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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-25
(45)【発行日】2024-12-03
(54)【発明の名称】電動パワーステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 5/04 20060101AFI20241126BHJP
【FI】
B62D5/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024559414
(86)(22)【出願日】2024-06-24
(86)【国際出願番号】 JP2024022858
【審査請求日】2024-10-07
(31)【優先権主張番号】P 2023121699
(32)【優先日】2023-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前原 秀雄
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-233757(JP,A)
【文献】特開2016-64806(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0168183(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動パワーステアリング装置であって、
操舵トルクが入力される入力シャフトと、
トーションバーを介して前記入力シャフトと連結される出力シャフトと、
前記入力シャフトと前記出力シャフトに亘って取り付けられ、前記操舵トルクを検出するトルクセンサと、
円筒部を有し前記トルクセンサを収容するハウジングと、
前記トルクセンサの検出結果に基づいて、操舵補助トルクを発生する電動モータと、
前記ハウジングの前記円筒部を貫通して形成される貫通孔と、
前記貫通孔に挿通され、前記トルクセンサに電気的に接続されるケーブルと、を備え、
前記ハウジングは、前記円筒部の開口を塞ぐプレートを有し、
前記トルクセンサは、前記ケーブルが接続されるコネクタを有し、
前記貫通孔は、前記円筒部の中心に向かう方向に対して傾斜した方向に延びて形成され、
前記プレートは、前記ケーブルに接触可能であり前記ケーブルが前記貫通孔の開口部に接触することを防止するケーブル保護部を有する電動パワーステアリング装置。
【請求項2】
請求項1記載の電動パワーステアリング装置であって、
前記ケーブル保護部は、前記貫通孔の前記開口部に対応して設けられ前記ケーブルが挿通される挿通孔を有し、
前記ケーブル保護部の前記挿通孔の開口面積は、前記ハウジングの前記貫通孔の開口面積よりも小さい電動パワーステアリング装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電動パワーステアリング装置であって、
前記ケーブル保護部は、前記挿通孔の開口部に形成される面取り部を有する電動パワーステアリング装置。
【請求項4】
請求項1記載の電動パワーステアリング装置であって、
前記ケーブル保護部は、前記プレートとは別体に形成される電動パワーステアリング装置。
【請求項5】
請求項1記載の電動パワーステアリング装置であって、
前記ケーブル保護部は、前記プレートにおいて軸方向に突出する外周縁を径方向に貫通して形成される凹部であり、
前記凹部は、前記貫通孔の前記開口部に対応して設けられて前記ケーブルの少なくとも一部が収容されるとともに、前記円筒部の周方向における寸法が前記開口部よりも小さく形成される電動パワーステアリング装置。
【請求項6】
請求項1記載の電動パワーステアリング装置であって、
前記プレートは、前記トルクセンサのケースの回転を規制する回転止め部をさらに有し、
前記コネクタは、前記トルクセンサの前記ケースに保持され、
前記回転止め部及び前記ケーブル保護部は、前記ケーブルが前記トルクセンサに接触しないような位置に設けられる電動パワーステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動パワーステアリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
