(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】基板加熱装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20241126BHJP
B05C 9/14 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
H01L21/30 567
B05C9/14
(21)【出願番号】P 2023134009
(22)【出願日】2023-08-21
【審査請求日】2024-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】中根 慎悟
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-096062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
B05C 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板加熱装置であって、
基板を加熱するホットプレートと、
上部に開口を有しており、内側に前記ホットプレートを収容可能な筐体部と、
前記筐体部の上部の開口を閉塞する蓋部と、
を備え、
前記蓋部は、
断熱材を含む天板と、
前記天板の下面に連結されたリブ部を有する補強部材と、
を有し、
前記リブ部は、前記天板の下面から下方に突出し、且つ前記天板の前記下面と平行に延びる、基板加熱装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板加熱装置であって、
前記リブ部は、繊維強化樹脂を含む、基板加熱装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の基板加熱装置であって、
前記リブ部は、
第1方向に延びる第1リブ部と、
前記第1方向と交差する第2方向に延びる第2リブ部と、
を含む、基板加熱装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の基板加熱装置であって、
前記補強部材は、
前記リブ部の下部に連結され、且つ前記天板と間隔をあけて対向する底板部をさらに有する、基板加熱装置。
【請求項5】
請求項4に記載の基板加熱装置であって、
前記底板部の下面は、平坦面である、基板加熱装置。
【請求項6】
請求項4に記載の基板加熱装置であって、
前記リブ部および前記底板部は、一体に成形されている、基板加熱装置。
【請求項7】
請求項4に記載の基板加熱装置であって、
前記補強部材は、前記底板部より下側に位置し、かつ、前記補強部材よりも線膨張係数が低い低膨張部、を有する、基板加熱装置。
【請求項8】
請求項4に記載の基板加熱装置であって、
前記蓋部は、前記天板を前記補強パネルに固定する固定部、をさらに有し、
前記固定部は、
前記天板と前記底板部との間に位置するスペーサと、
前記スペーサの上部に設けられたネジ穴とかみ合い、且つ前記天板を前記スペーサに連結するスペーサネジと、
を有する、基板加熱装置。
【請求項9】
請求項8に記載の基板加熱装置であって、
前記天板は、
断熱材を含む断熱板と、
前記断熱板の下側に位置し、前記断熱板よりも摩耗耐性が高い裏面板と、
を有する、基板加熱装置。
【請求項10】
請求項9に記載の基板加熱装置であって、
前記固定部は、
前記スペーサネジの頭部と前記スペーサとの間に固定され、且つ前記スペーサネジのネジ部が挿入された環状の第1カラー、
をさらに有し、
前記第1カラーの厚さは前記裏面板の厚さよりも大きく、
前記スペーサネジの頭部と前記裏面板との間に隙間が形成される、基板加熱装置。
【請求項11】
請求項10に記載の基板加熱装置であって、
前記天板は、
前記断熱板の上側に位置し、且つ前記断熱板よりも摩耗耐性が高い化粧板、
をさらに有する、基板加熱装置。
【請求項12】
請求項11に記載の基板加熱装置であって、
前記固定部は、
前記スペーサネジの上部に設けられたネジ穴とかみ合うビスと、
前記ビスの頭部と前記スペーサネジの頭部との間に固定され、且つ前記ビスのネジ部が挿入された環状の第2カラー、
をさらに有し、
前記第2カラーの厚さは、前記化粧板の厚さよりも大きく、
前記ビスの頭部と前記化粧板との間に隙間が形成される、基板加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される主題は、基板加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、表示装置用ガラス基板などの各種基板の処理工程においては、基板に塗布液を塗布した後、基板を加熱することによって、塗布液に含まれる成分を揮発させる処理が広く行われている。このような加熱処理を行う基板加熱装置は、一般的に、処理チャンバ内で基板を収容して、処理チャンバ内で基板を加熱する処理を行うように構成されている。
