(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】熱デバイス用ヒートシンク
(51)【国際特許分類】
H01L 23/473 20060101AFI20241126BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
(21)【出願番号】P 2023531928
(86)(22)【出願日】2022-06-27
(86)【国際出願番号】 JP2022025544
(87)【国際公開番号】W WO2023276939
(87)【国際公開日】2023-01-05
【審査請求日】2023-10-12
(31)【優先権主張番号】P 2021108767
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004743
【氏名又は名称】日本軽金属株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】502444733
【氏名又は名称】日軽金アクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】朴 玉丹
(72)【発明者】
【氏名】安在 英司
【審査官】庄司 一隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-298133(JP,A)
【文献】特開2020-085426(JP,A)
【文献】特開2012-239256(JP,A)
【文献】特開2016-103549(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/473
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製筒状部材と、
放熱用フィンと、
内部に流体通路を有する金属製中空部材と、
を備えた熱デバイス用ヒートシンクであって、
前記放熱用フィンは前記金属製筒状部材の
両端面を除く外周部に設けられ、
前記金属製中空部材は、前記金属製筒状部材の内部に配置され、
前記金属製筒状部材の内周面と前記金属製中空部材の外周面の両方が熱デバイスに接触するように設計された、熱デバイス用ヒートシンク。
【請求項2】
金属製筒状部材と、
放熱用フィンと、
ヒートパイプと、
を備えた熱デバイス用ヒートシンクであって、
前記放熱用フィンは前記金属製筒状部材の
両端面を除く外周部に設けられ、
前記ヒートパイプは、前記金属製筒状部材の内部に配置され、
前記金属製筒状部材の内周面と前記ヒートパイプの外周面の両方が熱デバイスに接触するように設計された、熱デバイス用ヒートシンク。
【請求項3】
前記放熱用フィンが、前記金属製筒状部材の軸方向に平行に形成されている、請求項1又は2に記載の熱デバイス用ヒートシンク。
【請求項4】
前記金属製中空部材の内部に一以上のリブが設けられている、請求項1に記載の熱デバイス用ヒートシンク。
【請求項5】
前記金属製筒状部材の内周面、
又は前記金属製中空部材の外周
面の一以上に熱デバイスを配置する溝が設けられていることを特徴とする、請求項
1に記載の熱デバイス用ヒートシンク。
【請求項6】
前記金属製筒状部材の内周面
、又は前記ヒートパイプの外周面の一以上に熱デバイスを配置する溝が設けられていることを特徴とする、請求項
2に記載の熱デバイス用ヒートシンク。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の熱デバイス用ヒートシンクが、放熱用フィンにより2以上連結されている、熱デバイス用ヒートシンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱デバイス用ヒートシンクに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス、特にパワー半導体等の熱デバイスは、動作時の発熱量が大きいため、安定的な動作を得るために、例えばヒートシンクを介して放熱することにより温度の上昇を抑制する必要がある。これまで、熱デバイスの発熱をヒートシンクに伝達することにより放熱する装置が提案されている(特許文献1)。
また、特許文献2に提案されている装置では、流体通路を有する2以上の放熱部材により熱デバイスの内側と外側から冷却する装置が提案されている。
【0003】
【文献】特開2000-349233号公報
【文献】特開2012-239256号公報
【発明の概要】
【0004】
