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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】射出装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/76 20060101AFI20241126BHJP
【FI】
B29C45/76
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023527175
(86)(22)【出願日】2021-06-07
(86)【国際出願番号】 JP2021021624
(87)【国際公開番号】W WO2022259331
(87)【国際公開日】2022-12-15
【審査請求日】2024-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】山脇 拓人
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-051824(JP,A)
【文献】特開2016-060206(JP,A)
【文献】特開2009-255452(JP,A)
【文献】特開2004-255588(JP,A)
【文献】特開平04-173314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材料をバレルの先端側に設けられた射出口から射出する射出装置であって、
前記バレルに樹脂材料を流入させるための樹脂材料流入口と、
前記バレルに充填された樹脂材料を前記射出口から射出させるための駆動力を発生する駆動部と、
前記バレルの軸方向に進退可能に設けられ、前記樹脂材料流入口から前記バレルに樹脂材料が流入することにより後退し、前記バレル内で前進することにより、前記バレル内に充填された樹脂材料を前記射出口に向けて射出するプランジャと、
前記プランジャを前記バレルの前記射出口に向けて押し込む押し込み部材と、
前記駆動部で発生した駆動力を前記押し込み部材に伝達する駆動力伝達部と、
前記樹脂材料流入口から前記バレルへ樹脂材料の流入を開始させ、規定位置に位置する前記押し込み部材から前記駆動部が受ける負荷が規定値に達したときに、樹脂材料の計量を完了させるように、各部を制御すると共に、前記駆動部の受ける前記負荷が許容範囲から外れる場合、前記負荷が許容範囲に収まるように、前記押し込み部材の停止位置を前記規定位置から変更する制御部と、
を備える射出装置。
【請求項2】
前記押し込み部材は、前記プランジャと非連結であり、
前記制御部は、前記樹脂材料流入口から前記バレルへ樹脂材料の流入を開始させ、前記駆動部により前記押し込み部材が規定位置まで後退し、且つ、前記駆動部の受ける負荷が規定値に達したときに、樹脂材料の計量を完了させるように、各部を制御する、
請求項1に記載の射出装置。
【請求項3】
前記押し込み部材は、前記プランジャと連結され、
前記制御部は、前記樹脂材料流入口から前記バレルへ樹脂材料の流入を開始させ、前記プランジャにより前記押し込み部材が規定位置まで後退し、前記駆動部の受ける負荷が規定値に達したときに、樹脂材料の計量を完了させるように、各部を制御する、
請求項1に記載の射出装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記押し込み部材の停止位置を変更した場合、射出完了位置又は射出工程から保圧工程へ移行する際の切替位置を変更する、
請求項に記載の射出装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記押し込み部材の停止位置を前記規定位置から変更した量と同じ量だけ前記射出完了位置又は前記切替位置を変更する、
請求項に記載の射出装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記押し込み部材の停止位置を前記規定位置から変更した量と補正係数とに基づいて、前記射出完了位置又は前記切替位置の補正量を算出する、
請求項に記載の射出装置。
【請求項7】
前記バレルに樹脂材料を供給する樹脂材料供給部を備え、
前記制御部は、前記規定位置の補正量に基づいて、次の計量工程において、前記樹脂材料供給部から前記バレルに供給される樹脂材料の供給圧を変更する、
請求項までのいずれかに記載の射出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
射出装置は、一定量の樹脂材料を連続して供給する装置である。射出装置は、例えば、樹脂材料を金型に射出する用途に用いられる。射出装置において、樹脂材料を連続して射出するには、射出工程後のバレル内に一定量の樹脂材料を供給する計量工程が重要となる。射出装置から同じ体積の樹脂材料を射出しても、バレルの内部において樹脂材料の密度が安定していなければ、射出される樹脂材料の量が安定しないためである。一回の射出工程において、一定量の樹脂材料を正確に射出するためには、計量工程において材料圧(バレル内圧)を一定に保つ必要がある。
【0003】
従来、計量工程において材料圧を一定に保つために、例えば、以下のような計量方式が提案されている。一つは、樹脂材料を供給しながら一定速度でプランジャを後退させ、プランジャが所定の位置に達した時点で樹脂材料の供給を停止する方式(以下、「従来方式1」ともいう)である。もう一つは、樹脂材料を供給しながら、バレル内の材料圧が一定となるようにプランジャを後退させ、プランジャが所定の位置に達した時点で樹脂材料の供給を停止する方式(以下、「従来方式2」ともいう)である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平02‐120020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来方式1では、樹脂材料の供給速度にかかわらず一定速度でプランジャが後退するため、樹脂材料の供給速度によってはバレル内にエアが入り、成形不良が発生するおそれがある。特に、シリコーン樹脂のような粘度の低い液状の樹脂材料を用いた場合、バレル内にエアが入りやすいため、成形不良の発生が多くなることが考えられる。また、従来方式2では、バレル内への樹脂材料の供給を開始してから完了するまでの間、材料圧を一定に保つことはできる。しかし、従来方式2では、バレル内の材料圧を測定するための圧力センサ等の部品が必要となるため、部品点数の増加によるコストアップが懸念される。
