(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】車載電源装置および車載電源制御方法
(51)【国際特許分類】
B60R 16/033 20060101AFI20241126BHJP
B60R 16/03 20060101ALI20241126BHJP
H02J 1/00 20060101ALI20241126BHJP
H02J 7/34 20060101ALI20241126BHJP
H02J 9/06 20060101ALI20241126BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
B60R16/033 B
B60R16/03 A
H02J1/00 306K
H02J1/00 309C
H02J7/34 G
H02J7/34 B
H02J9/06 110
H02J7/00 P
(21)【出願番号】P 2023185617
(22)【出願日】2023-10-30
(62)【分割の表示】P 2021045682の分割
【原出願日】2021-03-19
【審査請求日】2023-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 健
(72)【発明者】
【氏名】松本 寛
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-062727(JP,A)
【文献】特開2017-184428(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0229676(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102018120430(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/033
B60R 16/03
H02J 1/00
H02J 7/34
H02J 9/06
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電源から第1負荷へ電力を供給する第1系統と、
第2電源から第2負荷へ電力を供給する第2系統と、
前記第1系統と前記第2系統とを接続する第1スイッチと、
前記第1系統または前記第2系統の電圧を、所定電圧と比較することで、前記第1系統および前記第2系統のうち一方の系統に電源失陥が発生したことを検出し、前記電源失陥の発生が検出されない場合には前記第1スイッチをオンにする正常状態とし、前記電源失陥の発生が検出された場合には前記第1スイッチをオフにするフェイルセーフ状態とする制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記第1スイッチが前記フェイルセーフ状態にされた後に、各系統の電圧を前記所定電圧と比較することで、系統毎に系統電源失陥の発生の有無をそれぞれ検出し、
前記第1スイッチを前記フェイルセーフ状態にした後に、
各系統の電圧がともに前記所定電圧以上となり各系統で前記系統電源失陥の発生が検出されない場合、前記第1スイッチを前記正常状態に
復帰させる、
ことを特徴とする車載電源装置。
【請求項2】
前記第2電源と前記第2負荷とを接続する第2スイッチ
を備え、
前記制御部は、前記フェイルセーフ状態において前記第2スイッチをオンにし、
前記第1スイッチが前記フェイルセーフ状態にされた後に、前記第1系統の電圧が
所定時間連続して前記所定電圧より低い場合、前記第1系統における系統電源失陥の発生を検出し、
前記第1スイッチが前記フェイルセーフ状態にされ、かつ前記第2スイッチがオンにされた後に、前記第2系統の電圧が
所定時間連続して前記所定電圧より低い場合、前記第2系統における系統電源失陥の発生を検出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の車載電源装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第1スイッチが前記フェイルセーフ状態にされた後に、前記第1系統の電圧が
所定時間連続して前記所定電圧以上である場合、前記第1系統における系統電源失陥の発生を検出せず、
前記第1スイッチが前記フェイルセーフ状態にされ、かつ前記第2スイッチがオンにされた後に、前記第2系統の電圧が
所定時間連続して前記所定電圧以上である場合、前記第2系統における系統電源失陥の発生を検出しない、
