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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】把持判定システム及び把持判定方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/04 20060101AFI20241126BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20241126BHJP
   H01H 36/00 20060101ALI20241126BHJP
   G01V 3/08 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
B62D1/04
B60R16/02 630Z
H01H36/00 J
G01V3/08 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023510650
(86)(22)【出願日】2022-02-22
(86)【国際出願番号】 JP2022007069
(87)【国際公開番号】W WO2022209426
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-06-13
(31)【優先権主張番号】P 2021055796
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 洋輔
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-075849(JP,A)
【文献】国際公開第2020/195620(WO,A1)
【文献】特開2006-298241(JP,A)
【文献】特開2018-001907(JP,A)
【文献】特開2016-165940(JP,A)
【文献】特開2014-075219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/04
B60R 16/02
H01H 36/00
G01V 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のステアリング装置(2)の一部に電極(211)を設け、前記ステアリング装置(2)の把持状態の判定を行う把持判定システム(1)であって、
前記電極(211)での静電容量を検知する第1検知部(50)と、
ステアリングホイール軸(200)の操舵トルクを検知する第2検知部(40)と、
前記第1検知部(50)及び前記第2検知部(40)の検知結果に基づいて、前記ステアリング装置(2)が把持されたか否かを判定する判定部(60)とを備え
前記ステアリング装置(2)は、
乗員が把持可能なリム部(10)と、
前記ステアリング装置(2)の中央近傍から前記リム部(10)に向かって延設されたスポーク部(3)と、
前記スポーク部(3)に設けられ、車載装置を操作するための操作部(20)とを備え、
前記電極(211)は前記操作部(20)に設けられた加飾部材(21)に設けられていることを特徴とする記載の把持判定システム(1)。
【請求項2】
車両のステアリング装置(2)の一部に電極(211)を設け、前記ステアリング装置(2)の把持状態の判定を行う把持判定システム(1)であって、
前記電極(211)での静電容量を検知する第1検知部(50)と、
ステアリングホイール軸(200)の操舵トルクを検知する第2検知部(40)と、
前記第1検知部(50)及び前記第2検知部(40)の検知結果に基づいて、前記ステアリング装置(2)が把持されたか否かを判定する判定部(60)とを備え
前記電極(211)は、車両の車幅方向において前記ステアリング装置(2)の中央から夫々反対側の第1位置又は第2位置、若しくは前記第1位置及び前記第2位置に配置されており、
前記判定部(60)は、
前記第1位置の電極(211)に係る第1静電容量、前記第2位置の電極(211)に係る第2静電容量、前記第2検知部(40)に係る操舵トルクのうち、2つ以上が閾値を超える場合、前記ステアリング装置(2)が把持されたと判定することを特徴とする把持判定システム(1)。
【請求項3】
車両のステアリング装置(2)の一部に電極(211)を設け、前記ステアリング装置(2)の把持状態の判定を行う把持判定システム(1)であって、
前記電極(211)での静電容量を検知する第1検知部(50)と、
ステアリングホイール軸(200)の操舵トルクを検知する第2検知部(40)と、
前記第1検知部(50)及び前記第2検知部(40)の検知結果に基づいて、前記ステアリング装置(2)が把持されたか否かを判定する判定部(60)とを備え
前記電極(211)と前記ステアリング装置(2)の芯金(33)の間には、該芯金(33)を覆うように形成された被覆部(32)が設けられており、