JP2018-43731Aには、操舵トルクが入力される入力シャフトと、トーションバーを介して入力シャフトと連結された出力シャフトと、入力シャフトと出力シャフトに亘って取り付けられ、操舵トルクを検出するトルクセンサと、入力シャフト、出力シャフト、及びトルクセンサを収容するハウジングと、トルクセンサの検出結果に基づいて、操舵補助トルクを発生する電動モータと、トルクセンサと電動モータの駆動を制御するコントローラとを電気的に接続するケーブルと、を備える電動パワーステアリング装置が開示されている。トルクセンサは、ケーブルが接続されるコネクタを有する。ハウジングの環状の側壁部には挿通孔が形成され、ケーブルは挿通孔を通じてハウジング外部からハウジング内部に引き込まれ、コネクタに接続される。
【発明の概要】
【0003】
JP2018-43731Aに記載された電動パワーステアリング装置では、組み立て時や車両の走行時にケーブルが挿通孔の開口部に接触してしまうと、ケーブルが損傷してしまうおそれがある。特に、挿通孔が環状の側壁部の中心に向かう方向に対して傾斜した方向に延びて形成される場合には、挿通孔の開口部が鋭利となるため、ケーブルが挿通孔の開口部に接触して損傷しやすい。
【0004】
本発明は、電動パワーステアリング装置において、トルクセンサに電気的に接続されるケーブルの損傷を防止することを目的とする。
【0005】
本発明のある態様によれば、電動パワーステアリング装置であって、操舵トルクが入力される入力シャフトと、トーションバーを介して前記入力シャフトと連結される出力シャフトと、前記入力シャフトと前記出力シャフトに亘って取り付けられ、前記操舵トルクを検出するトルクセンサと、円筒部を有し前記トルクセンサを収容するハウジングと、前記トルクセンサの検出結果に基づいて、操舵補助トルクを発生する電動モータと、前記ハウジングの前記円筒部を貫通して形成される貫通孔と、前記貫通孔に挿通され、前記トルクセンサに電気的に接続されるケーブルと、を備え、前記ハウジングは、前記円筒部の開口を塞ぐプレートを有し、前記トルクセンサは、前記ケーブルが接続されるコネクタを有し、前記貫通孔は、前記円筒部の中心に向かう方向に対して傾斜した方向に延びて形成され、前記プレートは、前記ケーブルに接触可能であり前記ケーブルが前記貫通孔の開口部に接触することを防止するケーブル保護部を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は本発明の実施形態に係る電動パワーステアリング装置の構成図である。
図2図2は本発明の実施形態に係る電動パワーステアリング装置におけるアシスト機構近傍の外観図である。
図3図3は本発明の実施形態に係る電動パワーステアリング装置におけるアシスト機構近傍の断面図である。
図4図4は本発明の実施形態に係る電動パワーステアリング装置におけるアシスト機構近傍の平面図であり、第1ハウジングの図示を省略している。
図5図5は本発明の実施形態に係る電動パワーステアリング装置におけるアシスト機構近傍の斜視図であり、第1ハウジングの図示を省略している。
図6図6はプレートの斜視図である。
図7図7は本発明の実施形態の変形例に係るプレートの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る電動パワーステアリング装置100について説明する。
【0008】
電動パワーステアリング装置100は、車両に搭載され、ドライバによるステアリングホイール1の操舵を補助する装置である。
【0009】
図1に示すように、電動パワーステアリング装置100は、ドライバの操舵によるステアリングホイール1の回転に応じて車輪2を転舵させる転舵機構10と、ドライバの操舵を補助するアシスト機構20と、ドライバによってステアリングホイール1を通じて入力される操舵トルクを検出するトルクセンサ40と、トルクセンサ40の検出結果に基づいて電動モータ21の駆動を制御するコントローラ30と、を備える。
【0010】
転舵機構10は、ステアリングホイール1の回転に応じて回転するステアリングシャフト11と、ステアリングシャフト11の回転に応じて車輪2を転舵させるラックシャフト12と、を有する。
【0011】
ステアリングシャフト11は、ドライバによるステアリングホイール1の操舵に伴って回転し操舵トルクが入力される入力シャフト13と、車輪2を転舵するラックシャフト12に連係する出力シャフト15と、入力シャフト13と出力シャフト15を連結するトーションバー14と、を有する。出力シャフト15は、トーションバー14を介して入力シャフト13と連結される。
【0012】
出力シャフト15の下部には、ラックシャフト12に形成されたラック12aと噛み合うピニオン16が形成される。ステアリングホイール1が操舵されると、ステアリングシャフト11が回転し、その回転がピニオン16及びラック12aによってラックシャフト12の直線運動に変換され、ナックルアーム4を介して車輪2が転舵される。
【0013】
