(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】潤滑油供給装置、ディーゼルエンジン、およびディーゼルエンジンの起動方法
(51)【国際特許分類】
F01M 9/10 20060101AFI20241126BHJP
F01M 7/00 20060101ALI20241126BHJP
F02M 59/44 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
F01M9/10 L
F01M7/00 A
F02M59/44 J
(21)【出願番号】P 2024128747
(22)【出願日】2024-08-05
【審査請求日】2024-09-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】316015888
【氏名又は名称】三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】坂本 浩平
(72)【発明者】
【氏名】加藤 憲尚
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-027390(JP,A)
【文献】特開2008-038840(JP,A)
【文献】特開2009-250216(JP,A)
【文献】特開2000-087718(JP,A)
【文献】実開昭57-164206(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 7/00、 9/10
F02M 59/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼルエンジンの高圧燃料ポンプの摺動部に対して潤滑油を供給するための潤滑油供給装置であって、
前記潤滑油が貯留されている潤滑油貯留部と前記高圧燃料ポンプとを接続する潤滑油ラインと、
前記潤滑油貯留部から吸い上げた前記潤滑油を、前記潤滑油ラインを介して、前記高圧燃料ポンプの前記摺動部に供給するためのオイルポンプと、
前記潤滑油ラインにおける前記高圧燃料ポンプの上流側に設けられたオイル溜まりと、を備え、
前記オイル溜まりは、前記潤滑油が流入する流入口と、前記潤滑油が流出する流出口であって前記流入口よりも低い位置にある流出口と、を含み、
前記オイル溜まりの前記流出口は、前記潤滑油ラインの出口よりも低い位置にある、
潤滑油供給装置。
【請求項2】
前記オイル溜まりは、前記潤滑油を貯留可能な溜まり空間が形成されている箱部を含み、
前記箱部の最低部を前記箱部の高さ方向の長さに対する0%の位置とし、前記箱部の最上部を前記箱部の前記高さ方向の長さに対する100%の位置と定義すると、
前記流出口は、前記箱部の高さ方向の長さに対する0%以上5%以下の範囲内に位置する、
請求項1に記載の潤滑油供給装置。
【請求項3】
前記オイル溜まりが前記潤滑油を貯留可能な貯留容量は、前記潤滑油ラインのうち前記潤滑油貯留部から前記オイル溜まりまでの部分の容積の0.8倍以上5倍以下である、
請求項1または2に記載の潤滑油供給装置。
【請求項4】
前記潤滑油貯留部の接続位置を前記潤滑油ラインの長さに対する0%の位置とし、前記高圧燃料ポンプの接続位置を前記潤滑油ラインの長さに対する100%の位置と定義すると、
前記オイル溜まりは、前記潤滑油ラインの長さに対する50%以上100%未満の範囲内に位置する、
請求項1または2に記載の潤滑油供給装置。
【請求項5】
前記オイル溜まりは、前記潤滑油を貯留可能な溜まり空間が形成されている箱部を含み、
前記箱部は、前記流出口から前記流入口に向かうにつれて前記溜まり空間を水平方向に沿って切断した断面積を拡大させる拡大部を含む、
請求項1または2に記載の潤滑油供給装置。
【請求項6】
前記オイル溜まりよりも前記潤滑油ラインの前記高圧燃料ポンプ側とは反対側に設けられる調圧装置であって、前記潤滑油ラインから前記潤滑油の一部をリリーフするリリーフ経路が形成される調圧装置をさらに備え、
前記リリーフ経路の少なくとも一部は、前記オイル溜まりの前記流入口よりも上方に位置している、
請求項1または2に記載の潤滑油供給装置。
【請求項7】
前記オイル溜まりは、前記調圧装置と一体的に構成されている、
請求項6に記載の潤滑油供給装置。
【請求項8】
前記調圧装置は、内部に長手方向を有する調圧室が形成されているケーシングと、前記調圧室内を前記長手方向に移動することで前記リリーフ経路に対して開弁または閉弁するリリーフバルブと、前記リリーフバルブを閉弁方向に付勢するスプリングと、を含み、
前記オイル溜まりは、前記長手方向に沿って長く延びている、
請求項7に記載の潤滑油供給装置。
【請求項9】
請求項1または2に記載の潤滑油供給装置を備える、ディーゼルエンジン。
【請求項10】
請求項9に記載のディーゼルエンジンの起動方法であって、前記潤滑油を前記オイル溜まりに供給するように構成される電動ポンプをさらに備えるディーゼルエンジンの起動方法は、
前記ディーゼルエンジンの起動直前に前記電動ポンプによって前記潤滑油を前記オイル溜まりに供給する準備ステップと、