前記電極(211)は、少なくとも前記被覆部(32)と接触する面に設けられており、前記被覆部(32)と前記電極(211)との間には、前記電極(211)と電気的に接続可能な端子(22)を更に備えることを特徴とする把持判定システム(1)。
【請求項4】
前記加飾部材(21)は、前記操作部(20)の周囲に形成された周囲部(21)を構成することを特徴とする請求項に記載の把持判定システム(1)。
【請求項5】
前記電極(211)は前記加飾部材(21)の非露出裏面側の表面上に導電性のメッキ層(211)によって形成されており、
前記加飾部材(21)は、前記ステアリング装置(2)の芯金(33)に向けて突出した突出部(212,212A)を有し、
前記突出部(212,212A)と係合し、前記第1検知部(50)に電気的に接続されている端子(22,24)を備えることを特徴とする請求項またはに記載の把持判定システム(1)。
【請求項6】
前記メッキ層(211)は、前記加飾部材(21)の露出表面側と非露出裏面側との両方の表面上に形成されており、両方表面上の前記メッキ層(211)は電気的に接続されていることを特徴とする請求項に記載の把持判定システム(1)。
【請求項7】
前記加飾部材(21)の露出表面側に設けられた前記メッキ層(211)が、透明な材料で被覆されていることを特徴とする請求項に記載の把持判定システム(1)。
【請求項8】
車両のステアリング装置(2)の一部に設けられた電極(211)を用いて前記ステアリング装置(2)の把持状態を判定する把持判定方法であって、
車両の車幅方向においてステアリング装置(2)の中央から見て、夫々反対側の第1位置又は第2位置、若しくは前記第1位置及び前記第2位置に、前記電極(211)が配置されており、
前記第1位置の電極(211)に係る第1静電容量、前記第2位置の電極(211)に係る第2静電容量を検知する第1検知部(50)から検知結果を取得し、
ステアリングホイール軸(200)の操舵トルクを検知する第2検知部(40)から検知結果を取得し、
前記第1検知部(50)及び前記第2検知部(40)の検知結果に基づいて、前記ステアリング装置(2)が把持されたか否かを判定し、
前記第1位置の電極(211)に係る第1静電容量、前記第2位置の電極(211)に係る第2静電容量、前記第2検知部(40)に係る操舵トルクのうち、2つ以上が閾値を超える場合、前記ステアリング装置(2)が把持されたと判定する把持判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はステアリング装置の把持状態を検知する把持判定システム及び把持判定方法に関する。
本出願は、2021年3月29日出願の日本出願第2021-055796号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、表皮層と芯金との間に導電層を設け、前記導電層における静電容量変化に基づいて運転者がリム部を把持しているか放しているかを検知できるようにしたステアリング装置が広く普及している。
【0003】
例えば、特許文献1には、導電層と芯金との間に、シールド層を設けて、静電容量変化に基づいて運転者の把持状態を判断する際に前記芯金に起因して前記導電層で発生する寄生容量を減らすステアリング装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-166858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
表皮層と芯金との間の導電層における静電容量変化に基づいて運転者がリム部を把持しているか否かを検知する手法(以下、静電容量検知手法と称する)の場合、リム部内部に導電層が配置されるため、把持した運転者の手との距離が遠く、静電容量の変化が小さいので検知し難いという問題がある。
【0006】
更に、ステアリング装置によっては、内部にヒーターを有するものもあり、この場合、前記静電容量検知手法では、前記ヒーターに起因する寄生容量の影響で、検知精度が劣るという問題もある。
【0007】
このような静電容量検知手法に代わる手法として、ステアリングホイール軸の操舵トルクを検出し、検出結果に基づいて運転者がリム部を把持しているか否かを検知する手法(以下、操舵トルク検知手法と称する)が知られている。
【0008】
時計と同じように、ステアリング装置の上,下の位置を12時,6時の方向とし、また左, 右の位置を9時,3時の方向とした場合、運転者が、ステアリング装置において3時方向又は9時方向に対応する位置を把持することがある。しかし、このような場合、運転者は車両のアームレストに肘を掛けたままであるという傾向があり、操舵トルクの検出が難しくなるので、検知精度が劣るという問題があった。
【0009】
従って、静電容量検知手法及び操舵トルク検知手法の何れでも高精度な検知ができない。しかしながら、特許文献1のステアリング装置では、静電容量検知手法を用いて運転者がリム部を把持しているか否かを検知しており、上述の問題を解決できない。
