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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】COVID-19粘膜抗体アッセイ
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20241126BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20241126BHJP
   G01N 33/551 20060101ALI20241126BHJP
   C07K 14/165 20060101ALI20241126BHJP
   A61K 39/215 20060101ALI20241126BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20241126BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20241126BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20241126BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20241126BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20241126BHJP
【FI】
G01N33/53 N
G01N33/543 511A
G01N33/551 ZNA
C07K14/165
A61K39/215
A61P31/14
A61P37/04
A61K31/713
A61K48/00
A61K35/761
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023503132
(86)(22)【出願日】2021-06-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-04
(86)【国際出願番号】 IB2021054887
(87)【国際公開番号】W WO2022018528
(87)【国際公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-10-11
(31)【優先権主張番号】63/053,691
(32)【優先日】2020-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/064,157
(32)【優先日】2020-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/117,460
(32)【優先日】2020-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/135,380
(32)【優先日】2021-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518419057
【氏名又は名称】ナントセル,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フリーノア,コートニー
(72)【発明者】
【氏名】スーン-シオン,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ギャビッシュ,エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】田中 志保
【審査官】草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-167805(JP,A)
【文献】ZOST, Seth J., et al.,Potently neutralizing and protective human antibodies against SARS-CoV-2,Nature,2020年07月15日,Vol.584,Pges.443-449,https://doi.org/10.1038/s41586-020-2548-6,PMID
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
C07K 14/165
A61K 39/215
A61P 31/14
A61P 37/04
A61K 31/713
A61K 48/00
A61K 35/761
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者サンプル中の重症急性呼吸器症候群(SARS)様コロナウイルス(SARS-CoV2)ウイルスを標的とする抗体の存在又は非存在を検出する方法であって
前記患者サンプルの溶液を、SARS-CoV2 S(R683A R685)三量体タンパク質、SARS-CoV2 S(N501Y)タンパク質、又はSARS-CoV2 S(L452R)タンパク質から選択される、組換えSARS-CoV2 Sタンパク質、ペプチド、又はその変異体と共にインキュベートして、SARS-CoV2 S処理サンプル溶液を形成することと
組換えヒトアンギオテンシン変換酵素2(rhACE2)タンパク質、ペプチド、又はそれらの変異体を検出表面上に固定化して、ACE2結合検出表面を形成すること、
前記SARS-CoV2 S処理サンプル溶液を前記ACE2結合検出表面と共にインキュベートして、溶液中のサンプル処理ACE2結合検出表面を形成することと
前記サンプル処理ACE2結合検出表面から前記溶液を除去して、前記ACE2結合検出表面に結合していないSARS-CoV2 Sタンパク質、ペプチド、又はその変異体を除去することと
前記検出表面上の前記固定化rhACE2タンパク質、ペプチド、又はその変異体に結合した場合に前記SARS-CoV2 Sタンパク質、ペプチド、又はその変異体に結合する標識プローブを添加することと、
前記サンプル処理ACE2結合検出表面上の前記標識プローブを同定又は定量化することと、
を含み、
前記サンプル処理ACE2結合検出表面上の前記標識プローブを検出することが、前記患者サンプル中の抗SARS-CoV2 S抗体の非存在又は減少を示す、方法。
【請求項2】
抗体結合SARS-CoV2 Sタンパク質、ペプチド、又はその変異体の存在又は非存在について、前記サンプル処理ACE2結合検出表面から除去された前記溶液をアッセイすることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記SARS-CoV2 Sタンパク質が検出標識を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記検出標識がヒスチジンタグ又はN-ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHS-エステル)タグである、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記患者サンプルが、唾液、鼻腔粘膜、又は血清である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
医療助手及び/又は医療施設から離れた場所におけるブーストワクチン接種用量の必要性を決定するためのキットであって
患者の唾液サンプル収集するための容器、及び
腔吸入、経口吸入、又は経口摂取による投与のために製剤化された、SARS-COV-2ウイルスに対するワクチンの少なくとも1用量
含み、
