(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】銅系水素化触媒の調製方法、それで調製された触媒及び使用
(51)【国際特許分類】
B01J 37/02 20060101AFI20241126BHJP
B01J 23/78 20060101ALI20241126BHJP
B01J 35/36 20240101ALI20241126BHJP
B01J 37/06 20060101ALI20241126BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20241126BHJP
C07C 29/145 20060101ALI20241126BHJP
C07C 33/22 20060101ALI20241126BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20241126BHJP
【FI】
B01J37/02 101A
B01J23/78 Z
B01J35/36
B01J37/06
B01J37/08
C07C29/145
C07C33/22
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2023501600
(86)(22)【出願日】2021-03-11
(86)【国際出願番号】 CN2021080300
(87)【国際公開番号】W WO2022012061
(87)【国際公開日】2022-01-20
【審査請求日】2023-01-11
(31)【優先権主張番号】202010666841.1
(32)【優先日】2020-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521147204
【氏名又は名称】万華化学集団股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】WANHUA CHEMICAL GROUP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 17, Tianshan Rd, YEDA, Yantai 264000 Shandong, China
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】沙宇
(72)【発明者】
【氏名】安麗艶
(72)【発明者】
【氏名】▲ヂァン▼吉山
(72)【発明者】
【氏名】李作金
(72)【発明者】
【氏名】于海波
(72)【発明者】
【氏名】燕宸
(72)【発明者】
【氏名】孫康
(72)【発明者】
【氏名】黎源
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109092310(CN,A)
【文献】欧州特許出願公開第01288188(EP,A1)
【文献】特表昭63-503460(JP,A)
【文献】特開平05-208137(JP,A)
【文献】特開昭48-067184(JP,A)
【文献】特開平09-136849(JP,A)
【文献】特開2012-030178(JP,A)
【文献】国際公開第2019/131270(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/109629(WO,A1)
【文献】Xiaoju WANG,non-official translation: Method for Preparing Palladium on Carbon Catalysts,Chemical Enterprise Management,2016年02月29日,p.24
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 37/02
B01J 23/78
B01J 35/36
B01J 37/06
B01J 37/08
C07C 29/145
C07C 33/22
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅系水素化触媒の調製方法であって、
活性炭を酸液に浸漬処理してから、分離、洗浄するステップ(1)と、
ステップ(1)で処理した活性炭をアルカリ液に浸漬処理してから、分離、洗浄、乾燥するステップ(2)と、