【0010】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、より高精度にて、運転者がステアリング装置を把持しているか否かを検知できる把持判定システム及び把持判定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る把持判定システムは、車両のステアリング装置の一部に電極を設け、前記ステアリング装置の把持状態の判定を行う把持判定システムにおいて、前記電極での静電容量を検知する第1検知部と、ステアリングホイール軸の操舵トルクを検知する第2検知部と、前記第1検知部及び前記第2検知部の検知結果に基づいて、前記ステアリング装置が把持されたか否かを判定する判定部とを備えることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る把持判定方法は、車両のステアリング装置の一部に設けられた電極を用いて前記ステアリング装置の把持状態を判定する把持判定方法において、前記電極での静電容量を検知する第1検知部から検知結果を取得し、ステアリングホイール軸の操舵トルクを検知する第2検知部から検知結果を取得し、前記第1検知部及び前記第2検知部の検知結果に基づいて、前記ステアリング装置が把持されたか否かを判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、より高精度にて、運転者がステアリング装置を把持しているか否かを検知できる把持判定システム及び把持判定方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施の形態1に係る把持判定システムの要部構成を説明する説明図である。
図2】車両用操舵装置のステアリング装置の正面図である。
図3図2のIII-III線による断面図である。
図4】実施の形態1に係る把持判定システムの判定部による把持/非把持の判定処理を説明するフローチャートである。
図5】実施の形態2に係る把持判定システムの判定部による把持/非把持の判定処理を説明するフローチャートである。
図6】実施の形態3に係る把持判定システムのステアリング装置における何れか一方のスポーク部の基部の断面を示す断面図である。
図7】実施の形態4に係る把持判定システムのステアリング装置における何れか一方のスポーク部の基部の断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施の形態に係る把持判定システム及び把持判定方法について、図面に基づいて詳述する。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る把持判定システム1の要部構成を説明する説明図である。実施の形態1に係る把持判定システム1は車両用操舵装置100を備えており、車両用操舵装置100はステアリング装置2を有する。実施の形態1に係る把持判定システム1は、車両(図示せず)の運転者がステアリング装置2を把持しているか否かを検知できるように構成されている。
【0017】
上述の如く、車両用操舵装置100はステアリング装置2を有しており、ステアリング装置2を介して運転者から操舵入力を受け付ける。ステアリング装置2にはステアリングホイール軸200の一端部が連結されている。運転者の操舵入力、即ち、ステアリング装置2の操作によってステアリングホイール軸200が軸回りを回転する。ステアリングホイール軸200の他端部には転舵軸400が係合されており、転舵軸400の両端には、車輪300が夫々連結されている。
【0018】
図2は、車両用操舵装置100のステアリング装置2の正面図である。
ステアリング装置2は、円環形状のリム部10と、リム部10の中央側に配置され、エアバッグ(図示せず)が内装されているハブ部11とを備えている。また、ハブ部11は、3つのスポーク部3によって、リム部10と連結されている。リム部10は、皮革等の表皮材によって被覆されており、ハブ部11及びスポーク部3は例えば樹脂部材によって覆われている。以下では、リム部10が円環形状である場合を例に挙げて説明するがこれに限定されるものではない。リム部10には非円形(例えば、D字形状、C字形状)のものも含まれる。
【0019】
即ち、車両の進行方向を前後方向にした場合であって、車輪300が前後方向を向いている場合、リム部10においては、横方向(車幅方向)の2箇所と、上下方向の1箇所に、スポーク部3が連設されている。
詳しくは、ハブ部11を挟んで互いに反対側、即ち、ハブ部11から左側(第1位置)及び右側(第2位置)に夫々スポーク部3が連設されており、上下方向の下側に1つのスポーク部3が連設されている。スポーク部3はリム部10の内側周面からハブ部11に向けて延びている。
【0020】
換言すれば、リム部10の周方向において、時計と同じように、上,下の位置を12時,6時の方向とし、また左, 右の位置を9時,3時の方向とした場合、スポーク部3は、時計回りの3時位置、6時位置、9時位置に設けられている。
【0021】