ことを特徴とする請求項2に記載の車載電源装置。
【請求項4】
第1電源から第1負荷へ電力を供給する第1系統と、
第2電源から第2負荷へ電力を供給する第2系統と、
前記第1系統と前記第2系統とを接続する第1スイッチと、
前記第1系統または前記第2系統の電圧が閾値電圧より低いことを検出すると前記第1スイッチをオフし、その後、前記第1系統および前記第2系統の電圧が
ともに前記閾値電圧よりも高いことを検出すると前記第1スイッチをオンに
復帰させる制御部と、
を備える、車載電源装置。
【請求項5】
第1電源から第1負荷へ電力を供給する第1系統、および第2電源から第2負荷へ電力を供給する第2系統のうち一方の系統に電源失陥が発生したことを前記第1系統または前記第2系統の電圧を、所定電圧と比較することで、検出する異常検出工程と、
前記電源失陥の発生が検出されない場合には前記第1系統と前記第2系統とを接続する第1スイッチをオンにする正常状態とし、前記電源失陥の発生が検出された場合には前記第1スイッチをオフにするフェイルセーフ状態とするスイッチ設定工程と、
を含み、
前記異常検出工程は、前記第1スイッチが前記フェイルセーフ状態にされた後に、各系統の電圧を前記所定電圧と比較することで、系統毎に系統電源失陥の発生の有無をそれぞれ検出し、
前記スイッチ設定工程は、前記第1スイッチを前記フェイルセーフ状態にした後に、
各系統の電圧がともに前記所定電圧以上となり各系統で前記系統電源失陥の発生が検出されない場合、前記第1スイッチを前記正常状態に
復帰させる
ことを特徴とする車載電源制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、車載電源装置および車載電源制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の走行中に電源失陥が発生しても、安全な場所まで退避走行させて停車させることができるように、第1電源と第2電源とを備え、一方の電源系統に電源失陥が発生した場合に、他方の電源から車載機器(負荷)へ電力を供給する冗長電源システムがある。
【0003】
例えば、冗長電源システムは、第1電源から第1負荷へ電力を供給する第1系統と、第2電源から第1負荷と同一の機能を備える第2負荷へ電力を供給する第2系統とを備える。そして、冗長電源システムは、第1系統および第2系統のうち一方の系統に電源失陥が発生した場合に、他方の系統によってフェイルセーフ制御を行う(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、冗長電源システムでは、過負荷状態による急激な電流の増加または電圧の低下を電源失陥と誤検出した場合でもフェイルセーフ制御に移行してしまう。電源失陥と誤検出した場合は、誤検出される前の電源状態に復帰させることが望ましいが、安全性を考慮する必要がある。
【0006】
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、電源失陥が誤検出された後、安全に誤検出前の電源状態に復帰させることができる車載電源装置および車載電源制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の一態様に係る車載電源装置は、第1系統と、第2系統と、第1スイッチと、制御部と、を備える。第1系統は、第1電源から第1負荷へ電力を供給する。第2系統は、第2電源から第2負荷へ電力を供給する。第1スイッチは、第1系統と第2系統とを接続する。制御部は、第1系統または第2系統の電圧を、所定電圧と比較することで、第1系統および第2系統のうち一方の系統に電源失陥が発生したことを検出し、電源失陥の発生が検出されない場合には第1スイッチをオンにする正常状態とし、電源失陥の発生が検出された場合には第1スイッチをオフにするフェイルセーフ状態とする。制御部は、第1スイッチがフェイルセーフ状態にされた後に、各系統の電圧を前記所定電圧と比較することで、系統毎に系統電源失陥の発生の有無をそれぞれ検出し、第1スイッチをフェイルセーフ状態にした後に、各系統で系統電源失陥の発生が検出されない場合、第1スイッチを正常状態にする。
【発明の効果】
【0008】