ステップ(2)で処理した活性炭を銅塩とリチウム塩を含むエタノール水混合溶液に加えて浸漬してエージングしてから、分離、洗浄、乾燥及び焼成によって銅系水素化触媒を得るステップ(3)とを含み、
前記アルカリ液は、アンモニウム塩を含むアルカリ性水溶液であり、
前記銅系水素化触媒は、アセトフェノンの水素化反応に用いられる、調製方法。
【請求項2】
ステップ(1)において、前記酸液は酸の水溶液であり、濃度は0.5~2mol/Lであり、前記酸は硝酸、塩酸又は硫酸から選ばれる1種又は複数種であり、
前記活性炭は椰子殻炭又は木質炭のいずれか1種であり、そのヨウ素価は600~1500であり、粒度は4~60メッシュである、請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
ステップ(1)において、前記酸液の濃度は0.8~1.5mol/Lであり、前記酸は硝酸から選ばれ、
前記活性炭のヨウ素価は800~1300であり、前記活性炭の粒度は8~16メッシュである、請求項1または2に記載の調製方法。
【請求項4】
ステップ(1)において、前記浸漬処理は、浸漬温度が80~140℃であり、時間が2~8hである、請求項1~3のいずれか一項に記載の調製方法。
【請求項5】
ステップ(1)において、前記浸漬処理は、浸漬温度が90~130℃であり、時間が3~6hである、請求項1~4のいずれか一項に記載の調製方法。
【請求項6】
ステップ(2)において、前記アルカリ液の濃度は2~10wt%であり、前記アンモニウム塩は炭酸アンモニウム及び/又は炭酸水素アンモニウムから選ばれる、請求項1~5のいずれか一項に記載の調製方法。
【請求項7】
ステップ(2)において、前記アルカリ液の濃度は3~8wt%である、請求項1~6のいずれか一項に記載の調製方法。
【請求項8】
ステップ(2)において、前記浸漬処理は、浸漬温度が20~60℃であり、浸漬時間が2~8hである、請求項1~7のいずれか一項に記載の調製方法。
【請求項9】
ステップ(2)において、前記浸漬処理は、浸漬温度が30~50℃であり、浸漬時間が3~6hである、請求項1~8のいずれか一項に記載の調製方法。
【請求項10】
ステップ(3)において、前記銅塩とリチウム塩を含むエタノール水混合溶液は、混合溶液の総重量で、銅塩濃度は10~45wt%であり、リチウム塩濃度は10~40wt%であり、エタノール濃度は2~8wt%であり、
前記銅塩は硝酸銅、塩化銅又は酢酸銅の1種又は複数種であり、
前記リチウム塩は硝酸リチウム又は塩化リチウムの1種又は2種である、請求項1~9のいずれか一項に記載の調製方法。
【請求項11】
ステップ(3)において、前記浸漬・エージング過程は、温度が20~60℃であり、時間が2~8hであり、
前記乾燥は、温度が90~150℃であり、時間が2~8hであり、
前記焼成は、温度が300~600℃であり、時間が2~8hである、請求項1~10のいずれか一項に記載の調製方法。
【請求項12】
銅系水素化触媒であって、触媒の総重量で、前記触媒の組成は、酸化銅3~10wt%、酸化リチウム0.3~3wt%であり、残りは活性炭であ
り、
前記銅系水素化触媒は、アセトフェノンの水素化反応に用いられる、銅系水素化触媒。
【請求項13】
触媒の総重量で、前記触媒における酸化銅は5~8wt%である、請求項12に記載の銅系水素化触媒。
【請求項14】
触媒の総重量で、前記触媒における酸化リチウムは0.5~2wt%である、請求項12または13に記載の銅系水素化触媒。
【請求項15】
請求項1~11のいずれか一項に記載の調製方法により調製された銅系水素化触媒、又は請求項12~14のいずれか一項に記載の銅系水素化触媒の、アセトフェノン液相の水素化によるα-フェニルエチルアルコールの調製における、使用。
【請求項16】
アセトフェノンを水素化してα-フェニルエチルアルコールを調製する方法であって、請求項1~11のいずれか一項に記載の調製方法により調製された銅系水素化触媒、又は請求項12~14のいずれか一項に記載の銅系水素化触媒の作用下で、アセトフェノンの水素化反応によってα-フェニルエチルアルコールを調製することであり、
前記水素化反応の条件は、反応圧力が2~5MPa(ゲージ圧力)、反応温度が60~100℃、H
2/HPAモル比が2~20:1、触媒使用量が0.2~0.6gHPA・gcat
-1・h
-1である、方法。
【請求項17】
