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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】添加剤含有生体高分子組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/00 20060101AFI20241126BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20241126BHJP
   C08K 3/38 20060101ALI20241126BHJP
   C08L 1/00 20060101ALI20241126BHJP
   C08L 3/00 20060101ALI20241126BHJP
   C08L 29/04 20060101ALI20241126BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20241126BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20241126BHJP
【FI】
C08L67/00
C08K3/013 ZBP
C08K3/38
C08L1/00
C08L3/00
C08L29/04 B
C08L83/04
C08L101/16
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023549672
(86)(22)【出願日】2021-02-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-16
(86)【国際出願番号】 EP2021053891
(87)【国際公開番号】W WO2022174894
(87)【国際公開日】2022-08-25
【審査請求日】2023-10-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】オリバー、フールマン
(72)【発明者】
【氏名】マヌエラ、ランプレヒト
(72)【発明者】
【氏名】カール、ベーバー
(72)【発明者】
【氏名】アンゲリカ、バイセンバッハー
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-502957(JP,A)
【文献】特開2005-029792(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0032447(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリ乳酸(PLA)、
ポリブチレンサクシネート(PBS)、
ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、
熱可塑性デンプン(TPS)、
ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、
ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、
ポリブチレンセバケートテレフタレート(PBST)、
ポリヒドロキシ酪酸(PHB)、
ポリカプロラクトン(PCL)および
セロハン(CA)、ならびに
それらの混合物
からなる群から選択される生体高分子を65~99.4重量%、
(B)酢酸ビニル系ホモポリマー、コポリマーまたはターポリマーを0.5~30重量%、および
(C)(1)一般式
SiO(4-r/2)(I)
[一般式中、Rは同一であるかまたは異なり、置換または非置換の炭化水素基であり、rは0、1、2または3であり、ただし、rの平均値は1.9~2.1の範囲内である。]
の単位から構成される少なくとも1種のポリオルガノシロキサンを100重量部、
(2)強化用充填剤もしくは非強化用充填剤またはそれらの混合物を1~200重量部、
(3)ペレット材料を製造するためのホウ酸含有添加剤を0.01~20重量部、および
(4)任意に、加工助剤、可塑剤、顔料および安定剤の群から選択されるさらなる助剤
を含むオルガノポリシロキサンペレットであって、1~100mmの粒子径を有する前記オルガノポリシロキサンペレットを0.1~5重量%
を含む組成物であって、
前記成分(A)、(B)および(C)の重量%での含有量が、それぞれ前記組成物の総重量に基づくものである、前記組成物。
【請求項2】
用いられる前記酢酸ビニル系ホモポリマー、コポリマーまたはターポリマーが、
酢酸ビニルホモポリマー、