アシスト機構20は、操舵補助トルクを発生する電動モータ21と、電動モータ21の駆動力が伝達される出力軸22と、電動モータ21の回転を減速して出力シャフト15に伝達する減速機構3と、を有する。減速機構3は、電動モータ21の出力軸22に連結されるウォームシャフト3aと、ウォームシャフト3aと噛み合うとともに出力シャフト15に固定されるウォームホイール3bと、を有する。電動モータ21の出力は、減速機構3によって減速された後、出力シャフト15を通じラックシャフト12に操舵補助トルクとして伝達される。
【0014】
トルクセンサ40は、入力シャフト13と出力シャフト15に亘って取り付けられ、入力シャフト13と出力シャフト15との回転角度差に基づいてトーションバー14に付与される操舵トルクを検出する。トルクセンサ40の基板47(図3参照)とコントローラ30とは、信号線としてのケーブル36を介して電気的に接続される。ケーブル36を通じて、コントローラ30からトルクセンサ40への電源の供給が行われるととともに、トルクセンサ40にて検出された操舵トルク信号がコントローラ30へ出力される。
【0015】
次に、図2~5を参照して、電動パワーステアリング装置100におけるアシスト機構20の構造について詳しく説明する。
【0016】
図2及び図3に示すように、アシスト機構20は、電動モータ21と、ハウジング60と、カバー50と、入力シャフト13と、トーションバー14(図3参照)と、出力シャフト15と、トルクセンサ40(図3参照)と、を備える。入力シャフト13の一部、出力シャフト15の一部、及びトルクセンサ40は、ハウジング60に収容される。
【0017】
図2及び図3に示すように、カバー50は、ハウジング60の開口(具体的には、後述する第1円筒部61の開口)を覆うように設けられる。カバー50には、入力シャフト13の外周面に摺接するシール部材91と、入力シャフト13を回転自在に支持する軸受92と、が収容される。シール部材91は、カバー50内への異物の侵入を防止する。カバー50とハウジング60は、ボルト18により連結される。
【0018】
図2から図5に示すように、ハウジング60は、第1円筒部61と、第1円筒部61と比較して小さい内径を有する第2円筒部62(図2図3参照)と、第1円筒部61の開口端に形成されカバー50とハウジング60を締結するためのボルト18が挿入される取付部63と、ハウジング60に取り付けられるプレート70と、を有する。本実施形態では、第1円筒部61が、特許請求の範囲の「円筒部」に対応する。
【0019】
図2に示すように、第1円筒部61の外壁面には、電動モータ21が取り付けられる。図3に示すように、第1円筒部61は、入力シャフト13を中心とした円筒状に形成され、内部には、トルクセンサ40とウォームホイール3bが収容される。電動モータ21の出力軸22に連結されたウォームシャフト3aは、第1円筒部61を貫通するように配置され、第1円筒部61内に収容されたウォームホイール3bと噛合する。図3図5に示すように、プレート70は、第1円筒部61内に取り付けられ、第1円筒部61の開口を塞ぐ。第1円筒部61の内部は、円板状のプレート70によって、トルクセンサ40が設けられる空間とウォームホイール3bが設けられる空間とに区画される。
【0020】
図4図5に示すように、第1円筒部61は、第1円筒部61を貫通して形成される貫通孔61aを有する。貫通孔61aには、ケーブル36が挿通される。
【0021】
図3に示すように、第2円筒部62の内部には、出力シャフト15を回転自在に支持する軸受93と、出力シャフト15の外周面に摺接するシール部材94と、が設けられる。シール部材94は、ハウジング60内への異物の侵入を防止する。
【0022】
図3に示すように、入力シャフト13の軸心には、下端面に開口する中空部が形成され、その中空部内にはトーションバー14が収容される。トーションバー14の下端部は、入力シャフト13の中空部の下端開口部から突出し、セレーション14aを介して出力シャフト15に連結される。トーションバー14は、ステアリングホイール1を介して入力シャフト13に入力される操舵トルクを出力シャフト15に伝達し、その操舵トルクに応じて軸中心にねじれ変形する。このように、入力シャフト13と出力シャフト15はトーションバー14の捩れ量に応じて相対回転し、トルクセンサ40は、その相対回転による入力シャフト13と出力シャフト15の回転角度差に基づいて操舵トルクを検出する。電動モータ21は、トルクセンサ40の検出結果に基づいて、操舵補助トルクを発生する。
【0023】
次に、図3から図5を参照して、トルクセンサ40の具体的な構造について説明する。
【0024】
