IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 深▲せん▼麦克韋爾科技有限公司の特許一覧

特許7594043セラミックス、霧化コア及びアトマイザー
<>
  • 特許-セラミックス、霧化コア及びアトマイザー 図1
  • 特許-セラミックス、霧化コア及びアトマイザー 図2
  • 特許-セラミックス、霧化コア及びアトマイザー 図3
  • 特許-セラミックス、霧化コア及びアトマイザー 図4
  • 特許-セラミックス、霧化コア及びアトマイザー 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】セラミックス、霧化コア及びアトマイザー
(51)【国際特許分類】
   A24F 40/46 20200101AFI20241126BHJP
   A24F 40/10 20200101ALI20241126BHJP
   C04B 38/00 20060101ALI20241126BHJP
   C04B 41/85 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
A24F40/46
A24F40/10
C04B38/00 303Z
C04B41/85 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023067871
(22)【出願日】2023-04-18
(65)【公開番号】P2023159880
(43)【公開日】2023-11-01
【審査請求日】2023-04-18
(31)【優先権主張番号】202210418915.9
(32)【優先日】2022-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517419906
【氏名又は名称】深▲せん▼麦克韋爾科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHENZHEN SMOORE TECHNOLOGY LIMITED
【住所又は居所原語表記】16#, Dongcai Industrial Park, Gushu Town, Xixiang Street, Baoan District, Shenzhen, Guangdong, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】李 沛
(72)【発明者】
【氏名】呂 紅霞
(72)【発明者】
【氏名】蒋 振龍
【審査官】木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第113475755(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第113615887(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第112675884(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第112931952(CN,A)
【文献】欧州特許出願公開第4005419(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/00-47/00
C04B 33/00-41/91
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス基体と、修飾層と、を含むセラミックスであって、
前記セラミックス基体は、多孔質セラミックスであり、
前記修飾層は、前記セラミックス基体の表面に設けられ、ビスマス系酸化物及び他の成分を含み、
前記修飾層におけるビスマス元素の質量百分率は、50%~80%であることを特徴とするセラミックス。
【請求項2】
前記ビスマス系酸化物は、酸化ビスマスを含むことを特徴とする請求項に記載のセラミックス。
【請求項3】
前記他の成分は、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、カリウム、カルシウム、チタン、亜鉛、ジルコニウム、バリウムのいずれか1種以上の元素を含むことを特徴とする請求項に記載のセラミックス。
【請求項4】
前記他の成分は、亜鉛元素を含み、
前記修飾層における前記亜鉛元素の質量百分率は、5%~7%であることを特徴とする請求項に記載のセラミックス。
【請求項5】
