(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用正極およびそれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20241126BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20241126BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20241126BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20241126BHJP
H01M 4/131 20100101ALI20241126BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20241126BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20241126BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20241126BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20241126BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20241126BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/62 Z
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/131
H01M4/587
H01M4/36 E
H01M4/38 Z
H01M4/48
H01M10/052
(21)【出願番号】P 2023515362
(86)(22)【出願日】2022-04-05
(86)【国際出願番号】 KR2022004830
(87)【国際公開番号】W WO2022244977
(87)【国際公開日】2022-11-24
【審査請求日】2023-03-07
(31)【優先権主張番号】10-2021-0064296
(32)【優先日】2021-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0016953
(32)【優先日】2022-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ソン・チョル・イム
(72)【発明者】
【氏名】サン・スン・オー
(72)【発明者】
【氏名】ヒェ・ヒョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】チ・ホ・ジョ
(72)【発明者】
【氏名】テ・グ・ユ
【審査官】佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-207055(JP,A)
【文献】特開2008-152923(JP,A)
【文献】特開2015-088268(JP,A)
【文献】特開2007-287446(JP,A)
【文献】国際公開第2012/165212(WO,A1)
【文献】特表2020-521285(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0079534(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0079109(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0124038(KR,A)
【文献】特表2022-510983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00 - 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電体と、
前記正極集電体の少なくとも一面に形成され、正極活物質と下記化学式1で示す正極添加剤を含有する正極合材層と、を具備し、
初期充電後、正極合材層の断面構造は、
第1金属酸化物粒子で充填された緻密構造を有する第1領域と、
第2金属酸化物粒子の内部および外部に針状亀裂構造を有する第2領域と、を含
み、
前記第2領域は、前記正極合材層の全体断面積に対して0.001~10%を占める、リチウム二次電池用正極:
[化学式1]
Li
pCo
(1-q)M
1
qO
4
前記化学式1中、
M
1は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
pおよびqは、それぞれ5≦p≦7および0≦q≦0.5である。
【請求項2】
正極集電体と、
前記正極集電体の少なくとも一面に形成され、正極活物質と下記化学式1で示す正極添加剤を含有する正極合材層と、を具備し、
初期充電後、正極合材層の断面構造は、
第1金属酸化物粒子で充填された緻密構造を有する第1領域と、
第2金属酸化物粒子の内部および外部に針状亀裂構造を有する第2領域と、を含み、
前記針状亀裂構造は、平均厚さが10nm~100nmであり、平均長さが150nm~400nmである第1亀裂と、平均厚さが500nm~750nmであり、平均長さが5.5μm~7.3μmである第2亀裂とが混合された構造を有し、
前記第1亀裂および前記第2亀裂は、一部が不規則的に連結されて一つのライン形状を形成する、リチウム二次電池用正極:
[化学式1]
Li
p
Co
(1-q)
M
1
q
O
4
前記化学式1中、
M
1
は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
pおよびqは、それぞれ5≦p≦7および0≦q≦0.5である。
【請求項3】
前記第2領域は、第1領域内にアイランド形態で分散された構造を有する、請求項1
又は2に記載のリチウム二次電池用正極。
【請求項4】
前記正極添加剤は、空間群がP4
2/nmcである正方晶系構造を有する、請求項1
又は2に記載のリチウム二次電池用正極。
【請求項5】
前記正極活物質は、下記化学式2で示すリチウム金属複合酸化物である、請求項1
又は2に記載のリチウム二次電池用正極:
[化学式2]
Li
x[Ni
yCo
zMn
wM
2
v]O
u
前記化学式2中、
M
2は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