酢酸ビニルとエチレンとのコポリマー、
酢酸ビニルとラウリン酸ビニルとのコポリマー、
酢酸ビニルとエチレンとバーサチックエステルとのターポリマー、
酢酸ビニルとエチレンとアクリレートとのターポリマー、
酢酸ビニルとラウリン酸ビニルとアクリル酸ビニルとのターポリマー、および
それらの混合物
からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリオルガノシロキサン(1)が、末端基としてトリアルキルシロキシ基、トリメチルシロキシ基、ジメチルヒドロキシシロキシ基またはジメチルビニルシロキシ基を有するジオルガノポリシロキサンである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリオルガノシロキサン(1)が、25℃で1000000~100000000mm/s(DIN 1342-2、バージョン2003-11に従って測定)の粘度を有する、請求項1、2または3に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の組成物を製造する方法であって、
(A)ポリ乳酸(PLA)、
ポリブチレンサクシネート(PBS)、
ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、
熱可塑性デンプン(TPS)、
ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、
ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、
ポリブチレンセバケートテレフタレート(PBST)、
ポリヒドロキシ酪酸(PHB)、
ポリカプロラクトン(PCL)および
セロハン(CA)、ならびに
それらの混合物
からなる群から選択される生体高分子を65~99.4重量%、
(B)酢酸ビニル系ホモポリマー、コポリマーまたはターポリマーを0.5~30重量%、および
(C)(1)一般式
SiO(4-r/2)(I)
[一般式中、Rは同一であるかまたは異なり、置換または非置換の炭化水素基であり、rは0、1、2または3であり、ただし、rの平均値は1.9~2.1の範囲内である。]
の単位から構成される少なくとも1種のポリオルガノシロキサンを100重量部、
(2)強化用充填剤もしくは非強化用充填剤またはそれらの混合物を1~200重量部、
(3)ペレット材料を製造するためのホウ酸含有添加剤を0.01~20重量部、および
(4)任意に、加工助剤、可塑剤、顔料および安定剤の群から選択されるさらなる助剤
を含むオルガノポリシロキサンペレットであって、1~100mmの粒子径を有する前記オルガノポリシロキサンペレットを0.1~5重量%
混合する工程を含み、
前記成分(A)、(B)および(C)の重量%での含有量が、それぞれ前記組成物の総重量に基づくものである、前記方法。
【請求項6】
用いられる前記酢酸ビニル系ホモポリマー、コポリマーまたはターポリマーが、
酢酸ビニルホモポリマー、
酢酸ビニルとエチレンとのコポリマー、
酢酸ビニルとラウリン酸ビニルとのコポリマー、
酢酸ビニルとエチレンとバーサチックエステルとのターポリマー、
酢酸ビニルとエチレンとアクリレートとのターポリマー、
酢酸ビニルとラウリン酸ビニルとアクリル酸ビニルとのターポリマー、および
それらの混合物
からなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリオルガノシロキサン(1)が、末端基としてトリアルキルシロキシ基、トリメチルシロキシ基、ジメチルヒドロキシシロキシ基またはジメチルビニルシロキシ基を有するジオルガノポリシロキサンである、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリオルガノシロキサン(1)が、25℃で1000000~100000000mm/s(DIN 1342-2、バージョン2003-11に従って測定)の粘度を有する、請求項5、6または7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体高分子および添加剤を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
生体高分子は、全体的または部分的に再生可能な原料から作られたポリマー、かつ/または生分解性のポリマーである。これらは石油系プラスチックの代替を目的としている。一般に、バイオプラスチックの加工条件はより難しく、機械的特性が不十分であることが多い。
【0003】