前記修飾層は、鉛元素を含まないことを特徴とする請求項に記載のセラミックス。
【請求項6】
前記修飾層は、連続多孔質構造であることを特徴とする請求項に記載のセラミックス。
【請求項7】
セラミックス基体と、修飾層と、発熱層と、を含む霧化コアであって、
前記セラミックス基体は、多孔質セラミックスであり、
前記修飾層は、前記セラミックス基体の表面に設けられ、ビスマス系酸化物及び他の成分を含み、
前記発熱層は、前記修飾層の前記セラミックス基体から離れる表面に積層して設置されことを特徴とする霧化コア。
【請求項8】
アトマイザーであって、
エアロゾル生成基材を貯蔵するための貯液室と、
請求項に記載の霧化コアと、を含み、
前記霧化コアは、前記貯液室内のエアロゾル生成基材を吸収、加熱して霧化させることを特徴とするアトマイザー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス材料技術領域及びアトマイザー技術領域に関し、特に、セラミックス、霧化コア及びアトマイザーに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、電子アトマイザーは、アトマイザー及び電源モジュールからなり、電源モジュールは、アトマイザーに給電し、アトマイザーは、通電状態において、エアロゾル生成基材を加熱して霧化させてエアロゾルを生成し、使用者によって吸引する。霧化コアは、電子アトマイザーのコア部品の1つであり、その特性によって電子アトマイザーの霧化効果及びユーザ体験を決定する。
【0003】
汎用の霧化コアは、セラミックス基体であり、セラミックス基体に発熱体が設けられてエアロゾル生成基材を加熱する。通常、セラミックス基体の表面に修飾層が設けられて発熱体とセラミックス基体との接合力を高める。しかしながら、従来の修飾層には、焼成範囲が狭くて、熱衝撃抵抗性が不良という問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、主に、従来技術のセラミックス表面の修飾層の焼成範囲が狭くて熱衝撃抵抗性が不良という問題を解決するセラミックス、霧化コア及びアトマイザーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記技術問題を解決するために、本発明が提供する第1の技術案に係るセラミックスは、セラミックス基体と、前記セラミックス基体の表面に設けられる修飾層と、を含む。前記修飾層は、ビスマス系酸化物及び他の成分を含む。
【0006】
また、前記セラミックス基体は、多孔質セラミックスである。
【0007】
また、前記ビスマス系酸化物は、酸化ビスマスを含む。
【0008】
また、前記修飾層におけるビスマス元素の質量百分率は、50%~80%である。
【0009】
また、前記他の成分は、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、カリウム、カルシウム、チタン、亜鉛、ジルコニウム、バリウムのいずれか1種以上の元素を含む。
【0010】
また、前記他の成分は、亜鉛元素を含み、前記修飾層における前記亜鉛元素の質量百分率は、5%~7%である。
【0011】
また、前記修飾層は、鉛元素を含まない。
【0012】
また、前記修飾層は、連続多孔質構造である。
【0013】
上記技術問題を解決するために、本発明が提供する第2の技術案に係る霧化コアは、セラミックス及び発熱層を含む。前記セラミックスは、上記のいずれかのセラミックスである。前記発熱層は、前記修飾層の前記セラミックス基体から離れる表面に積層して設置される。
【0014】
上記技術問題を解決するために、本発明が提供する第3の技術案に係るアトマイザーは、エアロゾル生成基材を貯蔵するための貯液室と、上記の霧化コアと、を含む。前記霧化コアは、前記貯液室内のエアロゾル生成基材を吸収、加熱して霧化させる。
【0015】
本発明は以下の顕著な効果を奏する。本発明は、従来技術と異なり、セラミックス、霧化コア及びアトマイザーを開示する。前記セラミックスは、セラミックス基体と、セラミックス基体の表面に設けられる修飾層とを含む。修飾層は、ビスマス系酸化物及び他の成分を含む。セラミックス基体の表面に修飾層が設置されるとともに、修飾層の組成物を最適化し、修飾層内にビスマス系酸化物を添加し、従来技術の鉛含有酸化物をビスマス系酸化物に置き換え、ビスマス系酸化物を含有する修飾層が優れた性能を有し、これにより、修飾層の溶融温度を下げて焼成範囲を広げ、修飾層の熱膨張係数を低減させ、熱衝撃抵抗性を向上させ、霧化コアの性能を高め、さらにアトマイザーの性能を高める。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明の実施例または従来技術の技術案をより明確に説明するために、以下、実施例の説明において必要な図面を簡単に説明するが、後述する図面は本発明の一部の実施例の過ぎず、当業者であれば、創造的な労力を要することなく、これらの図面に基づいて他の図面に想到し得ることが明らかである。