3つのスポーク部3のうち、例えば、左側(9時方向)のスポーク部3及び右側(3時方向)のスポーク部3の前記樹脂部材には、運転者が運転中でもオーディオ等の車載装置を操作できるように、複数の操作ボタンを有する操作パネル20(操作部)が設けられている。また、見栄えを良くすべく、各操作パネル20の周囲には、加飾部材21が周設されている。即ち、加飾部材21は、操作パネル20の周囲に形成された周囲部21を構成する。本実施の形態では、操作パネル20において、ハブ部11に面する部分を除く辺縁が加飾部材21によって囲まれている。各加飾部材21は、例えば、光沢を有する樹脂製である。以下では、各操作パネル20(加飾部材21)がスポーク部3に設けられている場合を例に挙げて説明するがこれに限定されるものではない。各操作パネル20は、リム部10及びスポーク部3に跨るように設けられても良く、リム部10に設けられても良く、ステアリング装置2の中央部(ボス部)に設けられても良い。
【0022】
実施の形態1に係る把持判定システム1の車両用操舵装置100では、ステアリング装置2においてスポーク部3の基部31に、運転者がステアリング装置2を把持したか否かを検知するための検知電極が設けられている。以下、詳しく説明する。
【0023】
図3は、図2のIII-III線による断面図である。即ち、図3は、ステアリング装置2において、左側のスポーク部3の基部31の断面を示している。
【0024】
ステアリング装置2は芯金33を有している。芯金33は、スポーク部3及びリム部10を構成する骨格の部分であり、スポーク部3及びリム部10の中心部に内在している。芯金33は、例えば、マグネシウム、アルミニウム等の金属又は合金からなる。芯金33は、被覆部32によって覆われている。即ち、加飾部材21と芯金33との間には、被覆部32が介在している。被覆部32は、絶縁性を有しており、例えば、ウレタン、エラストマー等からなる。
【0025】
加飾部材21は、被覆部32に向けて突出している突出部212を複数有している。また、被覆部32では、加飾部材21側の面において各突出部212に対応する位置に、突出部212と係合する係合凹部321が複数凹設されている。各突出部212は対応する係合凹部321と係合している。突出部212と係合凹部321との係合によって、加飾部材21が被覆部32に取り付けられている。また、加飾部材21にはメッキ処理が施されており、加飾部材21は導電性のメッキ層211によって全体的に覆われている。
【0026】
複数の突出部212のうち、いずれか一つの突出部212には、端子22が電気的に接続されている。端子22には、後述する静電容量検知部50(第1検知部)と電気的に接続された電線23が接続されている。
【0027】
端子22は、ベリリウム銅、ステインレス、高導電性の高分子化合物などの弾性を有する導電性材料からなる。また、端子22は、例えば、所定の高さを有する筒形状を成しており、突出部212に外嵌されている。端子22の内側は突出部212に対応する形状をなしている。突出部212及び端子22の嵌合によって、突出部212は端子22及び電線23を介して静電容量検知部50に電気的に接続されている。
【0028】
以上においては、ステアリング装置2において、左側のスポーク部3の基部31の構成について説明したが、右側のスポーク部3の基部31も同じ構成を有しており、詳しい説明を省略する。
【0029】
即ち、左側のスポーク部3及び右側のスポーク部3に設けられている各操作パネル20の加飾部材21は導電性のメッキ層211によって全体的に覆われており、加飾部材21(メッキ層211)は端子22及び電線23を介して静電容量検知部50に電気的に接続されている。即ち、メッキ層211は、加飾部材21の露出表面側と非露出裏面側との両方の表面上に形成されており、両方表面上のメッキ層211は電気的に接続されている。
【0030】
また、図1に示すように、実施の形態1に係る把持判定システム1は静電容量検知部50を備えている。静電容量検知部50は、上述の如く、左側のスポーク部3の加飾部材21(以下、左側加飾部材21と称する)及び右側のスポーク部3の加飾部材21(以下、右側加飾部材21と称する)と接続している。静電容量検知部50は、運転者がステアリング装置2を把持したか否かを判定する判定部60に接続されている。
【0031】
静電容量検知部50は、加飾部材21(メッキ層211)で生じる静電容量の変化を検知する。例えば、運転者がステアリング装置2を把持し、手の一部がスポーク部3の基部31(加飾部材21)に接近又は接触した際には、メッキ層211と運転者の手との間に生じる静電容量が静電容量検知部50によって検知される。静電容量検知部50は定期的に静電容量の検知を行い、斯かる検知結果を判定部60に出力する。
【0032】
即ち、実施の形態1に係る把持判定システム1においては、左側加飾部材21及び右側加飾部材21(メッキ層211)が、静電容量の検知における検知電極としての役割をなしている。左側加飾部材21に係る静電容量の検知結果(第1静電容量)、及び、右側加飾部材21に係る静電容量の検知結果(第2静電容量)は、運転者がステアリング装置2を把持したか否かの判定に用いられる。
【0033】