前記唾液サンプルは前記器に入れられ、請求項1に記載の方法による粘膜抗体の分析のために医療施設に送られ、粘膜抗体の非存在は前記ワクチンのブースト用量の必要性を示す、キット
【請求項7】
前記器が、0.10~2.0重量/体積%(w/v)のグルタルアルデヒド、0.10~1.0% w/vの安息香酸ナトリウム、及び/又は0.025~0.20% w/vのクエン酸を含む安定化溶液を含む、請求項に記載のキット
【請求項8】
前記唾液サンプルが、前記安定化溶液中に1~48時間残存する、請求項に記載のキット
【請求項9】
前記患者が前記唾液サンプルを産生する少なくとも1週間前に、SARS-CoV2ウイルスに対するワクチンの少なくとも1用量を受けた、請求項に記載のキット
【請求項10】
前記クチンが、(a)E2b領域における欠失及び(b)2つ以上のウイルス抗原をコードする核酸配列含む複製欠損アデノウイルスベクターを含み、前記ウイルス抗原が、SARS-COV-2 Sタンパク質及びSARS-COV-2ヌクレオカプシドタンパク質を含む、請求項に記載のキット
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願はまた、シリアル番号63/053,691;63/064,157;63/117,460;及び63/135,380を有する米国特許出願に対する優先権の利益を主張する。上記出願の各々は、図面及び配列表を含め、その全体が参照により組み込まれる。
【0002】
配列表の組込み
本出願は、2021年5月26日に作成された配列表テキストファイル「PAT.005246.WO001_ST25」として、本明細書と同時に提出された核酸及びポリペプチド配列への参照を含む。ファイルは、サイズが13キロバイトである。前述の配列表は、37 C.F.R§1.52(e)に従って、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本開示は、患者サンプル中のウイルス感染に対する免疫を検出すること、ウイルスを標的とするワクチン組成物、及び患者へのワクチンの投与を含む、患者サンプル中のウイルス又はウイルスに対する応答をアッセイするための組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0004】
背景技術の説明は、本開示を理解するのに有用であり得る情報を含む。本明細書で提供される情報のいずれも、先行技術であるか、又は現在特許請求されている発明に関連すること、又は具体的に若しくは暗示的に参照されるいずれの刊行物も、先行技術であることを認めるものではない。
【0005】
本明細書における全ての刊行物及び特許出願は、個々の各刊行物又は特許出願が参照により組み込まれることが具体的且つ個々に示されているのと同程度に、参照により組み込まれる。組み込まれた参考文献における用語の定義又は使用が、本明細書で提供されるその用語の定義と一致しないか又は反対である場合、本明細書で提供されるその用語の定義が適用され、参考文献におけるその用語の定義は適用されない。
【0006】
SARS及びMERSを含む、近年のいくつかの注目すべきコロナウイルスアウトブレイクの後、コロナウイルス病2019(COVID-19)は、コロナウイルスファミリーのメンバーによって誘発される重篤な感染症のさらに別の例である。診断試験は比較的短時間で利用可能になっているが、試験は効率的ではなく、疾患を治療するための多数の試みは、これまで有意な成功を収めていない。最も典型的には、重度の症状を有する患者は呼吸/血液酸素負荷を維持するために治療され、多臓器損傷又はさらには不全を低減又は予防するために支持的治療が提供される。そのような介入にもかかわらず、死亡率は、特に高齢者、免疫不全の個体、及び心疾患、肺疾患、又は糖尿病を有する個体において有意である。
【0007】
したがって、COVID-19を有する患者における症状に対処する様々な方法が当技術分野で知られているにもかかわらず、それらの全て又は殆ど全てが様々な欠点を抱えている。したがって、ウイルス及び/又はワクチン組成物に対する患者の免疫応答の改善された検出及び特徴付け、並びに治療効果をもたらし、細胞へのウイルス侵入を低減若しくは防止し、患者に対するウイルスの直接的及び間接的な毒性を低減し、並びに/又は患者からウイルスを除去するのに有効な免疫応答を生じる、改善された組成物及び方法を提供する必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、患者又は患者サンプル中のウイルス感染、ワクチン、又はワクチンの免疫応答をモニタリング及びアッセイするための方法及び組成物を提供する。企図される方法は、特定のウイルスに対する抗体の存在について患者サンプルをアッセイすることを含む。アッセイは、サンプル中に存在する中和抗体及び非中和抗体、並びに抗体アイソタイプ(例えば、IgA、IgG、又はIgE)の特徴付けを可能にする。患者からの例示的なサンプルには、唾液(例えば、口腔粘膜)、鼻腔粘膜スワブ、及び血清サンプルが含まれる。さらに、本開示の方法は、ウイルスの特定のヒトタンパク質標的の競合的阻害によって患者のサンプルをアッセイすることを含む。例えば、患者における重症急性呼吸器症候群(SARS)様コロナウイルス(SARS-CoV2)活性を対象とするアッセイは、ウイルスの標的であるヒトアンギオテンシン変換酵素2(hACE2)タンパク質との結合からSARS-CoV2スパイク(S)タンパク質を阻害する中和抗SARS-CoV2抗体のインビトロ検出を含み得る。
【0009】
本開示はまた、患者の鼻腔粘膜、口腔粘膜、及び/又は消化管粘膜への送達によって患者にワクチン組成物を投与することによって、患者にワクチン組成物を投与することを含む。好ましくは、ワクチンは重症急性呼吸器症候群(SARS)様コロナウイルス(SARS-CoV2)を標的とする。
【0010】
特に、開示される抗SARS-CoV2方法は、ワクチンを投与した後のある期間に患者から唾液、鼻腔粘膜、及び/又は血清のサンプルを得ることを含む。サンプルは、最初に、グルタルアルデヒド、安息香酸ナトリウム、クエン酸、没食子酸プロピル、EDTA、亜鉛、アクチン、キトサン、パラベン、アジ化ナトリウム、又はそれらの任意の組み合わせを含む安定化溶液中で保存される。より典型的には、安定化溶液は、0.10~2.0重量/体積%(w/v)のグルタルアルデヒド、0.10~1.0%w/vの安息香酸ナトリウム、及び/又は0.025~0.20%w/vのクエン酸を含む。さらに、安定化溶液は、100nm~1mmの平均粒径を有するアラゴナイト粒子ビーズをさらに含む。アラゴナイト粒子ビーズは、免疫グロブリン(Ig)タンパク質、抗SARS-CoV2抗体、又はSARS-CoV2ウイルスタンパク質に結合することができる。例示的な実施形態では、アラゴナイト粒子ビーズは、組換えACE2タンパク質又は組換えACE2αヘリックスタンパク質に結合される。
【0011】
いくつかの好ましい実施形態において、組換えヒトACE2(rhACE2)タンパク質又はペプチドは、検出表面上に固定化される。患者サンプルをSARS-CoV2スパイク(S)タンパク質又はペプチド(例えば、組換えSARS-CoV2スパイクタンパク質又はそのペプチド)と共にインキュベートし、インキュベートしたSタンパク質又はペプチド及びサンプルを、次いで、固定化ACE2タンパク質又はペプチドを有する検出表面に一緒に曝露する。患者サンプルがいかなる中和抗SARS-CoV2抗体も含まない場合、Sタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)は検出表面上のACE2タンパク質に結合するために利用可能であり、結合したSタンパク質は、Sタンパク質に対する標識プローブを使用して検出される。したがって、患者サンプル中の中和(例えば、阻害)抗SARS-CoV2抗体の存在は、Sタンパク質又はペプチドが検出表面上のACE2に結合するのを阻害し、それによってSタンパク質標識の検出を妨げる。したがって、標識が蛍光によって検出される場合、蛍光の増加又は存在は、中和抗SARS-CoV2抗体の存在と逆相関する。