【0006】
本発明の目的は、バレル内へのエアの入り込みや部品点数の増加によるコストアップを抑制しつつ、射出工程毎に一定量の樹脂材料を射出できる射出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、樹脂材料をバレルの先端側に設けられた射出口から射出する射出装置であって、前記バレルに樹脂材料を流入させるための樹脂材料流入口と、前記バレルに充填された樹脂材料を前記射出口から射出させるための駆動力を発生する駆動部と、前記バレルの軸方向に進退可能に設けられ、前記樹脂材料流入口から前記バレルに樹脂材料が流入することにより後退し、前記バレル内で前進することにより、前記バレル内に充填された樹脂材料を前記射出口に向けて射出するプランジャと、前記プランジャを前記バレルの前記射出口に向けて押し込む押し込み部材と、前記駆動部で発生した駆動力を前記押し込み部材に伝達する駆動力伝達部と、前記樹脂材料流入口から前記バレルへ樹脂材料の流入を開始させ、規定位置に位置する前記押し込み部材から前記駆動部が受ける負荷が規定値に達したときに、樹脂材料の計量を完了させるように、各部を制御する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る射出装置によれば、バレル内へのエアの入り込みや部品点数の増加によるコストアップを抑制しつつ、射出工程毎に一定量の樹脂材料を射出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態の射出装置1の構成を説明する図である。
図2A】第1実施形態の射出工程及び保圧工程を説明する図である。
図2B】第1実施形態の射出工程及び保圧工程を説明する図である。
図3A】第1実施形態の射出装置1の計量工程を説明する図である。
図3B】第1実施形態の射出装置1の計量工程を説明する図である。
図3C】第1実施形態の射出装置1の計量工程を説明する図である。
図4】樹脂材料の材料圧を調整する制御を説明する図である。
図5】切替位置を変更する制御を説明する図である。
図6A】第1実施形態の制御部25で実行される計量制御プログラムの処理手順を示すフローチャートである。
図6B】第1実施形態の制御部25で実行される計量制御プログラムの処理手順を示すフローチャートである。
図7A】第2実施形態の射出装置1Aの計量工程を説明する図である。
図7B】第2実施形態の射出装置1Aの計量工程を説明する図である。
図8A】第2実施形態の制御部25で実行される計量制御プログラムの処理手順を示すフローチャートである。
図8B】第2実施形態の制御部25で実行される計量制御プログラムの処理手順を示すフローチャートである。
図9】変形形態の射出装置1の構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る射出装置の実施形態について説明する。本明細書に添付した図面は、いずれも模式的に描いた図であり、理解しやすさ等を考慮して、各部の形状、縮尺、縦横の寸法比等を、実物から変更又は誇張している。また、本明細書に添付した図面では、図1に示す射出装置1の前後(水平)方向をX方向とする。そして、X方向において、後(右)方向をX1方向、前(左)方向をX2方向とする。なお、本明細書においては、「~方向」を適宜に「~側」ともいう。
【0011】
(第1実施形態)
第1実施形態の射出装置1は、型締め装置と共に射出成形機(いずれも不図示)を構成する。射出成形機は、基台(不図示)と、基台上に設置された射出装置1及び型締め装置とを備えている。射出装置1は、樹脂材料を型締め装置に供給する装置である。射出装置1において、バレル11(後述)に充填した樹脂材料を型締め装置に射出するための成形サイクルには、計量工程、射出工程、保圧工程が含まれる。型締め装置は、開閉可能な金型を備えており、金型間に充填された樹脂材料を加圧、加熱することにより、成形品を製造する。第1実施形態の射出装置1と型締め装置は、水平方向(X方向)に並んで配置されている。
【0012】
図1は、第1実施形態の射出装置1の構成を説明する図である。図1に示すように、射出装置1は、バレル保持部10(バレル11)、ノズル12、樹脂材料流入口13、材料流路14、流路バルブ15及び材料供給部16を備えている。なお、図1では、射出装置1の構成のみを示し、基台及び型締め装置の図示を省略する。
【0013】
バレル保持部10は、内部にバレル11を備える筐体である。バレル11は、樹脂材料が充填される空間である。バレル11の内部には、プランジャ17(後述)が挿入されている。
バレル保持部10の前側(X2側)の端部には、ノズル(射出口)12が設けられている。ノズル12は、バレル11内に充填された樹脂材料が射出される部分であり、バレル11と連通している。ノズル12の先端は、型締め装置のスプルー孔(不図示)と接続されている。
【0014】
また、バレル保持部10の前側の側面には、樹脂材料流入口(以下、「流入口」ともいう)13が設けられている。流入口13は、バレル11に樹脂材料を流入されるための開口である。流入口13は、流路バルブ15(後述)を介してバレル11と連通している。流入口13には、材料流路14の一方の端部が接続されている。材料流路14は、材料供給部16とバレル11との間を連通する流路である。材料流路14の他方の端部は、材料供給部16と接続されている。
【0015】
