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特許7594102手首用カバー、ロボットおよび手首用カバーセット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】手首用カバー、ロボットおよび手首用カバーセット
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/00 20060101AFI20241126BHJP
【FI】
B25J19/00 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023520713
(86)(22)【出願日】2021-05-14
(86)【国際出願番号】 JP2021018351
(87)【国際公開番号】W WO2022239223
(87)【国際公開日】2022-11-17
【審査請求日】2023-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】八木橋 諒
(72)【発明者】
【氏名】花谷 耕平
【審査官】國武 史帆
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-056501(JP,A)
【文献】特開昭62-063088(JP,A)
【文献】特開2017-132016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対回転可能に直列に連結される第1手首要素、第2手首要素および第3手首要素を備えるロボットの手首を覆う手首用カバーであって、
前記第2手首要素に固定されることにより、該第2手首要素と前記第3手首要素との相対回転を許容しつつ、前記第2手首要素と前記第3手首要素との間の円環状の隙間を密封する第1回転シール部材と、
前記第1手首要素を貫通させた状態に配置する第1開口および前記第3手首要素を貫通させた状態に配置する第2開口を有する柔軟な袋状のカバー本体とを備え、
該カバー本体と前記第1回転シール部材とが、前記第2開口の周縁と前記第1回転シール部材との間を、全周にわたって密封した状態に取り付けられ
前記第1手首要素が、該第1手首要素の回転軸線である第1軸線を含む位置において、該第1軸線方向に貫通する第1中空孔を備え、
前記第2手首要素が、前記第3手首要素の回転軸線である第3軸線を含む位置において、該第3軸線方向に貫通する第2中空孔を備え、
前記第3手首要素が、前記第2中空孔内に配置されるとともに、前記第3軸線を含む位置において、該第3軸線方向に貫通する第3中空孔を備え、
前記カバー本体が、前記第1中空孔の先端側の開口に一致する位置に配置される第3開口と、
前記第2中空孔の基端側の開口に一致する位置に配置される第4開口とを備え、
前記第3開口の周縁と前記第1中空孔の先端側の開口の周縁とが、密封された状態に取り付けられ、
前記第4開口の周縁と前記第2中空孔の基端側の開口の周縁とが、密封された状態に取り付けられる手首用カバー。
【請求項2】
前記第3手首要素が、円筒状の外面を有し、
前記第3手首要素を貫通させる第1孔を有し、前記第2手首要素に固定される第1環状部材を備え、
前記第1回転シール部材が、前記第1孔の内面と前記第3手首要素の外面との間の円環状の隙間を、前記第1環状部材と前記第3手首要素との相対回転を許容しつつ密封し、
前記第1環状部材と前記カバー本体とが、前記第1孔と前記第2開口とを一致させて、前記第1孔の周縁と前記第2開口の周縁とを、全周にわたって密封した状態に取り付けられている請求項1に記載の手首用カバー。
【請求項3】
前記第3手首要素が、前記第2中空孔を貫通して基端側にも突出し、
前記第2手首要素の前記基端側から突出した前記第3手首要素を貫通させる第2孔を有し、前記第2手首要素に固定される第2環状部材と、
前記第2孔の内面と前記第3手首要素の外面との間の円環状の隙間を、前記第2環状部材と前記第3手首要素との相対回転を許容しつつ密封する第2回転シール部材とを備え、
前記第2環状部材と前記カバー本体とが、前記第2孔と前記第4開口とを一致させて、前記第2孔の周縁と前記第4開口の周縁とを、全周にわたって密封した状態に取り付けられている請求項1または請求項2に記載の手首用カバー。