x、y、z、w、vおよびuは、それぞれ1.0≦x≦1.30、0.1≦y<0.95、0.01<z≦0.5、0.01<w≦0.5、0≦v≦0.2、1.5≦u≦4.5である。
【請求項6】
前記正極合材層は、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックおよび炭素繊維からなる群から選ばれる1種以上の導電材をさらに含む、請求項1
又は2に記載のリチウム二次電池用正極。
【請求項7】
請求項1
又は2に記載の正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に位置する分離膜と、を含むリチウム二次電池。
【請求項8】
前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体の少なくとも一面に位置し、負極活物質を含有する負極合材層と、を具備し、
前記負極活物質は、炭素物質およびシリコン物質を含有する、請求項
7に記載のリチウム二次電池。
【請求項9】
前記シリコン物質は、ケイ素(Si)粒子および酸化ケイ素(SiO
X、1≦X≦2)粒子のうち1種以上を含む、請求項
8に記載のリチウム二次電池。
【請求項10】
前記シリコン物質は、負極合材層100重量部において1~20重量部で含まれる、請求項
8に記載のリチウム二次電池。
【請求項11】
前記炭素物質は、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、グラフェンおよびカーボンナノチューブからなる群から選ばれる1種以上を含む、請求項
8に記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池用正極およびそれを含むリチウム二次電池に関するものである。
【0002】
本出願は、2021年5月18日付の韓国特許出願第10-2021-0064296号および2022年2月9日付の韓国特許出願第10-2022-0016953号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【背景技術】
【0003】
モバイル機器に対する技術の開発と需要の増加に伴い、エネルギー源としての二次電池に対する需要が急激に増加している。このような二次電池のうち、高いエネルギー密度と作動電位を有し、サイクル寿命が長く、自己放電率が低いリチウム二次電池が商用化されて広く使用されている。
【0004】
最近では、電気自動車のような中大型デバイスの電源としてリチウム二次電池が用いられるに伴い、リチウム二次電池の高容量、高エネルギー密度、および低コスト化がより一層要求されており、電極に使用される非可逆添加剤に対しても、より高い非可逆容量を有することが求められている。しかしながら、このような高い非可逆容量を有する正極添加剤の開発には限界があったのが事実である。
【0005】
一方、Li6CoO4のような従来の非可逆添加剤は、一般的に過量のリチウム酸化物とコバルト酸化物などの金属酸化物を反応させて製造される。このように製造された非可逆添加剤は、構造的に不安定で、充電が進行されるにつれて、下記のように酸素ガス(O2)などを多量発生させるが、二次電池の初期充電、すなわち電池の活性化時に非可逆添加剤が全部反応せずに残留する場合、以後に行われる充放電過程で反応を起こして、電池内部に副反応や多量の酸素ガスを発生させることができる。このように発生した酸素気体は、電極組立体の体積膨張などを誘発して、電池性能の低下を引き起こす主な要因の一つとして作用することができる。
【0006】
【0007】
また、上記リチウム酸化物などの副産物は、電極製造のためのスラリー組成物の製造時、バインダー成分などと反応して、組成物の粘度上昇またはゲル化を引き起こすことができる。その結果、活物質層の形成のための電極組成物の塗布時、均一な塗布が難しく、電池の特性が低下するという問題がある。
【0008】
したがって、リチウム二次電池の安全性と電気的性能を改善するために、充放電時に非可逆添加剤による副反応や酸素(O2)などのガス発生を低減させることができる技術の開発が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】韓国公開特許第10-2019-0078392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これより、本発明の目的は、非可逆添加剤による副反応が改善され、充放電過程で発生する酸素(O2)などのガス発生量が低減されて、優れた電池安全性と高い充放電容量を具現し得るリチウム二次電池用正極およびリチウム二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述のような問題を解決するために、
本発明は、一実施形態において、
正極集電体と、
上記正極集電体の少なくとも一面に形成され、正極活物質と下記化学式1で示す正極添加剤を含有する正極合材層と、を具備し、
初期充電後、正極合材層の断面構造は、
第1金属酸化物粒子で充填された緻密構造を有する第1領域と、
第2金属酸化物粒子の内部および外部に針状亀裂構造を有する第2領域と、を含むリチウム二次電池用正極を提供する:
【0012】
[化学式1]
LipCo(1-q)M1
qO4
【0013】
上記化学式1中、
M1は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
pおよびqは、それぞれ5≦p≦7および0≦q≦0.5である。
【0014】
ここで、上記第2領域は、第1領域内にアイランド形態で分散した構造を有していてもよい。
【0015】
また、上記第2領域は、正極合材層の全体断面積に対して0.001~10%を占めることができる。
【0016】
また、上記第2領域に含まれた針状亀裂構造は、平均厚さが5nm~800nmであり、平均長さが50nm~10μmである亀裂を含んでもよい。
【0017】
また、上記正極添加剤は、空間群がP42/nmcである正方晶系構造(tetragonal structure)を有していてもよい。
【0018】
これと共に、上記正極活物質は、下記化学式2で示すリチウム金属複合酸化物であってもよい:
【0019】
[化学式2]
Lix[NiyCozMnwM2
v]Ou
【0020】
上記化学式2中、
M2は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
