(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】射出成形システム、射出成形機及びハンドリング装置
(51)【国際特許分類】
B29C 45/76 20060101AFI20241126BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20241126BHJP
B29C 45/17 20060101ALI20241126BHJP
B29C 45/42 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
B29C45/76
B29C45/14
B29C45/17
B29C45/42
(21)【出願番号】P 2023516972
(86)(22)【出願日】2021-04-28
(86)【国際出願番号】 JP2021017051
(87)【国際公開番号】W WO2022230133
(87)【国際公開日】2022-11-03
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】土屋 信篤
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-263722(JP,A)
【文献】特開平06-320574(JP,A)
【文献】特開2014-088029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/76
B29C 45/14
B29C 45/17
B29C 45/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動金型及び固定金型が形成するキャビティの中に樹脂を射出する射出ユニットと、
前記可動金型及び前記固定金型を開閉可能に保持し、前記可動金型及び前記固定金型の型締力を調整する型締力調整機構を有する型締ユニットと、
前記可動金型からの成形品の取出作業及び前記可動金型へのインサート部品の挿入作業の少なくともいずれかの補助作業を行うハンドリングユニットと、
前記射出ユニット、前記型締ユニット及び前記ハンドリングユニットを制御する制御システムと、
を備え、
前記制御システムは、
型開時の前記可動金型の位置を検出する金型位置検出部と、
前記金型位置検出部の検出値に応じて、前記補助作業を行う際の前記ハンドリングユニットの位置及び前記型開時の前記可動金型の位置の少なくともいずれかを調整する作業位置調整部と、
を有
し、
前記金型位置検出部は、
前記可動金型、前記可動金型から前記成形品を押し出すエジェクタ又は前記可動金型の中の前記成形品と前記ハンドリングユニットとの接触を検知する接触検知部と、
前記接触検知部が前記接触を検知したときの前記エジェクタ及び前記ハンドリングユニットの少なくともいずれかの先端位置を確認する位置確認部と、
を有する、射出成形システム。
【請求項2】
前記制御システムは、
前記射出ユニット及び前記型締ユニットを制御する射出成形制御ユニットと、前記ハンドリングユニットを制御するハンドリング制御ユニットと、を含み、
前記射出成形制御ユニット及び前記ハンドリング制御ユニットは、相互に通信する通信部をそれぞれ有し、一方から他方に前記金型位置検出部の検出値又は作業位置調整部が調整した前記位置を送信する、請求項1に記載の射出成形システム。
【請求項3】
前記型締力調整機構は、前記型締力の調整を連続成形中に実行する、請求項1又は2に記載の射出成形システム。
【請求項4】
前記金型位置検出部は、カメラ及び距離センサの少なくともいずれかを含む、請求項1から3のいずれかに記載の射出成形システム。
【請求項5】
前記接触検知部は、前記エジェクタの駆動モータ又は前記ハンドリングユニットの駆動モータのトルク、前記ハンドリングユニットの駆動モータの回転角度変化、及び前記ハンドリングユニットに作用する外力を検知するセンサの検出値の少なくともいずれかが予め設定される閾値以上になった場合に、前記可動金型、前記エジェクタ又は前記成形品と前記ハンドリングユニットとが接触したと判断する、請求項
1から4のいずれかに記載の射出成形システム。
【請求項6】
前記位置確認部は、前記エジェクタの駆動モータ又は前記ハンドリングユニットの駆動モータの回転角度位置により前記先端位置を確認する、請求項
1から5のいずれかに記載の射出成形システム。
【請求項7】
