(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】温水装置の取付具および温水装置
(51)【国際特許分類】
F24H 9/02 20060101AFI20241127BHJP
【FI】
F24H9/02 301Z
(21)【出願番号】P 2020192195
(22)【出願日】2020-11-19
【審査請求日】2023-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 卓治
(72)【発明者】
【氏名】清水 崇生
(72)【発明者】
【氏名】山本 篤弥
(72)【発明者】
【氏名】森岡 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】興津 嘉人
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-064064(JP,U)
【文献】実開昭59-062444(JP,U)
【文献】実開昭56-060048(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H9/02,9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電装機器を搭載する筐体を
温水装置の外装ケースの内部で支持する
ための取付具であって、
平板部と、
前記平板部から立ち上がった立上がり部と、を備え、
前記立上がり部は、前記筐体を摺動可能に支持する摺動部を有し、
前記摺動部は前記平板部に対して傾斜するように構成されて
おり、
前記筐体が前記摺動部に沿って移動することにより第1位置と前記第1位置よりも前記平板部から離れた第2位置との間で移動可能であり、
前記筐体が前記第2位置に移動した状態で前記筐体を支える少なくとも一つの支持部をさらに備える、温水装置の取付具。
【請求項2】
請求項
1に記載の取付具と、
前記取付具を内部に収容する前記外装ケースと、を備える、温水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温水装置の取付具および温水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
給湯装置においては、バーナの燃焼、器具内の通水量などを制御する電装装置が筐体に搭載された状態で外装ケース内に実装されている。また、電装装置を搭載する筐体の配置が変更されることで、外装ケース内の配管、電気配線などの修理または交換が行われている。
【0003】
たとえば特許第5582335号公報(特許文献1)には、電装基板が燃焼装置側を向く姿勢と、電装基板が側面側を向く姿勢との間で電装基板の筐体を移動させることが記載されている。通常時には、電装基板の筐体は電装基板が燃焼装置側を向く姿勢とされる。またメンテナンス時には、電装基板の筐体は電装基板が側面側を向く姿勢とされ、外装ケースの開口から突出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、メンテナンス時においては上記のように電装基板の筐体は電装基板が側面側を向く姿勢とされ、外装ケースの開口から大きく突出する。このためメンテナンス作業によっては外装ケースから突出した筐体が邪魔になるおそれがあった。また、電装基板の配線によっては断線などすることも懸念される。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、電装機器を搭載する筐体が邪魔にならずにメンテナンスが可能な温水装置の取付具および温水装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の温水装置の取付具は、電装機器を搭載する筐体を外装ケースの内部で支持する、温水装置の取付具であって、平板部と、立上がり部とを備える。立上がり部は、平板部から立ち上がっている。立上がり部は、筐体を摺動可能に支持する摺動部を有している。摺動部は平板部に対して傾斜するように構成されている。
【0008】
本発明の温水装置の取付具によれば、電装機器を搭載する筐体は摺動部に沿って摺動可能である。このように筐体を摺動させることによりメンテナンスしたい箇所から筐体を移動させることができる。このため筐体を避けてメンテナンスを行うことが可能となる。