実施形態の一態様に係る車載電源装置および車載電源制御方法は、電源失陥が誤検出された後、安全に誤検出前の電源状態に復帰させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係る車載電源装置の構成例を示す説明図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る車載電源装置の動作例を示す説明図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る車載電源装置の動作例を示す説明図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る車載電源装置の動作例を示す説明図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る車載電源装置の動作例を示す説明図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る車載電源装置の動作例を示す説明図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る車載電源装置の動作例を示す説明図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係るスイッチ切替処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、車載電源装置および車載電源制御方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。以下では、自動運転機能を備える車両に搭載されて負荷へ電力を供給する車載電源装置を例に挙げて説明するが、実施形態に係る車載電源装置は、自動運転機能を備えていない車両に搭載されてもよい。
【0011】
図1は、実施形態に係る車載電源装置1の構成例を示す説明図である。
図1に示すように、実施形態に係る車載電源装置1は、第1負荷101と、第2負荷102と、自動運転制御装置104とに接続される。
【0012】
第1負荷101は、自動運転中に動作するステアリングモータ、電動ブレーキ装置、車載カメラ、およびレーダ等を含む。また、第1負荷101は、エアコン、オーディオ、ビデオ、各種ライト等の一般負荷も含む。
【0013】
第2負荷102は、少なくとも、ステアリングモータ、電動ブレーキ装置、車載カメラ、およびレーダ等の自動運転中に動作する装置を含む。第1負荷101および第2負荷102は、車載電源装置1から供給される電力によって動作する。
【0014】
自動運転制御装置104は、第1負荷101および第2負荷102を動作させて、車両を自動運転制御する制御装置である。
【0015】
車載電源装置1は、外部に設けられた第1電源10から電力が供給される。車載電源装置1は、外部に設けられた第1電源10から供給された電力を、第1負荷101、および第2負荷102に供給する。車載電源装置1は、第2電源20と、制御部30と、充放電部40と、第1スイッチ41と、第2スイッチ42とを備える。さらに、車載電源装置1は、電圧センサ51、53を備える。
【0016】
第1電源10は、DC/DCコンバータ(以下、「DC/DC11」と記載する。)と、鉛バッテリ(以下、「PbB12」と記載する。)とを含む。なお、第1電源10の電池は、PbB12以外の任意の2次電池であってもよい。
【0017】
DC/DC11は、車両の回生エネルギーを電力に変換して発電する発電機に接続され、発電機から入力される入力電圧を変圧して出力する。発電機は、車両がエンジンを備える場合、エンジンの回転力を電力に変換して発電するオルタネータであってもよい。DC/DC11は、PbB12の充電、第1負荷101への電力供給、第2負荷102への電力供給、および後述する第2電源20の充電を行う。
【0018】
第1電源10は、第1負荷101と、第1スイッチ41とに接続される。第1電源10と第1スイッチ41との間には、電圧センサ51が接続される。
【0019】
第2電源20は、例えば、リチウムイオンバッテリ(以下、「LiB21」と記載する。)を含む。第2電源20は、低温時でも必要最低限の電圧が供給できるように、第1電源10よりも高い電圧となるバッテリが選定される。第2電源20は、第1電源10による電力供給ができなくなった場合のバックアップ用電源である。
【0020】
第2電源20は、第2スイッチ42を介して充放電部40に接続される。つまり、第2スイッチ42は、第2電源20と充放電部40とを接続切断可能に接続する。
【0021】