前記準備ステップの後、前記オイルポンプを駆動させて前記高圧燃料ポンプの前記摺動部に前記潤滑油を供給する潤滑ステップと、
前記潤滑ステップとの後、前記高圧燃料ポンプを駆動させる燃料圧送ステップと、
を備える、
ディーゼルエンジンの起動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ディーゼルエンジンの高圧燃料ポンプの摺動部に対して潤滑油を供給するための潤滑油供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、圧縮機のロータ軸とこのロータ軸を回転自在に支持する軸受との間に潤滑油を供給するように構成されている過給機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ディーゼルエンジンには、燃焼室に高圧燃料を噴射するため燃料を高圧にする高圧燃料ポンプが設けられている。高圧燃料ポンプの摺動部(例えば、カム軸とタペットローラとの間の接触部分)は、ディーゼルエンジンの起動直後から高い圧力を受けることになる。このため、ディーゼルエンジンの起動直後から高圧燃料ポンプの摺動部に潤滑油が供給されていないと、高圧燃料ポンプが損傷してしまう虞がある。しかしながら、特許文献1に記載の技術では、過給機の起動直後のガス圧が低いため、過給機の起動直後から速やかにロータ軸と軸受との間に潤滑油を供給する構成について開示も示唆もされていない。このため、特許文献1に記載の技術では、過給機が起動してから潤滑油がロータ軸と軸受との間に供給されるまでにはタイムラグがある。
【0005】
本開示は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、ディーゼルエンジンの起動直後であっても、高圧燃料ポンプの摺動部を潤滑させ、高圧燃料ポンプの損傷を抑制することができる潤滑油供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示に係る潤滑油供給装置は、ディーゼルエンジンの高圧燃料ポンプの摺動部に対して潤滑油を供給するための潤滑油供給装置であって、前記潤滑油が貯留されている潤滑油貯留部と前記高圧燃料ポンプとを接続する潤滑油ラインと、前記潤滑油貯留部から吸い上げた前記潤滑油を、前記潤滑油ラインを介して、前記高圧燃料ポンプの前記摺動部に供給するためのオイルポンプと、前記潤滑油ラインにおける前記高圧燃料ポンプの上流側に設けられたオイル溜まりと、を備え、前記オイル溜まりは、前記潤滑油が流入する流入口と、前記潤滑油が流出する流出口であって前記流入口よりも低い位置にある流出口と、を含み、前記オイル溜まりの前記流出口は、前記潤滑油ラインの出口よりも低い位置にある。
【発明の効果】
【0007】
本開示の潤滑油供給装置によれば、ディーゼルエンジンの起動直後であっても、高圧燃料ポンプの摺動部を潤滑させ、高圧燃料ポンプの損傷を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】高圧燃料ポンプの構成の一例を概略的に示す図である。
【
図2】一実施形態に係る潤滑油供給装置の構成を概略的に示す図である。
【
図3】一実施形態に係るオイル溜まりの構成を概略的に示す図である。
【
図4】一実施形態に係る調圧装置の構成の一例を概略的に示す図である。
【
図5】一実施形態に係る潤滑油供給装置の作用・効果を説明するための図である。
【
図6】一実施形態に係る潤滑油供給装置を備えるディーゼルエンジンの起動方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態による潤滑油供給装置、ディーゼルエンジン、およびディーゼルエンジンの起動方法について、図面に基づいて説明する。かかる実施の形態は、本開示の一態様を示すものであり、この開示を限定するものではなく、本開示の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0010】
本開示に係る潤滑油供給装置は、ディーゼルエンジンに設けられ、ディーゼルエンジンの高圧燃料ポンプの摺動部に対して潤滑油を供給する。高圧燃料ポンプは、高圧燃料をディーゼルエンジンのインジェクタに供給する燃料供給装置であって、例えば、メカニカルに構成されている列型ポンプやコモンレールに燃料を圧送するハイプレッシャポンプである。
【0011】
<高圧燃料ポンプ>
図1は、高圧燃料ポンプ100の構成の一例を概略的に示す図である。
図1に示すように、高圧燃料ポンプ100は、プランジャ102と、タペットローラ104と、カムシャフト106と、を含む。この高圧燃料ポンプ100は、内部にタペットローラ104およびカムシャフト106を収容するカム室101が形成されているハウジング103と、ハウジング103に取り付けられているシリンダ108と、をさらに含んでいる。
【0012】