流路バルブ15は、バレル11内に設けられる電動バルブである。流路バルブ15は、例えば、電動の三方弁により構成される。流路バルブ15を開栓すると、材料流路14とバレル11との間が連通するため、材料流路14から流入口13を介してバレル11に樹脂材料を供給することができる。一方、流路バルブ15を閉栓すると、材料流路14とバレル11との間が非連通となるため、ノズル12から樹脂材料を射出することができる。流路バルブ15の開閉動作は、制御部により制御される。なお、流路バルブ15は、三方弁に限らず、例えば、1又は2つの二方弁で構成してもよい。すなわち、流路バルブ15は、材料流路14とバレル11との間の連通/非連通を制御できれば、どのような構成であってもよい。
【0016】
材料供給部16は、バレル11に樹脂材料(例えば、シリコーン樹脂)を供給する装置である。樹脂材料は、材料供給部16から材料流路14、流入口13を介してバレル11に供給される。材料供給部16は、油圧、サーボモータ等の駆動力により供給圧を発生させて、バレル11に向けて樹脂材料を供給する。材料供給部16において、樹脂材料の供給や停止の動作は、制御部25により制御される。なお、供給圧とは、材料供給部16がバレル11に樹脂材料を供給するために必要な圧力である。具体的には、供給圧は、材料圧(バレル内圧)と材料供給部16からバレル11までの間で発生する圧損の総和となる。
【0017】
また、射出装置1は、プランジャ17、押し込み部材18、リニアガイド19、駆動部20、駆動力伝達部21及び制御部25を備えている。
プランジャ17は、バレル11の内部において、バレル11の軸方向(X方向)に沿って進退可能に設けられた棒状の部材である。プランジャ17は、後側(X1側)の端部を除いてバレル11に挿入されている。バレル11に樹脂材料が充填された状態において、プランジャ17が前進することにより、バレル11内に充填された樹脂材料がノズル12から射出される。第1実施形態の射出装置1では、プランジャ17の後側(X1側)の端部が常にバレル11の外に露出している。そのため、作業者は、射出工程等において、プランジャ17の後側の端部の位置を容易に確認できるという利点がある。
【0018】
押し込み部材18は、プランジャ17をバレル11のノズル12に向けて押し込む部材である。押し込み部材18は、厚さ方向(X方向)に貫通する孔の内周面に雌ねじ(不図示)が形成されている。押し込み部材18の雌ねじは、駆動力伝達部21のボールねじ22(雄ねじ)と係合している。第1実施形態の射出装置1において、プランジャ17と押し込み部材18は、連結されていない(以下、「非連結」ともいう)。そのため、押し込み部材18は、前進したときにプランジャ17と当接し、後退したときにプランジャ17から離間する。押し込み部材18は、リニアガイド19に沿って前後方向(X方向)に移動可能に構成されている。なお、第1及び第2実施形態(後述)では、押し込み部材18の位置(P1~P3)を、押し込み部材18の厚さ方向(X方向)の中心を基準として説明する。
【0019】
駆動部20は、バレル11に充填された樹脂材料をノズル12から射出するための駆動力を発生する装置である。本実施形態の駆動部20は、サーボモータ(サーボアンプ等を含む)により構成される。駆動部20で発生した駆動力は、駆動力伝達部21(後述)を介して押し込み部材18に伝達される。押し込み部材18は、駆動部20で発生した駆動力により、X1方向に後退したり、X2方向に前進したりする。
【0020】
駆動部20は、自ら駆動力を発生させる状態のほかに、外力により自由に回転する状態に切り換えることができる。駆動部20を、外力により自由に回転する状態に切り換えた場合、駆動部20は、ボールねじ22を介して伝達された外力に従って回転する。この場合、サーボモータが回転したときの回転数は、パルスコーダ(不図示)により検出され、制御部25(後述)に出力される。そのため、制御部25は、駆動部20を能動的に駆動させるときだけでなく、駆動部20が外力により受動的に回転したときにおいても、サーボモータの回転数に基づいて押し込み部材18の位置を検出することができる。
【0021】
サーボモータにより構成される駆動部20は、押し込み部材18が規定位置P1(後述)で停止しているときも、その位置を保持するための電流を供給してトルクを発生させている。一方、駆動部20は、外力により押し込み部材18の位置が変動した場合、その変動量を修正するためのトルクを発生する電流を供給して、外力に対向するトルクをサーボモータに発生させることにより、押し込み部材18の位置を保持する。駆動部20におけるこれらの動作は、制御部25により制御される。
【0022】
駆動力伝達部21は、駆動部20の駆動力を押し込み部材18に伝達する装置である。駆動力伝達部21は、ボールねじ22、ギア機構(不図示)等を備えている。ボールねじ22は、駆動部20の駆動力により回転する棒状の部材であり、外周面に雄ねじ(不図示)が形成されている。本実施形態の駆動力伝達部21は、1軸のボールねじ22により構成されている。
【0023】
ボールねじ22の雄ねじは、押し込み部材18の雌ねじ(不図示)と係合している。ギア機構は、駆動部20の駆動力をボールねじ22に伝達する装置である。駆動部20の駆動力により、ボールねじ22が正回転(正転)すると、押し込み部材18は、例えば、後退(X1方向に移動)する。一方、ボールねじ22が逆回転(反転)すると、押し込み部材18は、前進(X2方向に移動)する。
【0024】
駆動力伝達部21においては、ボールねじ22を駆動部20の駆動力で回転させる状態のほかに、ボールねじ22を外力により自由に回転する状態に切り換えることができる。ボールねじ22を自由に回転する状態に切り換えた場合、ボールねじ22は、押し込み部材18から加わる外力に従って回転する。ボールねじ22の回転は、ギア機構を介して駆動部20に伝達される。駆動力伝達部21の切り換えは、制御部25により制御される。
【0025】
制御部25は、流路バルブ15、材料供給部16、駆動部20、駆動力伝達部21(ギア機構)、と電気的に接続されており、これら各部の動作を制御する装置である。制御部25は、例えば、CPU(中央処理装置)、メモリ等を含むマイクロプロセッサユニットにより構成される。制御部25は、射出装置1の動作を制御するためのアプリケーションプログラム(例えば、後述する計量制御プログラム)に基づいて、各ハードウェアの動作を制御して、射出工程、保圧工程及び計量工程からなる成形サイクルを実行する。以下、制御部25により、射出工程及び保圧工程において実行される押し込み部材18の位置制御について説明する。