充放電部40は、例えば、DC/DCコンバータである。充放電部40は、第1スイッチ41と第2負荷102とに接続される。充放電部40は、第1電源10の電圧を昇圧して第2電源20を充電し、充電が完了したら停止状態になる。また、充放電部40は、第2電源20の電圧を降圧して第2負荷102へ電力を供給する。
【0022】
車載電源装置1は、第1電源10から第1負荷101へ電力を供給する第1系統100と、第2電源20から第2負荷102へ電力を供給する第2系統200とを備える。第1スイッチ41は、第1系統100と第2系統200とを接続切断可能に接続する。第2スイッチ42は、第2電源20と第2負荷102とを接続切断可能に接続する。
【0023】
このように、車載電源装置1は、第1系統100と第2系統200とを備える。これにより、車載電源装置1は、第1系統100および第2系統200のうち、一方の系統に電源失陥が発生しても、他方の系統によって電力を供給することにより、車両を安全な場所まで退避走行させて停車させることができる。なお、電源失陥の発生とは、第1系統100、または第2系統200において地絡が発生することを意味する。電源失陥と同様の現象は、第1負荷101、または第2負荷102が過負荷状態となった場合にも生じうる。
【0024】
制御部30は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを有するマイクロコンピュータや各種の回路を含む。制御部30は、CPUがROMに記憶されたプログラムを、RAMを作業領域として使用して実行することにより機能する異常検出部31と、スイッチ設定部32とを備える。
【0025】
なお、制御部30が備える異常検出部31、およびスイッチ設定部32は、一部または全部がASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成されてもよい。
【0026】
制御部30が備える異常検出部31、およびスイッチ設定部32は、それぞれ以下に説明する情報処理の作用を実現または実行する。なお、制御部30の内部構成は、
図1に示した構成に限られず、後述する情報処理を行う構成であれば他の構成であってもよい。
【0027】
異常検出部31は、第1系統100および第2系統200のうち一方の系統に電源失陥が発生したことを検出する。異常検出部31は、第1スイッチ41がオンであり、第2スイッチ42がオフである正常状態時に、電圧センサ51、53によって検出された電圧が正常範囲であるか否かを判定する。正常範囲とは、第1系統100、および第2系統200において電源失陥が発生していない場合に、電圧センサ51、53によって検出される電圧が示す範囲である。例えば、正常範囲は、電圧センサ51、53によって検出される電圧が、予め設定された所定電圧以上となる範囲である。
【0028】
異常検出部31は、正常状態時に、電圧センサ51、53によって検出された電圧が正常範囲ではない場合、例えば、電圧が所定電圧よりも小さい場合に、第1系統100および第2系統200のうち一方の系統に電源失陥が発生したことを検出する。
【0029】
異常検出部31は、正常状態時に、電圧センサ51、53によって検出された電圧が正常範囲である場合、第1系統100および第2系統200に電源失陥が発生していないことを検出する。
【0030】
異常検出部31は、第1系統100および第2系統200のうち一方の系統に電源失陥が発生し、第1スイッチ41の状態がフェイルセーフ状態である場合、系統毎に電源失陥(以下、「系統電源失陥」と称する。)の発生の有無をそれぞれ検出する。フェイルセーフ状態は、第1スイッチ41がオフにされた状態である。
【0031】
具体的には、異常検出部31は、第1系統100および第2系統200のうち一方の系統に電源失陥が発生して第1スイッチ41がオフにされた直後のプレ遮断状態において、系統電源失陥の発生の有無を検出する。プレ遮断状態とは、フェイルセーフ状態のうち、第1スイッチ41がオフにされ、第2スイッチ42がオンにされた状態である。
【0032】
異常検出部31は、プレ遮断状態において、電圧センサ51によって検出された電圧が正常範囲であるか否かを判定する。異常検出部31は、プレ遮断状態において、電圧センサ51によって検出された電圧が正常範囲ではない場合、例えば、電圧センサ51によって検出された電圧が、所定電圧よりも小さい場合、第1系統100において系統電源失陥が発生していると判定する。異常検出部31は、第1系統100における系統電源失陥(地絡)の発生を検出する。
【0033】