パワー半導体を始めとする半導体デバイスは、近年高性能化、小型化の要求が高まってきている。そのため半導体素子の性能の向上が求められるが、高性能化すると発熱量が大きくなる。また、半導体デバイスに配置される半導体素子の高密度化も必要となり、半導体素子が高密度に配置されれば、より発熱量が大きくなり、飛躍的に増加する発熱量に対応するためにヒートシンクの冷却性能向上が強く求められるようになってきている。さらにヒートシンク自体の小型化も要求されるようになっている。
しかしながら、特許文献1の装置では、ヒートシンクは一方の面のみが熱デバイスに当接しているため、ヒートシンクによる冷却効果は十分でなかった。また、特許文献2の装置では、装置内に複数の独立した流体通路を設ける必要があるため、構造が複雑な上、取り付け作業が煩雑となる等の懸念がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、より大きな冷却効果を有し、かつ構造がより簡単なヒートシンクを提供することを目的とする。
【0006】
すなわち、本発明者は、様々な手段を検討した結果、金属製筒状部材と、放熱用フィンと、内部に流体通路を有する金属製中空部材又はヒートパイプと、を備えた熱デバイス用ヒートシンクであって、前記放熱用フィンは前記金属製筒状部材の外周部に設けられ、前記金属製中空部材又はヒートパイプは、前記金属製筒状部材の内部に配置され、前記金属製筒状部材の内周面と前記金属製中空部材又はヒートパイプの外周面の両方が熱デバイスに接触するように設計することにより、より大きな冷却効果を有し、かつ構造がより簡単なヒートシンクとなることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
上記課題を解決する本発明は、下記より構成される。
(1).金属製筒状部材と、
放熱用フィンと、
内部に流体通路を有する金属製中空部材と、
を備えた熱デバイス用ヒートシンクであって、
前記放熱用フィンは前記金属製筒状部材の外周部に設けられ、
前記金属製中空部材は、前記金属製筒状部材の内部に配置され、
前記金属製筒状部材の内周面と前記金属製中空部材の外周面の両方が熱デバイスに接触するように設計された、熱デバイス用ヒートシンク。
(2).金属製筒状部材と、
放熱用フィンと、
ヒートパイプと、
を備えた熱デバイス用ヒートシンクであって、
前記放熱用フィンは前記金属製筒状部材の外周部に設けられ、
前記ヒートパイプは、前記金属製筒状部材の内部に配置され、
前記金属製筒状部材の内周面と前記ヒートパイプの外周面の両方が熱デバイスに接触するように設計された、熱デバイス用ヒートシンク。
(3).前記放熱用フィンが、前記金属製筒状部材の軸方向に平行に形成されている、(1)又は(2)に記載の熱デバイス用ヒートシンク。
(4).前記金属製中空部材の内部に一以上のリブが設けられている、(1)又は(3)に記載の熱デバイス用ヒートシンク。
(5).前記金属製筒状部材の内周面、前記金属製中空部材の外周面又は前記ヒートパイプの外周面の一以上に熱デバイスを配置する溝が設けられていることを特徴とする、(1)から(4)のいずれかに記載の熱デバイス用ヒートシンク
(6).(1)から(5)のいずれかに記載の熱デバイス用ヒートシンクが、放熱用フィンにより2以上連結されている、熱デバイス用ヒートシンク。
【0008】
本発明によれば、より大きな冷却効果を有し、かつ構造がより簡単なヒートシンクが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第一実施形態に係るヒートシンクを示す図である。
【
図2】本発明の第一実施形態に係る別のヒートシンクを示す図である。
【
図3】本発明の第一実施形態に係るヒートシンクの断面図を示す図である。
【
図4】本発明の第一実施形態に係る別のヒートシンクの断面図を示す図である。
【
図5】本発明の第一実施形態に係るさらに別のヒートシンクの断面図を示す図である。
【
図6】本発明の第二実施形態に係るヒートシンクを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、ヒートシンクの種々の実施形態を説明するが、一実施形態について記載した特定の説明が他の実施形態についても当てはまる場合には、他の実施形態においてはその説明を省略している。
【0011】
[第一実施形態]
本発明の第一実施形態にかかるヒートシンクは、金属製筒状部材と、放熱用フィンと、内部に流体通路を有する金属製中空部材と、を備えた熱デバイス用ヒートシンクであって、前記放熱用フィンは前記金属製筒状部材の外周部に設けられ、前記金属製中空部材は、前記金属製筒状部材の内部に配置され、前記金属製筒状部材の内周面と前記金属製中空部材の外周面の両方が熱デバイスに接触するように設計された、熱デバイス用ヒートシンクである。
