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特許7594093圧電基材、センサー、アクチュエーター、及び生体情報取得デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】圧電基材、センサー、アクチュエーター、及び生体情報取得デバイス
(51)【国際特許分類】
   H10N 30/857 20230101AFI20241126BHJP
   H10N 30/20 20230101ALI20241126BHJP
   H10N 30/30 20230101ALI20241126BHJP
【FI】
H10N30/857
H10N30/20
H10N30/30
【請求項の数】 34
(21)【出願番号】P 2023511502
(86)(22)【出願日】2022-03-30
(86)【国際出願番号】 JP2022016136
(87)【国際公開番号】W WO2022210922
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-03-27
(31)【優先権主張番号】P 2021061998
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021061999
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸子 展弘
(72)【発明者】
【氏名】堀 成孝
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 勝敏
(72)【発明者】
【氏名】水野 舜也
【審査官】宮本 博司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/092886(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/213108(WO,A1)
【文献】特開2014-186320(JP,A)
【文献】特開2020-036027(JP,A)
【文献】国際公開第2018/211817(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/212836(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 30/857
H10N 30/20
H10N 30/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の内部導体と、
前記内部導体の外周面を覆う圧電層と
を備え、
前記圧電層は、
前記内部導体に巻き付けられた圧電糸と、
前記圧電糸が前記内部導体に巻き付けられた状態を保持する接着部と
を有し、
前記圧電糸は、光学活性ポリペプチドからなる繊維を示す光学活性ポリペプチド繊維を含み、
前記圧電層の微小硬度計測定(JIS Z 2255に準拠)により測定される弾性率Yが1.0GPa以上8.0GPa以下である、圧電基材。
【請求項2】
前記圧電糸の長さ方向と、前記光学活性ポリペプチドの主配向方向とが略平行である、請求項1に記載の圧電基材。
【請求項3】
X線回折測定から下記式(a)によって求められる前記光学活性ポリペプチド繊維の配向度Fが0.50以上1.00未満である、請求項1又は請求項2に記載の圧電基材。
配向度F=(180°-α)/180° … 式(a)
〔式(a)中、αは配向由来のピークの半値幅(°)を表す。〕
【請求項4】
前記圧電糸は、一方向に螺旋状に巻回されている、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の圧電基材。
【請求項5】
前記内部導体の軸方向と、前記圧電糸の長さ方向とがなす螺旋角度は、20°~70°である、請求項4に記載の圧電基材。
【請求項6】
前記接着部は、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、酢酸ビニル樹脂系エマルション形接着剤、エチレン酢酸ビニル系エマルション形接着剤、アクリル樹脂系エマルション形接着剤、スチレンブタジエンゴム系ラテックス形接着剤、シリコーン樹脂系接着剤、α-オレフィン系接着剤、塩化ビニル樹脂系溶剤形接着剤、ゴム系接着剤、弾性接着剤、クロロプレンゴム系溶剤形接着剤、ニトリルゴム系溶剤形接着剤、及びシアノアクリレート系接着剤から選ばれる少なくとも1つからなる、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の圧電基材。
【請求項7】
前記圧電層の外周側に外部導体を更に備え、
前記内部導体と前記外部導体とは電気的に接続されていない、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の圧電基材。
【請求項8】
前記光学活性ポリペプチドが、βシート構造を有する、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の圧電基材。
【請求項9】
前記光学活性ポリペプチドが、フィブロイン及びクモ糸タンパク質の少なくとも一方を含む、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の圧電基材。
【請求項10】
前記光学活性ポリペプチド繊維が、シルク及びクモ糸の少なくとも一方を含む、請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の圧電基材。
【請求項11】
前記シルクが、精錬シルクである、請求項10に記載の圧電基材。
【請求項12】
前記圧電糸の各々は、複数の光学活性ポリペプチド繊維を含み、
前記圧電糸の撚数は、500T/m以下である、請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の圧電基材。
【請求項13】
最外周に、電気的絶縁体を更に備える、請求項1~請求項12のいずれか1項に記載の圧電基材。
【請求項14】
請求項1~請求項13のいずれか1項に記載の圧電基材を備える、センサー。
【請求項15】
請求項1~請求項13のいずれか1項に記載の圧電基材を備える、アクチュエーター。
【請求項16】
請求項1~請求項13のいずれか1項に記載の圧電基材を備える、生体情報取得デバイス。
【請求項17】
長尺状の内部導体と、
前記内部導体の外周面を覆う圧電層と
を備え、
前記圧電層は、長尺状圧電体が前記内部導体に巻き付けられることによって形成されており、かつ前記内部導体に固定されておらず、
前記長尺状圧電体は、複数の圧電糸と、前記複数の圧電糸を束ねる収束体とを有し、
前記複数の圧電糸の少なくとも1つは、光学活性ポリペプチドからなる繊維を示す光学活性ポリペプチド繊維を含み、
微小硬度計測定(JIS Z 2255に準拠)により測定される前記長尺状圧電体の弾性率Yが、1GPa以上10GPa以下である、圧電基材。
【請求項18】
前記長尺状圧電体の長さ方向と、前記光学活性ポリペプチドの主配向方向とが略平行である、請求項17に記載の圧電基材。
【請求項19】
X線回折測定から下記式(a)によって求められる前記光学活性ポリペプチド繊維の配向度Fが0.50以上1.00未満である、請求項17又は請求項18に記載の圧電基材。
配向度F=(180°-α)/180° … 式(a)
〔式(a)中、αは配向由来のピークの半値幅(°)を表す。〕
【請求項20】
前記長尺状圧電体は、一方向に螺旋状に巻回されている、請求項17~請求応19のいずれか1項に記載の圧電基材。
【請求項21】
前記内部導体の軸方向と、前記長尺状圧電体の長さ方向とがなす螺旋角度は、20°~70°である、請求項20に記載の圧電基材。
【請求項22】
前記収束体は、前記複数の圧電糸の長さ方向に直交する方向に沿って前記複数の圧電糸を並列させ、かつ前記複数の圧電糸のうち隣接する圧電糸同士を接触させた状態で、前記複数の圧電糸を束ねている、請求項17~請求項21のいずれか1項に記載の圧電基材。
【請求項23】
前記収束体は、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、酢酸ビニル樹脂系エマルション形接着剤、エチレン酢酸ビニル系エマルション形接着剤、アクリル樹脂系エマルション形接着剤、スチレンブタジエンゴム系ラテックス形接着剤、シリコーン樹脂系接着剤、α-オレフィン系接着剤、塩化ビニル樹脂系溶剤形接着剤、ゴム系接着剤、弾性接着剤、クロロプレンゴム系溶剤形接着剤、ニトリルゴム系溶剤形接着剤、及びシアノアクリレート系接着剤から選ばれる少なくとも1つからなる、請求項17~請求項22のいずれか1項に記載の圧電基材。
【請求項24】
前記長尺状圧電体の厚さが0.001mm~0.4mmであり、
前記長尺状圧電体の幅が0.1mm~30mmであり、
前記長尺状圧電体の厚さに対する前記長尺状圧電体の幅の比が2以上である、請求項17~請求項23のいずれか1項に記載の圧電基材。
【請求項25】
前記圧電層の外周側に外部導体を更に備え、
前記内部導体と前記外部導体とは電気的に接続されていない、請求項17~請求項24のいずれか1項に記載の圧電基材。
【請求項26】
前記光学活性ポリペプチドが、βシート構造を有する、請求項17~請求項25のいずれか1項に記載の圧電基材。
【請求項27】
前記光学活性ポリペプチドが、フィブロイン及びクモ糸タンパク質の少なくとも一方を含む、請求項17~請求項26のいずれか1項に記載の圧電基材。
【請求項28】
前記光学活性ポリペプチドからなる繊維が、シルク及びクモ糸の少なくとも一方を含む、請求項17~請求項27のいずれか1項に記載の圧電基材。
【請求項29】
前記シルクは、精錬シルクである、請求項28に記載の圧電基材。
【請求項30】
前記複数の圧電糸の各々は、複数の前記光学活性ポリペプチド繊維を含み、
前記複数の圧電糸の各々の撚数は、500T/m以下である、請求項17~請求項29のいずれか1項に記載の圧電基材。
【請求項31】
最外周に、電気的絶縁体を更に備える、請求項17~請求項30のいずれか1項に記載の圧電基材。
【請求項32】
請求項17~請求項31のいずれか1項に記載の圧電基材を備える、センサー。
【請求項33】
請求項17~請求項31のいずれか1項に記載の圧電基材を備える、アクチュエーター。
【請求項34】
請求項17~請求項31のいずれか1項に記載の圧電基材を備える、生体情報取得デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電基材、センサー、アクチュエーター、及び生体情報取得デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光学活性を有するポリペプチド(以下、「光学活性ポリペプチド」という。)を含む圧電体を、センサーやアクチュエーター等の圧電デバイスへ応用をすることが検討されている。
特許文献1は、糸状の圧電体を用いた圧電基材を開示している。特許文献1に具体的に開示された圧電基材は、錦糸線と、特定の生糸と、銅箔リボンとを備える。錦糸線は、芯材として機能する。生糸は、光学活性ポリペプチドからなる繊維の一例である。生糸は、錦糸線の周りに、錦糸線の露出しないように隙間なく螺旋状に巻回されている。以下、錦糸線の周りに巻回された生糸を「生糸層」という。銅箔リボンは、錦糸線に巻回された生糸の周りに、生糸が露出しないように隙間なく螺旋状に巻回されている。以下、錦糸線に巻回された生糸の周りに巻回された銅箔リボンを「銅箔リボン層」という。錦糸線、及び生糸層、及び銅箔リボン層は、シアノアクリレート系接着剤によって接合されている。換言すると、錦糸線、生糸層、及び銅箔リボン層は、機械的に一体となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2018/092886号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の圧電基材よりも圧電感度が優れる圧電基材が求められている。
【0005】
一方、特許文献1に開示の圧電基材を用いて同軸線構造のラインセンサを製造する場合(例えば、ウェアラブル製品の一部又は全部として使用した場合)、使用する形態に合わせて所望の長さに圧電基材をカットし、圧電基材に端子付けを行う必要がある。この端子付けを行う前の処理として、端子付け準備を行う必要がある。端子付け準備では、圧電基材の両端部から生糸層及び銅箔リボン層を剥ぎ取って、錦糸線を露出させる。詳しくは、端子付け準備では、銅箔リボン層を生糸層から剥がし、錦糸線の取り出しのために適切な長さ(通常、数mm程度)の生糸層を取り除いて、錦糸線を取り出す。
しかしながら、特許文献1に開示の圧電基材では、錦糸線、生糸層、及び銅箔リボン層が機械的に一体となっている。そのため、端子付け準備において、生糸層を取り除く際、銅箔リボン層又は錦糸線が破損するおそれがあった。更に、端子付け準備の作業時間が長くなるおそれがあった。そのため、端子付け準備を効率良く行うことを可能にする圧電基材が求められている。更に、従来よりも圧電感度に優れる圧電基材が求められている。
【0006】
本開示の一実施形態は、上記事情に鑑みてなされたものである。
即ち、本開示の一実施形態における目的は、圧電感度が優れる圧電基材、センサー、アクチュエーター、及び生体情報取得デバイスを提供することである。