図3から図5に示すように、トルクセンサ40は、ケース41と、入力シャフト13と一体に回転するロータ部としての第1センサロータ45(図3参照)と、出力シャフト15と一体に回転する第2センサロータ46(図3参照)と、操舵トルクを検出してその信号をコントローラ30へ出力する基板47(図3参照)と、ケーブル36が接続されるコネクタ49と、を有する。
【0025】
ケース41は、樹脂材料によって形成される。図4図5に示すように、ケース41は、入力シャフト13が挿通される略環状形状であり、入力シャフト13に対して相対回転自在に設けられる。
【0026】
図4及び図5に示すように、ケース41は、円筒状の第1円筒部41aと、第1円筒部41aより大径で円筒状の第2円筒部41bと、第1円筒部41aの外周面から径方向外側に膨出するように形成された膨出部41dと、膨出部41dの外面から径方向にさらに突出するように形成された係合部48と、を有する。後述するように、係合部48は、プレート70の回転止め部73に係合し、これにより、ハウジング60に対するトルクセンサ40(ケース41)の相対回転が規制される。
【0027】
図3に示すように、第1センサロータ45は、入力シャフト13の外周面に取り付けられ、第2センサロータ46は、出力シャフト15の外周面に取り付けられる。本実施形態のトルクセンサ40では、ケース41が、第1センサロータ45を介して入力シャフト13に相対回転可能に支持されるとともに、第2センサロータ46を介して出力シャフト15に相対回転不能に支持される。これにより、入力シャフト13の回転に伴って、第1センサロータ45は、トルクセンサ40の基板47に対して相対回転する。
【0028】
トルクセンサ40の基板47は、ケース41内に固定され、第1センサロータ45と第2センサロータ46の間に配置される。トルクセンサ40は、基板47に形成される検出コイルパターンにより、入力シャフト13と出力シャフト15の回転角度差、つまり第1センサロータ45と第2センサロータ46の回転角度差に伴う磁界の変化を検出することによって、操舵トルクを検出する。
【0029】
図3から図5に示すように、コネクタ49は、ケース41の第2円筒部41bの上面に保持される。コネクタ49の取付口49aには、ケーブル36が挿入される。
【0030】
ケーブル36は、一端がトルクセンサ40のコネクタ49に接続される。ケーブル36は、第1円筒部61に形成された貫通孔61a及びケーブル36を保持するケーブルホルダ31を介してハウジング60外に引き出される。ケーブル36の他端は、コントローラ30に接続される。
【0031】
次に、図4から図6を参照して、プレート70について詳しく説明する。
【0032】
図4から図6に示すように、プレート70は、円環状の本体部71と、ケーブル36に接触可能でありケーブル36を保護するケーブル保護部72と、トルクセンサ40のケース41の回転を規制する回転止め部73と、を有する。
【0033】
本体部71の外周縁71bは、軸方向に突出して形成され、第1円筒部61の内周面に接触する。外周縁71bには、ケーブル保護部72が取り付けられる取付凹部71cが形成される。本体部71の中空部71aには、入力シャフト13及びトルクセンサ40のケース41が挿通される。トルクセンサ40のケース41の第1円筒部41a、第2円筒部41b、膨出部41d、及び係合部48は、本体部71よりも上部に位置する。
【0034】
ケーブル保護部72は、逆U字状に形成され、プレート70とは別体に形成されて本体部71の外周縁71bの取付凹部71cに設けられる。ケーブル保護部72は、第1円筒部61の貫通孔61aに対向して設けられる(図4図5参照)。ケーブル保護部72は、貫通孔61aの開口部61bに対応して設けられケーブル36が挿通される挿通孔72aを有する。ここで、「貫通孔61aの開口部61b」とは、第1円筒部61の内周面における貫通孔61aの開口端のことを示す。挿通孔72aは、具体的には、貫通孔61aの開口部61bと同様の形状に形成され、開口面積が貫通孔61aよりも小さい。つまり、挿通孔72aは、全体が貫通孔61aに面する。そのため、ケーブル36は、挿通孔72aに接触することはあっても、貫通孔61aの開口部61bには接触しない。このように、ケーブル保護部72は、ケーブル36が貫通孔61aの開口部61bに接触することを防止する。
【0035】
図6に示すように、ケーブル保護部72は、挿通孔72aの開口部72bに形成される面取り部72cを有する。面取り部72cは、挿通孔72aの開口部72bが面取り加工されて形成される。面取り部72cは、挿通孔72aの二つの開口部72bの両方に形成される。なお、面取り部72cは、平面状に形成されてもよく、曲面状に形成されてもよい。
【0036】
