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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20241126BHJP
   H01M 8/0444 20160101ALI20241126BHJP
   H01M 8/04537 20160101ALI20241126BHJP
   H01M 8/0662 20160101ALI20241126BHJP
【FI】
H01M8/04 N
H01M8/0444
H01M8/04537
H01M8/0662
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023532902
(86)(22)【出願日】2021-07-05
(86)【国際出願番号】 JP2021025357
(87)【国際公開番号】W WO2023281604
(87)【国際公開日】2023-01-12
【審査請求日】2023-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 光徳
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-261000(JP,A)
【文献】特開2007-324006(JP,A)
【文献】特開平07-280180(JP,A)
【文献】実開昭60-168555(JP,U)
【文献】特開2018-096451(JP,A)
【文献】特開2005-268003(JP,A)
【文献】特開2007-005024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04-8/0668
B03C 1/00-1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気極の通風路に配置されて、前記通風路を浮遊する鉄粒子を吸着可能な磁石を少なくとも含むフィルタと、
前記フィルタへの前記鉄粒子の堆積状態を報知する報知装置と、
を有し、
前記フィルタは、前記通風路において通風方向に関して所定の間隙を隔てて前記磁石と対向配置された磁性体をさらに含み、
所定量以上の前記鉄粒子が前記磁石と前記磁性体の間に堆積することで電気的な導通が確立される、
燃料電池システム。
【請求項2】
前記磁石と前記磁性体の間に堆積する前記鉄粒子が、前記通風路の通風方向の下流に向かって堆積する、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記磁石が中空の円柱の内部に設置される、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記磁石と対向配置された前記磁性体は、前記磁石の通風方向の下流側に設置される、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記空気極の前記通風路に設置されて空気を圧縮して下流側に送るためのコンプレッサをさらに含み、
前記フィルタが前記コンプレッサの通風方向の下流側に設置される、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記報知装置が前記磁性体に電気的に接続されている、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記報知装置と前記フィルタが、オープンコレクタ出力回路を介して接続されている、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記フィルタにかかる電圧値と前記フィルタを流れる電流値の少なくとも一方を検出するセンサをさらに有する、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項9】
前記センサの検出結果に基づいて、前記報知装置による前記フィルタへの前記鉄粒子の前記堆積状態の報知を制御するための制御装置をさらに有する、請求項8に記載の燃料電池システム。
【請求項10】
前記フィルタに堆積した前記鉄粒子を除去するための除去装置をさらに有し、
前記センサの検出結果に基づいて、前記除去装置による前記鉄粒子の除去を制御するための制御装置をさらに有する、
請求項9に記載の燃料電池システム。
【請求項11】
前記センサの検出結果に基づいて、前記制御装置により前記フィルタの清掃時期の予測が行われ、
前記報知装置により、予測された前記清掃時期の報知がされる、
請求項9に記載の燃料電池システム。
【請求項12】