本発明の他の実施形態における目的は、端子付け準備を効率良く行うことを可能にするとともに、圧電感度に優れる圧電基材、センサー、アクチュエーター、及び生体情報取得デバイスを提供することである。

【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1> 長尺状の内部導体と、
前記内部導体の外周面を覆う圧電層と
を備え、
前記圧電層は、
前記内部導体に巻き付けられた圧電糸と、
前記圧電糸が前記内部導体に巻き付けられた状態を保持する接着部と
を有し、
前記圧電糸は、光学活性ポリペプチドからなる繊維を示す光学活性ポリペプチド繊維を含み、
前記圧電層の微小硬度計測定(JIS Z 2255に準拠)により測定される弾性率Yが1.0GPa以上8.0GPa以下である、圧電基材。
<2> 前記圧電糸の長さ方向と、前記光学活性ポリペプチドの主配向方向とが略平行である、前記<1>に記載の圧電基材。
<3> X線回折測定から下記式(a)によって求められる前記光学活性ポリペプチド繊維の配向度Fが0.50以上1.00未満である、前記<1>又は<2>に記載の圧電基材。
配向度F=(180°-α)/180° … 式(a)
〔式(a)中、αは配向由来のピークの半値幅(°)を表す。〕
<4> 前記圧電糸は、一方向に螺旋状に巻回されている、前記<1>~<3>のいずれか1つに記載の圧電基材。
<5> 前記内部導体の軸方向と、前記圧電糸の長さ方向とがなす螺旋角度は、20°~70°である、前記<4>に記載の圧電基材。
<6>前記接着部は、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、酢酸ビニル樹脂系エマルション形接着剤、エチレン酢酸ビニル系エマルション形接着剤、アクリル樹脂系エマルション形接着剤、スチレンブタジエンゴム系ラテックス形接着剤、シリコーン樹脂系接着剤、α-オレフィン系接着剤、塩化ビニル樹脂系溶剤形接着剤、ゴム系接着剤、弾性接着剤、クロロプレンゴム系溶剤形接着剤、ニトリルゴム系溶剤形接着剤、及びシアノアクリレート系接着剤から選ばれる少なくとも1つからなる、前記<1>~<5>のいずれか1つに記載の圧電基材。
<7> 前記圧電層の外周側に外部導体を更に備え、
前記内部導体と前記外部導体とは電気的に接続されていない、前記<1>~<6>のいずれか1つに記載の圧電基材。
<8> 前記光学活性ポリペプチドが、βシート構造を有する、前記<1>~<7>のいずれか1つに記載の圧電基材。
<9> 前記光学活性ポリペプチドが、フィブロイン及びクモ糸タンパク質の少なくとも一方を含む、前記<1>~<8>のいずれか1つに記載の圧電基材。
<10> 前記光学活性ポリペプチド繊維が、シルク及びクモ糸の少なくとも一方を含む、前記<1>~<9>のいずれか1つに記載の圧電基材。
<11> 前記シルクが、精錬シルクである、前記<10>に記載の圧電基材。
<12> 前記圧電糸の各々は、複数の光学活性ポリペプチド繊維を含み、
前記圧電糸の撚数は、500T/m以下である、前記<1>~<11>のいずれか1つに記載の圧電基材。
<13> 最外周に、電気的絶縁体を更に備える、前記<1>~<12>のいずれか1つに記載の圧電基材。
<14> 前記<1>~<13>のいずれか1つに記載の圧電基材を備える、センサー。
<15> 前記<1>~<13>のいずれか1つに記載の圧電基材を備える、アクチュエーター。
<16> 前記<1>~<13>のいずれか1つに記載の圧電基材を備える、生体情報取得デバイス。
<17> 長尺状の内部導体と、
前記内部導体の外周面を覆う圧電層と
を備え、
前記圧電層は、長尺状圧電体が前記内部導体に巻き付けられることによって形成されており、かつ前記内部導体に固定されておらず、
前記長尺状圧電体は、複数の圧電糸と、前記複数の圧電糸を束ねる収束体とを有し、
前記複数の圧電糸の少なくとも1つは、光学活性ポリペプチドからなる繊維を示す光学活性ポリペプチド繊維を含む、圧電基材。
<18> 前記長尺状圧電体の長さ方向と、前記光学活性ポリペプチドの主配向方向とが略平行である、前記<17>に記載の圧電基材。
<19> X線回折測定から下記式(a)によって求められる前記光学活性ポリペプチド繊維の配向度Fが0.50以上1.00未満である、前記<17>又は<18>に記載の圧電基材。
配向度F=(180°-α)/180° … 式(a)
〔式(a)中、αは配向由来のピークの半値幅(°)を表す。〕
<20> 前記長尺状圧電体は、一方向に螺旋状に巻回されている、前記<17>~請求応19のいずれか1つに記載の圧電基材。
<21> 前記内部導体の軸方向と、前記長尺状圧電体の長さ方向とがなす螺旋角度は、20°~70°である、前記<20>に記載の圧電基材。
<22> 前記収束体は、前記複数の圧電糸の長さ方向に直交する方向に沿って前記複数の圧電糸を並列させ、かつ前記複数の圧電糸のうち隣接する圧電糸同士を接触させた状態で、前記複数の圧電糸を束ねている、前記<17>~<21>のいずれか1つに記載の圧電基材。
<23> 前記収束体は、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、酢酸ビニル樹脂系エマルション形接着剤、エチレン酢酸ビニル系エマルション形接着剤、アクリル樹脂系エマルション形接着剤、スチレンブタジエンゴム系ラテックス形接着剤、シリコーン樹脂系接着剤、α-オレフィン系接着剤、塩化ビニル樹脂系溶剤形接着剤、ゴム系接着剤、弾性接着剤、クロロプレンゴム系溶剤形接着剤、ニトリルゴム系溶剤形接着剤、及びシアノアクリレート系接着剤から選ばれる少なくとも1つからなる、前記<17>~<22>のいずれか1つに記載の圧電基材。
<24> 前記長尺状圧電体の厚さが0.001mm~0.4mmであり、
前記長尺状圧電体の幅が0.1mm~30mmであり、
前記長尺状圧電体の厚さに対する前記長尺状圧電体の幅の比が2以上である、前記<17>~<23>のいずれか1つに記載の圧電基材。
<25> 微小硬度計測定(JIS Z 2255に準拠)により測定される前記長尺状圧電体の弾性率Yが、1GPa以上10GPa以下である、前記<17>~<24>のいずれか1つに記載の圧電基材。
<26> 前記圧電層の外周側に外部導体を更に備え、
前記内部導体と前記外部導体とは電気的に接続されていない、前記<17>~<25>のいずれか1つに記載の圧電基材。
<27> 前記光学活性ポリペプチドが、βシート構造を有する、前記<17>~<26>のいずれか1つに記載の圧電基材。
<28> 前記光学活性ポリペプチドが、フィブロイン及びクモ糸タンパク質の少なくとも一方を含む、前記<17>~<27>のいずれか1つに記載の圧電基材。
<29> 前記光学活性ポリペプチドからなる繊維が、シルク及びクモ糸の少なくとも一方を含む、前記<17>~<28>のいずれか1つに記載の圧電基材。
<30> 前記シルクは、精錬シルクである、前記<29>に記載の圧電基材。
<31> 前記複数の圧電糸の各々は、複数の前記光学活性ポリペプチド繊維を含み、
前記複数の圧電糸の各々の撚数は、500T/m以下である、前記<17>~<30>のいずれか1つに記載の圧電基材。
<32> 最外周に、電気的絶縁体を更に備える、前記<17>~<31>のいずれか1つに記載の圧電基材。
<33> 前記<17>~<32>のいずれか1つに記載の圧電基材を備える、センサー。
<34> 前記<17>~<32>のいずれか1つに記載の圧電基材を備える、アクチュエーター。
<35> 前記<17>~<32>のいずれか1つに記載の圧電基材を備える、生体情報取得デバイス。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、圧電感度が優れる圧電基材、センサー、アクチュエーター、及び生体情報取得デバイスが提供される。
本開示によれば、端子付け準備を効率良く行うことを可能にするとともに、圧電感度に優れる圧電基材、センサー、アクチュエーター、及び生体情報取得デバイスが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】本開示の第1態様の第1実施形態に係る圧電基材の外観を示す概略側面図である。
図1B図1AのIB-IB線断面図である。
図2】本開示の第1態様の第2実施形態に係る圧電基材の外観を示す概略側面図である。
図3A】本開示の第2態様の第1実施形態に係る圧電基材の外観を示す概略側面図である。
図3B】本開示の第2態様の第1実施形態に係る長尺状圧電体の外観を示す概略正面図である。
図3C図3BのIC-IC線断面図である。
図3D図3AのID-ID線断面図である。
図4】本開示の第2態様の第2実施形態に係る圧電基材の外観を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0011】
(1)第1態様
(1.1)圧電基材
本開示の第1態様の圧電基材は、長尺状の内部導体と、前記内部導体の外周面を覆う圧電層とを備える。前記圧電層は、前記内部導体に巻き付けられた圧電糸と、前記圧電糸が前記内部導体に巻き付けられた状態を保持する接着部とを有する。前記圧電糸は、光学活性ポリペプチドからなる繊維を示す光学活性ポリペプチド繊維を含む。前記圧電層の微小硬度計測定(JIS Z 2255に準拠)により測定される弾性率Yが1.0GPa以上8.0GPa以下である。
前記圧電糸の長さ方向と、前記光学活性ポリペプチドの主配向方向とが略平行であることが好ましい。
X線回折測定から下記式(a)によって求められる前記光学活性ポリペプチド繊維の配向度Fが0.50以上1.00未満であることが好ましい。
配向度F=(180°-α)/180° … 式(a)
〔式(a)中、αは配向由来のピークの半値幅(°)を表す。〕
【0012】
本開示において、「圧電糸」とは、糸状の圧電体を示す。
本開示において、「光学活性ポリペプチド」とは、不斉炭素原子を有し、かつ、光学異性体の存在量に偏りがあるポリペプチドを示す。
本開示において、「略平行」とは、2つの線分のなす角度を0°以上90°以下の範囲で表した場合に、2つの線分のなす角度が、0°以上30°未満(好ましくは0°以上22.5°以下、より好ましくは0°以上10°以下、更に好ましくは0°以上5°以下、特に好ましくは0°以上3°以下)であることを指す。
本開示において、圧電糸の配向度Fは、圧電糸に含まれる光学活性ポリペプチドの配向の度合いを示す指標である。
【0013】
本開示の第1態様の圧電基材は、上記の構成からなるので、特許文献1に記載のような従来の圧電基材よりも圧電感度が優れる。
【0014】
(1.1.1)圧電層
本開示の第1態様の圧電基材は、圧電層を備える。
【0015】
圧電層は、内部導体の外周面を覆っている。圧電層は、内部導体の外周面の全面を覆っていることが好ましい。
【0016】
圧電層の弾性率Yは、1.0GPa以上8.0GPa以下である。圧電層の弾性率Yが上記範囲内であれば、圧電基材の圧電感度がより優れる。
なかでも、圧電層の弾性率Yは、圧電基材の圧電感度を向上させる観点から、第1範囲又は第2範囲の範囲内にあることが好ましく、第2範囲の範囲内にあることがより好ましい。
第1範囲は、1.0GPa以上3.6GPa以下であり、好ましくは1.5GPa以上3.5GPa以下、より好ましくは2.0GPa以上3.4GPa以下、さらに好ましくは2.5GPa以上3.3GPa以下、特に好ましくは2.5GPa以上3.2GPa以下である。
第2範囲は、4.0GPa以上8.0GPa以下であり、好ましくは4.2GPa以上7.0GPa以下、より好ましくは4.4GPa以上6.5GPa以下、さらに好ましくは4.6GPa以上6.0GPa以下、特に好ましくは4.9GPa以上5.5GPa以下である。
圧電層の弾性率Yの測定方法は、実施例に記載の測定方法と同様である。
【0017】
圧電層の弾性率Yを上記範囲内にする方法としては、例えば、圧電層を構成する接着部の材料を調整する方法等が挙げられる。
【0018】
圧電層の厚みは、特に限定されず、好ましくは0.02mm以上2.00mm以下、より好ましくは0.05mm以上1.00mm以下である。
【0019】
圧電層は、内部導体に固定されていてもよいし、内部導体に固定されていなくてもよい。
本開示において、「内部導体に固定されている」とは、圧電層が、接着剤等によって、内部導体と機械的に一体となっていることを示す。
本開示において、「内部導体に固定されていない」とは、圧電層が、接着剤等によって、内部導体と機械的に一体となっていないことを示す。
なかでも、圧電層は、内部導体に固定されていないことが好ましい。これにより、後述する圧電基材の端子付け準備を行う際、圧電層及び内部導体が機械的に一体となっている構成よりも、内部導体から圧電層を容易に取り除くことができる。この際、内部導体は、圧電層と機械的に一体となっていないため、破損しにくい。その結果、圧電基材は、圧電基材の端子付け準備を効率良く行うことを可能にする。
圧電基材を用いて同軸線構造のラインセンサを製造する場合(例えば、ウェアラブル製品の一部又は全部として使用した場合)、使用する形態に合わせて所望の長さに圧電基材をカットし、圧電基材に端子付けを行う必要がある。この端子付けを行う前の処理として、端子付け準備を行う必要がある。端子付け準備では、圧電基材の両端部から生糸層及び銅箔リボン層を剥ぎ取って、錦糸線を露出させる。詳しくは、端子付け準備では、銅箔リボン層を生糸層から剥がし、錦糸線の取り出しのために適切な長さ(通常、数mm程度)の生糸層を取り除いて、錦糸線を取り出す。
