備(1)。
【請求項13】
前記下部カバー壁(22)は、
0.5
x10
-6~2
x10
-6K
-1に含まれる熱膨張係数を有する鉄ニッケル合金から作製された、互いに組み立てられた複数の平面金属板か、または
複数の波形金属シートであって、前記波形金属シートが繰り返しパターンで並置され、かつ
前記内部貯蔵空間を密封
するように互いに溶接され、前記金属シートがステンレス鋼で作製される、波形金属シートからなる、請求項1から12のいずれか一項に記載の貯蔵設備(1)。
【請求項14】
低温液体製品を輸送するための船舶(70)であって、二重船殻(72)と、前記二重船殻内に配置された請求項1から13のいずれか一項に記載の貯蔵設備(1)と、を有する船舶(70)。
【請求項15】
低温液体製品を移送するための移送システムであって、請求項14に記載の船舶(70)と、前記船舶の前記船殻内に設置された前記タンク(71)を浮体式または陸上の外部貯蔵設備(77)に接続するように配置された断熱配管(73,79,76,81)と、前記断熱配管を通して前記浮体式もしくは陸上の外部貯蔵設備から前記船舶の前記タンクへ、または前記船舶の前記タンクから前記浮体式もしくは陸上の外部貯蔵設備へ低温液体製品の流れを搬送するためのポンプと、を含む、移送システム。
【請求項16】
請求項14に記載の船舶(70)から荷積みまたは荷降ろしするための方法であって、低温液体製品が、断熱配管(73,79,76,81)を通して、浮体式もしくは陸上の外部貯蔵設備(77)から前記船舶(71)の前記タンクへ、または前記船舶の前記タンクから浮体式もしくは陸上の外部貯蔵設備へ供給される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密封断熱膜型タンクを備える液化ガス用貯蔵設備の分野に関する。特に、本発明は、例えば-50℃~0℃の温度を有する液化石油ガス(LPGとも呼ばれる)を輸送するための、または大気圧で約-162℃で液化天然ガス(LNG)を輸送するためのタンクなど、低温で液化ガスを貯蔵および/または輸送するための密封断熱タンクの分野に関する。これらのタンクは、海岸または浮体構造体に設置することができる。浮体構造体の場合、タンクは、液化ガスを輸送するため、または浮体構造体を推進するための燃料として使用される液化ガスを受け取るためのものであり得る。
【背景技術】
【0002】
仏国特許出願公開第2991430号明細書は、船舶の二重船殻によって構成された耐荷重構造体に一体化された密封断熱タンクを備える液化ガス用の貯蔵設備を記載している。タンクの各壁は、二次断熱障壁と、二次密封膜と、一次断熱障壁と、一次密封膜と、を備える。
【0003】
タンクの上部に位置する領域では、タンクは、液体ドームと呼ばれる煙突シャフトの形態の突出部分を有する。この領域では、耐荷重構造体は局所的に中断されて、それを通過する流体荷積み/荷降ろしパイプを有するように意図された荷積み/荷降ろし開口部を画定する。この荷積み/荷降ろし開口部は、液体ドームと呼ばれ、断熱または断熱障壁と、一次密封膜を形成する要素と、を備える。
【0004】
この液体ドームの製造に関連する製造コストを、特により安価であるが、タンクおよびこの液体ドームが遭遇する非常に低い温度にあまり適していない特性を有する材料を使用することによって削減することが望ましい。さらに、タンクは、その環境の条件に応じてねじれたり曲がったりする船舶などの非常に厳しい機械的応力を受ける構造体に設置され、これらの機械的荷重は、液化ガスで満たされたタンクの上方で比較的狭い煙突シャフトのように垂直に延在する液体ドームの構造に特に有害である。
【発明の概要】
【0005】
様々な実験および試験に続いて、本出願人は、液体ドームが吸収しなければならない大きな応力に耐えることを可能にするために特定の構造体が形成されるという条件で、より安価な金属材料から作られた液体ドームパイプを想定することが可能であることを見出した。
【0006】