x、y、z、w、vおよびuは、それぞれ1.0≦x≦1.30、0.1≦y<0.95、0.01<z≦0.5、0.01<w≦0.5、0≦v≦0.2、1.5≦u≦4.5である。
【0021】
また、上記正極合材層は、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックおよび炭素繊維からなる群から選ばれる1種以上の導電材をさらに含んでもよい。
【0022】
しかも、本発明は、一実施形態において、
上述した本発明の正極、負極および上記正極と負極の間に位置する分離膜を含むリチウム二次電池を提供する。
【0023】
このとき、上記負極は、負極集電体と、上記負極集電体の少なくとも一面に位置し、負極活物質を含有する負極合材層と、を具備してもよい。
【0024】
また、上記負極活物質は、炭素物質およびシリコン物質を含有してもよく、上記炭素物質としては、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、グラフェンおよびカーボンナノチューブからなる群から選ばれる1種以上を含んでもよく、上記シリコン物質としては、ケイ素(Si)粒子および酸化ケイ素(SiOX、1≦X≦2)粒子のうち1種以上を含んでもよい。
【0025】
また、上記シリコン物質は、負極合材層100重量部において1~20重量部で含まれ得る。
【発明の効果】
【0026】
本発明によるリチウム二次電池用正極は、化学式1で示す正極添加剤を正極合材層に含有し、初期充電(活性化)後、正極合材層の断面に針状亀裂構造を有する領域を有することによって、以後の充放電過程で非可逆添加剤である正極添加剤に因って発生する酸素などのガス発生量が低減され、リチウムイオンおよび/または電子の移動経路の確保が可能なので、リチウム二次電池の電池安全性と電気的性能が向上するという効果に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明によるリチウム二次電池用正極を初期充電(活性化)前・後の断面構造を走査電子顕微鏡(SEM)分析したイメージであり、(a)は、初期充電(活性化)前の断面構造を示し、(b)は、初期充電(活性化)後の断面構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、多様な変更を加えることができ、多様な実施例を有することができるところ、特定の実施例を詳細に説明しようとする。
【0029】
しかしながら、これは、本発明を特定の実施形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物ないし代替物を含むものとして理解すべきである。
【0030】
本発明において、「含む」や「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性をあらかじめ排除しないものとして理解すべきである。
【0031】
また、本発明において、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上に」あると記載された場合、これは、他の部分の「真上に」ある場合のみならず、その中間に別の部分がある場合も含む。反対に、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「下に」あると記載された場合、これは、他の部分の「真下に」ある場合のみならず、その中間に別の部分がある場合も含む。また、本出願において「上に」配置されるというのは、上部のみならず、下部に配置される場合も含むものであり得る。
【0032】
また、本発明において、「主成分」とは、組成物または特定成分の全体重量に対して50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、95重量%以上または97.5重量%以上であることを意味し、場合によっては、組成物または特定成分の全体を構成する場合、すなわち100重量%を意味することもあり得る。
【0033】
また、本発明において、「Ah」は、リチウム二次電池の容量単位であり、「アンペアアワー」と言い、時間当たりの電流量を意味する。例えば、電池容量が「3000mAh」であれば、3000mAの電流で1時間の間放電させることができることを意味する。
【0034】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0035】
<リチウム二次電池用正極>
本発明は、一実施形態において、
正極集電体と、
上記正極集電体の少なくとも一面に形成され、正極活物質と下記化学式1で示す正極添加剤を含有する正極合材層と、を具備し、
初期充電後、正極合材層の断面構造は、
第1金属酸化物粒子で充填された緻密構造を有する第1領域と、
第2金属酸化物粒子の内部および外部に針状亀裂構造を有する第2領域と、を含むリチウム二次電池用正極を提供する:
【0036】
[化学式1]
LipCo(1-q)M1
qO4
【0037】
上記化学式1中、
M1は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
pおよびqは、それぞれ5≦p≦7および0≦q≦0.5である。
【0038】
本発明によるリチウム二次電池用正極は、正極集電体上に合材層が形成された構造を有し、かつ、上記正極合材層は、正極活物質および正極添加剤を含む構成を有する。
【0039】
このとき、上記正極活物質は、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、チタニウム(Ti)、マグネシウム(Mg)、クロム(Cr)およびジルコニウム(Zr)からなる群から選ばれる2種以上の元素を含むリチウム複合遷移金属酸化物であってもよい。例えば、上記正極活物質は、可逆的なインターカレーションとデインターカレーションが可能な下記化学式2で示すリチウム金属複合酸化物であってもよい:
【0040】
[化学式2]
Lix[NiyCozMnwM2
v]Ou
【0041】
上記化学式2中、
M2は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
x、y、z、w、vおよびuは、それぞれ1.0≦x≦1.30、0.1≦y<0.95、0.01<z≦0.5、0.01<w≦0.5、0≦v≦0.2、1.5≦u≦4.5である。
【0042】