【0026】
制御部25は、樹脂材料の射出中において、射出工程及び保圧工程を実行する。制御部25は、射出工程では速度制御を実行し、保圧工程では圧力制御を実行する。図1に示すように、射出工程において、制御部25は、押し込み部材18を規定位置P1(後述)から切替位置P2(後述)まで前進させる。押し込み部材18が前進すると、押し込み部材18に押圧されたプランジャ17も前進する。このとき、制御部25は、押し込み部材18に押圧されたプランジャ17が均等な速度で前進するように、駆動部20を制御する(速度制御)。
【0027】
制御部25は、押し込み部材18が所定位置に達すると、速度制御から圧力制御(保圧工程)に移行する。本明細書及び図面では、速度制御から圧力制御に移行する所定位置を「切替位置P2」として説明する。図1は、押し込み部材18が規定位置P1から切替位置P2からまで前進した状態を示している。制御部25は、押し込み部材18が切替位置P2まで前進すると、金型に射出した樹脂材料に一定の圧力が付与されるように、駆動部20を制御する(圧力制御)。この圧力制御において、押し込み部材18は、充填完了位置P3まで前進する。一般的に、切替位置P2≠充填完了位置P3となる。上記圧力制御を所定時間に亘って実行することにより、樹脂材料の射出が完了する。
【0028】
樹脂材料の射出が完了した後、制御部25は、計量工程を実行する。制御部25は、計量工程の開始時において、押し込み部材18が規定位置P1まで後退するように、駆動部20を制御する。或いは、制御部25は、押し込み部材18の後退を開始した時点で計量工程を開始し、バレル11に樹脂材料を供給するようにしてもよい。前述したように、プランジャ17と押し込み部材18とは非連結のため、押し込み部材18が後退しても、プランジャ17は、ほとんど後退しない。なお、「規定位置P1」とは、バレル11に充填された樹脂材料の量が、一成形サイクルで決められた所定の射出量となる位置を示している。すなわち、バレル11に樹脂材料が供給されることによりプランジャ17が後退し、プランジャ17が押し込み部材18に当接して駆動部20が負荷を受けたとき、バレル11には、少なくとも一成形サイクルで決められた所定の射出量の樹脂材料が充填される。
【0029】
なお、規定位置P1の位置は、押し込み部材18の停止位置(原点位置)+ボールねじ22の回転数+ボールねじ22のピッチにより算出できる。前述したように、ボールねじの回転数(サーボモータの回転数)は、パルスコーダにより検出され、制御部25に出力される。そのため、制御部25は、押し込み部材18の移動前の位置とサーボモータ実回転数とに基づいて、移動している押し込み部材18の位置を検出することができる。
【0030】
制御部25は、押し込み部材18を規定位置P1まで後退させると、流路バルブ15を開栓すると共に、バレル11へ樹脂材料が供給されるように、材料供給部16を制御する。これにより、材料供給部16からバレル11に樹脂材料が供給され、樹脂材料の計量が開始される。バレル11に樹脂材料が供給されると、プランジャ17は、樹脂材料の材料圧によりX1方向に後退し、規定位置P1まで後退している押し込み部材18に当接する。プランジャ17が押し込み部材18に当接した後も、バレル11には樹脂材料が供給され続けるため、駆動部20には、プランジャ17、押し込み部材18及びボールねじ22(駆動力伝達部21)を介して樹脂材料の材料圧が作用する。
【0031】
制御部25は、ボールねじ22から受ける外力に対して、押し込み部材18の位置を保持するのに必要なトルクを得るために、サーボモータに流す電流値を増減する。制御部25は、増減させた電流値に基づいて、駆動部20の受ける負荷が規定値に達したか否かを判定する。制御部25は、樹脂材料の材料圧により、駆動部20の受ける負荷が規定値に達すると、流路バルブ15を閉栓すると共に、材料供給部16からバレル11への樹脂材料の供給を停止させる。これにより、バレル11への樹脂材料の計量が完了する。
【0032】
制御部25は、計量工程において、駆動部20の受ける負荷が許容範囲から外れる場合、駆動部20の受ける負荷が許容範囲に収まるように、押し込み部材18の停止位置を規定位置P1から変更する制御を実行する。
制御部25は、規定位置を変更した場合、射出工程から保圧工程へ移行する際の切替位置P2を変更する制御を実行する。ここで、制御部25において、規定位置P1の補正量と同じ量だけ切替位置P2を変更するようにしてもよいし、規定位置P1の補正量と補正係数とに基づいて補正量を算出し、その算出した値で切替位置P2を変更してもよい。
制御部25は、規定位置P1の補正量に基づいて、計量工程において、材料供給部16からバレル11に供給される樹脂材料の供給圧を変更する制御を実行する。
制御部25が計量工程において実行する上記制御については、後に詳細に説明する。
【0033】
次に、第1実施形態の射出装置1において実行される成形サイクル(計量工程、射出工程、保圧工程)について説明する。
実際の成形サイクルにおいては、計量工程、射出工程、保圧工程の順に作業が進行するが、ここでは、先に射出工程及び保圧工程について説明する。図2A及び図2Bは、第1実施形態の射出工程及び保圧工程を説明する図である。
【0034】
図2Aは、射出工程において、押し込み部材18が前進している状態を示している。射出工程を開始するに先立って、バレル11には樹脂材料が充填されている。樹脂材料は、後述する計量工程においてバレル11に充填される。射出工程において、制御部25は、流路バルブ15を閉栓すると共に、ボールねじ22(駆動力伝達部21)が逆回転するように、駆動部20を制御する(速度制御)。これにより、図2Aに示すように、押し込み部材18は、プランジャ17と共に前進する。プランジャ17が前進すると、バレル11内に充填された樹脂材料は、ノズル12から金型に向けて射出される。
【0035】