プランジャ102は、シリンダ108内を軸方向に沿って往復動するようにシリンダ108内に収容されている。シリンダ108は、シリンダヘッド110によってカムシャフト106側とは反対側の開口が覆われている。高圧燃料ポンプ100には、プランジャ102、シリンダ108、およびシリンダヘッド110によって画定される加圧室107が形成されている。高圧燃料ポンプ100は、カムシャフト106の回転に応じてプランジャ102を往復動させるとともに、加圧室107に燃料Fを吸入し、吸入した燃料Fを圧縮して加圧室107から吐出する。
【0013】
タペットローラ104は、カムシャフト106に当接しており、カムシャフト106の回転を直線的な往復動に変換してプランジャ102に伝達する。
図1に例示する形態では、タペットローラ104は、タペット112によって保持されている。タペット112は、プランジャ102に連接されており、タペットローラ104を収容して保持するための溝112aが形成されている。タペット112は、シリンダ108よりもカムシャフト106側に配置されている。高圧燃料ポンプ100は、プランジャ102およびタペットローラ104をカムシャフト106側に付勢するためのポンプ用スプリング114をさらに含んでいる。ポンプ用スプリング114は、シリンダ108とタペット112との間に形成されるポンプ用スプリング室115に配置されており、一端がシリンダ108に接続され、他端がタペット112に接続されている。
【0014】
高圧燃料ポンプ100が駆動しているとき、カム室101には潤滑油供給装置1から供給された潤滑油Xが充填されている。タペットローラ104は、カムシャフト106との間に潤滑油Xによる油膜を形成した状態で転がって摺動する。同様に、タペットローラ104は、タペット112との間に潤滑油Xによる油膜を形成した状態で転がって摺動する。なお、本開示では、タペットローラ104は、カムシャフト106やタペット112に直接的に接触している状態だけではなく、カムシャフト106やタペット112との間に油膜を介在させる状態も含めて当接状態とする。
【0015】
以下、潤滑油供給装置1がカム室101に潤滑油Xを供給する場合を例にして説明する。つまり、高圧燃料ポンプ100の摺動部がカム室101である場合を例にして、潤滑油供給装置1の構成および作用・効果について説明する。
【0016】
<潤滑油供給装置>
(構成)
図2は、一実施形態に係る潤滑油供給装置1の構成を概略的に示す図である。
図2に示すように、潤滑油供給装置1は、潤滑油ライン2と、オイルポンプ4と、オイル溜まり6と、を含む。
図2に例示する形態では、潤滑油供給装置1は、ストレーナ8と、オイルクーラ10と、オイルフィルタ12と、調圧装置14と、をさらに含んでいる。
【0017】
潤滑油ライン2は、潤滑油Xが貯留されている潤滑油貯留部120と高圧燃料ポンプ100とを接続する。潤滑油貯留部120は、潤滑油Xを貯留するための貯留空間121が形成されており、例えば、ディーゼルエンジンEに搭載されているオイルパンである。潤滑油貯留部120は、上下方向D1において高圧燃料ポンプ100よりも下方に配置されている。潤滑油ライン2は、カム室101と貯留空間121とを連通している。潤滑油ライン2は、一端に貯留空間121に対して開口している入口2aが形成され、他端にカム室101に対して開口している出口2bが形成されている。
【0018】
オイルポンプ4は、潤滑油貯留部120の貯留空間121から吸い上げた潤滑油Xを、潤滑油ライン2を介して、高圧燃料ポンプ100のカム室101に供給する。オイルポンプ4は、ディーゼルエンジンEの駆動によって駆動されるように構成されている。つまり、オイルポンプ4は、ディーゼルエンジンEが停止すると停止する。ストレーナ8は、オイルポンプ4よりも潤滑油ライン2の潤滑油貯留部120側に設けられており、オイルポンプ4によって吸い上げられた潤滑油Xを濾過する。尚、本開示は、オイルポンプ4による潤滑油Xの供給先をカム室101(高圧燃料ポンプ100の摺動部)に限定するものではない。オイルポンプ4は、潤滑油ライン2から分岐する不図示の分岐ラインを介して、潤滑油Xを高圧燃料ポンプ100のカム室101以外(例えば、ディーゼルエンジンEのシリンダとピストンとの間)に供給してもよい。
【0019】
オイルクーラ10、オイルフィルタ12、および調圧装置14のそれぞれは、オイルポンプ4よりも潤滑油ライン2の高圧燃料ポンプ100側に設けられている。オイルクーラ10は、オイルポンプ4から吐出される潤滑油Xを冷却する。オイルフィルタ12は、ストレーナ8よりも小さい異物を補足可能な目開きを有するメッシュを含んでおり、オイルクーラ10によって冷却された潤滑油Xを濾過する。調圧装置14は、オイル溜まり6よりも潤滑油ライン2の潤滑油貯留部120側(高圧燃料ポンプ100側とは反対側)に設けられる。調圧装置14は、潤滑油ライン2においてオイルフィルタ12とオイル溜まり6との間に位置している。調圧装置14は、オイルフィルタ12を通過した潤滑油Xの圧力を所定の圧力に調整する。調圧装置14の具体的な構成は後述する。
【0020】