異常検出部31は、プレ遮断状態において、電圧センサ51によって検出された電圧が正常範囲である場合、例えば、電圧センサ51によって検出された電圧が所定電圧以上である場合、第1系統100において系統電源失陥が発生していないと判定する。異常検出部31は、第1系統100において系統電源失陥(地絡)が発生していないことを検出する。
【0034】
異常検出部31は、プレ遮断状態において、電圧センサ53によって検出された電圧が正常範囲であるか否かを判定する。異常検出部31は、プレ遮断状態において、電圧センサ53によって検出された電圧が正常範囲ではない場合、例えば、電圧センサ53によって検出された電圧が、所定電圧よりも小さい場合、第2系統200において系統電源失陥が発生していると判定する。異常検出部31は、第2系統200における系統電源失陥(地絡)の発生を検出する。
【0035】
異常検出部31は、プレ遮断状態において、電圧センサ53によって検出された電圧が正常範囲である場合、例えば、電圧センサ53によって検出された電圧が所定電圧以上である場合、第2系統200において系統電源失陥が発生していないと判定する。異常検出部31は、第2系統200において系統電源失陥(地絡)が発生していないことを検出する。
【0036】
異常検出部31は、プレ遮断状態において、第1系統100、および第2系統200において系統電源失陥が発生していない場合には、電源失陥から復帰したと判定する。すなわち、異常検出部31は、電源失陥の検出が、第1負荷101、または第2負荷102が過負荷状態となったことによる誤検出であると判定する。
【0037】
スイッチ設定部32は、第1スイッチ41をオン、またはオフに設定する。スイッチ設定部32は、第2スイッチ42をオン、またはオフに設定する。スイッチ設定部32は、異常検出部31によって電源失陥が検出されない場合、第1スイッチ41をオンにし、第2スイッチ42をオフにし、各スイッチの状態を正常状態にする。なお、正常状態時において、第2電源20の充電量(SOC(State of Charge))が予め設定された所定量以下になると、スイッチ設定部32は、第2スイッチ42をオンにする。これにより、第2電源20が充電される。
【0038】
スイッチ設定部32は、異常検出部31によって電源失陥が検出された場合、第1スイッチ41をオフにし、第1スイッチ41の状態をフェイルセーフ状態にする。また、スイッチ設定部32は、異常検出部31によって電源失陥が検出され、第1スイッチ41の状態をフェイルセーフ状態にした後、第2スイッチ42をオンにし、各スイッチの状態をプレ遮断状態にする。
【0039】
スイッチ設定部32は、プレ遮断状態において、第1系統100、または第2系統200において系統電源失陥の発生が検出された場合には、各スイッチの状態を本遮断状態にする。本遮断状態とは、フェイルセーフ状態において、系統電源失陥の発生が検出され、電源失陥が誤検出ではないと判定された場合の各スイッチの状態である。
【0040】
具体的には、スイッチ設定部32は、第1系統100において系統電源失陥の発生が検出された場合には、第1スイッチ41をオフにし、第2スイッチ42をオンにして、各スイッチの状態を第1本遮断状態にする。これにより、第2電源20から第2系統200を介して第2負荷102に電力が供給され、第2系統200による電力供給によって退避走行制御が行われる。
【0041】
また、スイッチ設定部32は、第2系統200において系統電源失陥の発生が検出された場合には、第1スイッチ41をオフにし、かつ第2スイッチ42をオフにして、各スイッチの状態を第2本遮断状態にする。これにより、第1電源10から第1系統100を介して第1負荷101に電力が供給され、第1系統100による電力供給によって退避走行制御が行われる。
【0042】
スイッチ設定部32は、プレ遮断状態において、第1系統100において系統電源失陥の発生が検出されず、かつ第2系統200において系統電源失陥の発生が検出されない場合、各スイッチの状態を正常状態にする。スイッチ設定部32は、プレ遮断状態において、各系統において系統電源失陥の発生が検出されない場合、第1スイッチ41をオンにし、かつその後第2スイッチ42をオフにし、各スイッチの状態を、フェイルセーフ状態から正常状態に戻す。正常状態に戻す際、第1スイッチ41をオンにし、その後第2スイッチ42をオフにすることで、第2負荷102への電源の瞬断を防止することができる。
【0043】
次に、車載電源装置1の動作例について
図2~
図7を参照し説明する。