本出願人は、最初に、より安価であるが、それが受けるすべての応力に耐えることができ、同時に、タンクに収容された極めて冷たい流体に対して物理的および熱的に完全な密封を提供することができる液体ドームを提案することを意図している。
【0007】
したがって、本発明は液化ガス用の貯蔵設備に関し、貯蔵設備は、耐荷重構造体と、耐荷重構造体の内側に配置された密封断熱タンクと、を備え、密封断熱タンクは、互いに接続されかつ耐荷重構造体に固定された複数のタンク壁で形成された主構造体を備え、主構造体は内部貯蔵空間を画定し、主構造体は少なくとも密封膜および少なくとも断熱障壁を備え、断熱障壁は、密封膜と耐荷重構造体との間に配置され、耐荷重構造体は、実質的に平坦な上側耐力壁を備え、密封膜、主構造体の断熱障壁、および上側耐力壁は、垂直軸に沿って延在するシャフトの耐力壁を形成するパイプを、上端まで画定するように局所的に中断されており、上端は、流体荷積み/荷降ろしパイプが密封膜を通過するように意図された荷積み/荷降ろし開口部内にあり、タンクは、荷積み/荷降ろし開口部内に配置されたカバーを備え、カバーは、上部カバー壁と、下部カバー壁と、下部カバー壁と上部カバー壁との間に位置する断熱構造体と、を備える。
【0008】
本発明は、前述のパイプおよび上部カバー壁が、異なる性質の鉄系合金から作製され、上部カバー壁から始まる少なくとも1つの固定タブが、下部カバー壁に直接的または間接的に密封して固定されることを特徴とする。
【0009】
したがって、多数の試験および分析の後に、本出願人は、熱膨張を吸収するためにある程度の自由度を残しながら、一次膜を形成する下部カバー壁を液体ドームの開口部に確実に固定するための特別な配置が行われることを条件として、安価な炭素鋼から作製されたパイプを使用することが可能であることを見出した。
【0010】
そうすることで、本発明は、液体ドームの製造において実質的な節約を可能にすると同時に、液化ガスに対する効果的な密封およびこのドームの優れた機械的弾性を、この領域が従来経験するすべての応力に対して保証または維持する。
【0011】
「パイプ」という用語は、それが液体ドームの外壁、より具体的には液化ガスを収容するタンクへの開口部のシャフトの壁を形成するという事実を意味すると理解されるべきである。
【0012】
慣例により、「外部」および「内部」という用語は、タンクの内側および外側を基準にして、ある要素の別の要素に対する相対位置を定義するために使用される。
【0013】
本発明の他の有利な特徴を以下に簡単に提示する。
【0014】
有利には、固定タブは、L字形断面を有し、上部カバー壁から始まる直線状の近位部分を備え、近位部分から90°±10の角度で始まる遠位部分によって延在する。
【0015】
有利には、断熱障壁は二次断熱障壁であり、密封膜は、タンクの内部からパイプに向かって、一次密封膜および二次密封膜を連続して備え、一次断熱障壁は、一次密封膜と二次密封膜との間に配置され、固定タブはまた、二次密封膜に密封して固定される。
【0016】
したがって、固定タブは、液体ドームの開口部の一次膜を形成する下部カバー壁に密封して接続されるだけでなく、固定タブは断熱および密封構造体、この例では二次密封膜にも接続される。このような配置は、一方では、タンクの主構造体、他方では、液体ドームの開口部の一次膜を形成する下部カバー壁を、上部カバー壁にしっかりと柔軟に固定することを可能にし、この下部カバー壁は、固定タブのように、機械的観点から特に強く、非常に低い熱膨張係数を有する材料から作られる。
【0017】
好ましい実施形態によれば、固定タブの二次密封膜への固定は、固定タブの遠位部分で行われる。
【0018】
本発明の好ましい実施形態によれば、固定タブの二次密封膜への固定は、接着によって達成される。
【0019】
別の実施形態によれば、この固定は、特に二次密封膜が金属または金属材料で組み立てることができるものである場合に、溶接を使用して達成されることを想定することも可能である。その場合、固定タブの二次密封膜への固定は、シール溶接を使用して達成される。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、固定タブが下部カバー壁に直接固定される場合、固定は固定タブの近位部分における溶接によって達成される。