【0003】
特許文献1には、ホットプレートを収容している処理チャンバの壁面に、断熱材を繊維強化樹脂でモールドした構造を適用することが記載されている。このような構造によれば、処理室内部の高温を断熱して内壁面の温度を高く保つことができるため、処理室を構成する壁内についてフォトレジストを加熱した際に発生する昇華物の付着凝固を抑えることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、処理チャンバを構成する場合、ホットプレートを収容する筐体の上部に開口を設け、当該開口を蓋部で塞ぐ構成が採用される場合がある。このような構成の処理チャンバにおいて、断熱性を高くすると、蓋部下面と蓋部上面の間の温度差が大きくなり、結果として蓋部が熱反りする可能性があった。特に、装置サイズが大きくなるほど、熱反りが起きやすくなる。このような蓋部の熱反りは、処理チャンバの気密性の低下、あるいは、蓋部の開閉不良などの不具合を引き起こす可能性があった。
【0006】
本発明の目的は、基板加熱装置において、蓋部の断熱性を高く維持しつつ、蓋部の熱反りを低減することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、第1態様は、基板加熱装置であって、基板を加熱するホットプレートと、上部に開口を有しており、内側に前記ホットプレートを収容可能な筐体部と、前記筐体部の上部の開口を閉塞する蓋部と、を備え、前記蓋部は、断熱材を含む天板と、前記天板の下面に連結されたリブ部を有する補強部材と、を有し、前記リブ部は、前記天板の下面から下方に突出し、且つ前記天板の前記下面と平行に延びる。
【0008】
第2態様は、第1態様の基板加熱装置であって、前記リブ部は、繊維強化樹脂を含む。
【0009】
第3態様は、第1態様または第2態様の基板加熱装置であって、前記リブ部は、第1方向に延びる第1リブ部と、前記第1方向と交差する第2方向に延びる第2リブ部と、を含む。
【0010】
第4態様は、第1態様または第2態様の基板加熱装置であって、前記補強部材は、前記リブ部の下部に連結され、且つ前記天板と間隔をあけて対向する底板部をさらに有する。
【0011】
第5態様は、第4態様の基板加熱装置であって、前記底板部の下面は、平坦面である。
【0012】
第6態様は、第4態様の基板加熱装置であって、前記リブ部および前記底板部は、一体に成形されている。
【0013】
第7態様は、第4態様の基板加熱装置であって、前記補強部材は、前記底板部より下側に位置し、かつ、前記補強部材よりも線膨張係数が低い低膨張部、を有する。
【0014】
第8態様は、第4態様の基板加熱装置であって、前記蓋部は、前記天板を前記補強パネルに固定する固定部、をさらに有し、前記固定部は、前記天板と前記底板部との間に位置するスペーサと、前記スペーサの上部に設けられたネジ穴とかみ合い、且つ前記天板を前記スペーサに連結するスペーサネジと、を有する。
【0015】
第9態様は、第8態様の基板加熱装置であって、前記天板は、断熱材を含む断熱板と、前記断熱板の下側に位置し、前記断熱板よりも摩耗耐性が高い裏面板と、を有する。
【0016】
第10態様は、第9態様の基板加熱装置であって、前記固定部は、前記スペーサネジの頭部と前記スペーサとの間に固定され、且つ前記スペーサネジのネジ部が挿入された環状の第1カラー、をさらに有し、前記第1カラーの厚さは前記裏面板の厚さよりも大きく、前記スペーサネジの頭部と前記裏面板との間に隙間が形成される。
【0017】
第11態様は、第10態様の基板加熱装置であって、前記天板は、前記断熱板の上側に位置し、且つ前記断熱板よりも摩耗耐性が高い化粧板、をさらに有する。
【0018】
第12態様は、第11態様の基板加熱装置であって、前記固定部は、前記スペーサネジの上部に設けられたネジ穴とかみ合うビスと、前記ビスの頭部と前記スペーサネジの頭部との間に固定され、且つ前記ビスのネジ部が挿入された環状の第2カラー、をさらに有し、前記第2カラーの厚さは、前記化粧板の厚さよりも大きく、前記ビスの頭部と前記化粧板との間に隙間が形成される。
【発明の効果】
【0019】
第1態様から第10態様の基板加熱装置によれば、リブ部により天板の剛性を高めることができる。したがって、蓋部の断熱性を高く維持しつつ、蓋部の熱反りを低減できる。
【0020】
第2態様の基板加熱装置によれば、蓋部の高重量化を回避しつつ、蓋部の熱反りを低減できる。
【0021】