回転止め部73は、本体部71の外周縁71bから軸方向に延びるように、周方向に間隔をあけて一対設けられる。回転止め部73には、トルクセンサ40のケース41の係合部48が係止される。具体的には、回転方向における回転止め部73の一方の端面と係合部48との間には、板ばね80が設けられる。係合部48が板ばね80の弾性力よって一方の回転止め部73に押し付けられることで、ハウジング60に対するトルクセンサ40のケース41の相対回転が規制される。なお、板ばね80は必須の構成ではなく、トルクセンサ40のケース41の係合部48が一対の回転止め部73に挟持される構成であってもよい。
【0037】
ここで、電動パワーステアリング装置100では、組み立て時や車両の走行時にケーブル36が振動することがある。仮に、プレート70がケーブル保護部72を有さない構成であると、ケーブル36が第1円筒部61の貫通孔61aの開口部61bに接触してしまい、ケーブル36が損傷してしまうおそれがある。本実施形態では、図4に示すように、貫通孔61aは、第1円筒部61の中心に向かう方向に対して傾斜した方向に延びて形成される。言い換えれば、貫通孔61aは、第1円筒部61の径方向には延びずに、径方向に対して傾斜した向きに延びて形成される。よって、貫通孔61aの開口部61bが鋭利であるため、ケーブル36が開口部61bに接触して損傷しやすい。
【0038】
しかしながら、電動パワーステアリング装置100では、プレート70には、ケーブル36に接触可能でありケーブル36が貫通孔61aの開口部61bに接触することを防止するケーブル保護部72が設けられる。よって、電動パワーステアリング装置100の組み立て時や車両の走行時にケーブル36が振動しても、ケーブル36は貫通孔61aの開口部61bではなくケーブル保護部72に接触し、貫通孔61aの開口部61bには接触しない。そのため、貫通孔61aが第1円筒部61の中心に向かう方向に対して傾斜した方向に延びて形成され、貫通孔61aの開口部61bが鋭利となる構成であっても、ケーブル36が貫通孔61aの開口部61bに接触して損傷してしまうことを防止することができる。
【0039】
また、ケーブル保護部72の挿通孔72aの開口面積は、ハウジング60の貫通孔61aの開口面積よりも小さい。これにより、ケーブル36が貫通孔61aの開口部61bに接触して損傷してしまうことを容易に防止することができる。
【0040】
また、ケーブル保護部72は、挿通孔72aの開口部72bに形成される面取り部72cを有する。これにより、ケーブル36がケーブル保護部72の挿通孔72aの開口部72bに接触して損傷してしまうことを防止することができる。なお、面取り部72cは、挿通孔72aの二つの開口部72bの一方のみに形成されてもよい。また、面取り部72cは必須ではなく、ケーブル保護部72が面取り部72cを有さない構成であってもよい。
【0041】
また、ケーブル保護部72は、プレート70とは別体に形成される。これにより、電動パワーステアリング装置100の組み立て時に、ケーブル36をケーブル保護部72の挿通孔72aに容易に挿通させることができる。具体的には、先に第1円筒部61の内側でケーブル36をケーブル保護部72の挿通孔72aに挿通させ、その後ケーブル36を貫通孔61aに挿通させケーブル保護部72をプレート70に取り付けて、ケーブル36を第1円筒部61外に導くことができる。なお、ケーブル保護部72に、ケーブル36を挿通孔72a内に導くスリット等が形成されてもよく、この場合には、スリット等を通じてケーブル36をケーブル保護部72の挿通孔72aにさらに容易に挿通させることができる。また、ケーブル保護部72は、プレート70と一体に形成されてもよく、この場合には、電動パワーステアリング装置100の部品点数を削減できる。
【0042】
また、コネクタ49は、トルクセンサ40のケース41に保持され、回転止め部73及びケーブル保護部72は、ケーブル36がトルクセンサ40のケース41に接触しないような位置に設けられる。具体的には、図4図5に示すように、第1円筒部61内におけるケーブル36の一方の端部であるコネクタ49と他方の端部であるケーブル保護部72は、両者の間を遮るようにトルクセンサ40が位置しないとともに、屈曲したケーブル36がトルクセンサ40のケース41に接触しないように設けられる。これにより、ケーブル36がトルクセンサ40の検出精度に悪影響を及ぼすことを防止することができる。具体的には、例えば、屈曲したケーブル36の復元力がトルクセンサ40のケース41に作用してトルクセンサ40が傾いてしまうことが防止される。
【0043】
以上の本実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0044】