図1に示すように、外周部に放熱用フィンが設けられた金属製筒状部材の内側に、内部に流体通路を有する金属製中空部材が配置されている。また、金属製筒状部材と金属製中空部材は、その間に熱デバイスを設置できるように設計されており、熱デバイスが金属製筒状部材と金属製中空部材の両方に接触するような構造となっている。ここで、熱デバイスとは、半導体等の熱源を含むデバイスをいう。本実施形態のヒートシンクは、熱デバイスの冷却に用いられるものであり、特に小型モジュール等に使用される半導体等のデバイスの冷却に適している。
【0012】
金属製筒状部材は、孔を有する筒形状の金属製の部材である。金属製筒状部材の軸方向に垂直な断面の形状は、矩形中空断面や円形中空断面等、特に限定されず、ヒートシンクを設置するモジュール等の形状に合わせて適宜選択することができる。孔の形状は、矩形や円形等、特に限定されず、設置される熱デバイスや金属製中空部材の形状に合わせて適宜選択することができる。金属製筒状部材の厚みは、特に限定されず、外周面に設置する熱デバイスや金属製中空部材の形状に合わせて、例えば2~4mm、5~15mm、30~70mm等を選択することができる。本発明のヒートシンクは冷却性能が高いので、金属製筒状部材が3mm角のような微細なものであっても、ヒートシンクの大きさに比しても高い冷却性能を得ることができる。
【0013】
金属製筒状部材の材料としては、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金、マグネシウム、マグネシウム合金等を用いることができるが、特にアルミニウム、アルミニウム合金が好ましい。
【0014】
金属製筒状部材は、特に限定されないが、押出成形、板状部材を丸め継ぎ目を溶接する等の成形方法により成形することができ、本実施形態では押出成形により成形されている。
【0015】
放熱用フィンは、平面視矩形である板状の金属部材であって、金属製筒状部材の外周部に略等間隔で複数枚併設されている。フィンの高さ、厚さ、寸法、枚数等は特に限定されず、用途によって適宜設定することができる。本実施形態において金属製筒状部材の外周部とは、金属製筒状部材の外周及びその近傍をいう。金属製筒状部材の外周部に放熱用フィンが設けられていることにより、熱が放熱用フィンから放熱され、効果的に金属製筒状部材が冷却される。
【0016】
放熱用フィンの材料としては、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金、マグネシウム、マグネシウム合金等を用いることができるが、特にアルミニウム、アルミニウム合金が好ましい。また、金属製筒状部材と同じ材料を用いることが好ましい。
【0017】
放熱用フィンは、金属製筒状部材と一体形成されてもよく、溝入れ加工により形成されてもよく、金属製筒状部材にろう付けにより接合されてもよいが、金属製筒状部材と一体形成されることが好ましい。
【0018】
ある実施形態においては、放熱用フィンは、筒状部材の軸方向と平行に設けられており、それにより金属製筒状部及び放熱用フィンを押出し成形により一体成形することが可能となる。
【0019】
放熱用フィンは、一定以上の冷却効果を奏するのであれば、必ずしも筒状部材の外周の全てを覆う必要はないが、少なくとも外周の2分の1を覆うことが好ましく、少なくとも外周の4分の3を覆うことがより好ましい。
【0020】
金属製中空部材は、内部に流体通路を有し、中空構造となっている。流体通路とは、空気、水等の熱輸送流体が流通することができる通路である。流体通路内を熱輸送流体が流通することにより、金属製中空部材の熱が熱輸送流体に移動し、効果的に金属製中空部材が冷却される。
【0021】
金属製中空部材の軸方向に垂直な断面の形状としては、矩形中空断面や円形中空断面等、特に限定されず、外周面に設置する熱デバイスや金属製筒状部材の形状に合わせて適宜選択することができる。流体通路の形状は、矩形や円形等、特に限定されない。金属製中空部材の厚みは、特に限定されず、外周面に設置する熱デバイスや金属製筒状部材の形状に合わせて、例えば1~3mm、5~10mm、30~50mm等を選択することができる。
【0022】
金属製中空部材の材料としては、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金、マグネシウム、マグネシウム合金等を用いることができるが、特にアルミニウム、アルミニウム合金が好ましい。
【0023】
ある実施形態において、金属製中空部材は、その内部に一以上のリブが設けられている。リブが設けられていることにより、流体通路が仕切られ、金属製中空部材の内部を流れる熱輸送媒体と熱輸送媒体が接触する金属製中空部材の表面積を増やすことができ、冷却性能を向上させるという効果を奏する。リブが複数設けられる場合、流体通路としての機能が維持されていればその構造は特に限定されないが、それぞれのリブは平行に設けられてもよく、格子状に設けられてもよい。