図2Bは、射出工程から保圧工程に移行し、押し込み部材18が切替位置P2まで前進した状態を示している。制御部25は、押し込み部材18を切替位置P2まで前進させて射出工程を完了させた後、押し込み部材18を更に充填完了位置P3まで前進させて、圧力制御を実行する。この圧力制御を所定時間に亘って実行することにより、樹脂材料の充填が完了する。
【0036】
次に、計量工程について説明する。図3A図3Cは、第1実施形態の射出装置1の計量工程を説明する図である。
図3Aは、計量工程において、押し込み部材18が規定位置P1まで後退した状態を示している。制御部25は、樹脂材料の充填が完了した後、図3Aに示すように、押し込み部材18が規定位置P1まで後退するように駆動部20を制御する。なお、プランジャ17と押し込み部材18は非連結のため、押し込み部材18が後退しても、プランジャ17は、ほとんど後退しない。
【0037】
図3Bは、計量工程において、プランジャ17が樹脂材料の材料圧により後退した状態を示している。制御部25は、押し込み部材18を規定位置P1まで後退させた後、流路バルブ15を開栓すると共に、バレル11へ樹脂材料が供給されるように材料供給部16を制御する。これにより、材料供給部16からバレル11に樹脂材料が供給され、樹脂材料の計量が開始される。バレル11に樹脂材料が供給されると、図3Bに示すように、プランジャ17は、樹脂材料の材料圧により後退する。
【0038】
図3Cは、計量工程において、プランジャ17が押し込み部材18に当接した状態を示している。前述したように、材料供給部16からバレル11に樹脂材料が供給されると、プランジャ17は、樹脂材料の材料圧により後退し、図3Cに示すように、規定位置P1まで後退している押し込み部材18に当接する。プランジャ17が押し込み部材18に当接した後も、バレル11には樹脂材料が供給され続けるため、駆動部20にはボールねじ22を介して樹脂材料の材料圧が作用する。制御部25は、樹脂材料の材料圧により、駆動部20の受ける負荷が規定値に達すると、流路バルブ15を閉栓すると共に、材料供給部16からバレル11への樹脂材料の供給を停止させる。これにより、バレル11への樹脂材料の計量が完了する。
【0039】
次に、上述した計量工程において実行される他の制御について説明する。
(樹脂材料の材料圧の調整)
図4は、樹脂材料の材料圧を調整する制御を説明する図である。計量時に流路バルブ15を閉栓して、バレル11への樹脂材料の供給を停止した後、駆動部20の受ける負荷が許容範囲から外れる場合、バレル11の内圧が過大又は過小である可能性が考えられる。このように、駆動部20の受ける負荷が許容範囲から外れている場合、バレル11内において、樹脂材料の材料圧を一定に保つことが難しくなる。そのため、本実施形態では、計量時に流路バルブ15を閉栓して、バレル11への樹脂材料の供給を停止した後、駆動部20の受ける負荷が許容範囲から外れる場合、制御部25において、計量時の押し込み部材18の停止位置を規定位置P1から後退又は前進させる制御を実行する。
【0040】
具体的には、計量時に流路バルブ15を閉栓して、バレル11への樹脂材料の供給を停止した後、駆動部20の受ける負荷が許容範囲の上限値を超える場合、図4に示すように、押し込み部材18の停止位置を、規定位置P1よりX1側のP1+aの位置に変更する。これにより、バレル11に充填される樹脂材料の材料圧を低くすることができる。一方、計量時に流路バルブ15を閉栓して、バレル11への樹脂材料の供給を停止した後、駆動部20の受ける負荷が許容範囲の下限値に満たない場合、図4に示すように、押し込み部材18の停止位置を、規定位置P1よりX2側のP1-bの位置に変更する。これにより、バレル11に充填される樹脂材料の材料圧を高くすることができる。
【0041】
押し込み部材18の停止位置は、予め設定された補正量に基づいて段階的に変更させてもよいし、無段階に変更させてもよい。計量時に駆動部20の受ける負荷が許容範囲から外れる場合に、制御部25において、駆動部20の受ける負荷が許容範囲に収まるまで上記制御を実行することにより、成形サイクル毎の樹脂材料の材料圧を常に一定に保つことができる。なお、制御部25は、押し込み部材18の停止位置を変更した場合、その補正量をメモリ(不図示)に記憶しておき、次回の成形サイクルでは、記憶している補正量に基づいて、押し込み部材18の停止位置を調整する。
【0042】
(切替位置の変更)
図5は、切替位置を変更する制御を説明する図である。計量工程において、押し込み部材18の停止位置を変更した場合、樹脂材料の射出量を一定に保つために、速度制御から圧力制御へ移行する切替位置P2を変更することが望ましい。そのため、計量時に押し込み部材18の停止位置を変更した場合(図4参照)、制御部25において、切替位置P2を変更する制御を実行する。
【0043】
具体的には、計量時に押し込み部材18の停止位置を、規定位置P1よりX1側のP1+aの位置(図4参照)に変更した場合、図5に示すように、切替位置P2をX1側のP2+aの位置に変更する。一方、計量時に押し込み部材18の停止位置を、規定位置P1よりX2側のP1-bの位置(図4参照)に変更した場合、図5に示すように、切替位置P2をX2側のP2-bの位置に変更する。制御部25において、このような制御を実行することにより、成形サイクル毎の射出工程において、樹脂材料の射出量を一定に保つことができる。
【0044】
本実施形態では、押し込み部材18の停止位置を変更した場合、図5に示すように、押し込み部材18の停止位置を変更した量(+a又は-b)と同じ量を、切替位置P2の補正量としているため、切替位置P2の変更をより速やかに行うことができる。一方、他の実施形態として、押し込み部材18の停止位置を変更した量(+a又は-b)と、予め設定した補正係数βとを乗算した値に基づいて切替位置P2を変更してもよい。例えば、押し込み部材18の変更後の停止位置がP1+αである場合に、補正係数βが0.8であれば、切替位置P2の補正量は、+α×0.8となる。本制御によれば、成形サイクル毎の樹脂材料の射出量に応じて補正係数を変更することにより、切替位置P2をよりきめ細かく調整することができる。また、本制御において、切替位置P2を移動する方向に応じて補正係数βを変更してもよい。