【0012】
患者サンプル中の迅速なSARS-CoV2抗体検出のために、rhACE2タンパク質又はペプチドはアラゴナイト粒子ビーズの表面上に、又は代替的に、タンパク質試薬の固定化に適した平坦な表面(例えば、ポリスチレンマルチウェルプレート)上に固定化され得る。本開示はrhACE2タンパク質、ペプチド、又はその変異体と予め結合した適切な検出表面(例えば、アラゴナイト粒子ビーズ又はマルチウェルプレート)を使用するキット及び方法を含む。
【0013】
野生型rhACE2タンパク質又はペプチド断片に加えて、又はその代わりに、突然変異ACE2タンパク質又はペプチドを検出表面上に固定化して、患者のサンプル中に見出される抗SARS-CoV2抗体の結合能力をさらに特徴付けるか又は確認することができる。特定の実施形態では、アラゴナイト粒子ビーズ又はポリスチレンプレートの検出表面は、配列番号1に対して少なくとも85%の配列同一性を有する組換えACE2タンパク質、配列番号2の組換えαヘリックスACE2タンパク質、又はT27F、T27W、T27Y、D30E、H34E、H34F、H34K、H34M、H34W、H34Y、D38E、D38M、D38W、Q24L、D30L、H34A、及び/D355Lから選択される少なくとも1つの突然変異を有する組換えαヘリックスACE2タンパク質で機能化される。
【0014】
企図される主題はまた、免疫グロブリン(Ig)タンパク質、抗SARS-CoV2抗体タンパク質、又はSARS-CoV2ウイルスタンパク質に結合するために製剤化されたアラゴナイト組成物を含む。アラゴナイト組成物は、100nm~1mmの平均粒径を有する複数のアラゴナイト粒子ビーズを含み、複数のアラゴナイト粒子ビーズは、免疫グロブリン(Ig)タンパク質、抗SARS-CoV2抗体タンパク質及び/又はSARS-CoV2ウイルスタンパク質に結合することができる部分で官能化されている。
【0015】
さらなる実施形態は、ウイルスを標的とする抗体又はウイルスに特異的なタンパク質から選択される少なくとも1つの抗体について患者サンプルを分析することを含み、抗体の非存在下又はウイルスタンパク質の存在下で、本方法は、ワクチンのブースターを患者に投与することをさらに含む。
本発明はまた、以下に関する。
[項目1]
患者サンプル中の重症急性呼吸器症候群(SARS)様コロナウイルス(SARS-CoV2)ウイルスを標的とする抗体の存在又は非存在を検出する方法であって:
前記患者サンプルの溶液を組換えSARS-CoV2 Sタンパク質、ペプチド、又はその変異体と共にインキュベートして、SARS-CoV2 S処理サンプル溶液を形成することと;
組換えヒトアンギオテンシン変換酵素2(rhACE2)タンパク質、ペプチド、又はそれらの変異体を検出表面上に固定化して、ACE2結合検出表面を形成すること、
前記SARS-CoV2 S処理サンプル溶液を前記ACE2結合検出表面と共にインキュベートして、溶液中のサンプル処理ACE2結合検出表面を形成することと;
前記サンプル処理ACE2結合検出表面から前記溶液を除去して、前記ACE2結合検出表面に結合していないSARS-CoV2 Sタンパク質、ペプチド、又はその変異体を除去することと;
前記検出表面上の前記固定化rhACE2タンパク質、ペプチド、又はその変異体に結合した場合に前記SARS-CoV2 Sタンパク質、ペプチド、又はその変異体に結合する標識プローブを添加することと、
前記サンプル処理ACE2結合検出表面上の前記標識プローブを同定又は定量化することと、を含み、
前記サンプル処理ACE2結合検出表面上の前記標識プローブを検出することが、前記患者サンプル中の抗SARS-CoV2 S抗体の非存在又は減少を示す、方法。
[項目2]
抗体結合SARS-CoV2 Sタンパク質、ペプチド、又はその変異体の存在又は非存在について、前記サンプル処理ACE2結合検出表面から除去された前記溶液をアッセイすることをさらに含む、項目1に記載の方法。
[項目3]
前記組換えSARS-CoV2 Sタンパク質、ペプチド、又はその変異体が、SARS-CoV2 S(R683A R685)三量体タンパク質、SARS-CoV2 S(N501Y)タンパク質、又はSARS-CoV2 S(L452R)タンパク質から選択される、項目1に記載の方法。
[項目4]
前記SARS-CoV2 Sタンパク質が検出標識を含む、項目1に記載の方法。
[項目5]
前記検出標識がヒスチジンタグ又はN-ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHS-エステル)タグである、項目4に記載の方法。
[項目6]
前記患者サンプルが、唾液、鼻腔粘膜、又は血清である、項目1に記載の方法。
[項目7]
患者の粘膜組織において重症急性呼吸器症候群(SARS)様コロナウイルス(SARS-CoV2)ウイルスに対する免疫を誘導する方法であって、前記方法が:
鼻腔粘膜、口腔粘膜、及び/又は消化管粘膜への送達によって前記患者にワクチン組成物を投与することを含む、方法。
[項目8]
前記患者の血液供給への注射によって前記ワクチンを同時投与することをさらに含み、注射が、筋肉内(IM)注射、(IV)静脈内注射、及び/又は皮下注射を含む、項目7に記載の方法。
[項目9]
さらに:
前記ワクチンを投与した後のある期間に前記患者から唾液のサンプルを得ることを含む、項目7又は項目8に記載の方法。
[項目10]
前記唾液のサンプルが、グルタルアルデヒド、安息香酸ナトリウム、クエン酸、没食子酸プロピル、EDTA、亜鉛、アクチン、キトサン、パラベン、アジ化ナトリウム、又はそれらの任意の組み合わせを含む安定化溶液中で保存される、項目9に記載の方法。
[項目11]
前記安定化溶液が、0.10~2.0重量/体積%(w/v)のグルタルアルデヒド、0.10~1.0% w/vの安息香酸ナトリウム、及び/又は0.025~0.20% w/vのクエン酸を含む、項目10に記載の方法。
[項目12]
前記安定化溶液が、100nm~1mmの平均粒径を有するアラゴナイト粒子ビーズをさらに含む、項目10又は11に記載の方法。
[項目13]
前記アラゴナイト粒子ビーズが、免疫グロブリン(Ig)タンパク質に結合することができる、項目11に記載の方法。
[項目14]
前記アラゴナイト粒子ビーズが、抗SARS-CoV2抗体に結合することができる、項目12に記載の方法。
[項目15]
前記アラゴナイト粒子ビーズが、組換えACE2タンパク質又は組換えACE2αヘリックスタンパク質に結合される、項目13に記載の方法。
[項目16]
前記ウイルスを標的とする抗体又は前記ウイルスに特異的なタンパク質から選択される少なくとも1つの分析物について、前記唾液のサンプルを分析することをさらに含む、項目9~15のいずれか1項に記載の方法。
[項目17]
ブースターワクチンを前記患者に投与することをさらに含む、項目16に記載の方法。
[項目18]
免疫グロブリン(Ig)タンパク質又はSARS-CoV2ウイルスタンパク質に結合するために製剤化されたアラゴナイト組成物であって:
100nm~1mmの平均粒径を有する複数のアラゴナイト粒子ビーズを含み、
前記複数のアラゴナイト粒子ビーズは、Ig結合タンパク質又はSARS-CoV2ウイルス結合タンパク質から選択される部分で官能化されている、組成物。
[項目19]
前記SARS-CoV2ウイルス結合タンパク質が組換えACE2タンパク質を含む、項目18に記載の組成物。