【0009】
また摺動部は平板部に対して傾斜している。このため筐体を摺動部に沿って摺動させることにより、筐体が平板部に近い位置から平板部から離れた位置へ移動させることができる。これにより平板部に配置された他の機器を避けて筐体を移動させることができる。
【0010】
また筐体を摺動部に沿って摺動させても、外装ケースからの筐体の突き出し量を従来例よりも抑えることができる。これにより筐体が邪魔にならずにメンテナンスをすることが可能となる。また外装ケースからの筐体の突き出し量を従来例よりも抑えることができるため、電装機器に接続される配線が断線などすることも抑制される。
【0011】
上記の温水装置の取付具において、筐体が摺動部に沿って移動することにより第1位置と第1位置よりも平板部から離れた第2位置との間で移動可能である。温水装置の取付具は、筐体が第2位置に移動した状態で筐体を支える少なくとも一つの支持部をさらに備えている。
【0012】
これにより筐体が平板部から離れた位置において筐体を支持部により安定して支えることができる。
【0013】
本発明の温水装置の取付構造体は、上記の取付具と、取付具に支持される前記筐体とを備えている。筐体は、摺動部に摺動可能な少なくとも一つの固定部を有している。
【0014】
本発明の温水装置の取付構造体によれば、筐体を外装ケースに固定するための固定部が摺動部を摺動する部材を兼ねている。これにより、摺動部に摺動させる部分を別個に準備する必要がなくなる。
【0015】
上記の温水装置の取付構造体において、筐体は、少なくとも一つの引っ掛け部を有している。少なくとも一つの引っ掛け部は、固定部が摺動部外に位置している状態で、立上がり部に引っ掛かるように構成されている。
【0016】
このように引っ掛け部を取付具の立上がり部に引っ掛けることにより、固定部が摺動部外に位置している状態でも取付具に対して筐体を支持させることができる。
【0017】
上記の温水装置の取付構造体は、締結部材をさらに備えている。締結部材は、固定部に取り付けられている。
【0018】
これにより締結部材を固定部に取り付けることにより筐体を外装ケースに支持することができる。
【0019】
本発明の温水装置は、上記の取付具と、取付具を内部に収容する前記外装ケースとを備えている。
【0020】
本発明の温水装置によれば、電装機器を搭載する筐体が邪魔にならずにメンテナンスが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように本発明によれば、電装機器を搭載する筐体が邪魔にならずにメンテナンスが可能な温水装置の取付具および温水装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態における温水装置の構成を示す分解斜視図である。
【
図2】
図1に示される温水装置の取付構造体の構成を拡大して示す斜視図である。
【
図3】
図2に示される温水装置の取付構造体の構成を分解して示す分解斜視図である。
【
図4】電装基板を搭載する筐体の構成を分解して示す分解斜視図である。
【
図5】筐体の固定部が取付具の摺動部外にある状態を示す下面図である。
【
図6】筐体の固定部が取付具の摺動部外にある状態を示す正面図である。
【
図7】筐体の固定部が取付具の摺動部内にある状態を示す下面図である。
【
図8】筐体の固定部が取付具の摺動部内にある状態を示す正面図である。
【
図9】温水装置の取付具の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
なお、明細書および図面において、同一の構成要素または対応する構成要素には、同一の符号を付し、重複する説明を繰り返さない。また、図面では、説明の便宜上、構成を省略または簡略化している場合もある。また実施形態と変形例との少なくとも一部は、互いに任意に組み合わされてもよい。
【0025】
<温水装置の構成>
まず本発明の一実施形態に係る温水装置の一例として給湯装置の構成について
図1を用いて説明する。
【0026】