なお、射出装置1を、保圧工程が不要なシーラント塗布装置等に適用した場合、上述した速度制御から圧力制御に移行する切替位置の変更は、射出完了位置の変更として制御される。
【0045】
(樹脂材料の供給圧の変更)
計量時に押し込み部材18の停止位置を規定位置P1から後退又は前進させる必要がある場合、材料供給部16からバレル11に供給される樹脂材料の供給圧が過大又は過小である可能性も考えられる。そのため、本実施形態では、計量時の押し込み部材18の停止位置を規定位置P1から変更した場合、制御部25において、材料供給部16からバレル11に供給される樹脂材料の供給圧を変更する制御を実行する。
【0046】
具体的には、計量時に押し込み部材18の停止位置を規定位置P1から後退させた場合、次の成形サイクルにおいて、材料供給部16からバレル11に供給される樹脂材料の供給圧を低くする。一方、計量時に押し込み部材18の停止位置を規定位置P1から前進させた場合、次の成形サイクルにおいて、材料供給部16からバレル11に供給される樹脂材料の供給圧を高くする。このような制御を行うことにより、成形サイクル毎の樹脂材料の材料圧を一定に保つことができる。
なお、上述した樹脂材料の材料圧の調整、切替位置の変更及び樹脂材料の供給圧の変更の制御は、後述する第2実施形態の射出装置1Aにおいても、同様に適用することができる。
【0047】
次に、第1実施形態の制御部25で実行される計量制御プログラムの処理内容を、図6A及び図6Bに示すフローチャートに基づいて説明する。図6A及び図6Bは、第1実施形態の制御部25で実行される計量制御プログラムの処理手順を示すフローチャートである。
【0048】
図6Aに示すステップS101において、制御部25(図1参照)は、押し込み部材18が規定位置P1まで後退するように、駆動部20を制御する。
【0049】
ステップS102において、制御部25は、流路バルブ15を開栓すると共に、バレル11へ樹脂材料が供給されるように材料供給部16を制御する。これにより、材料供給部16からバレル11に樹脂材料が供給され、樹脂材料の計量が開始される。バレル11に樹脂材料が供給されると、プランジャ17は、樹脂材料の材料圧により後退する(図3B参照)。
【0050】
ステップS103において、制御部25は、駆動部20の受ける負荷が規定値に達したか否かを判定する。ステップS103において、制御部25により、駆動部20の受ける負荷が規定値に達したと判定された場合、処理はステップS104へ移行する。一方、ステップS103において、制御部25により、駆動部20の受ける負荷が規定値に達していないと判定された場合、処理はステップS103へ移行(リターン)する。
【0051】
ステップS104(ステップS103:YES)において、制御部25は、流路バルブ15を閉栓すると共に、材料供給部16からバレル11への樹脂材料の供給を停止させる。これにより、バレル11への樹脂材料の計量が完了する。
【0052】
ステップS105において、制御部25は、駆動部20の受ける負荷が許容範囲内か否かを判定する。ステップS105において、制御部25により、駆動部20の受ける負荷が許容範囲内であると判定された場合、処理はステップS107(図6B)へ移行する。一方、ステップS105において、制御部25により、駆動部20の受ける負荷が許容範囲を外れていると判定された場合、処理はステップS106へ移行する。
【0053】
ステップS106(ステップS105:NO)において、制御部25は、押し込み部材18の停止位置を規定位置P1から後退又は前進させる。制御部25は、ステップS105において、駆動部20の受ける負荷が許容範囲内であると判定されるまでステップS106の制御を実行する。
【0054】
図6Bに示すステップS107(ステップS105:YES)において、制御部25は、押し込み部材18の停止位置の変更なしか否かを判定する。ステップS107において、制御部25により、押し込み部材18の停止位置の変更なしと判定された場合、本フローチャートの処理を終了する。一方、ステップS107において、制御部25により、押し込み部材18の停止位置の変更ありと判定された場合、処理はステップS108へ移行する。
【0055】
ステップS108(ステップS107:NO)において、制御部25は、押し込み部材18の変更した停止位置に基づいて、切替位置P2を変更する。また、制御部25は、押し込み部材18の変更した停止位置に基づいて、材料供給部16からバレル11に供給される樹脂材料の供給圧を変更する。ステップS108の処理が終了した後、本フローチャートの処理を終了する。
【0056】
上述した第1実施形態の射出装置1によれば、例えば、以下のような効果を奏する。
第1実施形態の射出装置1において、制御部25は、プランジャ17を樹脂材料の材料圧により後退させ、樹脂材料の材料圧により駆動部20の受ける負荷が規定値に達したときに樹脂材料の計量を完了させる制御を実行する。そのため、プランジャをプランジャ駆動装置で強制的に後退させる方式に比べて、バレル11内へのエアの入り込みを抑制することができる。特に、シリコーンのような粘度の低い液状の樹脂材料において、バレル11内へのエアの入り込みをより効果的に抑制することができる。また、圧力センサを用いてバレル11内の材料圧を測定しながらプランジャの位置を制御する必要がないため、圧力センサだけでなく、プランジャとプランジャ駆動装置とを連結する連結部材が不要となる。したがって、第1実施形態の射出装置1によれば、バレル11内へのエアの入り込みや部品点数の増加によるコストアップを抑制しつつ、射出工程毎に一定量の樹脂材料を射出することができる。
【0057】
第1実施形態の射出装置1において、制御部25は、駆動部20の受ける負荷が許容範囲から外れる場合、駆動部20の受ける負荷が許容範囲に収まるように、押し込み部材18の停止位置を規定位置P1から後退又は前進させる制御を実行する。本制御によれば、駆動部20の受ける負荷が許容範囲から外れる量に応じて、バレル11に充填される樹脂材料の材料圧が調整されるため、成形サイクル毎の樹脂材料の材料圧を一定に保つことができる。
【0058】