【請求項4】
前記第1中空孔内に前記第1軸線に沿って延びる円筒状部材を貫通させる第3孔を有し、前記第1手首要素に固定される第3環状部材と、
前記第3孔の内面と前記円筒状部材の外面との間の円環状の隙間を、前記第3環状部材と前記円筒状部材との相対回転を許容しつつ密封する第3回転シール部材とを備え、
前記第3環状部材と前記カバー本体とが、前記第3孔と前記第3開口とを一致させて、前記第3孔の周縁と前記第3開口の周縁とを、全周にわたって密封した状態に取り付けられている請求項1から請求項3のいずれかに記載の手首用カバー。
【請求項5】
前記第1手首要素に固定され、該第1手首要素を回転可能に支持するアームと前記第1手首要素との相対回転を許容しつつ、前記アームと前記第1手首要素との間の円環状の隙間を密封する第4回転シール部材を備え、
前記カバー本体と前記第4回転シール部材とが、前記第1開口の周縁と前記第4回転シール部材との間を、全周にわたって密封した状態に取り付けられる請求項1から請求項4のいずれかに記載の手首用カバー。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の手首用カバーを備えるロボット。
【請求項7】
相対回転可能に直列に連結される第1手首要素、第2手首要素および第3手首要素を備えるロボットの手首を覆う手首用カバーセットであって、
前記第2手首要素と前記第3手首要素との間の円環状の隙間を、前記第2手首要素と前記第3手首要素との相対回転を許容しつつ密封する第1回転シール部材と、
前記第1手首要素を貫通させた状態に配置する第1開口および前記第3手首要素を貫通させた状態に配置する第2開口を有する柔軟な袋状のカバー本体とを備え、
該カバー本体が、前記第2手首要素の外周面に、前記第2開口の周縁を全周にわたって密封した状態に固定され
前記第1手首要素が、該第1手首要素の回転軸線である第1軸線を含む位置において、該第1軸線方向に貫通する第1中空孔を備え、
前記第2手首要素が、前記第3手首要素の回転軸線である第3軸線を含む位置において、該第3軸線方向に貫通する第2中空孔を備え、
前記第3手首要素が、前記第2中空孔内に配置されるとともに、前記第3軸線を含む位置において、該第3軸線方向に貫通する第3中空孔を備え、
前記カバー本体が、前記第1中空孔の先端側の開口に一致する位置に配置される第3開口と、
前記第2中空孔の基端側の開口に一致する位置に配置される第4開口とを備え、
前記第3開口の周縁と前記第1中空孔の先端側の開口の周縁とが、密封された状態に取り付けられ、
前記第4開口の周縁と前記第2中空孔の基端側の開口の周縁とが、密封された状態に取り付けられる手首用カバーセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、手首用カバー、ロボットおよび手首用カバーセットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロボットの手首を覆うカバーが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
このカバーは、第1の手首要素、第1の手首要素に対して回転する第2の手首要素および第2の手首要素に対して回転する第3の手首要素を覆う単一の筒状の形態を有している。カバーの一端は第1の手首要素に取り付けられ、カバーの他端は第3の手首要素に取り付けられている。
【0003】
特許文献1のカバーは、3つの手首要素を覆いつつ、第1の手首要素に対する第2の手首要素の変位および第2の手首要素に対する第3の手首要素の変位を許容するために蛇腹を備え、大きな変形を可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-56501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
第1の手首要素に対する第2の手首要素および第2の手首要素に対する第3の手首要素の変位量は、ロボットの動作範囲を大きく確保するために、通常、大きく設定される。2軸分の大きな変位を許容するための蛇腹は、伸縮量を大きくするために、長さおよび外径を大きくする必要があり、周囲に配置されるワーク等の周辺部材等とカバーとの干渉の可能性が増大する。