前記報知装置が発光ダイオードである、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項13】
前記フィルタが格子状又は網目状である、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項14】
前記磁石は永久磁石である、請求項1に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池に備えられ異物を除去するためのフィルタに関連する構成として、例えば以下に示す文献に記載されたものが知られている。特許文献1に記載された燃料電池発電装置は、永久磁石材を格子状に配列して形成された磁界発生手段を備えて、この磁界発生手段により空気供給装置を通流する空気に含まれる鉄分を除去する。特許文献2に記載された燃料電池システムは、酸化ガス供給流路内に設けられコイルに流れる電流により磁化されたフィルタにより、燃料電池に酸化ガスを供給するコンプレッサにおける回転子のコーティング材の磨耗紛を除去する。特許文献3に記載された燃料電池のフィルタ寿命判定システムは、燃料電池車における燃料電池の空気系に備えられて空気中の不純物を吸着するフィルタにおいて、燃料電池車の走行環境に基づいてフィルタの寿命を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-261000号公報
【文献】特開2007-324006号公報
【文献】特開2004-152669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示される燃料電池発電装置では、永久磁石の格子に鉄分が堆積するにつれて目詰まりが発生し、取込んだ空気をカソード電極へと供給する経路において圧力損失が上昇し、その結果として燃料電池の発電能力に影響が生じ得るという問題があった。特許文献2に示される燃料電池システムでは、電磁石からなるフィルタを使用しているため、燃料電池車に適用した場合に車両電源をオフにすると電磁力が喪失するため吸着していた異物が瞬時に放出されてしまう。さらに特許文献2に示される燃料電池システムでは、次に車両電源をオンにした際に電磁石で再吸着できない異物が燃料電池内に吸い込まれてしまうという問題もあった。特許文献3に記載された燃料電池のフィルタ寿命判定システムでは、車両が走行する位置における標準不純物濃度のデータ等が必要となり、簡易なシステム構成の需要に合致しないという問題があった。
【0005】
本開示は、上記した課題を一例に鑑みて為されたものであり、異物の除去性能を維持することが可能な燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の燃料電池システムは、空気極の通風路に配置されて、前記通風路を浮遊する鉄粒子を吸着可能な磁石を少なくとも含むフィルタと、前記フィルタへの前記鉄粒子の堆積状態を報知する報知装置と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、異物の除去性能を維持することが可能な燃料電池システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態の燃料電池システムの構成を示す模式図である。
図2】本実施形態の燃料電池システムの一部を示す模式図である。
図3図2におけるA-A’断面図である。
図4】本実施形態の燃料電池システムを説明するための模式図である。
図5】本実施形態の燃料電池システムを説明するための他の模式図である。
図6】本実施形態の燃料電池システムの他の例を説明するための第1の模式図である。
図7】本実施形態の燃料電池システムを他の例を説明するための第2の模式図である。
図8】本実施形態の燃料電池システムの一部を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に本開示を実施するための好適な実施形態について、燃料電池車FCV(Fuel Cell Vehicle)を用いて説明する。なお、以下で詳述する以外の燃料電池車における構造や各種の装備については、上記した特許文献を含む公知の装備や駆動機構並びに制御システムを適宜補完してもよい。また、以下では、燃料電池システム適用の一例として燃料電池車を用いて説明するが、本開示が適用可能な燃料電池システムは燃料電池車に限られない。例えば本開示が適用可能な燃料電池システムは、船舶や電車等の車両以外の移動体に搭載されてもよい。また本開示が適用可能な燃料電池システムは、家庭用燃料電池システムなど定置式のものであってもよい。
【0010】
<第1実施形態>
[燃料電池車の燃料電池システム100]