反応圧力は2.5~4MPa(ゲージ圧力)であり、
反応温度は70~90℃であり、
H
2/HPAモル比は5~15:1であり、
触媒使用量は0.3~0.5gHPA・gcat
-1・h
-1であり、
前記水素化反応の原料は溶媒をさらに含み、前記溶媒はエチルベンゼンであり、アセトフェノンの溶媒における濃度は10~15wt%である、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は触媒水素化の技術分野に属し、具体的には、アセトフェノン液相を水素化してα-フェニルエチルアルコールを調製する触媒、その調製方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
α-フェニルエチルアルコールは重要な化学工業中間体であり、医薬、香料製造業、化粧品、食品、及びファインケミカルなどの工業に広く使用されている。現在のα-フェニルエチルアルコールの合成方法には、主に微生物発酵法とアセトフェノン還元/触媒水素化法などがある。
【0003】
微生物発酵法は一般的にフェニルアラニン、フルオロフェニルアラニンを原料として、微生物発酵転化によってα-フェニルエチルアルコールを調製する。微生物発酵法で採用される原料は高価であり、生産コストが高い。現在、工業的なα-フェニルエチルアルコールの調製には、通常アセトフェノン水素化法を採用し、該方法は生産コストが低く、副生成物が少なく、製品収率が高く、製品純度が高いなどの利点を有し、α-フェニルエチルアルコールの大量生産に適している。
【0004】
アセトフェノンの水素化触媒は主に白金パラジウム貴金属触媒、ニッケル触媒及び銅触媒などがあり、貴金属触媒とニッケル触媒はコストが高く、芳香環飽和及びフェニルエチルアルコールの水素化分解を起こしやすく、α-フェニルエチルアルコールの選択性が悪い。銅触媒は貴金属触媒、ニッケル触媒に比べてアセトフェノンの水素化反応に用いられると、活性と選択性が高く、コストが低いなどの利点を有するが、依然として触媒強度が低く、安定性が悪く、活性成分が流失しやすく、水素化分解/脱水副反応が起こりやすい(アセトフェノンの水素化過程でα-フェニルエチルアルコールの水素化分解/脱水副反応が起こり、エチルベンゼン/スチレンを発生しやすく、且つ水素化分解と脱水反応速度はいずれも反応温度の上昇とともに急速に増加する)などの問題がある。
【0005】
特許文献1は浸漬法を用いてNi-Sn-B/SiO2触媒を調製し、低温焼成した後にKBH4を還元剤として還元し、その触媒反応時、フェニルエチルアルコールの最高選択性は97.5%に達するが、その活性成分のNiと担体のSiO2との相互作用が弱く、流失しやすい。
【0006】
特許文献2はPd-C触媒を開示しているが、その触媒安定性が悪く、適用時に反応温度を絶えず上げる必要がある。
【0007】
特許文献3は還元処理された銅触媒とそれでα-フェニルエチルアルコールを調製する方法を開示しているが、該方法は液相還元の方法を用いて触媒の安定性を向上させる必要があり、プロセスが複雑でコストが高い。
【0008】
特許文献4はラネーニッケルを触媒としてα-フェニルエチルアルコールを調製する方法を開示しているが、該方法のアセトフェノンの水素化生成物に芳香環水素化生成物のα-シクロヘキシルエタノールが多くに存在し、α-フェニルエチルアルコールの選択性が低い。
【0009】
そのため、従来の技術における上記触媒活性成分と担体との結合力の低さ、活性成分の流失による触媒の失活、活性成分の分散の不均一などの問題を解決し、銅系水素化触媒の低温活性を向上させ、触媒における銅の分散性を改善し、活性成分の流失を低減し、触媒の強度を向上させ、副生成物の生成を抑制し、高活性、高選択性のアセトフェノンの水素化触媒を調製する意義は大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】中国特許出願公開第1557545号明細書
【文献】米国特許第4996374号明細書
【文献】中国特許出願公開第1315226号明細書
【文献】中国特許出願公開第1911883号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以下は本文で詳細に説明される主題の概要である。本概要は特許請求の保護範囲を制限するためのものではない。
【0012】
