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特許7594179半導体装置、半導体装置の製造方法及び電子装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】半導体装置、半導体装置の製造方法及び電子装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3205 20060101AFI20241127BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20241127BHJP
   H01L 23/522 20060101ALI20241127BHJP
   H01L 23/532 20060101ALI20241127BHJP
   H01L 21/338 20060101ALI20241127BHJP
   H01L 29/812 20060101ALI20241127BHJP
   H01L 29/41 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
H01L21/88 J
H01L21/88 R
H01L29/80 G
H01L29/44 L
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020201956
(22)【出願日】2020-12-04
(65)【公開番号】P2022089516
(43)【公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-06-08
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成31年度、環境省、「未来のあるべき社会・ライフスタイルを創造する技術イノベーション事業(高品質GaN基板を用いた超高効率GaNパワー・光デバイスの技術開発とその実証)」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】弁理士法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 直哉
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-157806(JP,A)
【文献】特開2011-192836(JP,A)
【文献】特開2014-146705(JP,A)
【文献】特開2013-141008(JP,A)
【文献】国際公開第2018/173275(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/768
H01L 23/52-23/538
H01L 21/28-21/288
H01L 29/40-29/51
H01L 29/772-29/812
H01L 21/335-21/338
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板の第1面に直接設けられ、Au層又はAuを主体とする層である第1層と、
前記第1層の、前記半導体基板とは反対側の第2面に直接設けられ、Niを含有する第2層と、
前記第2層及び前記第1層を貫通し、前記半導体基板の前記第1面から前記第1面とは反対側の第3面まで貫通するビアホールと、
前記ビアホールの内面に設けられるビア配線と
を含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記半導体基板の前記第3面に設けられる第3層を含み、
前記ビアホールは、前記第2層及び前記第1層を貫通し、前記半導体基板の前記第1面から前記第3面まで貫通し、前記第3層に達することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記半導体基板の前記第3面側に設けられ、電極を有するトランジスタを含み、
前記第3層は、前記トランジスタの前記電極と接続されることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記半導体基板は、
窒化物半導体基板と、
前記窒化物半導体基板に積層された窒化物半導体層と
を含み、
前記半導体基板の前記第1面は、前記窒化物半導体基板の、前記窒化物半導体層とは反対側の面であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体基板の前記第3面は、前記窒化物半導体層の、前記窒化物半導体基板とは反対側の面であることを特徴とする請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記半導体基板の前記第3面は、前記窒化物半導体基板の、前記第1面とは反対側の面であることを特徴とする請求項4に記載の半導体装置。
【請求項7】
半導体基板の第1面に直接Au層又はAuを主体とする層である第1層を形成する工程と、
前記第1層の、前記半導体基板とは反対側の第2面に直接、Niを含有する第2層を形成する工程と、
前記第2層及び前記第1層を貫通し、前記半導体基板の前記第1面から前記第1面とは反対側の第3面まで貫通するビアホールを形成する工程と、
前記ビアホールの内面に、ビア配線を形成する工程と
前記第2層の、前記第1層とは反対側の第4面に、前記ビア配線から連続する配線を形成する工程と
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記ビアホールを形成する工程は、
前記ビアホールを形成する領域に開口部を有する前記第2層及び前記第1層を形成する工程と、
前記開口部が形成された前記第2層をマスクにして、前記開口部内の前記半導体基板を、Clを含有するガスを用いてエッチングする工程と
を含むことを特徴とする請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記半導体基板の前記第3面に、第3層を形成する工程を含み、
前記ビアホールを形成する工程は、前記第2層及び前記第1層を貫通し、前記半導体基板の前記第1面から前記第3面まで貫通し、前記第3層に達するように、前記ビアホールを形成する工程を含むことを特徴とする請求項7又は8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
半導体基板と、
前記半導体基板の第1面に直接設けられ、Au層又はAuを主体とする層である第1層と、
前記第1層の、前記半導体基板とは反対側の第2面に直接設けられ、Niを含有する第2層と、
前記第2層及び前記第1層を貫通し、前記半導体基板の前記第1面から前記第1面とは反対側の第3面まで貫通するビアホールと、
前記ビアホールの内面に設けられるビア配線と
を含む半導体装置を備えることを特徴とする電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、半導体装置の製造方法及び電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板の一方の面側から他方の面側まで貫通するビアホールの内面にビア配線を設け、そのビア配線によって半導体基板の一方の面側と他方の面側との間を導通させる技術が知られている。
【0003】
例えば、GaN(ガリウムナイトライド)等の窒化物半導体を用いる高電子移動度トランジスタ(High Electron Mobility Transistor;HEMT)に関し、そのトランジスタ構造が形成される窒化物半導体層と、それが積層される下地基板であるSiC(シリコンカーバイド)基板とにビアホールを形成し、その内面にビア配線を形成する技術が知られている。ビアホール形成の一手法として、次のようなものが知られている。即ち、SiC基板上にTa(タンタル)及びCu(銅)の積層体の下地層を介してNi(ニッケル)層が形成され、それらに開口が設けられ、Ni層をマスクとしたエッチングが行われ、Ni層及び下地層、並びにSiC基板及びそれに積層される窒化物半導体層を貫通するビアホールが形成される。そのようにして形成されるビアホールの内面に、ビア配線が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-141008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体基板、或いは下地基板に半導体層が積層された半導体基板に対し、その一方の面側から他方の面側まで貫通するビアホールをエッチングで形成する際には、例えば、高いエッチング選択比が得られるNiがマスクに用いられる。マスクに用いられるNiと、エッチングされる半導体基板との間には、半導体基板上にNiを用いたマスクを設けるための下地層、例えば、上記のようなTa及びCuの積層体が介在される場合がある。
【0006】
この場合、半導体基板のエッチング時に、マスクに用いられるNiの下地層のエッチング選択比が低いと、その下地層にサイドエッチングが生じることが起こり得る。下地層にサイドエッチングが生じると、マスクに用いられるNi及びその下地層並びに半導体基板を貫通するビアホールを設けてその内面にビア配線を設ける際、当該サイドエッチングにより生じる段差部位でビア配線の形成が妨げられ、ビア配線に断線が生じる恐れがある。ビア配線の断線は、半導体基板の一方の面側と他方の面側との間の導通を妨げ、当該半導体基板を備える半導体装置の性能の低下を招く恐れがある。
【0007】
1つの側面では、本発明は、半導体基板を貫通して設けられるビア配線の断線を抑えた高性能の半導体装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの態様では、半導体基板と、前記半導体基板の第1面に直接設けられ、Au層又はAuを主体とする層である第1層と、前記第1層の、前記半導体基板とは反対側の第2面に直接設けられ、Niを含有する第2層と、前記第2層及び前記第1層を貫通し、前記半導体基板の前記第1面から前記第1面とは反対側の第3面まで貫通するビアホールと、前記ビアホールの内面に設けられるビア配線とを含む半導体装置が提供される。
【0009】
また、別の態様では、上記のような半導体装置の製造方法、及び上記のような半導体装置を備える電子装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
1つの側面では、半導体基板を貫通して設けられるビア配線の断線を抑えた高性能の半導体装置を実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施の形態に係る半導体装置の第1の例について説明する図である。
図2】半導体装置の第1の比較例について説明する図である。
図3】第1の実施の形態に係る半導体装置の第2の例について説明する図である。
図4】半導体装置の第2の比較例について説明する図である。
図5】トランジスタの周波数と利得の関係の一例を示す図である。
図6】第2の実施の形態に係る半導体装置の一例について説明する図(その1)である。
図7】第2の実施の形態に係る半導体装置の一例について説明する図(その2)である。
図8】第2の実施の形態に係る半導体装置の形成方法の一例について説明する図(その1)である。
図9】第2の実施の形態に係る半導体装置の形成方法の一例について説明する図(その2)である。
図10】第2の実施の形態に係る半導体装置の形成方法の一例について説明する図(その3)である。
図11】第2の実施の形態に係る半導体装置の形成方法の一例について説明する図(その4)である。
図12】第2の実施の形態に係る半導体装置の形成方法の一例について説明する図(その5)である。