【0021】
その場合、有利には、一次密封膜は、好ましくは溶接によって、下部カバー壁に密封して固定される。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、固定タブが下部カバー壁に間接的に固定されると、接合片が下部カバー壁、密封膜、および固定タブを密封して接続する。
【0023】
その場合、好ましくは、固定タブは、近位部分から始まり、かつ近位部分に対して90°±10°の角度で延在するフランジを有し、接合片は固定タブのフランジに固定される。
【0024】
有利には、パイプは炭素鋼で作られる。したがって、パイプは鉄系合金からなり、重量で0%<C<2.11%を含む。好ましいものとして、炭素含有量は、求められる溶接性特性に応じて、0%<C<0.8%の範囲、より具体的には0%<C<0.5%の範囲に含まれてもよい。
【0025】
この炭素鋼の組成には、他の元素が含まれていてもよい。これらの元素の合計は、この鋼が軽合金化されるように、好ましくは5%以下である。したがって、この炭素鋼はまた、重量で、0%<Mn<2%、0%<Si<0.5%を含んでもよい。
【0026】
一実施形態によれば、パイプは、重量で、0%<C<0.21%、0%<Mn<1%、0%<Si<0.5%、0%<P<0.035%および0%<S<0.035%を含み、残部が鉄およびその製造から不可避的に生じる不純物であるタイプの鉄系合金から作製される。
【0027】
好ましいものとして、パイプは、IGCコードに従ってグレードA、B、D、AH、DH、EH、FHまたはEの鋼製であり、IGCコードは、当業者に周知のバルクの液化ガスを運ぶ船舶の構造および装備に関する国際コードである。
【0028】
有利には、上部カバー壁ならびに固定タブは、重量で、0<C<0.08%、0%<Mn≦2%、0%<Si<0.5%、0%<P<0.045%、0%<S<0.030%、8%<Ni<14%、16%<Cr<50%、0%<N<0.02%、および任意選択的に0%≦Mo≦3%および/または0%<Ti<0.7%を含み、残部は製造から不可避的に生じる鉄および不純物である、オーステナイト鋼からなる鉄系合金から作製される。
【0029】
慣例により、メンデレーエフ表からの元素を考慮する、すなわち、
C:炭素、Mn:マンガン、Cr:クロム、Si:シリコン、Ni:ニッケル、Co:コバルト、P:リン、O:酸素、N:窒素、Mo:モリブデン、S:硫黄、Ti:チタン。
【0030】
有利には、下部カバー壁は、
0.5.10-6~2.10-6K-1に含まれる熱膨張係数を有する鉄ニッケル合金から作製された、互いに組み立てられた複数の平面金属板か、または
複数の波形金属シートであって、波形金属シートが繰り返しパターンで並置され、かつ互いに密封して溶接され、金属シートがステンレス鋼で作製される、波形金属シートからなる。ここで、これらの波形金属シートは高マンガン鋼で作られてもよく、「ステンレス鋼」という用語はそのような合金を包含することに留意されたい。
【0031】
したがって、下部カバー壁は、
図3および
図4の主構造体の一次膜上に見えるような波形を有することができ、シートが作られる金属がタンク内の非常に低温の結果として膨張するときに機械的完全性を提供するように意図され、あるいは下部カバー壁は、例えばInvar(登録商標)製などの非常に低い熱膨張係数を有するプレートからなることができる。
【0032】
本発明は、低温液体製品を輸送するための船舶であって、二重船殻と、二重船殻内に配置された上述の貯蔵設備と、を有する船舶に関する。
【0033】