[項目20]
前記組換えACE2タンパク質が、配列番号1に対して少なくとも85%の配列同一性を有する、項目19に記載の組成物。
[項目21]
前記組換えACE2タンパク質が配列番号2の一次配列を含む、項目19に記載の組成物。
[項目22]
前記組換えACE2タンパク質が、T27F、T27W、T27Y、D30E、H34E、H34F、H34K、H34M、H34W、H34Y、D38E、D38M、D38W、Q24L、D30L、H34A及びD355Lから選択される少なくとも1つの突然変異を含む、項目21に記載の組成物。
[項目23]
前記Igが抗SARS-CoV2抗体である、項目18~22のいずれか1項に記載の組成物。
[項目24]
医療助手及び/又は医療施設から離れた場所におけるブーストワクチン接種用量の必要性を決定するための組成物であって:
a. 前記場所における患者からの唾液サンプル;
b. グルタルアルデヒド、安息香酸ナトリウム、クエン酸、没食子酸プロピル、EDTA、亜鉛、アクチン、キトサン、パラベン、アジ化ナトリウム、又はそれらの任意の組み合わせを含む安定化溶液を場合により含む唾液サンプル収集容器;
c. 鼻腔吸入、経口吸入、又は経口摂取による投与のための、SARS-COV-2ウイルスに対するワクチンの少なくとも1用量;を含み、
前記唾液サンプルは前記サンプル収集容器に入れられ、項目1に記載のアッセイによる粘膜抗体の分析のために医療施設に送られ、粘膜抗体の非存在は前記ワクチンのブースト用量の必要性を示す、組成物。
[項目25]
前記サンプル収集容器が、0.10~2.0重量/体積%(w/v)のグルタルアルデヒド、0.10~1.0% w/vの安息香酸ナトリウム、及び/又は0.025~0.20% w/vのクエン酸を含む安定化溶液を含む、項目24に記載の組成物。
[項目26]
前記サンプルが、前記安定化溶液中に1~48時間残存する、項目24に記載の組成物。
[項目27]
前記患者が前記唾液サンプルを産生する少なくとも1週間前に、SARS-CoV2ウイルスに対するワクチンの少なくとも1用量を受けた、項目24に記載の組成物。
[項目28]
前記経口ワクチンが、(a)E2b領域における欠失;及び(b)2つ以上のウイルス抗原をコードする核酸配列:を含む複製欠損アデノウイルスベクターを含み、前記ウイルス抗原が、SARS-COV-2 Sタンパク質及びSARS-COV-2ヌクレオカプシドタンパク質を含む、項目24に記載の組成物。
【0016】
本開示の様々な目的、特徴、態様、及び利点は、添付の図面と共に、好ましい実施形態の以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A】本開示の実施形態による、2.971nM及び1.4855nMでSARS-CoV2 Sタンパク質三量体を用いてアッセイした血清サンプルの例示的な抗体中和アッセイのグラフである。
図1B】本開示の実施形態による、図1Aの例示的な抗体中和アッセイに対応するパーセント阻害のグラフである。
図2】本開示の実施形態による、ACE2に結合するSARS-CoV2 Sタンパク質三量体に対する191V血清の効果に関する、A450での吸光度で測定した効果を示す図である。
図3】本開示の実施形態による、患者114からの血漿(114-P)及び唾液(114-S)を使用したACE2への結合のパーセント阻害を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
企図される主題は、患者サンプル(例えば、唾液、鼻腔粘膜、消化器粘膜、又は血清)中の中和抗体(例えば、抗SARS-CoV2抗体)の存在若しくは非存在、及び/又は任意の抗体のアイソタイプをアッセイするための組成物及び方法を含む。患者のサンプル中の抗体状態は、追加のワクチン用量(例えば、ブースター用量/ショット)の必要性を評価するために使用され得る。
【0019】
企図される主題は、2つ以上の投与経路によって患者にワクチンを投与して、ワクチンに対する局所及び全身の両方の免疫応答を誘導するための方法を含む。ウイルスは、Sタンパク質を使用して、S受容体結合ドメイン(S RBD)と、鼻、口、腸及び肺並びに他の器官における様々な細胞型上、並びに重要なことに、感染が主に発現される肺の肺胞上皮細胞上で広く発現される酵素であるアンギオテンシン変換酵素2(ACE2)との相互作用によって宿主細胞に侵入する。
【0020】
ワクチン中に提示されるウイルスエピトープに加えて、ワクチンの投与経路、及びワクチンの追加の(即ち、ブースター)用量を投与するためのレジメンもまた、患者の免疫応答が保護を確立するのに十分に強固であるかどうかに影響を及ぼし得る。
【0021】
重症急性呼吸器症候群(SARS)様コロナウイルス(SARS-CoV2)などの新興ウイルスについて、SARS-CoV2感染から回復した患者における免疫の持続時間(液性及び細胞媒介の両方)はまだ完全には知られておらず、さらに、ワクチンプロトコルは、様々な集団にわたってまだ試験されていない。現在のSARS-CoV2パンデミック及びSARS-CoV2ウイルスの高い伝播速度を考慮すると、強固なワクチン接種プロトコル及びウイルス及び/又はウイルスに対する免疫(例えば、中和抗SARS-CoV2抗体の存在)のための有効な試験が必要とされている。
【0022】
ワクチン投与。患者において免疫を誘導するための本明細書に開示される企図される方法は、少なくとも経口投与によって、好ましくは、経口投与によって及び血液供給への注射によってワクチンを投与することを含む。多くのワクチンは、筋肉内(IM)経路を介して与えられて、筋肉内の血液供給へのワクチンの直接送達を用いて免疫原性を最適化し、全身性免疫を誘導する。IM投与は、典型的には、IM注射よりも注射部位で有害反応を有する可能性が高い皮下(SC)注射よりも好ましい。
【0023】
IM注射に加えて、粘膜免疫の誘導は、病原性微生物のヒトからヒトへの伝播を阻止し、粘膜組織内でのそれらの増殖を制限するために不可欠であることが報告されている。さらに、粘膜病原体(例えば、SARSコロナウイルス)に対する防御免疫のために、粘膜恒常性を維持するための寛容のより一般的なアプローチの代わりに、粘膜組織における免疫活性化は、増強された粘膜免疫応答及びより良好な局所防御を可能にする。例えば、経鼻ワクチン接種(経鼻投与によるワクチンの送達)は、粘膜免疫及び全身免疫の両方を誘導する。例えば、Fujkuyama et al.,2012,Expert Rev Vaccines,11:367-379及びBirkhoff et al.,2009,Indian J.Pharm.Sci.,71:729-731を参照されたい。
【0024】
患者において粘膜免疫及び全身免疫の両方を誘導するために、本開示の実施形態は、少なくとも患者の鼻腔粘膜、口腔粘膜、及び/又は消化器粘膜への投与によって、患者にワクチンを提供することを含む。いくつかの実施形態では、投与経路は、血液供給への注射(例えば、筋肉内(IM)、静脈内(IV)、又は皮下(SC))と一緒に、患者の鼻腔粘膜、口腔粘膜、及び/又は消化管粘膜にワクチンを投与することを含む。本明細書で使用される場合、ワクチン組成物の経口投与は、経鼻注射、経鼻吸入、経口摂取、及び消化管粘膜への投与(例えば、吸入、摂取、注射)を含む。好ましくは、ワクチンを投与する経路は、筋肉内(IM)注射による投与と一緒に、消化器粘膜への送達、鼻腔注射、鼻腔吸入、経口摂取、又は経口による吸入から選択される経口投与を含む。
【0025】