【0024】
金属製中空部材は、特に限定されないが、押出成形、板状部材を丸め継ぎ目を溶接する等の成形方法により成形することができ、本実施形態では押出成形により成形されている。
【0025】
本実施形態において、金属製筒状部材と金属製中空部材は、その間に熱デバイスを設置できるように設計されており、設置用の溝を金属製筒状部材の内周面や金属製中空部材の外周面に設けても良い。熱デバイスの形状にあった溝を設け、そこに熱デバイスを配置することにより、熱デバイスと金属製筒状部材及び金属製中空部材の接触面積を増やすことができ、冷却性能を向上させることができる。熱デバイスが金属製筒状部材と金属製中空部材の両方に接触するような構造となっていることから、熱デバイスで発生した熱が金属製筒状部材と金属製中空部材の両方へと熱が移動し、効果的に熱デバイスが冷却される。また、ある実施形態においては、ヒートシンク内に複数の熱デバイスを設置することも可能である。
【0026】
[第二実施形態]
本発明の第二実施形態にかかるヒートシンクは、外周部に放熱用フィンを備えた金属製筒状部材と、ヒートパイプと、を備えた熱デバイス用ヒートシンクであって、前記ヒートパイプは、前記金属製筒状部材の内部に配置され、前記金属製筒状部材と前記ヒートパイプの両方が熱デバイスに接触するように設計された、熱デバイス用ヒートシンクである。
図2に示すように、外周部に放熱用フィンを備えた金属製筒状部材の内側に、ヒートパイプが配置されている。また、金属製筒状部材とヒートパイプは、その間に熱デバイスを設置できるように設計されており、熱デバイスが金属製筒状部材とヒートパイプの両方に接触するような構造となっている。
【0027】
ヒートパイプは、作動流体が気化する際の潜熱を利用して冷却するための装置であり、コンテナと、コンテナ内に封入された作動流体と、ウィックとを備えている。コンテナの材料としては、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金、マグネシウム、マグネシウム合金等を用いることができる。作動流体としては、水、アルコール、アンモニア、フロン系冷媒等を用いることができる。ウィックとしては、金属粉末を焼結させた多孔質の構造体等を用いることができる。ヒートパイプは、一方の端部が蒸発部として機能し、他方の端部が凝縮部として機能する。蒸発部では、作動流体が熱を受け取ることで蒸発し、気体となった作動流体が凝縮部に移動する。凝縮部では、作動流体が熱を放出し、凝縮する。凝縮し液体となった作動流体は、ウィック内を移動して蒸発部へと還流する。
【0028】
ヒートパイプの形状としては、角柱や多面体等、特に限定されず、外周面に設置する熱デバイスや金属製筒状部材の形状に合わせて適宜選択することができる。外周面に設置する熱デバイスや金属製筒状部材の形状に合わせて、2以上のヒートパイプを備えてもよい。
【0029】
本実施形態において、金属製筒状部材とヒートパイプは、その間に熱デバイスを設置できるように設計されており、熱デバイスが金属製筒状部材とヒートパイプの両方に接触するような構造となっていることから、熱デバイスで発生した熱が金属製筒状部材とヒートパイプの両方へと熱が移動し、効果的に熱デバイスが冷却される。また、ヒートパイプを用いると、流体通路を設ける必要がなくなることから、構造がより簡単になり、取り付け作業がより簡素化される。また、ある実施形態においては、ヒートシンク内に複数の熱デバイスを設置することも可能である。
【0030】
ある実施形態において、前記ヒートパイプの外周面の一以上に熱デバイスを配置する溝を設けても良い。熱デバイスの形状にあった溝を設け、そこに熱デバイスを配置することにより、熱デバイスと金属製筒状部材及びヒートパイプの接触面積を増やすことができ、冷却性能を向上させることができる。
【0031】
第一実施形態及び第二実施形態のヒートシンクは、放熱用フィン同士を結合することにより、連結して用いることもできる。
【0032】
以上、様々な実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本実施形態のヒートシンクは、大きな冷却効果を有し、かつ構造がより簡単なため、特に高性能化・小型化されたパワー半導体を始めとする半導体デバイス等の熱デバイスの冷却用として、産業上の利用可能性を有している。
【符号の説明】
【0034】
1 ヒートシンク
2 金属製筒状部材
3 放熱用フィン
4 金属製中空部材
41 流体通路
42 リブ
5 ヒートパイプ
6 熱デバイス