まず実施形態の燃料電池車FCVに搭載される燃料電池システム100の構成について、図1を参照しながら説明する。
【0011】
図1から理解されるとおり、本実施形態における燃料電池システム100が搭載され得る燃料電池車FCVは、燃料電池10と、空気供給路21と、空気吸入口31と、ケミカルフィルタ32と、コンプレッサ33と、マグネットフィルタ34と、水素ガス供給路41と、水排出路44と、水素タンク51と、開閉弁52と、駆動用モータ60とを備える。
【0012】
燃料電池10としては、燃料電池車FCVに搭載可能な公知の燃料電池が適用できる。燃料電池10は、燃料ガス(例えば水素ガス)と酸化ガス(例えば空気)とを反応させることにより発電する電池である。燃料電池10は、複数の燃料電池セルが積層されている燃料電池スタックを有しており、各燃料電池セルには、電解質膜、アノード電極およびカソード電極を含む公知の膜電極接合体(MEA)が設けられている。燃料電池10は、一例として、燃料電池車FCVの駆動用モータ60の電力源として利用される。
【0013】
燃料電池10内には、空気が流通する公知の空気流路が形成されている。かような空気流路の一端には空気供給路21が接続されている。燃料電池10内において、上記した空気流路は各燃料電池セルを通過するように配置されている。また、燃料電池10内には、水素ガスが流通する公知の水素ガス流路が形成されている。この水素ガス流路の一端には水素ガス供給路41が接続されている。燃料電池10内において、上記した水素ガス流路は各燃料電池セルを通過するように配置されている。
【0014】
空気供給路21は、燃料電池10に供給される空気が流通する流路(空気極の通風路)である。空気供給路21には、空気吸入口31と、ケミカルフィルタ32と、コンプレッサ33と、マグネットフィルタ34と、が上流側からこの順に設けられている。マグネットフィルタ34には、後述する報知装置36が電気的に接続されている。
【0015】
空気吸入口31は、空気(例えば、車外の空気である外気)が吸入される吸入口である。ケミカルフィルタ32は、公知のケミカルフィルタが例示でき、空気供給路21を流通する空気に含まれる異物(砂、微小な塵埃、化学物質など)を除去する機能を有する。コンプレッサ33は、公知のコンプレッサが例示でき、当該コンプレッサ33よりも上流側の空気を圧縮して下流側(つまり、燃料電池10側)に送る機能を有する。マグネットフィルタ34は、空気供給路21を流通する空気に含まれる鉄粒子を捕捉する。また、マグネットフィルタ34がコンプレッサ33の通風方向の下流側に設置されることにより、マグネットフィルタ34はコンプレッサ33の摩耗粉に含まれる鉄粒子をも捕捉可能である。
【0016】
コンプレッサ33が駆動されることによって、空気吸入口31から空気が吸入され、当該空気が空気供給路21を介して燃料電池10内の空気流路に供給される。燃料電池10において、供給する空気中に鉄粒子が含まれる場合には、ケミカルフィルタ32を透過してカソード電極に到達した当該鉄粒子が電解質膜中でイオンとなって電解質膜の劣化を加速するので、電池の寿命特性が低下することとなる。また、コンプレッサ33の回転子が回転に伴って発生する摩耗粉が鉄粒子を含む場合、同様に電池の寿命特性に影響を及ぼす。このような事態の発生を回避するため、空気供給路21に配置されたマグネットフィルタ34により当該鉄粒子が捕捉される。
【0017】
マグネットフィルタ34には、鉄粒子の捕捉量を報知するための報知装置36(公知のスピーカーや車載モニタ、後述する発光ダイオードなど)が電気的に接続されている。上述のようなマグネットフィルタ34と報知装置36とにより、マグネットフィルタ34における異物の除去性能を維持することが可能となる。また、マグネットフィルタ34は、公知の電源Pに接続されている。電源Pは、マグネットフィルタ34に電力を供給する。報知装置36は、マグネットフィルタ34による鉄粒子Feの捕捉に基づいて燃料電池車FCVの乗員に対して報知を行う。
【0018】
以下、図2図5を参照して、マグネットフィルタ34の構造について詳細に説明する。
図2は、マグネットフィルタ34の概略構成を示す模式図である。図3は、図2におけるA-A’断面図である。
【0019】
マグネットフィルタ34は、空気供給路21内部に配置される。マグネットフィルタ34は、中空の楕円柱磁性体34aと、楕円柱磁性体34aと一定の距離を有して対向配置される円柱磁性体棒34bと、を含む。上述の楕円柱磁性体34aの内部には、永久磁石34cが設置される。中空の楕円柱磁性体34aには、電源Pが接続される。円柱磁性体棒34bには、報知装置36が電気的に接続される。
【0020】