更に、圧電層は、内部導体に対して内部導体の軸方向に変位可能である。これにより、圧電基材に外部応力が作用すると、圧電基材は、従来の圧電基材よりも変形しやすい。そのため、外部応力の作用に起因する圧電基材の内部応力は、局所的に集中しにくい。その結果、圧電基材の耐久性は優れる。
【0020】
圧電層は、圧電糸と、接着部とを有する。圧電糸は、内部導体に巻き付けられている。接着部は、圧電糸が内部導体に巻き付けられた状態を保持している。
圧電糸は、内部導体の外周面上に直接的に巻き付けられていてもよい。内部導体の外周面上に後述する内側電気的絶縁体が配置されている場合は、圧電糸は、内側電気的絶縁体の外周面上に巻き付けられることで、内部導体に間接的に巻き付けられていてもよい。
【0021】
圧電糸の巻き方は、特に限定されず、圧電糸が内部導体に、内部導体の軸方向に対して螺旋状に巻回されていてもよいし、内部導体の軸方向に対して螺旋状に巻回されていなくてもよい。なかでも、圧電糸の巻き方は、圧電基材の圧電感度を向上させる観点から、圧電糸が内部導体に内部導体の軸方向に対して螺旋状に巻回されていることが好ましい。圧電糸は、重なり合うように巻回されていてもよいし、重なり合わないように巻回されていてもよい。
本開示の第1態様の圧電基材では、螺旋状に巻回されている圧電糸にずり応力が印加されることにより、電荷が発生しやすい。これにより、圧電性が発現しやすい。
圧電糸に対するずり応力は、例えば、第1非塑性変形、第2非塑性変形、又は第3非塑性変形等によって印加することができる。
第1非塑性変形は、螺旋状に巻回されている圧電糸の全体を螺旋軸方向に引っ張ることを示す。
第2非塑性変形は、螺旋状に巻回されている圧電糸の一部を捻る(即ち、圧電糸の一部を螺旋軸を軸として捻る)ことを示す。
第3非塑性変形は、螺旋状に巻回されている圧電糸の一部又は全体を曲げることを示す。
【0022】
圧電糸は、内部導体に、一方向に螺旋状に巻回されていることが好ましい。
「一方向に螺旋状に巻回されている」とは、第1巻回態様、又は第2巻回態様を示す。
第1巻回態様は、圧電基材の一端から見たときに、手前側から奥側に向けて左巻き(即ち、反時計回り)となるように、内部導体に圧電糸が螺旋状に巻回されていることを示す。
第2巻回態様は、圧電基材の一端から見たときに手前側から奥側に向けて右巻き(即ち、時計回り)となるように、内部導体に圧電糸が螺旋状に巻回されていることを示す。
圧電糸が一方向に螺旋状に巻回されている場合には、発生した電荷の極性が打ち消し合う現象(即ち、圧電性が低下する現象)が抑制される。従って、圧電基材の圧電性は、より向上する。
【0023】
圧電基材が一方向に螺旋状に巻回されている圧電糸を備える態様は、圧電糸からなる層の一層のみを備える態様だけでなく、圧電糸からなる層を複数層重ねた態様も包含する。
圧電糸からなる層を複数層重ねた態様として、例えば、一方向に螺旋状に巻回されている一層目の圧電糸からなる層の上に重ねて、二層目の圧電糸からなる層を上記一方向と同じ方向に螺旋状に巻回した態様が挙げられる。
圧電基材の態様としては、圧電糸が、一方向に螺旋状に巻回されている第1圧電糸と、一方向とは異なる方向に螺旋状に巻回されている第2圧電糸とを備える態様も挙げられる。この態様では、第1圧電糸に含まれる光学活性ポリペプチドのキラリティと、第2圧電糸に含まれる光学活性ポリペプチドのキラリティとは、互いに異なる。
【0024】
螺旋角度は、好ましくは20°~70°、より好ましくは25°~65°、さらに好ましくは30°~60°である。
「螺旋角度」とは、内部導体の軸方向と、圧電糸の長さ方向とがなす角度を示す。螺旋角度の測定方法は、圧電基材が後述する外部導体を備える場合は、圧電基材の外部導体を取り除いた後、圧電層を内部導体の軸方向にまっすぐに置き、光学顕微鏡で写真撮影し、内部導体の軸方向に対する圧電糸の角度を、極端にずれている部位を除き、画像処理にて5点測定し、平均値から算出した値である。
【0025】
(1.1.1.1)圧電糸
圧電糸は、光学活性ポリペプチド繊維を含む。「光学活性ポリペプチド繊維」とは、光学活性ポリペプチドからなる繊維を示す。圧電糸が光学活性ポリペプチドを含むことは、圧電基材の圧電性の発現に寄与する。
【0026】
圧電糸は、撚糸であっても無撚糸であってもよい。なかでも、圧電糸は、圧電性の観点から、撚糸であることが好ましい。無撚糸は、1本の原糸(繊維)、複数本の原糸(繊維)の集合体等が挙げられる。
撚糸を構成する原糸(繊維)の数は、特に限定されず、圧電糸の強度を確保する観点から、好ましくは3本~120本、より好ましくは4本~30本である。
撚糸を構成する原糸(繊維)は、少なくとも1本の光学活性ポリペプチド繊維を含めば、光学活性ポリペプチドではない繊維を含んでもいてもよい。なかでも、圧電基材の圧電感度を向上させる観点から、撚糸を構成する原糸(繊維)は、複数の光学活性ポリペプチド繊維のみからなることが好ましい。
【0027】
複数の圧電糸の各々は、複数の光学活性ポリペプチド繊維を含み、複数の圧電糸の各々の撚数は、好ましくは500T/m以下、より好ましくは300T/m以下である。複数の圧電糸の各々の撚数がこの範囲内にあると、圧電糸は破断しにくくなるとともに、圧電基材の圧電感度がより優れる。
【0028】
圧電糸の太さ(圧電糸が複数の繊維の集合体である場合には集合体全体の太さ)は、特に制限されず、好ましくは0.0001mm~2mm、より好ましくは0.001mm~1mm、さらに好ましくは0.005mm~0.8mmである。
圧電糸が、1本の原糸又は複数の原糸の集合体である場合、原糸1本の繊度は、好ましくは0.01デニール~10000デニール、より好ましくは0.1デニール~1000デニール、さらに好ましくは1デニール~100デニールが特に好ましい。
【0029】
(1.1.1.1.1)光学活性ポリペプチド繊維
光学活性ポリペプチド繊維は、長繊維であることが好ましい。これにより、光学活性ポリペプチド繊維が短繊維である場合よりも、圧電基材に印加されたずり応力は、圧電基材に伝わり易くなる。その結果、圧電基材の圧電感度は、向上する。
本開示において、「長繊維」とは、圧電基材の長さ方向の一端から他端まで連続して巻回できる長さを有する繊維を意味する。
シルク(絹糸)、ウール、モヘヤ、カシミア、キャメル、ラマ、アルパカ、ビキューナ、アンゴラ、及びクモ糸は、いずれも長繊維に該当する。長繊維の中でも、シルク及びクモ糸が、圧電性の観点から、好ましい。
【0030】
光学活性ポリペプチド繊維の配向度Fは、0.50以上1.00未満の範囲内であることが好ましい。
光学活性ポリペプチド繊維の配向度Fが0.50以上であれば、圧電基材の圧電性の発現に寄与する。光学活性ポリペプチド繊維の配向度Fが1.00未満であれば、圧電基材の生産性に寄与する。
光学活性ポリペプチド繊維の配向度Fは、好ましくは0.50以上0.99以下、より好ましくは0.70以上0.98以下、更に好ましくは0.80以上0.97以下である。
光学活性ポリペプチド繊維の配向度Fが1.00であることは、光学活性ポリペプチド繊維に含まれる光学活性ポリペプチドの主配向方向と、光学活性ポリペプチド繊維の長さ方向とが平行であることを示す。また、光学活性ポリペプチド繊維の配向度Fが0.80以上1.00未満であることは、光学活性ポリペプチド繊維に含まれる光学活性ポリペプチドの主配向方向と、光学活性ポリペプチド繊維の長さ方向とが略平行であることを示す。
光学活性ポリペプチド繊維の配向度Fは、圧電糸を基準軸として重ねて試料ホルダーに固定し、X線回折測定から、配向性由来のピーク付近、例えばシルクの場合、2θ=20°付近の方位角分布強度を測定し、下記式(a)によって求められる値であり、c軸配向度を意味する。
配向度F=(180°-α)/180° … 式(a)
〔式(a)中、αは配向由来のピークの半値幅(°)を表す。〕
【0031】
圧電糸の長さ方向と、圧電糸に含まれる光学活性ポリペプチドの主配向方向とは略平行であることが好ましい。
圧電糸の長さ方向と、圧電糸に含まれる光学活性ポリペプチドの主配向方向とが略平行であることは、圧電基材の圧電性の発現に寄与する。
圧電糸の長さ方向と、圧電糸に含まれる光学活性ポリペプチドの主配向方向とが略平行であることは、圧電糸がその長さ方向に対して引張強度に優れることを示す。従って、圧電糸を螺旋状に巻回する際に、圧電糸は破断しにくい。
圧電糸がシルク又はクモ糸である場合、シルク又はクモ糸の生成の過程で、圧電糸(シルク又はクモ糸)の長さ方向と、圧電糸に含まれる光学活性ポリペプチド(例えばフィブロイン又はクモ糸タンパク質)の主配向方向とが略平行となっている。
圧電糸の長さ方向と、圧電糸に含まれる光学活性ポリペプチドの主配向方向とが略平行であることは、X線回折測定において、サンプル(圧電糸)の設置方向と結晶ピークの方位角と、を比較することによって確認できる。
圧電糸の長さ方向と、圧電糸に含まれる光学活性ポリペプチドの主配向方向とを略平行にする方法としては、例えば、圧電糸として、複数の特定の光学活性ポリペプチド繊維を含む撚糸を用いる方法等が挙げられる。特定の光学活性ポリペプチド繊維は、光学活性ポリペプチド繊維の配向度Fが0.80以上1.00未満の光学活性ポリペプチド繊維を示す。
【0032】
光学活性ポリペプチドは、圧電糸の圧電性及び圧電糸の強度の観点から、βシート構造を有することが好ましい。
【0033】
βシート構造を有する光学活性ポリペプチドとしては、光学活性を有する動物性タンパク質、光学活性を有する合成タンパク質等が挙げられる。
光学活性を有する動物性タンパクとしては、フィブロイン、クモ糸タンパク質、セリシン、コラーゲン、ケラチン、エラスチン等が挙げられる。クモ糸タンパク質としては、特許文献1に記載のクモ糸タンパク質を用いることができる。クモ糸タンパク質としては、人工的に合成する手法で得られた人工くも糸を用いることができる。
なかでも、光学活性ポリペプチドは、フィブロイン及びクモ糸タンパク質の少なくとも一方を含むことが好ましく、フィブロインを含むことが好ましい。
光学活性を有する合成タンパク質としては、例えば、合成クモ糸(例えば、「QMONOS(登録商標)」、合成ミノムシ糸、合成タンパク質(例えば、「Brewed Protein(登録商標)」等)等が挙げられる。光学活性を有する合成タンパク質の形態は、糸状が好ましい。上記の合成タンパク質を含む糸状繊維は、「Brewed Protein(登録商標)」を含む糸又は衣類等から得ることもできる。
【0034】
βシート構造を有する光学活性ポリペプチド繊維としては、光学活性を有する動物性タンパク質からなる繊維が挙げられる。光学活性を有する動物性タンパク質からなる繊維としては、例えば、シルク、ウール、モヘヤ、カシミア、キャメル、ラマ、アルパカ、ビキューナ、アンゴラ、クモ糸、等が挙げられる。
なかでも、光学活性ポリペプチド繊維は、圧電性の観点から、シルク及びクモ糸の少なくとも一方を含むことが好ましく、シルク及びクモ糸の少なくとも一方からなることがより好ましく、シルクからなることが特に好ましい。
【0035】
シルクとしては、生糸シルク(raw silk)、精錬シルク、再生シルク、蛍光シルク等が挙げられる。
シルクとしては、生糸又は精錬シルクが好ましく、精錬シルクが特に好ましい。
「精錬シルク」とは、セリシンとフィブロインとの2重構造である生糸からセリシンを取り除いたシルクを示す。「精錬」とは、生糸からセリシンを取り除く操作を示す。生糸の色は艶の無い白色であるが、生糸からセリシンを取り除くこと(即ち、精錬)により、艶の無い白色から光沢がある白銀色へと変化する。また、精錬により、柔らかい風合いが増す。
【0036】
(1.1.1.2)接着部
接着部は、圧電糸が内部導体に巻き付けられた状態を保持する。
これにより、圧電基材に外部応力が印加された際、外部応力に起因するずり応力が圧電糸に作用しやすくなる。
【0037】
接着部は、圧電糸の露出面の全体を覆っていてもよいし、圧電糸の露出面の一部を覆っていてもよい。なかでも、圧電基材の圧電感度を向上させる観点から、接着部は、圧電糸の露出面の一部を覆っていることが好ましい。
【0038】
接着部は、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、酢酸ビニル樹脂系エマルション形接着剤、エチレン酢酸ビニル系エマルション形接着剤、アクリル樹脂系エマルション形接着剤、スチレンブタジエンゴム系ラテックス形接着剤、シリコーン樹脂系接着剤、α-オレフィン系接着剤、塩化ビニル樹脂系溶剤形接着剤、ゴム系接着剤、弾性接着剤、クロロプレンゴム系溶剤形接着剤、ニトリルゴム系溶剤形接着剤、及びシアノアクリレート系接着剤から選ばれる少なくとも1つからなることが好ましい。
以下、接着部の材料を「収束剤」という場合がある。
【0039】
接着部の表面には、凹凸が形成されていないことが好ましい。接着部の表面に凹凸が形成されていなければ、例えば、圧電層の外周面上に後述する長尺状導体を巻回して外部導体を形成する場合、長尺状導体の巻乱れの発生は抑制され得る。つまり、接着部の表面に凹凸が形成されていなければ、長尺状導体の巻回工程での歩留まりは向上する。更に、長尺状導体の巻乱れに起因する圧電感度の低下の発生は、抑制され得る。
接着部の表面に、凹凸に形成されないようにする方法としては、例えば、内部導体に巻き付けられた圧電糸に供給された収束剤が硬化する前に、過剰に供給された収束剤を内部導体に巻き付けられた圧電糸からふき取る方法、収束剤として溶剤を多く含有する接着剤を用いる方法等が挙げられる。溶剤を多く含有する接着剤とは、樹成成分(固形分)の含有量が接着剤の総量に対して60質量%以下である接着剤を示す。