図13】第3の実施の形態に係る半導体装置の一例について説明する図である。
図14】第4の実施の形態に係る半導体装置の一例について説明する図(その1)である。
図15】第4の実施の形態に係る半導体装置の一例について説明する図(その2)である。
図16】第5の実施の形態に係る半導体装置の一例について説明する図である。
図17】第5の実施の形態に係る半導体装置の形成方法の一例について説明する図(その1)である。
図18】第5の実施の形態に係る半導体装置の形成方法の一例について説明する図(その2)である。
図19】第5の実施の形態に係る半導体装置の形成方法の一例について説明する図(その3)である。
図20】第5の実施の形態に係る半導体装置の形成方法の一例について説明する図(その4)である。
図21】第5の実施の形態に係る半導体装置の形成方法の一例について説明する図(その5)である。
図22】第6の実施の形態に係る半導体装置の一例について説明する図である。
図23】第7の実施の形態に係る半導体装置の一例について説明する図である。
図24】第8の実施の形態に係る増幅器の一例について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1の実施の形態]
図1は第1の実施の形態に係る半導体装置の第1の例について説明する図である。図1には第1の実施の形態に係る半導体装置の第1の例の要部断面図を模式的に示している。
【0013】
図1に示す半導体装置1Aは、半導体基板40、第1層10、第2層20、第3層30、ビアホール50、ビア配線60及び配線70を有する。
半導体装置1Aでは、例えば、半導体基板40の一方の面40bに、或いは半導体基板40の面40b側の表層部内に、トランジスタ等の半導体素子(図示せず)が形成される。半導体基板40の、一方の面40bとは反対側の他方の面40aに、第1層10が設けられる。第1層10の、半導体基板40とは反対側の面10aに、第2層20が設けられる。半導体基板40の面40bに、第3層30が設けられる。第2層20及び第1層10を貫通し、更に半導体基板40をその面40aから面40bまで貫通し、第3層30に達するように、ビアホール50が設けられる。ビアホール50の内面、即ち、第2層20の開口部20cの内面、その開口部20cに連通する第1層10の開口部10cの内面、及びその開口部10cに連通する半導体基板40の開口部40cの内面に、ビア配線60が設けられる。ビア配線60は、半導体基板40の面40bに設けられる第3層30と接続される。第2層20の、第1層10とは反対側の面20aには、ビアホール50の内面に設けられるビア配線60から連続するように、配線70が設けられる。
【0014】
半導体装置1Aにおいて、半導体基板40の面40aに設けられる第1層10には、Au(金)を含有する層、例えば、Au層又はAuを主体とする層が用いられる。第1層10の面10aに設けられる第2層20には、Niを含有する層、例えば、Ni層又はNiを主体とする層が用いられる。また、半導体基板40の面40bに設けられる第3層30には、金属層、例えば、Niを含有する層が用いられる。ビア配線60及び配線70には、金属材料、例えば、Auを含有する材料が用いられる。
【0015】
半導体装置1Aにおいて、第2層20は、半導体基板40の開口部40cをエッチングにより形成する際のマスクとしての機能を有する。第1層10は、マスクとして機能する第2層20を半導体基板40の面40a側に形成する際の下地層としての機能を有する。例えば、厚さが100μm程度の半導体基板40のエッチングには、そのエッチングによる層厚の減少を考慮し、少なくとも数μm程度といった比較的厚いマスクが用いられる。そのため、Niを含有する第2層20の形成には、蒸着やスパッタ法等よりも厚い層の形成が容易であって、よりストレスの低い層の形成が可能な電気めっき法が用いられる。第1層10は、このように電気めっき法で第2層20を形成する際のシード層である。
【0016】
半導体装置1Aでは、マスクとして機能する第2層20の下地層となる第1層10に、Auを含有する層が用いられる。これにより、Niを含有する第2層20をマスクとして半導体基板40をエッチングによりビアホール加工する際、第1層10にサイドエッチングが生じることが抑えられる。
【0017】
一例として、半導体基板40にGaN基板を用いた場合について説明する。
図2は半導体装置の第1の比較例について説明する図である。図2には半導体装置の第1の比較例の要部断面図を模式的に示している。
【0018】
半導体基板40にGaN基板を用いた場合、そのエッチングには、Cl(塩素)及びBCl(三塩化ホウ素)の混合ガス等のCl(塩素)系ガスが用いられる。Cl系ガスが用いられ、第2層20をマスクとして、誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma;ICP)エッチング等により、半導体基板40のビアホール加工が行われる。
【0019】
この時、半導体基板40のエッチング時のマスクに、Niを含有する第2層20が用いられ、その下地層である第1層1000に、例えば、Cu層又はCuを主体とする層が用いられていると、図2のX1部に示すように、第1層1000がCl系ガスでサイドエッチングされることがある。Cu層又はCuを主体とする層である第1層1000は、SiC等のエッチングに広く用いられるF(フッ素)系ガスに対しては比較的高いエッチング耐性を有する。しかし、GaNのエッチングに用いられるCl系ガスに対するエッチング耐性は比較的低く、この図2に示すようなサイドエッチングが生じ易い。
【0020】
第1層1000にサイドエッチングが生じると、ビアホール50の内面における第1層1000の部位に段差が生じる。ビアホール50の内面に、このような段差部位が生じると、ビア配線60を形成する際、その段差部位でビア配線60の形成が妨げられ、図2のX2部に示すように、形成されるビア配線60に断線が生じることが起こり得る。
【0021】
これに対し、半導体基板40のエッチング時のマスクに、Niを含有する第2層20が用いられ、その下地層である第1層10に、Auを含有する層が用いられていると、上記図1に示したように、第1層10がCl系ガスでサイドエッチングされることが抑えられる。Auを含有する層である第1層10は、Cl系ガスに対するエッチング耐性が比較的高いためである。これにより、ビアホール50の内面における第1層10の部位に段差が生じることが抑えられ、ビアホール50の内面に形成されるビア配線60の断線が抑えられる。
【0022】
図3は第1の実施の形態に係る半導体装置の第2の例について説明する図である。図3には第1の実施の形態に係る半導体装置の第2の例の要部断面図を模式的に示している。
図3に示す半導体装置1Bは、半導体基板40として、下地基板41とそれに積層される半導体層42とを有する半導体基板が用いられる。
【0023】
このような半導体基板40の、下地基板41側の面40aに、Auを含有する第1層10が設けられ、その第1層10の、半導体基板40とは反対側の面10aに、Niを含有する第2層20が設けられる。半導体基板40の、下地基板41に積層される半導体層42側の面40bに、第3層30が設けられる。第2層20及び第1層10を貫通し、更に半導体基板40の下地基板41側の面40aから半導体層42側の面40bまで貫通し、第3層30に達するように、ビアホール50が設けられる。ビアホール50の内面、即ち、第2層20の開口部20cの内面、その開口部20cに連通する第1層10の開口部10cの内面、その開口部10cに連通する下地基板41の開口部41cの内面及び半導体層42の開口部42cの内面に、ビア配線60が設けられる。ビア配線60は、半導体基板40の半導体層42側の面40bに設けられる第3層30と接続される。第2層20の、第1層10とは反対側の面20aには、ビアホール50の内面に設けられるビア配線60から連続するように、配線70が設けられる。
【0024】
半導体装置1Bでは、Niを含有する第2層20がマスクとして用いられ、半導体基板40の下地基板41及び半導体層42がエッチングされ、ビアホール50が形成される。第2層20の下地層である第1層10に、Auを含有する層が用いられることで、第2層20をマスクとして半導体基板40をエッチングによりビアホール加工する際の、第1層10のサイドエッチングが抑えられる。
【0025】
一例として、半導体基板40の下地基板41にGaN基板を用い、半導体層42にGaN系窒化物半導体層を用いた場合について説明する。
図4は半導体装置の第2の比較例について説明する図である。図4には半導体装置の第2の比較例の要部断面図を模式的に示している。
【0026】
半導体基板40の下地基板41にGaN基板、半導体層42にGaN系窒化物半導体層を用いた場合、Cl及びBClの混合ガス等のCl系ガスが用いられ、第2層20をマスクとして下地基板41がエッチングされ、続けて半導体層42がエッチングされる。
【0027】
この時、半導体基板40のエッチング時のマスクに、Niを含有する第2層20が用いられ、その下地層である第1層1000に、例えば、Cu層又はCuを主体とする層が用いられていると、図4のY1部に示すように、第1層1000がCl系ガスでサイドエッチングされることがある。Cu層又はCuを主体とする層である第1層1000の、Cl系ガスに対するエッチング耐性が比較的低いためである。第1層1000にサイドエッチングが生じると、ビアホール50の内面に段差が生じ、その段差部位でビア配線60の形成が妨げられ、図4のY2部に示すように、形成されるビア配線60に断線が生じることが起こり得る。
【0028】
これに対し、半導体基板40のエッチング時のマスクに、Niを含有する第2層20が用いられ、その下地層である第1層10に、Auを含有する層が用いられていると、上記図3に示したように、第1層10がCl系ガスでサイドエッチングされることが抑えられる。Auを含有する層である第1層10は、Cl系ガスに対するエッチング耐性が比較的高いためである。これにより、ビアホール50の内面における第1層10の部位に段差が生じることが抑えられ、ビアホール50の内面に形成されるビア配線60の断線が抑えられる。
【0029】
尚、上記図4に示すような半導体基板40の、GaN系窒化物半導体層が用いられる半導体層42の下地基板41としては、上記のようなGaN基板のほか、SiC基板やSi基板が用いられる場合もある。このような場合には、まず、SF(六フッ化硫黄)及びCHF(三フッ化メタン)の混合ガス等のF(フッ素)系ガスが用いられ、第2層20をマスクとして、下地基板41がエッチングされる。次いで、Cl及びBClの混合ガス等のCl系ガスが用いられ、第2層20をマスクとして、半導体層42がエッチングされる。このエッチング時のマスクの下地層である第1層1000に、Cu層又はCuを主体とする層が用いられていると、エッチング条件によっては、上記図4に示したのと同様に、第1層1000が半導体層42のエッチング時に用いられるCl系ガスに曝され、サイドエッチングされ得る。第1層1000にサイドエッチングが生じると、ビアホール50の内面に段差が生じ、形成されるビア配線60に断線が生じることが起こり得る。
【0030】
これに対し、半導体基板40のエッチング時のマスクの下地層である第1層10に、Auを含有する層が用いられていると、上記図3に示したのと同様に、第1層10のサイドエッチングが抑えられる。即ち、半導体基板40の下地基板41にSiC基板等が用いられ、半導体層42にGaN系窒化物半導体層が用いられるような形態であっても、そのGaN系窒化物半導体層のエッチング時における第1層10のサイドエッチングが抑えられる。これにより、ビアホール50の内面における第1層10の部位に段差が生じることが抑えられ、ビアホール50の内面に形成されるビア配線60の断線が抑えられる。
