(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】調製支援システム及び調製支援プログラム
(51)【国際特許分類】
A61J 3/00 20060101AFI20241127BHJP
【FI】
A61J3/00 310K
(21)【出願番号】P 2021001929
(22)【出願日】2021-01-08
【審査請求日】2023-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】592246705
【氏名又は名称】株式会社湯山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【氏名又は名称】華山 浩伸
(72)【発明者】
【氏名】橋本 幸広
【審査官】今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/109052(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/110303(WO,A1)
【文献】特開2010-179039(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調製作業の一部又は全部を支援する調製支援システムであって、
調製データに基づいて薬品と液体とを混合してなる混合物を投与容器に収容する
前記調製作業の一部又は全部を支援する支援処理部と、
前記調製データに示される前記液体を収容している複数の容器の中から、
前記調製支援システムに予め登録されている容
器の属性を表す容器属性情報に基づいて、前記投与容器として使用する容器を選択する特定処理部と、を備える、
調製支援システム。
【請求項2】
前記容器属性情報は、前記容器の容量に関する情報を含み、
前記特定処理部は、前記複数の容器のうち容量が最大の容器を前記投与容器として選択する、
請求項1に記載の調製支援システム。
【請求項3】
前記支援処理部は、前記複数の容器のうち前記投与容器として選択された容器を他の容器とは区別可能な態様でユーザーに提示する、
請求項1又は2に記載の調製支援システム。
【請求項4】
前記支援処理部は、前記複数の容器のうち前記投与容器として選択された容器に、調製後の薬品を投入するように調製装置を制御する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の調製支援システム。
【請求項5】
前記混合物の総量に基づいて、前記複数の容器の中に当該混合物を収容可能な容量の容器があるか否かを判断する可否判断処理部を更に備える、
請求項1~4のいずれか1項に記載の調製支援システム。
【請求項6】
前記支援処理部は、前記可否判断処理部にて前記複数の容器の中に前記混合物を収容可能な容量の容器がないと判断される場合に、前記複数の容器の中に当該混合物を収容可能な容量の容器がない旨と、前記複数の容器以外の容器を前記投与容器として使用する旨との少なくとも一方を報知する、
請求項5に記載の調製支援システム。
【請求項7】
調製支援システムを制御することにより調製データに基づいて薬品と液体とを混合してなる混合物を投与容器に収容する調製作業の一部又は全部を支援するステップと、
前記調製データに示される前記液体を収容している複数の容器の中から、
前記調製支援システムに予め登録されている容
器の属性を表す容器属性情報に基づいて、前記投与容器として使用する容器を選択するステップと、
を1以上のプロセッサーに実行させるための調製支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調製データに基づいて薬品と液体とを混合してなる混合物を投与容器に収容する調製作業の一部又は全部を支援する調製支援システム及び調製支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術として、抗がん剤のような薬品の調製(混注)作業を支援する調製支援システム(混注支援装置)が知られている(例えば、特許文献1参照)。関連技術に係る調製支援システムは、医師又は薬剤師などのユーザー(作業者)によって実行される調製作業の効率化を図るために使用される。前記調製作業は、調製データに示された抗がん剤などの薬品を既定量の前記薬品が収容された一又は複数の薬品容器から輸液容器に注入する作業である。具体的に、前記調製作業において、前記ユーザーは、輸液容器から生理食塩液のような溶解液を注射器で吸引して、薬品が収容されている薬品容器に注入して前記薬品を溶解させ、その溶解後の薬液を注射器で吸引して輸液容器に注入する作業を実行する。
【0003】
前記調製支援システムは、前記調製作業の対象となる前記調製データに基づいて、前記調製作業に含まれる作業工程を操作表示部に順次に表示させる。これにより、前記ユーザーは、その表示に従って順に前記作業工程を進めることが可能である。ここで、調製された薬品(薬液)の患者への投与は、当該薬品を収容した投与容器を用いて実施される。そのため、前記調製作業において調製された薬品が輸液容器に注入される場合、当該輸液容器が前記投与容器として用いられることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記調製支援システムでは、前記調製データに含まれる液体を収容する容器(輸液バッグ等)が複数存在する場合、複数の容器のいずれを前記投与容器とするかを、例えば、前記調製データ中のデータ(液体、薬品)の順番によって決める。そのため、前記調製データの内容によっては、実際に薬品の投与に用いられる容器が前記投与容器として指定されず、例えば、溶解後の薬液を、投与容器ではない輸液容器に注入するような指示がされる可能性があり、前記調製作業の効率化が十分に図られない場合がある。