【0040】
(1.1.2)内部導体
本開示の第1態様の圧電基材は、長尺状の内部導体を備える。
内部導体は、圧電基材の芯として機能する。
内部導体としては、電気的な良導体であることが好ましく、例えば、銅線、アルミ線、SUS(Steel Use Stainless)線、絶縁皮膜被覆された金属線、カーボンファイバー、カーボンファイバーと一体化した樹脂繊維、錦糸線、有機導電材料等が挙げられる。錦糸線は、繊維に銅箔がスパイラルに巻回されてなる。繊維の外径は、圧電基材の所望の特性に応じて適宜調整され、好ましくは0.1mm以上10mm以下である。
中でも、内部導体は、圧電感度、及び圧電出力の安定性を向上し、高い屈曲性を付与する観点から、錦糸線、又はカーボンファイバーが好ましく、特に、電気的抵抗が低い観点から、錦糸線が好ましい。
【0041】
(1.1.3)外部導体
本開示の第1態様の圧電基材は、圧電感度及び静電シールド性向上の観点から、外部導体を更に備えることが好ましい。
外部導体は、圧電層の外周側に配置される。内部導体と外部導体とは電気的に接続されていない。
【0042】
外部導体は、例えば、圧電基材から電気的信号を検出するために、内部導体の対となる導体として機能する。
外部導体は、圧電層の少なくとも一部を覆っていてもよい。詳しくは、外部導体は、圧電層の外周面の一部を覆っていてもよいし、圧電層の外周面の全面を覆っていてもよい。
【0043】
外部導体は、圧電層に固定されていてもよいし、圧電層に固定されていなくてもよい。「外部導体が圧電層に固定されている」とは、公知の接着剤を用いて、外部導体と圧電層とが機械的に一体となっていることを示す。
なかでも、外部導体は、圧電層に固定されていないことが好ましい。これにより、圧電基材の端子付け準備を行う際、圧電層から外部導体を容易に取り除くことができる。この際、圧電層は、外部導体と機械的に一体となっていないため、破損しにくい。その結果、圧電基材は、圧電基材の端子付け準備をより効率良く行うことを可能にする。
更に、外部導体は、圧電層に対して内部導体の軸方向に変位可能である。これにより、圧電基材に外部応力が作用すると、圧電基材は、従来の圧電基材よりも変形しやすい。そのため、外部応力の作用に起因する圧電基材の内部応力は、局所的により集中しにくい。その結果、圧電基材の耐久性はより優れる。
【0044】
外部導体は、例えば、長尺状導体を巻回してなる。
長尺状導体の断面形状は、例えば、円形状、楕円形状、矩形状、異形状等が挙げられる。中でも、圧電基材に平面で密着し、圧電基材の圧電感度を向上させる観点から、長尺状導体の断面形状は、矩形状が好ましい。
長尺状導体の材料は、特に限定されず、断面形状によって、主に以下のものが挙げられる。
矩形断面を有する長尺状導体としては、円形断面の銅線を圧延して平板状に加工した銅箔リボン、アルミニウム箔リボン等が挙げられる。
円形断面を有する長尺状導体としては、銅線、アルミニウム線、SUS線、絶縁皮膜被覆された金属線、カーボンファイバー、カーボンファイバーと一体化した樹脂繊維、繊維に銅箔がスパイラルに巻回された錦糸線等が挙げられる。
長尺状導体として、有機導電材料を絶縁材料でコーティングしたものを用いてもよい。
長尺状導体の巻回方法は、例えば、圧電基材に対して銅箔等を螺旋状に巻回する方法、銅線等を筒状の組紐にして、圧電基材を包みこむ方法、圧電基材を円筒状に包接する方法等が挙げられる。
【0045】
(1.1.4)電気的絶縁体
本開示の第1態様の圧電基材は、電気的絶縁体(以下、「第1絶縁体」という。)を更に備えていてもよい。第1絶縁体は、圧電基材の最外周に配置される。換言すると、圧電基材の外周面の少なくとも一部は、第1絶縁体によって構成されている。
第1絶縁体は、圧電基材の最外周の全面を覆っていることが好ましい。換言すると、圧電基材の外周面の全面は、第1絶縁体で構成されていることが好ましい。これにより、内部導体を静電シールドすることが可能となる。その結果、外部の静電気に起因する圧電感度の変化は抑制され得る。
第1絶縁体は、例えば、長尺状物が、外部導体の外周面に沿って螺旋状に巻回されてなる。
第1絶縁体の材料としては、電気的絶縁性を有する材料であればよく、例えば、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、四フッ化エチレン・パーフロロプロピルビニルエーテル共重合体(PFA)、フッ素ゴム、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ゴム(エラストマーを含む)等が挙げられる。
【0046】
本開示の第1態様の圧電基材が外周導体を備える場合、第1絶縁体は、外部導体に固定されていてもよいし、外部導体に固定されていなくてもよい。「第1絶縁体が外部導体に固定されている」とは、公知の接着剤を用いて、第1絶縁体と外部導体とが機械的に一体となっていることを示す。
なかでも、第1絶縁体は、外部導体に固定されていないことが好ましい。これにより、圧電基材の端子付け準備を行う際、外部導体から第1絶縁体を容易に取り除くことができる。この際、外部導体は、第1絶縁体と機械的に一体となっていないため、破損しにくい。その結果、圧電基材は、圧電基材の端子付け準備をより効率良く行うことを可能にする。
更に、第1絶縁体は、外部導体に対して内部導体の軸方向に変位可能である。これにより、圧電基材に外部応力が作用すると、圧電基材は、従来の圧電基材よりも変形しやすい。そのため、外部応力の作用に起因する圧電基材の内部応力は、局所的により集中しにくい。その結果、圧電基材の耐久性はより優れる。
【0047】
(1.1.5)内側電気的絶縁体
本開示の第1態様の圧電基材は、外部導体を備える場合、内側電気的絶縁体(以下、「第2絶縁体」という。)を更に備えてもよい。第2絶縁体は、例えば、圧電層と内部導体との間、及び圧電層と外部導体との間の少なくとも一方に配置される。
これにより、内部導体と外部導体との短絡の発生をより抑制することができる。
第2絶縁体は、例えば、長尺状物が、内部導体の外周面に沿って螺旋状に巻回されてなる。
第2絶縁体の材料としては、第1絶縁体の材料として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0048】
第2絶縁体は、内部導体、圧電層、及び外部導体の少なくとも1つ(以下、「内部導体等」という。)に、固定されていてもよいし、固定されていなくてもよい。「第2絶縁体が内部導体等に固定されている」とは、公知の接着剤を用いて、第2絶縁体と内部導体等とが機械的に一体となっていることを示す。なかでも、第2絶縁体は、圧電基材の端子付け準備をより効率良く行うことを可能にする観点から、外部導体に固定されていないことが好ましい。
【0049】
(1.1.6)機能層
本開示の第1態様の圧電基材は、機能層を更に備えていてもよい。機能層は、圧電基材が外部導体を備えない場合、圧電層と内部導体との間に配置される。機能層は、本開示の第1態様の圧電基材が外部導体を備える場合、圧電層と内部導体との間、及び圧電層と外部導体との間の少なくとも一方に配置される。
機能層を構成する層(以下、「構成層」という。)として、例えば、易接着層、ハードコート層、屈折率調整層、アンチリフレクション層、アンチグレア層、易滑層、アンチブロック層、保護層、帯電防止層、放熱層、紫外線吸収層、アンチニュートンリング層、光散乱層、偏光層、ガスバリア層、色相調整層、電極層等が挙げられる。
機能層は、構成層の単層からなる単層構造であってもよいし、2層以上の構成層からなる複数構造であってもよい。機能層が複数構造で場合、複数の構成層の各々は、同じ構成層であってもよいし、異なる構成層であってもよい。圧電基材が圧電層と内部導体との間、及び圧電層と外部導体との間に機能層を有する場合、圧電層と内部導体との間の機能層と、圧電層と外部導体との間に機能層とは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
機能層の膜厚は、特に限定されず、0.01μm以上10μm以下の範囲内であることが好ましい。
機能層の材料は、機能層に要求される機能に応じて適宜選択され、例えば、金属、金属酸化物等の無機物;樹脂等の有機物;樹脂と微粒子とを含む複合組成物;等が挙げられる。樹脂としては、例えば、温度や活性エネルギー線で硬化させることで得られる硬化物が挙げられる。
【0050】
機能層は、内部導体等に、固定されていてもよいし、固定されていなくてもよい。「機能槽が内部導体等に固定されている」とは、公知の接着剤を用いて、第2絶縁体と内部導体等とが機械的に一体となっていることを示す。なかでも、機能層は、圧電基材の端子付け準備をより効率良く行うことを可能にする観点から、外部導体に固定されていないことが好ましい。
【0051】
以下、第1態様の圧電基材の具体例について、図面を参照しながら説明するが、本開示の第1態様の圧電基材は、以下の具体例に限定されるものではない。
なお、全図面を通じ、実質的に同一の要素には同一の符号を付し、説明を繰り返さない。
【0052】
(1.1.7)第1態様の第1実施形態に係る圧電基材
図1A図1Dを参照して、第1態様の第1実施形態に係る圧電基材10Aについて説明する。図1Aは、本開示の第1態様の第1実施形態に係る圧電基材10Aの外観を示す概略側面図である。図1Bは、図1AのIB-IB線断面図である。
【0053】
第1態様の第1実施形態に係る圧電基材10Aは、図1Aに示すように、長尺状の内部導体12Aと、圧電層14Aとを備える。圧電層14Aは、内部導体12Aの外周面に沿って、螺旋角度β1にて一端から他端にかけて、隙間がないように一方向に螺旋状に巻回されている。圧電層14Aは、内部導体12Aに固定されていない。
圧電層14Aは、圧電糸140Aが内部導体12Aの外周面に、内部導体12Aに対して左巻で巻き付けられ、圧電糸140Aが内部導体12Aに巻きつけられた状態を接着部(図示せず)が保持することによって形成されている。具体的には、圧電基材10Aを内部導体12Aの軸方向の一端側(図1Aの右端側)から見たときに、圧電糸140Aは、内部導体12Aの手前側から奥側に向かって左巻きで巻回している。圧電糸140Aは、光学活性ポリペプチド繊維を含む。
螺旋角度β1は、側面視において、螺旋軸G1の方向(内部導体12Aの軸方向)と、圧電糸140Aの長さ方向とのなす角度である。
圧電層14Aの弾性率Y(GPa)は、1.0GPa以上8.0GPa以下である。
これにより、圧電基材10Aの圧電感度は、優れる。
なお、図1A中、両矢印E1は、圧電層14Aに含まれる光学活性ポリペプチドの主配向方向を示す。即ち、第1態様の第1実施形態では、圧電糸140Aに含まれる光学活性ポリペプチドの主配向方向と、圧電糸140Aの長さ方向とが、略平行となっている。
【0054】
以下、圧電基材10Aの作用効果について説明する。
例えば、圧電基材10Aの長さ方向に張力が印加されると、圧電層14Aに含まれる光学活性ポリペプチドにずり応力が加わり、光学活性ポリペプチドは分極する。この光学活性ポリペプチドの分極は、図1B中、矢印で示されるように、圧電基材10Aの径方向に位相が揃えられて生じると考えられる。これにより、圧電基材10Aの圧電性が発現する。そして、圧電基材10Aは、圧電感度に優れる。
【0055】
(1.1.8)第1態様の第2実施形態に係る圧電基材
図2を参照して、第1態様の第2実施形態に係る圧電基材20Aについて説明する。図2は、第1態様の第2実施形態に係る圧電基材20Aの外観を示す概略側面図である。
【0056】
第1態様の第2実施形態に係る圧電基材20Aは、外部導体22Aを備える点で、第1態様の第1実施形態に係る圧電基材10Aと異なる。
第1態様の第2実施形態に係る圧電基材20Aは、図2に示すように、内部導体12Aと、圧電層14Aと、外部導体22Aとを備える。外部導体22Aは、圧電層14Aよりも外周側に配置されている。外部導体22Aは、内部導体12Aの周り(外周面上)に螺旋状に巻回されている圧電糸140Aの周り(圧電層14Aの外周面上)に、銅箔リボンを螺旋状に巻回することによって形成されている。内部導体12Aと外部導体22Aとは、電気的に接続されていない。圧
図2に示すように、第1態様の第2実施形態では、側面視において、圧電層14A(即ち、螺旋状に巻回された圧電糸140A)の端部と外部導体22Aの端部との位置がずれている。これにより、内部導体12Aと外部導体22Aとが確実に絶縁されるようになっている。但し、これらの端部の位置は必ずしもずれている必要はなく、内部導体12Aと外部導体22Aとが電気的に絶縁されている限りにおいて、これらの端部の位置は側面視において重なる位置であってもよい。
【0057】
圧電基材20Aは、圧電基材10Aと同様の作用効果が奏する。
更に、圧電基材20Aは、内部導体12Aを備えるので、圧電層14Aに生じた電気的信号(電圧信号又は電荷信号)を、内部導体12Aを介してより容易に取り出すことができる。
更に、圧電基材20Aは外部導体22Aを備えるので、外部導体22Aによって圧電基材20Aの内部(圧電層14A、及び、内部導体12A)を静電シールドすることができる。このため、圧電基材20Aの外部の静電気の影響による、内部導体12Aの電圧変化を抑制でき、その結果、より安定した圧電性が得られる。
【0058】
(1.1.9)圧電基材の用途
本開示の第1態様の圧電基材の用途は、特に制限されず、例えば、力センサー、圧力センサー、変位センサー、変形センサー、モーションセンサー、振動センサー、衝撃センサー、超音波センサー、アクチュエーター、エネルギーハーベスター等が挙げられる。