第1実施形態の射出装置1において、制御部25は、押し込み部材18の停止位置を規定位置P1から後退又は前進させる制御を実行した場合、速度制御から圧力制御へ移行する切替位置P2を変更する制御を実行するため、成形サイクル毎の射出工程において、樹脂材料の射出量を一定に保つことができる。
【0059】
上記制御において、押し込み部材18の停止位置を変更した量と同じ量を、切替位置P2の補正量とすることにより、切替位置P2の変更をより速やかに行うことができる。また、上記制御において、押し込み部材18の停止位置を変更した量と、予め設定した補正係数βとを乗算した値に基づいて切替位置P2を変更するようにしてもよい。この場合、成形サイクル毎の樹脂材料の射出量に応じて補正係数βを変更することにより、切替位置P2をよりきめ細かく調整することができる。
【0060】
第1実施形態の射出装置1において、制御部25は、計量時の押し込み部材18の停止位置を規定位置P1から変更した場合、材料供給部16からバレル11に供給される樹脂材料の供給圧を変更する制御を実行するため、成形サイクル毎の樹脂材料の材料圧を一定に保つことができる。
【0061】
(第2実施形態)
第2実施形態の射出装置1Aは、プランジャ17と押し込み部材18とが連結されている点が第1実施形態と相違する。第2実施形態の射出装置1Aにおいて、その他の構成は、第1実施形態と同じである。そのため、第2実施形態の説明及び図面において、第1実施形態と同等の部材等には、第1実施形態と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。第2実施形態の射出装置1Aの基本的な構成は、図1と同じである。なお、第2実施形態の射出装置1Aにおいて、成形サイクルの射出工程及び保圧工程(図2A及び図2B参照)は、第1実施形態と同じであるため、計量工程についてのみ説明する。
【0062】
図7A及び図7Bは、第2実施形態の射出装置1Aの計量工程を説明する図である。
図7Aは、計量工程の開始直後の状態を示している。制御部25は、樹脂材料の射出が完了した後、プランジャ17及び押し込み部材18の位置を保持したまま、駆動部20及びボールねじ22を、外力により自由に回転する状態となるように切り換える。
【0063】
次に、制御部25は、流路バルブ15を開栓すると共に、バレル11へ樹脂材料が供給されるように材料供給部16を制御する。これにより、材料供給部16からバレル11に樹脂材料が供給され、樹脂材料の計量が開始される。バレル11に樹脂材料が供給されると、図7Aに示すように、プランジャ17及び押し込み部材18は、樹脂材料の材料圧により後退する。このとき、駆動部20及びボールねじ22は、プランジャ17及び押し込み部材18の後退に伴って回転する。なお、以下の説明においては、プランジャ17及び押し込み部材18を総称して「押し込み部材18」ともいう。
【0064】
図7Bは、計量工程において、プランジャ17と共に押し込み部材18が規定位置にまで後退した状態を示している。図7Bに示すように、樹脂材料の材料圧により、押し込み部材18が規定位置P1まで後退したか否かを判定する。前述したように、ボールねじの回転数は、サーボモータの回転数としてパルスコーダ(不図示)により検出されるため、制御部25は、押し込み部材18の移動前の位置とサーボモータ実回転数とに基づいて、移動させた押し込み部材18の位置を検出することができる。
【0065】
制御部25は、押し込み部材18が規定位置P1まで後退すると、駆動部20及びボールねじ22を、外力により自由に回転する状態から解除する。そして、制御部25は、押し込み部材18の位置を保持するための電流を駆動部20に供給して、押し込み部材18を規定位置P1に保持させる。押し込み部材18が規定位置P1まで後退した後も、バレル11には樹脂材料が供給され続けるため、駆動部20にはボールねじ22を介して樹脂材料の材料圧が作用する。制御部25は、樹脂材料の材料圧により、駆動部20の受ける負荷が規定値に達すると、流路バルブ15を閉栓すると共に、材料供給部16からバレル11への樹脂材料の供給を停止させる。これにより、バレル11への樹脂材料の計量が完了する。
【0066】
次に、第2実施形態の制御部25で実行される計量制御プログラムの処理内容を、図8A及び図8Bに示すフローチャートに基づいて説明する。図8A及び図8Bは、第2実施形態の制御部25で実行される計量制御プログラムの処理手順を示すフローチャートである。
【0067】
図8Aに示すステップS201において、制御部25(図1参照)は、駆動部20及びボールねじ22を、外力により自由に回転する状態に切り換える。
【0068】
ステップS202において、制御部25は、流路バルブ15を開栓すると共に、バレル11へ樹脂材料が供給されるように材料供給部16を制御する。これにより、材料供給部16からバレル11に樹脂材料が供給され、樹脂材料の計量が開始される。バレル11に樹脂材料が供給されると、押し込み部材18は、樹脂材料の材料圧により後退する(図7A参照)。
【0069】
ステップS203において、制御部25は、押し込み部材18が規定位置P1まで後退したか否かを判定する。ステップS203において、制御部25により、押し込み部材18が規定位置P1まで後退したと判定された場合、処理はステップS204へ移行する。一方、ステップS203において、制御部25により、押し込み部材18が規定位置P1まで後退していないと判定された場合、処理はステップS203へ移行(リターン)する。
【0070】
ステップS204(ステップS203:YES)において、制御部25は、駆動部20及びボールねじ22を、外力により自由に回転する状態から解除する。
【0071】
ステップS205において、制御部25は、駆動部20の受ける負荷が規定値に達したか否かを判定する。ステップS205において、制御部25により、駆動部20の受ける負荷が規定値に達したと判定された場合、処理はステップS206(図8B)へ移行する。一方、ステップS205において、制御部25により、駆動部20の受ける負荷が許容値に達していないと判定された場合、処理はステップS205へ移行(リターン)する。