図1】本発明に係るセラミックスの一実施例の構成を示す図である。
図2】本発明に係る電子アトマイザーの一実施例の構成を示す図である。
図3図2で示される電子アトマイザーにおけるアトマイザーの構成を示す図である。
図4図3で示されるアトマイザーにおける霧化コアの構成を示す図である。
図5図4の霧化コアの構成を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面及び実施例を合わせて、本発明をより詳細に説明する。以下の実施例は、本発明の範囲を限定するものではなくて、本発明を説明するものに過ぎない。同様に、以下の実施例は、全部の実施例ではなく、本発明の一部の実施例のみである。当業者が創造的な作業なしに本発明の実施例に基づいて得られる全ての他の実施例は、いずれも本発明の保護範囲に含まれるべきである。
【0018】
本発明における「第1」、「第2」、及び「第3」という用語は、説明の目的でのみ使用され、相対的な重要性を示すもしくは示唆する、又は示される技術的特徴の数を暗黙的に示すと解釈されるべきではない。それにより、「第1」、「第2」、「第3」により限定される特徴は、明示又は暗黙的に、少なくとも1つの特徴を含むことができる。本発明の説明において、「複数」は、他に特に定義されない限り、少なくとも2つ、例えば、2つ、3つなどを意味する。また、「含む」及び「有する」という用語、並びにそれらの任意の変形は、非排他的に含むことを意図している。例えば、一連のステップ又はユニットを含むプロセス、方法、システム、製品又は装置は、挙げられたステップ又はユニットに限定されず、選択的に、挙げられていないステップ又はユニットを更に含んでもよく、又はこれらのプロセス、方法、製品又は装置に固有の他のステップ又はユニットを更に含んでもよい。
【0019】
本明細書における「実施例」は、実施例に合わせて説明される特定の特徴、構造または特性が本発明の少なくとも1つ実施例に含まれることを意味する。本明細書の各位置場所での単語の出現は、必ずしも全てが同じ実施例を意味するわけではなく、他の実施例と互いに排他的に独立した、または代替の実施例でもない。当業者であれば、本明細書に記載された実施例を他の実施例と互いに組み合わされてもよいことが明示的かつ暗黙的に理解される。
【0020】
通常、従来のセラミックス表面の修飾層は、鉛元素含有の釉薬を用い、焼成範囲が狭くて熱衝撃抵抗性が不良などという問題がある。そのため、本発明は、セラミックス10を提供し、具体的に以下通り説明する。
【0021】
図1を参照する。図1は、本発明に係るセラミックスの一実施例の構成を示す図である。
【0022】
本発明は、セラミックス10を提供する。図1に示すように、セラミックス10は、セラミックス基体11と、セラミックス基体11の表面に設置される修飾層12と、を含む。修飾層12は、ビスマス系酸化物及び他の成分を含む。セラミックス基体11の表面に修飾層12が設置されるとともに、修飾層12の組成物を最適化し、修飾層12内にビスマス系酸化物を添加し、従来技術の鉛含有酸化物をビスマス系酸化物に置き換え、ビスマス系酸化物を含有する修飾層12が優れた性能を有するため、修飾層12の溶融温度及び熱膨張係数を低減させ、修飾層12の焼成範囲を広げ、熱衝撃抵抗性及び引張変形抵抗性を向上させる。なお、セラミックス基体11の表面に修飾層12が設置されることで、セラミックス10の強度、熱安定性を効果的に向上させることができ、液体や気体などによるセラミックス基体11への浸食を防止するとともに、セラミックス基体11の表面を修飾することができ、セラミックス基体11の表面平坦度を高くする。
【0023】