中空の楕円柱磁性体34aは、公知の鋼製の楕円パイプ等が適用できる。円柱磁性体棒34bは、鉄やニッケル、及びそれらの合金からなる金属棒を適用できる。ここで、磁性体とは、磁性を帯びることが可能な物質をいい、例えば、酸化鉄、酸化クロム、コバルト、フェライトなどである。
【0021】
中空の楕円柱磁性体34aは、円柱磁性体棒34bよりも空気供給路21の上流(矢印Y1側)に配置される。永久磁石34cは、中空の楕円柱磁性体34aの内部において、中空の楕円柱磁性体34aに近接した位置に配置される。具体的には図3に示されるとおり、中空の楕円柱磁性体34aの断面において、長軸Axが燃料電池10内に送られる空気の流れと略平行となるように配置されている。さらに、永久磁石34cと円柱磁性体棒34bとが互いに近接するように配置されている。なお、永久磁石34cの種類としては特に制限はなく、公知のフェライト磁石、ネオジム磁石、アルニコ磁石等を適用できる。また、永久磁石34cの形状としては、図2及び図3に示されるような棒形状(棒磁石)であってもよいし、丸形などの形状であってもよい。なお上述のように永久磁石を用いることにより、意図しない電力供給の停止などに起因する電磁力の喪失を回避できる。
【0022】
なお、図2及び図3においては、マグネットフィルタ34は、空気供給路21内部に一箇所設置されているが、本開示はこの形態に限られない。すなわち、空気供給路21内部に、通風方向に沿ってマグネットフィルタ34が複数設置されていてもよい。また設置箇所に関しても特に制限はなく、空気吸入口31と燃料電池10の間の任意の位置に設置することが可能である。また図2及び図3においてマグネットフィルタ34は棒形状であるが、これに限られるものではなく、当該マグネットフィルタ34が格子状や網目(メッシュ)状などの公知の形状に構成されたものであってもよい。マグネットフィルタ34が格子状や網目状である場合、鉄粒子Feの吸着効果の向上が期待できる。ここで格子状とは複数の棒磁石を水平方向や鉛直方向に並べた状態をいい、網目状とは複数の棒磁石を交差する方向に並べた状態と理解される。
【0023】
なお図2では、矢印Y1と矢印Y2により空気(具体的には、空気吸入口31から燃料電池10内に送られる空気)の流れが示されている。コンプレッサ33が駆動されると、矢印Y1の方向に向けて気体が流通する。流通する気体中に鉄粒子Feが含まれる場合、永久磁石34cの磁力により、鉄粒子Feが捕捉あるいは吸着される。捕捉された鉄粒子Feは、中空の楕円柱磁性体34aの表面に付着する。この際、上述のように永久磁石34cが中空の楕円柱磁性体34aの内部において、通風方向の下流側に配置されているため、鉄粒子Feの捕捉量が増加するにつれ、鉄粒子Feは、通風方向の下流に向かって堆積していく。すなわち鉄粒子Feは、中空の楕円柱磁性体34aを介して、永久磁石34cと円柱磁性体棒34bとの間に堆積する。なお、鉄粒子Feの堆積量あるいは吸着量が増加しても、空気供給路21の空気流路の断面積は実質的に減少しないため、空気流路における圧力損失の上昇の問題を抑制することが可能となる。鉄粒子Feが捕捉された後、空気は矢印Y2の方向に向けて燃料電池10方向に送られる。
【0024】
報知装置36は、マグネットフィルタ34の円柱磁性体棒34bに電気的に接続され、マグネットフィルタ34への鉄粒子Feの堆積状態を報知する。すなわち、楕円柱磁性体34aに付着した鉄粒子Feが円柱磁性体棒34bの方向に向かって堆積する。そして、楕円柱磁性体34aと円柱磁性体棒34bとの間に電気的な導通が確立したときに、円柱磁性体棒34bに電気的に接続された報知装置36により報知が行われる。図2に参照されるように、報知装置36は、公知の発光ダイオードが適用できる。この場合、マグネットフィルタ34への鉄粒子Feの堆積が一定量以上となると、発光ダイオードが発光することにより、マグネットフィルタ34における堆積の状態が報知される。なお本実施形態では報知装置36に発光ダイオードを適用することにより、低コストで視覚による報知効果を得ることができる。
【0025】
すなわち上述したとおり、図4に参照されるように、中空の楕円柱磁性体34aと円柱磁性体棒34bとは、所定の間隙gを隔てて対向配置され、空気供給路21内部を浮遊する鉄粒子Feが永久磁石34cにより捕捉される。捕捉された鉄粒子Feは、中空の楕円柱磁性体34aと円柱磁性体棒34bとの間(間隙g)に堆積する。鉄粒子Feが中空の楕円柱磁性体34aを介して永久磁石34cに付着しているが、鉄粒子Feが未だ円柱磁性体棒34bに到達していない場合、楕円柱磁性体34aと円柱磁性体棒34bとの間で電気的な導通が確立していない。そのため、この状態では報知装置36による報知は行われない。
【0026】