上記化学式2で示すリチウム金属複合酸化物は、リチウム、ニッケル、コバルトおよびマンガンを含む金属酸化物であり、場合によっては、他の遷移金属(M2)がドープされた形態を有していてもよい。例えば、上記正極活物質は、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2、LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2、LiNi0.9Co0.05Mn0.05O2、LiNi0.8Co0.1Mn0.05Al0.05O2およびLiNi0.7Co0.1Mn0.1Al0.1O2からなる群から選ばれる1種以上の化合物を含んでもよい。一例として、上記正極活物質は、化学式2で示すリチウム金属複合酸化物としてLiNi0.6Co0.2Mn0.2O2、LiNi0.8Co0.1Mn0.05Al0.05O2およびLiNi0.7Co0.1Mn0.1Al0.1O2などをそれぞれ単独で使用したりまたは併用することができる。
【0043】
また、上記正極活物質の含有量は、正極合材層100重量部に対して85~95重量部であってもよく、具体的には、88~95重量部、90~95重量部、86~90重量部または92~95重量部であってもよい。
【0044】
また、上記正極合材層は、電気的活性を示す正極活物質と共に、非可逆容量を付与する正極添加剤を含み、上記正極添加剤は、下記化学式1で示すリチウムコバルト酸化物を含んでもよい:
【0045】
[化学式1]
LipCo(1-q)M1
qO4
【0046】
上記化学式1中、
M1は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
pおよびqは、それぞれ5≦p≦7および0≦q≦0.5である。
【0047】
上記正極添加剤は、リチウムを過多含有して、初期充電、すなわち活性化時に負極での非可逆的な化学的物理的反応によって発生したリチウム消耗にリチウムを提供することができ、これによって、電池の充電容量が増加し、非可逆容量が減少して、寿命特性が改善されることができる。
【0048】
その中でも、上記化学式1で示す正極添加剤は、当業界で通常使用されるニッケル含有酸化物と比較してリチウムイオンの含有量が高いため、電池の初期充電(活性化)時に非可逆反応で失われたリチウムイオンを補充することができるので、電池の充放電容量を顕著に向上させることができる。また、当業界で通常使用される鉄および/またはマンガン含有酸化物と比較して電池の充放電時に遷移金属の溶出によって発生する副反応がないので、電池の安定性に優れているという利点がある。
【0049】
このような化学式1で示すリチウムコバルト酸化物としては、Li6CoO4、Li6Co0.5Zn0.5O4、Li6Co0.7Zn0.3O4などを含んでもよい。
【0050】
また、上記化学式1で示すリチウムコバルト酸化物の平均粒度は、0.1~10μmであってもよく、具体的には、0.1~8μm;0.1~5μm;0.1~3μm;0.5~2μm;0.1~0.9μm;0.1~0.5μm;0.6~0.9μm;1~4μm;1.5~3.5μm;4~6μm;5~10μm;または6~9μmであってもよい。本発明は、リチウムコバルト酸化物の平均粒度を上記範囲に制御することによって、リチウムコバルト酸化物の非可逆活性を高めることができ、リチウムコバルト酸化物の粉体電気伝導度が低減されることを防止し得る。
【0051】
また、上記正極添加剤は、各正極合材層100重量部に対して0.01~5重量部で含まれ得、具体的には、0.01~4重量部;0.01~3重量部;0.01~2重量部;0.1~1重量部;0.5~2重量部;1~3重量部;2~4重量部;1.5~3.5重量部;0.5~1.5重量部;1~2重量部;0.1~0.9重量部;または0.3~1.2重量部で含まれ得る。
【0052】
これと共に、上記化学式1で示すリチウムコバルト酸化物は、正方晶系(tetragonal)結晶構造を有していてもよく、この中でも、コバルト元素と酸素元素とが成す歪んだ四面体構造を有するP42/nmcの空間群に含まれ得る。歪んだ四面体構造を有する正極添加剤は、コバルト元素と酸素原子とが成す歪んだ四面体構造を有していて、構造的に不安定なので、初期充放電はもちろん、以後の充放電時に電池内部で副反応および/または多量の酸素ガスを発生させることができる。しかしながら、本発明は、初期充電(活性化)時に正極合材層に針状亀裂構造を有する領域を一部導入することによって、非可逆添加剤である正極添加剤に因って発生する酸素などのガス発生量を低減させることができ、これと共に、リチウムイオンおよび/または電子の移動経路の確保が可能なので、リチウム二次電池の電池安全性と電気的性能を向上させることができる。
【0053】
具体的に、本発明によるリチウム二次電池用正極は、初期充電(活性化)後、正極合材層の断面構造は、第1金属酸化物粒子で充填された緻密構造を有する第1領域と、第2金属酸化物粒子の内部および外部に針状亀裂構造を有する第2領域と、を含んでもよい。より具体的に、上記第1領域は、第1金属酸化物として化学式2で示すリチウム金属複合酸化物を含む領域を意味する。上記第1金属酸化物は、リチウム二次電池の充放電時に可逆的にインターカレーションおよびデインターカレーションが可能なので、この領域に含まれた第1金属酸化物は、リチウム二次電池の充放電によるリチウムの損失が誘導されず、場合によって、リチウムの損失が発生しても、その程度が微小である。したがって、上記第1領域は、走査電子顕微鏡(SEM)分析時、第1金属酸化物粒子で密に充填されて、亀裂またはクラックがなく、または、場合によって、5nm未満の微小な亀裂またはクラックを含む緻密構造を有していてもよい。上記第2領域は、第2金属酸化物として化学式1で示すリチウムコバルト酸化物で構成される領域を意味する。上記第2金属酸化物は、リチウム二次電池の初期充電時に非可逆的な電気化学反応を通じてリチウムの損失が発生するので、この領域に含まれた第2金属酸化物は、リチウム二次電池の充放電による損失が誘導される。したがって、第2領域は、密に充填された複数の第2金属酸化物粒子の内部および外部(具体的に、第2金属酸化物粒子の内部および表面);または上記第2金属酸化物粒子の境界にリチウム損失による針状亀裂が形成された構造を有していてもよい。
【0054】