第3態様の基板加熱装置によれば、リブ部が交差していることにより、交差していない場合よりも天板の剛性を高めることができる。
【0022】
第4態様の基板加熱装置によれば、リブ部により天板と補強部材との間に空間を形成できる。これにより、空気断熱の効果を得ることができる。
【0023】
第5態様の基板加熱装置によれば、底板部の下面に、基板の塗布液からの昇華物が付着しても、拭き取りなどの清掃によって容易に除去できる。
【0024】
第6態様の基板加熱装置によれば、部品同士の接合部をなくすことにより、補強パネル53の組み立て作業を容易にできる。また、部品同士の接合部をなくすことにより、蓋部の軽量化を図りつつ、耐久性を高めることができる。
【0025】
第7態様の基板加熱装置によれば、底板部の熱反りをより低減できるため、蓋部の熱反りを低減できる。
【0026】
第8態様の基板加熱装置によれば、スペーサネジによって天板パネルと補強パネルの底板部との間の間隔を確保しつつ、底板部に対する天板パネルの位置を適切に調整できる。
【0027】
第9態様の基板加熱装置によれば、断熱板から粉塵等が発生することを低減できる。
【0028】
第10態様の基板加熱装置によれば、裏面板がスペーサネジで固定されていないことにより、裏面板が熱膨張しても、スペーサネジによって裏面板の変形が抑制されないため、裏面板内部の応力を軽減できる。したがって、裏面板における、熱反りなどの変形、または亀裂などの損傷を低減できる。
【0029】
第11態様の基板加熱装置によれば、断熱板から粉塵等が発生することを低減できる。
【0030】
第12態様の基板加熱装置によれば、化粧板がビスで固定されていないことにより、化粧板が熱膨張しても、ビスによって化粧板の変形が抑制されないため、化粧板内部の応力を軽減できる。したがって、化粧板における、熱反りなどの変形、または亀裂などの損傷を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】第1実施形態に係る基板加熱装置を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示されるII-II線に沿う位置における基板加熱装置の断面を示す図である。
【
図3】
図1に示される蓋部の構造を示す分解斜視図である。
【
図4】蓋部の断面の一部を拡大して示す部分拡大図である。
【
図5】第2実施形態に係る基板加熱装置が備える蓋部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、この実施形態に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。図面においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数が誇張又は簡略化して図示されている場合がある。
【0033】
<1. 第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る基板加熱装置1を示す斜視図である。
図2は、
図1に示されるII-II線に沿う位置における基板加熱装置1の断面を示す図である。
図3は、
図1に示される蓋部50の構造を示す分解斜視図である。
【0034】
なお、いくつかの図面においては、要素の位置関係の理解を容易にするため、XYZ直交座標軸を示す矢印が付されている場合がある。XY平面は水平面に対応し、Z軸は鉛直軸に対応している。また、(-Z)方向は、鉛直下向きに対応している。以下の説明では、鉛直上向きを単に「上向き」または「上方」と称し、鉛直下向きを単に「下向き」または「下方」と称する場合がある。
【0035】
基板加熱装置1は、表面にフォトレジストなどの塗布液が塗布された基板9を内部に収容した状態で、基板9を加熱することにより、塗布液中の溶媒成分を揮発させる。基板加熱装置1は、例えば、基板9の表面にフォトレジスト膜を形成することを目的として用いることができる。基板9は、例えば、電子機器向けの各種被処理基板であり、具体的には、半導体ウエハ、液晶ディスプレイまたはプラズマディスプレイ用のガラス基板、磁気ディスクまたは光ディスク用のガラスまたはセラミック基板、有機EL用ガラス基板、太陽電池用のガラスまたはシリコン基板、フレキシブル基板、プリント基板などである。
【0036】
基板加熱装置1は、処理チャンバ10と、ホットプレート20と、基板昇降機構30とを備える。ホットプレート20は、処理チャンバ10の内側に収容されている。ホットプレート20は、平坦な上面20aを有する。ホットプレート20内には、例えば電熱線などのヒータが内蔵されている。ヒータが駆動されることにより、上面20aが所定の温度まで昇温する。