【0044】
図2~
図7は、実施形態に係る車載電源装置1の動作例を示す説明図である。
図2に示すように、車載電源装置1は、電源失陥が検出されない場合には、第1スイッチ41をオンにし、かつ第2スイッチ42をオフにして、各スイッチの状態を正常状態とする。これにより、第1電源10から第1負荷101および第2負荷102へ電力が供給される。例えば、第1負荷101および第2負荷102のそれぞれから50%ずつのトルクが出力される。また、第2電源20から第2負荷102へ電力が供給されない。
【0045】
車載電源装置1は、第1系統100または第2系統200で系統電源失陥の発生が検出された場合、フェイルセーフ制御を行う。フェイルセーフ制御は、系統電源失陥が発生していない方の系統に接続されている第1負荷101または第2負荷102によって、系統電源失陥の発生が検出されない正常時よりも出力、および機能を制限する制御である。例えば、フェイルセーフ制御では、50%のトルクが出力される。これにより、車両は、第1系統100または第2系統200で系統電源失陥が発生しても、退避走行を行うことができる。
【0046】
また、自動運転制御装置104は、自動運転中に、系統電源失陥の発生が検出された場合には、系統電源失陥が発生していない方の系統に接続されている第1負荷101または第2負荷102を用いて、路側帯等の停車可能な安全な場所まで退避走行制御を行う。そして自動運転制御装置104は、退避走行して停車してから、自動運転制御を禁止する。これにより、系統電源失陥中の自動運転による事故を防止することができる。
【0047】
以下、第1系統100または第2系統200で電源失陥の発生が検出された場合の動作例について説明する。
【0048】
例えば、車載電源装置1では、
図3に示すように、第1系統100に地絡110が発生する場合がある。車載電源装置1では、第1系統100に地絡110が発生すると、第1電源10から地絡点へ過電流が流れ、第1系統100および第2系統200の電圧が急激に低下し、電源失陥の発生が検出される。
【0049】
また、車載電源装置1では、
図4に示すように、第2系統200に地絡110が発生する場合がある。車載電源装置1では、第2系統200に地絡110が発生すると、第1電源10から地絡点へ過電流が流れ、第1系統100および第2系統200の電圧が急激に低下し、電源失陥の発生が検出される。
【0050】
また、車載電源装置1では、第1負荷101、または第2負荷102が過負荷状態になった場合にも、第1系統100および第2系統200の電圧が急激に低下することがある。そのため、車載電源装置1では、第1負荷101、または第2負荷102が過負荷状態になった場合にも、電源失陥の発生が検出される。
【0051】
車載電源装置1は、第1系統100、または第2系統200で電源失陥の発生が検出された場合、
図5に示すように、第1スイッチ41をオフにし、第1スイッチ41をフェイルセーフ状態にする。また、車載電源装置1は、第2スイッチ42をオンにし、各スイッチの状態をプレ遮断状態にする。これによって、第2系統200によって第2電源20から第2負荷102に電力が供給される。
【0052】
車載電源装置1は、プレ遮断状態において、電圧センサ51によって第1系統100における電圧を検出する。車載電源装置1は、検出した電圧が正常範囲ではない場合、第1系統100において系統電源失陥(地絡110)が発生していると判定し、第1系統100における系統電源失陥の発生を検出する。そして、車載電源装置1は、
図6に示すように、第1スイッチ41をオフにし、かつ第2スイッチ42をオンにして、各スイッチの状態を第1本遮断状態にする。これにより、第2電源20から第2系統200を介して第2負荷102に電力が供給され、第2負荷102を用いたフェイルセーフ制御が実行される。
【0053】
車載電源装置1は、プレ遮断状態において、電圧センサ53によって第2系統200における電圧を検出する。車載電源装置1は、検出した電圧が正常範囲ではない場合、第2系統200において系統電源失陥(地絡110)が発生していると判定し、第2系統200における系統電源失陥の発生を検出する。そして、車載電源装置1は、
図7に示すように、第1スイッチ41をオフにし、かつ第2スイッチ42をオフにする。これにより、第2電源20からの電力供給が停止され、第1電源10から第1系統100を介して第1負荷101に電力が供給され、第1負荷101を用いたフェイルセーフ制御が実行される。
【0054】