【0006】
本発明の目的は、調製作業の更なる効率化を図りやすい調製支援システム及び調製支援プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の局面に係る調製支援システムは、支援処理部と、特定処理部と、を備える。前記支援処理部は、調製データに基づいて薬品と液体とを混合してなる混合物を投与容器に収容する調製作業の一部又は全部を支援する。前記特定処理部は、前記調製データに示される前記液体を収容している複数の容器の中から、前記投与容器として使用する容器を、当該容器に関する容器属性情報に基づいて特定する。
【0008】
本発明の他の局面に係る調製支援システムは、支援処理部と、記録処理部と、を備える。前記支援処理部は、調製データに基づいて薬品と液体とを混合してなる混合物を投与容器に収容する調製作業の一部又は全部を支援する。前記記録処理部は、前記液体が収容されているいずれか一の容器について残液を全量廃棄する全量廃棄工程が前記調製作業に含まれる場合に、前記全量廃棄工程後の前記一の容器の状態を示す空容器情報を記録する。
【0009】
本発明の他の局面に係る調製支援システムは、支援処理部と、判定処理部と、を備える。前記支援処理部は、調製データに基づいて薬品と液体とを混合してなる混合物を投与容器に収容する調製作業の一部又は全部を支援する。前記判定処理部は、前記液体が収容されている容器から前記液体を抜き取る抜取工程が前記調製作業に含まれる場合に、前記抜取工程における前記液体の抜取量の適否を判定する。前記判定処理部は、前記抜取工程が前記容器から残液を全量廃棄する全量廃棄工程であることを含む判定条件を満たす場合には、前記抜取量の適否の判定に係る処理と、前記抜取量の適否の判定結果の出力処理との少なくとも一方を実行しない。
【0010】
本発明の他の局面に係る調製支援システムは、支援処理部と、判断処理部と、を備える。前記支援処理部は、調製データに基づいて薬品と液体とを混合してなる混合物を投与容器に収容する調製作業の一部又は全部を支援する。前記判断処理部は、前記液体が収容されているいずれか一の容器について残液を全量廃棄する全量廃棄工程が前記調製作業に含まれるか否かを判断する。前記支援処理部は、前記全量廃棄工程が前記調製作業に含まれると判断される場合に、前記一の容器に収容されている前記残液の全量廃棄を指示する全量廃棄指示を、前記一の容器に収容されている前記液体の抜取量を指示する通常指示とは区別可能な態様で行う。
【0011】
本発明の他の局面に係る調製支援プログラムは、調製データに基づいて薬品と液体とを混合してなる混合物を投与容器に収容する調製作業の一部又は全部を支援するステップと、前記調製データに示される前記液体を収容している複数の容器の中から、前記投与容器として使用する容器を、当該容器に関する容器属性情報に基づいて特定するステップと、を1以上のプロセッサーに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、調製作業の更なる効率化を図りやすい調製支援システム及び調製支援プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る調製支援システムの一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る調製支援システムの一例を示す外観模式図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る調製支援システムで用いられる安全キャビネットの使用状態を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係る調製支援システムの制御部の一例を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に係る調製支援システムで実行される調製支援処理の手順の一例を説明するフローチャートである。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態に係る調製支援システムで表示される表示画面の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態に係る調製支援システムで表示される表示画面の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態に係る調製支援システムで表示される表示画面の画面遷移の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態に係る調製支援システムで表示される表示画面の画面遷移の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、本発明の実施形態に係る調製支援システムで表示される表示画面の画面遷移の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、本発明の実施形態に係る調製支援システムで表示される表示画面の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、本発明の実施形態に係る調製支援システムで表示される表示画面の一例を示す図である。