【0031】
上記の半導体装置1A(図1)及び半導体装置1B(図3)に関し、半導体装置1Aの半導体基板40、半導体装置1Bの半導体基板40の下地基板41には、GaN基板に限らず、各種窒化物半導体基板を用いることができる。例えば、半導体装置1Aの半導体基板40、半導体装置1Bの半導体基板40の下地基板41には、一般式InAlGa1-(x+y)N(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦x+y≦1)で表される窒化物半導体基板が用いられてもよい。即ち、半導体装置1Aの半導体基板40、半導体装置1Bの半導体基板40の下地基板41には、GaN基板、AlN基板、InN基板、AlGaN基板、InGaN基板、InAlGaN基板等が用いられてもよい。このような各種窒化物半導体基板が用いられる場合でも、Auを含有する第1層10を用いることで、ビアホール50の形成時の第1層10のサイドエッチングを抑え、ビアホール50の内面に形成されるビア配線60の断線を抑える効果を得ることができる。
【0032】
このほか、半導体装置1Aの半導体基板40、半導体装置1Bの半導体基板40の下地基板41には、SiC基板やSi基板が用いられてもよい。Auを含有する第1層10は、このようなSiC基板やSi基板のエッチングに用いられるF系ガスに対しても比較的高いエッチング耐性を有するためである。更に、同様の観点で、半導体装置1Aの半導体基板40、半導体装置1Bの半導体基板40の下地基板41には、SiGe(シリコンゲルマニウム)、GaAs(ガリウムヒ素)、InP(インジウムリン)等の化合物半導体基板が用いられてもよい。
【0033】
また、半導体装置1Bの半導体基板40の半導体層42には、各種窒化物半導体層を用いることができる。例えば、半導体層42には、一般式InAlGa1-(x+y)N(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦x+y≦1)で表されるような窒化物半導体層の単層構造が用いられてもよい。半導体層42には、そのような一般式で表される1種又は2種以上の窒化物半導体層の積層構造が用いられてもよい。即ち、半導体層42には、GaN層、AlN層、InN層、AlGaN層、InGaN層、InAlGaN層等のうちの1種の単層構造、或いは1種又は2種以上の積層構造が用いられてもよい。このような各種窒化物半導体層が用いられる場合でも、Auを含有する第1層10を用いることで、ビアホール50の形成時の第1層10のサイドエッチングを抑え、ビアホール50の内面に形成されるビア配線60の断線を抑える効果を得ることができる。
【0034】
このほか、半導体装置1Bの半導体基板40の半導体層42には、SiC層やSi層が用いられてもよい。Auを含有する第1層10は、このようなSiC層やSi層のエッチングに用いられるF系ガスに対しても比較的高いエッチング耐性を有するためである。更に、同様の観点で、半導体装置1Bの半導体基板40の半導体層42には、SiGe、GaAs、InP等の化合物半導体層が用いられてもよい。
【0035】
半導体装置1A,1Bの半導体基板40上又は半導体基板40内には、半導体素子として、各種トランジスタが設けられてよい。例えば、半導体装置1A,1Bの半導体基板40上又は半導体基板40内には、HEMT、ヘテロ接合バイポーラトランジスタ(Heterojunction Bipolar Transistor;HBT)、フィン型電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor)、ナノワイヤ型FET、MIS(Metal Insulator Semiconductor)型トランジスタ等、各種トランジスタが設けられてよい。
【0036】
半導体装置1A,1Bの第3層30は、例えば、半導体基板40上又は半導体基板40内に設けられるトランジスタのソース電極と電気的に接続される。半導体装置1A,1Bの配線70は、例えば、グランド(GND)電位に設定される。この場合、トランジスタのソース電極は、それと電気的に接続される第3層30、ビア配線60及び配線70を通じて、GND接続される。ビア配線60を通じてトランジスタのソース電極をGND接続する構造は、ソースインダクタンスを小さくすることが可能な構造の1つであり、トランジスタの高周波特性を高めるうえで有効となる。
【0037】
図5はトランジスタの周波数と利得の関係の一例を示す図である。
図5において、横軸は周波数[GHz]を表し、縦軸は利得[dB]を表している。図5には、半導体基板40を貫通して設けられるビア配線60を介してトランジスタのソース電極をGND接続する場合の周波数と利得の関係の一例を、実線Pで示している。図5には比較のため、半導体基板40を貫通して設けられるビア配線60を介さずにトランジスタのソース電極をGND接続する場合の周波数と利得の関係の一例を、点線Qで示している。
【0038】
図5に示すように、ビア配線60を介したトランジスタのGND接続(実線P)では、ビア配線60を介さないトランジスタのGND接続(点線Q)に比べて、広い周波数範囲で高い利得が得られ、高い周波数まで利得を向上させることができる。例えば、上記図2及び図4に示したように、第1層1000のサイドエッチングに起因してビア配線60に断線が生じると、図5に示すような、ビア配線60を介さないトランジスタのGND接続(点線Q)の場合の特性又はそれに近い特性になる。上記図1に示した半導体装置1A、上記図3に示した半導体装置1Bのように、第1層10のサイドエッチングが抑えられ、ビア配線60の断線が抑えられることで、ビア配線60を介したトランジスタのGND接続(実線P)が実現され、その特性の向上が図られる。
【0039】
[第2の実施の形態]
高出力特性、高周波特性を示す半導体装置は、レーダー、無線通信、マイクロ波加熱等の分野で利用される。GaN系窒化物半導体を用いたHEMTは、その物性的性能から、高耐圧で高速動作が可能なデバイスとして、ミリ波帯レーダーシステム、無線通信基地局システム、マイクロ波加熱システム等への応用が期待されている。このようなHEMTについて、消費電力や発熱量の低減、出力の増大、高周波特性の改善等が推し進められている。
【0040】
図6及び図7は第2の実施の形態に係る半導体装置の一例について説明する図である。図6には第2の実施の形態に係る半導体装置の一例の要部断面図を模式的に示している。図7(A)には第2の実施の形態に係る半導体装置の一例のトランジスタ形成面側から見た要部平面図を模式的に示している。図7(B)には第2の実施の形態に係る半導体装置の一例のトランジスタ形成面側とは反対の面側から見た要部平面図を模式的に示している。
【0041】
図6並びに図7(A)及び図7(B)に示す半導体装置100Aは、HEMTの一例である。半導体装置100Aは、図6に示すように、半導体基板140、トランジスタ200A、シード層110、マスク層120、エッチングストッパ層130、パッシベーション膜190、ビアホール150、ビア配線160及び配線170を有する。
【0042】
尚、図7(A)は、トランジスタ200Aのゲート電極210、ソース電極220及びドレイン電極230の平面レイアウト、ソース配線221及びドレイン配線231の平面レイアウト、並びにビアホール150の平面レイアウトを模式的に示したものである。図7(B)は、ビアホール150、ビア配線160及び配線170の平面レイアウトを模式的に示したものである。図6は、図7(A)のVI-VI線に沿った位置に対応する断面を模式的に示したものである。
【0043】
半導体装置100Aの構成を、主に図6を参照して説明する。
半導体基板140は、GaN基板141、及びGaN基板141に積層されるGaN系エピタキシャル層142を含む。半導体基板140のGaN系エピタキシャル層142の、素子間分離領域(「不活性領域」とも言う)201で画定される素子領域(「活性領域」とも言う)202に、トランジスタ200Aが設けられる。GaN系エピタキシャル層142の所定の領域に対するAr(アルゴン)等のイオン注入により、不活性領域201が形成される。半導体基板140の、トランジスタ200Aを含むGaN系エピタキシャル層142側の面140bを覆うように、パッシベーション膜190が設けられる。
【0044】
GaN系エピタキシャル層142は、例えば、チャネル層142a、バリア層142b及びキャップ層142cを含む。チャネル層142aには、GaN系窒化物半導体、例えば、GaNが用いられる。チャネル層142aは、電子走行層とも称される。バリア層142bには、チャネル層142aに用いられるGaN系窒化物半導体よりもバンドギャップの大きいGaN系窒化物半導体、例えば、AlGaNが用いられる。バリア層142bは、電子供給層とも称される。バリア層142bの自発分極、バリア層142bとチャネル層142aとの間の格子定数差に起因した歪みによって発生するピエゾ分極により、チャネル層142aのバリア層142bとの接合界面近傍に二次元電子ガス(Two Dimensional Electron Gas;2DEG)が生成される。キャップ層142cには、GaN系窒化物半導体、例えば、GaNが用いられる。
【0045】
GaN系エピタキシャル層142のキャップ層142c上に、トランジスタ200Aのゲート電極210が設けられる。例えば、キャップ層142cを貫通してバリア層142bと接続されるように、トランジスタ200Aのソース電極220及びドレイン電極230が設けられる。ゲート電極210は、ソース電極220とドレイン電極230との間に挟まれるように設けられる。ゲート電極210、ソース電極220及びドレイン電極230には、それぞれ所定の金属が用いられる。ゲート電極210は、ショットキー電極として機能するようにキャップ層142c上に設けられ、ソース電極220及びドレイン電極230は、オーミック電極として機能するようにバリア層142b上に設けられる。ゲート電極210には、ゲートパッド部216(図7(A))が設けられる。ソース電極220及びドレイン電極230にはそれぞれ、ソース配線221及びドレイン配線231が接続される。ソース配線221及びドレイン配線231には、所定の金属が用いられる。
【0046】
半導体装置100Aの動作時には、ソース電極220とドレイン電極230との間に所定の電圧が供給され、ゲート電極210に所定のゲート電圧が供給される。ソース電極220とドレイン電極230との間のチャネル層142aにキャリアの電子が輸送されるチャネルが形成され、半導体装置100Aのトランジスタ機能が実現される。
【0047】
半導体装置100Aでは、トランジスタ200Aが設けられるGaN系エピタキシャル層142が、有機金属気相成長(Metal Organic Chemical Vapor Deposition;MOCVD、若しくはMetal Organic Vapor Phase Epitaxy;MOVPE)法、又は分子線エピタキシー(Molecular Beam Epitaxy;MBE)法等を用いて、GaN基板141の面141bに成長される。
【0048】
ここで、GaN系エピタキシャル層142の成長に関しては、GaN系エピタキシャル層142を、SiC基板、Si基板、サファイア基板等に成長する技術が知られている。このような技術に用いられるSiC基板等は、それに成長されるGaN系エピタキシャル層142との間に比較的格子不整合が生じ易い。そのため、GaN系エピタキシャル層142内に、SiC基板等との格子不整合に起因した結晶欠陥等が比較的生じ易い。このようにして生じる結晶欠陥等は、電子トラップとなり、電流コラプスを引き起こし、トランジスタ200Aの出力や電子輸送効率等の特性を低下させる場合がある。