本開示の第1態様の圧電基材の用途は、特許文献1に記載の圧電基材の用途と同様の用途である、
【0059】
(1.2)センサー
本開示の第1態様のセンサーは、本開示の第1態様の圧電基材を備える。
本開示の第1態様のセンサーは、本開示の第1態様の圧電基材を備えるので、圧電感度に優れる。
本開示の第1態様のセンサーとしては、力センサー、圧力センサー、変位センサー、変形センサー、モーションセンサー、振動センサー、衝撃センサー、超音波センサー等が挙げられる。
【0060】
(1.3)アクチュエーター
本開示の第1態様のアクチュエーターは、本開示の第1態様の圧電基材を備える。
本開示の第1態様のアクチュエーターは、本開示の第1態様の圧電基材を備えるので、圧電感度に優れる。
【0061】
(1.4)生体情報取得デバイス
本開示の第1態様の生体情報取得デバイスは、本開示の第1態様の圧電基材を備える。
本開示の第1態様の生体情報取得デバイスは、本開示の第1態様の圧電基材によって、被験者又は被験動物(以下、これらをまとめて「被験体」ともいう)の生体信号を検出することにより、被験体の生体情報を取得する。
生体信号としては、在不在、体動、脈波信号(心拍信号)、呼吸信号、体動信号、心弾動、生体振戦、等が挙げられる。生体振戦とは、身体部位(手指、手、前腕、上肢等)の律動的な不随意運動のことである。心弾動の検出には、身体の心機能による力の効果の検出も含まれる。即ち、心臓が大動脈及び肺動脈に血液をポンピングする場合、体は、血流と反対の方向に反動力を受ける。この反動力の大きさ及び方向は、心臓の機能的な段階とともに変化する。この反動力は、身体の外側の心弾動をセンシングすることによって検出される。
本開示の第1態様の生体情報取得デバイスが配設される物品は、特許文献1に記載の生体情報取得デバイスが配設される物品と同様である。
本開示の第1態様の生体情報取得デバイスは、座席、ステアリング、シート、シートベルト、その他シフトノブ、ひじ掛け、ヘッドレスト、ハンドル等、又は、ドライバーが身に着ける衣類、帽子等に埋設されて、使用されてもよい。本開示の第1態様の生体情報取得デバイスは、情報処理装置の検出部として好適に用いられる。情報処理装置は、本開示の第1態様の生体情報取得デバイスから被験体の生体信号を取得し、人工知能(AI:Artificial Intelligence)を利用して、取得した生体信号に基づいて被検体の異常検知や体調異常等を検知する。AIは、学習済モデルを含む。
【0062】
(2)第2態様
(2.1)圧電基材
本開示の第2態様の圧電基材は、長尺状の内部導体と、前記内部導体の外周面を覆う圧電層とを備える。前記圧電層は、長尺状圧電体が前記内部導体に巻き付けられることによって形成されており、かつ前記内部導体に固定されていない。前記長尺状圧電体は、複数の圧電糸と、前記複数の圧電糸を束ねる収束体とを有する。前記複数の圧電糸の少なくとも1つは、光学活性ポリペプチドからなる繊維を示す光学活性ポリペプチド繊維を含む。
前記長尺状圧電体の長さ方向と、前記光学活性ポリペプチドの主配向方向とは、略平行であることが好ましい。
X線回折測定から下記式(a)によって求められる前記光学活性ポリペプチド繊維の配向度Fは、0.50以上1.00未満であることが好ましい。
配向度F=(180°-α)/180° … 式(a)
〔式(a)中、αは配向由来のピークの半値幅(°)を表す。〕
【0063】
本開示において、「内部導体に固定されていない」とは、圧電層が、接着剤等によって、内部導体と機械的に一体となっていないことを示す。
第2態様の「圧電糸」、「光学活性ポリペプチド」、及び「略平行」の各々の用語は、第1態様と同様である。
本開示において、光学活性ポリペプチド繊維の配向度Fは、圧電糸に含まれる光学活性ポリペプチドの配向の度合いを示す指標である。
【0064】
本開示の第2態様の圧電基材は、上記の構成からなるので、特許文献1に記載のような従来の圧電基材よりも、端子付け準備を効率良く行うことを可能にするとともに、圧電感度に優れる。
【0065】
(2.1.1)圧電層
本開示の第2態様の圧電基材は、圧電層を備える。
【0066】
圧電層は、内部導体の外周面を覆っている。圧電層は、内部導体の外周面の全面を覆っていることが好ましい。
【0067】
圧電層の厚みは、特に限定されず、好ましくは0.02mm以上2.00mm以下、より好ましくは0.05mm以上0.50mm以下である。圧電層の厚みは、圧電基材の圧電感度を向上させる観点から、長尺状圧電体の厚みと同一であることが好ましい。
【0068】
圧電層は、内部導体に固定されていない。これにより、圧電基材の端子付け準備を行う際、圧電層及び内部導体が機械的に一体となっている構成よりも、内部導体から圧電層を容易に取り除くことができる。この際、内部導体は、圧電層と機械的に一体となっていないため、破損しにくい。その結果、圧電基材は、圧電基材の端子付け準備を効率良く行うことを可能にする。
更に、圧電層は、内部導体に対して内部導体の軸方向に変位可能である。これにより、圧電基材に外部応力が作用すると、圧電基材は、従来の圧電基材よりも変形しやすい。そのため、外部応力の作用に起因する圧電基材の内部応力は、局所的に集中しにくい。その結果、圧電基材の耐久性は従来の圧電基材よりも優れる。
【0069】
圧電層は、長尺状圧電体が内部導体に巻き付けられることによって形成されている。
長尺状圧電体は、内部導体の外周面上に直接的に巻き付けられていてもよい。内部導体の外周面上に後述する内側電気的絶縁体が配置されている場合は、長尺状圧電体は、内側電気的絶縁体の外周面上に巻き付けられることで、内部導体に間接的に巻き付けられていてもよい。
内部導体の外周面に巻き付けられた長尺状圧電体は、圧電層が内部導体に固定されていなければ、機械的に一体となっていてもよい。これにより、圧電層の機械強度は向上する。内部導体の外周面に巻き付けられた長尺状圧電体を機械的に一体にする方法は、例えば、内部導体の外周面に巻き付けられた長尺状圧電体の内部導体とは反対側の面に公知の接着剤を塗布し、内部導体の外周面に巻き付けられた長尺状圧電体を固着接合する方法等が挙げられる。
【0070】
長尺状圧電体の巻き方は、特に限定されず、長尺状圧電体が内部導体に、内部導体の軸方向に対して螺旋状に巻回されていてもよいし、内部導体の軸方向に対して螺旋状に巻回されていなくてもよい。なかでも、長尺状圧電体の巻き方は、圧電基材の圧電感度を向上させる観点から、長尺状圧電体が内部導体に内部導体の軸方向に対して螺旋状に巻回されていることが好ましい。長尺状圧電体は、重なり合うように巻回されていてもよいし、重なり合わないように巻回されていてもよい。
本開示の第2態様の圧電基材では、螺旋状に巻回されている長尺状圧電体にずり応力が印加されることにより、電荷が発生しやすい。これにより、圧電性が発現しやすい。
長尺状圧電体に対するずり応力は、例えば、第1非塑性変形、第2非塑性変形、又は第3非塑性変形等によって印加することができる。
第1非塑性変形は、螺旋状に巻回されている長尺状圧電体の全体を螺旋軸方向に引っ張ることを示す。
第2非塑性変形は、螺旋状に巻回されている長尺状圧電体の一部を捻る(即ち、長尺状圧電体の一部を螺旋軸を軸として捻る)ことを示す。
第3非塑性変形は、螺旋状に巻回されている長尺状圧電体の一部又は全体を曲げることを示す。
【0071】
長尺状圧電体は、内部導体に、一方向に螺旋状に巻回されていることが好ましい。
第2態様の「一方向に螺旋状に巻回されている」の用語は、第1態様と同様である。
長尺状圧電体が一方向に螺旋状に巻回されている場合には、発生した電荷の極性が打ち消し合う現象(即ち、圧電性が低下する現象)が抑制される。従って、圧電基材の圧電性は、より向上する。
【0072】
圧電基材が一方向に螺旋状に巻回されている長尺状圧電体を備える態様は、長尺状圧電体からなる層の一層のみを備える態様だけでなく、長尺状圧電体からなる層を複数層重ねた態様も包含する。
長尺状圧電体からなる層を複数層重ねた態様として、例えば、一方向に螺旋状に巻回されている一層目の長尺状圧電体からなる層の上に重ねて、二層目の長尺状圧電体からなる層を上記一方向と同じ方向に螺旋状に巻回した態様が挙げられる。
圧電基材の態様としては、長尺状圧電体が、一方向に螺旋状に巻回されている第1長尺状圧電体と、一方向とは異なる方向に螺旋状に巻回されている第2長尺状圧電体とを備える態様も挙げられる。この態様では、第1長尺状圧電体に含まれる光学活性ポリペプチドのキラリティと、第2長尺状圧電体に含まれる光学活性ポリペプチドのキラリティとは、互いに異なる。
【0073】
螺旋角度は、好ましくは20°~70°、より好ましくは25°~65°、さらに好ましくは30°~60°である。
第2態様の「螺旋角度」の用語、及び螺旋角度の測定方法は、第1態様と同様である。
【0074】
(2.1.1.1)長尺状圧電体
長尺状圧電体は、複数の圧電糸と、収束体とを有する。収束体は、複数の圧電糸を束ねる。収束体に束ねられた複数の圧電糸の各々は、揃っていてもよいし、ランダムでもよい。例えば、複数の圧電糸は、複数の圧電糸の各々の長さ方向が一方向となるように意図的に手を加えられて収束体に束ねられていてもよいし、無作為に収束体に束ねられていてもよい。
【0075】
長尺状圧電体の弾性率Yは、1GPa以上10GPa以下であることが好ましい。
圧電層を引張方向に変形させたときに圧電糸にずり応力が有効に働くためには、収束体は圧電糸よりも変形しにくい剛性を有する必要がある。長尺状圧電体の弾性率Yが、上記範囲内であることで、圧電層に外部応力が加わった際に応力が有効に圧電糸に伝わりやすくなる。つまり、長尺状圧電体の弾性率が上記範囲内であれば、圧電基材の圧電感度は向上する。更に、圧電基材の耐久性はより優れ、圧電基材は、端子付け準備をより効率良く行うことを可能にする。
長尺状圧電体の弾性率Yは、圧電基材の圧電感度及び長尺状圧電体の巻回の加工性の観点から、より好ましくは1GPa以上10GPa以下、さらに好ましくは2GPa以上10GPa以下である。
長尺状圧電体の弾性率Yは、微小硬度計測定(JIS Z 2255に準拠)により測定される。微小硬度計測定(JIS Z 2255に準拠)の測定環境は、温度23±2℃、湿度50±5℃である。
【0076】
長尺状圧電体の形状は、例えば、リボン形状であればよい。「リボン形状」は、平たく細長い形状を示す。
長尺状圧電体のサイズは、特に限定されない。
長尺状圧電体の厚さが0.001mm~0.4mmであり、長尺状圧電体の幅が0.1mm~30mmであり、長尺状圧電体の厚さに対する長尺状圧電体の幅の比が2以上であることが好ましい。
長尺状圧電体の厚さは、圧電基材の圧電感度及び圧電基材の機械強度の観点から、より好ましくは0.02mm~0.4mm、更に好ましくは0.05mm~0.2mmである。
長尺状圧電体の幅は、圧電基材の圧電感度及び圧電基材の細線化の観点から、より好ましくは0.1mm~5.0mm、更に好ましくは0.4mm~1.0mmである。
長尺状圧電体の厚さに対する長尺状圧電体の幅の比は、圧電基材の圧電感度と圧電基材の細線化の観点から、より好ましくは2~20、更に好ましくは3~10である。
【0077】
長尺状圧電体において、複数の圧電糸と、収束体との配置関係は特に限定されないが、収束体は、複数の圧電糸の長さ方向に直交する方向に沿って、複数の圧電糸を並列させ、かつ複数の圧電糸のうち隣接する圧電糸同士を接触させた状態で、複数の圧電糸を束ねていることが好ましい。換言すると、複数の圧電糸の配置状態が、収束体によって、所定の状態に保持されていることが好ましい。所定の状態とは、複数の圧電糸が複数の圧電糸の長さ方向に直交する方向に沿って並列しており、かつ複数の圧電糸のうち隣接する圧電糸同士が接触している状態を示す。これにより、圧電基材の圧電感度は向上する。
【0078】
圧電糸の数は、圧電基材の用途等に応じて適宜選択され、加工性の観点から、好ましくは2本~20本、より好ましくは2本~8本である。
また、長尺状圧電体は、広幅で作成して得られた長尺状圧電体前駆体をスリット加工して作製されてもよい。
【0079】
(2.1.1.1.1)圧電糸
複数の圧電糸の少なくとも1つは、光学活性ポリペプチド繊維を含む。圧電糸が光学活性ポリペプチドを含むことは、圧電基材の圧電性の発現に寄与する。第2態様の圧電糸は、第1態様の圧電糸として例示したものと同様である。
【0080】
複数の圧電糸の各々は、複数の光学活性ポリペプチド繊維を含み、複数の圧電糸の各々の撚数は、好ましくは500T/m以下、より好ましくは300T/m以下である。複数の圧電糸の各々の撚数がこの範囲内にあると、圧電糸は破断しにくくなるとともに、圧電基材の圧電感度がより優れる。
【0081】
(2.1.1.1.1.1)光学活性ポリペプチド繊維
第2態様の光学活性ポリペプチド繊維は、第1態様の光学活性ポリペプチド繊維として例示したものと同様である。
【0082】
光学活性ポリペプチド繊維の配向度Fは、0.50以上1.00未満の範囲内であることが好ましい。第2態様の配向度Fを上記範囲内とする技術的理由、配向度Fの好ましい範囲、及び配向度Fの測定方法は、第1態様と同様である。
【0083】
長尺状圧電体の長さ方向と、圧電糸に含まれる光学活性ポリペプチドの主配向方向とは略平行であることが好ましい。
長尺状圧電体の長さ方向と、圧電糸に含まれる光学活性ポリペプチドの主配向方向とが略平行であることは、圧電基材の圧電性の発現に寄与する。