ただし温水装置は、給湯装置に限定されず、たとえば暖房装置、温水暖房付きふろ給湯装置などであってもよい。また温水装置は、燃料ガスを燃焼させる方式であってもよく、石油を燃焼させる方式であってもよい。また温水装置は、貯湯式であってもよく、また瞬間式であってもよい。
【0027】
図1に示されるように、給湯装置10は、外装ケース11と、送風機(図示せず)と、燃焼装置12と、1次熱交換器13と、2次熱交換器14と、取付構造体ABとを有している。
【0028】
外装ケース11の内部に、送風機、燃焼装置12、熱交換器13、14および取付構造体ABが配置されている。送風機の上方に燃焼装置12が配置されている。燃焼装置12の上方に1次熱交換器13が配置されている。1次熱交換器13の上方に2次熱交換器14が配置されている。2次熱交換器14には排気口が設けられている。
【0029】
2次熱交換器14は、燃焼装置12にて生じた燃焼ガスの潜熱を回収するための潜熱回収型の熱交換器である。1次熱交換器13は、燃焼装置12にて生じた燃焼ガスの顕熱を回収するための顕熱回収型の熱交換器である。
【0030】
燃焼装置12は、1次熱交換器13および2次熱交換器14の各々と熱交換する燃焼ガスを生じさせるためのものである。燃焼装置12から噴き出される混合ガスは、点火プラグ5(
図2など)によって着火され、燃焼ガスとなる。送風機は、燃焼装置12における燃焼に必要な空気を供給するためのものである。
【0031】
2次熱交換器14の一方端部には給水配管(図示せず)が接続されている。2次熱交換器14の他方端部と1次熱交換器13の一方端部とは互いに接続されている。1次熱交換器13の他方端部には出湯配管(図示せず)が接続されている。給水配管と出湯配管とはバイパス配管(図示せず)により接続されている。
【0032】
給水配管は、水を供給するための配管である。給水配管から2次熱交換器14に供給された水は、燃焼装置12にて生じた燃焼ガスの潜熱を回収することにより予熱される。
【0033】
2次熱交換器14にて予熱された湯は、1次熱交換器13に供給される。1次熱交換器13に供給された湯は、燃焼装置12にて生じた燃焼ガスの顕熱を回収することにより加熱される。1次熱交換器13にて加熱された湯は、出湯配管を通じて給湯装置10の外部へ供給される。
【0034】
また給水配管からバイパス配管を通じて水が出湯配管に供給制御される。これにより出湯配管内の湯の温度が調整される。所望の温度に調整された湯が出湯配管から供給される。
【0035】
外装ケース11は、天板TPと、底板BPと、1対の側板SP1、SP2と、後板RPと、前板FPとを有している。天板TP、底板BP、1対の側板SP1、SP2、後板RPおよび前板FPの各々は外装ケースの壁部を構成している。
【0036】
天板TP、底板BPおよび1対の側板SP1、SP2は、枠を構成するように配置されている。後板RPは、天板TP、底板BPおよび1対の側板SP1、SP2により構成された枠の一端(後端)を閉じるように、天板TP、底板BPおよび1対の側板SP1、SP2の各々に接続されている。前板FPは、天板TP、底板BPおよび1対の側板SP1、SP2により構成された枠の他端(前端)を閉じるように、天板TP、底板BPおよび1対の側板SP1、SP2の各々に接続可能である。
【0037】
天板TPと底板BPとは互いに対向している。1対の側板SP1、SP2同士は互いに対向している。後板RPと前板FPとは互いに対向している。天板TPと、底板BPと、1対の側板SP1、SP2と、後板RPと、前板FPとにより囲まれた空間は、外装ケース11の内部空間を構成している。
【0038】
本明細書において外装ケース11の内部とは、外装ケース11の上記内部空間のことを意味する。また本明細書において外装ケース11の外部とは、上記内部空間と天板TP、底板BP、1対の側板SP1、SP2、後板RPおよび前板FPの各々を隔てた外装ケース11の外側の空間を意味する。
【0039】
<取付構造体ABの構成>
次に、本実施形態における取付構造体ABの構成について
図1~
図4を用いて説明する。
【0040】
図1に示されるように、取付構造体ABは、燃焼装置12と前板FPとの間に配置されている。
【0041】
図2に示されるように、取付構造体ABは、取付具1と、筐体2と、電装基板3と、高電圧発生部4とを有している。筐体2および高電圧発生部4の各々は、取付具1に支持されている。電装基板3は筐体2に支持されている。