【0049】
これに対し、上記半導体装置100Aでは、GaN系エピタキシャル層142が、GaN基板141に成長される。GaN基板141は、低転位でGaN系エピタキシャル層142と格子整合し易い基板であり、GaN系エピタキシャル層142に結晶欠陥等が比較的生じ難いことから、電流コラプスを抑えることができる。このような点で、半導体層であるGaN系エピタキシャル層142を成長させる下地基板として、GaN基板141を用いることは、トランジスタ200Aの特性を向上させるうえで有効となる。
【0050】
ところで、トランジスタ200Aは、ソースインダクタンスを低減する観点から、そのソース電極220を、半導体基板140(GaN系エピタキシャル層142及びGaN基板141)を貫通するビア配線(「基板貫通ビア配線」とも言う)を介して、GND接続することが好ましい。基板貫通ビア配線によるGND接続技術は、GaN系エピタキシャル層142の下地基板にSiC基板等を用いる形態で実現されており、上記半導体装置100Aのような、下地基板にGaN基板141を用いる形態でも、適用されることが好ましい。
【0051】
半導体装置100Aでは、半導体基板140の、GaN基板141側の面140aに、シード層110が設けられる。シード層110の、GaN基板141とは反対側の面110aに、マスク層120が設けられる。半導体基板140の、GaN系エピタキシャル層142側の面140bに、エッチングストッパ層130が設けられる。そして、マスク層120及びシード層110を貫通し、更に半導体基板140をその面140aから面140bまで貫通し、エッチングストッパ層130に達するように、ビアホール150が設けられる。
【0052】
ビアホール150の内面、即ち、マスク層120の開口部120cの内面、その開口部120cに連通するシード層110の開口部110cの内面、及びその開口部110cに連通する半導体基板140の開口部140cの内面に、ビア配線160が設けられる。ビア配線60は、半導体基板140の面140bに設けられるエッチングストッパ層130と接続される。マスク層120の、シード層110とは反対側の面120aには、ビアホール150の内面に設けられるビア配線160から連続するように、配線170が設けられる。ここで、ビア配線160及び配線170は、シード層104とその上に設けられた導体層105との積層構造を有し、その積層構造の、ビアホール150の内面に設けられる部位が、ビア配線160として機能し、マスク層120の面120aに設けられる部位が、配線170として機能する。
【0053】
半導体装置100Aにおいて、半導体基板140の面140aに設けられるシード層110には、Auを含有する層、例えば、Au層又はAuを主体とする層が用いられる。シード層110の面110aに設けられるマスク層120には、Niを含有する層、例えば、Ni層又はNiを主体とする層が用いられる。また、半導体基板140の面140bに設けられるエッチングストッパ層130には、金属層、例えば、Niを含有する層が用いられる。ビア配線160及び配線170には、金属材料、例えば、Auを含有する材料が用いられる。例えば、ビア配線160及び配線170のシード層104に、Ti(チタン)及びAuの積層体(Ti/Au積層体)が用いられ、導体層105に、Au層が用いられる。
【0054】
半導体装置100Aにおいて、マスク層120は、半導体基板140の開口部140cをエッチングにより形成する際のマスクとしての機能を有する。シード層110は、マスク層120を半導体基板140の面140a側に形成する際の下地層としての機能を有する。例えば、厚さが100μm程度の半導体基板140のエッチングには、そのエッチングによる層厚の減少を考慮し、少なくとも数μm程度といった比較的厚いマスクが用いられる。そのため、Niを含有するマスク層120の形成には、蒸着やスパッタ法等よりも厚い層の形成が容易であって、よりストレスの低い層の形成が可能な電気めっき法が用いられる。シード層110は、このように電気めっき法でマスク層120を形成する際のシード層である。
【0055】
半導体装置100Aにおいて、エッチングストッパ層130は、ソース配線221によってトランジスタ200Aのソース電極220と接続される。配線170は、例えば、GND電位に設定される。トランジスタ200Aのソース電極220は、それとソース配線221を介して接続されるエッチングストッパ層130、更にそれと接続されるビア配線160及び配線170を通じて、GND接続される。ビア配線160を介してトランジスタ200Aのソース電極220をGND接続することにより、ソースインダクタンスが低減され、トランジスタ200Aの特性が高められる。
【0056】
半導体装置100Aでは、マスク層120の下地層であるシード層110に、Auを含有する層が用いられる。これにより、Niを含有するマスク層120をマスクとして、GaN基板141及びGaN系エピタキシャル層142を含む半導体基板140を、Cl系ガスを用いてエッチングする際、シード層110にサイドエッチングが生じることが抑えられる。Auを含有する層であるシード層110は、Cl系ガスに対するエッチング耐性が比較的高いためである。シード層110にサイドエッチングが生じることが抑えられることで、ビアホール150の内面におけるシード層110の部位に段差が生じることが抑えられ、ビアホール150の内面に設けられるビア配線160の断線が抑えられる。
【0057】
ビア配線160の断線が抑えられることで、トランジスタ200Aのソース電極220が、ソース配線221、エッチングストッパ層130及びビア配線160を通じて、GND電位とされる配線170と接続され、GND接続される。これにより、基板貫通ビア配線によってGND接続が行われ、ソースインダクタンスが低く、優れた特性を示すトランジスタ200Aを備えた、高性能の半導体装置100Aが実現される。
【0058】
次に、上記のような構成を有する半導体装置100Aの形成方法について説明する。
図8図12は第2の実施の形態に係る半導体装置の形成方法の一例について説明する図である。図8(A)、図8(B)、図9(A)、図9(B)、図10(A)、図10(B)、図11(A)、図11(B)、図12(A)及び図12(B)にはそれぞれ、第2の実施の形態に係る半導体装置形成の各工程の一例の要部断面図を模式的に示している。
【0059】
まず、図8(A)に示すような構造体101Aが準備される。構造体101Aは、上記のようなビアホール150、ビア配線160及び配線170が形成される前の、半導体装置100Aの基本構造の一例である。
【0060】
構造体101Aは、例えば、厚さ350μmの半絶縁性のGaN基板141の面141bに、GaN系エピタキシャル層142として、GaNのチャネル層142a、AlGaNのバリア層142b、及びGaNのキャップ層142cが、例えば、MOVPE法を用いて、順に成長された構造を有する。ここで、GaN基板141とチャネル層142aとの間には、Fe(鉄)をドーピングしたGaN層が挿入されてもよい。
【0061】
MOVPE法を用いた各層の成長において、GaNの成長には、Ga源であるトリメチルガリウム(Tri-Methyl-Gallium;TMGa)とNH(アンモニア)との混合ガスが用いられる。AlGaNの成長には、Al源であるトリメチルアルミニウム(Tri-Methyl-Aluminum;TMAl)とTMGaとNHとの混合ガスが用いられる。成長する窒化物半導体に応じて、TMGa、TMAlの供給と停止(切り替え)、供給時の流量(他原料との混合比)が適宜設定される。成長する窒化物半導体に応じて、成長圧力、成長温度が適宜設定される。
【0062】
GaN系エピタキシャル層142の成長後、Ar等のイオン注入により、不活性領域(素子間分離領域)201が形成される。そして、キャップ層142cを貫通してバリア層142bに達するリセスの形成後、フォトリソグラフィ技術、蒸着技術及びリフトオフ技術を用いて、ソース電極220及びドレイン電極230が形成される。更に、同様にフォトリソグラフィ技術、蒸着技術及びリフトオフ技術を用いて、ゲート電極210の形成が行われる。半導体基板140の面140bには、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法等を用いて、SiN(窒化シリコン)のパッシベーション膜190が形成される。
【0063】
続いて、エッチングストッパ層130を形成する領域を加工するためのレジストのパターンが形成され、SF及びCHFの混合ガスを用いて、パッシベーション膜190がドライエッチングされる。レジストの除去後、エッチングストッパ層130となるNiを電気めっきするために、例えば、スパッタ法を用いて、Ti/Au積層体がシード層として形成される。そして、そのシード層上に、エッチングストッパ層130を形成する領域に開口部を有するレジストのパターンが形成され、シード層を給電層としてNiの電気めっき層が形成される。レジストが除去され、その除去後に露出するシード層が、例えば、イオンミリングで除去され、Ti/Au積層体のシード層とNiの電気めっき層との積層構造を有するエッチングストッパ層130が形成される。尚、ここでは便宜上、エッチングストッパ層130を模式的に単層で図示している。
【0064】
続いて、例えば、スパッタ法を用いて、Ti、Pt(白金)及びAuの積層体(Ti/Pt/Au積層体)がシード層として形成され、その上に、ソース配線221及びドレイン配線231を形成する領域に開口部を有するレジストのパターンが形成される。そのシード層を給電層としてAuの電気めっき層が形成される。レジストが除去され、その除去後に露出するシード層が、例えば、イオンミリングで除去され、Ti/Pt/Au積層体のシード層とAuの電気めっき層との積層構造を有するソース配線221及びドレイン配線231が形成される。ソース配線221は、エッチングストッパ層130と接続されるように形成される。尚、ここでは便宜上、ソース配線221及びドレイン配線231をいずれも模式的に単層で図示している。
【0065】
このような工程により、半導体装置100Aの基本構造であって、トランジスタ200Aを含む、図8(A)に示すような構造体101Aが得られる。
得られた構造体101Aは、図8(B)に示すように、そのトランジスタ200Aの形成面側に熱可塑性接着剤310が塗布され、サポート板300と貼り合わせられる。そして、トランジスタ200Aの形成面側とは反対のGaN基板141の面側が、研削、研磨される。これにより、GaN基板141が、厚さ100μm程度まで薄化される。
【0066】
次いで、図9(A)に示すように、薄化されたGaN基板141の面、即ち、半導体基板140の面140aに、例えば、スパッタ法を用いて、Ti/Au積層体のシード層110が形成される。ここで、シード層110は、Auを主体として含有する層である。例えば、厚さ10nm~30nm程度のTi層と、厚さ200nm~400nm程度のAu層との積層体のシード層110が形成される。シード層110の形成後、図9(B)に示すように、形成されたシード層110の面110aに、ビアホール150を形成する領域に対応する部位を覆うように、レジスト320が形成される。形成されるレジスト320の直径(形成するビアホール150の直径に相当)は、例えば、80μmとされる。
【0067】