前記位置確認部は、前記接触を検知したときに前記エジェクタの駆動モータ又は前記ハンドリングユニットの駆動モータを停止し、前記エジェクタの駆動モータ又は前記ハンドリングユニットの停止位置により前記先端位置を確認する、請求項
6に記載の射出成形システム。
【請求項8】
可動金型及び固定金型の型締力を調整する型締力調整機構を有し、前記可動金型からの成形品の取出作業及び前記可動金型へのインサート部品の挿入作業の少なくともいずれかの補助作業を行うハンドリングユニットを備えるハンドリング装置と協調動作する射出成形機であって、
型開時の前記可動金型の位置を検出する金型位置検出部と、
前記金型位置検出部の検出値に応じて、前記補助作業を行う際の前記ハンドリングユニットの位置及び前記型開時の前記可動金型の位置の少なくともいずれかを調整する作業位置調整部と、
を有
し、
前記金型位置検出部は、
前記可動金型、前記可動金型から前記成形品を押し出すエジェクタ又は前記可動金型の中の前記成形品と前記ハンドリングユニットとの接触を検知する接触検知部と、
前記接触検知部が前記接触を検知したときの前記エジェクタ及び前記ハンドリングユニットの少なくともいずれかの先端位置を確認する位置確認部と、
を有する射出成形制御ユニットを備える、射出成形機。
【請求項9】
可動金型及び固定金型の型締力を調整する型締力調整機構を有する射出成形機の前記可動金型からの成形品の取出作業及び前記可動金型へのインサート部品の挿入作業の少なくともいずれかの補助作業を行うハンドリングユニットを備えるハンドリング装置であって、
型開時の前記可動金型の位置を検出する金型位置検出部と、
前記金型位置検出部の検出値に応じて、前記補助作業を行う際の前記ハンドリングユニットの位置及び前記型開時の前記可動金型の位置の少なくともいずれかを調整する作業位置調整部と、
を有
し、
前記金型位置検出部は、
前記可動金型、前記可動金型から前記成形品を押し出すエジェクタ又は前記可動金型の中の前記成形品と前記ハンドリングユニットとの接触を検知する接触検知部と、
前記接触検知部が前記接触を検知したときの前記エジェクタ及び前記ハンドリングユニットの少なくともいずれかの先端位置を確認する位置確認部と、
を有するハンドリング制御ユニットを備える、ハンドリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形システム、射出成形機及びハンドリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金型により画定されるキャビティの中に溶融した樹脂を注入する射出成形機が広範に利用されている。射出成形機により効率よく製品を成形するために、例えば多関節ロボット等により構成され、金型からの成形品の取出作業又は金型へのインサート部品の挿入作業を行うハンドリング装置を射出成型機に付帯して設けることがある。ハンドリング装置は、そのヘッドを型開時の金型に対して適切な位置に配置するよう教示される。
【0003】
射出成形機が例えばスライドベース等を用いて移動可能に配設された可動部を有する場合、射出成形機の可動部の移動に合わせて、ハンドリング装置の作業位置を修正する必要がある。このため、射出成型機の位置情報をハンドリング装置に出力することが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、射出成形機の中には、金型を締め付ける力(型締力)を調整する型締力調整機構を有するものが存在する(例えば特許文献2参照)。型締力調整機構は、可動金型を保持する可動プラテンの移動の基準位置を移動させることによって、型締力を調整するよう構成され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6444955号公報
【文献】特開2007-261059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のような型締力調整機構を設けた場合、型開時の可動金型の位置が変化し得る。型締力調整機構による可動金型の位置変化は比較的小さいが、成形品又はインサート部品の形状等によっては、ハンドリング装置の教示点を可動金型の型開時の位置に合わせて微調整することが必要となる。特に、例えばフィードバック制御等により型締力の調整が連続成形中に行われる場合、型開時の可動金型の位置変化によりハンドリング装置による成形品の取り出し又はインサート部品の挿入が適切に行えなくなる可能性がある。