【0037】
基板昇降機構30は、複数のリフトピン31と、昇降駆動部33とを有する。複数のリフトピン31は、鉛直方向に延びており、水平方向に分散して配置されている。複数のリフトピン31は、処理チャンバ10における筐体部40の底壁、および、ホットプレート20に設けられた幾つかの貫通孔に挿入されており、筐体部40の底壁およびホットプレート20を貫通している。昇降駆動部33は、複数のリフトピン31を一体的に上下に昇降させる。昇降駆動部33は、処理チャンバ10の外側かつ下側に配置されている。昇降駆動部33は、例えば、モータを含むラックアンドピニオン機構またはボールネジ機構などによって構成されている。
【0038】
基板9は、複数のリフトピン31の各上端部に支持される。昇降駆動部33は、複数のリフトピン31を、基板9がホットプレート20の上面20aに接近する近接位置と、近接位置よりも上側の上側位置との間で移動させる。昇降駆動部33の動作は、例えばコンピュータによって構成された制御部により制御される。
【0039】
処理チャンバ10の形状は、略直方体状である。処理チャンバ10は、筐体部40と、蓋部50とを有する。筐体部40は、上部に開口41を有している。筐体部40は、内側にホットプレート20を収容している。
【0040】
蓋部50は、筐体部40の上部の開口41を閉塞する略板状を有する。蓋部50は、筐体部40の上部に対して、取り外し可能である。蓋部50は、筐体部40の上部に、シール部43を介して載置される。シール部43は、筐体部40と蓋部50との間の隙間を塞ぐ部材である。
【0041】
蓋部50が筐体部40から取り外された場合、筐体部40の開口41を介して、筐体部40の内面が外部に露出した状態となる。この状態において、筐体部40の開口41から筐体部40内の部品交換または清掃などの各種メンテナンス作業が行われる。
【0042】
筐体部40は、(-Y)側面に搬入口45を有する。また、筐体部40は、開閉部材47を有する。開閉部材47は、モータなどによって構成される不図示の開閉駆動部によって、搬入口45を閉鎖する閉位置と搬入口45を開放する開位置との間で移動する。このような開閉機構の動作は、制御部により制御される。
【0043】
図2に示されるように、蓋部50は、内部に空洞を有する中空板状の構造を有する。蓋部50は、天板パネル51を有する。天板パネル51は、上面視において四角形状を有する板状部材である。天板パネル51は、断熱材により形成された断熱板511(
図3参照)を有する。断熱材としては、例えば、繊維系断熱材、発泡系断熱材、エアロゲル、ヒュームドシリカ、真空断熱材、またはこれらのうちいくつかを組み合わせたものを用いることができる。繊維系断熱材は、例えば、グラスウール、ロックウール、セルローズファイバー、炭化コルク、羊毛断熱材、またはウッドファイバーを含む。発泡系断熱材は、例えば、ウレタンフォーム、フェノールフォーム、ポリスチレンフォーム、ビーズ法ポリスチレン(EPS)、発泡ゴム(FEF)、または押し出し法ポリスチレン(XPS)を含む。エアロゲルは、例えば、シリアエアロゲル、カーボンエアロゲル、またはアルミナエアロゲルを含む。
【0044】
断熱板511の外表面の少なくとも一部は、繊維強化樹脂に覆われていてもよい。繊維強化樹脂は、樹脂と繊維を組み合わせた複合材料である。繊維強化樹脂としては、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、アラミド繊維強化プラスチック(AFRP)、自然繊維強化プラスチック、またはこれらを組み合わせたものを用いることができる。また、断熱板511の外表面に、同種または異種の複数の繊維強化樹脂が積層されていてもよい。断熱板511を繊維強化樹脂で覆うことにより、断熱板511の摩耗耐性を向上できる。これにより、断熱材の粉塵などが飛散することを低減できる。
【0045】
図3に示されるように、天板パネル51は、断熱板511と、断熱板511の上側に重ねられた化粧板513、断熱板511の下側に重ねられた裏面板515とを有する。化粧板513および裏面板515は、好ましくは、断熱板511よりも摩耗耐性が高い素材で形成されており、具体的には、カーボン板などである。なお、化粧板513および裏面板515は、なくてもよい。
【0046】
なお、天板パネル51は、詳細には、
図3に示されるように、4個のブロックを2行2列に並べた構成を有している。そして、各ブロックが、断熱板511に化粧板513および裏面板515を重ねた構造を有している。天板パネル51を複数のブロックに分割することによって、加熱により天板パネル51が膨張して変形したとしても、各ブロックが独立して膨張するため、局所的な変形にとどめることができる。したがって、天板パネル51全体の変形を軽減できる。また、熱膨張が起きたとしても、各ブロックの大きさに応じた応力が作用することになるため、全体的な応力を軽減できる。これにより、天板パネル51における、反りなどの変形、または亀裂などの損傷を低減できる。