以下、便宜上、判定部60に出力される、左側加飾部材21に係る静電容量の検知結果を結果信号S1と称し、右側加飾部材21に係る静電容量の検知結果を結果信号S2と称する。
【0034】
更に、図1に示すように、車両用操舵装置100のステアリングホイール軸200には操舵トルクセンサ40が装着されている。操舵トルクセンサ40は、ステアリングホイール軸200に発生する操舵トルクを検出する。即ち、操舵トルクセンサ40は、運転者がステアリング装置2を操作する際にステアリングホイール軸200回りに発生する回転力を検出する。操舵トルクセンサ40は定期的に操舵トルクの検出を行い、検出された操舵トルクに応じたトルク信号S3を判定部60に出力する。操舵トルクセンサ40からのトルク信号S3は、運転者がステアリング装置2を把持したか否かの判定に用いられる。
【0035】
判定部60は、結果信号S1、結果信号S2及びトルク信号S3に基づいて、運転者がステアリング装置2を把持したか否かの判定(以下、把持/非把持の判定と称する)を行う。また、判定部60は記憶部61を有している。記憶部61は不揮発性のメモリであり、記憶部61には、把持/非把持の判定に用いられる閾値であって、結果信号S1、結果信号S2及びトルク信号S3に対応する閾値が記憶されている。
【0036】
図4は、実施の形態1に係る把持判定システム1の判定部60による把持/非把持の判定処理を説明するフローチャートである。
【0037】
判定部60は、静電容量検知部50及び操舵トルクセンサ40から結果信号S1、結果信号S2及びトルク信号S3を定期的に受け付ける(ステップS101)。
【0038】
次いで、判定部60は、対応する閾値を記憶部61から読み出し、受け付けた結果信号S1、結果信号S2及びトルク信号S3と対比することによって、閾値以上のものがあるか否かを判定する(ステップS102)。
【0039】
受け付けた結果信号S1、結果信号S2及びトルク信号S3のうち、閾値以上のものが1つでもあると判定した場合(ステップS102:YES)、判定部60は、運転者がステアリング装置2を把持している(把持中)と判定する(ステップS103)。
【0040】
また、受け付けた結果信号S1、結果信号S2及びトルク信号S3のうち、閾値以上のものが1つもないと判定した場合(ステップS102:NO)、判定部60は、運転者がステアリング装置2を把持していない(非把持中)と判定する(ステップS104)。そして、判定部60は、例えば、スピーカーを介して警告音を流す指示、又は、メーターパネルの警告灯を点灯させる指示等を行い、運転者に警告を行う(ステップS105)。
【0041】
一般に、運転者が、ステアリング装置において3時方向又は9時方向に対応する位置を把持している場合は、車両のアームレストに肘を掛けたままであるときが多いので、トルクセンサでの操舵トルクの検出が難しいことから、トルクセンサを用いる把持/非把持の判定の精度が劣る。
【0042】
これに対して、実施の形態1に係る把持判定システム1においては、左側のスポーク部3の左側加飾部材21と、右側のスポーク部3の右側加飾部材21とを用いて把持/非把持の判定に係る静電容量の検知を行う。即ち、実施の形態1に係る把持判定システム1では、ステアリング装置2において、3時方向及び9時方向に対応する位置に運転者の把持を検知するための検知電極が設けられている。
【0043】
実施の形態1に係る把持判定システム1は、操舵トルクセンサ40によって検出された操舵トルクに加え、左側加飾部材21及び右側加飾部材21に係る静電容量の検知結果に基づいて把持/非把持の判定を行う。よって、実施の形態1に係る把持判定システム1では、より正確に把持/非把持の判定を行うことができる。
【0044】
更に、実施の形態1に係る把持判定システム1においては、スポーク部3の操作パネル20の加飾部材21を静電容量の検知における検知電極として用いる。よって、検知電極を別途設ける必要がなくなるので、部品点数を抑えることができ、かつ把持判定システム1の簡略化を図ることができる。
【0045】
以上においては、静電容量の検知のための検知電極であるメッキ層211が左側加飾部材21及び右側加飾部材21に設けられている場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。
なお、実施の形態1に係る把持判定システム1においては、メッキ層211が左側加飾部材21及び右側加飾部材21に設けられているので、ステアリング装置2の見栄えを阻害することはなく、好ましい。
【0046】
以上においては、左側加飾部材21に係る結果信号S1、右側加飾部材21に係る結果信号S2、及び、操舵トルクセンサ40からのトルク信号S3に基づいて、把持/非把持の判定が行われる場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。結果信号S1及びトルク信号S3に基づいて把持/非把持の判定が行われ、又は、結果信号S2及びトルク信号S3に基づいて把持/非把持の判定が行われるように構成しても良い。
【0047】