長尺状圧電体の長さ方向と、圧電糸に含まれる光学活性ポリペプチドの主配向方向とが略平行であることは、長尺状圧電体がその長さ方向に対して引張強度に優れることを示す。従って、長尺状圧電体を螺旋状に巻回する際に、圧電糸は破断しにくい。
例えば、圧電糸がシルク又はクモ糸である場合、シルク又はクモ糸の生成の過程で、圧電糸(シルク又はクモ糸)の長さ方向と、圧電糸に含まれる光学活性ポリペプチド(例えばフィブロイン又はクモ糸タンパク質)の主配向方向とが略平行となっている。
長尺状圧電体の長さ方向と、圧電糸に含まれる光学活性ポリペプチドの主配向方向とが略平行であることは、X線回折測定において、サンプル(長尺状圧電体)の設置方向と結晶ピークの方位角と、を比較することによって確認できる。
長尺状圧電体の長さ方向と、圧電糸に含まれる光学活性ポリペプチドの主配向方向とを略平行にする方法としては、例えば、長尺状圧電体を作製する際、特定の圧電糸の長さ方向に直交する方向に沿って、複数の特定の圧電糸を並列して配置する方法等が挙げられる。特定の圧電糸は、複数の特定の光学活性ポリペプチド繊維を含む撚糸を示す。特定の光学活性ポリペプチド繊維は、光学活性ポリペプチド繊維の配向度Fが0.80以上1.00未満の光学活性ポリペプチド繊維を示す。
【0084】
光学活性ポリペプチドは、圧電糸の圧電性及び圧電糸の強度の観点から、βシート構造を有することが好ましい。
【0085】
光学活性ポリペプチドは、フィブロイン及びクモ糸タンパク質の少なくとも一方を含むことが好ましく、フィブロインを含むことが好ましい。
【0086】
光学活性ポリペプチド繊維は、圧電性の観点から、シルク及びクモ糸の少なくとも一方を含むことが好ましく、シルク及びクモ糸の少なくとも一方からなることがより好ましく、シルクからなることが特に好ましい。
【0087】
シルクとしては、生糸又は精錬シルクが好ましく、精錬シルクが特に好ましい。
【0088】
(2.1.1.1.2)収束体
収束体は、複数の圧電糸を束ねる。つまり、収束体は、複数の圧電糸を一体化している。
これにより、圧電基材に外部応力が印加された際、外部応力に起因するずり応力が圧電糸に作用しやすくなる。
【0089】
収束体としては、複数の圧電糸を束ねることができるものであれば特に限定されず、接着体、シュリンクフィルム等が挙げられる。
【0090】
収束体としてシュリンクフィルムを用いる場合、例えば、シュリンクフィルムからなる袋体に複数の圧電糸を収容し、袋体を加熱して袋体を収縮させることで、長尺状圧電体が得られる。
収束体として接着体を用いる場合、例えば、複数の圧電糸に接着剤を含浸させ、複数の圧電糸を固着接合することで、接着体を用いた長尺状圧電体が得られる。この際、接着体は、複数の圧電糸の各々の外周面の全体を覆っていてもよいし、複数の圧電糸の各々の外周面の一部を覆っていてもよい。なかでも、接着体は、複数の圧電糸のうち隣接する圧電糸同士が対向している外周で構成される隙間部分のみに形成されていてもよい。
【0091】
収束体(すなわち、接着体)は、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、酢酸ビニル樹脂系エマルション形接着剤、エチレン酢酸ビニル系エマルション形接着剤、アクリル樹脂系エマルション形接着剤、スチレンブタジエンゴム系ラテックス形接着剤、シリコーン樹脂系接着剤、α-オレフィン系接着剤、塩化ビニル樹脂系溶剤形接着剤、ゴム系接着剤、弾性接着剤、クロロプレンゴム系溶剤形接着剤、ニトリルゴム系溶剤形接着剤、及びシアノアクリレート系接着剤から選ばれる少なくとも1つからなることが好ましい。これにより、複数の圧電糸を一体化し、複数の圧電糸は圧電層として機能し得る。
【0092】
(2.1.2)内部導体
本開示の第2態様の圧電基材は、長尺状の内部導体を備える。
第2態様の圧電基材は、第1態様の圧電基材として例示したものと同様である。
【0093】
(2.1.3)外部導体
本開示の第2態様の圧電基材は、圧電感度及び静電シールド性を向上させる観点から、外部導体を更に備えていてもよい。外部導体は、圧電層の外周側に配置される。内部導体と外部導体とは電気的に接続されていない。
第2態様の外部導体は、第1態様の外部導体として例示したものと同様である。
【0094】
(2.1.4)電気的絶縁体
本開示の第2態様の圧電基材は、電気的絶縁体(以下、「第1絶縁体」という。)を更に備えていてもよい。第1絶縁体は、圧電基材の最外周に配置される。換言すると、圧電基材の外周面の少なくとも一部は、第1絶縁体によって構成されている。
第2態様の第1絶縁体は、第1態様の第1絶縁体として例示したものと同様である。
【0095】
(2.1.5)内側電気的絶縁体
本開示の第2態様の圧電基材は、外部導体を備える場合、内側電気的絶縁体(以下、「第2絶縁体」という。)を更に備えてもよい。第2絶縁体は、例えば、圧電層と内部導体との間、及び圧電層と外部導体との間の少なくとも一方に配置される。
これにより、内部導体と外部導体との短絡の発生をより抑制することができる。
第2態様の第2絶縁体は、第1態様の第2絶縁体として例示したものと同様である。
【0096】
(2.1.6)機能層
本開示の第2態様の圧電基材は、機能層を更に備えていてもよい。本開示の第2態様の圧電基材が外部導体を備えない場合、機能層は、圧電層と内部導体との間に配置される。本開示の第2態様の圧電基材が外部導体を備える場合、機能層は、圧電層と内部導体との間、及び圧電層と外部導体との間の少なくとも一方に配置される。
第2態様の機能層は、第1態様の機能層として例示したものと同様である。
【0097】
以下、第2態様の圧電基材の具体例について、図面を参照しながら説明するが、本開示の第2態様の圧電基材は、以下の具体例に限定されるものではない。
全図面を通じ、実質的に同一の要素には同一の符号を付し、説明を繰り返さない。
【0098】
(2.1.7)第2態様の第1実施形態に係る圧電基材
図3A図3Dを参照して、第2態様の第1実施形態に係る圧電基材10Bについて説明する。図3Aは、本開示の第2態様の第1実施形態に係る圧電基材10Bの外観を示す概略側面図である。図3Bは、本開示の第2態様の第1実施形態に係る長尺状圧電体140Bの外観を示す概略正面図である。図3Cは、図3BのIC-IC線断面図である。図3Dは、図3AのIC-IC線断面図である。
【0099】
第2態様の第1実施形態に係る圧電基材10Bは、図3Aに示すように、長尺状の内部導体12Bと、圧電層14Bとを備える。圧電層14Bは、内部導体12Bの外周面に沿って、螺旋角度β1にて一端から他端にかけて、隙間がないように一方向に螺旋状に巻回されている。圧電層14Bは、内部導体12Bに固定されていない。
圧電層14Bは、長尺状圧電体140Bが内部導体12Bの外周面に、内部導体12Bに対して左巻で巻き付けられることによって形成されている。具体的には、圧電基材10Bを内部導体12Bの軸方向の一端側(図3Aの右端側)から見たときに、長尺状圧電体140Bは、内部導体12Bの手前側から奥側に向かって左巻きで巻回している。
螺旋角度β1は、側面視において、螺旋軸G1の方向(内部導体12Bの軸方向)と、長尺状圧電体140Bの長さ方向とのなす角度である。
長尺状圧電体140Bは、図3Bに示すように、4本の圧電糸141と、収束体142とからなる。第2態様の第1実施形態では、圧電糸141は、複数の光学活性ポリペプチドからなる撚糸である。収束体142は、シアノアクリレート系接着剤からなる。4本の圧電糸141は、圧電糸141の長さ方向に直交する方向に沿って並列している。4本の圧電糸141のうち隣接する圧電糸141同士は接触している。収束体142は、4本の圧電糸141の上述した配置を保持している。詳しくは、図3Cに示すように、4本の圧電糸141のうち隣接する圧電糸141同士が対向している外周面の一部で構成される隙間部分のみに形成されている。
これにより、圧電基材10Bは、端子付け準備を効率良く行うことを可能にする。
なお、図3A中、両矢印E1は、圧電層14Bに含まれる光学活性ポリペプチドの主配向方向を示す。即ち、第2態様の第1実施形態では、光学活性ポリペプチドの主配向方向と、長尺状圧電体140Bの長さ方向とが、略平行となっている。
【0100】
以下、圧電基材10Bの作用効果について説明する。
例えば、圧電基材10Bの長さ方向に張力が印加されると、圧電層14Bに含まれる光学活性ポリペプチドにずり応力が加わり、光学活性ポリペプチドは分極する。この光学活性ポリペプチドの分極は、図3D中、矢印で示されるように、圧電基材10Bの径方向に位相が揃えられて生じると考えられる。これにより、圧電基材10Bの圧電性が発現する。そして、圧電基材10Bは、圧電感度に優れる。
【0101】
(2.1.8)第2態様の第2実施形態に係る圧電基材
図4を参照して、第2態様の第2実施形態に係る圧電基材20Bについて説明する。図4は、第2態様の第2実施形態に係る圧電基材20Bの外観を示す概略側面図である。
【0102】
第2態様の第2実施形態に係る圧電基材20Bは、外部導体22Bを備える点で、第2態様の第1実施形態に係る圧電基材10Bと異なる。
第2態様の第2実施形態に係る圧電基材20Bは、図4に示すように、内部導体12Bと、圧電層14Bと、外部導体22Bとを備える。外部導体22Bは、圧電層14Bよりも外周側に配置されている。外部導体22Bは、内部導体12Bの周り(外周面上)に螺旋状に巻回されている長尺状圧電体140Bの周り(圧電層14Bの外周面上)に、銅箔リボンを螺旋状に巻回することによって形成されている。内部導体12Bと外部導体22Bとは、電気的に接続されていない。圧電層14Bは、内部導体12Bに固定されていない。外部導体22Bは、圧電層14Bに固定されていない。
図4に示すように、第2態様の第2実施形態では、側面視において、圧電層14B(即ち、螺旋状に巻回された長尺状圧電体140B)の端部と外部導体22Bの端部との位置がずれている。これにより、内部導体12Bと外部導体22Bとが確実に絶縁されるようになっている。但し、これらの端部の位置は必ずしもずれている必要はなく、内部導体12Bと外部導体22Bとが電気的に絶縁されている限りにおいて、これらの端部の位置は側面視において重なる位置であってもよい。
【0103】
圧電基材20Bは、圧電基材10Bと同様の作用効果が奏する。
更に、圧電基材20Bは、内部導体12Bを備えるので、圧電層14Bに生じた電気的信号(電圧信号又は電荷信号)を、内部導体12Bを介してより容易に取り出すことができる。
更に、圧電基材20Bは外部導体22Bを備えるので、外部導体22Bによって圧電基材20Bの内部(圧電層14B、及び、内部導体12B)を静電シールドすることができる。このため、圧電基材20Bの外部の静電気の影響による、内部導体12Bの電圧変化を抑制でき、その結果、より安定した圧電性が得られる。
【0104】
(2.1.9)圧電基材の用途
本開示の第2態様の圧電基材の用途は、第1態様の圧電基材の用途として例示したものと同様である。
【0105】
(2.2)センサー
本開示の第2態様のセンサーは、本開示の第2態様の圧電基材を備える。
本開示の第2態様のセンサーは、本開示の第2態様の圧電基材を備えるので、圧電感度に優れる。
本開示の第2態様のセンサーとしては、力センサー、圧力センサー、変位センサー、変形センサー、モーションセンサー、振動センサー、衝撃センサー、超音波センサー等が挙げられる。
【0106】
(2.3)アクチュエーター
本開示の第2態様のアクチュエーターは、本開示の第2態様の圧電基材を備える。
本開示の第2態様のアクチュエーターは、本開示の第2態様の圧電基材を備えるので、圧電感度に優れる。
【0107】
(2.4)生体情報取得デバイス
本開示の第2態様の生体情報取得デバイスは、本開示の第2態様の圧電基材を備える。
本開示の第2態様の生体情報取得デバイスは、本開示の第2態様の圧電基材によって、被験者又は被験動物(以下、これらをまとめて「被験体」ともいう)の生体信号を検出することにより、被験体の生体情報を取得する。
第2態様の生体信号、生体情報取得デバイスが配設される物品、生体情報取得デバイスの用途は、第1態様で例示したものと同様である。
【実施例
【0108】
以下、本発明に係る実施形態を、実施例を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
実施例1~実施例4、及び比較例1~比較例4は、本開示の第1態様に対応し、実施例5及び比較例5は、本開示の第2態様に対応する。
【0109】
[実施例1]
<光学活性ポリペプチド繊維の準備>
光学活性ポリペプチド繊維として、生糸シルクを準備した。生糸シルクは、光学活性ポリペプチドからなる長繊維である。生糸シルクは、21デニールであった。生糸シルクの太さは0.06mm~0.04mmであった。
【0110】
(光学活性ポリペプチド繊維の配向度Fの測定)
広角X線回折装置(リガク社製の「RINT2550」、付属装置:回転試料台、X線源:CuKα、出力:40kV 370mA、検出器:シンチレーションカウンター)を用い、生糸シルク(光学活性ポリペプチド繊維)をホルダーに固定し、結晶面ピーク[2θ=20°]の方位角分布強度を測定した。
得られた方位角分布曲線(X線干渉図)において、ピークの半値幅(α)から、下記式(a)により、生糸シルク(光学活性ポリペプチド繊維)の配向度F(c軸配向度)を算出した。
光学活性ポリペプチド繊維の配向度Fは、0.91であった。
配向度(F)=(180°-α)/180° … (a)
(αは配向由来のピークの半値幅)
【0111】