【
図13】
図13は、本発明の実施形態に係る調製支援システムで実行される調製支援処理の手順の一例を説明するフローチャートである。
【
図14】
図14は、本発明の実施形態に係る調製支援システムで実行される調製支援処理の手順の一例を説明するフローチャートである。
【
図15】
図15は、本発明の実施形態に係る調製支援システムで表示される表示画面の画面遷移の一例を示す図である。
【
図16】
図16は、本発明の他の構成例に係る調製支援システムの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明し、本発明の理解に供する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。また、下記の実施形態で説明する構成及び処理機能は取捨選択して任意に組み合わせることも可能である。
【0015】
[調製支援システム1]
図1に示すように、本発明の実施形態に係る調製支援システム1は、制御部11、操作表示部12、第1読取部13、プリンター14、操作入力部15、撮影部16、通信I/F(インターフェース)17、第2読取部21、及び秤量部22などを備える。本実施形態では、前記調製支援システム1は、医師又は薬剤師などのユーザー(作業者)によって実行される、薬品の調製作業の効率化を図るために使用され、前記調製作業の一部又は全部を支援する。
【0016】
前記調製支援システム1のユーザーは、例えば病院、介護老人保険施設、又は薬局などの医療機関における薬剤師、医師、看護士、医療スタッフ、又は施設管理者などである。本実施形態では一例として、前記調製支援システム1は、病院で用いられ、当該病院の薬剤師(病院薬剤師)が前記調製支援システム1のユーザーであることとする。
【0017】
また、本開示でいう「調製」とは、薬品(医薬品)の分野において、患者の疾患又は状態などに応じて複数の薬品を混合したり、適正な量で準備したりすることを意味し、前記薬品同士の混合、前記薬品と輸液(注射液を含む)等の液体との混合、及び前記液体同士の混合などを含む。前記薬品は、液状の薬品(薬液)、及び粉状の薬品(粉薬)などを含み、前記薬品が粉薬であれば、当該粉薬を輸液等の前記液体(溶解液)にて溶解することも、前記薬品と前記液体との混合に含まれる。本実施形態では、特に断りがない限り、前記調製支援システム1で一部又は全部が支援される前記調製作業は、調製データに基づいて前記薬品と前記液体とを混合し、前記薬品及び前記液体の混合物(以下、「調製済み薬品」と称する)を投与容器に収容する一連の工程を含む。
【0018】
ここで、例えば薬品容器から薬品(薬液)をシリンジで抜き取り、前記液体が入った前記投与容器に注入する場合、前記投与容器内で前記調製済み薬品(前記薬品及び前記液体の混合物)が生成されることになる。このように、前記投与容器内で前記調製済み薬品が生成される場合も、最終的に前記調製済み薬品が前記投与容器に収容されることに変わりない。そのため、前記調製済み薬品を前記投与容器に収容する態様としては、前記投与容器外で前記調製済み薬品を生成してから当該調製済み薬品を前記投与容器に収容する態様だけでなく、前記投与容器内で前記調製済み薬品を生成することで当該調製済み薬品を前記投与容器に収容する態様も含む。一例として、前記調製作業では、抗がん剤などの注射薬の調製が行われる。
【0019】
前記調製支援システム1は、前記調製データに基づいて、前記調製作業に含まれる各作業工程に係る手順及び指示等を、前記操作表示部12に順次に表示させる。これにより、ユーザーは、前記操作表示部12の表示に従って、順に前記調製作業を進めることが可能である。
【0020】
具体的に、前記調製作業において、ユーザーは、例えば、注射器にて、薬品容器から液状の薬品(薬液)を吸引し、生理食塩液等の液体が収容されている輸液バッグ等の輸液容器に注入する作業を実施することがある。また、前記調製作業において、ユーザーは、例えば、注射器にて、輸液バッグ等の輸液容器から生理食塩液等の液体を吸引して、粉状の薬品(粉薬)が収容されている薬品容器に注入してその粉薬を溶解させ、その溶解後の薬液を注射器で吸引して輸液バッグ等の輸液容器に注入する作業を実施することもある。前記調製済み薬品の患者への投与は、当該調製済み薬品を収容した投与容器を用いて実施される。そのため、前記調製作業において調製された薬品(前記調製済み薬品)が輸液容器に注入される場合、当該輸液容器が前記投与容器として用いられることになる。
【0021】