また、以上においては、左側加飾部材21及び右側加飾部材21が静電容量の検知における検知電極としての役割をなす場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。左側のスポーク部3では、左側加飾部材21とリム部10との間の樹脂部材に、検知電極を別途設けても良く、右側のスポーク部3では、右側加飾部材21とリム部10との間の樹脂部材に、検知電極を別途設けても良い。
【0048】
更に、以上においては、端子22が筒形状を成しており、突出部212に外嵌されることによって、加飾部材21(メッキ層211)が静電容量検知部50に接続されている場合について説明したが、これに限定されるものではない。突出部212に導電性のブッシュを前もって嵌めておいても良い。この場合、端子22とメッキ層211との間にブッシュが介在することによって、端子22とメッキ層211との電気的接触性の向上を図ることができる。
【0049】
そして、以上においては、静電容量の検知のための検知電極が左側加飾部材21及び右側加飾部材21に設けられたメッキ層211である場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。メッキ層211の代わりに、導電性フィルム、導電性テープであっても良い。
【0050】
なお、以上においては、メッキ層211が加飾部材21の露出表面側と非露出裏面側との両方の表面上に形成された場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。例えば、メッキ層211が加飾部材21の非露出裏面側の表面上にのみ形成されても良い。
【0051】
且つ、上述の如く、メッキ層211が、加飾部材21の露出表面側と非露出裏面側との両方の表面上に形成された場合は、加飾部材21の露出表面側の表面を更に透明な材料で被覆しても良い。具体的には、例えば、UV硬化、加熱硬化、化学的混合による化学的硬化などによる透明樹脂コーティング、又は、ガラスコーティング等を施す。これによって、加飾部材21の露出表面側の表面に形成されたメッキ層211の耐久性及び耐摩耗性が向上する。
【0052】
(実施の形態2)
図5は、実施の形態2に係る把持判定システム1の判定部60による把持/非把持の判定処理を説明するフローチャートである。
【0053】
判定部60は、静電容量検知部50及び操舵トルクセンサ40から結果信号S1、結果信号S2及びトルク信号S3を定期的に受け付ける(ステップS201)。
【0054】
次いで、判定部60は、対応する閾値と、受け付けた結果信号S1、結果信号S2及びトルク信号S3とを対比することによって、閾値以上のものがあるか否かを判定する(ステップS202)。
【0055】
受け付けた結果信号S1、結果信号S2及びトルク信号S3のうち、閾値以上のものが1つでもあると判定した場合(ステップS202:YES)、判定部60は、ステップS202での判定結果に基づいて、閾値以上であるものが2つ以上であるか否かを判定する(ステップS203)。
【0056】
受け付けた結果信号S1、結果信号S2及びトルク信号S3のうち、閾値以上であるものが2つ以上であると判定した場合(ステップS203:YES)、判定部60は把持中であると判定する(ステップS204)。
【0057】
また、受け付けた結果信号S1、結果信号S2及びトルク信号S3のうち、閾値以上のものが1つもないと判定した場合(ステップS202:NO)、判定部60は非把持中であると判定する(ステップS205)。更に、ステップS203において、受け付けた結果信号S1、結果信号S2及びトルク信号S3のうち、閾値以上であるものが2つ以上でないと判定した場合(ステップS203:NO)も、判定部60は非把持中であると判定する(ステップS205)。
【0058】
そして、判定部60は、例えば、スピーカーを介して警告音を流す指示、又は、メーターパネルの警告灯を点灯させる指示等を行い、運転者に警告を行う(ステップS206)。
【0059】
以上のように、実施の形態2に係る把持判定システム1においては、受け付けた結果信号S1、結果信号S2及びトルク信号S3のうち、閾値以上であるものが2つ以上である場合に初めて把持中であると判定されるように構成されている。即ち、実施の形態2に係る把持判定システム1では、把持中であると判定されるための条件をより厳しく課している。運転者の安全性を高めることができる。
【0060】
(実施の形態3)
図6は、実施の形態3に係る把持判定システム1のステアリング装置2における何れか一方のスポーク部3の基部31の断面を示す断面図である。
実施の形態3に係る把持判定システム1においても、実施の形態1と同様、スポーク部3が操作パネル20(加飾部材21)及び芯金33を有しており、加飾部材21と芯金33との間には、被覆部32が介在している。
【0061】
加飾部材21は被覆部32に向けて突出している突出部212を複数有している。また、被覆部32では、各突出部212に対応する位置に、係合凹部321が凹設されており、各係合凹部321は対応する突出部212と係合している。突出部212と係合凹部321との係合によって、加飾部材21が被覆部32に取り付けられている。