レジスト320の形成後、図10(A)に示すように、シード層110を給電層として、マスク層120となるNiの電気めっき層が形成される。そして、図10(B)に示すように、レジストが除去され、その除去後に露出するシード層110が、例えば、イオンミリングで除去される。これにより、開口部110cを有しAuを主体として含有するシード層110を下地層とし、その上に、その開口部110cに連通する開口部120cを有するNiの電気めっき層がマスク層120として形成された構造が得られる。
【0068】
次いで、図11(A)に示すように、マスク層120をマスクとして、マスク層120側から半導体基板140のGaN基板141及びGaN系エピタキシャル層142がエッチングされる。エッチングは、ICPエッチングにより、ガス比が10%のCl及びBClの混合ガス、即ち、Cl系ガスを用いて、圧力が2Pa、上部電極パワーが2kW、下部電極パワーが0.25kWの条件で、行われる。この時のGaNのエッチングレートは、例えば、1.5μm/minである。マスク層120をマスクとして、このような条件を用いてGaN基板141、更にGaN系エピタキシャル層142がエッチングされ、マスク層120の開口部120c及びシード層110の開口部110cと連通する、半導体基板140の開口部140cが形成される。これにより、マスク層120及びシード層110を貫通し、更に半導体基板140をその面140aから面140bまで貫通し、エッチングストッパ層130に達する、ビアホール150が形成される。ビアホール150の形成後は、残存するClによるエロージョンを抑えるため、純水による流水洗浄が行われる。
【0069】
このように、半導体基板140のGaN基板141及びGaN系エピタキシャル層142のエッチングには、Cl系ガスが用いられる。Cl系ガスを用いたエッチングの際、シード層110にCuを主体として含有する層が用いられていると、サイドエッチングが生じる。これに対し、この形成方法の例では、シード層110として、Cl系ガスに対するエッチング耐性が比較的高い、Auを主体として含有する層が設けられる。これにより、Cl系ガスを用いた半導体基板140のエッチング、それによるビアホール150の形成時に、シード層110にサイドエッチングが生じることが抑えられる。
【0070】
ビアホール150の形成後、図11(B)に示すように、形成されたビアホール150の内面、即ち、マスク層120の開口部120cの内面、シード層110の開口部110cの内面、及び半導体基板140の開口部140cの内面に、シード層104が形成される。例えば、スパッタ法を用いて、逆スパッタの実施後、Ti/Au積層体のシード層104が形成される。そして、シード層104の形成後、図12(A)に示すように、シード層104を給電層としてAuの電気めっき層が形成され、導体層105が形成される。これにより、ビアホール150の内面にビア配線160が形成され、マスク層120の面120aに、ビアホール150の内面のビア配線160から連続する配線170が形成された構造が得られる。
【0071】
前述のように、この形成方法の例では、シード層110として、Auを主体として含有する層が設けられ、Cl系ガスを用いたエッチングにおいても、シード層110にサイドエッチングが生じることが抑えられる。そのため、図11(B)に示すようなシード層104の形成時に、そのシード層104が、ビアホール150内のシード層110の部位を、他の部位と連続して覆い、当該部位でシード層104の形成が妨げられることが抑えられる。シード層104の形成が妨げられることが抑えられるため、図12(A)に示すような導体層105の電気めっき法を用いた形成時に、導体層105が、ビアホール150内のシード層110の部位を覆うシード層104上に、他の部位と連続して形成される。これにより、ビアホール150の内面に、ビアホール150内のシード層110のサイドエッチングに起因する断線が抑えられたビア配線160が形成される。
【0072】
ビア配線160及び配線170の形成後は、サポート板300が剥離され、熱可塑性接着剤310が除去される。これにより、図12(B)に示すような基板貫通ビア配線を備えた半導体装置100Aが得られる。
【0073】
この形成方法の例によって得られる半導体装置100Aによれば、Cl系ガスを用いた半導体基板140のエッチング時におけるビアホール150内のシード層110のサイドエッチングが抑えられ、エッチング後に形成されるビア配線160の断線が抑えられる。これにより、トランジスタ200Aのソース電極220が、ソース配線221、エッチングストッパ層130及びビア配線160を通じて、GND電位とされる配線170と接続され、GND接続される。基板貫通ビア配線によってGND接続が行われ、ソースインダクタンスが低く、優れた特性を示すトランジスタ200Aを備えた、高性能の半導体装置100Aが実現される。
【0074】
[第3の実施の形態]
図13は第3の実施の形態に係る半導体装置の一例について説明する図である。図13(A)には第3の実施の形態に係る半導体装置の一例のトランジスタ形成面側から見た要部平面図を模式的に示している。図13(B)には第3の実施の形態に係る半導体装置の一例のトランジスタ形成面側とは反対の面側から見た要部平面図を模式的に示している。
【0075】
図13(A)及び図13(B)に示す半導体装置100Bは、マルチフィンガーの電極構造を有するトランジスタ200Bを備える。
半導体装置100Bは、例えば、図13(A)に示すように、平面櫛歯状のゲート電極210、ソース電極220及びドレイン電極230を備える。例えば、ソース電極220の複数本(一例として4本)のソースフィンガー部225の、隣接するもの同士の間にそれぞれ、ドレイン電極230の複数本(一例として3本)のドレインフィンガー部235のうちの1本が位置する。一対のソースフィンガー部225とドレインフィンガー部235との間にそれぞれ、ゲート電極210の複数本(一例として6本)のゲートフィンガー部215のうちの1本が位置する。ゲートフィンガー部215、ソースフィンガー部225及びドレインフィンガー部235は、活性領域202内に位置するように、設けられる。複数本のゲートフィンガー部215は、ゲート電極210が備える共通のゲートパッド部216と接続される。複数本のソースフィンガー部225は、ソース電極220が備える共通のソースパッド部226と接続され、複数本のドレインフィンガー部235は、ドレイン電極230が備える共通のドレインパッド部236と接続される。
【0076】
尚、図13(A)は、半導体装置100Bにおけるトランジスタ200Bのゲート電極210、ソース電極220及びドレイン電極230の平面レイアウト、ビアホール150の平面レイアウトを模式的に示したものである。
【0077】
トランジスタ200Bにおける1本のゲートフィンガー部215とそれを挟む一対のソースフィンガー部225及びドレインフィンガー部235とがそれぞれ、上記第2の実施の形態で述べたトランジスタ200Aにおけるゲート電極210とソース電極220及びドレイン電極230とに相当する機能を持つ。1本のゲートフィンガー部215とそれを挟む一対のソースフィンガー部225及びドレインフィンガー部235とが設けられる各領域がそれぞれ、上記第2の実施の形態で述べた1つのトランジスタ200Aに相当する機能を持つ。
【0078】
マルチフィンガーの電極構造を有する半導体装置100Bでは、例えば、図13(A)に示すように、複数本のソースフィンガー部225が接続されるソースパッド部226に対応する位置に、ビアホール150及びその内面のビア配線160が設けられる。半導体装置100Bの、トランジスタ200Bの形成面側とは反対の面側には、上記第2の実施の形態と同様、図13(B)に示すように、ビアホール150の内面のビア配線160から連続する配線170が設けられる。
【0079】
尚、図13(B)は、半導体装置100Bにおけるビアホール150、ビア配線160及び配線170の平面レイアウトを模式的に示したものである。
このように、マルチフィンガーの電極構造を有する半導体装置100Bの場合には、ビアホール150及びその内面のビア配線160を、ソースパッド部226に対応する位置に設けることができる。このような半導体装置100Bの場合にも、ビアホール150及びその内面のビア配線160の形成に関し、上記第2の実施の形態で述べたのと同様の形成方法を採用することができる。
【0080】
具体的には、ソースパッド部226の直下にエッチングストッパ層130を設け、これに対応する位置に、マスク層120及びシード層110並びに半導体基板140を貫通してエッチングストッパ層130に達するビアホール150を形成する。そして、そのビアホール150の内面にビア配線160を形成する。シード層110にAuを含有する層を用いることで、Cl系ガスを用いた半導体基板140のエッチング時のサイドエッチングが抑えられ、それにより、ビアホール150の内面に形成されるビア配線160の断線が抑えられる。トランジスタ200Bのソースパッド部226が、その直下のエッチングストッパ層130、及び断線が抑えられたビア配線160を通じて、GND電位とされる配線170と接続され、GND接続される。これにより、ソースインダクタンスが低く、優れた特性を示すトランジスタ200Bを備えた、高性能の半導体装置100Bが実現される。
【0081】
[第4の実施の形態]
図14及び図15は第4の実施の形態に係る半導体装置の一例について説明する図である。図14には第4の実施の形態に係る半導体装置の一例の要部断面図を模式的に示している。図15(A)には第4の実施の形態に係る半導体装置の一例のトランジスタ形成面側から見た要部平面図を模式的に示している。図15(B)には第4の実施の形態に係る半導体装置の一例のトランジスタ形成面側とは反対の面側から見た要部平面図を模式的に示している。
【0082】
図14並びに図15(A)及び図15(B)に示す半導体装置100Cは、マルチフィンガーの電極構造を有するトランジスタ200Cを備える。
尚、図15(A)は、半導体装置100Cにおけるトランジスタ200Cのゲート電極210、ソース電極220及びドレイン電極230の平面レイアウト、並びにビアホール150の平面レイアウトを模式的に示したものである。図15(B)は、半導体装置100Cにおけるビアホール150、ビア配線160及び配線170の平面レイアウトを模式的に示したものである。図14は、図15(A)のXIV-XIV線に沿った位置に対応する断面を模式的に示したものである。
【0083】
半導体装置100Cは、図14に示すように、ソース電極220内(図15(A)に示す各ソースフィンガー部225内)にエッチングストッパ層130が設けられた構成を有する。ソース電極220は、半導体基板140のGaN系エピタキシャル層142におけるキャップ層142cを貫通し、バリア層142bに達するように設けられる。バリア層142b上にエッチングストッパ層130が設けられ、そのエッチングストッパ層130を覆うようにソース電極220(ソースフィンガー部225)が設けられ、そのソース電極220上にソース配線221が設けられる。マスク層120及びシード層110並びに半導体基板140(GaN基板141並びにGaN系エピタキシャル層142のチャネル層142a及びバリア層142b)を貫通し、エッチングストッパ層130に達するように、ビアホール150が設けられる。そのビアホール150の内面に、ビア配線160が設けられる。
【0084】
図15(A)に示すような複数本のソースフィンガー部225の各々に対し、図14のソース電極220について述べたのと同様の構成が採用される。ビアホール150及びビア配線160は、GND電位とされる配線170との接続面積の増大、接続箇所の分布の均一化のため、1本のソースフィンガー部225につき複数箇所(図15(A)及び図15(B)の例では1本につき2箇所)、設けられてもよい。