図2に示すように、前記第2読取部21及び前記秤量部22は、安全キャビネット100の作業室101内に配置される。一方、前記制御部11、前記操作表示部12、前記第1読取部13、前記プリンター14、前記操作入力部15、前記撮影部16、及び前記通信I/F17は、前記安全キャビネット100の前記作業室101外に配置される。なお、ここで示す前記調製支援システム1の各部の配置は一例に過ぎず、この配置に限らない。例えば、前記撮影部16が前記作業室101内に配置されてもよい。
【0022】
前記安全キャビネット100は、前面が透明なガラス扉102で仕切られた前記作業室101を備える。また、前記ガラス扉102は、下方に開放部103が形成される位置で支持されており、ユーザーは前記開放部103から手を差し込むようにして前記作業室101内にアクセス可能である。なお、前記安全キャビネット100には、前記作業室101内の空気を清浄化して排気するためのHEPAフィルタを有する空気清浄装置104なども設けられている。
【0023】
そして、
図3に示されるように、ユーザーは、前記開放部103から両手を前記作業室101内に差し込み、前記ガラス扉102越しに前記作業室101内を目視しながら、薬品の前記調製作業を行う。当該調製作業において、ユーザーは、前記作業室101内にて、例えば、注射器203にて、薬品容器201から液状の薬品(薬液)を吸引し、生理食塩液等の液体が収容されている輸液バッグ等の輸液容器202に注入する。
【0024】
具体的に、前記作業室101内には、前記薬品容器201、及び前記輸液容器202などが配置されている。前記薬品容器201は、前記調製作業での調製の対象となる前記薬品を既定量収容しており、例えば、薬液入りバイアル瓶、粉薬入りバイアル瓶、又は薬液入りアンプルなどの様々な種類、及び大きさ(容量)の容器からなる。前記輸液容器202は、前記調製作業で用いられる前記液体としての輸液を既定量収容しているのであって、前記液体を収容する「容器」の一例である。前記輸液容器202に収容される前記液体としては、例えば生理用食塩水、ブドウ糖、又は高カロリー輸液などの輸液がある。前記輸液容器202は、例えば、輸液バッグ(ソフトバッグ)、プラスチックボトル、又はバイアル瓶などの様々な種類、及び大きさ(容量)の容器からなる。
【0025】
なお、前記調製支援システム1では、毒性の無い薬品又は輸液について前記調製作業する場合、前記安全キャビネット100に代えて、クリーンベンチなどが用いられることも考えられる。
【0026】
前記安全キャビネット100の前記作業室101内に設けられる前記第2読取部21は、一次元コード又は二次元コードなどのコード情報を読み取り可能なコード読取装置である。前記コード情報は、前記調製作業で使用する薬品、又は液体が収容されている容器(前記薬品容器201、又は前記輸液容器202)に付されている。前記二次元コードは、例えばQRコード(登録商標)である。前記コード情報には、当該コード情報が付された前記薬品容器201、又は前記輸液容器202に収容されている前記薬品、又は前記液体の種類を識別するための識別情報(以下、「内容物識別情報」とも称する)が含まれている。さらに、前記コード情報は、当該コード情報が付された前記薬品容器201、又は前記輸液容器202そのもの、つまり内容物ではなく容器自体を識別するための識別情報(以下、「容器識別情報」とも称する)を含んでいる。前記第2読取部21で読み取られる前記コード情報は、前記制御部11に入力される。
【0027】
同じく前記安全キャビネット100の前記作業室101内に設けられる前記秤量部22は、前記調製作業における各種の計量に用いられる電子天秤である。前記秤量部22による計量結果は、リアルタイムで前記制御部11に入力される。また、前記秤量部22は、計量結果が安定したか否かを示す安定情報を前記制御部11に入力する。これにより、前記制御部11では、前記秤量部22による計量結果及び安定有無などの情報を取得することが可能である。なお、前記制御部11が、前記秤量部22による計量結果及び安定有無などの情報を能動的に読み出し可能な構成であってもよい。
【0028】
前記通信I/F17は、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネット、又はイントラネットなどの通信網を介して、無線又は有線で上位システムとデータ通信を実行する通信インターフェースである。前記通信I/F17は、前記上位システム以外にも、例えば、前記作業室101内の前記第2読取部21、及び前記秤量部22、更にはウェアラブル端末、又はクライアント端末等の外部端末とも、データ通信可能に構成されている。
【0029】
前記上位システムは、例えば電子カルテシステム、オーダーリングシステム、又はレセプト電算処理システムなどである。前記上位システムは、前記調製支援システム1とは別のシステムであって、前記調製支援システム1と通信により連携可能であればよく、前記調製支援システム1に対して「上位」の関係にあることは必須でない。なお、前記上位システムは複数設けられてもよく、複数の前記上位システムは異なる種類のシステムを含んでもよい。
【0030】
前記制御部11は、通信I/F17により、前記上位システムと通信可能に接続される。前記制御部11は、ユーザーが実行する前記調製作業の内容を示す前記調製データを、前記上位システムから取得可能である。
【0031】