本発明はまた、低温液体製品を移送するための移送システムに関し、このシステムは、上述のような船舶と、船舶の船殻内に設置されたタンクを浮体式または陸上の外部貯蔵設備に接続するように配置された断熱配管と、断熱配管を通して浮体式もしくは陸上の外部貯蔵設備から船舶のタンクへ、または船舶のタンクから浮体式もしくは陸上の外部貯蔵設備へ低温液体製品の流れを搬送するためのポンプと、を備える。
【0034】
最後に、本発明は、上述のように船舶から荷積みまたは荷降ろしするための方法に関し、低温液体製品は、断熱配管を通して、浮体式もしくは陸上の外部貯蔵設備から船舶のタンクへ、または船舶のタンクから浮体式もしくは陸上の外部貯蔵設備へ供給される。
【0035】
本発明は、添付の図面を参照して、単に非限定的な例示として提供される、本発明の複数の特定の実施形態の以下の説明から、よりよく理解され、その他の目的、詳細、特徴および利点がより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態による液体ドームの概略断面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す液体ドームの要素の第1の角度からのビューを示す概略図である。
【
図4】
図4は、
図1に示す液体ドームの要素の第2の角度からのビューを示す概略図である。
【
図5】
図1は、本発明の別の実施形態による、
図2のものと同一の液体ドームの部分の概略断面図である。
【
図6】
図6は、本発明のさらに別の実施形態による、
図2のものと同一の液体ドームの部分の概略断面図である。
【
図7】
図7は、メタンタンカーの貯蔵設備およびこのタンクからの荷積み/荷降ろしのためのターミナルの概略切取図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
ここでの「垂直」という用語は、地球重力場の方向に延在することを意味する。ここで、水平とは、鉛直方向に垂直な方向に延在することを意味する。
【0038】
メタン運搬船などの船舶に貯蔵設備1を設置した場合、添付図面では見えない耐荷重構造体は、船舶の二重船殻によって形成される。外部上側耐力壁5は、船舶の外部デッキ5と呼ばれる。
【0039】
タンク71は、底壁(図示せず)と、上壁と、底壁を上壁に接続し、貯蔵設備1が船舶に設置されているときには前方および後方に位置する、添付の図面には見えない2つのコファダム壁と、2つの側壁(図示せず)と、任意選択的に、側壁を底壁または上壁に接続する2つから4つの面取り壁(図示せず)と、から形成される主構造体を有し、これは添付の図面には示されていない。したがって、タンク71の壁は、多面体構造を形成し、内部貯蔵空間9を画定するように互いに接続される。
【0040】
液化ガスをタンク71内に/から積み込みおよび積み出しするために、貯蔵設備1は、特に添付の図には示されていない荷積み/荷降ろしパイプがこの開口部10を通過することによってタンク71の底部に到達することを可能にするように、タンク71の外部上側耐力壁5、内部上側耐力壁および上壁を局所的に遮断する荷積み/荷降ろし開口部10を有する。
【0041】
貯蔵設備1はまた、開口部10と一致してタンク71の内側に位置し、タンク71の全高にわたって荷積み/荷降ろしパイプのための、およびポンプ(図示せず)のための支持構造体を形成する、添付の図面には見えない荷積み/荷降ろしタワーを備える。
【0042】
さらに、貯蔵設備1は、前記開口部10で内部貯蔵空間を閉鎖するために、荷積み/荷降ろし開口部10に配置されたカバー12を有する。カバー12は、荷積み/荷降ろしパイプがカバー12を通過することを可能にするオリフィスを有する。
【0043】
タンク71は、開口部で主構造体上に位置し、タンク壁が内部デッキから外部デッキ5まで連続的に延在することを可能にするシャフト15を備え、これらのデッキは、荷積み/荷降ろし開口部10によって中断される。液化ガス貯蔵タンクの場合、前記カバー12に適合されたそのようなシャフト15は、液体ドームと呼ばれる。
【0044】
荷積み/荷降ろし開口部10およびシャフト15は、従来、長方形の輪郭を有する。したがって、シャフト15は、4つの壁を備え、1つの壁は、