また、上記第1領域および第2領域は、正極合材層を構成し、上記第1領域は、連続相として作用して分散相である第2領域が第1領域にアイランド形態で均一に分散した構造を有していてもよい。この場合、上記第2領域の面積率は、正極合材層の全体断面積に対して0.001~10%を占めることができ、より具体的には、正極合材層の全体断面積に対して0.001~8%;0.001~6%;0.001~5%;0.001~3%;0.001~2%;0.05~2%;0.1~2%;または0.1~0.9%を占めることができる。本発明は、初期充電(活性化)後、正極合材層の断面が第1領域に第2領域が特定の面積率で均一に分散した構造を有することによって、活性化後の充放電時、正極添加剤による副反応および/または酸素(O2)などのガス発生を最小化したり、防止することができる。
【0055】
また、上記第2領域に形成された亀裂構造は、平均厚さが5nm~800nmであり、平均長さが50nm~10μmである針状の形態を有していてもよい。
【0056】
具体的に、上記針状亀裂は、平均厚さが5nm~700nm;5nm~250nm;5nm~100nm;5nm~50nm;5nm~25nm;10nm~30nm;15nm~60nm;50nm~200nm;80nm~250nm;100nm~300nm;150nm~300nm;200nm~400nm;250nm~500nm;または500nm~800nmであってもよい。
【0057】
また、上記針状亀裂は、平均長さが50nm~8μm;50nm~6μm;50nm~5μm;50nm~3μm;50nm~2μm;50nm~1μm;50nm~900nm;50nm~750nm;50nm~500nm;50nm~250nm;100nm~500nm;100nm~900nm;200nm~400nm;500nm~900nm;900nm~2μm;1μm~10μm;1μm~8μm;1μm~5μm;1μm~3μm;5μm~10μm;2μm~6μm;4μm~7μm;1μm~3μm;2μm~4μm;または0.8μm~1.2μmであってもよい。
【0058】
ここで、上記平均長さは、亀裂の中心を通る直線と、上記中心を交点とする線分のうち、最も長い線分である長軸の長さを意味し得る。上記平均厚さは、上記長軸と直交を成し、亀裂の中心を通る直線と上記中心を交点とする線分のうち、最も短い線分である短軸の長さを意味する。また、上記針状亀裂を隣り合った針状亀裂と連結して一つのライン形状(line shape、例えば:直線、曲線など)を形成することができ、このようなライン形状が繰り返されてリッジ(ridge)、バリー(valley)などの亀裂構造をランダムで構成し得る。
【0059】
一例として、上記第2領域は、平均厚さが10nm~100nmであり、平均長さが300nm~1μmである針状亀裂を含んでもよい。
【0060】
他の一例として、上記第2領域は、平均厚さが400nm~700nmであり、平均長さが2μm~7μmである針状亀裂を含んでもよい。
【0061】
別の一例として、上記第2領域は、平均厚さが10nm~100nmであり、平均長さが300nm~1μmである第1針状亀裂と、平均厚さが400nm~700nmであり、平均長さが2nm~7μmである第2針状亀裂とが混合された構造を有し得る。
【0062】
他の一例として、上記第2領域は、平均厚さおよび平均長さがそれぞれ50~90nmおよび500~1,500nmである針状の構造を含んでもよい。上記針状の構造は、不規則的に位置して連結された形態を有した。
【0063】
また、上記第2領域に形成された亀裂構造は、複数の針状亀裂を含んでもよく、上記針状亀裂は、不規則に形成され得る。場合によっては、亀裂が任意の一方向に配向されるか、または任意の1点を中心に配向されて放射形を成すか、または亀裂が互いに連結されて不規則的な網状構造を形成することもできるが、これに制限されるものではない。
【0064】
本発明は、第2領域に形成される亀裂の形態およびサイズを上記のように制御することによって、初期充電(活性化)後の充放電時、化学式1で示す正極添加剤に因って発生する副反応および/または酸素(O2)などのガスを改善し得る。
【0065】
さらに、第2領域に形成された亀裂構造は、その形態やサイズがリチウム二次電池の初期充電条件、すなわち活性化条件を制御し得る。具体的に、上記第2領域の亀裂構造は、リチウム二次電池を0.6~50mAの定電流の条件下で活性化するか、または、場合によっては、4.2V以下の充電終止電圧および1.0C以下の定電流-定電圧の条件下で活性化して形成することがでる。上記活性化は、SOCによって段階的に行われ得る。
【0066】
例えば、上記第2領域の亀裂構造は、リチウム二次電池用正極の初期充電時、3段階の充電工程、すなわち活性化1段階~3段階を連続的に行うことによって具現されることができる。具体的に、上記初期充電する段階は、リチウム二次電池に0.05C~0.3Cの電流を印加してSOC30%以上40%未満で充電する活性化1段階と、活性化1段階が行われたリチウム二次電池に0.3C~0.5Cの電流を印加してSOC40%以上50%未満で充電する活性化2段階と、活性化2段階が行われたリチウム二次電池に0.6C~0.9Cの電流を印加してSOC50%以上60%未満で充電する活性化3段階によって行われ得る。
【0067】
一例として、上記第2領域の亀裂構造は、リチウム二次電池の初期充電時、リチウム二次電池に0.08C~0.15Cの電流を印加してSOC30~39%で充電する活性化1段階と、活性化1段階が行われたリチウム二次電池に0.35C~0.45Cの電流を印加してSOC40~49%で充電する活性化2段階と、活性化2段階が行われたリチウム二次電池に0.65C~0.8Cの電流を印加してSOC50~59%で充電する活性化3段階を行うことによって形成されることができる。
【0068】
一方、上記正極合材層は、正極活物質と正極添加剤とともに、導電材、バインダー、添加剤などをさらに含んでもよい。
【0069】
この際、上記導電材は、正極の電気伝導性などの性能を向上させるために使用でき、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェンおよび炭素繊維からなる群から選ばれる1種以上を含んでもよい。例えば、上記導電材は、アセチレンブラックを含んでもよい。
【0070】
また、上記導電材は、正極合材層100重量部に対して0.5~5重量部であってもよく、具体的には、0.5~4重量部;0.5~3重量部;0.5~1重量部;0.5~2重量部;1~3重量部;2~4重量部;1.5~3.5重量部;0.5~1.5重量部;または1~2重量部であってもよい。
【0071】