電動パワーステアリング装置100では、プレート70には、ケーブル36に接触可能でありケーブル36が貫通孔61aの開口部61bに接触することを防止するケーブル保護部72が設けられる。よって、電動パワーステアリング装置100の組み立て時や車両の走行時にケーブル36が振動しても、ケーブル36は貫通孔61aの開口部61bではなくケーブル保護部72に接触し、貫通孔61aの開口部61bには接触しない。そのため、ケーブル36が貫通孔61aの開口部61bに接触して損傷してしまうことを防止することができる。
【0045】
次に、本実施形態の変形例について、説明する。以下のような変形例も本発明の範囲内であり、以下の変形例と上記実施形態の各構成とを組み合わせたり、以下の変形例同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0046】
<変形例1>
上記実施形態では、ケーブル保護部72は、第1円筒部61の貫通孔61aに対向して設けられ、ケーブル保護部72の挿通孔72aの開口面積は、ハウジング60の貫通孔61aの開口面積よりも小さい。これに限らず、ケーブル保護部72は、少なくとも、ケーブル36が振動した際に貫通孔61aの開口部61bよりも先に接触することで、ケーブル36が貫通孔61aの開口部61bに接触することを防止する構成であればよい。例えば、ケーブル保護部72は、プレート70の本体部71から軸方向に突出するピンであり、当該ピンにケーブル36が接触することでケーブル36が貫通孔61aの開口部61bに接触することを防止する構成であってもよい。
【0047】
<変形例2>
上記実施形態では、ケーブル保護部72は、挿通孔72aの全体が貫通孔61aに面し、ケーブル36が貫通孔61aの開口部61bの全周に接触することを防止する。これに限らず、ケーブル保護部72は、挿通孔72aの一部が貫通孔61aに面し、ケーブル36が貫通孔61aの開口部61bの一部に接触することを防止する構成であってもよい。この場合には、ケーブル保護部72は、貫通孔61aの開口部61bにおける鋭利な部分へのケーブル36の接触を防止することが好ましい。
【0048】
<変形例3>
上記実施形態では、ケーブル保護部72は逆U字状に形成されてプレート70の本体部71の外周縁71bの取付凹部71cに設けられる。これに限らず、図7に示すように、ケーブル保護部は、プレート170の本体部71の外周縁71bの一部に形成される凹部172であってもよい。具体的には、凹部172は、外周縁71bにおいて第1円筒部61の貫通孔61aに面して形成される。凹部172は、プレート170において軸方向に突出する外周縁71bを径方向に貫通して形成される。凹部172は、貫通孔61aの開口部61bに対応して設けられてケーブル36の少なくとも一部が収容される。凹部172は、第1円筒部61の周方向における寸法が貫通孔61aの開口部61bよりも小さく形成される。そのため、ケーブル36は、凹部172に収容されると、周方向において貫通孔61aの開口部61bには接触しない。この構成では、ケーブル36が貫通孔61aの開口部61bに接触して損傷してしまうことを容易に防止することができる。
【0049】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0050】
電動パワーステアリング装置100は、操舵トルクが入力される入力シャフト13と、トーションバー14を介して入力シャフト13と連結される出力シャフト15と、入力シャフト13と出力シャフト15に亘って取り付けられ、操舵トルクを検出するトルクセンサ40と、円筒部としての第1円筒部61を有しトルクセンサ40を収容するハウジング60と、トルクセンサ40の検出結果に基づいて、操舵補助トルクを発生する電動モータ21と、ハウジング60の第1円筒部61を貫通して形成される貫通孔61aと、貫通孔61aに挿通され、トルクセンサ40に電気的に接続されるケーブル36と、を備え、ハウジング60は、第1円筒部61の開口を塞ぐプレート70,170を有し、トルクセンサ40は、ケーブル36が接続されるコネクタ49を有し、貫通孔61aは、第1円筒部61の中心に向かう方向に対して傾斜した方向に延びて形成され、プレート70,170は、ケーブル36に接触可能でありケーブル36が貫通孔61aの開口部61bに接触することを防止するケーブル保護部72,172を有する。
【0051】
この構成では、プレート70,170には、ケーブル36に接触可能でありケーブル36が貫通孔61aの開口部61bに接触することを防止するケーブル保護部72,172が設けられる。よって、電動パワーステアリング装置100の組み立て時や車両の走行時にケーブル36が振動しても、ケーブル36は貫通孔61aの開口部61bではなくケーブル保護部72,172に接触し、貫通孔61aの開口部61bには接触しない。そのため、貫通孔61aが第1円筒部61の中心に向かう方向に対して傾斜した方向に延びて形成され、貫通孔61aの開口部61bが鋭利となる構成であっても、ケーブル36が貫通孔61aの開口部61bに接触して損傷してしまうことを防止することができる。