【0047】
蓋部50は、さらに、補強パネル53を有する。補強パネル53は、底板部531と、複数(ここでは、5個)の第1リブ部533と、複数(ここでは、5個)の第2リブ部535と、外枠部537とを有する。底板部531は、上面視において四角形状を有する板状部材である。各第1リブ部533、各第2リブ部535および外枠部537は、底板部531の上面から上方に突出している。底板部531の下面は、好ましくは平坦面である。
【0048】
各第1リブ部533は、X方向(第1方向)に延びており、好ましくはX方向と平行に延びている。各第2リブ部535は、Y方向(第2方向)に延びており、好ましくはY方向と平行に延びている。すなわち、第2リブ部535は、第1リブ部533と交差しており、好ましくは、第1リブ部533と直交している。各第1リブ部533の両端部および各第2リブ部535の両端部は、外枠部537に連結している。
【0049】
外枠部537は、底板部531の周縁部の四辺から上方に起立した四角筒状を有する。外枠部537の上部は、各第1リブ部533の上部および各第2リブ部535の上部よりも上側に位置している。天板パネル51が補強パネル53に取り付けられた状態では、天板パネル51が外枠部537の内側にはめ込まれる。また、天板パネル51の下面は、各第1リブ部533の上部および各第2リブ部535の上部に当てられる。
【0050】
補強パネル53は、例えば、繊維強化樹脂によって一体に成形されている。すなわち、底板部531、第1リブ部533、第2リブ部535および537は、繊維強化樹脂によって一体に成形されている。繊維強化樹脂としては、炭素繊維強化樹脂を用いることができる。補強パネル53の成形手法としては、例えば、RTM(Resin Transfer Molding)成形を採用し得る。
【0051】
なお、補強パネル53が一体に成形されていることは必須ではない。すなわち、底板部531、第1リブ部533、第2リブ部535および外枠部537のうちいくつかが、残りの部分とは別の部材により構成されていてもよい。
【0052】
図4は、蓋部50の断面の一部を拡大して示す部分拡大図である。
図4に示されるように、蓋部50は、天板パネル51を補強パネル53に連結するための複数の固定部60を有する。各固定部60は、スペーサ61と、スペーサネジ63と、ビス65と、第1カラー67と、第2カラー69とを含む。
【0053】
スペーサ61は、Z方向における、天板パネル51と補強パネル53の底板部531との間の間隔を確保して、底板部531に対する天板パネル51の位置を適切に調整するために設けられている。スペーサ61は、補強パネル53の底板部531に対して、接着剤などを介して固定されている。また、スペーサ61は、第1リブ部533または第2リブ部535に接着剤などを介して固定されていてもよい。
【0054】
図示の例では、第1リブ部533の+Y側および-Y側のそれぞれに、スペーサ61が1個ずつ配置されている。ただし、スペーサ61の配置場所は、これに限定されるものではない。また、スペーサ61は、補強パネル53とは別の部材とされているが、例えば、補強パネル53とともに一体成形されていてもよい。
【0055】
スペーサ61は、天板パネル51(詳細には、裏面板515)と、補強パネル53の底板部531との間に位置しており、天板パネル51と底板部531とに挟まれている。Z方向に関して、スペーサ61の寸法は、第1リブ部533および第2リブ部535の寸法とほぼ同じである。
【0056】
スペーサネジ63は、頭部631とネジ部633とを有する。Z方向に関して、スペーサネジ63の頭部631は、化粧板513と裏面板515との間に位置する。Z方向に関して、スペーサネジ63の頭部631の寸法は、断熱板511の寸法とほぼ同じである。スペーサ61の上部には、スペーサネジ63のネジ部633かみ合うネジ穴が設けられている。スペーサネジ63のネジ部633は、裏面板515を貫通してスペーサ61のネジ穴に固定されている。頭部631は、断熱板511に設けられた貫通孔に挿入されている。スペーサネジ63は、Z方向に関して、化粧板513と裏面板515との間の間隔を確保する。これにより、裏面板515に対する化粧板513の位置が適切に調整される。また、Z方向に関して、裏面板515の位置は、スペーサネジ63の頭部631とスペーサ61とによって規制される。
【0057】