US2017/313912A1には、フィルム用途のためのポリ乳酸(PLA)、ポリ酢酸ビニルおよび可塑剤の組成物が開示されている。
【0004】
US2005/0004296A1には、オルガノポリシロキサンペレット材料の製造方法、および熱可塑性プラスチックの添加剤としてのオルガノポリシロキサンペレット材料の使用が記載されている。
【0005】
その目的は、添加剤の添加によって生体高分子の表面特性、機構および加工を最適化または改善することにあった。
【0006】
この目的は本発明により達成される。
【0007】
本発明によれば、
(A)ポリ乳酸(PLA)、
ポリブチレンサクシネート(PBS)、
ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、
熱可塑性デンプン(TPS)、
ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、
ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、
ポリブチレンセバケートテレフタレート(PBST)、
ポリヒドロキシ酪酸(PHB)、
ポリカプロラクトン(PCL)、および
セロファン(CA)
からなる群から選択される生体高分子を65~99.4重量%、好ましくは85~90重量%、
(B)酢酸ビニル系ホモポリマー、コポリマーまたはターポリマーを0.5~30重量%、好ましくは10~15重量%、および
(C)(1)一般式
SiO(4-r/2)
[一般式中、Rは同一であるかまたは異なり、置換または非置換の炭化水素基であり、rは0、1、2または3であり、ただし、rの平均値は1.9~2.1の範囲内である。]
の単位から構成される少なくとも1種のポリオルガノシロキサンを100重量部、
(2)強化用充填剤もしくは非強化用充填剤またはそれらの混合物を1~200重量部、
(3)ペレット材料を製造するためのホウ酸含有添加剤を0.01~20重量部、および
(4)任意に、加工助剤、可塑剤、顔料および安定剤の群から選択されるさらなる助剤
を含むオルガノポリシロキサンペレットであて、1~100mmの粒子径を有する前記オルガノポリシロキサンペレットを0.1~5重量%、好ましくは1~2重量%
を含む組成物であって、
前記成分(A)、(B)および(C)の重量%での含有量が、それぞれ前記組成物の総重量に基づくものである、前記組成物が提供される。
【0008】
本発明によれば、前記組成物を製造する方法であって、
(A)ポリ乳酸(PLA)、
ポリブチレンサクシネート(PBS)、
ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、
熱可塑性デンプン(TPS)、
ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、
ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、
ポリブチレンセバケートテレフタレート(PBST)、
ポリヒドロキシ酪酸(PHB)、
ポリカプロラクトン(PCL)および
セロファン(CA)、
からなる群から選択される生体高分子を65~99.4重量%、好ましくは85~90重量%、
(B)酢酸ビニル系ホモポリマー、コポリマーまたはターポリマーを0.5~30重量%、好ましくは10~15重量%、および
(C)(5)一般式
SiO(4-r/2)
[一般式中、Rは同一であるかまたは異なり、置換または非置換の炭化水素基であり、rは0、1、2または3であり、ただし、rの平均値は1.9~2.1の範囲内である。]
の単位から構成される少なくとも1種のポリオルガノシロキサンを100重量部、
(6)強化用充填剤もしくは非強化用充填剤またはそれらの混合物を1~200重量部、
(7)ペレット材料を製造するためのホウ酸含有添加剤を0.01~20重量部、および
(8)任意に、加工助剤、可塑剤、顔料および安定剤の群から選択されるさらなる助剤
を含むオルガノポリシロキサンペレットであって、1~100mmの粒子径を有するオルガノポリシロキサンペレットを0.1~5重量%、好ましくは1~2重量%
混合する工程を含み、
前記成分(A)、(B)および(C)の重量%での含有量が、それぞれ前記組成物の総重量に基づくものである、前記方法も提供される。
【0009】
生体高分子(A)は市販されており、例えば、
Nature Works社およびTotal-Corbion社のポリ乳酸(PLA)、
MCPP-Europe社のポリブチレンサクシネート(PBS)、
MCPP-Europe社ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、