車載電源装置1は、プレ遮断状態において、第1系統100、および第2系統200に系統電源失陥が発生していないと判定した場合、電源失陥が誤検出であると判定する。車載電源装置1は、第1負荷101、または第2負荷102が過負荷状態になることで、電圧が一時的に低下し、電源失陥が検出されたと判定する。車載電源装置1は、第1スイッチ41をオンにし、かつその後第2スイッチ42をオフにし、各スイッチの状態を、プレ遮断状態から
図2に示す正常状態に戻す。正常状態に戻す際、第1スイッチ41をオンにし、その後第2スイッチ42をオフにすることで、第2負荷102への電源の瞬断を防止することができる。
【0055】
次に、実施形態に係るスイッチ切替処理について
図8を参照し説明する。
図8は、実施形態に係るスイッチ切替処理を説明するフローチャートである。
【0056】
車載電源装置1は、第1系統100、または第2系統200に電源失陥の発生が検出された否かを判定する(S100)。車載電源装置1は、第1系統100、および第2系統200に電源失陥の発生が検出されない場合(S100:No)、今回の処理を終了する。
【0057】
車載電源装置1は、第1系統100、または第2系統200に電源失陥の発生が検出された場合(S100:Yes)、各スイッチの状態をプレ遮断状態する(S101)。具体的には、車載電源装置1は、第1スイッチ41をオフにして第1スイッチ41の状態をフェイルセーフ状態にし、かつ第2スイッチ42をオンにして、各スイッチの状態をプレ遮断状態にする。
【0058】
車載電源装置1は、第1系統100において系統電源失陥の発生が検出されたか否かを判定する(S102)。車載電源装置1は、第1系統100において系統電源失陥の発生が検出され、第1系統100において地絡が発生している場合(S102:Yes)、各スイッチの状態を第1本遮断状態にする(S103)。具体的には、車載電源装置1は、第1スイッチ41をオフにし、かつ第2スイッチ42をオンにする。
【0059】
車載電源装置1は、第1系統100において系統電源失陥の発生が検出されない場合(S102:No)、第2系統200において系統電源失陥の発生が検出されたか否かを判定する(S104)。
【0060】
車載電源装置1は、第2系統200において系統電源失陥の発生が検出され、第2系統200において地絡が発生している場合(S104:Yes)、各スイッチの状態を第2本遮断状態にする(S105)。具体的には、車載電源装置1は、第1スイッチ41をオフにし、かつ第2スイッチ42をオフにする。
【0061】
車載電源装置1は、第2系統200において系統電源失陥の発生が検出されない場合(S104:No)、すなわち、第1系統100、および第2系統200において系統電源失陥の発生が検出されない場合、各スイッチの状態を正常状態にする(S106)。具体的には、車載電源装置1は、第1スイッチ41をオンにし、第2スイッチ42をオフにする。
【0062】
なお、第1系統100における系統電源失陥の発生判定処理(S102)と、第2系統200における系統電源失陥の発生判定処理(S104)との処理順番は、逆であってもよい。
【0063】
実施形態に係る車載電源装置1は、第1系統100と、第2系統200と、第1スイッチ41と、第2スイッチ42と、異常検出部31と、スイッチ設定部32とを備える。第1系統100は、第1電源10から第1負荷101へ電力を供給する。第2系統200は、第2電源20から第2負荷102へ電力を供給する。第1スイッチ41は、第1系統100と第2系統200とを接続する。第2スイッチ42は、第2電源20と第2負荷102とを接続する。異常検出部31は、第1系統100および第2系統200のうち一方の系統に電源失陥が発生したことを検出する。スイッチ設定部32は、電源失陥の発生が検出されない場合には第1スイッチ41をオンにし、かつ第2スイッチ42をオフにする正常状態とし、電源失陥の発生が検出された場合には第1スイッチ41をオフにするフェイルセーフ状態とする。異常検出部31は、第1スイッチ41がフェイルセーフ状態にされた後に、系統毎に系統電源失陥の発生の有無をそれぞれ検出する。スイッチ設定部32は、第1スイッチ41をフェイルセーフ状態にした後に、各系統で系統電源失陥の発生が検出されない場合、各スイッチを正常状態にする。
【0064】