オイル溜まり6は、潤滑油ライン2における高圧燃料ポンプ100の上流側に設けられている。オイル溜まり6には、潤滑油ライン2から潤滑油Xが流入する流入口6aおよび潤滑油ライン2に潤滑油Xが流出する流出口6bが形成されている。流出口6bは、上下方向D1において流入口6aよりも低い位置にある。流出口6bは、上下方向D1において潤滑油ライン2の出口2bよりも低い位置にある。一実施形態では、潤滑油ライン2のうち潤滑油貯留部120の接続位置に相当する入口2aを潤滑油ライン2の長さに対する0%の位置とし、入口2aから潤滑油ライン2のうち高圧燃料ポンプ100の接続位置に相当する出口2bに向かうにつれて増加し、出口2bを潤滑油ライン2の長さに対する100%の位置と定義する。オイル溜まり6は、潤滑油ライン2の長さに対する50%以上100%未満の範囲内に位置する。より具体的には、オイル溜まり6は、潤滑油ライン2の長さに対する80%以上100%未満の範囲内に位置する。つまり、オイル溜まり6は、高圧燃料ポンプ100の直前に配置されている。
【0021】
一実施形態では、オイル溜まり6が潤滑油Xを貯留可能な貯留容量Vは、潤滑油ライン2のうち潤滑油貯留部120からオイル溜まり6までの部分の容積の0.8倍以上5倍以下である。より具体的には、貯留容量Vは、潤滑油ライン2の入口2aからオイル溜まり6の流入口6aまでの潤滑油ライン2の内部空間の体積VLの0.8倍以上5倍以下である。
【0022】
図2に例示する形態では、ディーゼルエンジンEには、潤滑油Xをオイル溜まり6に供給するように構成される電動ポンプ130(いわゆるプライミングポンプ)が設けられている。電動ポンプ130は、不図示の補機バッテリから供給される電気によって駆動するように構成されており、ディーゼルエンジンEの駆動と別個独立して駆動可能である。
【0023】
図3は、一実施形態に係るオイル溜まり6の構成を概略的に示す図である。
図3に示すように、オイル溜まり6は、潤滑油Xを貯留可能な溜まり空間17が形成されている箱部16を含む。箱部16には、溜まり空間17に対して開口している流入口6aおよび流出口6bが形成されている。上述したように、流出口6bは、上下方向D1において流入口6aよりも低い位置にある。上述したように、流出口6bは、上下方向D1において潤滑油ライン2の出口2bよりも低い位置にある。幾つかの実施形態では、流入口6aは、上下方向D1において潤滑油ライン2の出口2bよりも低い位置にある。
【0024】
図3に例示する形態では、潤滑油ライン2のうち流出口6bから出口2bまでの部分である出口部20は、流出口6bから高圧燃料ポンプ100に近づくように水平方向に沿って延びる第1の水平延在部21と、出口2bからオイル溜まりに近づくように水平方向に沿って延びる第2の水平延在部22と、第1の水平延在部21と第2の水平延在部22とを接続するとともに上下方向D1に沿って延びる上下延在部23と、を含む。第1の水平延在部21および第2の水平延在部22のそれぞれは、水平方向に対して傾斜していてもよい。
【0025】
図3に例示する形態では、箱部16の下端を含む最低部24を箱部16の高さ方向D2(上下方向D1)の長さに対する0%の位置とし、箱部16の上端を含む最上部26に向かうにつれて増加し、箱部16の最上部26を箱部16の高さ方向の長さに対する100%の位置と定義する。流出口6bは、箱部16の高さ方向の長さに対する0%以上5%以下の範囲内に位置する。流入口6aは、箱部16の高さ方向の長さに対する90%以上100%以下の範囲内に位置する。尚、箱部16の高さ方向D2と上下方向D1は同じ方向である。
【0026】
図3に例示する形態では、箱部16は、流出口6bから流入口6aに向かうにつれて溜まり空間17を水平方向に沿って切断した断面積Sを拡大させる拡大部28を含む。拡大部28は、箱部16のうち溜まり空間17を水平方向から覆う側部30の一部である。拡大部28は、下方から上方に向かうにつれて溜まり空間17を拡径している。拡大部28は、上下方向D1において下端が流出口6bより下方に位置し、上端が上下方向D1において流入口6aと流出口6bとの間に位置している。尚、幾つかの実施形態では、拡大部28は、上下方向D1において下端が流出口6bと同じ位置である。幾つかの実施形態では、拡大部28は、上端が上下方向D1において流入口6aより上方に位置する、または流入口6aと同じ位置である。
【0027】
図4を参照して、調圧装置14について説明する。
図4は、一実施形態に係る調圧装置14の構成の一例を概略的に示す図である。
図4に示すように、調圧装置14は、ケーシング40と、リリーフバルブ42と、スプリング44と、キャップ46と、を含んでいる。
【0028】
ケーシング40は、内部にリリーフ経路41、潤滑油ライン2の一部43、分岐流路45、調圧室47、およびオイル溜まり6の溜まり空間17が形成されている。リリーフ経路41は、潤滑油ライン2から潤滑油Xの一部をリリーフする。リリーフ経路41の少なくとも一部は、オイル溜まり6の流入口6aよりも上方に位置している。リリーフ経路41は、入口41aが調圧室47に対して開口している。リリーフ経路41は、入口41aから上方に向かって延びている。
図4に例示する形態では、ケーシング40には、ケーシング40の表面を開口するリリーフ経路41の出口41bが形成されている。リリーフ経路41の出口41bは、上方に開口している。
【0029】