Rodenburg Biopolymers社の熱可塑性デンプン(TPS)、
Biomer社およびDanimer Scientific社のポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、
BASF社のポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、
BASF社のポリブチレンセバケートテレフタレート(PBST)、
Biomer社およびDanimer Scientific社のポリヒドロキシ酪酸(PHB)、
Dow-DuPont社およびPerstorp社のポリカプロラクトン(PCL)、
FKuR社のセロハン(CA)
が挙げられる。
【0010】
用いられる生体高分子は、好ましくはポリ乳酸(PLA)およびポリブチレンサクシネート(PBS)である。
【0011】
添加剤(B)として用いられる酢酸ビニル系ホモポリマー、コポリマーまたはターポリマーは、好ましくは、
酢酸ビニルホモポリマー、
酢酸ビニルとエチレンとのコポリマー、
酢酸ビニルとラウリン酸ビニルとのコポリマー、
酢酸ビニルとエチレンとバーサチックエステルとのターポリマー、
酢酸ビニルとエチレンとアクリレートとのターポリマー、
酢酸ビニルとラウリン酸ビニルとアクリル酸ビニルとのターポリマー、および
それらの混合物
からなる群から選択される。
【0012】
酢酸ビニル系ホモポリマー、コポリマーおよびターポリマーは市販されている。例えば、酢酸ビニルのホモポリマーおよびコポリマーは、Wacker Chemie AGからVinnex(登録商標)の商品名で市販されている。
【0013】
用いられる添加剤(B)は、好ましくは酢酸ビニルのホモポリマー、および酢酸ビニルとエチレンとのコポリマーである。
【0014】
添加剤(B)は、微粉末(好ましくは約100μmのd50を有する)、球状の丸剤(好ましくは最大直径2mmを有する)、砕けたフレーク(不規則な形状)、またはペレット(好ましくは最大約4mmの直径を有する)の形態であり得る。
【0015】
用いられる添加剤(C)は、US2005/0004296A1(参照により組み込まれる)、より詳細には段落[0009]~[0054]に記載されているようなオルガノポリシロキサンペレットである。
【0016】
炭化水素基Rの例は、アルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基またはtert-ペンチル基、n-ヘキシル基等のヘキシル基、n-ヘプチル基等のヘプチル基、n-オクチル基等のオクチル基、および2,2,4-トリメチルペンチル基等のイソオクチル基、n-ノニル基等のノニル基、n-デシル基等のデシル基、n-ドデシル基等のドデシル基、n-オクタデシル基等のオクタデシル基;シクロアルキル基、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基およびメチルシクロヘキシル基;アリール基、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基およびフェナントリル基;アルカリル基、例えば、o-トリル基、m-トリル基およびp-トリル基、キシリル基ならびにエチルフェニル基;アラルキル基、例えば、ベンジル基、α-フェニルエチル基およびβ-フェニルエチル基である。
【0017】
置換炭化水素基Rの例は、3-クロロプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピルおよびパーフルオロヘキシルエチル基等のハロゲン化アルキル基、およびp-クロロフェニル基およびp-クロロベンジル基等のハロゲン化アリール基である。
【0018】
基Rは、好ましくは水素原子基または1~8個の炭素原子を有する炭化水素基であり、より好ましくはメチル基である。
【0019】
基Rのさらなる例は、ビニル基、アリル基、メタリル基、1-プロペニル基、1-ブテニル基および1-ペンテニル基、5-ヘキセニル基、ブタジエニル基、ヘキサジエニル基、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキセニル基、エチニル基、プロパルギル基および1-プロピニル基である。
【0020】
本発明のさらに好ましい実施形態において、基Rは、2~8個の炭素原子を有するアルケニル基であり、より好ましくはビニル基である。
【0021】
ポリオルガノシロキサン(1)は、好ましくは高粘度物質である。好ましくは、ポリオルガノシロキサン(1)は、25℃で1000000~100000000mm/sの粘度(DIN1342-2、バージョン2003-11に従って測定)を有する。