このため、型締力調整機構による可動金型の位置変化を補正できる技術が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る射出成形システムは、可動金型及び固定金型が形成するキャビティの中に樹脂を射出する射出ユニットと、前記可動金型及び前記固定金型を開閉可能に保持し、前記可動金型及び前記固定金型の型締力を調整する型締力調整機構を有する型締ユニットと、前記可動金型からの成形品の取出作業及び前記可動金型へのインサート部品の挿入作業の少なくともいずれかの補助作業を行うハンドリングユニットと、前記射出ユニット、前記型締ユニット及び前記ハンドリングユニットを制御する制御システムと、を備え、前記制御システムは、型開時の前記可動金型の位置を検出する金型位置検出部と、前記金型位置検出部の検出値に応じて、前記補助作業を行う際の前記ハンドリングユニットの位置及び前記型開時の前記可動金型の位置の少なくともいずれかを調整する作業位置調整部と、を有する。
【0008】
本開示の一態様に係る射出成形機は、可動金型及び固定金型の型締力を調整する型締力調整機構を有し、前記可動金型からの成形品の取出作業及び前記可動金型へのインサート部品の挿入作業の少なくともいずれかの補助作業を行うハンドリングユニットを備えるハンドリング装置と協調動作する射出成形機であって、型開時の前記可動金型の位置を検出する金型位置検出部と、前記金型位置検出部の検出値に応じて、前記補助作業を行う際の前記ハンドリングユニットの位置及び前記型開時の前記可動金型の位置の少なくともいずれかを調整する作業位置調整部と、有する射出成形制御ユニットを備える。
【0009】
本開示の一態様に係るハンドリング装置は、可動金型及び固定金型の型締力を調整する型締力調整機構を有する射出成形機の前記可動金型からの成形品の取出作業及び前記可動金型へのインサート部品の挿入作業の少なくともいずれかの補助作業を行うハンドリングユニットを備えるハンドリング装置であって、型開時の前記可動金型の位置を検出する金型位置検出部と、前記金型位置検出部の検出値に応じて、前記補助作業を行う際の前記ハンドリングユニットの位置及び前記型開時の前記可動金型の位置の少なくともいずれかを調整する作業位置調整部と、を有するハンドリング制御ユニットを備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、型締力調整機構による可動金型の位置変化を補正できる射出成形システム、射出成形機及びハンドリング装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の第1実施形態に係る射出成形システムの構成を示す模式図である。
【
図2】本開示の第2実施形態に係る射出成形システムの構成を示す模式図である。
【
図3】本開示の第3実施形態に係る射出成形システムの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本開示の第1実施形態に係る射出成形システム1の構成を示す模式図である。
【0013】
射出成形システム1は、固定金型M1及び可動金型M2の間に形成されるキャビティの中に溶融した樹脂を射出する射出成形により成形品Fを成形する射出成形機10と、成形品Fの成形を補助する補助作業、具体的には可動金型M2からの成形品Fの取出作業及び成形品Fの一部を構成するインサート部品Iの可動金型M2への挿入作業を行うハンドリング装置20と、を備える。
【0014】
射出成形機10は、樹脂を溶融して出射する射出ユニット11と、固定金型M1及び可動金型M2を開閉可能に保持する型締ユニット12と、射出ユニット11及び型締ユニット12を制御する射出成形制御ユニット13と、を有する。
【0015】
射出ユニット11は、シリンダ111と、シリンダ111の中に収容されるスクリュ112と、スクリュ112を回転駆動する射出モータ113と、を有する。このような射出ユニット11は公知であるため、詳細な説明は省略する。
【0016】
型締ユニット12は、固定金型M1を保持する固定プラテン121と、可動金型M2を保持する移動可能な可動プラテン122と、可動プラテン122の移動の基準位置を定めるリアプラテン123と、可動プラテン122とリアプラテン123との間に介設され、リアプラテン123に対して可動プラテン122を移動させる型締駆動機構124と、リアプラテン123の位置を調整することによって固定金型M1及び可動金型M2を締め付ける型締力を調整する型締力調整機構125と、を有する。
【0017】