また、上記バインダーは、ポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニリデンフルオライド(polyvinylidenefluoride、PVDF)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)およびこれらの共重合体からなる群から選ばれる1種以上の樹脂を含んでもよい。一例として、上記バインダーは、ポリビニリデンフルオライド(polyvinylidenefluoride)を含んでもよい。
【0072】
また、上記バインダーは、正極合材層全体100重量部に対して、1~10重量部で含んでもよく、具体的には、2~8重量部;または1~5重量部で含んでもよい。
【0073】
これと共に、上記正極合材層の平均厚さは、特に限定されるものではないが、具体的には、50μm~300μmであってもよく、より具体的には、100μm~200μm;80μm~150μm;120μm~170μm;150μm~300μm;200μm~300μm;または150μm~190μmであってもよい。
【0074】
また、上記正極は、正極集電体として当該電池に化学的変化を誘発することなく、高い導電性を有するものを使用することができる。例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素などを使用することができ、アルミニウムやステンレススチールの場合、カーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理されたものを使用することもできる。また、上記正極集電体は、表面に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態が可能である。また、上記集電体の平均厚さは、製造される正極の導電性と総厚さを考慮して3~500μmで適切に適用可能である。
【0075】
<リチウム二次電池>
しかも、本発明は、一実施形態において、
上述した本発明による正極と、負極と、上記正極と負極の間に介在される分離膜と、を含むリチウム二次電池を提供する。
【0076】
本発明によるリチウム二次電池は、前述したような本発明の正極を具備して、電池安全性と電気的性能に優れた特徴を示すことができる。このような本発明のリチウム二次電池は、上述した正極と、負極と、上記正極と負極との間に介在された分離膜と、を含む構造を有する。
【0077】
ここで、上記負極は、負極集電体上に負極活物質を塗布、乾燥およびプレスして負極合材層が製造され、必要に応じて正極と同じ導電材、有機バインダー高分子、添加剤などを選択的にさらに含んでもよい。
【0078】
また、上記負極活物質は、例えば、炭素物質とシリコン物質を含んでもよい。上記炭素物質は、炭素原子を主成分とする炭素物質を意味し、このような炭素物質としては、天然黒鉛のように完全な層状結晶構造を有するグラファイト、低結晶性層状結晶構造(グラフェン構造体(graphene structure);炭素の6角形ハニカム形状平面が層状に配列された構造)を有するソフトカーボンおよびこのような構造が非結晶性部分と混合されているハードカーボン、人造黒鉛、膨張黒鉛、炭素繊維、難黒鉛化炭素、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン、活性炭、グラフェン、カーボンナノチューブなどを含んでもよく、好ましくは、天然黒鉛、人造黒鉛、グラフェンおよびカーボンナノチューブからなる群から選ばれる1種以上を含んでもよい。より好ましくは、上記炭素物質は、天然黒鉛および/または人造黒鉛を含み、上記天然黒鉛および/または人造黒鉛と共にグラフェンおよびカーボンナノチューブのうちいずれか一つ以上を含んでもよい。この場合、上記炭素物質は、炭素物質全体100重量部に対して50~95重量部のグラフェンおよび/またはカーボンナノチューブを含んでもよく、より具体的には、炭素物質全体100重量部に対して60~90重量部;または70~80重量部のグラフェンおよび/またはカーボンナノチューブを含んでもよい。
【0079】
また、上記シリコン物質は、金属成分としてケイ素(Si)を主成分として含む粒子であり、ケイ素(Si)粒子および酸化ケイ素(SiOX、1≦X≦2)粒子のうち1種以上を含んでもよい。一例として、上記シリコン物質は、ケイ素(Si)粒子、一酸化ケイ素(SiO)粒子、二酸化ケイ素(SiO2)粒子、またはこれらの粒子が混合されたものを含んでもよい。
【0080】
また、上記シリコン物質は、結晶質粒子と非結晶質粒子が混合された形態を有していてもよく、上記非結晶質粒子の割合は、シリコン物質全体100重量部に対して50~100重量部、具体的には、50~90重量部;60~80重量部または85~100重量部であってもよい。本発明は、シリコン物質に含まれた非結晶質粒子の割合を上記のような範囲に制御することによって、電極の電気的物性を低下させない範囲で熱的安定性と柔軟性を向上させることができる。
【0081】
また、上記シリコン物質は、炭素物質とシリコン物質を含み、かつ、負極合材層100重量部に対して1~20重量部で含まれ得、具体的には、負極合材層100重量部に対して5~20重量部;3~10重量部;8~15重量部;13~18重量部;または2~7重量部で含まれ得る。
【0082】
本発明は、負極活物質に含まれた炭素物質とシリコン物質の含有量を上記のような範囲に調節することによって、電池の初期充放電時にリチウム消耗量と非可逆容量損失を減らし、単位質量当たりの充電容量を向上させることができる。
【0083】
一例として、上記負極活物質は、負極合材層100重量部に対して黒鉛95±2重量部と;一酸化ケイ素(SiO)粒子および二酸化ケイ素(SiO2)粒子が均一に混合された混合物5±2重量部を含んでもよい。本発明は、負極活物質に含まれた炭素物質とシリコン物質の含有量を上記のような範囲に調節することによって、電池の初期充放電時にリチウム消耗量と非可逆容量損失を減らし、単位質量当たりの充電容量を向上させることができる。
【0084】
また、上記負極合材層は、100μm~200μmの平均厚さを有していてもよく、具体的には、100μm~180μm、100μm~150μm、120μm~200μm、140μm~200μmまたは140μm~160μmの平均厚さを有していてもよい。
【0085】