【0062】
実施の形態3に係る把持判定システム1においては、複数の突出部212のうち、1つの突出部212Aが導電性の金属からなる。例えば、二色成型、インサート成型等の手法を用いることによって、加飾部材21の複数の突出部212のうち、突出部212Aのみを金属製にすることができる。突出部212Aを含む加飾部材21の表面には、メッキ処理が施されており、導電性のメッキ層211によって全体的に覆われている。
【0063】
突出部212Aは係合端子24と電気的に接続されている。係合端子24は電線23を介して静電容量検知部50と接続されている。
係合端子24は、導電性材料からなり、有底筒形状を成している。係合端子24の内側は突出部212Aに対応する形状をなしており、突出部212Aが係合端子24内に挿入され、係合端子24と係合されている。突出部212A及び係合端子24の嵌合によって、突出部212Aは係合端子24及び電線23を介して静電容量検知部50に接続されている。
【0064】
以上においては、ステアリング装置2における何れか一方のスポーク部3の基部31の構成について説明したが、他方のスポーク部3の基部31も同じ構成を有しており、詳しい説明を省略する。
【0065】
以上のように、実施の形態3に係る把持判定システム1は、導電性の金属からなる突出部212Aを有しており、突出部212Aを含む加飾部材21の表面が導電性のメッキ層211によって全体的に覆われている。また、突出部212Aは、導電性材料からなり、かつ有底筒形状を成す係合端子24内に挿入され、係合端子24と係合されている。
【0066】
従って、実施の形態3に係る把持判定システム1においては、突出部212Aとメッキ層211との接触面積が広く確保されている。よって、突出部212Aを係合端子24内に挿入する製造過程で、メッキ層211が剥がれた場合であっても突出部212Aと係合端子24との電気的接続を担保できる。
【0067】
実施の形態1と同様の部分については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0068】
(実施の形態4)
図7は、実施の形態4に係る把持判定システム1のステアリング装置2における何れか一方のスポーク部3の基部31の断面を示す断面図である。
実施の形態4に係る把持判定システム1においても、実施の形態1と同様、スポーク部3が操作パネル20(加飾部材21)及び芯金33を有しており、加飾部材21と芯金33との間には、被覆部32が介在している。
【0069】
加飾部材21は被覆部32に向けて突出している突出部212を複数有している。加飾部材21の表面には、メッキ処理が施されており、導電性のメッキ層211によって全体的に覆われている。
【0070】
また、被覆部32では、各突出部212に対応する位置に、係合凹部321が凹設されており、各係合凹部321は対応する突出部212と係合している。突出部212と係合凹部321との係合によって、加飾部材21が被覆部32に取り付けられている。
【0071】
実施の形態4に係る把持判定システム1においては、加飾部材21(メッキ層211)に端子22Aが固定されている。端子22Aは静電容量検知部50と接続されている。
【0072】
端子22Aは、導電性材料からなり、扁平環体形状を成している。ネジ25を端子22Aの内孔に通し、加飾部材21に設けられているネジ穴213に螺合させることによって、端子22Aが加飾部材21にネジ止めされている。また、これによって、端子22Aが加飾部材21のメッキ層211と電気的に接続している。即ち、加飾部材21は端子22A及び電線23を介して静電容量検知部50に接続されている。
【0073】
以上においては、ステアリング装置2における何れか一方のスポーク部3の基部31の構成について説明したが、他方のスポーク部3の基部31も同じ構成を有しており、詳しい説明を省略する。
【0074】
以上のように、実施の形態4に係る把持判定システム1では、端子22Aが加飾部材21にネジ止めされている。これによって、加飾部材21と端子22Aとの間に介在するメッキ層211が剥がれることがなくなるので、加飾部材21(メッキ層211)と端子22Aとの電気的接続を担保できる。
【0075】
実施の形態1と同様の部分については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【符号の説明】
【0076】
1 把持判定システム
2 ステアリング装置
3 スポーク部
10 リム部
20 操作パネル(操作部)
21 加飾部材(周囲部)
22,22A 端子
24 係合端子
31 基部
32 被覆部
33 芯金
40 操舵トルクセンサ(第2検知部)
50 静電容量検知部(第1検知部)
60 判定部
211 メッキ層(電極)
212,212A 突出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7