具体的には、修飾層12におけるビスマス系酸化物は、主に酸化ビスマスである。酸化ビスマスは、性能がより安定的であり、酸化鉛よりも融点及沸点がいずれも低く、従来の鉛含有酸化物が添加された修飾層に対して、修飾層12全体の溶融温度を下げて焼成範囲を広げ、修飾層12の焼結温度を下げることができる。また、酸化ビスマスの熱膨張係数は、酸化鉛の熱膨張係数よりも低く、従来の鉛含有酸化物が添加された修飾層に対して、修飾層12全体の熱膨張係数を効果的に低下させ、修飾層12の熱衝撃抵抗性及び引張変形抵抗性を向上させ、修飾層12をセラミックス表面によりよく接合させ、セラミックス表面の修飾層12にヒビが生じるという問題の発生を抑制する。
【0024】
修飾層12におけるビスマス元素の質量百分率は、50%~80%である。なお、修飾層12におけるビスマス元素の含有量が低すぎると、修飾層12の熱膨張係数や溶融温度などの性能を効果的に低下させないほか、修飾層12の焼成範囲や熱衝撃抵抗性、引張変形抵抗性などの性能に良い影響を与えずに、修飾層12の性能に影響を及ぼす。
【0025】
修飾層12における他の成分は、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、カリウム、カルシウム、チタン、亜鉛、ジルコニウム、バリウムのいずれか1種以上の元素を含む。
【0026】
好ましくは、修飾層2における他の成分は、亜鉛元素を含み、修飾層12における亜鉛元素の質量百分率は、5%~7%である。修飾層12における亜鉛元素は、酸化物の態様で存在する。酸化亜鉛は、修飾層12のフラックスとして、修飾層12の焼結温度を下げるとともに、修飾層12の引張変形抵抗性を高め、さらに修飾層12全体の熱膨張係数を低減させ、耐熱衝撃性を向上させ、修飾層12とセラミックス表面との熱整合性を高め、その後の使用中にヒビが生じにくい。
【0027】
本実施例では、修飾層12の組成は、酸素、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、カリウム、カルシウム、亜鉛、ビスマス、チタン、ジルコニウム、バリウムである元素を含む。具体的には、修飾層12における酸素元素の質量百分率が21.94wt%、修飾層12におけるナトリウム元素の質量百分率が1.04wt%、修飾層12におけるマグネシウム元素の質量百分率が0.14wt%、修飾層12におけるアルミニウム元素の質量百分率が0.59wt%、修飾層12におけるシリコン元素の質量百分率が12.79wt%、修飾層12におけるカリウム元素の質量百分率が1.17wt%、修飾層12におけるカルシウム元素の質量百分率が0.43wt%、修飾層12における亜鉛元素の質量百分率が6.185wt%、修飾層12におけるビスマス元素の質量百分率が55.715wt%、チタン元素、ジルコニウム元素及びバリウム元素が修飾層12の微量元素であって修飾層12における含有量が少なく、修飾層12に対する質量百分率が0.009%より少ない。
【0028】
セラミックス基体11は、多孔質構造である。好ましくは、セラミックス基体11は、多孔質セラミックス材料を選定して直接製造される。例えば、多孔質セラミックスは、珪藻土系多孔質セラミックス、アルミナ系多孔質セラミックス、ムライト系多孔質セラミックス、及びこれらの材料の少なくとも2つからなる複合多孔質セラミックス、またはアルミナとムライトからなる複合多孔質セラミックスであってもよいし、緻密なセラミックス材料を選定して穴を開けて形成される多孔質構造のセラミックス基体11であってもよいが、必要に応じて特別に設計されてもよい。
【0029】
多孔質セラミックス材料の気孔率は、30%~70%であってもよく、具体的に、30%、35%、50%、70%であってもよい。多孔質セラミックス材料の孔径は、200nm~200μmである。
【0030】
セラミックス基体11は、形状が円柱形、円形、直方体、立方体または角柱状などの任意形状であってもよく、サイズも任意のサイズに設置されてもよいが、ここではその限りではない。本実施例では、図1に示すように、セラミックス基体11の形状は、直方体である。
【0031】
具体的には、修飾層12は、物理蒸着または化学蒸着などの堆積プロセスによってセラミックス基体11の表面上に製造されることが可能であり、例えば、スパッタや蒸着、原子層堆積などのプロセス技術で製造され、セラミックス基体11の表面を連続多孔質構造または連続網状構造に形成してセラミックス基体11を修飾してもよい。また、修飾層12成分を含有する原料スラリーをセラミックス基体11の表面に直接塗布してもよい。塗布方法としては、吹付けや印刷塗布、転写、シルク印刷などの多種の塗布方法が挙げられるが、これらに限定されない。セラミックス基体11の表面に修飾層12を製造した後、セラミックス基体11及び修飾層12に焼結処理を行う。焼結温度は、500℃~900℃であり、この焼結温度での焼結により、最終的に、性能が優れたセラミックス10を得ることができる。