本願の目的は、従来の技術における上記の問題を解決し、アセトフェノン液相を水素化してα-フェニルエチルアルコールを調製する銅系触媒の調製方法及び調製された触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願の銅系触媒は活性炭を担体として、金属リチウムを助剤として、イオン交換方法により調製されたものである。得られた触媒は、優れた骨格強度と孔径分布、良好な物質移動と熱移動の効果を有すると同時に、活性が高く、活性成分の分散度が高く、耐焼結能力が高く、活性成分が流失しにくいという利点を有する。
【0014】
本願に記載の触媒をアセトフェノン液相の水素化によるα-フェニルエチルアルコールの調製に使用するときに、触媒はさらに良好な低温活性を有し、副生成物の生成を顕著に低減することができ、特に成分に添加された助剤のリチウム元素、Cu-Liを配合して使用することにより、触媒のアルカリ度を向上させ、水素化分解/脱水副反応を効果的に抑制することができるとともに、長周期安定性などの利点を有する。
【0015】
本願は上記目的を実現するための一態様で、以下の技術案を採用する。
触媒の調製方法は、
活性炭を酸液に浸漬処理してから、分離、洗浄するステップ(1)と、
ステップ(1)で処理した活性炭をアルカリ液に浸漬処理してから、分離、洗浄、乾燥するステップ(2)と、
ステップ(2)で処理した活性炭を銅塩とリチウム塩を含むエタノール水混合溶液に加えて浸漬してエージングしてから、分離、洗浄、乾燥及び焼成によって銅系水素化触媒を得るステップ(3)とを含む。
【0016】
本願の調製方法のステップ(1)において、前記酸液は酸の水溶液であり、濃度は0.5~2mol/L、好ましくは0.8~1.5mol/Lであり、前記酸は硝酸、塩酸又は硫酸から選ばれる1種又は複数種、好ましくは硝酸である。酸濃度が低いと、担体表面の基の数に直接影響する。さらに、酸溶液は担体自体に存在する不純物を除去することもできるため、酸濃度が低いと不純物が残留し、触媒の活性と選択性に影響する。逆に酸濃度が高いと、担体を破壊し、担体の使用寿命に影響を及ぼす。
【0017】
本願の調製方法のステップ(1)において、前記活性炭は椰子殻炭又は木質炭のいずれか1種であり、そのヨウ素価は600~1500、好ましくは800~1300であり、粒度は4~60メッシュ、好ましくは8~16メッシュである。活性炭のヨウ素価は実験により考察される。本願における合理的なヨウ素価範囲は、水素化反応の進行を促進するのに有利であり、逆に触媒の反応性能と物理性能に不利である。
【0018】
本願の調製方法のステップ(1)において、前記浸漬処理の条件は、常圧過量浸漬であり、浸漬温度が80~140℃、好ましくは90~130℃であり、時間が2~8h、好ましくは3~6hであることである。前記浸漬処理過程において、本ステップは酸液の使用量に具体的な要求がなく、活性炭担体を完全に浸漬できればよい。浸漬温度は主に担体表面の有機官能基の形成に対して促進作用を奏し、温度が低くても高くても不利である。
【0019】
本願の調製方法のステップ(1)において、浸漬処理の後続の分離、洗浄は通常の操作方法を採用し、具体的な要求はない。いくつかの実例において、前記分離は遠心分離方式を採用可能であり、前記洗浄は水洗を採用可能である。ステップ(1)で酸溶液を用いて活性炭担体を浸漬処理することは、活性炭の不純物を除去可能である一方、活性炭表面の酸素含有官能基を修飾することを目的とし、活性炭自体は不活性材料であり、表面官能基が少なく、酸液中で高温酸化処理を行った後、活性炭表面に酸素含有基、例えば-COOHなどの官能基が多くなり、修飾した後、次の変性に備える。
【0020】
本願の調製方法のステップ(2)において、前記アルカリ液はアンモニウム塩を含むアルカリ性水溶媒であり、濃度は2~10wt%、好ましくは3~8wt%であり、前記アンモニウム塩は炭酸アンモニウム及び/又は炭酸水素アンモニウムから選ばれる。
【0021】