【0022】
ポリオルガノシロキサン(1)は、末端基としてトリアルキルシロキシ基、トリメチルシロキシ基、ジメチルヒドロキシシロキシ基またはジメチルビニルシロキシ基を有するジオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0023】
ポリオルガノシロキサン(1)は、トリアルキルシロキシ基、好ましくはトリメチルシロキシ基によって末端キャップされており、70~100%、好ましくは90~100%の程度のジメチルシロキサン単位と0~30%、好ましくは0~10%の程度のアルケニルメチルシロキサン単位、好ましくはビニルメチルシロキサン単位との範囲で構成されるジオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0024】
1種のポリオルガノシロキサン(1)を用いることも可能であり、少なくとも異なる2種のポリオルガノシロキサン(1)の混合物を用いることも可能である。
【0025】
強化用充填剤(2)の例は、少なくとも50m/gのBET表面積を有するヒュームドシリカまたは沈降シリカである。
【0026】
上述したシリカ充填剤は、親水性の性質を有していてもよく、または既知の方法により疎水化されていてもよい。それらは好ましく用いられる。
【0027】
非強化用充填剤(2)の例は、石英粉末、珪藻土、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、ゼオライト、金属酸化物粉末、例えば、アルミニウム粉末、チタン粉末、鉄粉末または酸化亜鉛、ケイ酸バリウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、ポリテトラフルオロエチレン粉末である。ガラス繊維やプラスチック繊維等の繊維状成分を充填材として用いることも可能である。これらの充填剤のBET表面積は、好ましくは50m/g未満である。
【0028】
本発明のオルガノポリシロキサンペレットは、充填剤(2)を、ポリオルガノシロキサン(1)100重量部に対して、好ましくは1~200重量部、より好ましくは30~100重量部の量で含有する。
【0029】
ホウ酸含有添加剤(3)は、EP1028140A1に記載されており、その関連開示は本出願の一部を形成することが意図されており、完全に自由流動性のオルガノポリシロキサンペレット材料の製造を可能にする。添加剤(3)は、好ましくは、本質的にホウ酸、水、好ましくは脱イオン化されているかまたは高純度の水、および任意に脂肪酸塩からなり、ポリオルガノシロキサン(1)100重量部に対して、好ましくは0.01~20重量部、好ましくは0.1~4重量部、より好ましくは0.1~2重量部の量でポリオルガノシロキサン(1)に添加される。
【0030】
水はホウ酸の溶媒として機能し、好ましくはペレット化の前に除去される。
【0031】
ホウ酸添加剤(3)中に任意に存在する脂肪酸塩は、好ましくは金属Al、Ba、Ca、Cd、Co、Cr、Cu、Fe、Li、Mg、Mn、Ni、Pb、Sn、Sr、Znと、高級脂肪酸、樹脂酸およびナフテン酸との塩であり、例えば、ステアリン酸塩、パルミチン酸塩、オレイン酸塩、リノール酸塩、樹脂酸塩、ラウリン酸塩、オクタン酸塩、リシノール酸塩、12-ヒドロキシステアリン酸塩、ナフテン酸塩、トール酸塩等である。好ましくは12個超30個以下の炭素原子を有する脂肪酸であり、特に好ましくは16個超26個以下の炭素原子を有する脂肪酸であり、ステアリン酸塩、中でもステアリン酸カルシウムが特に好ましい。脂肪酸塩は、ホウ酸添加剤組成物中に、好ましくは0.1~10重量%、好ましくは0.2~6重量%、より好ましくは0.3~4重量%の量で存在する。
【0032】
オルガノポリシロキサンペレット材料中の成分(4)として用いられ得る可塑剤の例は、トリメチルシロキシ基またはヒドロキシル基を末端に有し、25℃での最大粘度が5000mm/sであるジポリオルガノシロキサン、またはジフェニルシランジオールである。ジポリオルガノシロキサンは、好ましくはジメチルシロキサン単位および/またはビニルメチルシロキサン単位から形成される。
【0033】
個々の成分(1)~(4)を、好ましくはニーダー内で、好ましくは100~250℃、好ましくは120~200℃の温度で混合した後、組成物を、多孔板および回転ナイフ等の通常のペレット化手段を用いてペレット化し、完全に自由流動性のペレット材料を得る。得られるオルガノポリシロキサンペレットの粒径は1~100μmであり、好ましくは2~50μmである。本発明のオルガノポリシロキサンペレットは、直径が好ましくは3~10mm、より好ましくは4~8mmであり、高さが好ましくは2~10mm、より好ましくは3~8mmである典型的な円柱状ペレット構造を有することが好ましい。