これにより、電源失陥の発生が検出された後に、各系統において系統電源失陥が検出されない場合に、各スイッチが正常状態に復帰する。そのため、車載電源装置1は、各系統における系統電源失陥が発生していないことを確認した後に、各スイッチを正常状態に戻すため、各スイッチを正常状態に戻す際の安全性を向上させることができる。また、例えば、検出された電源失陥が、第1負荷101、または第2負荷102の過負荷状態に起因するものであり、誤検出された電源失陥である場合に、車載電源装置1は、各スイッチを正常状態に戻す。そのため、車載電源装置1は、電源失陥が誤検出された場合に、走行機能が制限されない通常の走行を実行させることができる。
【0065】
スイッチ設定部32は、フェイルセーフ状態において第2スイッチ42をオンにする。異常検出部31は、第1スイッチ41がフェイルセーフ状態にされた後に、第1系統100の電圧が正常範囲ではない場合、第1系統100における系統電源失陥の発生を検出する。異常検出部31は、第1スイッチ41がフェイルセーフ状態にされ、かつ第2スイッチ42がオンにされた後に、第2系統200の電圧が正常範囲ではない場合、第2系統200における系統電源失陥の発生を検出する。
【0066】
これにより、車載電源装置1は、各系統において系統電源失陥の発生をそれぞれ検出することができる。そのため、車載電源装置1は、各系統において系統電源失陥の発生を正確に検出することができる。
【0067】
異常検出部31は、第1スイッチ41がフェイルセーフ状態にされた後に、第1系統100の電圧が正常範囲である場合、第1系統100における系統電源失陥の発生を検出しない。異常検出部31は、第1スイッチ41がフェイルセーフ状態にされ、かつ第2スイッチ42がオンにされた後に、第2系統200の電圧が正常範囲である場合、第2系統200における系統電源失陥の発生を検出しない。
【0068】
これにより、車載電源装置1は、各系統において系統電源失陥が発生していないことをそれぞれ検出することができる。そのため、車載電源装置1は、各スイッチを正常状態に戻す際の安全性を向上させることができる。
【0069】
変形例に係る車載電源装置1は、プレ遮断状態において、電圧センサ51によって検出された電圧が、所定時間連続して正常範囲ではない場合に、第1系統100において系統電源失陥が発生していると判定してもよい。変形例に係る車載電源装置1は、プレ遮断状態において、電圧センサ51によって検出された電圧が、所定時間連続して正常範囲である場合に、第1系統100において系統電源失陥が発生していないと判定してもよい。
【0070】
また、変形例に係る車載電源装置1は、プレ遮断状態において、電圧センサ53によって検出された電圧が、所定時間連続して正常範囲ではない場合、第2系統200において系統電源失陥が発生していると判定してもよい。また、変形例に係る車載電源装置1は、プレ遮断状態において、電圧センサ53によって検出された電圧が、所定時間連続して正常範囲である場合に、第2系統200において系統電源失陥が発生していないと判定してもよい。
【0071】
所定時間は、予め設定された時間であり、各系統において系統電源失陥の有無を正確に判定可能となる時間である。所定時間は、系統毎に設定されてもよい。
【0072】
変形例に係る車載電源装置1は、プレ遮断状態において、電圧センサ51、53によって検出される電圧が正常範囲である時間、または電圧センサ51、53によって検出される電圧が正常範囲ではない時間をカウントする。変形例に係る車載電源装置1は、カウントした時間が所定時間になる前に、所定電圧を跨いで電圧が変化した場合には、カウントした時間をリセットする。これにより、変形例に係る車載電源装置1は、各系統における系統電源失陥の発生の有無を正確に検出することができる。
【0073】
変形例に係る車載電源装置1は、電流センサによって各系統に流れる電流を検出し、検出した電流に基づいて、電源失陥、および系統電源失陥の発生の有無を検出してもよい。電流センサによって地絡が発生すると、電流センサによって検出される電流が急激に大きくなる。変形例に係る車載電源装置1は、電流センサによって検出された電流が、予め設定された所定電流以上である場合に、電源失陥、または系統電源失陥の発生を検出する。
【0074】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 車載電源装置
10 第1電源
20 第2電源
30 制御部
31 異常検出部
32 スイッチ設定部
41 第1スイッチ
42 第2スイッチ
51、53 電圧センサ
100 第1系統
200 第2系統
101 第1負荷
102 第2負荷