図1に見られるように、後方コファダム壁8の続きであり、他の3つの壁は、上壁と90°の角度を成すように上壁に接続される。
【0045】
本発明の文脈において、カバー12は、外部デッキ5の高さに位置し、すなわち、シャフト15を閉鎖または閉鎖する。タンク71は、液化ガスを貯留可能な膜型のタンク71である。タンク71の主構造体は、外側から内側に向かって、耐荷重構造体に載置された絶縁要素を有する二次断熱障壁16と、二次断熱障壁16に載置された二次密封膜17と、二次密封膜17に載置された絶縁要素を有する一次断熱障壁18と、タンク71に収容された液化ガスと接触するように意図された一次密封膜19と、を有する多層構造体を備える。
【0046】
一実施形態によれば、タンク71の主構造体は、特に仏国特許出願公開第2691520号明細書に記載されているMark III(登録商標)技術に従って製造される。
【0047】
このような主構造体では、二次断熱障壁16、一次断熱障壁、および二次密封膜17は、内部耐荷重構造体、または開口部10で内部上側耐力壁を外部上側耐力壁5に接続する構造体であってもよい耐荷重構造体上に並置されたパネルから本質的に構成される。二次密封膜17は、ガラス繊維織物の2つの薄いシートの間に挟まれたアルミニウムの薄いシートを備える複合材料から形成される。その部分のための一次密封膜19は、複数の金属板を組み立てることによって得られ、それらの縁部に沿って互いに溶接され、互いに垂直な2つの方向に延在する波形を備える。金属板は、例えば、ステンレス鋼またはアルミニウムのシートから作製され、曲げまたはプレスによって成形される。一次密封膜19は、特に
図3および
図4に示されている。
【0048】
このような波形金属膜の他の詳細は、仏国特許出願公開第2861060号明細書に特に記載されている。
【0049】
シャフト15において、二次密封膜17は、その上端で固定タブ50に、より具体的には前記タブ50の遠位部分51に固定される。固定タブ50と二次膜17との間の接続は、場合によっては溶接による密封接合によって有利に達成される。
【0050】
カバー12はまた、外側から内側に向かって、上部カバー壁23と、下部カバー壁22と、下部カバー壁22と上部カバー壁23との間に位置する断熱構造体24と、を備える多層構造体を備える。カバー12はまた、上部カバー壁23に位置する補剛材25を備える。
【0051】
カバー12は、上部カバー壁23が外部上側耐力壁5または外部デッキ5の平面内に位置決めされるように、荷積み/荷降ろし開口部10内に配置される。したがって、この場合、貯蔵設備1はドーム座を有さず、カバー12は外部デッキ5の上方に突出しない。
【0052】
上部カバー壁23は、カバー12に関する限り、上部カバー壁23が二次密封膜17の役割を果たすように、開口部10全体にわたって外部デッキ5に密封して固定される。上部カバー壁23は、金属材料、例えばステンレス鋼を使用して製造される。
【0053】
下部カバー壁22は、接合片26を使用して、主構造体の一次密封膜19、この例ではシャフト15に密封して溶接される。接合片26は、本発明の様々な実施形態による
図2~
図5により詳細に説明される。下部カバー壁22はまた、特に荷積み/荷降ろしパイプに密封して溶接される。
【0054】
カバー12の断熱構造体24は、互いに並置され、同様または異なる構造であり得る複数の断熱要素を備える。好ましい実施形態では、下部カバー壁22および接合片22と並んで位置する絶縁要素は構造絶縁要素であり、断熱構造体24の周囲に位置する絶縁要素は非構造絶縁要素である。構造断熱要素は、任意選択的に繊維で補強された高密度ポリマー発泡体のブロック、またはガラスウールもしくはパーライトなどの断熱充填材で充填された合板もしくは複合材から作製された箱から構成されてもよい。非構造断熱要素は、低密度ポリマーフォームのブロック、またはグラスウールのブロックであってもよい。
【0055】