本願の調製方法のステップ(2)において、前記浸漬処理は、条件が常圧過量浸漬であり、温度が20~60℃、好ましくは30~50℃であり、浸漬時間が2~8h、好ましくは3~6hである。前記浸漬処理過程において、本ステップではアルカリ液の使用量が具体的に要求されることはなく、活性炭担体を完全に浸漬できればよいが、溶液がステップ(1)で酸処理された担体が発生する官能基を交換するのに十分な含有量のイオン数を有することを確保する必要がある。ステップ(2)において、アンモニウム塩を用いて活性炭担体の表面を変性し、NH4+イオンを用いて第1のステップで変性された酸素含有官能基を置換し、例えば-COOHを-COONH4に変換し、変性の目的は次の銅イオン交換に備えることであり、そうでないと銅イオンの交換反応に不利である。
【0022】
本願の調製方法のステップ(2)において、前記乾燥温度は90~150℃、好ましくは100~130℃であり、時間は2~8h、好ましくは3~6hであり、本ステップにおける分離、洗浄は通常の操作方法を採用し、具体的な要求はなく、いくつかの実例において、前記分離は遠心分離方式を採用可能であり、前記洗浄は水洗を採用可能である。
【0023】
本願の調製方法のステップ(3)において、前記銅塩とリチウム塩を含むエタノール水混合溶液は、混合溶液の総重量で、銅塩濃度は10~45wt%、好ましくは15~30wt%であり、リチウム塩濃度は10~40wt%、好ましくは20~30wt%であり、エタノール濃度は2~8wt%、好ましくは3~6wt%であり、
好ましくは、前記銅塩は硝酸銅、塩化銅又は酢酸銅の1種又は複数種であり、
好ましくは、前記リチウム塩は硝酸リチウム又は塩化リチウムの1種又は2種である。
【0024】
本願の調製方法のステップ(3)において、前記浸漬・エージング過程は、好ましくは常圧条件下での等体積浸漬・エージングであり、温度が20~60℃、好ましくは30~50℃であり、時間が2~8h、好ましくは3~6hである。
【0025】
本願の調製方法のステップ(3)において、前記乾燥は、温度が90~150℃、好ましくは100~130℃であり、時間が2~8h、好ましくは3~6hであり、
前記焼成は、温度が300~600℃、好ましくは400~500℃であり、時間が2~8h、好ましくは3~6hである。
【0026】
本ステップに記載の分離、洗浄は通常の操作方法を採用し、具体的な要求はなく、いくつかの実例において、前記分離は濾過方式を採用可能であり、前記洗浄は水洗を採用可能である。
【0027】
本願の調製方法は、担体に対する前処理ステップを制御し、イオン交換方法と結合し、化学結合の方式を用いて活性成分を担持することにより、成分が流失しにくい。これにより、調製された触媒は通常の浸漬方法に比べて活性成分と担体の間の結合力がより強く、安定性がよりよい。
【0028】
本願では、上記方法により調製された銅系水素化触媒は、触媒の総重量で、前記触媒の組成は、酸化銅3~10wt%、好ましくは5~8wt%、酸化リチウム0.3~3wt%、好ましくは0.5~2wt%であり、残りは活性炭であり、担持型水素化触媒を得て、活性成分は卵殻型の分布を示す。
【0029】
他の態様において、本願では、上記銅系水素化触媒の、アセトフェノン液相の水素化によるα-フェニルエチルアルコールの調製における使用をさらに提供する。
【0030】
アセトフェノンを水素化してα-フェニルエチルアルコールを調製する方法は、上記銅系水素化触媒の作用下で、アセトフェノン水素化反応によってα-フェニルエチルアルコールを調製するものである。
【0031】
好ましくは、前記水素化反応の条件は、反応圧力が2~5MPa(ゲージ圧力)、好ましくは2.5~4MPa(ゲージ圧力)であり、反応温度が60~100℃、好ましくは70~90℃であり、H2/HPA(アセトフェノン)モル比が2~20:1、好ましくは5~15:1であり、触媒使用量が0.2~0.6gHPA・gcat
-1
・h
-1
、好ましくは0.3~0.5gHPA・gcat
-1
・h
-1
である。
【0032】
好ましくは、前記水素化原料は溶媒をさらに含み、前記溶媒はエチルベンゼンであり、アセトフェノンの溶媒における濃度は10~15wt%である。
【0033】
当業者は、前記触媒が還元活性化した後に対応する触媒活性を備え、好ましくは還元状態の銅系水素化触媒をアセトフェノンの水素化によるα-フェニルエチルアルコールの調製に使用することを理解すべきである。
【0034】