特に、患者の粘膜組織における免疫を誘導するために投与されるワクチンは、SARS-CoV2ワクチンである。例示的な実施形態では、SARS-CoV2ワクチン(例えば、アデノウイルスコンストラクト)は、米国特許第16/880,804号明細書及び米国特許第63/016,048号明細書(その両方の全内容は参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているように、J鎖部分も含み得るACE2-Fcハイブリッドコンストラクトを形成する、免疫グロブリンFc部分に結合された可溶性ACE2タンパク質を含む。他の例示的な実施形態では、SARS-CoV2ワクチン(例えば、アデノウイルスコンストラクト)は、組換え可溶性ACE2タンパク質(例えば、配列番号2)の突然変異体を含み、この突然変異体は、米国特許第63/022,146号明細書(その全内容は参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているように、SARS-CoV2スパイクタンパク質のRBDタンパク質ドメインに対するACE2タンパク質の結合親和性の増大を付与する少なくとも1つの突然変異アミノ酸残基(例えば、置換による)を有する。別の例示的な実施形態では、SARS-CoV2ワクチン(例えば、アデノウイルスコンストラクト)は、米国特許出願第16/883,263号明細書及び米国特許第63/009,960号明細書(その両方の全内容は参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているように、エンドソーム標的化配列(N-ETSD)に融合されたCoV2ヌクレオカプシドタンパク質又はCoV2スパイクタンパク質を含む。追加的又は代替的に、SARS-CoV2ワクチンは、米国特許第63/010,010号明細書に開示されているように、酵母細胞表面上にコロナウイルススパイクタンパク質を発現するように遺伝子操作された改変酵母細胞(例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae))を含み、それによって酵母提示細胞がB細胞を刺激する(例えば、液性免疫)。
【0026】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される2つ以上のワクチン組成物がSARS-CoV2に対する免疫を誘導するために患者に投与され得る。例えば、患者は、コロナウイルススパイクタンパク質を発現する遺伝子改変酵母細胞を単一タイプのワクチンとして投与されてもよく、又は遺伝子改変酵母細胞は、本明細書に開示される1つ以上のSARS-CoV2アデノウイルスコンストラクトと一緒に若しくは同時に投与されてもよい。
【0027】
抗体の存在のモニタリング。本開示は、投与されたワクチン(例えば、本明細書に開示されるような経口投与及び/又は血液供給への注射による)又はウイルスによる感染のいずれかに対する患者の免疫応答をモニタリング又は評価することを含む。特に、SARS-CoV2による感染後、又はSARSコロナウイルスワクチンの投与によるSARS-CoV2に対する接種後に、患者の呼吸器及び消化器粘膜における抗体の継続的な存在を評価するための組成物及び方法が本明細書に開示される。
【0028】
病原性感染に対するワクチン(例えば、SARS-CoV2を標的とする)を受けた、及び/又はウイルス(例えば、SARS-CoV2)に感染した患者からのサンプルをアッセイするために、病原体に対する抗体の存在は、多くの診断試験のいずれか1つを用いて実施され得る。いくつかの実施形態では、診断試験は、抗原の存在下での抗体の検出を可能にする細胞生存率アッセイである。抗SARS-CoV2抗体検出のための細胞生存率アッセイを用いた例示的な診断試験は、米国特許第63/053,691号明細書(その全内容は、参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている。細胞診断アッセイは、免疫エフェクター細胞株(例えば、キラーT細胞、ナチュラルキラー細胞、NK-92(登録商標)細胞及びその誘導体など)の表面上の所与の病原体(例えば、SARS-CoV2感染のためのACE2)の標的受容体の発現、及び代理細胞株(例えば、HEK293細胞又はSUP-B15細胞)の表面上の病原体リガンド(例えば、SARS-CoV2感染のためのスパイクタンパク質)の発現に依存する。
【0029】
ACE2タンパク質の組換えタンパク質変異体(SARS-CoV2スパイクタンパク質によって標的化されるヒト受容体)を使用するさらなる診断試験は、米国特許出願第16/880,804号明細書(その全内容は、参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている。
【0030】
いくつかの好ましい実施形態において、組換えヒトACE2(rhACE2)タンパク質又はペプチドは、検出表面上に固定化される。患者サンプルをSARS-CoV2スパイク(S)タンパク質又はペプチド(例えば、組換えSARS-CoV2スパイクタンパク質又はそのペプチド)と共にインキュベートし、インキュベートしたSタンパク質又はペプチド及びサンプルを、次いで、固定化ACE2タンパク質又はペプチドを有する検出表面に一緒に曝露する。患者サンプルがいかなる中和抗SARS-CoV2抗体も含まない場合、Sタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)は、検出表面上のACE2タンパク質に結合するために利用可能であり、結合したSタンパク質は、Sタンパク質に対する標識プローブを使用して検出される。したがって、患者サンプル中の中和(例えば、阻害)抗SARS-CoV2抗体の存在は、Sタンパク質又はペプチドが検出表面上のACE2に結合するのを阻害し、それによってSタンパク質標識の検出を妨げる。したがって、標識が分光光度法によって検出される場合、シグナル(色、蛍光、発光)の増加又は存在は、中和抗SARS-CoV2抗体の存在と逆相関する。
【0031】
患者サンプル中の迅速なSARS-CoV2抗体検出のために、rhACE2タンパク質又はペプチドはアラゴナイト粒子ビーズの表面上に、又は代わりに、タンパク質試薬の固定化に適した平坦な表面(例えば、ポリスチレンマルチウェルプレート)上に固定化され得る。本開示は、rhACE2タンパク質、ペプチド、又はその変異体と予め結合した適切な検出表面(例えば、アラゴナイト粒子ビーズ又はマルチウェルプレート)を使用するキット及び方法を含む。
【0032】
野生型rhACE2タンパク質又はペプチド断片に加えて、又はその代わりに、突然変異ACE2タンパク質又はペプチドを検出表面上に固定化して、患者のサンプル中に見出される抗SARS-CoV2抗体の結合能力をさらに特徴付けるか又は確認することができる。特定の実施形態では、アラゴナイト粒子ビーズ又はポリスチレンプレートの検出表面は、配列番号1に対して少なくとも85%の配列同一性を有する組換えACE2タンパク質、配列番号2の組換えαヘリックスACE2タンパク質、又はT27F、T27W、T27Y、D30E、H34E、H34F、H34K、H34M、H34W、H34Y、D38E、D38M、D38W、Q24L、D30L、H34A、及び/D355Lから選択される少なくとも1つの突然変異を有する組換えαヘリックスACE2タンパク質で機能化される。さらなる実施形態では、SARS-CoV2 Sタンパク質のRBDに対する結合親和性が増強された可溶性ACE2タンパク質変異体を使用して、患者のサンプル中の任意の抗SARS-CoV2抗体の結合親和性及び/又は競合阻害を決定することができる。例えば、Chan et al.,2020,Science,369:1261-1265を参照されたい(その全内容は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0033】