リリーフ経路41を流通する潤滑油Xは、例えば、潤滑油貯留部120(オイルパン)に戻される。潤滑油供給装置1は、リリーフ経路41の出口41bと貯留空間121とを連通する戻しライン50をさらに含んでいる。この戻しライン50は、リリーフ経路41の出口41bから上方に延びてから下方に延びる折り返し部52を含んでいる。
【0030】
図4に例示する実施形態では、溜まり空間17がケーシング40内に形成されている。つまり、オイル溜まり6は、調圧装置14と一体的に構成されている。そして、潤滑油ライン2の一部43は、オイルフィルタ12を通過した潤滑油Xをオイル溜まり6に案内するようにケーシング40内に形成されている。分岐流路45は、潤滑油ライン2の一部43から分岐しており、潤滑油ライン2の一部43と調圧室47とを連通している。
【0031】
調圧室47は、上下方向D1に対して傾斜する長手方向D3を有している。調圧室47の一端は、ケーシング40内に位置しており、閉塞している。調圧室47の他端は、ケーシング40の表面に位置しており、開口している。調圧室47は、内部にリリーフバルブ42およびスプリング44のそれぞれが配置されている。調圧室47の開口は、キャップ46によって閉塞されている。
図4に例示する形態では、オイル溜まり6の溜まり空間17は、調圧室47の長手方向D3に沿って長く延びている。
【0032】
リリーフバルブ42は、調圧室47内を長手方向D3に沿って移動することでリリーフ経路41に対して開弁または閉弁する。リリーフバルブ42は、調圧室47を潤滑油Xが流入される流入空間49とスプリング44が配置されるスプリング室51とに仕切っている。流入空間49は、分岐流路45に対して開口しており、分岐流路45を介して潤滑油Xが流入される。スプリング室51は、リリーフバルブ42が長手方向D3においてキャップ46と離間することで形成されている。スプリング44は、一端がリリーフバルブ42に接続され、他端がキャップ46に接続されている。スプリング44は、リリーフバルブ42を閉弁方向に付勢する。つまり、スプリング44は、リリーフバルブ42を長手方向D3の一方側に付勢する。
【0033】
(作用・効果)
一実施形態に係る潤滑油供給装置1の作用・効果について説明する。
図5は、一実施形態に係る潤滑油供給装置1の作用・効果を説明するための図であって、経過時間を横軸とし、カム室101内の潤滑油Xの量を縦軸とするグラフである。実線L1が一実施形態に係る潤滑油供給装置1からカム室101に供給された潤滑油Xの量であり、点線L2が従来の潤滑油供給装置からカム室101に供給された潤滑油の量である。一点鎖線L3は、オイルポンプ4の回転数である。タイミングT0は、オイルポンプ4の駆動が開始するタイミング(ディーゼルエンジンEの回転によってオイルポンプ4の回転が開始するタイミング)である。タイミングT1は、オイルポンプ4が吸い込んだ流体(主に空気)の吐出が開始するタイミングである。尚、オイルポンプ4の回転数は、タイミングT0、タイミングT1、およびタイミングT2のうちタイミングT0が最も小さく、タイミングT2が最も大きい。
【0034】
高圧燃料ポンプ100が潤滑油貯留部120(オイルパン)よりも上方に位置している場合、ディーゼルエンジンEが停止すると、高圧燃料ポンプ100内の潤滑油Xと潤滑油貯留部120内の潤滑油Xとのヘッド圧の差によって潤滑油Xが潤滑油ライン2を通って潤滑油貯留部120に戻ってしまう虞がある。そして、潤滑油ライン2に潤滑油Xが充填されていない状態でディーゼルエンジンEを起動すると、従来からの潤滑油供給装置では、
図5に示すように、オイルポンプ4の空気の吐出が開始するタイミングT1から実際にカム室101に潤滑油Xが供給されるタイミングT2までには空気がカム室101に供給される空気圧送期間ΔTが生じる。このため、タペットローラ104、カムシャフト106、およびタペット112のそれぞれは無潤滑またはほとんど潤滑されていない状態で摺動することになり、損傷してしまう虞がある。
【0035】
一実施形態によれば、潤滑油ライン2における高圧燃料ポンプ100の上流側にオイル溜まり6が設けられている。そして、オイル溜まり6の流出口6bは流入口6aよりも低い位置にあり、且つ、潤滑油ライン2の出口2bよりも低い位置にある。このため、ディーゼルエンジンEが停止した際にオイル溜まり6に潤滑油Xを貯留させておくことができる。そして、
図5に示すように、ディーゼルエンジンEを起動してからタイミングT1になると、オイルポンプ4はオイル溜まり6に貯留されている潤滑油Xをカム室101に速やかに供給することができる。このため、ディーゼルエンジンEの起動直後であっても、タペットローラ104、カムシャフト106、およびタペット112のそれぞれは表面に油膜が形成された状態で摺動するので、タペットローラ104、カムシャフト106、およびタペット112の損傷を抑制することができる。本開示に係る潤滑油供給装置1は、タペットローラ104やカムシャフト106のようなディーゼルエンジンEの起動直後に高い負荷を受ける高負荷部品の損傷を抑制するのに特に有利である。さらに、保護対象を高負荷部品に限定することで、オイル溜まり6を小さくし、潤滑油供給装置1のコンパクト化を図ることができる。