前記水素化触媒の還元活性化は本分野の通常の操作である。好ましい実施形態において、本願に記載の触媒の還元活性化方法は、水素と窒素の混合ガスの体積空間速度を300~1000h-1に保持し、好ましくは、まず反応器温度を160~180℃まで昇温し、恒温1~2時間で触媒に吸着する物理水を脱着してから、体積分率が10v%H2以下、例えば(5v%±2v%)H2の前記水素と窒素を含む混合ガスを導入して前記触媒を少なくとも0.5時間、例えば、1時間、1.5時間又は2時間予備還元した後に、水素と窒素の混合ガスにおける水素の割合、例えば、10v%、20v%、50v%、100v%まで段階的に向上させ、この過程における触媒ベッド層のホットスポット温度が220℃以下にするように制御し、最後に200~220℃まで昇温して純水素雰囲気下で2~5時間、例えば3又は4時間還元し、活性化された触媒を得ることを含む。
【0035】
従来の技術に比較して、本願の技術案の有益な効果は次のとおりである。
本願は、活性炭を用いて触媒担体とし、銅リチウム二金属が相乗的に作用するとともに、イオン交換の方法を用いて触媒を調製することで、活性成分の分散度が向上し、触媒活性が高いだけでなく、従来の銅系触媒に対して良好な低温活性を有し、且つ活性成分が流失しにくく、触媒の長周期安定性が向上し、触媒の耐焼結能力も向上する。さらに触媒は椰子殻炭などの優れた骨格強度と孔径分布を有する担体を採用し、反応物質の拡散作用に有利であり、良好な物質移動と熱移動効果を有する。該触媒をアセトフェノンの水素化によるα-フェニルエチルアルコールの調製に使用するときに、触媒の水素化能力を効果的に向上させるとともに、フェニルエチルアルコールの脱水などの副反応を抑制することができ、高活性、高選択性などの利点を有する。
【0036】
詳細な説明を読んで理解した後、他の態様を理解できる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、実施例を参照しながら本願の方法を詳細に説明するが、実施例に限定されるものではない。
【0038】
一、実施例及び比較例における主な原料由来について
椰子殻炭は、粒度が8~16メッシュ、ヨウ素価が800~1300、細孔容積が0.38cm3/gであり、木林森股フン有限公司から購入され、
アルミナ担体は、粒度が8~30メッシュ、比表面積が274m2/g、細孔容積が0.86cm3/g、山東アルミニウム業から購入され、
特に説明がない限り、その他の原料はすべて普通の市販品であり、試薬はすべて分析試薬である。
【0039】
二、実施例及び比較例における製品の分析方法について
触媒における元素含有量はX線蛍光スペクトラムアナライザー(XRF)を用いて測定した。
水素化液における銅イオンは誘導結合プラズマ発光質量分析計(ICP)を用いて測定した。
触媒側圧強度はD-III型強度測定器具を用いて50個のサンプルを測定し、平均値をとった。
【0040】
原料に含まれるアセトフェノンのモル数、生成されたフェニルエチルアルコールのモル数及び副反応により生成されたエチルベンゼン、スチレンのモル数はAgilent7820Aガスクロマトグラフを用いて分析した後に算出し、測定条件は、DB-5カラム、FID検出器を用いて、気化室温度が260℃、検出器温度が260℃、キャリアガスが高純度N2、その流速が30ml/minであることを含む。
【0041】
アセトフェノン転化率=(1-反応液に残留したアセトフェノンのモル数/原料に含まれるアセトフェノンのモル数)*100%、
フェニルエチルアルコールの選択性=生成されたフェニルエチルアルコールのモル数/転化されたアセトフェノンのモル数*100%、
エチルベンゼンの選択性、スチレンの選択性の計算方法はフェニルエチルアルコールの選択性と同じである。
【実施例】
【0042】
実施例1
銅系水素化触媒の調製について
(1)濃度が1mol/Lの硝酸水溶液50mlを調製し、15gの活性炭を硝酸水溶液に加え、90℃まで加熱して恒温で4時間過剰浸漬してから、遠心分離及び水洗浄を行った。
【0043】
(2)濃度が5wt%の炭酸アンモニウム水溶液50gを調製し、ステップ(1)で処理した活性炭を炭酸アンモニウム水溶液に加え、25℃の室温で4時間過剰浸漬してから、遠心分離して水洗浄し、100℃で4時間乾燥した。
【0044】
(3)9.13gの硝酸銅と硝酸リチウムのエタノール水混合溶液を調製し、混合溶液の総重量で、硝酸銅11.6wt%、硝酸リチウム22.7wt%、エタノール5wt%であり、その後にステップ(2)で処理した活性炭を加え、25℃の室温で4時間等体積浸漬してエージングしてから、100℃で4時間乾燥してから、400℃で4時間焼成し、酸化銅含有量が3wt%、酸化リチウム含有量が3wt%の触媒Aを得た。