【0085】
半導体装置100Cは、このような構成を有する点で、上記第2の実施の形態で述べた半導体装置100Aと相違する。
半導体装置100Cでは、マスク層120の下地層であるシード層110に、Auを含有する層が用いられる。これにより、Niを含有するマスク層120をマスクとして、GaN基板141及びGaN系エピタキシャル層142を含む半導体基板140を、Cl系ガスを用いてエッチングする際、シード層110にサイドエッチングが生じることが抑えられる。シード層110にサイドエッチングが生じることが抑えられることで、ビアホール150の内面に形成されるビア配線160の断線が抑えられる。トランジスタ200Cのソースフィンガー部225は、その内部に設けられるエッチングストッパ層130、及び断線が抑えられたビア配線160を通じて、GND電位とされる配線170と接続され、GND接続される。これにより、ソースインダクタンスが低く、優れた特性を示すトランジスタ200Cを備えた、高性能の半導体装置100Cが実現される。
【0086】
[第5の実施の形態]
図16は第5の実施の形態に係る半導体装置の一例について説明する図である。図16には第5の実施の形態に係る半導体装置の一例の要部断面図を模式的に示している。
【0087】
図16に示す半導体装置100Dは、半導体基板140におけるGaN基板141上のGaN系エピタキシャル層142がメサ形状とされ、そのメサ形状のGaN系エピタキシャル層142にトランジスタ200Dが設けられた構成を有する。メサ形状のGaN系エピタキシャル層142が、トランジスタ200Dが設けられる活性領域202として機能する。
【0088】
半導体装置100Dでは、メサ形状のGaN系エピタキシャル層142の外側の、GaN系エピタキシャル層142が設けられない領域のGaN基板141上、即ち、その面141bに、エッチングストッパ層130が設けられる。メサ形状のGaN系エピタキシャル層142に設けられたソース電極220と、GaN系エピタキシャル層142の外側のGaN基板141上に設けられたエッチングストッパ層130とが、ソース配線221によって接続される。そして、マスク層120及びシード層110を貫通し、GaN基板141を面140aから面141bまで貫通し、エッチングストッパ層130に達するように、ビアホール150が設けられる。そのビアホール150の内面に、ビア配線160が設けられ、マスク層120の面120aに、ビア配線160から連続する配線170が設けられる。
【0089】
半導体装置100Dは、このような構成を有する点で、上記第2の実施の形態で述べた半導体装置100Aと相違する。
半導体装置100Dでは、マスク層120の下地層であるシード層110に、Auを含有する層が用いられる。これにより、Niを含有するマスク層120をマスクとして、半導体基板140に含まれるGaN基板141を、Cl系ガスを用いてエッチングする際、シード層110にサイドエッチングが生じることが抑えられる。シード層110にサイドエッチングが生じることが抑えられることで、ビアホール150の内面に設けられるビア配線160の断線が抑えられる。トランジスタ200Dのソース電極220は、ソース配線221、エッチングストッパ層130及びビア配線160を通じて、GND電位とされる配線170と接続され、GND接続される。これにより、ソースインダクタンスが低く、優れた特性を示すトランジスタ200Dを備えた、高性能の半導体装置100Dが実現される。
【0090】
次に、上記のような構成を有する半導体装置100Dの形成方法について説明する。
図17図21は第5の実施の形態に係る半導体装置の形成方法の一例について説明する図である。図17(A)、図17(B)、図18(A)、図18(B)、図19(A)、図19(B)、図20(A)、図20(B)、図21(A)及び図21(B)にはそれぞれ、第5の実施の形態に係る半導体装置形成の各工程の一例の要部断面図を模式的に示している。
【0091】
まず、図17(A)に示すような構造体101Dが準備される。構造体101Dは、上記のようなビアホール150、ビア配線160及び配線170が形成される前の、半導体装置100Dの基本構造の一例である。
【0092】
構造体101Dは、例えば、厚さ350μmの半絶縁性のGaN基板141の面141bに、GaN系エピタキシャル層142として、GaNのチャネル層142a、AlGaNのバリア層142b、及びGaNのキャップ層142cが、例えば、MOVPE法を用いて、順に成長された構造を有する。ここで、GaN基板141とチャネル層142aとの間には、FeをドーピングしたGaN層が挿入されてもよい。
【0093】
MOVPE法を用いた各層の成長において、GaNの成長には、TMGaとNHとの混合ガスが用いられる。AlGaNの成長には、TMAlとTMGaとNHとの混合ガスが用いられる。成長する窒化物半導体に応じて、TMGa、TMAlの供給と停止(切り替え)、供給時の流量(他原料との混合比)が適宜設定される。成長する窒化物半導体に応じて、成長圧力、成長温度が適宜設定される。
【0094】
構造体101Dの形成では、まず、GaN基板141に成長されたGaN系エピタキシャル層142の、メサ形状の活性領域202として残す部分に、レジストのパターンが形成される。そして、ドライエッチング又は光電気化学(Photo Electro Chemical;PEC)エッチング等の手法を用いて、GaN系エピタキシャル層142が、例えば、GaN基板141の面141bまでエッチングされる。エッチング後、レジストが除去される。これにより、GaN基板141と、その面141bの一部にメサ形状で形成されたGaN系エピタキシャル層142とを含む、半導体基板140が形成される。この形成方法の例では、GaN系エピタキシャル層142がエッチングによりメサ形状とされることで素子間分離が実現されるため、Ar等のイオン注入による素子間分離工程は省略することができる。尚、GaN系エピタキシャル層142のエッチングの際、チャネル層142aは、2DEGが生成されない程度までであれば、GaN基板141の面141bに残されても構わない。
【0095】
GaN系エピタキシャル層142のエッチング後、キャップ層142cを貫通してバリア層142bに達するリセスが形成され、フォトリソグラフィ技術、蒸着技術及びリフトオフ技術を用いて、ソース電極220及びドレイン電極230が形成される。更に、同様にフォトリソグラフィ技術、蒸着技術及びリフトオフ技術を用いて、ゲート電極210の形成が行われる。半導体基板140上(メサ形状のGaN系エピタキシャル層142上及びGaN基板141上)には、プラズマCVD法等を用いて、SiNのパッシベーション膜190が形成される。
【0096】
続いて、エッチングストッパ層130を形成する領域を加工するためのレジストのパターンが形成され、SF及びCHFの混合ガスを用いて、パッシベーション膜190がドライエッチングされる。レジストの除去後、エッチングストッパ層130となるNiを電気めっきするために、例えば、スパッタ法を用いて、Ti/Au積層体がシード層として形成される。そして、そのシード層上に、エッチングストッパ層130を形成する領域に開口部を有するレジストのパターンが形成され、シード層を給電層としてNiの電気めっき層が形成される。レジストが除去され、その除去後に露出するシード層が、例えば、イオンミリングで除去され、Ti/Au積層体のシード層とNiの電気めっき層との積層構造を有するエッチングストッパ層130が形成される。尚、ここでは便宜上、エッチングストッパ層130を模式的に単層で図示している。
【0097】
続いて、例えば、スパッタ法を用いて、Ti/Pt/Au積層体がシード層として形成され、その上に、ソース配線221及びドレイン配線231を形成する領域に開口部を有するレジストのパターンが形成される。そのシード層を給電層としてAuの電気めっき層が形成される。レジストが除去され、その除去後に露出するシード層が、例えば、イオンミリングで除去され、Ti/Pt/Au積層体のシード層とAuの電気めっき層との積層構造を有するソース配線221及びドレイン配線231が形成される。ソース配線221は、エッチングストッパ層130と接続されるように形成される。尚、ここでは便宜上、ソース配線221及びドレイン配線231をいずれも模式的に単層で図示している。
【0098】
このような工程により、半導体装置100Dの基本構造であって、トランジスタ200Dを含む、図17(A)に示すような構造体101Dが得られる。
得られた構造体101Dは、図17(B)に示すように、そのトランジスタ200Dの形成面側に熱可塑性接着剤310が塗布され、サポート板300と貼り合わせられる。そして、そのトランジスタ200Dの形成面側とは反対のGaN基板141の面側が、研削、研磨される。これにより、GaN基板141が、厚さ100μm程度まで薄化される。
【0099】
次いで、図18(A)に示すように、薄化されたGaN基板141の面、即ち、半導体基板140の面140aに、例えば、スパッタ法を用いて、Ti/Au積層体のシード層110が形成される。ここで、シード層110は、Auを主体として含有する層である。例えば、厚さ10nm~30nm程度のTi層と、厚さ200nm~400nm程度のAu層との積層体のシード層110が形成される。シード層110の形成後、図18(B)に示すように、形成されたシード層110の面110aに、ビアホール150を形成する領域に対応する部位を覆うように、レジスト320が形成される。形成されるレジスト320の直径(形成するビアホール150の直径に相当)は、例えば、80μmとされる。
【0100】
レジスト320の形成後、図19(A)に示すように、シード層110を給電層として、マスク層120となるNiの電気めっき層が形成される。そして、図19(B)に示すように、レジストが除去され、その除去後に露出するシード層110が、例えば、イオンミリングで除去される。これにより、開口部110cを有しAuを主体として含有するシード層110を下地層とし、その上に、その開口部110cに連通する開口部120cを有するNiの電気めっき層がマスク層120として形成された構造が得られる。
【0101】
次いで、図20(A)に示すように、マスク層120をマスクとして、マスク層120側からGaN基板141がエッチングされる。エッチングは、ICPエッチングにより、ガス比が10%のCl及びBClの混合ガスを用いて、圧力が2Pa、上部電極パワーが2kW、下部電極パワーが0.25kWの条件で、行われる。この時のGaNのエッチングレートは、例えば、1.5μm/minである。マスク層120をマスクとして、このような条件を用いてGaN基板141がエッチングされ、マスク層120の開口部120c及びシード層110の開口部110cと連通する、半導体基板140(そのGaN基板141)の開口部140cが形成される。これにより、マスク層120及びシード層110を貫通し、更にGaN基板141を面140aから面141bまで貫通し、エッチングストッパ層130に達する、ビアホール150が形成される。ビアホール150の形成後は、残存するClによるエロージョンを抑えるため、純水による流水洗浄が行われる。
【0102】
このように、GaN基板141のエッチングには、Cl系ガスが用いられる。Cl系ガスを用いたエッチングの際、シード層110にCuを主体として含有する層が用いられていると、サイドエッチングが生じる。これに対し、この形成方法の例では、シード層110として、Cl系ガスに対するエッチング耐性が比較的高い、Auを主体として含有する層が設けられる。これにより、Cl系ガスを用いたGaN基板141のエッチング、それによるビアホール150の形成時に、シード層110にサイドエッチングが生じることが抑えられる。