一方で、図5に参照されるように、中空の楕円柱磁性体34aと円柱磁性体棒34bとの間隙gが、堆積した鉄粒子Feにより埋まった場合、楕円柱磁性体34aと円柱磁性体棒34bとの間で電気的な導通が確立する。そして、電源Pにより供給された電力は、堆積した鉄粒子Feを通じて円柱磁性体棒34bに流れる。上述のように本実施形態では、所定量以上の鉄粒子が磁石と磁性体の間に堆積することで電気的な導通が確立される構成としたことにより、所定量以上の鉄粒子の堆積を検知することが可能となる。図2に参照されるように、円柱磁性体棒34bには公知のオープンコレクタ出力回路を介して発光ダイオードが接続されており、この発光ダイオードが発光することによりマグネットフィルタ34への鉄粒子Feの堆積が検知される。なお、オープンコレクタ出力回路を介して報知装置36が接続されることにより、一般的なセンサや制御装置を介さずに、報知装置36による報知を制御することが可能となる。また、中空の楕円柱磁性体34aの内部に永久磁石34cが配置される構成としたことにより、中空の楕円柱磁性体34aの内部から永久磁石34cを取り出すことで、マグネットフィルタ34に付着した鉄粒子Feを容易に除去または清掃することが可能となる。
【0027】
本実施形態においてはマグネットフィルタ34の構成として、中空の楕円柱磁性体34aと円柱磁性体棒34bとを対向配置させると共に、中空の楕円柱磁性体34aの内部に永久磁石34cを配置するものとしたが、これに限られるものではない。すなわち、マグネットフィルタ34により捕捉された鉄粒子Feが堆積するにつれて、空気供給路21の空気流路の断面積が小さくなる現象を回避できる限りにおいて、マグネットフィルタ34を任意の構成とすることが可能である。
【0028】
なお、中空の楕円柱磁性体34aと円柱磁性体棒34bとの間に電気的な導通が確立した場合でも、上述のオープンコレクタ出力回路中における抵抗器の抵抗値に応じて、報知装置36の報知を行わないことも可能である。すなわち、鉄粒子Feの堆積によりマグネットフィルタ34に導通する電流量または電圧量が所定量となることを条件として、報知装置36による上記報知を行うこととしてもよい。さらには、図6及び図7に示されるように、円柱磁性体棒34bにはオープンコレクタ出力回路を介さずに発光ダイオードが直接接続されていてもよい。また、円柱磁性体棒34bには、図2に示される回路以外のアナログ回路が接続されていてもよい。
【0029】
また、マグネットフィルタ34に導通する電流量または電圧量に応じて、報知装置36の報知方法を異なるものとしてもよい。例えば、鉄粒子Feの堆積量あるいは吸着量に応じてマグネットフィルタ34に導通する電流量が増加する場合、予め定めた電流量の閾値を複数段階に設定しておき、電流量の増加に基づいて報知装置36としての発光ダイオードの発光色を段階的に変化させることができる。また、電流量の増加に基づいて、報知装置36としてのスピーカーから出される音の大きさを段階的に大きくすることも可能である。
【0030】
また上述の説明では報知装置36としては発光ダイオードを挙げたが、これに限られるものではなく、蛍光灯や白熱灯など、光を用いて報知を行う公知の装置を適宜用いることができる。また、光以外の方法で報知を行う装置として、公知の音声報知装置や画像表示装置を適用することも可能である。音声報知装置としては具体的には、公知のスピーカーやブザーなど音声により報知する装置でもよい。また画像表示装置としては例えば、公知の電光掲示板や液晶ディスプレイなど画像によって鉄粒子Feの堆積状態を報知するものでもよい。また、報知装置36は、車室内または車室外の任意の箇所に設置されていてもよい。
【0031】
水素ガス供給路41は、燃料電池10に供給される水素ガスが流通する流路である。水素ガス供給路41には、水素供給源としての水素タンク51と、開閉弁52とが上流側からこの順に設けられている。水素タンク51には、水素を貯蔵可能な公知の構造を有している。開閉弁52が開状態となっているときに、水素ガスが、水素タンク51から水素ガス供給路41を介して燃料電池10内の水素ガス流路に供給される。なお、水素ガス供給路41は、1つの部材により形成されていてもよく複数の部材により形成されていてもよい。開閉弁52は、公知の電磁弁等を適用可能である。
【0032】
本実施形態において、燃料電池システム100は燃料電池車FCVに搭載されると共に、燃料電池10は燃料電池車FCVの駆動用モータ60の電力源として利用され得る。燃料電池10の発電により生成された水は、水排出路44を介して排出される。
以上説明した本実施形態における燃料電池システム100によれば、磁力を利用した簡易な構成により燃料電池10に悪影響を及ぼし得る異物の除去性能を維持することが可能となっている。