固定プラテン121は、射出ユニット11の先端部に接続される。固定プラテン121は、可動プラテン122に対向する側に固定金型M1が取り付けられる。
【0018】
可動プラテン122は、固定プラテン121と対向し合う方向に移動可能に配設される。可動プラテン122は、例えば固定プラテン121に接続される複数のシャフトに沿って摺動可能に配設され得る。可動プラテン122は移動することによって、可動金型M2を固定金型M1に密接させる型締状態と可動金型M2を固定金型M1から離間させる型開状態とを形成する。
【0019】
リアプラテン123は、可動プラテン122の移動の基準位置を定める。リアプラテン123は、可動プラテン122の移動方向の位置を微調整可能に配設される。このため、リアプラテン123は、可動プラテン122が摺動するシャフトに沿って摺動可能に配設され得る。
【0020】
型締駆動機構124は、可動プラテン122とリアプラテン123との間に介設され、可動プラテン122とリアプラテン123との距離を定める。型締駆動機構124は、サーボモータによって駆動されるリンク機構により構成され得る。型締駆動機構124は、一定のストロークで可動プラテン122を移動させるよう制御される。
【0021】
型締力調整機構125は、リアプラテン123の位置を調整することによって型締駆動機構124等の弾性力によって生じる型締力の大きさを調整する。つまり、型締力調整機構125は、リアプラテン123を固定プラテン121から遠ざけることによって型締力を低下させ、リアプラテン123を固定プラテン121に近づけることによって型締力を増大させる。
【0022】
射出成形制御ユニット13は、成形品Fを形成するサイクルを制御する成形制御部131と、型締力調整機構125による型締力の調整を行う型締力調整制御部132と、ハンドリング装置20と協調動作するために通信する射出通信部133と、を有する。射出成形制御ユニット13は、例えばメモリ、CPU、入出力インターフェイス等を有するコンピュータ装置に適切な制御プログラムを実行させることにより実現できる。成形制御部131及び型締力調整制御部132は、射出成形制御ユニット13の機能を類別したものであって、物理構造及びプログラム構造において明確に区分できるものでなくてもよい。
【0023】
成形制御部131は、ハンドリング装置20へのインサート部品Iの挿入指示、型締駆動機構124による金型M1,M2の閉鎖及び締付、射出ユニット11による樹脂の射出、型締駆動機構124による金型M1,M2の開放、及びハンドリング装置20への成形品Fの取り出し指示をこの順番に繰り返し行う。、成形品Fの成形を繰り返し行う場合、成形品Fの取り出し指示と次のサイクルのインサート部品Iの挿入指示とは1つの指示にまとめてもよい。このような成形サイクルの制御は、従来の射出成形機におけるものと同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0024】
型締力調整制御部132は、例えば金型からの温度伝達により可動プラテン122とリアプラテン123、型締駆動機構124が熱変形して型締力が変化した場合には、型開時に型締力調整機構125による型締力調整を行う。型締力の調整は、連続成形中、つまり成形制御部131による形成サイクルを繰り返し行っている最中の所定のタイミングで実行され得る。
【0025】
射出通信部133は、インサート部品Iの挿入指示信号及び成形品Fの取り出し指示信号をハンドリング装置20に対して送出する。また、射出通信部133は、ハンドリング装置20から、インサート部品Iの挿入完了確認信号及び成形品Fの取り出し完了確認信号を受信する。射出通信部133は、型締力調整制御部132により型締力を調整したときに、ハンドリング装置20に対して可動金型M2の位置を確認して補助作業を行う作業位置を調整すべきことを伝える信号を送出してもよい。
【0026】
ハンドリング装置20は、補助作業を行うハンドリングユニット21と、ハンドリングユニット21を制御するハンドリング制御ユニット22と、を備える。本実施形態のハンドリング装置20は、それ自体が本開示に係るハンドリング装置の一実施系形態であり、インサート部品Iの挿入を行う作業位置及び成形品Fの取り出しを行う作業位置を単独で最適化することができる。
【0027】
ハンドリングユニット21は、位置決め機構211と、位置決め機構211の先端に設けられる作業ヘッド212と、を備える。
【0028】