例えば、前記調製データには、患者情報(患者ID、患者氏名、身長、体重、及び体表面積など)、調製日、薬品情報(薬品コード、又は薬品名など)、液体情報(輸液コード、又は輸液名など)、用量、レジメン識別情報、前記薬品容器201に関する情報、及び前記輸液容器202に関する情報などが含まれる。前記レジメン識別情報は、例えば療法名(レジメン名)、療法ID、又はレジメンIDなどのレジメン情報を識別可能な情報である。また、前記調製データには、前記薬品容器201、又は前記輸液容器202について、種類(薬液入りアンプル、薬液入りバイアル瓶、粉薬入りバイアル瓶、又は輸液バッグなど)、及び大きさ(容量)に関する情報などが含まれる。さらに、前記調製データには、医師情報、調製内容情報(前記調製作業に使用する注射器203、注射針の種類及び本数等)、及び調製手順情報(作業内容、溶媒、溶媒量、及び抜取量等)、投薬日、処方箋区分、診療科、及び病棟などの情報が含まれていてもよい。
【0032】
前記制御部11は、1以上のCPU(Central Processing Unit)111、1以上のRAM(Random Access Memory)112、及び1以上の記憶部113などを有するコンピューターを主構成とする。
【0033】
前記記憶部113には、データ領域、プログラム領域、及びマスター領域などの記憶領域が含まれる。なお、前記記憶部113が、複数の記憶媒体を備えており、前記データ領域、前記プログラム領域、及び前記マスター領域が複数の記憶媒体に分散して設けられていてもよい。
【0034】
前記データ領域には、前記上位システムから取得される前記調製データが蓄積して記憶される。なお、前記制御部11では、ユーザー操作に応じて前記調製データを新規登録又は編集することも可能である。また、前記データ領域には、前記調製データに従ってユーザーにより実行された前記調製作業の内容を示す履歴データが、前記調製データに対応付けて記憶される。例えば、前記履歴データには、前記調製作業のユーザー、作業開始時間、作業終了時間、及び前記調製作業の途中で撮影される撮影画像などが含まれる。
【0035】
前記プログラム領域には、前記制御部11に後述の調製支援処理(
図5参照)などを実行させるための制御プログラムが記憶される。なお、前記プログラム領域には、オペレーティングシステム(OS)及びブラウザソフトなどのアプリケーションプログラムも記憶されている。
【0036】
前記マスター領域には、薬品マスター、患者マスター、病棟マスター、医師マスター、及び薬剤師マスターなどの各種のマスター情報が記憶される。例えば、前記薬品マスターには、薬品ID、薬品名、薬品コード、薬瓶コード、区分(剤形:散薬、錠剤、水剤、外用薬など)、比重、薬品種(普通薬、抗がん剤、毒薬、麻薬、劇薬、抗精神薬、治療薬など)、配合変化、賦形薬品、及び注意事項などの情報が含まれる。さらに、前記薬品マスターには、後述する容器属性情報として、前記薬品容器201、又は前記輸液容器202についての、種類(薬液入りアンプル、薬液入りバイアル瓶、粉薬入りバイアル瓶、又は輸液バッグなど)、容器ごとの前記薬品又は前記液体の収容量(既定量)、容量(最大収容量)、容器のみの重量などの情報が含まれる。なお、前記薬品IDは、YJコード、JANコード、又はRSSコードなどの識別コードである。
【0037】
前記記憶部113に記憶される種々の情報は、前記記憶部113に予め記憶されていてもよいし、前記調製支援システム1の外部から電気通信回線を通じて受信してもよいし、コンピューター読み取り可能な記録媒体から読み取られてもよい。つまり、前記制御プログラム等は、非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0038】
前記操作表示部12は、前記制御部11からの制御指示に従って各種の情報を表示する液晶ディスプレイ又は有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイなどの表示部と、前記制御部11に各種の情報を入力するためにユーザーによって操作される操作部とを有する。前記操作表示部12は、少なくとも前記調製作業に含まれる各作業工程に係る手順及び指示等をユーザーに向けて表示するので、前記調製作業を行うユーザーから見やすい位置に配置される。
【0039】
具体的に、前記操作表示部12の前記操作部は、前記表示部に表示される各種の操作画面に対するタッチ操作を受け付けるタッチパネルである。
【0040】
前記第1読取部13は、前記調製データに対応する調製箋などに表記(印刷)されている一次元コード又は二次元コードなどのコード情報を読み取り可能なコード読取装置である。前記コード情報には、前記調製データを識別するための識別情報(以下、「データ識別情報」とも称する)が含まれている。前記第1読取部13で読み取られる前記コード情報は、前記制御部11に入力される。そして、前記制御部11は、前記第1読取部13を用いて前記調製箋から読み取られる前記コード情報に基づいて、今回の前記調製作業の対象となる前記調製データを特定する。具体的に、前記制御部11は、前記コード情報から前記データ識別情報を読み取り、前記データ識別情報に対応する前記調製データを前記記憶部113のデータ記憶部111から選択する。なお、前記制御部11が、前記コード情報から前記調製データを取得してもよい。