また、上記負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発することなく、高い導電性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、ニッケル、チタン、焼成炭素などが使用でき、銅やステンレススチールの場合、カーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理されたものを使用することもできる。また、上記負極集電体は、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸を形成して負極活物質との結合力を強化させることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態が可能である。また、上記負極集電体の平均厚さは、製造される負極の導電性と総厚さを考慮して3~500μmで適切に適用可能である。
【0086】
また、上記分離膜は、正極と負極の間に介在され、高いイオン透過度と機械的強度を有する絶縁性の薄い薄膜が使用される。分離膜は、当業界で通常使用されるものであれば、特に限定されないが、具体的には、耐化学性および疎水性のポリプロピレン;ガラス繊維;またはポリエチレンなどで作られたシートや不織布などが使用でき、場合によっては、上記シートや不織布のような多孔性高分子基材に無機物粒子/有機物粒子が有機バインダー高分子によってコートされた複合分離膜が使用されることもできる。電解質としてポリマーなどの固体電解質が使用される場合には、固体電解質が分離膜を兼ねることもできる。また、上記分離膜の気孔直径は、平均0.01~10μmであり、厚さは、平均5~300μmであってもよい。
【0087】
一方、上記正極と負極は、ゼリーロール形態で巻き取られて、円筒形電池、角形電池またはパウチ型電池に収納されるか、またはフォールディングまたはスタックアンドフォールディング形態でパウチ型電池に収納されてもよいが、これに限定されるものではない。
【0088】
また、本発明による上記リチウム塩含有電解液は、電解液とリチウム塩からなってもよく、上記電解液としては、非水系有機溶媒、有機固体電解質、無機固体電解質などが使用できる。
【0089】
上記非水系有機溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリジノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ガンマ-ブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1、3-ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エーテル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの非プロトン性有機溶媒が使用できる。
【0090】
上記有機固体電解質としては、例えば、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキシド誘導体、ポリプロピレンオキシド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリアジテーションリシン(agitation lysine)、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、イオン性解離基を含む重合材などが使用できる。
【0091】
上記無機固体電解質としては、例えば、Li3N、LiI、Li5NI2、Li3N-LiI-LiOH、LiSiO4、LiSiO4-LiI-LiOH、Li2SiS3、Li4SiO4、Li4SiO4-LiI-LiOH、Li3PO4-Li2S-SiS2などのLiの窒化物、ハロゲン化物、硫酸塩などが使用できる。
【0092】
上記リチウム塩は、非水系電解質に溶解しやすい物質であり、例えば、LiCl、LiBr、LiI、LiClO4、LiBF4、LiB10Cl10、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、CH3SO3Li、(CF3SO2)2NLi、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、テトラフェニルボロン酸リチウム、イミドなどが使用できる。
【0093】
また、電解液には、充放電特性、難燃性などの改善を目的に、例えば、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノール、三塩化アルミニウムなどが添加されてもよい。場合によっては、不燃性を付与するために、四塩化炭素、三フッ化エチレンなどのハロゲン含有溶媒をさらに含んでもよく、高温保存特性を向上させるために、二酸化炭素ガスをさらに含んでもよく、フルオロエチレンカーボネート(FEC:Fluoro-Ethylene Carbonate)、プロペンスルトン(PRS:Propene sultone)などをさらに含んでもよい。
【0094】
以下、本発明を実施例および実験例に基づいてより詳細に説明する。
【0095】
ただし、下記実施例および実験例は、ただ本発明を例示するものであり、本発明の内容が下記実施例および実験例に限定されるものではない。
【0096】
<実施例1~3および比較例1~4.リチウム二次電池の製造>
イ)リチウム二次電池用正極の製造
ホモミキサー(homo mixer)にN-メチルピロリドンを注入し、正極スラリー固形分100重量部に対して正極活物質としてのLiNi0.6Co0.2Mn0.2O2 97重量部および正極添加剤としてのLi6CoO4またはLi6Co0.7Zn0.3O4 0.8重量部;導電材としてのカーボンナノチューブ(平均サイズ:60±10nm)およびデンカブラック(平均サイズ:2±0.5μm)の混合物(75:25wt./wt.)0.7重量部;バインダーとしてのPVDF 1.5重量部を秤量して投入し、2,000rpmで60分間混合して、リチウム二次電池用正極スラリーを製造した。製造された正極スラリーをアルミニウム集電体の一面に塗布した後、100℃で乾燥し、圧延して、正極を製造した。この際、正極合材層の総厚さは、130μmであり、製造された正極の総厚さは、約200μmであった。
【0097】
ロ)リチウム二次電池の製造