唾液サンプル中の抗体試験。抗病原体抗体の存在について患者をより容易にモニタリングするために、患者からの唾液サンプルをアッセイすることは、迅速なサンプル収集、患者の参加の増加を可能にし、患者が自身のサンプルを入手し、サンプルを試験のために検査室に郵送又は輸送することを可能にし得る。しかしながら、SARS-CoV2に対する中和抗体の存在について唾液をアッセイするためには、試験前のサンプル収集後の輸送及び保存中の分解に対して唾液中のタンパク質を安定化させる必要があり得る。
【0034】
唾液サンプルを収集したら、唾液を保存溶液に入れて、その中の成分(例えば、抗SARS CoV2抗体又はウイルススパイクタンパク質)を安定化させる。生物学的サンプルのための保存剤は、例えば、Cunningham & al.(2018)report(“Effective Long-term Preservation of Biological Evidence,”U.S.Department of Justice grant # 2010-DN-BX-K193)及びPutcha et alの米国特許第6,133,036号明細書に開示されている。例えば、患者の唾液サンプルのための安定化保存剤溶液は、グルタルアルデヒド、安息香酸ナトリウム、クエン酸、没食子酸プロピル、EDTA、亜鉛、アクチン、キトサン、パラベン、アジ化ナトリウム、及びそれらの任意の組み合わせのうちの任意の1つを含み得る。
【0035】
特定の実施形態では、唾液サンプルをグルタルアルデヒドの安定化保存剤溶液と混合して、0.1%(w/v)~2.0%(w/v)、例えば約0.2%(w/v)、約0.3%(w/v)、約0.4%(w/v)、約0.5%(w/v)、約0.6%(w/v)、約0.7%(w/v)、約0.8%(w/v)、約1.0%(w/v)、約1.1%(w/v)、約1.2%(w/v)、約1.3%(w/v)、約1.4%(w/v)、約1.5%(w/v)、約1.6%(w/v)、1.7%(w/v)、約1.8%(w/v)、又は約1.9%(w/v)の最終グルタルアルデヒド濃度を達成してもよい。
【0036】
追加的又は代替的な実施形態において、唾液サンプルは、約0.10%~約1.00%の安息香酸ナトリウム(サンプルの重量/体積)及び/又は約0.025%~約0.20%のクエン酸(サンプルの重量/体積)の安定化保存剤溶液と混合され得る。例えば、唾液サンプルは、0.10%、0.20%、0.30%、0.40%、0.50%、0.60%、0.70%、0.80%、0.90%、又は1.00%w/v安息香酸ナトリウムと混合され得る。さらなる実施形態では、唾液サンプルは、少なくとも0.5mg/mL(例えば、少なくとも0.6mg/mL、少なくとも0.7mg/mL、少なくとも0.8mg/mL、少なくとも0.9mg/mL、少なくとも1mg/mL、少なくとも1.5mg/mL、少なくとも2mg/mL、少なくとも2.5mg/mL、少なくとも3mg/mL、少なくとも3.5mg/mL、少なくとも4mg/mL、少なくとも4.5mg/mL、又はさらには5mg/mL)の安息香酸及び/又は少なくとも0.2mg/mL(例えば、少なくとも0.2mg/mL、少なくとも0.25mg/mL、少なくとも0.3mg/mL、少なくとも0.35mg/mL、少なくとも0.40mg/mL、0.50mg/mL、少なくとも0.75mg/mL、少なくとも1.0mg/mL、少なくとも1.25mg/mL、少なくとも1.5mg/mL、少なくとも1.75mg/mL、又はさらには2.0mg/mL)のクエン酸の安定化保存剤溶液と混合される。本明細書で使用される場合、「安息香酸」は、安息香酸塩(例えば、安息香酸ナトリウム)と交換可能であり、「クエン酸」は、クエン酸塩(例えば、クエン酸ナトリウム)と交換可能である。
【0037】
上述した保存剤を含む唾液サンプルは、15℃~40℃の温度で少なくとも1時間(例えば、少なくとも5時間、少なくとも10時間、少なくとも12時間、少なくとも24時間、少なくとも36時間、又は少なくとも48時間)保存するのに安定である。したがって、中和抗体試験のための唾液サンプルを保存する方法であって、唾液サンプルを、グルタルアルデヒド、安息香酸ナトリウム、クエン酸、没食子酸プロピル、EDTA、亜鉛、アクチン、キトサン、パラベン、及び/又はアジ化ナトリウムのうちの1つ以上から作製された安定化溶液と混合し、15℃~25℃で少なくとも1時間、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、36、又は48時間まで保存することを含む方法が本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、唾液サンプルは、0.1%(w/v)~2.0%(w/v)のグルタルアルデヒド濃度と混合され、グルタルアルデヒド-唾液は、15℃~25℃で保存される。特定の実施形態では、グルタルアルデヒド-唾液は、本明細書に開示される濃度のクエン酸及び/又は安息香酸をさらに含み得る。
【0038】
アラゴナイト:いくつかの実施形態では、任意の抗体タンパク質又は任意の特異的抗体タンパク質を、魚卵状アラゴナイト粒子を用いて唾液サンプルから捕捉することができる。例えば、本明細書に開示されるグルタルアルデヒド、安息香酸ナトリウム及びクエン酸、没食子酸プロピル、EDTA、亜鉛、アクチン、キトサン、パラベン、アジ化ナトリウム、及びそれらの任意の組み合わせの唾液保存溶液は、魚卵状アラゴナイト(炭酸カルシウム、CaCO)粒子も含むことができる。タンパク質への結合のためのアラゴナイト粒子の使用は、例えば、米国特許出願第16/858,548号明細書及びPCT/US20/29949号明細書に開示されており、その両方の全内容は参照により本明細書に組み込まれる。したがって、アラゴナイト粒子は、唾液サンプル中に存在する任意の抗体を捕捉する(例えば、それに結合する)か、又は特定の抗原に対する抗体を特異的に捕捉するように修飾されているものに添加され得る。例えば、アラゴナイトは、免疫グロブリン(Ig)タンパク質に結合することができる部分で官能化され得る。好ましくは、Igタンパク質は、免疫グロブリンA(IgA)、免疫グロブリンG(IgG)、又は免疫グロブリンE(IgE)タンパク質である。より好ましくは、アラゴナイトは、IgAタンパク質に結合するように官能化される。最も好ましくは、アラゴナイト粒子は、特異的抗体に結合することができる部分で官能化される。例えば、アラゴナイト粒子は、抗SARS-CoV2抗体に特異的な部分と結合され得る。好ましくは、アラゴナイト粒子は、例えば、前出の米国特許出願第16/880,804号明細書に開示されている組換えACE2タンパク質と結合される。典型的な実施形態では、アラゴナイト粒子は、配列番号1に対して少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の配列同一性を有する組換えヒトACE2タンパク質と結合される。
【0039】
追加的又は代替的な実施形態では、アラゴナイト粒子は、組換え可溶性ACE2タンパク質(例えば、配列番号2)に官能化(例えば、結合)される。抗SARS-CoV2抗体又はSARS CoV2のスパイクタンパク質のより効率的な捕捉又は結合のために、組換え可溶性ACE2を突然変異させて、SARS-CoV2スパイクタンパク質(例えば、スパイクタンパク質のRBDドメイン)に対してより高い結合親和性を有するACE2変異体を形成することができる。組換え可溶性ACE2タンパク質のこれらのACE2突然変異体は、T27F、T27W、T27Y、D30E、H34E、H34F、H34K、H34M、H34W、H34Y、D38E、D38M、D38W、Q24L、D30L、H34A、及び/又はD355Lを含む。