ビス65は、頭部651とネジ部653とを有する。スペーサネジ63の上部には、ビス65のネジ部653にかみ合うネジ穴が設けられている。ビス65のネジ部653は、化粧板513を貫通して、スペーサネジ63のネジ穴に固定されている。化粧板513は、ビス65の頭部651と、スペーサネジ63の頭部631との間に配置されている。
【0058】
第1カラー67は、上面視において円環状を有する部材である。第1カラー67は、Z方向に関して、スペーサネジ63の頭部631とスペーサ61との間に挟まれて固定されている。Z方向に関して、第1カラー67の厚さは、裏面板515の厚さよりもわずかに大きい。このため、スペーサネジ63がスペーサ61に固定された状態において、Z方向に関し、頭部631と裏面板515との間にわずかな隙間が形成される。
【0059】
第2カラー69は、上面視において円環状を有する部材である。第2カラー69は、Z方向に関して、ビス65の頭部651とスペーサネジ63の頭部631との間に挟まれて固定されている。Z方向に関して、第2カラー69の厚さは、化粧板513の厚さよりもわずかに大きい。このため、ビス65がスペーサネジ63に固定された状態において、Z方向に関し、頭部651と化粧板513との間にわずかな隙間が形成される。
【0060】
以上のように、本実施形態の基板加熱装置1は、ホットプレート20と、筐体部40と、蓋部50と備える。ホットプレート20は、基板9を加熱する。筐体部40は、上部に開口41を有している。筐体部40は、内側にホットプレート20を収容可能である。蓋部50は、筐体部40の上部の開口41を閉塞する。筐体部40は、天板としての天板パネル51と、補強部材としての補強パネル53とを有する。天板パネル51は、断熱材を含む。補強パネル53は、天板パネル51の下面に連結されたリブ部としての第1リブ部533および第2リブ部535を有する。第1リブ部533および第2リブ部535は、天板パネル51の下面から下方に突出し、且つ天板パネル51の下面と平行に延びる。この構成によれば、第1リブ部533および第2リブ部535により天板パネル51の剛性を高めることができる。したがって、蓋部50の断熱性を高く維持しつつ、蓋部50の熱反りを低減できる。
【0061】
第1リブ部533および第2リブ部535は、繊維強化樹脂を含む。この構成によれば、蓋部50の高重量化を回避しつつ、蓋部50の熱反りを低減できる。
【0062】
リブ部は、第1方向(X方向)に延びる第1リブ部533と、第1方向と交差する第2方向(ここでは、X方向と直交するY方向)に延びる第2リブ部535とを含む。この構成によれば、底板部531および第2リブ部535が交差していることにより、交差していない場合よりも天板パネル51の剛性をさらに高めることができる。
【0063】
補強パネル53は、底板部531を有する。底板部531は、第1リブ部533および第2リブ部535の下部に連結されている。底板部531は、天板パネル51とZ方向に間隔をあけつつ対向している。この構成よれば、第1リブ部533および第2リブ部535により天板パネル51と補強パネル53との間に空間を形成できる。これにより、空気断熱の効果を得ることができる。
【0064】
底板部531の下面は、平坦面である。この構成によれば、底板部531の下面に、基板9の塗布液からの昇華物が付着しても、拭き取りなどの清掃によって容易に除去できる。
【0065】
第1リブ部533、第2リブ部535および底板部531は、一体に成形されている。この構成によれば、部品同士の接合部をなくすことにより、補強パネル53の組み立て作業を容易にできる。また、部品同士の接合部をなくすことにより、蓋部50の軽量化を図りつつ、耐久性を高めることができる。
【0066】
蓋部50は、天板パネル51を補強パネル53に固定する固定部60をさらに有する。固定部60は、スペーサ61と、スペーサネジ63とを有する。スペーサ61は、天板パネル51と底板部531との間に位置する。スペーサネジ63は、スペーサ61の上部に設けられたネジ穴とかみ合う。スペーサネジ63は、天板パネル51をスペーサ61に連結する。この構成によれば、スペーサネジ63によって天板パネル51と補強パネル53の底板部531との間の間隔を確保しつつ、底板部531に対する天板パネル51の位置を適切に調整できる。
【0067】
天板パネル51は、断熱板511と、裏面板515とを有する。断熱板511は、断熱材を含む。裏面板515は、断熱板511の下側に位置する。裏面板515は、断熱板511よりも摩耗耐性が高い。この構成によれば、断熱板511から粉塵等が発生することを低減できる。
【0068】