位置決め機構211は、図示するように垂直多関節型ロボットとすることができるが、これに限定されず、例えば直交座標型ロボット、スカラ型ロボット、パラレルリンク型ロボット等であってもよく、作業ヘッド212の構成によっては短軸のアクチュエータであってもよい。
【0029】
作業ヘッド212は、成形品F及びインサート部品を保持可能な1又は複数の保持部213を有する。また、作業ヘッド212は、保持部213を可動金型M2に接近及び離間する方向に移動させるリーチ機構214を有してもよい。保持部213は、成形品F及びインサート部品を把持する一対の指状の把持部材、成形品F及びインサート部品と係合可能な係合部材、成形品F及びインサート部品を吸着する吸着パッド等によって構成され得る。リーチ機構214は、保持部213を可動金型M2に向かって突出及び後退させる送り軸を有する構成とされる。なお、リーチ機構214を設けない場合、位置決め機構211によって作業ヘッド212全体が可動金型M2に向かって突出及び後退させられる。
【0030】
ハンドリング制御ユニット22は、射出成形機10と通信するハンドリング通信部221と、ハンドリング装置20からの要求に応じてインサート部品Iの挿入及び成形品Fの取り出しを行う補助作業制御部222と、型開時の可動金型M2の位置を検出する金型位置検出部223と、金型位置検出部223の検出値に応じて補助作業を行う際のハンドリングユニット21の作業ヘッド212の位置を調整する作業位置調整部224と、を有する。つまり、射出成形システム1において、射出成形制御ユニット13及びハンドリング制御ユニット22は、射出ユニット11、型締ユニット12及びハンドリングユニット21を制御する制御システムの一部をそれぞれ構成する。
【0031】
ハンドリング制御ユニット22は、例えばメモリ、CPU、入出力インターフェイス等を有するコンピュータ装置に適切な制御プログラムを実行させることにより実現できる。ハンドリング制御ユニット22の各構成要素は、ハンドリング制御ユニット22の機能を類別したものであって、物理構造及びプログラム構造において明確に区分できるものでなくてもよい。
【0032】
ハンドリング通信部221は、射出成形機10の射出通信部133からインサート部品Iの挿入指示信号及び成形品Fの取り出し指示信号を受信し、インサート部品Iの挿入完了時及び必要に応じて成形品Fの取り出し完了時にはその確認信号を射出成形機10に対して送信する。つまり、射出通信部133とハンドリング通信部221とは、相互に通信する。
【0033】
補助作業制御部222、ハンドリング通信部221が射出通信部133からの指示信号を受信したときに、教示された作業プログラムに従って位置決め機構211及び作業ヘッド212を動作させることによって補助作業を実行する。具体的には、補助作業制御部222は、位置決め機構211により作業ヘッド212を可動金型M2に所定距離だけ離れた正対する位置として教示された作業位置に位置決めし、位置決め機構211又はリーチ機構214により保持部213を突出させることにより、インサート部品Iの挿入又は成形品Fの保持を行い、保持部213を後退させることによりインサート部品Iから保持部213を脱離又は保持部213が保持する成形品Fを可動金型M2から取り出す。
【0034】
金型位置検出部223は、成形制御部131による連続成形中の型開時の所定のタイミングで、可動金型M2の位置を確認する。金型位置検出部223による可動金型M2の位置確認は、毎サイクル行ってもよく、サイクルタイムを短縮するために型締力調整制御部132が型締力を調整した場合のみ行ってもよい。
【0035】
金型位置検出部223は、ハンドリングユニット21の所定の動作により作業ヘッド212を可動金型M2又は可動金型M2の中の成形品Fに接触させる検出駆動部225と、可動金型M2又は成形品Fとハンドリングユニット21の作業ヘッド212との接触を検知する接触検知部226と、接触検知部226が接触を検知したときのハンドリングユニット21の先端位置、つまり作業ヘッド212の基準に基づいて可動金型M2の位置を確認する位置確認部227と、を有する。
【0036】
検出駆動部225は、作業ヘッド212を可動金型M2に対向する位置に配置してから、位置決め機構211又はリーチ機構214により作業ヘッド212全体又は保持部213を突出させて可動金型M2又は成形品Fに接触させる。このときの作業ヘッドの位置は、例えば保持部213が可動金型M2のキャビティの外側に当接するよう、補助作業を行う作業位置から可動金型M2の移動方向と異なる方向にオフセットした位置であってもよい。