固定タブ50は、上部カバー壁23から始まり、垂直近位部分51と、水平に延在するかまたはC字形フックを形成する遠位部分52と、を有して垂直に延在する。したがって、固定タブ15は、有利には、上部カバー壁23の材料と同一の材料から作製される。したがって、この固定タブ50は、環境温度が実質的に0℃未満、またはさらには-40℃以下であるときにより良好な機械的完全性を有する金属材料、典型的には鉄系合金から作製される。
【0056】
したがって、上部カバー壁23ならびにこの固定タブ50は、IGCコードによって認可された300シリーズのステンレス鋼からなることができる。言い換えれば、固定タブ50は、規格ASTM A240に準拠したオーステナイト鋼からなる。
【0057】
本発明は、第1に、液体ドームのシャフト15を形成するパイプ30が、固定タブ50の存在により、炭素鋼と呼ばれる鋼から製造され、特にASTM A131規格に従ってグレードA、B、D、AH、DH、EH、FH、またはEの鋼からなるという事実にある。このようなグレードの鋼は、環境温度が液化ガスタンク内で発生する可能性が高い、またはさらには一定のリスクを表す0℃をかなり下回ると、それほど強くも弾力性もないが、これらの鋼はステンレス鋼よりも著しく安価である。
【0058】
したがって、このような配置は、液体ドーム内の高価なステンレス鋼の量を低減し、一次アンカーポイント、すなわち一次膜19および液体ドームの開口部10で一次膜を形成する下部カバー壁22への固定ポイント、および二次アンカーポイント、すなわち二次膜17に可撓性を付与することを可能にする。
【0059】
したがって、本発明の主な重要な態様は、下部カバー壁22の固定タブ50への接続および固定にある。さらに、この固定タブは、液体ドームのシャフト15のパイプ30に対して少なくとも数センチメートルオフセットされており、すなわちパイプから5センチメートルから35センチメートル離れており、好ましくは15センチメートルから25センチメートルの間の距離にある。パイプ30に対する固定タブ50のこのようなオフセットは、アセンブリが大きな機械的応力を容易に吸収することができるように下部カバー壁22の柔軟な固定をもたらし、液体ドームのシャフト15の領域は、タンク71よりもはるかに小さいまたは狭い寸法を有するため、およびその垂直位置のために、タンク71を収容する構造体が船舶であるときに高い機械的応力および張力を集中させることに留意されたい。
【0060】
添付の図に見られるように、パイプ30に対する固定タブ50のオフセットは、他の非構造断熱材41よりも高価で配置が困難な構造断熱材40の使用を低減することを可能にする。したがって、本発明による液体ドーム構造では、固定タブ50のない従来の液体ドームと比較して、構造断熱材40の量をわずかに低減することができる。
【0061】
本発明の第2の態様は、固定タブが下部カバー壁22に直接的または間接的に接続され得るという事実にある。したがって、そのような固定が間接的である場合、
図1~
図5に示すように、接合片26を使用することができるが、固定が直接的である場合、一実施形態が
図6に示す。
【0062】
図1から
図5に見られるように、接合片26は、主構造体の一次密封膜19に密封して溶接された第1のフランジ27と、第1のフランジ27に接続され、下部カバー壁22に密封して溶接された第2のフランジ28であって、すべて下部カバー壁22の周りにある、第2のフランジと、近位部分51から水平に延在するフランジ53に接続された第3のフランジ29と、を備える。フランジ53は、固定タブ50から始まり、有利にはこれらの部分51、52と同じ材料から作製される。
【0063】
図3および
図4は、本発明による液体ドームの必須ではない相補的要素を示す。これらの図は、特に、タンク71の主構造体の一次膜19上に存在する波形60を示している。これらの波形60は、タンク71が0℃より十分に低い非常に低い温度で液化ガスで満たされているときに、一次膜19がこの膜19の熱膨張に耐えることを可能にする。
【0064】