【0033】
<第2実施形態>
次に図8を参照しつつ、第2実施形態における燃料電池車の燃料電池システム200について説明する。なお、以降で説明する各実施形態および変形例においては、上記した第1実施形態と同じ機能の構成については同一の番号を付すとともに適宜その説明は省略する。
【0034】
上記した第1実施形態では、公知のオープンコレクタ出力回路を介して、報知装置36としての発光ダイオードによりマグネットフィルタ34への鉄粒子Feの堆積状態が報知されるものであった。これに対して本実施形態では、マグネットフィルタ34に電気的に接続された制御装置70を介して、マグネットフィルタ34への鉄粒子Feの堆積状態が報知される。
【0035】
図8に参照されるように、燃料電池システム200は、電流センサ72と、電圧センサ73と、制御装置70とをさらに備える。電流センサ72は、電源Pからマグネットフィルタ34を流れる電流を検出可能な公知のセンサであって、検出した電流値を制御装置70に出力する。また電圧センサ73は、マグネットフィルタ34にかかる電圧を検出可能な公知のセンサであって、検出した電圧値を制御装置70に出力する。
【0036】
制御装置70は、受信した上記の電流値と電圧値の少なくとも一方に基づいて、報知装置36の報知動作を制御する。ここで制御装置70は、マグネットフィルタ34の清掃予測時期の報知のタイミングを制御することができる。なお、制御装置70が行う処理の詳細については、後述にて説明する。
【0037】
例えば、制御装置70は、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)、CPUが使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する記憶素子であるROM(Read Only Memory)およびCPUの実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶する記憶素子であるRAM(Random Access Memory)等で構成される。制御装置70は、車載安全装備や空調の制御、燃料電池の制御など、車載される各種の電子機器をそれぞれ電子制御する公知のコンピュータ(車載用ECU(Elecrtronic Contorol Unit))であってもよい。特に、燃料電池車のパワーECU等に組み込まれてソフトウェアにより報知装置36の動作が制御されるものであってもよい。
なお、制御装置70と各装置との通信は、例えば、CAN(Controller Area Network)通信を用いて実現される。
【0038】
次に、本実施形態における燃料電池システム200を用いたマグネットフィルタ34における鉄粒子Feの堆積量あるいは吸着量の検出方法について説明する。なお、詳述する検出方法は、上記した制御装置70によって実行される。
【0039】
電流センサ72は、マグネットフィルタ34を流れる電流値を検出し、その検出結果を制御装置70に出力する。また、電圧センサ73は、マグネットフィルタ34にかかる電圧値を検出し、その検出結果を制御装置70に出力する。制御装置70は、電流センサ72又は電圧センサ73の検出結果の少なくとも一方が、所定の条件を満たすか否かを判定する。電流センサ72又は電圧センサ73の検出結果が所定の条件を満たすと判定された場合、制御装置70は、報知装置36に対して報知を行う制御信号を出力する。当該制御信号を受けた報知装置36が燃料電池車FCVの乗員に対して報知を実行することにより、マグネットフィルタ34への鉄粒子Feの堆積状態が報知される。本実施形態では、上述のように鉄粒子Feの堆積状態の報知を制御するための制御装置70により、電流センサ72又は電圧センサ73の検出結果の条件を設定することで、報知装置36による報知パターンをより細分化することが可能となる。
【0040】
[マグネットフィルタの清掃方法]
以下に、マグネットフィルタ34に付着した鉄粒子Feの清掃方法について説明する。
第1実施形態の燃料電池システム100において、マグネットフィルタ34に付着した鉄粒子Feを清掃する場合には、中空の楕円柱磁性体34aの内部に挿入された永久磁石34cを抜き去ることにより、付着した鉄粒子Feを容易に脱落させることが可能である。本実施形態では、鉄粒子Feを捕捉するために電磁石ではなく永久磁石を使用しているため、車両電源のオフにより捕捉した鉄粒子Feを脱落させることがない。そのため、意図しない鉄粒子Feの放出により燃料電池の寿命特性が低下することを回避できる。
【0041】