【0042】
図3に示されるように、高電圧発生部4は、たとえばイグナイタトランスを有している。高電圧発生部4のイグナイタトランスは、点火プラグ5に電気的に接続されている。このためイグナイタトランスにより発生した高電圧が点火プラグ5に印加される。これにより点火プラグ5は点火スパークを生じ、燃焼装置12から噴き出された混合ガスに火炎を生じさせる。
【0043】
電装基板3は、電気回路を構成する素子を実装した基板である。電装基板3は、たとえば温水装置10が除菌機能を有する場合には除菌ランプを動作制御する電子回路を構成する素子を実装した基板であってもよい。この場合、電装基板3に実装された素子により、除菌ランプの点灯タイミングなどが制御される。
【0044】
図4に示されるように、筐体2は、直方体形状を構成する一つの面が開口した有底箱形状を有している。具体的には、筐体2は、底板2Lと、4つの側板2S1、2S2、2S3、2S4とを有している。底板2Lは、たとえば4角形状(長方形状)を有している。4つの側板2S1、2S2、2S3、2S4の各々は、底板2Lの4辺のそれぞれから立ち上がっている。側板2S1と側板2S2とが互いに対向しており、側板2S3と側板2S4とが互いに対向している。筐体2において、底板2Lと対向する面に開口OPが形成されている。
【0045】
筐体2は、固定部2a、2bと、引っ掛け部2cとを有している。固定部2a、2bの各々は、締結部材(たとえばネジ部材)が取付けられる部分である。締結部材が固定部2a、2bの各々の貫通穴に挿通された後に外装ケース11内の部材に締結される。これにより筐体2が外装ケース11の内部で支持される。
【0046】
固定部2aと、複数(たとえば3つ)の固定部2bのうちの1つの固定部2bとは、側板2S1に取り付けられている。固定部2aと1つの固定部2bとは、側板2S1の底板2L側に位置し、かつ側板2S1から側方(外方)に突き出している。
【0047】
複数(たとえば3つ)の固定部2bのうちの2つの固定部2bは、側板2S3に取り付けられている。2つの固定部2bは、側板2S3の底板2L側に位置し、かつ側板2S3から側方(外方)に突き出している。
【0048】
2つの引っ掛け部2cは、固定部2aが取付けられた側板2S1に取付けられている。2つの引っ掛け部2cの各々は、側板2S1の底板2Lから開口OP側へ離れた箇所に配置されている。2つの引っ掛け部2cの各々は、側板2S1から側方(外方)へ突き出した後に固定部2a側(底板2L側)へ折れ曲がっている。
【0049】
電装基板3は、筐体2の開口OPから筐体2の内部に挿入されている。電装基板3は筐体2の内部に支持されている。
【0050】
図3に示されるように、取付具1は、領域RAと、領域RBとを有している。取付具1の領域RAは、筐体2の取付け領域である。また取付具1の領域RBは、高電圧発生部4の取付け領域である。
【0051】
取付具1は、平板部1aと、立上がり部1ba、1bbと、支持部1ca、1cbとを有している。平板部1a、立上がり部1ba、1bbおよび支持部1ca、1cbは、1枚の板を折り曲げ加工することにより構成されている。このため平板部1a、立上がり部1ba、1bbおよび支持部1ca、1cbは、1枚の板を構成するように一体化されている。
【0052】
平板部1aは、平らな板からなっている。支持部1ca、1cbの各々は、領域RAにおいて平板部1aから立ち上がっている。支持部1caと支持部1cbとは、平板部1aに対して互いに同じ方向に立ち上がっている。支持部1caと支持部1cbとは、互いに対向している。支持部1ca、1cbの各々は、平板部1aに対して略垂直な方向に立ち上がっている。
【0053】
本明細書において略垂直とは、設計時においては垂直となるように設計されるが、製造誤差、取付誤差などにより実際の状態においては垂直とは少し異なる角度となる場合を含む。つまり本明細書における略垂直とは、製造誤差、取付誤差などの誤差分だけ垂直からずれた角度を含む。
【0054】
支持部1cbの先端には傾斜部IPが設けられている。傾斜部IPは、平板部1aに対して傾斜している。具体的には、傾斜部IPは、領域RBから遠ざかるほど平板部1aに近づくように傾斜している。