<圧電糸の作製>
生糸シルクを公知の方法により、圧電糸として、6本片撚り(撚数150T/m)した糸を精錬して、精練シルクを作製した。この精錬シルクの撚り糸の配向度Fは、0.86であった。
光学活性ポリペプチド繊維の配向度Fが0.86であったこと、及び精練シルクを用いて6本片撚りした糸(圧電糸)を作製したことから、圧電糸の長さ方向と、精練シルク(光学活性ポリペプチド繊維)に含まれる光学活性ポリペプチドの主配向方向とは略平行であると評価することができる。
【0112】
<2層圧電基材の作製>
内部導体として、株式会社明清産業製の錦糸線「U24-01-00」(線径0.26mm、長さ200mm)を準備した。
圧電糸を内部導体の外周面上に、螺旋角度が約45°となるように、左巻きで極力隙間なく、巻きつけた。これにより、内部導体の外周面上に層(以下、「圧電糸層」という。)を形成し、圧電基材前駆体を得た。圧電糸層は、内部導体の外周面の全面を覆っていた。つまり、内部導体の外周面は露出していなかった。
なお、「左巻き」とは、内部導体(錦糸線)の軸方向の一端から見たときに、内部導体の手前側から奥側に向かって圧電糸が左巻きで巻回していることを示す。「螺旋角度」とは、内部導体の軸方向に対する、圧電糸の長さ方向とがなす角度を示す。
収束剤として、東亞合成株式会社製の「901H3」(シアノアクリレート系接着剤)を準備した。
圧電基材前駆体の圧電糸層の外周面上に収束剤(シアノアクリレート系接着剤)を滴下し、圧電糸の内部に染み込ませた。その後、すぐにキムワイプで余剰分の収束剤を圧電糸の外周面からふき取り、室温で放置し、収束剤を硬化させた。これにより、圧電糸層から圧電層を形成し、2層圧電基材を得た。
このとき、圧電層は、内部導体にその一部分がくっついていたが、内部導体に固定されていなかった。つまり、圧電層と内部導体とは機械的に一体となっていなかった。そのため、内部導体から圧電層を容易に取り除くことができた。
【0113】
圧電層の弾性率を求めるために、2層圧電基材の一部をカットし、測定サンプル(2層圧電基材)を得た。
測定サンプル(2層圧電基材)を用いて、圧電層の弾性率を下記の方法により測定した。測定結果を表1に示す。
【0114】
(圧電層の弾性率Yの測定)
圧電層の弾性率Yを、ダイナミック超微小硬度計を用いてJIS Z2255に準拠した方法により、圧電層の押し込み弾性率として測定した。
詳しくは、圧電層の弾性率Yは、測定サンプル(2層圧電基材)の圧電層の外周面から圧子を押し込んだ測定により評価した。測定サンプル(2層圧電基材)の圧電層の外周面は、内部導体の外周面上に圧電糸が巻かれて得られた圧電糸層を収束剤で含浸硬化させたことによって形成された面である。
ここで用いた装置はダイナミック超微小硬度計「DUH-211R」(株式会社島津製作所)であり、圧子にはダイヤモンド製三角錐圧子(稜間角115°)を用い、温度23±2℃、湿度50±5℃の環境下で、軟質試験測定条件にて測定を行った。
圧電層の弾性率Yは、除荷過程における初期の弾性回復の度合いから評価される値であり、以下の式[数1]~[数4]を用いて算出される。ここで用いる弾性率Yは、測定サンプル(2層圧電基材)のポアソン比を考慮せず0と仮定した場合の弾性率として計算した値を用いた。
【0115】
【数1】
【0116】
【数2】
【0117】
【数3】
【0118】
【数4】
【0119】
[数1]~[数4]中の各記号は、下記事項を示す。
「Y」は、ポアソン比を含んだ測定サンプルの弾性率(Pa)を示す。なお、弾性率の計算結果には、圧子の理想形状からのずれが誤差として含まれる。
「E」は、測定サンプルの弾性率(Pa)を示す。
「E」は、ダイヤモンド製圧子の弾性率(1.14×1012Pa)を示す。
「E」は、測定サンプルと圧子の複合弾性率(Pa)を示す。
「v」は、測定サンプルのポアソン比を示す。
「v」は、ダイヤモンド製圧子のポアソン比(0.07)を示す。
「A」は、圧痕投影面積(m)を示す。
「dP/dh」は、荷重-押し込み深さ線図における除荷開始時の勾配(N/m)を示す。
「h」は、有効接触深さ(m)を示す。
「hmax」は、最大押し込み深さ(m)(以下、「深さ1」という。)を示す。
「h」は、除荷開始時の接線と深さ軸との交点(m)(以下、「深さ3」という。)を示す。
「hmax-」は、(深さ1)-(深さ3)を示す。
【0120】
<3層圧電基材の作製>
圧電層の弾性率Yの測定後の測定サンプル(2層圧電基材)の両端部の圧電層の一部を取り除いて内部導体を露出させた。内部導体が露出した状態にて、測定サンプル(圧電基材)の両端部に圧着端子を取り付けた。これにより、端子付き2層圧電基材を得た。圧着端子は、圧電基材の圧電感度を評価するための固定部及び内部電極の取り出し端子である。ここで、圧着端子間の距離は150mmに調整した。
【0121】
外部導体として、平角断面の圧延銅箔リボンを準備した。圧延銅箔リボンの幅は、0.3mmであった。圧延銅箔リボンの厚さは30μmであった。
この圧延銅箔リボンを、端子付き2層圧電基材の圧電層の外周面上に、圧電層が露出しないように隙間なく右巻きに巻回した。これにより、3層圧電基材を得た。外部導体は、圧電層の外周面の全面を覆っていた。つまり、圧電層の外周面は露出していなかった。外部導体は、接着剤等で、圧電層に固定されていなかった。
以上のようにして、3層圧電基材を作製した。
【0122】
(単位引張力当たりの発生電荷量(圧電感度)の測定)
3層圧電基材を用い、3層圧電基材に引張力を印加したときに発生する電荷量(発生電荷量)を以下の方法で測定し、発生電荷量から単位引張力当たりの発生電荷量(圧電感度)を算出した。結果を表1に示す。
具体的には、3層圧電基材を、チャック間距離を50mmとした引張試験機(株式会社エー・アンド・デイ社製の「テンシロンRTG1250」)にチャックした。
次に、引張試験機で、3層圧電基材に対して、1.0N~2.0Nの応力範囲で、0.5Hzで周期的に三角波状に繰り返し印加し、その時の3層圧電基材の表裏に発生する電荷量をエレクトロメータ(ケースレー社製のプログラマブルエレクトリックメータ「617」)で測定した。
測定した発生電荷量Q[C]をY軸とし、3層圧電基材の引張力F[N]をX軸としたときの散布図の相関直線の傾きから、3層圧電基材の圧電感度として、単位引張力当たりの発生電荷量を算出した。
圧電層の弾性率Y、及び3層圧電基材の圧電感度の測定結果を表1に示す。
【0123】
[実施例2]
収束剤(シアノアクリレート系接着剤)の替りに、収束剤(ポリウレタン系接着剤A)を用いて、下記のようにして2層圧電基材を得た他は、実施例1と同様にして、3層圧電基材を作製し、評価した。圧電層の弾性率Y、及び3層圧電基材の圧電感度の測定結果を表1に示す。
実施例2では、以下のようにして、2層圧電基材を作製した。
ポリウレタン系樹脂の溶液(MTオレスター M37-50SS:三井化学製)にMEKを加えて希釈し固形分25質量%の溶液に調整し、収束剤(ポリウレタン系接着剤A)を得た。実施例1と同様にして、圧電基材前駆体を得た。圧電基材前駆体の両端部の圧着端子を取り付けるための端子部には、マスキングテープを貼合した。圧電基材前駆体の圧電糸層全体を、収束剤(ポリウレタン系接着剤A)が充填された槽に3分間浸した。その後、収束剤(ポリウレタン系接着剤A)が充填された槽から圧電基材前駆体を引き上げて、圧電基材前駆体の液だれ部(圧電基材前駆体から垂れ落ちる収束剤(ポリウレタン系接着剤A))をキムワイプで取り除いた。その後、150℃の乾燥機で30分間、圧電基材前駆体を乾燥させた。これにより、2層圧電基材を得た。
【0124】
[実施例3]
収束剤(ポリウレタン系接着剤A)の替りに、メラミン樹脂溶液(三井化学製)にn-BuOH溶液で固形分30質量%に希釈して得られた収束剤(メラミン系接着剤)を用いた他は、実施例2と同様にして、3層圧電基材を作製し、評価した。圧電層の弾性率Y、及び3層圧電基材の圧電感度の測定結果を表1に示す。
【0125】
[実施例4]
<光学活性ポリペプチド繊維の準備>
光学活性ポリペプチド繊維として、合成タンパク質を含む毛糸(「Brewed Protein(登録商標)」)を準備した。合成タンパク質の含有量は、毛糸の質量に対して、30質量%であった。合成タンパク質を含む毛糸の太さは、0.5mm~0.7mm程度であった。
【0126】
(光学活性ポリペプチド繊維の配向度Fの測定)
<圧電糸の作製>
合成タンパク質を含む毛糸を圧電糸の配向度Fは、実施例1と同様にX線回折を用いて、配向性を示すピークとして2θ=9°付近のピークから測定したところ、0.58であった。
【0127】
圧電糸として、精練シルクを用いて6本片撚りした糸の替りに、合成タンパク質を含む毛糸を1本用いたことの他は、実施例1と同様にして、2層圧電基材及び3層圧電基材を作製し、評価した。圧電層の弾性率Y、及び3層圧電基材の圧電感度の測定結果を表2に示す。
【0128】
[比較例1]
収束剤(「901H3」)の替りに、シアノアクリレート系接着剤「201」(東亞合成株式会社製)を収束剤(シアノアクリレート系接着剤)として用いた他は実施例1と同様にして、3層圧電基材を作製し、評価した。圧電層の弾性率Y、及び3層圧電基材の圧電感度の測定結果を表1に示す。
【0129】
[比較例2]
収束剤(ポリウレタン系接着剤A)の替りに、下記のように調整した収束剤(ポリウレタン系接着剤B)を用いた他は、実施例2と同様にして、3層圧電基材を作製し、評価した。圧電層の弾性率Y、及び3層圧電基材の圧電感度の測定結果を表1に示す。
比較例2の収束剤(ポリウレタン系接着剤B)は、下記のようにして調製した。
「タケラックA-3210」(三井化学株式会社製)と、「タケネートA-3070」(三井化学株式会社製)とを質量比で、1:1で混合して、混合溶液を得た。その後、混合溶液を酢酸エチルで希釈し、固形分20質量%の溶液に調整し、収束剤(ポリウレタン系接着剤B)を得た。
【0130】
[比較例3]
収束剤(ポリウレタン系接着剤A)の替りに、ポリウレタン系接着剤C「タケネート6335」を用いた他は、実施例2と同様にして、3層圧電基材を作製し、評価した。圧電層の弾性率Y、及び3層圧電基材の圧電感度の測定結果を表1に示す。
【0131】
[比較例4]
収束剤(「901H3」)の替りに、シアノアクリレート系接着剤「201」(東亞合成株式会社製)を用いたことの他は実施例4と同様にして、3層圧電基材を作製し、評価した。圧電層の弾性率Y、及び3層圧電基材の圧電感度の測定結果を表2に示す。
【0132】
<荷重をかけた時の劣化評価>
圧電感度の測定に用いた引張試験機に、実施例1の全長150mmの3層圧電基材をセットし、3層圧電基材に荷重をかけた時の劣化を評価した。詳しくは、3層圧電基材をセットした引張試験機において、ゆっくりと手動で引張方向にクロスヘッドを移動し、引張荷重が0.2Nの位置で固定した。この位置を変位基準点ゼロに設定し、この位置から2mm引張り、ゼロの位置に戻す操作を100回繰り返した。この時、クロスヘッドスピードは30mm/secに設定した。
この試験の前後に、実施例1と同様に1N~2Nの印加荷重をかけた感度評価を行い、試験後の感度を試験前の感度で割った感度変化を算出した。
実施例2の3層圧電基材、比較例1の3層圧電基材を用いて同様の試験を実施し、それぞれの感度変化を算出した。
実施例1の3層圧電基材の感度変化は、1.00であった。実施例2の3層圧電基材の感度変化は、0.98であった。比較例1の3層圧電基材の感度変化は、0.80であった。
これらの結果から、実施例1及び実施例2の3層圧電基材の感度変化は小さいのに対して、比較例1の3層圧電基材の感度変化は大きく低下したことがわかった。
【0133】
【表1】
【0134】
【表2】
【0135】
比較例1~比較例3の圧電基材は、長尺状の内部導体と、内部導体の外周面を覆う圧電層とを備える。圧電層は、内部導体の外周面に巻き付けられた圧電糸と、圧電糸が内部導体の外周面に巻き付けられた状態を保持する接着部とを有する。圧電糸は、光学活性ポリペプチド繊維である精練シルクを含む。しかしながら、圧電層の弾性率Yは、1.0GPa以上8.0GPa以下の範囲内でなかった。
そのため、比較例1~比較例3の各々の圧電基材の圧電感度は、2.3pC/N/mm以下であった。その結果、比較例1~比較例3の圧電基材は、圧電感度に優れないことがわかった。
一方、実施例1~実施例3の圧電基材は、長尺状の内部導体と、内部導体の外周面を覆う圧電層とを備える。圧電層は、内部導体の外周面に巻き付けられた圧電糸と、圧電糸が内部導体の外周面に巻き付けられた状態を保持する接着部とを有する。圧電糸は、光学活性ポリペプチド繊維である精練シルクを含む。圧電層の弾性率Yは、1.0GPa以上8.0GPa以下の範囲内であった。
そのため、実施例1~実施例3の各々の圧電基材の圧電感度は、比較例1~比較例3よりも高い2.6pC/N/mm以上であった。その結果、実施例1~実施例3の圧電基材は、圧電感度に優れることがわかった。
【0136】
実施例1の圧電基材と、実施例2の圧電基材とを対比すると、実施例1の圧電層の弾性率Yは4.0GPa以上8.0GPa以下の範囲内にあったので、実施例1の圧電感度は、実施例2よりも高い5.0pC/N/mmであった。
一方、実施例3の圧電基材と、実施例2の圧電基材とを対比すると、実施例3の圧電層の弾性率Yは1.0GPa以上3.6GPa以下の範囲内にあったので、実施例3の圧電感度は、実施例2よりも高い4.2pC/N/mmであった。
【0137】