【0032】
修飾層12の厚みは、50μm~300μmである。なお、修飾層12の連続多孔質構造を形成するために、修飾層12の厚みを、多孔質セラミックスの孔径に近くするか、多孔質セラミックスの孔径より小さくする必要がある。好ましくは、修飾層12の厚みは、50μm~200μmである。この厚みの修飾層12は、多孔質セラミックス基体11上に比較的に平坦の表面を形成することができるほか、多孔質の連続構造を確保して多孔質セラミックスの液誘導性を保証することができる。
【0033】
本実施例では、セラミックス基体11の表面に酸化ビスマスを含有する修飾層12が設置され、有毒の鉛元素をビスマス元素に置き換えることで、修飾層12の安全性を保証するとともに、修飾層12における酸化ビスマス及び酸化亜鉛などの成分は、修飾層12の焼結温度を下げ、焼結温度が高すぎると、焼結中にセラミックス基体11への損傷を抑制し、修飾層12の熱膨張係数を効果的に低減させ、耐熱衝撃性を向上させ、これにより、セラミックス10の引張変形抵抗性及び熱安定性を向上させ、修飾層12とセラミックス基体11との熱整合性をより高めて接合をより密接させ、セラミックス10の性能をより増強させる。
【0034】
本発明は、上記のセラミックス10を製造するためのセラミックスの製造方法をさらに提供する。この製造方法は、具体的に、以下のステップを含む。
【0035】
S1:セラミックス基体を取得する。
【0036】
具体的には、特定の設計の必要性に応じて、多孔質セラミックス材料を選定してセラミックス基体11を直接製造してもよいし、緻密なセラミックス材料を選定して穴を開けて多孔質構造のセラミックス基体11を製造してもよい。本実施例では、多孔質セラミックス材料を選定してセラミックス基体11を製造し、製造されたセラミックス基体11の形状が直方体である。
【0037】
S2:セラミックス基体の表面に修飾層を製造する。
【0038】
具体的には、上記のステップにより製造された直方体のセラミックス基体11の表面には、堆積プロセスまたは塗布方法により修飾層12を製造して形成する。好ましくは、物理蒸着または化学蒸着などの堆積プロセスを選定してもよく、例えば、スパッタや蒸着、原子層堆積などのプロセス技術でセラミックス基体11の表面に修飾層12を製造してもよい。また、吹付けや印刷塗布、転写、シルク印刷などの多種の塗布方法により、セラミックス基体11の表面に修飾層12を塗布してもよい。上記のプロセス方法によれば、セラミックス基体11の表面に連続構造の修飾層12を形成する。セラミックス基体11の表面に製造された修飾層12は、ビスマス系酸化物及び他の成分を含む。なお、ビスマス系酸化物は、主に酸化ビスマスであり、他の成分は、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、カリウム、カルシウム、チタン、亜鉛、ジルコニウム、バリウムのいずれか1種以上の元素を含むが、必要に応じて特別に設計されてもよい。修飾層12の原料としては、通常、上記の成分を含有する酸化物や塩、単体などが用いられ、具体的に、選択されるプロセスによって修飾層12の原料を選択してもよい。なお、塗布プロセスを選択した場合、例えば、ビスマス系酸化物としての酸化ビスマス、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、カリウム、カルシウム、チタン、亜鉛、ジルコニウム、バリウムのいずれか1種以上の元素を含有する塩類または酸化物を選択してもよい。例えば、酸化ビスマス、ジルコニア、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、シリコン微粉末、酸化バリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、ケイ酸ナトリウム、酒石酸カリウムナトリウムなどであってもよい。また、上記の原料を混合して原料スリラーを製作してセラミックス基体11に塗布する。
【0039】
S3:セラミックス基体及び修飾層に焼結処理を行う。
【0040】
具体的には、上記のステップで製造されたセラミックス基体11及び修飾層12に500℃~900℃の焼結温度で焼結処理を行い、焼結過程後、最終的に修飾層12とセラミックス基体11との接合が良好であって性能が優れたセラミックス10を得る。