【0055】
立上がり部1ba、1bbの各々は、領域RAにおいて平板部1aから立ち上がっている。立上がり部1baと立上がり部1bbとは、平板部1aに対して互いに同じ方向に立ち上がっている。立上がり部1baと立上がり部1bbとは、互いに対向している。立上がり部1ba、1bbの各々は、平板部1aに対して略垂直な方向に立ち上がっている。
【0056】
立上がり部1baには摺動部GPが設けられている。摺動部GPは、筐体2を摺動可能に支持する部分である。具体的には、摺動部GPには筐体2の固定部2aが摺動する。摺動部GPは、平板部1aに対して傾斜している。具体的には、摺動部GPは、領域RBから遠ざかるほど平板部1aに近づくように傾斜している。
【0057】
摺動部GPは、たとえば立上がり部1baを貫通する貫通溝GPである。貫通溝GPは、立上がり部1baの領域RBから遠い側の端部において開口している。つまり貫通溝GPは、立上がり部1baの領域RBから遠い側の端部に開口GPOを有している。このため筐体2の固定部2a(
図4)は、貫通溝GPの開口GPOから貫通溝GP内に挿入可能である。そして貫通溝GP内に挿入された固定部2aは、貫通溝GPに沿って、貫通溝GPの領域RBに近い側の端部まで摺動可能である。
【0058】
図2に示されるように、電装基板3が筐体2内に支持された状態で筐体2が取付具1の領域RA(
図3)に支持される。また高電圧発生部4が取付具1の領域RBに支持される。
【0059】
<収納状態とメンテナンス状態について>
次に、本実施形態の給湯装置10における収納状態(使用状態)とメンテナンス状態とについて
図5~
図8を用いて説明する。
【0060】
図5および
図6は、給湯装置10の使用状態であって、外装ケース11の内部に取付構造体ABが収納された状態を示している。
図5に示されるように、外装ケース11の内部に取付構造体ABが収納された状態では、筐体2の固定部2a、2bの各々に締結部材を取付けることにより筐体2は外装ケース11の内部に支持されている。
【0061】
この状態において、筐体2は第1位置に位置している。具体的には、筐体2の底面(底板2Lの表面)は取付具1の平板部1aに接している。筐体2の引っ掛け部2cは、取付具1の立上がり部1baに引っ掛けられている。つまり筐体2の側板2S1と引っ掛け部2cとの間に立上がり部1baが挟まれている。固定部2aは、摺動部GP外に位置しており、摺動部GP内に位置していない。
【0062】
この状態で、摺動部GPは、下面視において前板FPに対して角度α1で傾斜している。また摺動部GPは、下面視において取付具1の平板部1aに対して角度α2で傾斜している。角度α1は角度α2と同一の角度であってもよい。角度α1、α2の各々は、0°より大きくかつ90°より小さくなっており、鋭角である。
【0063】
図6に示されるように、給湯装置10内に取付構造体ABが収納された状態では、正面視においてメンテナンスした部分が筐体2によって覆われている場合がある。メンテナンスしたい部分には、たとえば前管MHのシール部の一部、燃焼装置12(
図1)へ供給されるガスの2次圧を調圧するためのガス検圧口PDなどが含まれる。
【0064】
前管MHとは、燃焼装置12における複数の燃焼管の各々にガスを供給するためのマニホールド装置のことである。前管MHは、マニホールド本体と、蓋体と、シール用パッキンとからなっている。前管MHのシール部とは、上記シール用パッキンによりシールされた部分のことである。
【0065】
なお本明細書における下面視とは、給湯装置10を使用状態に設置した状態で給湯装置10の下側から見た視点を意味する。また本明細書における正面視とは、給湯装置10を使用状態に設置した状態で給湯装置10の正面側(前板FPから後板RPに向かう方向)から見た視点を意味する。
【0066】
図1に示されるように、給湯装置10のメンテナンス状態においては、外装ケース11の前板FPが取り外される。これにより給湯装置10の内部が、正面において外部へ露出する。
【0067】