本実施形態の燃料電池システム200は、マグネットフィルタ34に付着した鉄粒子Feを除去するための除去装置80をさらに有していてもよい。具体的には、マグネットフィルタ34に付着した鉄粒子Feの除去は、上記した制御装置70によって以下のように実行することが可能である。
【0042】
電流センサ72は、マグネットフィルタ34を流れる電流値を検出し、その検出結果を制御装置70に出力する。また、電圧センサ73は、マグネットフィルタ34にかかる電圧値を検出し、その検出結果を制御装置70に出力する。制御装置70は、電流センサ72又は電圧センサ73の検出結果の少なくとも一方が、所定の条件を満たすか否かを判定する。電流センサ72又は電圧センサ73の検出結果が所定の条件を満たすと判定された場合、制御装置70は、除去装置80に対してマグネットフィルタ34に付着した鉄粒子Feを除去するための制御信号を出力する。当該制御信号を受けた除去装置80は、マグネットフィルタ34に付着した鉄粒子Feの除去を実行することにより、マグネットフィルタ34の清掃が実行される。このように、マグネットフィルタ34に堆積した鉄粒子Feを除去するための除去装置80と、除去装置80を制御するための制御装置70とを同時に有することにより、マグネットフィルタ34の性能を長期間維持することが可能となる。なお、除去装置80によりマグネットフィルタ34の清掃が実行される前後において、上述した報知装置36によりマグネットフィルタ34における鉄粒子Feの堆積状態が報知されてもよい。
【0043】
上述の除去装置80としては、例えば、付着した鉄粒子Feを吸引してマグネットフィルタ34から除去するための公知の吸引装置や、付着した鉄粒子Feをマグネットフィルタ34の表面からこすり取る公知のスクレイパーなどを挙げることができる。
【0044】
[マグネットフィルタの清掃時期予測方法]
以下に、本実施形態の燃料電池システム200におけるマグネットフィルタ34に付着した鉄粒子Feを除去すべき時期(清掃時期)の予測方法について説明する。なおこの予測方法は、楕円柱磁性体34aと円柱磁性体棒34bとの間で電気的な導通が確立された後で、上記した制御装置70によって以下に示す手順で実行される。
【0045】
本実施形態においては、電流センサ72又は電圧センサ73の検出結果に基づいて、制御装置70によりマグネットフィルタ34の清掃時期の予測が行われる。具体的には、異なる時点において電流センサ72又は電圧センサ73の検出結果を得た後、得られた検出結果の変化量に基づいて、清掃時期の予測を行うことができる。さらに具体的には、以下の手順で清掃時期の予測を行ってもよい。すなわち、本実施形態の燃料電池システム200において、電流センサ72は、ある任意の時点Aにおけるマグネットフィルタ34を流れる電流値aを検出する。次に、電流センサ72は、この時点Aから所定時間だけ経過した時点A+Bにおけるマグネットフィルタ34を流れる電流値bを検出する。この際、得られる電流値bは、時間Bの間に堆積した鉄粒子Feの堆積増加量が反映される。制御装置70は、「電流値b-電流値a」の値を求めることにより、予め設定したマグネットフィルタ34を清掃すべき時期の電流値xが測定され得る未来の時点Xを予測する。なお、この未来の時点Xを報知装置36により燃料電池車FCVの乗員に対して報知してもよい。このようにマグネットフィルタ34の清掃時期の予測が行われ、それが報知されることにより、マグネットフィルタ34の性能が低下する前に清掃を行うことが可能となる。また、上記では電流値によりマグネットフィルタ34の清掃時期の予測を行ったが、これに限られるものではなく、例えば電圧値などの他の検出値を用いてマグネットフィルタ34の清掃時期の予測を行ってもよい。
【0046】
以上、上記実施形態では燃料電池システムは燃料電池車に搭載されるものとして説明したが、これに限られるものではない。例えば、本開示の燃料電池システムは家庭用燃料電池システム等の定置型システムにも適用可能である。
【0047】
本開示の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、これら実施形態や変形例に対して更なる修正を試みることは明らかであり、これらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0048】
10 燃料電池
21 空気供給路
31 空気吸入口
32 ケミカルフィルタ
33 コンプレッサ
34 マグネットフィルタ
36 報知装置
41 水素ガス供給路
44 水排出路
51 水素タンク
52 開閉弁
60 駆動用モータ
70 制御装置
100、200 燃料電池システム
FCV 燃料電池車
図1
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図8