したがって、コンパクトな構成により、ロボットの手首の周りの干渉の可能性を低減することができる手首用カバーおよびロボットが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、相対回転可能に直列に連結される第1手首要素、第2手首要素および第3手首要素を備えるロボットの手首を覆う手首用カバーであって、前記第2手首要素に固定されることにより、該第2手首要素と前記第3手首要素との相対回転を許容しつつ、前記第2手首要素と前記第3手首要素との間の円環状の隙間を密封する第1回転シール部材と、前記第1手首要素を貫通させた状態に配置する第1開口および前記第3手首要素を貫通させた状態に配置する第2開口を有する柔軟な袋状のカバー本体とを備え、該カバー本体と前記第1回転シール部材とが、前記第2開口の周縁と前記第1回転シール部材との間を、全周にわたって密封した状態に取り付けられ、前記第1手首要素が、該第1手首要素の回転軸線である第1軸線を含む位置において、該第1軸線方向に貫通する第1中空孔を備え、前記第2手首要素が、前記第3手首要素の回転軸線である第3軸線を含む位置において、該第3軸線方向に貫通する第2中空孔を備え、前記第3手首要素が、前記第2中空孔内に配置されるとともに、前記第3軸線を含む位置において、該第3軸線方向に貫通する第3中空孔を備え、前記カバー本体が、前記第1中空孔の先端側の開口に一致する位置に配置される第3開口と、前記第2中空孔の基端側の開口に一致する位置に配置される第4開口とを備え、
前記第3開口の周縁と前記第1中空孔の先端側の開口の周縁とが、密封された状態に取り付けられ、前記第4開口の周縁と前記第2中空孔の基端側の開口の周縁とが、密封された状態に取り付けられる手首用カバーである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の一実施形態に係る手首用カバーを備えるロボットの全体構成を示す斜視図である。
図2図1のロボットの手首を示す縦断面図である。
図3図1のロボットの第2アームおよび手首の第1手首要素を示す拡大縦断面図である。
図4図2の手首の第2手首要素および第3手首要素を示す拡大縦断面図である。
図5】本開示の一実施形態に係る手首用カバーのカバー本体を示す斜視図である。
図6図1のロボットの第1の変形例の第2アームおよび手首の第1手首要素を示す拡大縦断面図である。
図7図1のロボットの第2の変形例の第2手首要素および第3手首要素を示す拡大縦断面図である。
図8図1のロボットの第3の変形例の第1手首要素を示す拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の一実施形態に係る手首用カバー1およびロボット10について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係るロボット10は、例えば、図1に示されるように、6軸多関節ロボットである。
【0009】
ロボット10は、水平な床面に設置されるベース20と、鉛直なJ1軸線A回りに、ベース20に対して回転可能に支持された旋回胴30とを備えている。また、ロボット10は、水平なJ2軸線B回りに、旋回胴30に対して回転可能に支持された第1アーム40と、水平なJ3軸線C回りに、第1アーム40の先端に対して回転可能に支持された第2アーム(アーム)50とを備えている。さらに、ロボット10は、第2アーム50の先端に支持された3軸の手首60と、手首60に取り付けられた手首用カバー1とを備えている。
【0010】
手首60は、図1および図2に示されるように、J3軸線Cに直交する平面に沿って延びるJ4軸線(第1軸線)D回りに、第2アーム50に対して回転可能に支持された第1手首要素70を備えている。手首60は、J4軸線Dに直交するJ5軸線E回りに、第1手首要素70に対して回転可能に支持された第2手首要素80と、J5軸線Eに直交するJ6軸線(第3軸線)F回りに、第2手首要素80に対して回転可能に支持された第3手首要素90とを備えている。
【0011】