【0072】
図8Bに示すステップS206(ステップS205:YES)において、制御部25は、流路バルブ15を閉栓すると共に、材料供給部16からバレル11への樹脂材料の供給を停止させる。これにより、バレル11への樹脂材料の計量が完了する。
【0073】
ステップS207において、制御部25は、駆動部20の受ける負荷が許容範囲内か否かを判定する。ステップS207において、制御部25により、駆動部20の受ける負荷が許容範囲内であると判定された場合、処理はステップS209へ移行する。一方、ステップS207において、制御部25により、駆動部20の受ける負荷が許容範囲を外れていると判定された場合、処理はステップS208へ移行する。
【0074】
ステップS208(ステップS207:NO)において、制御部25は、押し込み部材18の停止位置を規定位置P1から後退又は前進させる。
【0075】
ステップS209(ステップS207:YES)において、制御部25は、押し込み部材18の停止位置の変更なしか否かを判定する。ステップS209において、制御部25により、押し込み部材18の停止位置の変更なしと判定された場合、本フローチャートの処理を終了する。一方、ステップS209において、制御部25により、押し込み部材18の停止位置の変更ありと判定された場合、処理はステップS210へ移行する。
【0076】
ステップS210(ステップS209:NO)において、制御部25は、押し込み部材18の変更した停止位置に基づいて、切替位置P2を変更する。また、制御部25は、押し込み部材18の変更した停止位置に基づいて、材料供給部16からバレル11に供給される樹脂材料の供給圧を変更する。ステップS210の処理が終了した後、本フローチャートの処理を終了する。
上述した第2実施形態の射出装置1Aにおいても、第1実施形態の射出装置1と同様の効果を得ることができる。
【0077】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、後述する変形形態のように種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内に含まれる。また、実施形態に記載した効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、実施形態に記載したものに限定されない。上述の実施形態及び後述する変形形態は、適宜に組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。なお、以下の説明においては、第1及び第2実施形態を総称して「実施形態」ともいう。
【0078】
(変形形態)
実施形態において、樹脂材料の材料圧を調整する制御、切替位置P2を変更する制御及び樹脂材料の供給圧を変更する制御は、すべて実行する必要はなく、1又は複数の制御を組み合わせて実行してもよいし、これらの制御を実行しない形態としてもよい。また、実施形態では、射出装置において、樹脂材料の供給開始/供給停止の制御(以下、「材料供給制御」ともいう)と、駆動部20の制御、流路バルブ15の開閉、駆動力伝達部21の制御(以下、「駆動制御」ともいう)を制御部25で実行する構成について説明したが、これに限定されない。射出装置において、材料供給制御と駆動制御を、それぞれ別の制御部で実行するようにしてもよい。その場合、例えば、駆動制御を実行する制御部から、材料供給制御を実行する制御部に対して制御信号を出力することにより、材料供給制御のタイミングと駆動制御のタイミングとを同期させることができる。
【0079】
実施形態において、プランジャ17は、バレル11に供給された樹脂材料の材料圧により後退する。そのため、プランジャ17の径が一定以上に大きい場合には、プランジャ17を短くする必要がある。図9は、変形形態の射出装置1の構成を説明する図である。図9に示すように、プランジャ17の径が一定以上に大きい場合、プランジャ17を短くして、押し込み部材18を、板状の第1押し込み部材18aと筒状の第2押し込み部材18bとにより構成してもよい。図9に示す押し込み部材18において、第1押し込み部材18aと第2押し込み部材18bは、非連結であってもよいし、連結されていてもよい。また、プランジャ17と押し込み部材18についても、第1実施形態のように非連結であってもよいし、第2実施形態のように連結されていてもよい。
【0080】
実施形態では、駆動力伝達部21において、駆動部20の駆動力を、ギア機構を介してボールねじ22に伝達する構成について説明したが、駆動部20の駆動力を、ギア機構を介さずにボールねじ22に伝達する構成としてもよい。
実施形態では、駆動部20をサーボモータにより構成する例について説明したが、駆動部20を、例えば、油圧機構により構成してもよい。
実施形態では、射出装置を射出成形機に適用した例について説明したが、射出装置は、例えば、対象物に向けて樹脂材料を吐出するディスペンサを備えたロボット等に適用することもできる。
【0081】
実施形態では、駆動部20を構成するサーボモータの回転数に基づいて押し込み部材18の位置を検出する例について説明したが、光電センサ等の外付けのセンサ、カメラ等を用いて押し込み部材18の位置を検出するようにしてよい。
実施形態では、駆動力伝達部21を1軸のボールねじで構成する例について説明したが、駆動力伝達部21は、2軸のボールねじで構成してもよいし、3軸以上のボールねじで構成してもよい。
実施形態では、射出装置と型締め装置とを水平方向に配置する例について説明したが、射出装置と型締め装置とを垂直方向に配置する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1,1A:射出装置、10:バレル保持部、11:バレル、12:ノズル、13:樹脂材料流入口、14:材料流路、15:流路バルブ、16:材料供給部、17:プランジャ、18:押し込み部材、19:リニアガイド、20:駆動部、21:駆動力伝達部、22:ボールねじ、25:制御部
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9