【0045】
実施例2
銅系水素化触媒の調製について
(1)濃度が1.5mol/Lの塩酸水溶液50mlを調製し、15gの活性炭を塩酸水溶液に加え、90℃まで加熱して恒温で4時間過剰浸漬してから、遠心分離及び水洗浄を行った。
【0046】
(2)濃度が8wt%の炭酸水素アンモニウム水溶液50gを調製し、ステップ(1)で処理した活性炭を炭酸水素アンモニウム水溶液に加え、25℃の室温で4時間過剰浸漬してから、遠心分離して水洗浄し、90℃で5時間乾燥した。
【0047】
(3)7.4gの硝酸銅と硝酸リチウムのエタノール水混合溶液を調製し、混合溶液の総重量で、硝酸銅14.3wt%、硝酸リチウム4.7wt%、エタノール5wt%であり、その後にステップ(2)で処理した活性炭を加え、25℃の室温で4時間等体積浸漬してエージングしてから、100℃で4時間乾燥してから、450℃で4時間焼成し、酸化銅含有量が3wt%、酸化リチウム含有量が0.5wt%の触媒Bを得た。
【0048】
実施例3
銅系水素化触媒の調製について
(1)濃度が0.5mol/Lの硫酸水溶液50mlを調製し、15gの活性炭を硫酸水溶液に加え、90℃まで加熱して恒温で4時間過剰浸漬してから、遠心分離及び洗浄を行った。
【0049】
(2)濃度が5wt%の炭酸アンモニウム水溶液50gを調製し、ステップ(1)で処理した活性炭を炭酸アンモニウム溶液に加え、45℃の室温で4時間過剰浸漬してから、遠心分離して水洗浄し、90℃で5時間乾燥した。
【0050】
(3)10.6gの硝酸銅と硝酸リチウムのエタノール水混合溶液を調製し、混合溶液の総重量で、硝酸銅33.4wt%、硝酸リチウム9.8wt%、エタノール5wt%であり、その後にステップ(2)で処理した活性炭を加え、30℃の室温で4時間等体積浸漬してエージングしてから、100℃で4時間乾燥し、400℃で4時間焼成し、酸化銅含有量が10wt%、酸化リチウム含有量が1.5wt%の触媒Cを得た。
【0051】
実施例4
銅系水素化触媒の調製について
(1)濃度が2mol/Lの硝酸水溶液50mlを調製し、15gの活性炭を硝酸水溶液に加え、80℃まで加熱して恒温で4時間過剰浸漬してから、遠心分離及び洗浄を行った。
【0052】
(2)濃度が10wt%の炭酸アンモニウム水溶液50gを調製し、ステップ(1)で処理した活性炭を炭酸アンモニウム溶液に加え、20℃の室温で4時間過剰浸漬してから、遠心分離して水洗浄し、90℃で5時間乾燥した。
【0053】
(3)10.6gの硝酸銅と硝酸リチウムのエタノール水混合溶液を調製し、混合溶液の総重量で、硝酸銅33.4wt%、硝酸リチウム9.8wt%、エタノール5wt%であり、その後にステップ(2)で処理した活性炭を加え、30℃の室温で4時間等体積浸漬してエージングしてから、100℃で4時間乾燥し、400℃で4時間焼成し、酸化銅含有量が10wt%,酸化リチウム含有量が1.5wt%の触媒Dを得た。
【0054】
実施例5
銅系水素化触媒の調製について
(1)濃度が2mol/Lの硝酸水溶液50mlを調製し、15gの活性炭を硝酸水溶液に加え、80℃まで加熱して恒温で4時間過剰浸漬してから、遠心分離及び洗浄を行った。
【0055】
(2)濃度が10wt%の炭酸アンモニウム水溶液50gを調製し、ステップ(1)で処理した活性炭を炭酸アンモニウム溶液に加え、20℃の室温で4時間過剰浸漬してから、遠心分離して水洗浄し、90℃で5時間乾燥した。
【0056】
(3)9.1gの硝酸銅と硝酸リチウムのエタノール水混合溶液を調製し、混合溶液の総重量で、硝酸銅31.3wt%、硝酸リチウム2.3wt%、エタノール2wt%であり、その後にステップ(2)で処理した活性炭を加え、30℃の室温で4時間等体積浸漬してエージングしてから、100℃で4時間乾燥し、400℃で4時間焼成し、酸化銅含有量が8wt%、酸化リチウム含有量が0.3wt%の触媒Eを得た。
【0057】
比較例1
実施例1の調製方法を参照し、区別はステップ(2)のアルカリ液浸漬処理を行わないことのみであり、銅含有量が3wt%、酸化リチウム含有量が3wt%の触媒Fを得た。
【0058】
比較例2
実施例2の調製方法を参照し、区別がステップ(1)の酸液浸漬処理を行わないことのみであり、酸化銅含有量が3wt%、酸化リチウム含有量が0.5wt%の触媒Gを得た。