【0037】
接触検知部226は、ハンドリングユニット21の駆動モータのトルク及びハンドリングユニット21の駆動モータの回転角度変化の少なくともいずれかが予め設定される閾値以上になった場合に、可動金型M2又は成形品Fとハンドリングユニット21とが接触したと判断することができる。ハンドリングユニット21の駆動モータの回転角度変化は、可動金型M2との接触によりハンドリングユニット21の先端位置が目標位置から位置ずれすることによって生じる。また、ハンドリングユニット21の駆動モータのトルクの増大は、可動金型M2との接触によりハンドリングユニット21の先端位置が目標位置から位置ずれし、この位置ずれを解消しようとするフィードバック制御により生じる。可動金型M2との接触時のハンドリングユニット21の姿勢は一定であるため、接触検知部226は、可動金型M2との接触によるトルク又は回転角度の変動が大きくなる特定の軸、例えば作業ヘッド212のリーチ機構214の駆動モータだけを監視してもよい。
【0038】
位置確認部227は、接触検知部226が接触を検知したときのハンドリングユニット21の駆動モータの角度位置に基づいてハンドリングユニット21の先端位置を確認することによって可動金型M2の位置を特定する。位置確認部227は、接触検知部226が接触を検知したときにハンドリングユニット21の駆動モータを停止し、駆動モータの停止位置によりハンドリングユニット21の先端位置を確認してもよい。駆動モータを停止することで、ハンドリングユニット21の部材の撓みによる可動金型M2の位置の算出誤差を低減できる。
【0039】
また、金型位置検出部223による可動金型M2の位置の確認は、位置決め機構211の姿勢を所定の姿勢に保持し、作業ヘッド212のリーチ機構214により保持部213を突出させることによって行ってもよい。この場合、リーチ機構214の駆動モータの回転角度位置から容易に可動金型M2の位置を算出することができる。なお、可動金型M2の位置は、必ずしも座標位置として算出しなくてもよく、可動金型M2の位置を特定できるデータ、例えば駆動モータの回転角度位置の値をそのまま作業位置調整部224に入力してもよい。
【0040】
作業位置調整部224は、補助作業を行う際の作業ヘッド212の可動金型M2に対する相対位置を所定の位置関係になるよう、ハンドリングユニット21の作業位置を修正する。つまり、作業位置調整部224は、作業ヘッド212と可動金型M2との距離が予め設定される距離になるよう、位置決め機構211により位置決めされる作業ヘッド212の位置を修正する。作業位置の修正は、型締力調整機構125による型締力の調整があった場合に、次の補助作業を行う前に行われる。
【0041】
具体的には、補助作業制御部222に教示されている作業プログラムにおいて想定されている可動金型M2の位置と、金型位置検出部223が検出した位置とずれを補正、つまり作業プログラムに教示された作業位置を修正する。金型位置検出部223が前回検出した位置と、新たに金型位置検出部223が検出した位置との差を算出することにより、前回修正した作業位置をさらに修正してもよい。
【0042】
以上のように、射出成形システム1では、ハンドリング制御ユニット22が金型位置検出部223及び作業位置調整部224を有するため、型締力の調整による可動金型M2の型開時の位置変化を補正して、インサート部品Iの挿入及び成形品の取り出しを確実に行うことができる。
【0043】
続いて、
図2に、本開示の第2実施形態に係る射出成形システム1Aを示す。以降の説明において、先の実施形態について説明した構成要素と同様の構成要素には同じ符号を付して重複する説明を省略することがある。
【0044】
図2の射出成形システム1Aは、射出成形機10Aと、補助作業を行うハンドリング装置20Aと、を備える。本実施形態の射出成形機10Aは、それ自体が本開示に係る射出成形機の一実施形態であり、型締力の調整に応じてハンドリングユニット21の作業位置を調整する機能を有する。
【0045】
射出成形機10は、射出ユニット11と、固定金型M1及び可動金型M2を保持する型締ユニット12Aと、射出ユニット11及び型締ユニット12Aを制御する射出成形制御ユニット13Aと、を有する。ハンドリング装置20Aは、補助作業を行うハンドリングユニット21と、ハンドリングユニット21を制御するハンドリング制御ユニット22Aと、を備える。
【0046】