【0034】
オルガノポリシロキサンペレットの粒径は、用いられる多孔板の直径によって決定される。
【0035】
添加剤(C)として用いられるオルガノポリシロキサンペレットは、例えば、Wacker Chemie AGからGenioplast(登録商標)の商品名で市販されている。
【0036】
本発明の組成物は、成分(A)~(C)に加えて、充填剤、顔料、安定剤および酸化防止剤等のさらなる成分(D)を含んでもよい。
【0037】
用いられる充填剤は、強化用充填剤であってもよく、非強化用充填剤であってもよい。
【0038】
強化用充填剤、すなわち少なくとも50m/gのBET表面積を有する充填剤の例は、50m/g超のBET表面積を有するヒュームドシリカ、沈降シリカまたはシリコン-アルミニウム混合酸化物である。上述した充填剤は、例えばオルガノシラン、シラザンまたはシロキサンで処理することによって、またはヒドロキシル基をアルコキシ基にエーテル化することによって疎水化されていてもよい。
【0039】
非強化用充填剤、すなわち50m/g未満のBET表面積を有する充填剤の例は、炭酸カルシウム、粉末石英、クリストバル石、珪藻土、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、ベントナイト等のモンモリロナイト、ケイ酸アルミニウムナトリウム等の分子篩を含むゼオライト、酸化アルミニウムもしくは酸化亜鉛等の金属酸化物またはそれらの混合酸化物、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、硫酸バリウム、石膏、窒化ケイ素、炭化ケイ素および窒化ホウ素である。
【0040】
本発明の組成物は、好ましくは5~40重量%、好ましくは10~15重量%の量の充填剤を含む。
【0041】
本発明の組成物の配合に好適であるのは、好ましくは市販の共回転二軸押出機等の二軸押出機である。ここで、スクリューの長さ/直径の比(L/D比)は、好ましくは>30、より好ましくは>40である。
【0042】
添加剤(B)および(C)を生体高分子に配合する際の温度は、生体高分子の溶融に依存する。ここで、推奨される温度を超えないようにする必要がある。添加剤(B)および(C)を生体高分子に配合する際、170~220℃、好ましくは175~210℃の温度であることが好ましい。適切な加工装置で高温で配合した後、得られた化合物を従来の技術、例えば射出成形、ブロー成形、圧縮成形または真空成形によってさらに加工して、対応するプラスチックを製造することができる。
【0043】
添加剤(B)の添加は、生体高分子、特にポリ乳酸(PLA)との適合性が高いという利点がある。さらに、添加剤(B)により、ポリ乳酸(PLA)、その他のバイオポリエステルおよびデンプンと有機充填剤および無機充填剤とを組み合わせた高性能高分子ブレンドを製造することが可能になる。添加剤(B)とPLAとを組み合わせて用いることは、インフレーションフィルム押出(blown-film extrusion)および射出成形の用途に特に適している。
【0044】
添加剤(B)をポリブチレンサクシネート(PBS)に添加することにより、PBSの再結晶化速度を大幅に低下させ、その特性を一定に保つことができる。選択された添加剤(B)の割合と、ポリ乳酸(PLA)の添加とにより、柔軟性または剛性を必要に応じて調整することができる。物理的特性に悪影響を与えることなく、より高い割合の有機充填剤または無機充填剤を用いることも可能である。
【0045】
しかしながら、添加剤(B)と添加剤(C)とを組み合わせた場合のみ、大幅に優れた加工性を有する生体高分子を得ることができる。さらに、添加剤(B)と添加剤(C)とを組み合わせて用いて処理されたバイオプラスチックは、添加剤(B)のみまたは添加剤(C)のみを用いて処理されたバイオプラスチックと比較して、表面特性および機械的パラメーターが大幅に向上する。ここで、2種の添加剤(B)と(C)との組み合わせにより、相乗効果が生じる。
【0046】
本発明によるバイオプラスチックにおける2種の添加剤(B)および(C)の組み合わせの使用により、1種の添加剤(B)または(C)のみを用いて製造されるバイオプラスチックから作られる成形部品およびフィルムよりも優れた機械的特性および優れた表面特性を有する成形部品およびフィルムを製造することができる。
【実施例