【0059】
比較例3
実施例1の調製方法を参照し、区別はステップ(3)で硝酸リチウムを加えないことのみであり、酸化銅含有量が3wt%の触媒Hを得た。
【0060】
比較例4
実施例2の調製方法を参照し、区別はステップ(3)で硝酸リチウムを0.43gの硝酸ナトリウムに変更することのみであり、酸化銅含有量が3wt%、酸化ナトリウム含有量が0.5wt%の触媒Iを得た。
【0061】
比較例5
実施例2の調製方法を参照し、区別はステップ(3)で活性炭を等質量のアルミナ担体に変更することのみであり、酸化銅含有量が3wt%、酸化リチウム含有量が0.5wt%の触媒Jを得た。
【0062】
比較例6
実施例1の調製方法を参照し、区別はステップ(1)とステップ(2)の順序を交換することのみであり、ステップ(2)のアルカリ液浸漬処理を行ってから、ステップ(1)の酸液浸漬処理を行い、酸化銅含有量が3wt%,酸化リチウム含有量が3wt%の触媒Kを得た。
【0063】
比較例7
硝酸銅と硝酸リチウムのエタノール水混合溶液8.07gを調製し、混合溶液の総重量で、硝酸銅13.4wt%、硝酸リチウム25.7wt%、エタノール3.7wt%であり、処理していない活性炭を上記溶液に加え、25℃の室温で4時間等体積浸漬してエージングし、100℃で4時間乾燥し、400℃で4時間焼成し、酸化銅含有量が3wt%,酸化リチウム含有量が3wt%の触媒Lを得た。
【0064】
触媒使用実例
実施例1~5及び比較例1~7で調製された銅系水素化触媒を、それぞれアセトフェノンの水素化反応によるα-フェニルエチルアルコールの調製に使用し、ステップは次のとおりである。
触媒還元:触媒を固定ベッド水素化反応器に入れ、触媒充填量は20mlである。触媒を使用する前に窒素と水素の混合ガス下で還元し、還元過程に混合ガス体積空間速度300h-1を保持し、まず、反応器の温度を160℃まで昇温し、恒温2時間で触媒に吸着する物理水を脱着してから、体積分率が5v%H2の水素と窒素を含む混合ガスを導入して1時間予備還元した後に、水素と窒素の混合ガスにおける水素の割合を10v%、20v%、50v%、100v%まで段階的に向上させ、この過程における触媒ベッド層のホットスポット温度が220℃以下になるように制御し、最後に220℃まで昇温して純水素雰囲気下で3時間還元した。
【0065】
水素化原料組成が15wt%のアセトフェノンのエチルベンゼン溶液で、圧力2.5Mpa(ゲージ圧力)、温度70℃、H2/HPAモル比5:1、触媒処理量0.3gHPA/gcat/hの条件下で反応を行った。
【0066】
間隔24hごとに水素化液を取り、水素化液における銅イオン含有量を測定した。1000時間反応した後に、触媒を反応器から取り出し、孔径2mmのステンレス鋼製分級篩で触媒を篩分けし、粒径<1mmの触媒粒子質量が触媒総質量に占める割合を計算し、これを触媒破損率とした。
【0067】
触媒性能、水素化反応の結果及び水素化液における銅イオンの平均含有量は表1に示すとおりである。
【0068】
【0069】
表1から、触媒A~触媒E、触媒H、I及びJを使用した際は、水素化液に銅が検出されず、触媒F、G、K及びLはICP分析によって水素化液における銅含有量が高いことを示すことが分かり、これは触媒が明らかに流失したことを示している。且つ、触媒A~触媒Eの活性が高く、且つ水素化分解によるエチルベンゼンの生成及び脱水によるスチレンの生成などの副反応を効果的に抑制可能であり、比較例1~比較例7における触媒の活性は低く、同時に1000時間の長周期安定運行により、触媒A~触媒Eのアセトフェノン転化率は99%を超え、α-フェニルエチルアルコールの選択性は99%を超えた。
【0070】
実施例6
実施例2で調製された銅系水素化触媒Bをアセトフェノンの水素化反応によるα-フェニルエチルアルコールの調製に使用し、実施例4の方法に基づいて反応温度を調整し、水素化反応の結果は表2に示すとおりである。
【0071】
【0072】
表2から、水素化反応の温度が60~100℃である場合、いずれも高いアセトフェノン転化率を取得可能であり、アセトフェノン転化率は温度の上昇につれて上昇するが、α-フェニルエチルアルコールの選択性が低下し、70~80℃が最適条件であり、α-フェニルエチルアルコールの選択性はいずれも99%以上であることが分かり、これは、触媒が良好な低温活性を有することを示している。