図7に示されるように、メンテナンス状態においては、筐体2を外装ケース11の内部に取り付けるための締結部材が取り外される。この後、筐体2の固定部2aが取付具1の摺動部GPに挿入される。固定部2aは、摺動部GPに挿入された後、摺動部GPに沿って摺動部GPの反対側の端部まで移動する。この状態において、筐体2は第2位置に位置している。筐体2が第2位置にある状態では、筐体2の底面は取付具1の平板部1aから離れている。筐体2は第2位置にある状態において、
図5および
図6に示される第1位置にある状態よりも平板部1aから離れている。また筐体2の底面は、平板部1aに対して傾斜している。具体的には筐体2の底面は、高電圧発生部4に近づくほど平板部1aから離れるように傾斜している。
【0068】
また、この状態においては引っ掛け部2cは、立上がり部1baに引っ掛けられていない。つまり筐体2の側板2S1と引っ掛け部2cとの間に立上がり部1baは挟まれていない。
【0069】
また、この状態において筐体2の底面は、支持部1ca、1cbによって支持されている。これにより筐体2をこの状態で仮置きすることが可能となる。
【0070】
また、この状態においては筐体2の最も高電圧発生部4に近い部分の位置E1の平板部1aからの距離は、高電圧発生部4の平板部1aから最も離れた位置E2の平板部1aからの距離よりも大きい。このためメンテナンス状態において筐体2は摺動部GPに沿って移動しても高電圧発生部4に接しない。
【0071】
また下面視において固定部2aの摺動方向の長さS1は摺動部GPの幅S2よりも大きい。このため固定部2aが摺動部GPと摺動している状態において、筐体2が固定部2aを中心として取付具1に対して回転することが防止されている。
【0072】
図8に示されるように、メンテナンス状態においては、筐体2が摺動部GPに沿って移動したことにより、正面視においてメンテナンスしたい部分が筐体2から露出する。たとえば前管MHのシール部SL(図中太線で表す部分)の一部、燃焼装置12へ供給されるガスの2次圧を調圧するためのガス検圧口PDなどが、正面視において筐体2から露出する。これにより前管MHのシール部SLにおけるガスの漏れ検査が可能になるとともに、ガス検圧口PDからガス圧力を検出することも可能になる。
【0073】
調圧、漏れ検査などのメンテナンスの終了後には、筐体2の固定部2aが摺動部GPの開口に向かってスライドされる。これにより固定部2aが摺動部GPの開口から脱落する。この後、
図5および
図6に示される位置へ筐体2が移動された後に、締結部材により固定される。
【0074】
<変形例>
次に、本実施形態の取付具の変形例について
図9を用いて説明する。
【0075】
上記においては摺動部GPが貫通溝である場合について説明したが、摺動部GPは
図9に示されるように、摺動壁1da、1db、1dcにより構成されていてもよい。摺動壁1da、1db、1dcの各々は、立上がり部1baから立上がり部1bb側に向かって突き出している。
【0076】
摺動壁1daおよび摺動壁1dbの各々における領域RBに近い側の端部同士を繋ぐように摺動壁1dcが配置されている。摺動壁1daおよび摺動壁1dbの各々における領域RBから遠い側の端部同士の間には、摺動壁は配置されておらず隙間が設けられている。
【0077】
このため筐体2の固定部2a(
図4)は、摺動壁1daおよび摺動壁1dbの各々における領域RBから遠い側の端部の隙間から摺動壁1daと摺動壁1dbとの間の領域に挿入可能である。そして摺動壁1daと摺動壁1dbとの間に挿入された固定部2aは、摺動壁1daと摺動壁1dbとに沿って摺動壁1dcまで移動可能である。
【0078】
摺動壁1daと摺動壁1dbとは互いに略平行となるように配置されている。摺動壁1da、1dbの各々は平板部1aに対して傾斜している。具体的には、摺動壁1da、1dbの各々は、領域RBから遠ざかるほど平板部1aに近づくように傾斜している。
【0079】
<本実施形態の効果>
本実施形態によれば
図5~
図8に示されるように、電装機器を搭載する筐体2は摺動部GPに沿って摺動可能である。このように筐体2を摺動させることにより、
図7および
図8に示されるようにメンテナンスしたい箇所から筐体2を移動させることができる。このため筐体2を避けてメンテナンスを行うことが可能となる。たとえば、前管MHのシール部SLにおけるガスの漏れ検査が可能になるとともに、ガス検圧口PDからガス圧力を検出することも可能になる。
【0080】
また