【0041】
前記プリンター14は、前記制御部11によって各種の情報を印刷するために用いられる。例えば、前記制御部11によって実行される前記調製データに対応する前記調製箋の印刷、又は前記調製データに従って実行される前記調製作業の履歴の印刷などに用いられる。
【0042】
前記操作入力部15は、ユーザーが前記調製作業の実行中に前記制御部11への操作入力を行うための操作部である。前記操作入力部15は、
図2に示すように、一例として第1フットスイッチ151、第2フットスイッチ152、及び第3フットスイッチ153を有する。前記第1フットスイッチ151及び前記第2フットスイッチ152は、操作対象の項目の選択操作などに用いられ、前記第3フットスイッチ153は、操作対象の項目の決定操作などに用いられる。具体的に、本実施形態では、前記操作表示部12又は前記操作入力部15に対するユーザー操作に応じて、前記制御部11が各種の処理を実行する場合について説明する。そのため、本実施形態において、以下に説明するユーザーによる「操作」、「選択」、及び「入力」等は、前記操作表示部12又は前記操作入力部15を用いて行われるものとして説明する。
【0043】
前記撮影部16は、例えば前記作業室101外に固定されるカメラ装置にて実現される。前記撮影部16で撮影される画像のデータ(以下、「画像データ」と称する)は、リアルタイムで前記制御部11に入力される。前記撮影部16は、例えば、ユーザーが扱う前記作業室101内の前記注射器203のシリンジ(注射筒)を撮影できるように、前記作業室101内に向けて配置されている。前記撮影部16で撮影される画像は、一例としてはフルカラーの静止画であるが、これに限らず、例えばモノクロ画像、動画像であってもよい。本実施形態では、前記撮影部16は、前記制御部11にて制御され、前記制御部11からの制御信号を受けて撮影し、得られた前記画像データを前記制御部11に入力する。なお、前記撮影部16が能動的に撮影して、前記画像データを前記制御部11に送信してもよい。
【0044】
[制御部11]
本実施形態に係る前記調製支援システム1では、前記制御部11は、
図4に示すように、支援処理部31、特定処理部32、可否判断処理部33、記録処理部34、判定処理部35、判断処理部36、及びモード切替部37を含む。具体的に、前記制御部11は、前記調製支援プログラムに従って後述の調製支援処理に係る各種の処理を実行することにより、前記支援処理部31、前記特定処理部32、及び前記可否判断処理部33などの各種の処理部として機能する。すなわち、本実施形態では、前記制御部11が前記調製支援システム1の主要機能を具現化する。言い換えれば、本実施形態に係る前記調製支援システム1は、前記制御部11さえ備えていればよく、前記操作表示部12、前記第1読取部13、前記プリンター14、前記操作入力部15、前記撮影部16、前記通信I/F17、前記第2読取部21、及び前記秤量部22などは、構成要素に含まなくてもよい。なお、前記制御部11は、複数のプロセッサーを備え、当該複数のプロセッサーのいずれかが前記各種の処理部として機能してもよい。また、前記各種の処理部の一部又は全部が電子回路で構成されていてもよい。
【0045】
また、前記制御部11の機能の一部又は全部が前記上位システム、前記ウェアラブル端末、又は前記クライアント端末等に設けられることも他の実施形態として考えられる。例えば、前記ウェアラブル端末に、前記調製支援プログラムの一部又は全部がインストールされており、前記ウェアラブル端末の端末制御部が、前記制御部11から必要な情報を適宜取得して、前記調製支援処理に係る各種の処理を実行することも考えられる。この場合、前記ウェアラブル端末が前記調製支援システム1の主要機能を具現化する。さらに、前記調製支援システム1において、前記制御部11及び前記ウェアラブル端末等が協働して前記調製支援処理に係る各種の処理を実行することも考えられる。
【0046】
前記支援処理部31は、前記調製データに基づいて前記薬品と前記液体とを混合してなる混合物を前記投与容器に収容する前記調製作業の一部又は全部を支援する。具体的に、前記支援処理部31は、前記調製データに基づいて、前記調製作業に含まれる各作業工程に係る手順及び指示等を、前記操作表示部12に順次表示させることで、前記調製作業の一部又は全部を支援する。
【0047】
前記調製作業では、ユーザーによって、例えば調製薬品認証工程、風袋引き工程、液体抜取工程、液体計量工程、液体撮影工程、溶解工程、薬品抜取工程、薬品計量工程、薬品撮影工程、及び混注工程などから必要な作業工程が選択されて順次実行される。
【0048】
前記薬品認証工程は、前記調製作業で使用する前記薬品及び前記液体を認証するための工程であり、例えば前記第2読取部21を用いて前記薬品又は前記液体の識別情報を読み取る工程である。前記風袋引き工程は、前記調製作業で使用する前記注射器203などの機材のみの重量を予め計量するための工程であり、例えば前記注射器203を前記秤量部22に載置する工程である。
【0049】