【0103】
ビアホール150の形成後、図20(B)に示すように、形成されたビアホール150の内面、即ち、マスク層120の開口部120cの内面、シード層110の開口部110cの内面、及びGaN基板141の開口部140cの内面に、シード層104が形成される。例えば、スパッタ法を用いて、逆スパッタの実施後、Ti/Au積層体のシード層104が形成される。そして、シード層104の形成後、図21(A)に示すように、シード層104を給電層としてAuの電気めっき層が形成され、導体層105が形成される。これにより、ビアホール150の内面にビア配線160が形成され、マスク層120の面120aに、ビアホール150の内面のビア配線160から連続する配線170が形成された構造が得られる。
【0104】
前述のように、この形成方法の例では、シード層110として、Auを主体として含有する層が設けられ、Cl系ガスを用いたエッチングにおいても、シード層110にサイドエッチングが生じることが抑えられる。そのため、図20(B)に示すようなシード層104の形成時に、そのシード層104が、ビアホール150内のシード層110の部位を、他の部位と連続して覆い、当該部位でシード層104の形成が妨げられることが抑えられる。シード層104の形成が妨げられることが抑えられるため、図21(A)に示すような導体層105の電気めっき法を用いた形成時に、導体層105が、ビアホール150内のシード層110の部位を覆うシード層104上に、他の部位と連続して形成される。これにより、ビアホール150の内面に、ビアホール150内のシード層110のサイドエッチングに起因する断線が抑えられたビア配線160が形成される。
【0105】
ビア配線160及び配線170の形成後は、サポート板300が剥離され、熱可塑性接着剤310が除去される。これにより、図21(B)に示すような基板貫通ビア配線を備えた半導体装置100Dが得られる。
【0106】
この形成方法の例によって得られる半導体装置100Dによれば、Cl系ガスを用いたGaN基板141のエッチング時におけるビアホール150内のシード層110のサイドエッチングが抑えられ、エッチング後に形成されるビア配線160の断線が抑えられる。これにより、トランジスタ200Dのソース電極220が、ソース配線221、エッチングストッパ層130及びビア配線160を通じて、GND電位とされる配線170と接続され、GND接続される。ソースインダクタンスが低く、優れた特性を示すトランジスタ200Dを備えた、高性能の半導体装置100Dが実現される。
【0107】
尚、上記第2~第5の実施の形態で述べた半導体装置100A,100B,100C,100Dの各トランジスタ200A,200B,200C,200D(HEMT)を設けるためのGaN系エピタキシャル層142の積層構造は、上記の例に限定されない。例えば、キャップ層142cを省略したり、キャップ層142c上に更に別のキャップ層を設けたり、チャネル層142aとバリア層142bとの間に更にスペーサ層を設けたり、チャネル層142aの下に更に別のバリア層やバッファ層を設けたりすることもできる。GaN系エピタキシャル層142を構成する各層には、各々の機能に適した各種GaN系窒化物半導体を用いることができる。
【0108】
また、各トランジスタ200A,200B,200C,200D(HEMT)は、GaN系エピタキシャル層142上に酸化物、窒化物又は酸窒化物等のゲート絶縁膜を介してゲート電極210を設け、MIS型トランジスタとしてもよい。
【0109】
[第6の実施の形態]
図22は第6の実施の形態に係る半導体装置の一例について説明する図である。図22には第6の実施の形態に係る半導体装置の一例の要部断面図を模式的に示している。
【0110】
図22に示す半導体装置100Eは、GaN系エピタキシャル層142に設けられるトランジスタ200Eとして、HBTが設けられた構成を有する。半導体装置100Eは、このような点で、上記第5の実施の形態で述べた半導体装置100Dと相違する。
【0111】
半導体装置100Eは、GaN基板141、及びGaN基板141に成長されたGaN系エピタキシャル層142を有する。GaN系エピタキシャル層142に、トランジスタ200Eとして、HBTが設けられる。
【0112】
半導体装置100EのGaN系エピタキシャル層142は、サブコレクタ層142d、コレクタ層142e、ベース層142f及びエミッタ層142gを含む。サブコレクタ層142dは、GaN基板141上に設けられる。サブコレクタ層142dには、例えば、n型不純物が比較的高濃度にドーピングされたn型GaNが用いられる。コレクタ層142eは、サブコレクタ層142d上の一部に設けられる。コレクタ層142eには、例えば、GaNが用いられる。ベース層142fは、コレクタ層142e上に設けられる。ベース層142fには、例えば、p型不純物がドーピングされたp型GaNが用いられる。エミッタ層142gは、ベース層142f上の一部に設けられる。エミッタ層142gには、例えば、AlGaNが用いられる。ベース層142fの、エミッタ層142gから露出する部位に、ベース電極240が接続される。エミッタ層142gに、エミッタ電極250が接続される。サブコレクタ層142dの、コレクタ層142eから露出する部位に、コレクタ電極260が接続される。
【0113】
GaN系エピタキシャル層142に設けられたトランジスタ200Eは、パッシベーション膜190で覆われる。パッシベーション膜190から露出されたエミッタ電極250が、エミッタ配線221aを介して、GaN基板141の面141bに設けられたエッチングストッパ層130と接続される。
【0114】
GaN基板141の、トランジスタ200Eの形成面側とは反対の面140a側に設けられたマスク層120及びその下地層であるシード層110を貫通し、更にGaN基板141を貫通し、エッチングストッパ層130に達するように、ビアホール150が設けられる。そのビアホール150の内面に、エッチングストッパ層130と接続されるビア配線160が設けられ、マスク層120の面120aに、ビア配線160から連続する配線170が設けられる。シード層110に、Auを含有する層が用いられることで、Cl系ガスを用いたビアホール150の形成時に、シード層110がサイドエッチングされることが抑えられ、ビアホール150の内面に設けられるビア配線160の断線が抑えられる。
【0115】
GaN系エピタキシャル層142に設けられたトランジスタ200Eのエミッタ電極250は、エミッタ配線221a、エッチングストッパ層130、ビア配線160を通じて、GND電位とされる配線170と接続され、GND接続される。基板貫通ビア配線によってGND接続が行われ、エミッタインダクタンスが低く、優れた特性を示すトランジスタ200Eを備えた、高性能の半導体装置100Eが実現される。
【0116】
この半導体装置100Eのように、半導体基板140におけるGaN基板141上のGaN系エピタキシャル層142には、HEMTに限らず、HBTのようなトランジスタ200Eが設けられてもよい。
【0117】
[第7の実施の形態]
図23は第7の実施の形態に係る半導体装置の一例について説明する図である。図23には第7の実施の形態に係る半導体装置の一例の要部断面図を模式的に示している。
【0118】
図23に示す半導体装置100Fは、GaN系エピタキシャル層142に設けられるトランジスタ200Fとして、フィン型FET又はナノワイヤ型FETが設けられた構成を有する。半導体装置100Fは、このような点で、上記第5の実施の形態で述べた半導体装置100Dと相違する。
【0119】
半導体装置100Fは、GaN基板141、及びGaN基板141に成長されたGaN系エピタキシャル層142を有する。GaN系エピタキシャル層142に、トランジスタ200Fとして、フィン型FET又はナノワイヤ型FETが設けられる。
【0120】
半導体装置100FのGaN系エピタキシャル層142は、コンタクト層142h、ドリフト層142i、チャネル層142j及びコンタクト層142kを含む。コンタクト層142hは、GaN基板141上に設けられる。コンタクト層142hには、例えば、n型GaNが用いられる。ドリフト層142iは、コンタクト層142h上の一部に設けられる。ドリフト層142iには、例えば、GaNが用いられる。チャネル層142jは、ドリフト層142i上に設けられる。チャネル層142jには、例えば、n型不純物がドーピングされたn型GaNが用いられる。コンタクト層142kは、チャネル層142j上に設けられる。コンタクト層142kには、例えば、n型GaNが用いられる。ドリフト層142i、チャネル層142j及びコンタクト層142kが、フィン形状又はナノワイヤ形状に形成される。フィン形状又はナノワイヤ形状のドリフト層142i、チャネル層142j及びコンタクト層142kの側面には、AlO(酸化アルミニウム)等のゲート絶縁膜191が設けられる。チャネル層142jに対応する部位に、ゲート絶縁膜191を介してゲート電極270が設けられる。コンタクト層142kに、ソース電極280が接続される。コンタクト層142hの、ドリフト層142iから露出する部位に、ドレイン電極290が接続される。
【0121】
GaN系エピタキシャル層142に設けられたトランジスタ200Fは、パッシベーション膜190で覆われる。パッシベーション膜190から露出されたソース電極280が、ソース配線221を介して、GaN基板141の面141bに設けられたエッチングストッパ層130と接続される。
【0122】
GaN基板141の、トランジスタ200Fの形成面側とは反対の面140a側に設けられたマスク層120及びその下地層であるシード層110を貫通し、更にGaN基板141を貫通し、エッチングストッパ層130に達するように、ビアホール150が設けられる。そのビアホール150の内面に、エッチングストッパ層130と接続されるビア配線160が設けられ、マスク層120の面120aに、ビア配線160から連続する配線170が設けられる。シード層110に、Auを含有する層が用いられることで、Cl系ガスを用いたビアホール150の形成時に、シード層110がサイドエッチングされることが抑えられ、ビアホール150の内面に設けられるビア配線160の断線が抑えられる。
【0123】
GaN系エピタキシャル層142に設けられたトランジスタ200Fのソース電極280は、ソース配線221、エッチングストッパ層130、ビア配線160を通じて、GND電位とされる配線170と接続され、GND接続される。基板貫通ビア配線によってGND接続が行われ、ソースインダクタンスが低く、優れた特性を示すトランジスタ200Fを備えた、高性能の半導体装置100Fが実現される。
【0124】
この半導体装置100Fのように、半導体基板140におけるGaN基板141上のGaN系エピタキシャル層142には、HEMTに限らず、フィン型FET又はナノワイヤ型FETのようなトランジスタ200Fが設けられてもよい。
【0125】
以上、第1~第7の実施の形態について説明した。
尚、上記第2~第7の実施の形態では、半導体基板140の、GaN系エピタキシャル層142の下地基板として、GaN基板141を例にした。GaN系エピタキシャル層142の下地基板には、GaN基板141と同様にCl系ガスを用いたエッチングが可能であれば、GaN基板141に限らず、各種窒化物半導体基板を用いることができる。例えば、GaN系エピタキシャル層142の下地基板には、一般式InAlGa1-(x+y)N(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦x+y≦1)で表される各種窒化物半導体基板が用いられてもよい。