【0036】
一実施形態によれば、流出口6bが箱部16の高さ方向D2の長さに対する0%以上5%以下の範囲内に位置しているので、ディーゼルエンジンEを起動してから速やかにオイル溜まり6に貯留されている潤滑油Xの大部分または全部をカム室101に供給することができる。このため、ディーゼルエンジンEの起動直後において、タペットローラ104、カムシャフト106、およびタペット112のそれぞれの表面に油膜が非形成である状態を回避できる。
【0037】
一実施形態によれば、貯留容量Vを潤滑油ライン2の内部空間の体積VLの0.8倍以上とすることで、オイル溜まり6からカム室101に供給された潤滑油Xが消費される前に、潤滑油貯留部120に貯留されている潤滑油Xをカム室101に供給することができる。このため、カム室101への潤滑油Xの供給不足を抑制し、タペットローラ104、カムシャフト106、およびタペット112の損傷を抑制することができる。また、一実施形態によれば、貯留容量Vを潤滑油ライン2の内部空間の体積VLの5倍以下とすることで、必要以上なオイル溜まり6の巨大化を抑制することができる。
【0038】
一実施形態によれば、オイル溜まり6が潤滑油ライン2の長さに対する80%以上100%未満の範囲内に位置するので、つまりオイル溜まり6が高圧燃料ポンプ100のすぐ近くに配置される。このため、
図5に示すように、ディーゼルエンジンEを起動してからタイミングT1になると、オイルポンプ4はオイル溜まり6に貯留されている潤滑油Xをカム室101に速やかに供給することができる。また、オイル溜まり6が高圧燃料ポンプ100のすぐ近くに配置されることで、オイル溜まり6をコンパクトにすることができる。
【0039】
一実施形態によれば、オイル溜まり6が拡大部28を含む箱部16を含んでいるので、オイル溜まり6に貯留されている潤滑油Xの受圧面積を大きくして、この潤滑油Xを高圧燃料ポンプ100に圧送するためにオイルポンプ4が発生させる圧力を小さくすることができる。
【0040】
一実施形態によれば、リリーフ経路41の少なくとも一部がオイル溜まり6の流入口6aよりも上方に位置しているので、ディーゼルエンジンEが停止した際に、オイル溜まり6に貯留されている潤滑油Xがリリーフ経路41を介して潤滑油貯留部120(オイルパン)に流出することを抑制できる。
【0041】
一実施形態によれば、オイル溜まり6が調圧装置14と一体的に構成されているので、オイル溜まり6と調圧装置14とを一体化させたコンパクトな潤滑油供給装置1を提供することができる。
【0042】
一実施形態によれば、オイル溜まり6の溜まり空間17が調圧室47の長手方向D3に沿って長く延びているので、調圧装置14をコンパクト化することができる。
【0043】
<ディーゼルエンジンの起動方法>
図6は、一実施形態に係る潤滑油供給装置1を備えるディーゼルエンジンEの起動方法のフローチャートである。このディーゼルエンジンEは、上述した電動ポンプ130も備えている。
図6に示すように、ディーゼルエンジンEの起動方法は、準備ステップS1と、潤滑ステップS2と、燃料圧送ステップS3と、を含む。
【0044】
準備ステップS1は、例えば、ディーゼルエンジンEを起動させる起動ボタンが押下されると、電動ポンプ130を駆動させて潤滑油Xをオイル溜まり6に供給する。潤滑ステップS2は、準備ステップS1によって潤滑油Xがオイル溜まり6に供給された後に、オイルポンプ4を駆動させてカム室101に潤滑油Xを供給する。燃料圧送ステップS3では、潤滑ステップS2によって潤滑油Xがカム室101に供給された後に、高圧燃料ポンプ100を駆動させてインジェクタに燃料Fを圧送する。そして、インジェクタが燃料Fを燃焼室に噴射し、燃焼室内で燃料Fを燃焼させることで、ディーゼルエンジンEが起動する。
【0045】
初めてディーゼルエンジンEを起動させる場合やディーゼルエンジンEを停止させてから長時間が経過した場合には、オイル溜まり6に潤滑油Xが貯留されていないまたは貯留量が十分ではない可能性がある。
図6に例示する方法によれば、オイル溜まり6に潤滑油Xが貯留されていない状態であったとしても、タイミングT0(オイルポンプ4の駆動が開始するタイミング)からタイミングT1(オイルポンプ4が吸い込んだ空気の吐出が開始するタイミング)までの間に、電動ポンプ130によって潤滑油Xがオイル溜まり6に供給される。そして、オイルポンプ4は、電動ポンプ130によって予めオイル溜まり6に貯留されている潤滑油Xをカム室101に速やかに供給することができる。尚、幾つかの実施形態では、オイル溜まり6に潤滑油Xが十分に貯留されている場合には、準備ステップS1はスキップされる。
【0046】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0047】
[1]本開示に係る潤滑油供給装置(1)は、ディーゼルエンジン(E)の高圧燃料ポンプ(100)の摺動部(101)に対して潤滑油(X)を供給するための潤滑油供給装置であって、
前記潤滑油が貯留されている潤滑油貯留部(120)と前記高圧燃料ポンプとを接続する潤滑油ライン(2)と、