第2アーム50および第1手首要素70は、図3に示されるように、J4軸線Dに沿って貫通する中空孔51および中空孔(第1中空孔)71を備えている。第2アーム50と第1手首要素70との間の円環状の隙間は、オイルシール(図示略)によって密封されている。
【0012】
中空孔51,71内には、第2アーム50に固定された円筒状のガイド管(円筒状部材)52が、J4軸線Dに沿って配置されている。また、ガイド管52の先端と第1手首要素70との間の円環状の隙間は、オイルシール72によって密封されている。
【0013】
第2手首要素80は、J6軸線Fを中心軸とする中空孔(第2中空孔)81を備えている。また、第3手首要素90は、J6軸線Fを中心軸とする中空孔(第3中空孔)91を備えている。第3手首要素90は、第2手首要素80の中空孔81内に配置され、第2手首要素80との間の円環状の隙間は、オイルシール(図示略)によって密封されている。また、第3手首要素90は、図示しないツールを取り付け可能なフランジ面90aと、フランジ面90aの周囲に配置されJ6軸線Fを中心軸とする円筒状の外周面(外面)92とを備えている。
【0014】
本実施形態に係る手首用カバー1は、図2から図4に示すように、第2手首要素80と第3手首要素90との相対回転を許容しつつ、両者間の円環状の隙間を密封するオイルシール(第1回転シール部材)2を備えている。また、手首用カバー1は、第1手首要素70および第2手首要素80を覆う袋状のカバー本体4と、カバー本体4を手首60に取り付ける取付部材3とを備えている。
【0015】
カバー本体4は、例えば、可撓性を有する樹脂、好ましくは、伸縮性を有する樹脂によって形成されている。カバー本体4は、例えば、図2に示されるように、J4軸線DとJ6軸線Fとを一直線上に配置した状態の手首60を、手首60の外表面に対して微小隙間を空けて覆う形状を有している。
また、カバー本体4は、図5に示されるように、第1手首要素70を貫通させる第1開口4aおよび第3手首要素90を貫通させる第2開口4bを備えている。さらに、カバー本体4は、第1手首要素70の中空孔71の先端側の開口に一致する位置に配置される第3開口4cおよび第2手首要素80の中空孔81の基端側の開口に一致する位置に配置される第4開口4dを備えている。
【0016】
取付部材3は、図3および図4に示されるように、カバー本体4の第1開口4aの周縁を第1手首要素70に固定するベルト31と、第2開口4bの周縁を第2手首要素80に固定する環状部材(第1環状部材)32および押え板33とを備えている。また、取付部材3は、第3開口4cの周縁を第1手首要素70の中空孔71の先端側の開口周縁に固定するリング部材34と、第4開口4dの周縁を第2手首要素80の中空孔81の基端側の開口周縁に固定するリング部材35とを備えている。
【0017】
ベルト31は、第1開口4aに第1手首要素70を貫通させた状態で、カバー本体4の第1開口4aの周縁を径方向外方から締め付ける。これにより、ベルト31は、カバー本体4の第1開口4aの周縁と第1手首要素70の外周面との間を全周にわたって密封した状態に、カバー本体4を第1手首要素70に固定する。
【0018】
環状部材32は、第3手首要素90の外周面92の外径寸法よりも大きな内径寸法の円形の孔(第1孔)32aを備えている。孔32a内にオイルシール2を嵌合させ、オイルシール2のリップ2a内に第3手首要素90の外周面92を挿入した状態で、環状部材32を第2手首要素80の先端に取り付けることができる。
【0019】
すなわち、環状部材32の孔32aの内周面(内面)32bは、J6軸線Fを中心軸とし、第3手首要素90の外周面92に対して径方向外方に隙間をあけて配置される。これにより、オイルシール2によって、第2手首要素80に対する第3手首要素90のJ6軸線F回りの回転が許容されつつ、環状部材32の内周面32bと第3手首要素90の外周面92との間の円環状の隙間が密封される。
【0020】
環状部材32には、第2手首要素80に取り付けられた状態で、J6軸線Fに直交する平面からなる円環状の座面32cが設けられている。この座面32cにカバー本体4の第2開口4bの周縁を密着させ、リング板状の押え板33と座面32cとの間にカバー本体4を挟んで、ボルト6によって共締めすることにより、カバー本体4の第2開口4bを第2手首要素80の先端に固定することができる。