【0126】
また、GaN系エピタキシャル層142についても同様に、Cl系ガスを用いたエッチングが可能であれば、一般式InAlGa1-(x+y)N(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦x+y≦1)で表されるような各種窒化物半導体層が用いられてもよい。
【0127】
このほか、GaN系エピタキシャル層142の下地基板には、SiC基板やSi基板を用いることもできる。この場合、SiC基板やSi基板はF系ガスを用いてエッチングされるが、続くGaN系エピタキシャル層142のエッチングにはCl系ガスが用いられる。そのため、そのCl系ガスに曝されるシード層110に上記のようなAuを含有する層を用いることで、そのサイドエッチングを抑え、形成されるビア配線160の断線を抑えることが可能になる。
【0128】
また、上記第2~第7の実施の形態では、シード層110としてTi/Au積層体を用いる例を示した。シード層110には、Au層又はAuを主体とする層を用いることができる。シード層110に、Auを主体とする層を用いる場合、Au以外の成分としては、上記のようなTiに限らず、Sn(スズ)、Ge(ゲルマニウム)、亜鉛(Zn)、Pt等が1種又は2種以上含有されてもよい。Au以外の成分の含有量の上限は、例えば、40原子%程度まで、好ましくは20原子%まで、より好ましくは10原子%程度までに設定される。シード層110のAuとそれ以外の成分とは、積層構造の形態を採っていてもよいし、Auと合金又は金属間化合物を形成した形態を採っていてもよい。
【0129】
以上、第1~第7の実施の形態で述べたような構成を有する半導体装置1A,1B,100A,100B,100C,100D,100E,100F等は、各種電子装置に適用することができる。
【0130】
[第8の実施の形態]
一例として、上記のような構成を有する半導体装置の、増幅器への適用例を、第8の実施の形態として説明する。
【0131】
図24は第8の実施の形態に係る増幅器の一例について説明する図である。図24には第8の実施の形態に係る増幅器の一例の等価回路図を示している。
図24に示す増幅器700は、デジタルプレディストーション回路710、ミキサー720、ミキサー730及びパワーアンプ740を含む。
【0132】
デジタルプレディストーション回路710は、入力信号の非線形歪みを補償する。ミキサー720は、非線形歪みが補償された入力信号SIと交流信号とをミキシングする。パワーアンプ740は、入力信号SIが交流信号とミキシングされた信号を増幅する。増幅器700では、例えば、スイッチの切り替えにより、出力信号SOをミキサー730で交流信号とミキシングしてデジタルプレディストーション回路710に送出することができる。増幅器700は、高周波増幅器、高出力増幅器として使用することができる。
【0133】
このような構成を有する増幅器700のパワーアンプ740に、上記半導体装置1A,1B,100A,100B,100C,100D,100E,100F等が用いられる。
上記のように、半導体装置1A,1B,100A,100B,100C,100D,100E,100F等では、Cl系ガスを用いて半導体基板40,140をエッチングする際のマスクとなる、Niを含有する第2層20及びマスク層120の、下地の第1層10及びシード層110に、Auを含有する層が用いられる。これにより、半導体基板40,140のCl系ガスを用いたエッチングによって形成されるビアホール50,150の内面における第1層10及びシード層110のサイドエッチングが抑えられ、当該内面に設けられるビア配線60,160の断線が抑えられる。ビア配線60,160を通じたGND接続によるソースインダクタンス又はエミッタインダクタンスの低減が可能な、高性能の半導体装置1A,1B,100A,100B,100C,100D,100E,100F等が実現される。このような優れた特性を有する半導体装置1A,1B,100A,100B,100C,100D,100E,100F等が用いられ、高性能の増幅器700が実現される。
【0134】
上記半導体装置1A,1B,100A,100B,100C,100D,100E,100F等を適用した各種電子装置(上記第8の実施の形態で述べた増幅器700等)は、各種電子機器又は電子装置に搭載することができる。例えば、コンピュータ(パーソナルコンピュータ、スーパーコンピュータ、サーバ等)、スマートフォン、携帯電話、タブレット端末、センサ、カメラ、オーディオ機器、測定装置、検査装置、製造装置といった、各種電子機器又は電子装置に搭載することが可能である。
【0135】
以上説明した実施の形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1) 半導体基板と、
前記半導体基板の第1面に設けられ、Auを含有する第1層と、
前記第1層の、前記半導体基板とは反対側の第2面に設けられ、Niを含有する第2層と、
前記第2層及び前記第1層を貫通し、前記半導体基板の前記第1面から前記第1面とは反対側の第3面まで貫通するビアホールと、
前記ビアホールの内面に設けられるビア配線と
を含むことを特徴とする半導体装置。
【0136】
(付記2) 前記半導体基板の前記第3面に設けられる第3層を含み、
前記ビアホールは、前記第2層及び前記第1層を貫通し、前記半導体基板の前記第1面から前記第3面まで貫通し、前記第3層に達することを特徴とする付記1に記載の半導体装置。
【0137】
(付記3) 前記半導体基板の前記第3面側に設けられ、電極を有するトランジスタを含み、
前記第3層は、前記トランジスタの前記電極と接続されることを特徴とする付記2に記載の半導体装置。
【0138】
(付記4) 前記半導体基板は、
窒化物半導体基板と、
前記窒化物半導体基板に積層された窒化物半導体層と
を含み、
前記半導体基板の前記第1面は、前記窒化物半導体基板の、前記窒化物半導体層とは反対側の面であることを特徴とする付記1乃至3のいずれかに記載の半導体装置。
【0139】
(付記5) 前記窒化物半導体基板は、InAlGa1-(x+y)N基板(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦x+y≦1)であることを特徴とする付記4に記載の半導体装置。
【0140】
(付記6) 前記窒化物半導体層は、InAlGa1-(x+y)N層(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦x+y≦1)を少なくとも1層含むことを特徴とする付記4又は5に記載の半導体装置。
【0141】
(付記7) 前記半導体基板の前記第3面は、前記窒化物半導体層の、前記窒化物半導体基板とは反対側の面であることを特徴とする付記4乃至6のいずれかに記載の半導体装置。
【0142】
(付記8) 前記半導体基板の前記第3面は、前記窒化物半導体基板の、前記第1面とは反対側の面であることを特徴とする付記4乃至6のいずれかに記載の半導体装置。
(付記9) 半導体基板の第1面に、Auを含有する第1層を形成する工程と、
前記第1層の、前記半導体基板とは反対側の第2面に、Niを含有する第2層を形成する工程と、
前記第2層及び前記第1層を貫通し、前記半導体基板の前記第1面から前記第1面とは反対側の第3面まで貫通するビアホールを形成する工程と、
前記ビアホールの内面に、ビア配線を形成する工程と
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0143】
(付記10) 前記ビアホールを形成する工程は、
前記ビアホールを形成する領域に開口部を有する前記第2層及び前記第1層を形成する工程と、
前記開口部が形成された前記第2層をマスクにして、前記開口部内の前記半導体基板を、Clを含有するガスを用いてエッチングする工程と
を含むことを特徴とする付記9に記載の半導体装置の製造方法。
【0144】
(付記11) 前記半導体基板の前記第3面に、第3層を形成する工程を含み、
前記ビアホールを形成する工程は、前記第2層及び前記第1層を貫通し、前記半導体基板の前記第1面から前記第3面まで貫通し、前記第3層に達するように、前記ビアホールを形成する工程を含むことを特徴とする付記9又は10に記載の半導体装置の製造方法。
【0145】
(付記12) 前記半導体基板の前記第3面側に、前記第3層と接続される電極を有するトランジスタを形成する工程を含むことを特徴とする付記11に記載の半導体装置の製造方法。
【0146】
(付記13) 前記半導体基板は、
窒化物半導体基板と、
前記窒化物半導体基板に積層された窒化物半導体層と
を含み、
前記半導体基板の前記第1面は、前記窒化物半導体基板の、前記窒化物半導体層とは反対側の面であることを特徴とする付記9乃至12のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【0147】
(付記14) 前記半導体基板の前記第3面は、前記窒化物半導体層の、前記窒化物半導体基板とは反対側の面であることを特徴とする付記13に記載の半導体装置の製造方法。
【0148】
(付記15) 前記半導体基板の前記第3面は、前記窒化物半導体基板の、前記第1面とは反対側の面であることを特徴とする付記13に記載の半導体装置の製造方法。
(付記16) 半導体基板と、
前記半導体基板の第1面に設けられ、Auを含有する第1層と、
前記第1層の、前記半導体基板とは反対側の第2面に設けられ、Niを含有する第2層と、
前記第2層及び前記第1層を貫通し、前記半導体基板の前記第1面から前記第1面とは反対側の第3面まで貫通するビアホールと、
前記ビアホールの内面に設けられるビア配線と
を含む半導体装置を備えることを特徴とする電子装置。
【符号の説明】
【0149】
1A,1B,100A,100B,100C,100D,100E,100F 半導体装置
10,1000 第1層
10a,20a,40a,40b,110a,120a,140a,140b,141b 面
10c,20c,40c,41c,42c,110c,120c,140c 開口部
20 第2層
30 第3層
40,140 半導体基板
41 下地基板
42 半導体層
50,150 ビアホール
60,160 ビア配線
70,170 配線
101A,101D 構造体
104,110 シード層
105 導体層
120 マスク層
130 エッチングストッパ層
141 GaN基板
142 GaN系エピタキシャル層
142a チャネル層
142b バリア層
142c キャップ層
142d サブコレクタ層
142e コレクタ層
142f ベース層
142g エミッタ層
142h,142k コンタクト層
142i ドリフト層
142j チャネル層
190 パッシベーション膜
191 ゲート絶縁膜
200A,200B,200C,200D,200E,200F トランジスタ
201 不活性領域
202 活性領域
210,270 ゲート電極
215 ゲートフィンガー部
216 ゲートパッド部
220,280 ソース電極
221 ソース配線
221a エミッタ配線
225 ソースフィンガー部
226 ソースパッド部
230,290 ドレイン電極
231 ドレイン配線
235 ドレインフィンガー部
236 ドレインパッド部
240 ベース電極
250 エミッタ電極
260コレクタ電極
300 サポート板
310 熱可塑性接着剤
320 レジスト
700 増幅器
710 デジタルプレディストーション回路
720,730 ミキサー
740 パワーアンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24