【0041】
図2及び図3を参照する。図2は、本発明に係る電子アトマイザーの一実施例の構成を示す図であり、図3は、図2で示される電子アトマイザーにおけるアトマイザーの構成を示す図である。
【0042】
図2を参照し、本発明は、電子アトマイザー300を提供する。当該電子アトマイザー300は、アトマイザー100及び電源モジュール200を含む。電源モジュール200は、アトマイザー100にエネルギーを提供する。アトマイザー100は、通電状態において、エアロゾル生成基材を加熱して霧化させてエアロゾルを生成し、使用者によって吸引する。
【0043】
好ましくは、電子アトマイザー300におけるアトマイザー100及び電源モジュール200は、一体構造であってもよいし、着脱可能に連結されてもよいが、必要に応じて特別に設計されてもよい。
【0044】
図3に示すように、アトマイザー100は、貯液室90、排気管30、霧化コア20、及びアトマイザー100内に形成される霧化室40を含む。なお、貯液室90は、エアロゾル生成基材を貯蔵し、霧化コア20は、貯液室90内におけるエアロゾル生成基材を吸収するとともに、吸収したエアロゾル生成基材を加熱して霧化させ、最終的にエアロゾルを生成する。霧化して生成されたエアロゾルは、霧化室40内において、外部気流と伴って排気管30を流通し、最終的にアトマイザー100から流出して使用者によって吸引される。
【0045】
図4及び図5を参照する。図4は、図3で示されるアトマイザーにおける霧化コアの構成を示す図であり、図5は、図4の霧化コアの構成を示す上面図である。
【0046】
図4を参照する。霧化コア20は、セラミックス10及び発熱層21を含む。セラミックス10は、本発明に係るセラミックス10であり、セラミックス基体11及び修飾層12を含む。なお、修飾層12は、セラミックス基体11の表面に設置される。発熱層21は、修飾層12のセラミックス基体11から離れる側の表面に積層して設置される。なお、セラミックス系の霧化コア20に対して、その性能がセラミックス基体11の品質によって影響されることが多く、セラミックス基体11の表面を修飾する必要がある。修飾層12は、セラミックス基体11の表面に対して修飾機能を発揮し、セラミックス基体11の表面を連続多孔質構造に形成し、霧化コア20の均一な発熱及び液誘導に寄与する。また、発熱層21は、修飾層12によってセラミックス基体11により良く接合することができ、霧化コア20の発熱効率を高め、さらに、霧化コア20の霧化効率をより高めることができる。
【0047】
本実施例では、セラミックス基体11の表面に設置される修飾層12の組成成分及び修飾層12に占める各成分の質量百分率などについては、上記の説明を参照してもよいため、ここでその詳細な説明を省略する。
【0048】
霧化コア20におけるセラミックス基体11の表面の修飾層12の熱衝撃抵抗性をテストするために、本発明の発明者は複数回の試験を行った。具体的には、修飾層12に占めるビスマス元素の質量百分率を変えて複数回の試験を行い、セラミックス基体11の表面の修飾層12にヒビがあるか否かを検出することで、修飾層12の熱衝撃抵抗性を評価する。
【0049】
電子アトマイザー300の通常使用時に、霧化コア20の温度範囲は、50℃~350℃である。霧化コア20における修飾層12の熱衝撃抵抗性をテストするために、本発明の発明者は、400℃~800℃の温度で修飾層12に対して限界試験を行った。
【0050】
本発明の発明者は、試験1、試験2、試験3・・・試験7である7回の試験を行った。7回の試験では、修飾層12に占めるビスマス元素の質量百分率は互いに異なる。
【0051】
具体的には、試験1では、修飾層12に占めるビスマス元素の質量百分率が50wt%、修飾層12が表面に設置されるセラミックス基体11の焼結温度が500℃であった。試験2では、修飾層12に占めるビスマス元素の質量百分率が55wt%、修飾層12が表面に設置されるセラミックス基体11の焼結温度が550℃であった。試験3では、修飾層12に占めるビスマス元素の質量百分率が60wt%、修飾層12が表面に設置されるセラミックス基体11の焼結温度が600℃であった。試験4では、修飾層12に占めるビスマス元素の質量百分率が65wt%、修飾層12が表面に設置されるセラミックス基体11の焼結温度が600℃であった。試験5では、修飾層12に占めるビスマス元素の質量百分率が68wt%、修飾層12が表面に設置されるセラミックス基体11の焼結温度が600℃であった。試験6では、修飾層12に占めるビスマス元素の質量百分率が70wt%、修飾層12が表面に設置されるセラミックス基体11の焼結温度が650℃であった。試験7では、修飾層12に占めるビスマス元素の質量百分率が80wt%、修飾層12が表面に設置されるセラミックス基体11の焼結温度が700℃であった。