型締ユニット12Aは、固定金型M1を保持する固定プラテン121と、可動金型M2を保持する移動可能な可動プラテン122と、可動プラテン122の移動の基準位置を定めるリアプラテン123と、可動プラテン122とリアプラテン123との間に開設され、リアプラテン123に対して可動プラテン122を移動させる型締駆動機構124と、リアプラテン123の位置を調整することによって固定金型M1及び可動金型M2を締め付ける型締力を調整する型締力調整機構125と、キャビティから成形品Fを押し出すエジェクタ126とを有する。
【0047】
エジェクタ126は、駆動モータの回転角度位置に応じてプッシャが固定金型M1に向かって突出又は後退する構成とされ得る。エジェクタ126のプッシャは、作業位置に配置される作業ヘッド212に当接するまで突出可能とされることが好ましい。
【0048】
射出成形制御ユニット13は、成形品Fを形成するサイクルを制御する成形制御部131と、型締力調整機構125による型締力の調整を行う型締力調整制御部132と、型開時の可動金型M2の位置を検出する金型位置検出部134と、金型位置検出部134の検出値に応じて補助作業を行う際のハンドリングユニット21の作業ヘッド212の位置を調整する作業位置調整部135と、ハンドリング装置20と協調動作するために通信する射出通信部133と、を有する。
【0049】
金型位置検出部134は、エジェクタ126又はエジェクタ126により押し出される可動金型M2の中の成形品Fのハンドリングユニット21との接触を検知する接触検知部136と、接触検知部136が前記接触を検知したときのエジェクタ126の先端位置を確認する位置確認部137と、有する。
【0050】
接触検知部136は、エジェクタ126の駆動モータのトルクが増大したときに、プッシャが直接又は成形品Fを介して、所定位置に配置されているハンドリングユニット21の作業ヘッド212に当接したものと判断する。
【0051】
位置確認部137は、接触検知部136が接触を検知したときのエジェクタ126の駆動モータの回転角度位置、又は接触検知部136が接触を検知したときに停止したエジェクタ126に駆動モータの回転角度位置に基づいてエジェクタ126のプッシャの先端位置、つまりプッシャの突出量を確認する。これにより、プッシャと直接又は一定の厚みを有する成形品Fを介して当接するハンドリングユニット21の作業ヘッド212に対する、エジェクタ126の駆動部と相対移動不能に保持される可動金型M2の相対位置を算出する。作業ヘッド212は一定の位置に配置されていることが前提であるため、可動金型M2の位置が逆算される。
【0052】
作業位置調整部135は、補助作業を行う際の作業ヘッド212の可動金型M2に対する相対位置を所定の位置関係になるよう、つまり作業ヘッド212と可動金型M2との距離が予め設定される距離になるよう、ハンドリング装置20の作業位置、つまり位置決め機構211により位置決めされる作業ヘッド212の位置を調整する。作業位置調整部135は、射出通信部133を介して、調整後の作業位置をハンドリング制御ユニット22Aに送信する。
【0053】
ハンドリング制御ユニット22Aは、射出成形機10と通信するハンドリング通信部221と、ハンドリング装置20からの要求に応じてインサート部品Iの挿入及び成形品Fの取り出しを行う補助作業制御部222と、を備える。つまり、ハンドリング制御ユニット22Aは、ハンドリングユニット21の接触を検知する機能及び可動金型M2の位置を算出する機能を有していない。このため、ハンドリング制御ユニット22Aは、前述のように射出成形制御ユニット13により作業位置を設定される。
【0054】
以上のように、
図2の射出成形システム1Aでは、射出成形機10Aが金型位置検出部134及び作業位置調整部135を有するため、型締力の調整による可動金型M2の型開時の位置変化を補正して、インサート部品Iの挿入及び成形品の取り出しを確実に行うことができる。
【0055】
さらに、
図3に、本開示の第3実施形態に係る射出成形システム1Bを示す。
図3の射出成形システム1Bは、射出成形機10Bと、補助作業を行うハンドリング装置20Bと、を備える。
【0056】
射出成形機10Bは、射出ユニット11と、固定金型M1及び可動金型M2を保持する型締ユニット12と、射出ユニット11及び型締ユニット12を制御する射出成形制御ユニット13Bと、を有する。
【0057】
射出成形制御ユニット13Bは、成形制御部131と、型締力調整制御部132と、射出通信部133と、型開時の可動金型M2の位置を変更する型開位置変更部138と、を有する。