固定部60は、第1カラー67をさらに有する。第1カラー67は、スペーサネジ63の頭部631とスペーサ61との間に固定される。第1カラー67は裏面板515よりも厚さが大きい。第1カラー67は、スペーサネジ63のネジ部633が挿入された環状を有する。スペーサネジ63の頭部631と裏面板515との間に隙間が形成される。この構成によれば、裏面板515がスペーサネジ63で固定されていないことにより、裏面板515が熱膨張しても、スペーサネジ63によって裏面板515の変形が抑制されないため、裏面板515内部の応力を軽減できる。したがって、裏面板515における、熱反りなどの変形、または亀裂などの損傷を低減できる。
【0069】
天板パネル51は、化粧板513をさらに有する。化粧板513は、断熱板511の上側に位置し、且つ断熱板511よりも摩耗耐性が高い。この構成によれば、断熱板511から粉塵等が発生することを低減できる。
【0070】
固定部60は、ビス65と、第2カラー69とを有する。ビス65は、スペーサネジ63の上部に設けられたネジ穴とかみ合う。第2カラー69は、ビス65の頭部651とスペーサネジ63の頭部631との間に固定される。第2カラー69の厚さは、化粧板513の厚さりも大きい。第2カラー69は、ビス65のネジ部653が挿入された環状を有する。ビス65の頭部651と化粧板513との間に隙間が形成される。この構成によれば、化粧板513がビス65で固定されていないことにより、化粧板513が熱膨張しても、ビス65によって化粧板513の変形が抑制されないため、化粧板513内部の応力を軽減できる。したがって、化粧板513における、熱反りなどの変形、または亀裂などの損傷を低減できる。
【0071】
<2. 第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。なお、以下の説明において、既に説明した要素と同様の機能を有する要素については、同符号またはアルファベット文字を追加した符号を付して、詳細な説明を省略する場合がある。
【0072】
図5は、第2実施形態に係る基板加熱装置1が備える蓋部50aを示す図である。蓋部50aは、蓋部50と同様に、天板パネル51および補強パネル53を備える。ただし、蓋部50aは、さらに、低膨張部材55を備える。低膨張部材55は、補強パネル53よりも下側に位置し、本実施形態では、補強パネル53の底板部531の下面に接合されている。
【0073】
低膨張部材55の線膨張係数は、補強パネル53の線膨張係数よりも低い。低膨張部材55としては、例えば、プリプレグ材(樹脂があらかじめ予備含浸された炭素繊維シート)を用いることができる。また、低膨張部材55は、樹脂などを含むコーティング剤を塗布して形成されたコーティング層であってもよい。コーティング剤は、底板部531の表面素材に応じて適宜選択される。例えば、補強パネル53が難燃繊維強化樹脂である場合、臭素化ビスフェノールA型エポキシアクリレート樹脂を含むコーティング剤を用いることができる。
【0074】
このように、蓋部50aの補強パネル53は、底板部531より下側に位置し、且つ補強パネル53よりも線膨張係数が低い低膨張部材55を有する。この構成によれば、底板部531の熱反りを積極的に低減できるため、蓋部50の熱反りを低減できる。
【0075】
この発明は詳細に説明されたが、上記の説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせたり、省略したりすることができる。
【符号の説明】
【0076】
1 基板加熱装置
9 基板
20 ホットプレート
40 筐体部
41 開口
43 シール部
50,50a 蓋部
51 天板パネル(天板)
53 補強パネル(補強部材)
55 低膨張部材(低膨張部)
60 固定部
61 スペーサ
63 スペーサネジ
65 ビス
67 第1カラー
69 第2カラー
511 断熱板
513 化粧板
515 裏面板
531 底板部
533 第1リブ部
535 第2リブ部
【要約】
【課題】基板加熱装置において、蓋部の断熱性を高く維持しつつ、蓋部の熱反りを低減することができる技術を提供する。
【解決手段】板加熱装置1は、ホットプレート20と、筐体部40と、蓋部50とを備える。ホットプレート20は、基板を加熱する。筐体部40は、上部に開口41を有する。筐体部40は、内側にホットプレート20を収容可能である。蓋部50は、筐体部40の上部の開口41を閉塞する。蓋部50は、天板パネル51と、補強パネル53とを有する。天板パネル51は、断熱材を含む。補強パネル53は、天板パネル51の下面に連結された第1リブ部533および第2リブ部535を有する。第1リブ部533および第2リブ部535は、天板パネル51の下面から下方に突出する。第1リブ部533および第2リブ部535は、天板パネル51の下面と平行に延びている。
【選択図】
図2