比較例4の圧電基材は、長尺状の内部導体と、内部導体の外周面を覆う圧電層とを備える。圧電層は、内部導体の外周面に巻き付けられた圧電糸と、圧電糸が内部導体の外周面に巻き付けられた状態を保持する接着部とを有する。圧電糸は、光学活性ポリペプチド繊維である合成タンパク質を含む毛糸を含む。しかしながら、圧電層の弾性率Yは、1.0GPa以上8.0GPa以下の範囲内でなかった。
そのため、比較例4の圧電基材の圧電感度は、0.14pC/N/mm以下であった。その結果、比較例4の圧電基材は、圧電感度に優れないことがわかった。
一方、実施例4の圧電基材は、長尺状の内部導体と、内部導体の外周面を覆う圧電層とを備える。圧電層は、内部導体の外周面に巻き付けられた圧電糸と、圧電糸が内部導体の外周面に巻き付けられた状態を保持する接着部とを有する。圧電糸は、光学活性ポリペプチド繊維である合成タンパク質を含む毛糸を含む。圧電層の弾性率Yは、1.0GPa以上8.0GPa以下の範囲内であった。
そのため、実施例4の圧電基材の圧電感度は、比較例4よりも高い0.32pC/N/mm以上であった。その結果、実施例4の圧電基材は、圧電感度に優れることがわかった。
【0138】
[実施例5]
<光学活性ポリペプチド繊維の準備>
光学活性ポリペプチド繊維として、生糸シルクを準備した。生糸シルクは、光学活性ポリペプチドからなる長繊維である。生糸シルクは、21デニールであった。生糸シルクの太さは0.06mm~0.04mmであった。
【0139】
(光学活性ポリペプチド繊維の配向度Fの測定)
広角X線回折装置(リガク社製の「RINT2550」、付属装置:回転試料台、X線源:CuKα、出力:40kV 370mA、検出器:シンチレーションカウンター)を用い、生糸シルク(光学活性ポリペプチド繊維)をホルダーに固定し、結晶面ピーク[2θ=20°]の方位角分布強度を測定した。
得られた方位角分布曲線(X線干渉図)において、ピークの半値幅(α)から、下記式(a)により、生糸シルク(光学活性ポリペプチド繊維)の配向度F(c軸配向度)を算出した。
光学活性ポリペプチド繊維の配向度Fは、0.91であった。
配向度(F)=(180°-α)/180° … (a)
(αは、配向由来のピークの半値幅)
【0140】
<圧電糸の作製>
生糸シルクを公知の方法により、圧電糸として、6本片撚り(撚数150T/m)した糸を精錬して、精練シルクを作製した。この精錬シルクの撚り糸の配向度Fは、0.86であった。
配向度(F)=(180°-α)/180° … (a)
(αは、配向由来のピークの半値幅)
【0141】
<長尺状圧電体の作製>
接着剤として、東亞合成株式会社製の「アロンアルファ901H3」(シアノアクリレート系接着剤)を準備した。
4本の圧電糸が互いに重なり合わないように4本の圧電糸を引き揃えて、横に接触させた。詳しくは、圧電糸の長さ方向に直交する方向に4本の圧電糸を並列させ、かつ4本のうち隣接する圧電糸同士が接触するように、4本の圧電糸を配置した。この状態で、接着剤を4本の圧電糸に滴下し、4本の圧電糸に接着剤を含浸させた。4本の圧電糸は、接着剤によって固着接合した。これにより、長尺状圧電体を得た。長尺状圧電体は、4本の圧電糸と、4本の圧電糸を束ねる接着体とからなる。接着体は、4本の圧電糸の外周面の全面を覆っていた。
この長尺状圧電体を120℃で6時間熱処理を行った。得られた長尺状圧電体の厚さは、0.08mmであった。長尺状圧電体の幅は、0.65mmであった。長尺状圧電体の厚さに対する長尺状圧電体の幅の比は、8.1であった。
光学活性ポリペプチド繊維の配向度Fが0.91であったこと、精練シルクを用いて6本片撚りした糸(圧電糸)の配向度が0.86であったこと、及び圧電糸の長さ方向に直交する方向に4本の圧電糸を並列させて長尺状圧電体を作製したことから、長尺状圧電体の長さ方向と、精練シルク(光学活性ポリペプチド繊維)に含まれる光学活性ポリペプチドの主配向方向とは略平行であると評価することができる。
【0142】
<2層圧電基材の作製>
内部導体として、株式会社明清産業製の錦糸線「U24-01-00」(線径:0.26mm、長さ:200mm)を準備した。
【0143】
長尺状圧電体を内部導体の外周面上に、螺旋角度が約45°となるように、左巻きで極力隙間なく、巻きつけた。これにより、内部導体の外周面を覆う圧電層を形成し、2層圧電基材を得た。圧電層は、内部導体の外周面の全面を覆っていた。つまり、内部導体の外周面は露出していなかった。圧電層は、接着剤等で、内部導体に固定されていなかった。
「左巻き」とは、内部導体(錦糸線)の軸方向の一端から見たときに、内部導体の手前側から奥側に向かって長尺状圧電体が左巻きで巻回していることを示す。「螺旋角度」とは、内部導体の軸方向に対する、長尺状圧電体の長さ方向とがなす角度を示す。
【0144】
長尺状圧電体を用いて、長尺状圧電体の弾性率Yを下記の方法により測定した。長尺状圧電体の弾性率Yには、微小硬度計測定(JIS Z 2255に準拠)を用いた。長尺状圧電体の弾性率Yの測定結果は、3.9GPaであった。
【0145】
(長尺状圧電体の弾性率Yの測定)
長尺状圧電体の弾性率Yを、ダイナミック超微小硬度計を用いてJIS Z2255に準拠した方法により、長尺状圧電体の押し込み弾性率として測定した。
詳しくは、長尺状圧電体の弾性率Yは、測定サンプル(2層圧電基材)の圧電層から長尺状圧電体を巻きほどいて、測定サンプルを得た。巻きほどかれた長尺状圧電体に巻癖が付いている場合には、巻癖が付いている長尺状圧電体を数mm程度にカットして、測定サンプルを得た。測定サンプルを基板に固定し、測定サンプルのフラットな部分から圧子を押し込んだ測定により評価した。
ここで用いた装置はダイナミック超微小硬度計「DUH-211R」(株式会社島津製作所)であり、圧子にはダイヤモンド製三角錐圧子(稜間角115°)を用い、温度23±2℃、湿度50±5℃の環境下で、軟質試験測定条件にて測定を行った。
長尺状圧電体の弾性率Yは、除荷過程における初期の弾性回復の度合いから評価される値であり、実施例1の式[数1]~[数4]を用いて算出される。ここで用いる弾性率Yは、測定サンプルのポアソン比を考慮せず0と仮定した場合の弾性率として計算した値を用いた。
【0146】
<3層圧電基材の作製>
外部導体として、平角断面の圧延銅箔リボンを準備した。圧延銅箔リボンの幅は、0.3mmであった。圧延銅箔リボンの厚さ30μmであった。
この圧延銅箔リボンを、長尺状圧電体の弾性率Yの測定に用いた圧電層の外周面上に、圧電層が露出しないよう隙間なく右巻きに巻回した。外部導体は、圧電層の外周面の全面を覆っていた。つまり、圧電層の外周面は露出していなかった。外部導体は、接着剤等で、圧電層に固定されていなかった。
以上のようにして、3層圧電基材を作製した。
【0147】
次に、端子付け前の処理として、端子付け準備を行った。端子付け準備では、3層圧電基材の両端部から圧電層及び外部導体を剥ぎ取って、錦糸線を露出させた。詳しくは、端子付け準備では、端子に必要な長さの部分を巻き解いて、3層圧電基材の両端部の外部導体を圧電層から剥がしとった。次いで、端子に必要な長さの部分を巻き解いて、内部導体の取り出しのために5mmの圧電層を取り除いて、錦糸線を露出させた。
実施例5では、内部導体、圧電層、及び外部導体は、接着剤等によって、機械的に一体となっていない。そのため、圧電層を取り除く際、内部導体及び外部導体は破損しなかった。更に、端子付け準備に要した時間は、2分以内であった。端子付け準備に要した時間は、錦糸線を露出させるための作業を開始した時点から、錦糸線を露出させた時点までの時間を示す。
【0148】
<3層圧電基材の圧電感度の測定(エレクトロメータ)>
エレクトロメーターを用い、以下の方法により、3層圧電基材の圧電感度(pC/N・mm)を測定した。
その結果、3層圧電基材の圧電感度は、3.3pC/N・mmであった。
【0149】
-3層圧電基材の圧電感度(pC/N・mm)の測定方法(エレクトロメータ)-
3層圧電基材を、チャック間距離を150mmとした引張試験機(株式会社エー・アンド・デイ社製の「テンシロンRTG1250」)にチャックした。詳細には、一方のチャック部材によって3層圧電基材の一端側の圧着端子(電気的且つ機械的接続部)をチャックし、他方のチャック部材によって3層圧電基材の他端側の圧着端子(電気的且つ機械的接続部)をチャックした。また、エレクトロメータ(ケースレー社製のプログラマブルエレクトリックメータ「617」)の電荷量測定用電極を3層圧電基材の圧着端子に接続し、エレクトロメータ(ケースレー社製のプログラマブルエレクトリックメータ「617」)のグラウンド電極を3層圧電基材の外部導体(圧延銅箔リボン)に接続した。
次に、引張試験機で、3層圧電基材に対して張力を、1N~2Nの応力範囲で5mm/分の速度一定の移動速度で、周期的に三角波状に繰り返し印加し、その時の3層圧電基材の内部導体側に発生する電荷量をエレクトロメータ(ケースレー社製のプログラマブルエレクトリックメータ「617」)で測定した。
測定した発生電荷量Q[C]をY軸とし、3層圧電基材の引張力F[N]をX軸としたときの散布図の相関直線の傾きから、単位引張力当たりの発生電荷量を算出し、算出値を圧着端子間距離で除して圧電感度(pC/N・mm)とした。
【0150】
<比較例5>
実施例5と同様の精錬シルクと内部導体を準備した。
比較例5では、実施例5の長尺状圧電体を内部導体の外周面に巻く替りに、内部導体の外周面に4本の精練シルクを引き揃えて内部導体が露出しないように隙間なく螺旋状に内部導体に巻回し、さらに同様に4本の精練シルクを引き揃えて、巻きつけた。
精練シルクの螺旋角度は約45°とし、精練シルクの巻回方向は左巻きとした。これにより、内部導体の外周面を覆う精練シルク層を形成した。精練シルク層は、内部導体の外周面の全面を覆っていた。つまり、内部導体の外周面は露出していなかった。
精練シルクの螺旋角度は、内部導体の長軸方向に対する精練シルクの長さ方向の角度を示す。
【0151】
次に、接着剤として東亞合成株式会社製の「アロンアルファ901H3」(シアノアクリレート系接着剤)を準備した。
接着剤を精練シルク層の外周面上に滴下し、精練シルク層に含浸させた後、120℃で6時間熱処理を行った。これにより、精練シルク層を内部導体に固着接合し、これらを機械的に一体化させた。これにより、内部導体の外周面を覆う圧電層を形成し、2層圧電基材を得た。圧電層は、接着剤によって、内部導体に固定されていた。
【0152】
次に、外部導体として、平角断面の圧延銅箔リボンを準備した。圧延銅箔リボンの幅は、0.3mmであった。圧延銅箔リボンの厚さは、30μmであった。
この圧延銅箔リボンを、長尺状圧電体の弾性率Yの測定に用いた圧電層の外周面上に、圧電層が露出しないよう隙間なく右巻きに巻回した。外部導体は、圧電層の外周面の全面を覆っていた。つまり、圧電層の外周面は露出していなかった。外部導体は、接着剤等で、圧電層に固定されていなかった。
以上のようにして、3層圧電基材を作製した。
【0153】
次に、端子付け前の処理として、端子付け準備を行った。端子付け準備では、3層圧電基材の両端部から圧電層及び外部導体を剥ぎ取って、錦糸線を露出させた。詳しくは、端子付け準備では、端子に必要な長さの部分を巻きほどいて、3層圧電基材の両端部の外部導体を圧電層から剥がしとった。次いで、端子に必要な長さの部分を巻きほどいて、内部導体の取り出しのために5mmの圧電層を取り除いて、錦糸線を露出させた。
比較例5では、内部導体、及び圧電層は、接着剤によって、機械的に一体となっている。そのため、端子付け準備に要した時間は、実施例5の5倍以上かかった。端子付け準備に要した時間は、錦糸線を露出させるための作業を開始した時点から、錦糸線を露出させた時点までに要した時間を示す。
【0154】
実施例5と同様にして、3層圧電基材の圧電感度(pC/N・mm)を測定した。その結果、3層圧電基材の圧電感度は、2.8pC/N・mmであった。
【0155】
比較例5の3層圧電基材は、長尺状の内部導体と、内部導体の外周面を覆う圧電層と、を備える。圧電層は、長尺状圧電体が内部導体の外周面に巻き付けられることによって形成されていた。長尺状圧電体は、4本の圧電糸と、4本の圧電糸が内部導体の外周面に巻き付けられた状態を保持する接着体とを有する。しかしながら、圧電層は、接着剤によって内部導体に固定されていた。
そのため、3層圧電基材の圧電感度は、2.8pC/N・mmであった。更に、端部付け準備に要した時間は、実施例5の5倍以上であった。その結果、比較例5の3層圧電基材は、端子付け準備を効率良く行うことを可能にできず、圧電感度も優れないことがわかった。
【0156】
一方、実施例5の3層圧電基材は、長尺状の内部導体と、内部導体の外周面を覆う圧電層とを備える。圧電層は、長尺状圧電体が内部導体に巻き付けられることによって形成されており、かつ内部導体に固定されていなかった。長尺状圧電体は、4本の圧電糸と、4本の圧電糸を束ねる接着体とを有する。
そのため、3層圧電基材の圧電感度は、比較例5よりも高い3.3pC/N・mmであった。更に、端部付けに要した時間は、比較例5よりも短い2分以内であった。その結果、実施例5の3層圧電基材は、端子付け準備を効率良く行うことを可能にするとともに、圧電感度に優れることがわかった。
【0157】
2021年3月31日に出願された日本国特許出願2021-061998の開示、及び2021年3月31日に出願された日本国特許出願2021-061999の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4