【0047】
1.組成物1~18の製造
長さ/直径の比が47であり、スクリューの直径が25mmであるKraussMaffei Berstorff ZE-25二軸押出機を用いて、温度185℃、スクリュー速度250rpm、および処理量10kg/hで18種の化合物を混合した。これら18種の組成物は、以下の表1のリストに示される通りである。関連する化合物の配合条件は、表2のリストに示される通りである。このために、ペレット材料のすべての成分を混合して乾燥混合物を形成し、その乾燥混合物は重量測定法により測定して押出機の供給領域に入れた。同様に、すべての粉末成分を混合して乾燥配合物を形成し、この乾燥配合物を同様に重量測定法により測定して押出機の供給領域に入れた。得られた押出物をUWGでペレット化し、冷却した。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
加工過程において両方の添加剤を用いると、配合工程でのトルクおよび電力消費量が最大限に削減された。
【0051】
有効性は、添加剤(B)および(C)の両方が添加された生体高分子、すなわち10重量%または15重量%のVinnex(登録商標)および1重量%のGenioplast(登録商標)が添加された生体高分子(組成物3と6、および組成物10と13)と、
-添加剤を含まない純粋な生体高分子であって、充填剤を含まない生体高分子(PLA、組成物1)および充填剤を含む生体高分子(PBS+CaCO、組成物8)の両方とを比較することにより、また、
-生体高分子への添加剤(B)単独、例えば10重量%または15重量%のVinnex(登録商標)の添加(組成物2および5、および組成物9および12)
とを比較することによって決定および実施された。
【0052】
2.さらなる加工
2.1 射出成形プレート
表1の化合物を、Engel ES 600/125射出成形機を用いて、170~200℃、射出速度30~80mm/s、および動圧5.4barで加工して、滑らかな表面および8cm×12cmの寸法を有する射出成形プレートとした。
【0053】
2.2 フロースパイラル
深さ1.6mmのフロースパイラルも、同じシステムを用いて、160~190℃、射出速度50mm/s、および背圧2barで化合物から製造した。
【0054】
2.3 インフレーションフィルム
さらに、インフレーションフィルムを製造して試験片を得た。
【0055】
3.プレスプレート状の試験片の作製
各化合物を、180℃および10N/mmの圧力で10分間処理して、様々な厚さのプレスプレートにした。
【0056】
4.試験片の試験および評価
2.1で得られた射出成形プレートおよび3で得られたプレスプレートを、23℃、相対湿度50%の標準気候条件下で2日間保管した。
【0057】
4.1 COF:滑り特性
ISO8295-プラスチック-フィルム及びシート-摩擦係数の測定に準拠したCOF
COFは単位なしで表され、プレスプレートを用いて測定された。
【0058】
【表3】
【0059】
2種の添加剤(B)および(C)を組み合わせることにより、滑り摩擦抵抗を低減し、滑り特性を大幅に向上させることが可能となった。摩擦係数(CoF値)が低下した。添加剤(B)および(C)を添加することによる相乗効果が明確に認められた。
【0060】
4.2 フロースパイラル
フロースパイラルを2.2に従って作成した。
【0061】
【表4】
【0062】
フロースパイラルでは非常に良い結果が得られた。添加剤(B)Vinnex(登録商標)は流路を大幅に延長し、添加剤(C)Genioplast(登録商標)はさらなるブースト効果をもたらした。
【0063】
4.3 MFR:メルトマスフローレート
値は、DIN EN ISO1133に従ってペレット材料に対して測定された。
【0064】
【表5】
【0065】
メルトマスフローレートのプロファイルは、PBSでは添加剤(B)および(C)の両方を添加することによって改善された。
【0066】
4.4 透明性
透明性を、射出成形プレートを用いて目視で評価した。
【0067】
成形プレートの透明度は、Vinnex(登録商標)の影響を受け;Genioplast(登録商標)をさらに添加すると、実質的にさらなる濁りはなくなった。
【0068】
4.5 ボール落下
ボール落下試験は、DIN EN ISO6272-2規格に準拠している。
【0069】
【表6】
【0070】
【表7】
【0071】
実施したボール落下試験から、両方の添加剤を組み合わせて用いた場合に表面の損傷が少ないことが分かった。
【0072】
4.6 摩耗試験