これにより、カバー本体4とオイルシール2とが、環状部材32を介在させて、第2開口4bの周縁とオイルシール2との間を、全周にわたって密封した状態に取り付けられる。
【0021】
リング部材34は、中空孔71の内径と略同等の内径の貫通孔34aを有するリング板状に形成されている。
リング部材34は、貫通孔34aを中空孔71の先端側の開口に一致させた状態で、複数のボルト7によって取り付けられることにより、両者間に挟まれたカバー本体4の第3開口4cの周縁を第1手首要素70に対して密封した状態に取り付ける。
同様に、リング部材35は、中空孔81の内径と略同等の内径の貫通孔35aを有するリング板状に形成されている。リング部材35は、貫通孔35aを中空孔81の基端側の開口に一致させた状態で、ボルト8によって取り付けられることにより、両者間に挟まれたカバー本体4の第4開口4dの周縁を第2手首要素80に対して密封した状態に取り付ける。
【0022】
このように構成された本実施形態に係る手首用カバー1およびロボット10の作用について以下に説明する。
ロボット10の手首60に手首用カバー1を取り付けるには、まず、図4に示されるように、オイルシール2を内周面32bに嵌合させた環状部材32を、第2手首要素80の先端に取り付ける。これにより、オイルシール2のリップ2aが、第3手首要素90の外周面92に全周にわたって密着し、オイルシール2によって、環状部材32の内周面32bと第3手首要素90の外周面92との間の円環状の隙間が密封される。
【0023】
次いで、カバー本体4の第1開口4aに、第3手首要素90の先端を挿入し、カバー本体4を、図2に示されるように、手首60全体に被せていく。そして、第1開口4aに第1手首要素70を貫通させるとともに、第2開口4bに第3手首要素90を貫通させ、第3開口4cを第1手首要素70の中空孔71の先端側の開口に一致させ、第4開口4dを第2手首要素80の中空孔81の基端側の開口に一致させる。
【0024】
この状態において、図3に示されるように、第1手首要素70を貫通させた状態の第1開口4aの周縁を、ベルト31によって径方向外方から締め付ける。これにより、第1開口4aの周縁と第1手首要素70の外周面との間を全周にわたって密封するとともに、カバー本体4を第1手首要素70に対して固定することができる。
【0025】
また、図4に示されるように、環状部材32の座面32cと押え板33との間に、カバー本体4の第2開口4bの周縁を全周にわたって挟んだ状態で、環状部材32および押え板33をボルト6によって第2手首要素80に共締めする。これにより、第2開口4bの周縁と環状部材32との間を全周にわたって密封するとともに、カバー本体4を第2手首要素80に対して固定することができる。
【0026】
また、第1手首要素70の中空孔71の先端側の開口周縁とリング部材34とを、両者の間にカバー本体4の第3開口4cの周縁を全周にわたって挟んだ状態で、ボルト7によって組み付ける。これにより、第3開口4cの周縁が第1手首要素70の中空孔71の先端側の開口周縁に密封して取り付けられる。同様に、中空孔81の基端側の開口周縁とリング部材35とを、両者の間に第4開口4dの周縁を全周にわたって挟んだ状態で、ボルト8によって組み付けることにより、第4開口4dの周縁が中空孔81の基端側の開口周縁に密封して取り付けられる。これにより、手首用カバー1の取り付け作業が終了する。
【0027】
カバー本体4が、第1手首要素70および第2手首要素80を取り囲んでいるので、第1手首要素70に対して第2手首要素80をJ5軸線E回りに回転させると、カバー本体4が変形し、第1手首要素70および第2手首要素80を覆った状態が維持される。
また、第2手首要素80と第3手首要素90との間の隙間は、オイルシール2によって密封されているので、第2手首要素80に対してJ6軸線F回りに第3手首要素90を回転させても、カバー本体4を変形させずに済む。
すなわち、カバー本体4は、第1手首要素70に対する第2手首要素80の回転による変形だけを許容すればよいので、カバー本体4に与える変形のための余裕を小さく抑えることができる。