【0040】
本明細書で使用される場合、用語「官能化された」は、アラゴナイト粒子への部分の結合(coupling)又は結合(binding)を指し、それによって、結合された部分の任意の機能をアラゴナイト粒子に付与する。例えば、アラゴナイト粒子は、タンパク質部分で官能化され得る。アラゴナイト粒子ビーズを調製及び使用するための方法は、米国特許出願第16/858,548号明細書及びPCT/US20/29949号明細書に開示されている。いくつかの実施形態では、アラゴナイト組成物は、複数のアラゴナイト粒子ビーズを含む。好ましくは、複数のアラゴナイト粒子ビーズは、100nm~1mmの平均粒径を有する。
【0041】
いくつかの実施形態では、タンパク質部分はアラゴナイト粒子の天然の未処理表面に直接結合される。アラゴナイト粒子は、アラゴナイト表面を親水性にするアスパラギン酸及びグルタミン酸を含む、2~3%のアミノ酸含有量を有する。したがって、いくつかの実施形態では、タンパク質部分は、アラゴナイト粒子の表面に直接結合され得る。
【0042】
代替的な実施形態では、結合表面を改質するために、アラゴナイト粒子表面を処理することができる。例えば、米国特許出願第16/858,548号明細書及びPCT/US20/29949号明細書に開示されているように、ステアリン酸(即ち、オクタデカン酸)による処理は、疎水性表面を提供する。タンパク質負荷のために、リン酸によるアラゴナイトの処理は、ラメラ構造を形成する。反応性基をアラゴナイトのアミノ酸表面に結合するためのさらなるコンジュゲーション技術は、例えば、Bioconjugate Techniques,Third Edition,Greg T.Hermanson,Academic Press,2013開示されているように、当技術分野において公知である。
【0043】
ワクチンプロトコルのモニタリング。唾液中の中和抗体の十分な力価(例えば、存在)を示さない患者に、各々のワクチン(例えば、本明細書に開示されるSARS-CoV2ワクチン)の経口投与量を送ることができる。患者は、これらのワクチン投与量を吸入又は摂取し、次いで2週間後、上記と同じ様式で調製及び保存された別の唾液サンプルを試験施設に送って、経口ワクチン用量がその抗SARS-CoV2抗体(例えば、IgA)力価を回復させたことを確認する。
【0044】
したがって、さらなる実施形態では、患者から唾液サンプルを収集するためのキットは、本明細書に開示される唾液保存剤溶液を有する収集容器を含む。例えば、キットは、グルタルアルデヒド、安息香酸ナトリウム及び/又はクエン酸、没食子酸プロピル、EDTA、亜鉛、アクチン、キトサン、パラベン、及びアジ化ナトリウムのうちのいずれか1つ又は組み合わせの溶液を含む収集容器を含む。キットはまた、輸送又は郵送のために、唾液サンプルを有する収集容器に固定するために、接着剤パッケージング及び/又は郵送供給物を含んでもよい。いくつかの実施形態では、キットはまた、経口投与のための少なくとも1用量のワクチンを含んでもよい。
【0045】
本明細書において列挙される値の範囲は、単に、その範囲内に入る別々の各値を個々に指す省略表現として意図されている。本明細書に別段の指示がない限り、個々の各値はあたかも本明細書に個々に列挙されているかのように、本明細書に組み込まれる。
【0046】
本明細書及び以下の特許請求の範囲を通して使用されるように、「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈が明らかに別段の指示をしない限り、複数の参照を含む。また、「in」は、文脈が明らかに別段の指示をしない限り、「in」及び「on」を含む。また、本明細書で使用されるように、文脈が別段の指示をしない限り、「に結合される」は、直接結合(互いに結合される2つの要素が互いに接触する)及び間接結合(少なくとも1つの追加の要素が2つの要素の間に位置する)の両方を含む。したがって、「に結合される」及び「と結合される」は同義である。
【0047】
「含む」及び「含むこと」は、非排他的な方法で要素、成分、又は工程を指すものとして解釈されるべきであり、参照された要素、成分、又は工程が明示的に参照されていない他の要素、成分、又は工程が存在し、利用され、又は組み合わされ得ることを示す。明細書又は特許請求の範囲がA、B、C...及びNからなる群から選択されるものの少なくとも1つに言及している場合、文章は、A+N、又はB+Nなどではなく、群からの1つの要素のみを必要とするとして解釈されるべきである。
【実施例
【0048】
実施例1.本明細書に記載される組成物及び方法の有利な特徴は、以下の実施例によってさらに例示される(ただし、これらに限定されない)。SUP-B15細胞を、SARS CoV-2スパイクタンパク質をコードする配列に作動可能に連結されたCMVプロモーターを含む構築物でトランスフェクトする。スパイクが発現され、細胞膜の細胞外面に自然に局在化する。トランスフェクトされたSUP-B15細胞を6ウェル皿に播種し、付着させ、約60%コンフルエントまで増殖させる。この6ウェル皿の3つのウェルを、ACE2細胞外ドメインを有するCARを発現するようにトランスフェクトされたhaNK細胞と共にインキュベートし、一方、他の3つを、COVID19から最近回復した患者由来の回復期血清の存在下で、同じhaNK細胞と共にインキュベートする。37℃及び5% COで1時間インキュベートした後、生存率を測定する。回復期血清を有する3つのウェルは、90%の平均細胞生存率を有するが、回復期血清を有さない3つのウェルは、50%の平均細胞生存率を示す。
【0049】
理論に束縛されるものではないが、既存の代理中和抗体診断を超える本明細書に開示されるこの診断組成物及び方法の利点の1つは、患者血清中に見出される抗体がSpike上の他の場所に結合することによって(直接的なSpike-RBD/ACE-2阻害ではなく)ACE-2/Spike相互作用を変化させ得ることである。haNK(登録商標)細胞の存在下では、ADCCを阻害することによって中和する抗体もまた、この方法によって認識可能であろう。
【0050】
実施例2.唾液のサンプルを1人以上の患者から採取し、1.5mLのスナップキャップポリスチレンチューブに保存し、各々をマークで標識して、サンプルを採取した患者の身元を示す。唾液サンプルの各チューブに、ほぼ等体積の溶液を添加し、該溶液は、1mg/mL安息香酸ナトリウム溶液を有する2.0重量/体積%(w/v)グルタルアルデヒドの溶液である。唾液サンプルに添加されたグルタルアルデヒド及び安息香酸ナトリウム溶液は、約1.0%(w/v)グルタルアルデヒド/0.5mg/mL安息香酸ナトリウムの最終濃度を有する各チューブ中の溶液をもたらす。チューブを発送のために適切に包装し、試験施設に輸送する。サンプル採取からサンプルが試験のために施設で開かれるまでのおおよその時間は、48時間以下、典型的には約24時間以下である。例えば、サンプル収集と試験場所でのサンプル開放との間の時間は、約1分~48時間以下、好ましくは1分~約36時間の範囲であり得る。典型的には、サンプル採取と試験場所でのサンプル開放との間の時間は、約1分~約30時間まで、1分~約30時間まで、1分~約30時間まで、1分~約30時間まで、1分~約24時間まで、1分~約20時間まで、1分~約19時間まで、1分~約18時間まで、1分~約18時間まで、1分~約18時間まで、1分~約18時間まで、1分~約18時間まで、1分~約18時間まで、1分~約18時間まで、1分~約18時間まで、1分~約18時間まで、1分~約18時間まで、1分~約18時間まで、1分~約18時間まで、1分~約18時間まで、1分~約30時間まで(例えば、18時間~30時間又はその間)の範囲であり得る。約24時間の間、サンプルは約15℃よりも冷たい温度に達することは決してなく(例えば、18時間~30時間又はその間)、約40℃よりも熱くなることは決してなく、約24時間の期間(例えば、18時間~30時間又はその間)にわたって平均約25℃である。したがって、サンプルは、約15℃、16℃、17℃、18℃、19℃、20℃、21℃、22℃、23℃、24℃、25℃、26℃、27℃、28℃、29℃、30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃、37℃、38℃、39℃、又は40℃の温度であり得る。