図5に示されるように、摺動部GPは平板部1aに対して傾斜している。このため筐体2を摺動部GPに沿って摺動させることにより、
図5に示されるように筐体2が平板部1aに近い位置(第1位置)から、
図7に示されるように平板部1aから離れた位置(第2位置)へ移動させることができる。これにより平板部1aに配置された高電圧発生部4を避けて筐体2を移動させることができる。このため筐体2が高電圧発生部4に干渉することが防止される。
【0081】
また筐体2を摺動部GPに沿って摺動させても、外装ケース11からの筐体2の突き出し量を従来例よりも抑えることができる。これにより筐体2が邪魔にならずにメンテナンスをすることが可能となる。また外装ケース11からの筐体2の突き出し量を従来例よりも抑えることができるため、電装基板3に接続される配線が断線などすることも抑制される。
【0082】
また本実施形態によれば、筐体2が摺動部GPに沿って移動することにより、
図5に示される位置(第1位置)と、
図7に示される位置(第2位置)との間で筐体2を移動させることができる。取付具1は、筐体2が第2位置に移動した状態で筐体2を支える支持部1ca、1cbを有している。これにより筐体2が平板部1aから離れた位置(第2位置)において筐体2を支持部1ca、1cbにより安定して支えることができる。
【0083】
また本実施形態によれば
図7に示されるように、筐体2は摺動部GPに摺動可能な固定部2aを有している。このように筐体2を外装ケース11に支持するための固定部2aが摺動部GPを摺動する部材を兼ねているため、摺動部GPに摺動させる部分を別個に準備する必要がなくなる。
【0084】
また本実施形態によれば
図5に示されるように、引っ掛け部2cは、固定部2aが摺動部GP外に位置している状態で、立上がり部1baに引っ掛かるように構成されている。これにより引っ掛け部2cを取付具1の立上がり部1baに引っ掛けることにより、固定部2aが摺動部GP外に位置している状態でも取付具1に対して筐体2を支持させることができる。
【0085】
また本実施形態によれば
図5に示されるように、締結部材は固定部2aに取り付けられている。これにより締結部材を固定部2aに取り付けることにより筐体2を外装ケース11に支持させることができる。
【0086】
また本実施形態によれば
図7および
図8に示されるように、筐体2を摺動部GPに沿って移動させることにより、電装機器を搭載する筐体2が邪魔にならずにメンテナンスを行うことが可能となる。
【0087】
なお上記の実施形態においては、固定部2aが1つである場合について説明したが、摺動部GPを摺動する固定部2aは複数個あってもよい。つまり少なくとも1つの固定部2aが摺動部GPと摺動するように側板2S1に取付けられていればよい。
【0088】
また2つの支持部1ca、1cbが設けられる場合について説明したが、筐体2が
図7および
図8に示される状態に移動された際に筐体2を支持する支持体は1つまたは3つ以上であってもよい。つまり少なくとも1つの支持体が
図7および
図8に示される状態に移動された筐体2を支持するように設けられていればよい。
【0089】
また2つの引っ掛け部2cが設けられる場合について説明したが、筐体2が
図5および
図6に示される状態に移動された際に立上がり部1baに引っ掛けられる引っ掛け部2cは1つまたは3つ以上であってもよい。つまり少なくとも1つの引っ掛け部2cが立上がり部1baに引っ掛けられるように設けられていればよい。
【0090】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0091】
1 取付具、1a 平板部、1ba,1bb 立上がり部、2c 引っ掛け部、1ca,1cb 支持部、1da,1db,1dc 摺動壁、2 筐体、2L,BP 底板、2S1,2S2,2S3,2S4,SP1,SP2 側板、2a,2b 固定部、3 電装基板、4 高電圧発生部、5 点火プラグ、10 給湯装置、11 外装ケース、12 燃焼装置、13 1次熱交換器、14 2次熱交換器、AB 取付構造体、E1,E2 位置、FP 前板、GP 摺動部、IP 傾斜部、MH 前管、GPO,OP 開口、PD ガス検圧口、RA,RB 領域、RP 後板、SL シール部、TP 天板。