【0052】
上記の7回の試験では、いずれも400℃~800℃の限界温度で修飾層12に熱衝撃試験を行った。7回の試験で検出して得られた試験結果としては、セラミックス基体11の表面の修飾層12にヒビを発見せず、すなわち、7回の異なる試験では、いずれも修飾層12の熱衝撃抵抗性が優れる。
【0053】
発明者は、上記の試験の試験結果を分析研究し、複数回の試験で得られた試験結果から以下のことを発見した。修飾層12に占めるビスマス元素の質量百分率が50%~80%、修飾層12が表面に設置されるセラミックス基体11の焼結温度が500℃~900℃である場合、修飾層12の熱衝撃抵抗性が優れ、修飾層12とセラミックス基体11の表面との熱整合性がより高く、接合性がより優れ、修飾層12の熱膨張係数がより低く、その引張変形抵抗性もより優れ、霧化コア20の使用中に、修飾層12にヒビが生じることが発生しにくく、修飾層12にヒビが生じて修飾層12の表面に設けられる発熱層21が破断することで、霧化コア20の霧化性能及び耐用年数に影響を与えるという問題の発生を抑制する。これにより、霧化コア20の使用性能及び耐用年数を保証して電子アトマイザー300の霧化性能を向上させることができる。
【0054】
セラミックス基体11は、多孔質構造である。そのため、物理蒸着や化学蒸着、塗布方法などのプロセス方法によってセラミックス基体11の表面上に製造される修飾層12は、連続多孔質構造または連続網状構造であって、このような構造がセラミックス基体11による発熱層21への給液効果に影響を及ぼさない。また、連続多孔質構造または連続網状構造は、霧化コア20の均一な発熱及び液誘導に寄与し、貯液室90内に貯蔵されるエアロゾル生成基材をより均一に霧化コア20内に進入させ、霧化コア20内の発熱層21によって加熱して霧化させてエアロゾルを生成し、霧化コア20の霧化性能を向上させてユーザの吸い心地を向上させることができる。
【0055】
セラミックス基体11の形状及びサイズは限定されない。本実施例では、セラミックス基体11は、多孔質セラミックス材料から製造される。多孔質セラミックスは、空隙を有して液誘導及び貯液の機能を備え、貯液室90内のエアロゾル生成基材をセラミックス基体11によって吸収した後に霧化面に浸透させて加熱して霧化させる。また、多孔質セラミックスは、化学性能が安定的であり、エアロゾル生成基材と化学反応させない。さらに、多孔質セラミックスは、耐高温であり、霧化中の過度の加熱による変形が発生しない。多孔質セラミックスは絶縁体であり、発熱層21に電気的に接続されて短絡が発生して霧化コア20が故障することがない。さらに、多孔質セラミックスは、製造が容易、コストが低い。図4に示すように、セラミックス基体11は直方体の多孔質セラミックスである。
【0056】
一部の実施例では、多孔質セラミックスの気孔率は、30%~70%であってもよい。気孔率とは、この多孔質媒体の総体積に対するこの多孔質媒体における微小空隙の総体積の比率を指す。気孔率の大きさは、エアロゾル生成基材の組成によって調整可能であり、例えば、エアロゾル生成基材の粘度が比較的高い場合、液誘導効果を確保するように高い気孔率を選定する。
【0057】
他の一部の実施例では、多孔質セラミックスの気孔率は、50%~60%である。多孔質セラミックスの気孔率が50%~60%であることで、多孔質セラミックスの高い液誘導効率を保証し、エアロゾル生成基材の閉塞によるエアロゾル生成基材の乾燥燃焼を防ぎ、アトマイザー100の霧化効果を向上させ、一方、多孔質セラミックスの気孔率が大きすぎて液誘導が速すぎて液体を遮断しにくいことで液漏れの可能性が大幅に増加し、アトマイザー100の性能に影響を与えることを抑制する。
【0058】
発熱層21は、修飾層12のセラミックス基体11から離れる側の表面に設置され、金属または合金材を用いて作られ、通電状態において発熱してエアロゾル生成基材を加熱して霧化させる。好ましくは、発熱層21は、発熱膜、発熱コーディング層、発熱配線、発熱片または発熱網のすくなくとも1種であってもよい。本実施例では、発熱層21は、多孔質発熱膜構造である。なお、発熱層21の多孔質構造により、液体のエアロゾル生成基材が発熱層21に効率よく浸透することができ、発熱層21の液誘導、熱伝導効率を向上させ、霧化コア20の霧化効率を高める。