【0028】
例えば、カバー本体4の変形のための余裕をカバー本体4の伸縮性によって賄う場合には、カバー本体4を手首60の外面にフィットする大きさに構成すればよい。また、例えば、カバー本体4の変形のための余裕をジャバラあるいは弛みによって賄う場合には、1軸分の変形を許容する比較的小さな余裕で済み、手首60の外方に手首用カバー1を大きく突出させずに済むという利点がある。
【0029】
また、カバー本体4は、中空孔71,81,91をカバー本体4の外側に配置した状態で、第1手首要素70と第2手首要素80との間の隙間を密封して取り囲んでいる。このため、中空孔71,81,91の内側に外部からの塵埃等が侵入した場合であっても、その塵埃等がカバー本体4の内側にまで侵入することがない。したがって、手首60が中空孔を有する構造の場合であっても、第1手首要素70と第2手首要素80との間の隙間をより確実に保護することができる。
【0030】
なお、本実施形態においては、手首用カバー1が、図6に示されるように、第2アーム50と第1手首要素70との間の円環状の隙間を密封するシール部材(第4回転シール部材)25を備えてもよい。
【0031】
図6に示す例では、シール部材25は、弾性変形可能な材料によって形成された帯状の部材である。シール部材25は、第1手首要素70の外周面に固定された環状のベース部材26の外周面に全周にわたって巻き付けられる胴部25aと、胴部25aから軸方向に延び、第2アーム50に固定された環状部材53に全周にわたって密着するリップ25bとを備える。
カバー本体4の第1開口4aの周縁は、ベース部材26と胴部25aとの間に挟まれる。そして、胴部25aの径方向外側からベルト31によって締め付ける。これにより、第1開口4aの周縁と第1手首要素70との間を、全周にわたって密封した状態にカバー本体4を固定することができるとともに、シール部材25によって、第2アーム50と第1手首要素70との間の円環状の隙間を密封することができる。
【0032】
また、本実施形態においては、カバー本体4の第2開口4bの周縁を、環状部材32の座面32cと押え板33との間に全周にわたって挟んだ状態で、環状部材32および押え板33をボルト6によって第2手首要素80に共締めした。また、中空孔71の開口周縁とリング部材34との間にカバー本体4の第3開口4cの周縁を全周にわたって挟んだ状態で、ボルト7によって組み付けた。さらに、中空孔81の開口周縁とリング部材35とを、両者の間にカバー本体4の第4開口4dの周縁を全周にわたって挟んだ状態で、ボルト8によって組み付けた。これに代えて、押え板33,リング部材34,35が、カバー本体4に接着剤等によって取り付けられていてもよい。
【0033】
また、本実施形態においては、第2手首要素80と第3手首要素90との間の円環状の隙間を、第2手首要素80の先端側においてオイルシール2によって密封した。これに加えて、図7に示されるように、第3手首要素90が、第2手首要素80の中空孔81を貫通して基端側にも突出している場合には、第2手首要素80の基端側においても、第2手首要素80と第3手首要素90との間の円環状の隙間をオイルシール(第2回転シール部材)5によって密封してもよい。
【0034】
具体的には、中空孔81の基端側の開口周縁において、第2手首要素80に環状部材(第2環状部材)11を固定し、環状部材11の孔(第2孔)11a内に、第2手首要素80の基端側に突出している第3手首要素90を挿入する。環状部材11の孔11aの内周面(内面)11bにはオイルシール5が取り付けられている。オイルシール5のリップ5aを第3手首要素90の外周面92に接触させることにより、第3手首要素90と環状部材11との間の円環状の隙間がオイルシール5によって密封される。
【0035】
この場合に、カバー本体4は、第4開口4dの周縁が、環状部材11に設けた座面11cと押え板12との間に全周にわたって挟まれることにより、環状部材11を介在させて第2手首要素80に密封状態に固定される。第2手首要素80と第3手首要素90との間の円環状の隙間は、ロボット10の機構部に備えられたオイルシール13によって密封されているが、その外側において、第3手首要素90と環状部材11との間の隙間がオイルシール5によって2重に密封される。これにより、密封性を向上し、機構部のオイルシール13を摩耗から保護することができる。