【0058】
型開位置変更部138は、型締駆動機構124のサーボモータの型開時の回転角度位置を設定することにより、型開時の可動金型M2の位置を変更する。つまり、型開位置変更部138は、型締駆動機構124による可動プラテン122の移動ストロークを変更する。サーボモータの型開時の回転角度位置は、ハンドリング装置20Bから指示される。
【0059】
ハンドリング装置20Bは、補助作業を行うハンドリングユニット21と、ハンドリングユニット21の作業ヘッド212に取り付けられる距離情報検出器23と、ハンドリングユニット21及び距離情報検出器23を制御するハンドリング制御ユニット22Bと、を備える。
【0060】
距離情報検出器23は、カメラ及び距離センサの少なくともいずれかを含む。つまり、距離情報検出器23は、距離を算出可能な画像情報を取得するカメラであってもよく、距離を直接測定できるセンサであってもよい。
【0061】
ハンドリング制御ユニット22Bは、ハンドリング通信部221と、補助作業制御部222と、距離情報検出器23の検出値に基づいて可動金型M2の位置を特定する金型位置検出部223Bと、金型位置検出部223Bの検出値に基づいて型開示の可動金型M2の位置を調整する作業位置調整部224Bと、を有する。
【0062】
金型位置検出部223Bは、作業ヘッド212を作業位置に配置した状態における距離情報検出器23の検出値に基づいて可動金型M2の位置を算出する。
【0063】
作業位置調整部224Bは、距離情報検出器23の検出値が予め設定される設定値に一致するような型締駆動機構124のサーボモータの型開時の回転角度位置を算出し、ハンドリング通信部221を介して型開位置変更部138の型締駆動機構124のサーボモータの型開時の回転角度位置の設定値を修正する。
【0064】
図3の射出成形システム1Bでは、ハンドリングユニット21を可動金型M2に接触させずに可動金型M2の位置を検出し、型締力の調整による可動金型M2の型開時の位置変化を補正できる。
【0065】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限るものではない。また、前述した実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、前述した実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0066】
例として、本開示に係る射出成形システムは、射出ユニット、型締ユニット及びハンドリングユニットを単一の制御装置からなる制御システムによって制御してもよい。また、本開示に係る射出成形システムにおいて、射出成形制御ユニット及びハンドリング制御ユニットの一方が金型位置検出部を有し、他方が作業位置調整部を有してもよい。
【0067】
また、本開示に係る射出成形システムにおいて、接触検知部は、例えばハンドリングユニットの部材の歪み等により、ハンドリングユニットに作用する外力を検知するセンサを用いて、ハンドリングユニットと可動金型又は成形品との接触を検知してもよい。また、本開示に係る射出成形システムのハンドリングユニットは、可動金型の位置確認の時だけ可動金型に当接させられる突起等の専用の接触部を有してもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 射出成形システム
10,10A,10B 射出成形機
11 射出ユニット
111 シリンダ
112 スクリュ
113 射出モータ
12,12A 型締ユニット
121 固定プラテン
122 可動プラテン
123 リアプラテン
124 型締駆動機構
125 型締力調整機構
126 エジェクタ
13,13A,13B 射出成形制御ユニット
131 成形制御部
132 型締力調整制御部
133 射出通信部
134 金型位置検出部
135 作業位置調整部
136 接触検知部
137 位置確認部
138 型開位置変更部
20,20A,20B ハンドリング装置
21 ハンドリングユニット
211 位置決め機構
212 作業ヘッド
213 保持部
214 リーチ機構
22,22A,22B ハンドリング制御ユニット
221 ハンドリング通信部
222 補助作業制御部
223 金型位置検出部
224,224B 作業位置調整部
225 検出駆動部
226 接触検知部
227 位置確認部
23 距離情報検出器
F 成形品
I インサート部品
M1 固定金型
M2 可動金型