前記液体抜取工程は、前記輸液容器202から生理食塩液のような液体を前記注射器203で必要量抜き取る工程である。前記液体計量工程は、抜き取った前記液体の重量を計量するための工程であり、前記注射器203を前記秤量部22に載置する工程である。なお、前記液体計量工程において、前記制御部11は、前記秤量部22に載置された前記注射器203の重量と前記風袋引きで設定された前記注射器203の重量との差分を、抜き取った前記液体の重量として計量する。前記溶解工程は、前記薬品が粉薬である場合に当該薬品を溶解するための工程であり、前記注射器203で抜き取られた前記液体を溶解液として前記薬品容器201に注入する工程である。前記液体撮影工程は、前記液体を抜き取った前記注射器203を前記撮影部16で撮影するための工程である。
【0050】
前記薬品抜取工程は、前記薬品容器201から前記薬品(薬液)を前記注射器203で必要量抜き取る工程である。前記薬品計量工程は、抜き取った前記薬品の重量を計量するための工程であり、前記注射器203を前記秤量部22に載置する工程である。なお、前記薬品計量工程においても、前記制御部11は、前記秤量部22に載置された前記注射器203の重量と前記風袋引きで設定された前記注射器203の重量との差分を、前記薬品の重量として計量する。前記薬品撮影工程は、前記薬液を抜き取った前記注射器203を前記撮影部16で撮影するための工程である。
【0051】
前記混注工程は、溶解後の前記薬品(前記調製済み薬品)、又は前記注射器203内の前記薬品(薬液)を、前記投与容器に注入する工程である。すなわち、前記薬品が粉状(粉薬)である場合には、前記投与容器とは別の容器(例えば前記薬品容器201)において前記薬品を前記溶解液としての前記液体にて溶解させ、前記液体に溶解した状態の前記薬品、つまり前記調製済み薬品を、前記混注工程にて、当該別の容器から前記投与容器に移動させる。また、前記薬品が液状(薬液)である場合には、前記薬品容器201から前記注射器203で抜き取った前記薬品を、前記混注工程にて、前記投与容器に注入することで、前記投与容器内で前記薬品と前記液体とを混合させて、前記調製済み薬品を生成する。あるいは、前記薬品が液状(薬液)である場合でも、前記投与容器とは別の容器(例えば前記輸液容器202)において前記薬品を前記液体と混合し、当該液体と混合された状態の前記薬品、つまり前記調製済み薬品を、前記混注工程にて、当該別の容器から前記投与容器に移動させてもよい。これにより、前記調製作業において、最終的に、前記調製済み薬品が前記投与容器に収容されることになる。
【0052】
本実施形態では、基本的には、前記調製作業のうち、薬品を認証するための前記薬品認証工程から、前記調製済み薬品を前記投与容器に収容する前記混注工程までの一連の作業工程の全部、つまり前記調製作業の全部を、前記支援処理部31が支援する。
【0053】
前記特定処理部32は、複数の容器の中から、前記投与容器として使用する容器を、当該容器に関する前記容器属性情報に基づいて特定する。前記複数の容器は、それぞれ前記調製データに示される前記液体を収容している容器である。ただし、前記特定処理部32は、あくまでデータ上で、前記投与容器として使用する前記容器を特定するのであって、厳密には、容器自体を識別するための複数の識別情報(容器識別情報)の中から、前記投与容器として用いる容器の容器識別情報を特定する。前記容器識別情報は、例えば前記薬品マスターにおいて、前記容器属性情報と対応付けられており、前記特定処理部32は、前記薬品マスターにて、前記容器識別情報ごとの前記容器属性情報を参照する。これにより、前記投与容器として使用する容器が自動的に特定され、例えば、前記調製済み薬品を、前記投与容器ではない前記輸液容器202に注入するような事態を回避しやすくなる。よって、前記調製作業の更なる効率化を図りやすい前記調製支援システム1が実現される。さらに、前記特定処理部32によれば、外部から、どの容器を前記投与容器とするかの指示がなくても、前記投与容器として使用することが適切な容器を前記投与容器として自動的に選択できる、という利点がある。
【0054】
本実施形態では一例として、前記液体を収容している「容器」は前記輸液容器202である。そして、前記輸液容器202は、いずれも前記投与容器の候補である投与容器候補として、例えば前記薬品マスターに予め登録されている。したがって、前記特定処理部32は、複数の前記輸液容器202の中から、前記投与容器として使用する前記輸液容器202を、当該輸液容器202に関する前記容器属性情報に基づいて特定する。具体的に、前記特定処理部32は、複数の前記輸液容器202の各々についての前記容器属性情報を、予め定められている特定条件に照らすことにより、複数の前記輸液容器202の中から、前記投与容器として使用する前記輸液容器202を特定する。前記容器属性情報は、前記輸液容器202の属性を表す情報であって、例えば前記輸液容器202についての、種類(プラスチックボトル、又は輸液バッグなど)、及び容量(最大収容量)などの情報を含む。
【0055】
ここで、前記容器属性情報は、前記容器(前記輸液容器202)の容量に関する情報を含む。前記特定処理部32は、前記複数の容器(前記輸液容器202)のうち容量が最大の容器(前記輸液容器202)を、前記投与容器として特定する。すなわち、前記特定条件は、複数の前記輸液容器202の中で容量が最大であること、を含んでいる。そのため、例えば前記調製作業に用いられる複数の前記輸液容器202が同一種類である場合、これら複数の前記輸液容器202の中で容量(最大収容量)が最も大きな前記輸液容器202が、前記投与容器として、前記特定処理部32にて特定される。これにより、前記輸液容器202の容量に着目して比較的簡単に前記投与容器を特定可能となる。さらに、前記調製データにて指定される量の前記調製済み薬品(混合物)を収容可能な容量を持つ前記輸液容器202を、前記投与容器とすることができる。