【0051】
試験施設では、技術者が各チューブを開き、滅菌ピペットで内容物を抽出する。溶液を透析して、グルタルアルデヒド及び安息香酸塩を除去する。次いで、透析したサンプルを、SARS-CoV2スパイクタンパク質受容体結合ドメイン(RBD)を模倣するペプチドと混合し、室温で30分間インキュベートする。
【0052】
このペプチドは、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)にコンジュゲートされる。次いで、RBDペプチド/サンプル(抗体)混合物をマルチウェルポリスチレンプレートのウェルに添加し、該ウェルその内側表面は組換えヒトACE2(rhACE2)でコーティングされており、室温で30分間インキュベートする。インキュベーションの最後に、ウェルを室温PBSで3回洗浄し、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)を各ウェルに添加する。中和抗体を含まないサンプルを受け取ったウェルは暗青色に変わり、一方、中和抗体を含むサンプルを受け取ったウェルは透明のままである。TMBの暗さは、OD450での分光光度法によって読み取ることができる。したがって、図1A、1B、2、及び3を参照すると、生の分光光度データはOD450(又はA450)に対応し、中和抗体の存在はコーティングされたrhACE2への結合の阻害と相関し、これはOD450の減少をもたらす。
【0053】
実施例3.患者サンプル中の中和抗SARS-CoV2 S抗体についての例示的なアッセイ方法。
マイクロプレート(例えば、100μl/ウェルを有するNunc MaxiSorp ELISAプレート)を抗原でコーティングする。ヒトACE2-hFCタンパク質をコーティング緩衝液(BioLegendカタログ番号421701、注射用水(WFI)で希釈)で0.5ug/mL(ImmunityBio,Inc.2.5mg/mL)(約4.5455nM、DF=1:5,200)に希釈する。マイクロプレートの各ウェルを、希釈したACE2-hFCタンパク質でコーティングする。マイクロプレートを粘着性プラスチックで覆い、4℃で一晩インキュベートする。
【0054】
コーティング溶液を各ウェルから除去し、200~250μl PBS/ウェルで3回(3x)洗浄する。溶液又は洗浄液を、シンク上でプレートをフリックすることによって除去する。残りの液滴は、ペーパータオル上でプレートを軽くたたくことによって除去する。
【0055】
コーティングされたウェルを、200μl/ウェルのブロッキング緩衝液(DPBS中2%非脂肪乾燥ミルク)を添加することによってブロックする。
【0056】
次いで、ブロックされたウェルを粘着性プラスチックで覆い、37℃で1~2時間インキュベートする。ブロッキング緩衝液を、シンク上でプレートをフリックすることによって除去する。ウェルを200~250uL 0.05% Tween20/PBSで3回洗浄する。
【0057】
患者サンプル(例えば、唾液又は血清)を、SARS-CoV2 Sタンパク質、ペプチド、又はその変異体と共にインキュベートする。SARS-CoV2 Sタンパク質(例えば、SARS-CoV2 S(R683A R685)三量体タンパク質、SARS-CoV2 S(N501Y)タンパク質、又はSARS-CoV2 S(L452R)タンパク質)。
【0058】
2% NFミルク/PBS(60uL体積)中の「2x」サンプル(例えば、唾液又は血清)希釈物を調製する。DF範囲(マウス血清)=250~250,000。例えば、以下の表1に示すように、SARS-CoV-2 Sタンパク質(R683A、R685A)、活性三量体、Hisタグ付き、「S-三量体」(Acro Biosystems、SPN-C52H9;ストック@205ug/mL(1.4855uM))をブロッキング緩衝液で希釈する。
【0059】
【表1】
【0060】
以下のレイアウトに従って、1.2mLの96ウェルプレートのウェル当たり60uLの希釈サンプル、60uLの適切なS-三量体希釈物を添加する。ピペッティングにより混合する。プレートを粘着性プラスチックで覆い、37℃で30分間インキュベートする。
【0061】
hACE2-hFC被覆ウェルのブロッキング及びその後の洗浄後、サンプル及びS三量体混合物を抗原(ACE2)被覆プレートと共にインキュベートする。例えば、100uL/ウェルのサンプル及びS-三量体混合物を添加し、37℃で30分間~2時間までインキュベートする。このインキュベーションの後、ウェルを200~250uL 0.05% Tween20/PBSで4回(4x)まで洗浄する。次いで、ウェルを検出試薬と共にインキュベートして、ウェルに結合したS三量体の量を決定する。この実施例では、S三量体はHisタグ付けされ、抗HIS HRPコンジュゲート化抗体(BioLegend #_652504、@0.5mg/mL;0.01~1ug/mLでの推奨される使用)を使用して検出され得る。TMB(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン)による検出のために、1ウェル当たり100μlの希釈したコンジュゲート化二次抗体溶液を添加する。プレートを粘着性プラスチックカバーで覆い、37℃で1時間インキュベートする。プレートを200~250μL/ウェルの0.05% Tween20/PBSで4回洗浄する。TMB基質(Pierce TMB基質キットCat#34021)を1:1で混合する。各ウェルに100uLのTMB溶液を添加する。暗所内で室温で30分間までインキュベートする。等体積(100uL)の停止溶液(Thermo #N600)を添加することによって反応を停止する。ELISAプレートリーダーを用いて、停止から30分以内に450nmで光学濃度を読み取る。
【0062】
本明細書に記載した全ての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、又は明らかに文脈に矛盾しない限り、任意の適切な順序で実行され得る。本明細書の特定の実施形態に関連して提供される任意の及び全ての例、又は例示的な言語(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をより明瞭にすることを意図しており、別様に特許請求される本発明の範囲を限定するものではない。本明細書のいかなる言語も、本発明の実施に不可欠な、特許請求されていない要素を示すものと解釈されるべきではない。
【0063】
本明細書の発明概念から逸脱することなく、既に記載したもの以外のさらに多くの修正が可能であることは、当業者には明らかであろう。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲を除いて限定されるべきではない。さらに、本明細書及び特許請求の範囲の両方を解釈する際に、全ての用語は、文脈と一致する最も広い方法で解釈されるべきである。
図1A
図1B
図2
図3
【配列表】
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