負極スラリー固形分100重量部に対して負極活物質としての天然黒鉛84重量部およびシリコン(SiOx、ただし、1≦x≦2)粒子14重量部と;バインダーとしてのスチレンブタジエンゴム(SBR)2重量部を準備し、正極スラリーを製造する方式と同じ方式で行うことで、負極スラリーを準備した。この際、負極合材層の製造時に使用される黒鉛は、天然黒鉛(平均粒度:0.01~0.5μm)であり、ケイ素(SiOx)粒子は、0.9~1.1μmの平均粒度を有するものを使用した。準備した負極スラリーを銅集電体の一面に塗布した後、100℃で乾燥し、圧延して、負極を製造した。この際、負極合材層の総厚さは、150μmであり、製造された負極の総厚さは、約250μmであった。
【0098】
準備した正極と負極の間に多孔質ポリエチレン(PE)フィルムからなる分離膜(厚さ:約16μm)が介在されるように積層し、電解液としてE2DVCを注入して、フルセル(full cell)形態で電池を組み立てた。ここで、「E2DVC」とは、カーボネート系電解液の一種であり、エチレンカーボネート(EC):ジメチルカーボネート(DMC):ジエチルカーボネート(DEC)=1:1:1(体積比)の混合物に、リチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF6、1.0M)およびビニルカーボネート(VC、2重量%)を混合した溶液を意味する。
【0099】
製造されたフルセルを22±2℃で下記表1に示したような条件で初期充電を行うことで、リチウム二次電池を製造した。
【0100】
【0101】
<実験例>
本発明によるリチウム二次電池用正極の性能を評価するために、下記のような実験を行った。
【0102】
イ)初期充電後、正極合材層の断面構造の分析
実施例1~3と比較例1~4で初期充電されたリチウム二次電池から正極を分離し、分離した正極から正極合材層を剥離して試験片を準備し、準備した各試験片の断面に対する走査電子顕微鏡(SEM)分析を行った。その結果は、
図1に示した。
【0103】
その結果、
図1に示されたように、実施例1~3のリチウム二次電池から分離した正極合材層は、白色(white)と確認される正極活物質粒子が密に充填されていて、亀裂および/またはクラックがなく、一部の金属酸化物、具体的に灰色(gray)と確認される正極添加剤粒子の内部および表面と上記正極添加剤粒子の境界に微細な針状亀裂がアイランド形態で形成された構造を有することが確認された。この際、上記針状亀裂は、平均厚さが10nm~100nmであり、平均長さが150nm~400nmである第1亀裂と;平均厚さが500nm~750nmであり、平均長さが5.5μm~7.3μmである第2亀裂が混合された構造を有し、上記第1亀裂および第2亀裂は、一部が不規則的に連結されて一つのライン形状(line shape、例えば、直線、曲線など)を形成することが確認された。また、この際、上記亀裂構造は、全体断面積の0.5~5%を占めることが示された。
【0104】
これに対し、比較例1~4のリチウム二次電池から分離した正極合材層は、合材層断面全体に亀裂構造が形成されるか、または、実施例の正極合材層のように正極添加剤粒子に亀裂構造を有する領域がアイランド形態で形成された構造を有するが、形成された亀裂の平均厚さおよび平均長さが実施例の亀裂より顕著に大きく、合材層断面全体の10%以上の面積を占めることが確認された。
【0105】
このような結果から、本発明によるリチウム二次電池用正極は、正極合材層に形成される亀裂が活性化段階で制御されることができることが分かる。
【0106】
ロ)初期充電後、充放電時に発生するガス累積発生量の評価
実施例1~3および比較例1~4で初期充電されたリチウム二次電池に脱ガス工程(degassing)を行い、以後、0.1Cの放電電流で終止電圧2Vまで放電させた後、内部ガスが除去された各二次電池を対象に45℃で4.5Vおよび1.0Cの条件で50回充放電を繰り返し行った。この際、各充放電時に発生するガス量を測定して、初期充放電後に発生した累積ガス量を算出し、その結果は、下記の表2に示した。
【0107】
ハ)サイクル寿命性能の評価
実施例1~3および比較例1~4で初期充電されたリチウム二次電池に脱ガス工程(degassing)を行い、以後、0.1Cの放電電流で終止電圧2Vまで放電させた後、25℃で充電終止電圧4.25V、放電終止電圧2.5V、0.5C/0.5Cの条件で100回充放電(n=100)を実施し、容量保持率(Capacity Retention[%])を測定した。この際、上記容量保持率は、下記の式1を利用して算出し、その結果を下記の表2に示した:
【0108】
[式1]
容量保持率(%)=(100回充放電時の放電容量/1回充放電時の放電容量)×100
【0109】
【0110】
表2に示されたように、本発明によるリチウム二次電池用正極は、化学式1で示す正極添加剤を含有し、同時に、初期充電後、正極合材層の断面に特定の亀裂構造が導入された構成を有することによって、リチウム二次電池の安全性と電気的性能に優れていることが分かる。
【0111】
具体的に、実施例で製造されたリチウム二次電池は、初期充放電で発生したガスの脱気後、充放電時に発生するガスの量が顕著に低減されることが確認された。また、上記リチウム二次電池は、103mAh以上の高い初期充電容量と95%以上の高い容量保持率を有することが確認された。
【0112】
一方、比較例で製造されたリチウム二次電池は、初期充電(活性化)後、充放電過程で電解液の分解が促進されて発生するガス量が多いことが示された。また、比較例のリチウム二次電池は、初期充電容量が102mAh未満と低く、電解液の分解によって100回充放電後の容量保持率も94%未満であることが確認された。
【0113】
このような結果から、本発明によるリチウム二次電池用正極は、化学式1で示す正極添加剤を含有し、初期充電(活性化)後、断面に針状亀裂構造を有する領域を含む正極合材層を有することによって、初期充電後の充放電過程で非可逆添加剤である正極添加剤に因って発生する酸素などのガス発生量が低減され、リチウムイオンおよび/または電子の移動経路の確保が可能なので、リチウム二次電池の電池安全性と電気的性能が向上する効果に優れている。
【0114】
以上では、本発明の好ましい実施形態を参照して説明したが、当該技術分野における熟練した当業者または当該技術分野における通常の知識を有する者なら、後述する特許請求範囲に記載された本発明の思想および技術領域を逸脱しない範囲内で本発明を多様に修正および変更させることができることが理解できる。
【0115】
したがって、本発明の技術的範囲は、明細書の詳細な説明に記載された内容に限定されるものではなく、特許請求範囲によって定められるべきである。