前記潤滑油貯留部から吸い上げた前記潤滑油を、前記潤滑油ラインを介して、前記高圧燃料ポンプの前記摺動部に供給するためのオイルポンプ(4)と、
前記潤滑油ラインにおける前記高圧燃料ポンプの上流側に設けられたオイル溜まり(6)と、を備え、
前記オイル溜まりは、前記潤滑油が流入する流入(6a)口と、前記潤滑油が流出する流出口であって前記流入口よりも低い位置にある流出口(6b)と、を含み、
前記オイル溜まりの前記流出口は、前記潤滑油ラインの出口(2b)よりも低い位置にある。
【0048】
高圧燃料ポンプが潤滑油貯留部(オイルパン)よりも上方に位置している場合、ディーゼルエンジンが停止すると、高圧燃料ポンプと潤滑油貯留部とのヘッド圧の差によって潤滑油が潤滑油ラインを通って潤滑油貯留部にまで戻ってしまう虞がある。そして、潤滑油ラインに潤滑油が充填されていない状態でディーゼルエンジンを起動すると、高圧燃料ポンプの摺動部は無潤滑またはほとんど潤滑されていない状態で摺動することになり、高圧燃料ポンプが損傷してしまう虞がある。上記[1]に記載の構成によれば、潤滑油ラインにおける高圧燃料ポンプの上流側にオイル溜まりが設けられている。そして、オイル溜まりの流出口は流入口よりも低い位置にあり、且つ、潤滑油ラインの出口よりも低い位置にある。このため、ディーゼルエンジンが停止した際にオイル溜まりに潤滑油を貯留させておき、ディーゼルエンジンを起動してから、オイル溜まりに貯留されている潤滑油を高圧燃料ポンプの摺動部に速やかに供給することができる。よって、ディーゼルエンジンの起動直後であっても、高圧燃料ポンプの摺動部を潤滑させ、高圧燃料ポンプの損傷を抑制することができる。尚、ディーゼルエンジンおよびディーゼルエンジンの周辺機器のレイアウトの都合上、高圧燃料ポンプを潤滑油貯留部に対してヘッド圧の差が生じないように設置することは難しい。
【0049】
[2]幾つかの実施形態では、上記[1]に記載の構成において、
前記オイル溜まりは、前記潤滑油を貯留可能な溜まり空間(17)が形成されている箱部(16)を含み、
前記箱部の最低部(24)を前記箱部の高さ方向(D2)の長さに対する0%の位置とし、前記箱部の最上部(26)を前記箱部の前記高さ方向の長さに対する100%の位置と定義すると、
前記流出口は、前記箱部の高さ方向の長さに対する0%以上5%以下の範囲内に位置する。
【0050】
上記[2]に記載の構成によれば、ディーゼルエンジンを起動してから速やかにオイル溜まりに貯留されている潤滑油の大部分または全部を高圧燃料ポンプの摺動部に供給することができる。このため、ディーゼルエンジンの直後において、高圧燃料ポンプの摺動部が潤滑されていない状態を回避できる。
【0051】
[3]幾つかの実施形態では、上記[1]または[2]に記載の構成において、
前記オイル溜まりが前記潤滑油を貯留可能な貯留容量(V)は、前記潤滑油ラインのうち前記潤滑油貯留部から前記オイル溜まりまでの部分の容積の0.8倍以上5倍以下である。
【0052】
上記[3]に記載の構成によれば、貯留容量を潤滑油ラインのうち潤滑油貯留部からオイル溜まりまでの部分の容積の0.8倍以上とすることで、オイル溜まりから高圧燃料ポンプの摺動部に供給された潤滑油が消費される前に、潤滑油貯留部に貯留されている潤滑油を高圧燃料ポンプの摺動部に供給することができる。このため、高圧燃料ポンプの摺動部への潤滑油の供給不足を抑制し、高圧燃料ポンプの損傷を抑制することができる。また、貯留容量を潤滑油ラインのうち潤滑油貯留部からオイル溜まりまでの部分の容積の5倍以下とすることで、必要以上なオイル溜まりの巨大化を抑制することができる。
【0053】
[4]幾つかの実施形態では、上記[1]から[3]の何れか1つに記載の構成において、
前記潤滑油貯留部の接続位置を前記潤滑油ラインの長さに対する0%の位置とし、前記高圧燃料ポンプの接続位置を前記潤滑油ラインの長さに対する100%の位置と定義すると、
前記オイル溜まりは、前記潤滑油ラインの長さに対する50%以上100%未満の範囲内に位置する。
【0054】
上記[4]に記載の構成によれば、オイル溜まりが高圧燃料ポンプの近くに配置されるので、ディーゼルエンジンを起動してから速やかに高圧燃料ポンプの摺動部に潤滑油を供給することができる。
【0055】
[5]幾つかの実施形態では、上記[1]から[4]の何れか1つに記載の構成において、
前記オイル溜まりは、前記潤滑油を貯留可能な溜まり空間(17)が形成されている箱部(16)を含み、
前記箱部は、前記流出口から前記流入口に向かうにつれて前記溜まり空間を水平方向に沿って切断した断面積を拡大させる拡大部(28)を含む。
【0056】
上記[5]に記載の構成によれば、オイル溜まりに貯留されている潤滑油の受圧面積を大きくして、この潤滑油を高圧燃料ポンプに圧送するためにオイルポンプが発生させる圧力を小さくすることができる。
【0057】
[6]幾つかの実施形態では、上記[1]から[5]の何れか1つに記載の構成において、
前記オイル溜まりよりも前記潤滑油ラインの前記高圧燃料ポンプ側とは反対側に設けれる調圧装置であって、前記潤滑油ラインから前記潤滑油の一部をリリーフするリリーフ経路(41)が形成される調圧装置(14)をさらに備え、