【0059】
発熱層21の材質は、修飾層12との接合が安定する材質から選択されてもよい。例えば、発熱層21は、チタン、ジルコニウム、チタンアルミニウム合金、チタンジルコニウム合金、チタンモリブデン合金、チタンニオブ合金、鉄アルミニウム合金、タンタルアルミニウム合金、ステンレス鋼などの材質から作られてもよい。
【0060】
チタンとジルコニウムは、以下の特徴を有する。チタンとジルコニウムは、生体適合性に優れた金属であり、特にチタンは、生体親和性の高い金属元素であり、安全性がより高い。チタンとジルコニウムは、金属材料の中でも抵抗率が比較的大きく、常温状態で一定の比率で合金化された後に元の3倍の抵抗率を有し、発熱層21の材料としてより適する。チタンとジルコニウムは、熱膨張係数が小さく、合金化後の熱膨張係数がより小さく、修飾層12との熱整合がより優れる。一定の比率で合金化した後、合金の融点はより低く、マグネトロンスパッタリングめっき膜の成膜性がより優れる。金属めっき膜の後、電子顕微鏡分析により、微細な粒子が球状であり、粒子と粒子が一緒になってカリフラワーに類似する微細な形態に形成されることがわかった。しかしながら、チタンジルコニウム合金によって形成された膜は、電子顕微鏡分析により、その微細な粒子がフレーク状であり、粒子間の結晶粒界がなくなり、連続性が優れることがわかった。チタンとジルコニウムは、いずれも優れた塑性と伸び率を有し、チタンジルコニウム合金膜の熱サイクル抵抗と電流衝撃性が上記のチタンとジルコニウムの特徴によってより優れる。本実施例では、発熱層21は、チタンジルコニウム合金材質を用いて製造される。
【0061】
好ましくは、発熱層21は、物理蒸着または化学蒸着などのプロセスによって修飾層12のセラミックス基体11から離れる側の表面に製造されることが可能であり、例えば、スパッタや蒸着、原子層堆積などのプロセス技術で製造される。
【0062】
本実施例では、チタンジルコニウム合金から作られるチタンジルコニウム合金膜自体は局所的に緻密な膜であるが、修飾層12が多孔質構造であるため、修飾層12の表面に形成されるチタンジルコニウム合金膜も多孔質連続構造になり、チタンジルコニウム合金膜の孔径分布は、修飾層12の表面の微細孔の孔径より少し小さい。
【0063】
図4を参照する。本実施例では、霧化コア20は2つの電極22をさらに含む。2つの電極22は、電子アトマイザー300内の電源モジュール200にそれぞれ電気的に接続されて霧化コア20の発熱層21に給電し、これにより、発熱層21が通電状態で発熱し、セラミックス基体11内に吸収されたエアロゾル生成基材を加熱して霧化させてエアロゾルを生成する。具体的には、図4および図5に示すように、2つの電極22は、いずれも発熱層21のセラミックス基体11から離れた側の表面に設置される。また、2つの電極22は、間隔を空けて設置されることで、電源モジュール200を電極22に容易に電気的に接続させて霧化コア20に給電する。
【0064】
本発明は、従来技術と異なり、セラミックス、霧化コア及びアトマイザーを開示する。前記セラミックスは、セラミックス基体と、セラミックス基体の表面に設けられる修飾層とを含む。修飾層は、ビスマス系酸化物及び他の成分を含む。セラミックス基体の表面に修飾層が設置されるとともに、修飾層の組成物を最適化し、修飾層内にビスマス系酸化物を添加し、従来技術の鉛含有酸化物をビスマス系酸化物に置き換え、ビスマス系酸化物を含有する修飾層が優れた性能を有し、これにより、修飾層の溶融温度を下げて焼成範囲を広げ、修飾層の熱膨張係数を低減させ、熱衝撃抵抗性及び引張変形抵抗性を向上させ、霧化コアの性能を高め、さらにアトマイザーの性能を高める。
【0065】
以上の説明は本発明の実施形態に過ぎず、本発明の保護範囲を制限するものではない。本発明の明細書及び添付図面によって作成したすべての同等構造又は同等フローの変更を、直接又は間接的に他の関連する技術分野に適用することは、いずれも同じ理由により本発明の保護範囲内に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0066】
11 セラミックス基体
12 修飾層
21 発熱層
22 電極
100 アトマイザー
200 電源モジュール
300 電子アトマイザー
図1
図2
図3
図4
図5