【0052】
また、電動パワーステアリング装置100では、ケーブル保護部72は、貫通孔61aの開口部61bに対応して設けられケーブル36が挿通される挿通孔72aを有し、ケーブル保護部72の挿通孔72aの開口面積は、ハウジング60の貫通孔61aの開口面積よりも小さい。
【0053】
この構成では、ケーブル36が貫通孔61aの開口部61bに接触して損傷してしまうことを容易に防止することができる。
【0054】
また、電動パワーステアリング装置100では、ケーブル保護部72は、挿通孔72aの開口部72bに形成される面取り部72cを有する。
【0055】
この構成では、ケーブル36がケーブル保護部72の挿通孔72aの開口部72bに接触して損傷してしまうことを防止することができる。
【0056】
また、電動パワーステアリング装置100では、ケーブル保護部72は、プレート70とは別体に形成される。
【0057】
この構成では、電動パワーステアリング装置100の組み立て時にケーブル36をケーブル保護部72の挿通孔72aに容易に挿通させることができる。
【0058】
また、電動パワーステアリング装置100では、ケーブル保護部は、プレート170において軸方向に突出する外周縁71bを径方向に貫通して形成される凹部172であり、凹部172は、貫通孔61aの開口部61bに対応して設けられてケーブル36の少なくとも一部が収容されるとともに、第1円筒部61の周方向における寸法が開口部61bよりも小さく形成される。
【0059】
この構成では、ケーブル36が貫通孔61aの開口部61bに接触して損傷してしまうことを容易に防止することができる。
【0060】
また、電動パワーステアリング装置100では、プレート70,170は、トルクセンサ40のケース41の回転を規制する回転止め部73をさらに有し、コネクタ49は、トルクセンサ40のケース41に保持され、回転止め部73及びケーブル保護部72,172は、ケーブル36がトルクセンサ40に接触しないような位置に設けられる。
【0061】
この構成では、ケーブル36が電動パワーステアリング装置100に悪影響を及ぼすことを防止することができる。
【0062】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0063】
トルクセンサ40は、ステアリングシャフト11の絶対回転角度を検出するアングルセンサの機能も有する構成であってもよい。
【0064】
上記実施形態では、ドライバによる操舵トルクと電動モータ21による操舵補助トルクとが共通のステアリングシャフト11を介してラックシャフト12に入力されるシングルピニオン式の電動パワーステアリング装置100を例に説明した。しかしながら、電動パワーステアリング装置100は、ドライバによる操舵トルクと電動モータ21による操舵補助トルクとがそれぞれ独立してラックシャフト12に入力されるデュアルピニオン式の電動パワーステアリング装置であってもよい。また、電動パワーステアリング装置100は、ラックアンドピニオン方式に限らず、コラムアシスト式であってもよい。
【0065】
上記実施形態では、トルクセンサ40がインダクタンス式センサである場合について説明した。しかし、トルクセンサ40は磁気式センサであってもよく、トルク検出方法は限定されない。
【0066】
本願は2023年7月26日に日本国特許庁に出願された特願2023-121699に基づく優先権を主張し、この出願の全ての内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【要約】
電動パワーステアリング装置(100)は、第1円筒部(61)を有しトルクセンサ(40)を収容するハウジング(60)と、ハウジング(60)の第1円筒部(61)を貫通して形成される貫通孔(61a)と、貫通孔(61a)に挿通され、トルクセンサ(40)に電気的に接続されるケーブル(36)と、を備え、ハウジング(60)は、第1円筒部(61)の開口を塞ぐプレート(70)を有し、トルクセンサ(40)は、ケーブル(36)が接続されるコネクタ(49)を有し、貫通孔(61a)は、第1円筒部(61)の中心に向かう方向に対して傾斜した方向に延びて形成され、プレート(70)は、ケーブル(36)に接触可能でありケーブル(36)が貫通孔(61a)の開口部(61b)に接触することを防止するケーブル保護部(72)を有する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7