【0036】
また、本実施形態に係るロボット10においては、第1手首要素70とガイド管52との間の円環状の隙間を、中空孔71の先端側においてオイルシール72によって密封している。これに加えて、手首用カバー1が、図8に示されるように、第1手首要素70とガイド管52との間の円環状の隙間を密封するオイルシール(第3回転シール部材)73を備えてもよい。
【0037】
図8に示す例では、手首用カバー1は、中空孔71の先端側の開口周縁において、第1手首要素70に固定される環状部材(第3環状部材)14と、環状部材14の孔(第3孔)14aの内周面(内面)14bに取り付けられたオイルシール73とを備える。オイルシール73のリップ73aをガイド管52の外周面に接触させることにより、ガイド管52と環状部材14との間の円環状の隙間がオイルシール73によって密封される。
【0038】
また、カバー本体4は、第3開口4cの周縁が、環状部材14に設けた座面14cと押え板15との間に全周にわたって挟まれることにより、環状部材14を介在させて第1手首要素70に密封状態に固定される。これにより、ロボット10の構成部品として第1手首要素70とガイド管52との間の円環状の隙間を密封しているオイルシール72が、ガイド管52と環状部材14との間に配置されるオイルシール73によって保護される。
【0039】
また、本実施形態においては、環状部材32の内周面32bにオイルシール2を嵌合させることとした。これに代えて、第2開口4bの周縁が第2手首要素80の外周面に密封状態に固定されるカバー本体4と、オイルシール2とを備える手首用カバーセットを採用してもよい。
【0040】
すなわち、第1手首要素70および第2手首要素80を覆うカバー本体4とは別に、第2手首要素80と第3手首要素90との間の円環状の隙間を密封するオイルシール2を備えていてもよい。また、オイルシール5を備えていてもよい。
この場合には、オイルシール2,5のリップ2a,5aは、第3手首要素90の外周面92に密着させられてもよいし、第2手首要素80の内周面81あるいは、第2手首要素80に固定された環状部材32,11の内周面32b,11bに密着させられてもよい。
【0041】
また、本実施形態においては、第1手首要素70および第2手首要素80を覆うカバー本体4とは別に、第1手首要素70とガイド管52との間の円環状の隙間を密封するオイルシール73とを備える手首用カバーセットを採用してもよい。
この場合、オイルシール73のリップ73aは、ガイド管52の外周面に密着させられてもよいし、第1手首要素70の内周面あるいは、第1手首要素70に固定された環状部材14の内周面14bに密着させられてもよい。
【0042】
また、本実施形態の参考例においては、カバー本体4の第3開口4cおよび第4開口4dは省略されてもよい。これにより、カバー本体4は、第1開口4aおよび第2開口4bによって手首60に取り付けられればよいので、取付作業を容易にすることができる。

【符号の説明】
【0043】
1 手首用カバー
2 オイルシール(第1回転シール部材)
4 カバー本体
4a 第1開口
4b 第2開口
4c 第3開口
4d 第4開口
5 オイルシール(第2回転シール部材)
10 ロボット
11 環状部材(第2環状部材)
11a 孔(第2孔)
11b 内周面(内面)
14 環状部材(第3環状部材)
14a 孔(第3孔)
14b 内周面(内面)
25 シール部材(第4回転シール部材)
32 環状部材(第1環状部材)
32a 孔(第1孔)
32b 内周面(内面)
50 第2アーム(アーム)
52 ガイド管(円筒状部材)
60 手首
70 第1手首要素
71 中空孔(第1中空孔)
73 オイルシール(第3回転シール部材)
80 第2手首要素
81 中空孔(第2中空孔)
90 第3手首要素
91 中空孔(第3中空孔)
92 外周面(外面)
D J4軸線(第1軸線)
F J6軸線(第3軸線)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8