前記リリーフ経路の少なくとも一部は、前記オイル溜まりの前記流入口よりも上方に位置している。
【0058】
上記[6]に記載の構成によれば、ディーゼルエンジンが停止した際に、オイル溜まりに貯留されている潤滑油がリリーフ経路を介して流出することを抑制できる。
【0059】
[7]幾つかの実施形態では、上記[6]に記載の構成において、
前記オイル溜まりは、前記調圧装置と一体的に構成されている。
【0060】
上記[7]に記載の構成によれば、オイル溜まりと調圧装置とを一体化させたコンパクトな潤滑油供給装置を提供することができる。
【0061】
[8]幾つかの実施形態では、上記[7]に記載の構成において、
前記調圧装置は、内部に長手方向を有する調圧室(47)が形成されているケーシング(40)と、前記調圧室内を前記長手方向に移動することで前記リリーフ経路に対して開弁または閉弁するリリーフバルブ(42)と、前記リリーフバルブを閉弁方向に付勢するスプリング(44)と、を含み、
前記オイル溜まりは、前記長手方向に沿って長く延びている。
【0062】
上記[8]に記載の構成によれば、調圧装置をコンパクト化することができる。
【0063】
[9]幾つかの実施形態では、ディーゼルエンジンは、上記[1]から[8]の何れか1つに記載の潤滑油供給装置を備える。
【0064】
上記[9]に記載の構成によれば、起動直後から高圧燃料ポンプの摺動部に潤滑油を供給することで高圧燃料ポンプの損傷を抑制することができるディーゼルエンジンを提供することができる。
【0065】
[10]幾つかの実施形態では、上記[9]に記載のディーゼルエンジンの起動方法であって、前記潤滑油を前記オイル溜まりに供給するように構成される電動ポンプ(130)をさらに備えるディーゼルエンジンの起動方法は、
前記電動ポンプによって前記潤滑油を前記オイル溜まりに供給する準備ステップ(S1)と、
前記準備ステップの後、前記オイルポンプを駆動させて前記高圧燃料ポンプの前記摺動部に前記潤滑油を供給する潤滑ステップ(S2)と、
前記潤滑ステップとの後、前記高圧燃料ポンプを駆動させる燃料圧送ステップ(S3)と、
を備える。
【0066】
初めてディーゼルエンジンを起動させる場合やディーゼルエンジンを停止させてから長時間が経過した場合には、オイル溜まりに潤滑油が貯留されていないまたは貯留量が十分ではない可能性がある。上記[10]に記載の方法によれば、オイル溜まりに潤滑油が貯留されていない状態であったとしても、電動ポンプによって潤滑油がオイル溜まりに予め供給され、オイルポンプは、オイル溜まりに貯留されている潤滑油を高圧燃料ポンプの摺動部に速やかに供給することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 潤滑油供給装置
2 潤滑油ライン
2a 潤滑油ラインの入口
2b 潤滑油ラインの出口
4 オイルポンプ
6 オイル溜まり
6a オイル溜まりの流入口
6b オイル溜まりの流出口
8 ストレーナ
10 オイルクーラ
12 オイルフィルタ
14 調圧装置
16 箱部
17 溜まり空間
20 潤滑油ラインの出口部
21 第1の水平延在部
22 第2の水平延在部
23 上下延在部
24 最低部
26 最上部
28 拡大部
30 側部
40 ケーシング
41 リリーフ経路
41a 入口
41b 出口
42 リリーフバルブ
44 スプリング
45 分岐流路
46 キャップ
47 調圧室
49 流入空間
50 戻しライン
51 スプリング室
52 折り返し部
100 高圧燃料ポンプ
101 カム室
102 プランジャ
103 ハウジング
104 タペットローラ
106 カムシャフト
107 加圧室
108 シリンダ
110 シリンダヘッド
112 タペット
112a タペットの溝
114 ポンプ用スプリング
115 ポンプ用スプリング室
120 潤滑油貯留部(オイルパン)
121 貯留空間
130 電動ポンプ
D1 上下方向
D2 箱部の高さ方向
D3 調圧室の長手方向
F 燃料
L1 実線(一実施形態に係る潤滑油供給装置)
L2 点線(従来の潤滑油供給装置)
L3 一点鎖線(オイルポンプの回転数)
S 断面積
S1 準備ステップ
S2 潤滑ステップ
S3 燃料圧送ステップ
T0,T1,T2 タイミング
V 貯留容量
VL 体積
X 潤滑油
【要約】
【課題】ディーゼルエンジンの起動直後であっても、高圧燃料ポンプの摺動部を潤滑させ、高圧燃料ポンプの損傷を抑制することができる。
【解決手段】ディーゼルエンジンの高圧燃料ポンプの摺動部に対して潤滑油を供給するための潤滑油供給装置は、潤滑油が貯留されている潤滑油貯留部と前記高圧燃料ポンプとを接続する潤滑油ラインと、潤滑油貯留部から吸い上げた潤滑油を、潤滑油ラインを介して、高圧燃料ポンプの摺動部に供給するためのオイルポンプと、潤滑油ラインにおける高圧燃料ポンプの上流側に設けられたオイル溜まりと、を備え、オイル溜まりは、潤滑油が流入する流入口と、潤滑油が流出する流出口であって流入口よりも低い位置にある流出口と、を含み、オイル溜まりの流出口は、潤滑油ラインの出口よりも低い位置にある。
【選択図】
図2