摩耗試験を、DIN 53516-ゴムとエラストマーのテスト:摩耗の決定-に従って実施した。
【0073】
【表8】
【0074】
用いるVnnex(登録商標)添加剤(B)の種類に応じて、摩耗が低減されるか、より多くの摩耗が発生してさらに悪化した。添加剤(C)Genioplast(登録商標)を添加すると、摩耗が低減されるだけでなく、添加剤(B)の摩耗に対する悪影響も相殺された。添加剤(B)および(C)を添加することによる相乗効果が明確に見られた。
【0075】
4.7 エリクセンスクラッチ試験:耐スクラッチ性
エリクセンスクラッチ試験を、PV3974-耐スクラッチ性試験-に従って実施した。
【0076】
エリクセンスクラッチ硬度テスター(モデル430 P-I)を用いて、2.1で得られた平滑な射出成形プレートに10Nの力で1000mm/分の速度でスクラッチを付けた。
【0077】
スクラッチを、光学顕微鏡法を用いた共焦点顕微鏡法によって評価した。
【0078】
【表9】
【0079】
添加剤(B)Vinnex(登録商標)をPLAおよびPBSに添加すると、スクラッチの深さに悪影響を及ぼした。これは、添加剤(C)Genioplast(登録商標)を添加することによって相殺されるだけでなく、大幅に改善された。すなわち、耐スクラッチ性が向上した。添加剤(B)および(C)を添加することによる相乗効果が明確に見られた。この場合、Genioplast(登録商標)の2重量%の投与量が推奨される。
【0080】
4.8 引張試験
引張試験を、DIN EN ISO5271Bを用いて実施した。
【0081】
【表10】
【0082】
引張試験により、充填剤を含む系では破断点伸びが大幅に向上したことが分かった。ここでは、添加剤(B)および(C)、Vinnex(登録商標)およびGenioplast(登録商標)の組み合わせが効果的であることが証明された。
【0083】
4.9 引裂き伝播試験
引裂き伝播試験を、DIN 53515 バージョン01/1990に従って、また切開を伴うGravesに従って、角度試験片を用いてインフレーションフィルムに対して実施した。
【0084】
【表11】
【0085】
要約すると、本発明の生体高分子への添加剤(B)および(C)の添加により、以下の有利な結果が達成された。
【0086】
加工過程において両方の添加剤を用いると、配合工程でのトルクおよび電力消費量が最大限に削減された。
【0087】
滑り特性:
摩擦係数の値はCoF測定装置を用いて測定される。2種の添加剤を組み合わせることで、滑り特性を向上させることが可能となった。2種の添加剤(B)および(C)を組み合わせることで相乗効果がもたらされる。
【0088】
流路:
射出成形機を用いたさらなる加工において、添加剤(B)は流路を大幅に延長し、添加剤(C)はさらなるブースト効果をもたらすことが見出された。
【0089】
メルトマスフローレート(MFR)
メルトマスフローレートプロファイルは、PBSでは添加剤(B)および(C)を添加することによって改善された。
【0090】
透明度:
成形プレートの透明度は、添加剤(B)の影響を受けること見出された。添加剤(C)をさらに添加すると、実質的にさらなる濁りはなくなった。
【0091】
ボール落下テスト:
実施されたボール落下試験により、添加剤(B)および(C)の両方を組み合わせて用いた場合に表面の損傷が少なくなることが見出された。より具体的には、添加剤(C)の添加により、この効果が強化された。
【0092】
耐摩耗性:
耐摩耗性は摩擦輪試験によって測定される。添加剤(B)の種類に応じて、摩耗が低減されるか、または増大した。添加剤(C)を添加すると、この効果がほぼ完全に相殺され、摩耗が低減した。これは両方の種類のプラスチックに同様に当てはまる。2種の添加剤(B)および(C)を組み合わせることにより、相乗効果がもたらされた。
【0093】
スクラッチの深さ:
添加剤(B)をPLAおよびPBSに添加すると、スクラッチの深さに悪影響を及ぼした。これは、添加剤(C)を添加することによって相殺され得るだけでなく、特に添加剤(C)の用量を多くすると、顕著な改善が達成された。すなわち、耐スクラッチ性が改善された。2種の添加剤(B)および(C)を組み合わせることにより、相乗効果がもたらされた。
【0094】
引張試験:
引張試験により、充填剤を含む系では破断点伸びが大幅に向上したことが分かった。ここでは、添加剤(B)および(C)の組み合わせが効果的であることが証明された。
【0095】
本発明による添加剤(B)および(C)の添加は、相乗効果の結果として、耐スクラッチ性および耐摩耗性等の表面特性、機械的特性、およびバイオプラスチックの加工性を改善する。