この場合の遠位部分52は、この遠位部分52の一部が二次膜17に溶接によって固定され、この遠位部分52の別の部分が二次断熱障壁16と接触し、シャフト15内のこの障壁16の空間を制限するように、逆C字形断面を有する。
【0065】
固定タブ50のフランジ53は、接合片26または下部カバー壁22に直接近づくように、水平に、すなわち近位部分51に対して90°±10°の角度で延在し、後者の実施形態(接合片26はないが、近位部分51から突出するフランジ53がある)は、添付の図では見えないが、本発明の範囲内であると考えられる。
【0066】
図5は、本発明の一実施形態を示し、本質的な違いは、近位部分51から始まるフランジ53がないことにある。そのような実施形態では、接合片26のフランジ29は、固定タブ50の近位部分51と当接するまで延在する。接合片26のこのフランジ29は、他の実施形態と全く同様に、シール溶接によって固定タブ50の近位部分51に固定される。したがって、この実施形態では、接合片26のフランジ29は他の実施形態よりもはるかに長く、典型的には、ここではフランジ29は少なくとも15センチメートル、好ましくは約20センチメートルの長さを有する。
【0067】
図6は、固定タブ50と下部カバー壁22との間の固定が「直接」と呼ばれるように、接合片26がない実施形態を示す。したがって、この実施形態では、固定タブ50のフランジ53は、下部カバー壁22に遭遇して固定するまで延在し、そうでなければ、
図6に示すように、下部カバー壁22は、固定タブ50と当接するまで延在する。これらの実施形態のいずれかでは、接合片26なしで、固定タブ50と下部カバー壁22との固定は、好ましくは溶接を使用して密封して行われる。
【0068】
図6の実施形態では、主構造体の一次膜19は、下部カバー壁22と一次膜19との間の溶接接合部が完全にシールされるように、下部カバー壁22に当接または当接する平坦な19’、すなわちL字形の端部をその端部に有する。本発明の他の特徴は、それらの変形形態において、他の実施形態の文脈において先に記載されたものと異ならない。
【0069】
図7は、荷積みおよび荷降ろしステーション75、水中パイプ76、および陸上設備77を含む海上ターミナルの一例を示す。荷積みおよび荷降ろしステーション75は、可動アーム74と、可動アーム74を支持するタワー78とを備える固定された海上設備である。可動アーム74は、荷積み/荷降ろし配管73に接続することができる断熱された可撓性ホース79の束を担持する。配向可能な可動アーム74は、あらゆるサイズのメタン運搬船に適している。図示されていない接続パイプが、タワー78の内部に延在する。荷積みおよび荷降ろしステーション75は、陸上設備77からの、または陸上設備へのメタン運搬船70からの積み込みおよび積み出しを可能にする。後者は、液化ガス貯蔵タンク80と、水中パイプ76によって荷積みまたは荷降ろしステーション75に接続された接続パイプ81と、を有する。水中パイプ76は、荷積みまたは荷降ろしステーション75と陸上設備77との間で液化ガスを長距離、例えば5kmにわたって移送することを可能にし、メタンタンカー70を荷積みおよび荷降ろし作業中に長い距離だけ海岸から離しておくことを可能にする。
【0070】
液化ガスを移送するのに必要な圧力を発生させるために、船舶70に搭載されたポンプ、および/または陸上設備77に装備されたポンプ、および/または荷積みおよび荷降ろしステーション75に装備されたポンプが使用される。
【0071】
本発明をいくつかの特定の実施形態に関連して説明してきたが、本発明が本発明の範囲内にある場合、本発明は決してこれらに限定されず、記載された手段のすべての技術的等価物およびそれらの組み合わせも含むことは極めて明白である。
【0072】
「備える」、「示す」または「含む」という動詞およびその活用形の使用は、特許請求の範囲に列挙されたもの以外の要素またはステップの存在を排除するものではない。
特許請求の範囲において、括弧内のいかなる参照符号も、特許請求の範囲に対する限定として解釈されるべきではない。