【0056】
そして、前記特定処理部32にて前記投与容器として特定された前記輸液容器202は、前記支援処理部31によりユーザーに提示される。言い換えれば、前記支援処理部31は、前記特定処理部32により前記投与容器として特定された容器(前記輸液容器202)をユーザーに提示する。ここでいう「提示」の態様は、例えば前記操作表示部12への表示、プリンター14による印刷(印字)出力、又は音声出力等の様々な態様を含み得る。本実施形態では一例として、前記支援処理部31は、前記操作表示部12への表示によって前記投与容器として特定された前記輸液容器202を、ユーザーが認識可能な形で提示する。具体的に、前記支援処理部31は、例えば「投与容器は生理食塩液500mlです。」のように前記投与容器を直接的に示すだけでなく、「溶解後の薬品を生理食塩液500mlの容器に戻してください。」のように前記投与容器を間接的に示す提示を行ってもよい。これにより、ユーザーが前記調製作業を行う際に、いずれの容器を前記投与容器として使用すべきかを、ユーザーが容易に把握できる。
【0057】
前記可否判断処理部33は、前記調製済み薬品(混合物)の総量に基づいて、前記複数の容器(前記輸液容器202)の中に当該調製済み薬品(混合物)を収容可能な容量の容器があるか否かを判断する。すなわち、前記調製済み薬品は最終的には前記投与容器としての前記輸液容器202に収容されるところ、場合によっては、前記調製済み薬品の総量が、前記複数の容器(前記輸液容器202)のうち容量が最大の容器(前記輸液容器202)の容量を上回ることもある。この場合、前記調製作業に用いられる複数の前記輸液容器202の中に、前記調製済み薬品を収容可能な容量の前記輸液容器202は存在しないので、前記投与容器としての容器を別途用意する必要がある。前記可否判断処理部33によれば、前記投与容器としての容器を別途用意する必要があるか否かを判断できる。
【0058】
また、前記可否判断処理部33にて前記複数の容器(前記輸液容器202)の中に前記混合物を収容可能な容量の容器がないと判断される場合に、前記支援処理部31は、その旨(前記複数の容器の中に当該混合物を収容可能な容量の容器がない旨)と、前記複数の容器以外の容器を前記投与容器として使用する旨との少なくとも一方を報知する。ここで、前記支援処理部31は、前記複数の容器の中に前記混合物を収容可能な容量の容器がない旨を、直接的に報知するだけでなく、例えば前記複数の容器以外の容器を前記投与容器とするようユーザーに指示することで、間接的に報知を行ってもよい。具体的に、前記支援処理部31は、前記可否判断処理部33の判断結果を利用して、前記調製データに示される前記液体を収容する容器(前記輸液容器202)内に前記投与容器として不適当な容器しか存在しない場合に、別の容器を前記投与容器とするようユーザーに指示してもよい。これにより、ユーザーが前記不適当な容器に無理やり前記調製済み薬品を収容する事態を防止しやすくなる。
【0059】
前記記録処理部34は、全量廃棄工程が前記調製作業に含まれる場合に、空容器情報を記録する。前記全量廃棄工程は、前記液体が収容されているいずれか一の容器(前記輸液容器202)について残液を全量廃棄する工程である。ここでいう「残液」は、前記液体が収容されている容器(前記輸液容器202)から前記液体の一部が抜き取られることにより、当該容器内に残った前記液体をいう。例えば前記液体が500ml収容されている前記輸液容器202から、前記液体が400ml抜き取られた場合、当該輸液容器202には100mlの前記液体が前記残液として残ることになる。前記空容器情報は、前記全量廃棄工程後の前記一の容器の状態を示す情報である。すなわち、前記記録処理部34は、前記調製作業において、いずれか一の前記輸液容器202から前記残液を全量廃棄する場合、全量廃棄によって空になった当該一の容器の状態を示す前記空容器情報を記録する。前記空容器情報は、例えば前記輸液容器202が空であることを示す空容器フラグなどであって、前記記憶部113に記憶されることにより記録される。これにより、前記残液の前記全量廃棄が行われたことを記録として残すことができる。
【0060】
本実施形態では、前記空容器情報は、前記全量廃棄工程の対象となった前記一の容器(前記輸液容器202)の画像と重量情報との少なくとも一方を含む。具体的に、前記記録処理部34は、前記全量廃棄工程後に、前記撮影部16で前記輸液容器202を撮影して得られる画像のデータ(画像データ)と、前記秤量部22で計量された前記輸液容器202の重量のデータ(前記重量情報)と、の少なくとも一方を含む。このように、前記空容器情報が前記輸液容器202画像又は重量情報を含む場合には、前記残液の前記全量廃棄が確かに行われたことの証明(エビデンス)にもなる。
【0061】
前記記録処理部34は、少なくとも前記調製データごとに前記空容器情報がユーザーに提示可能となるように、前記空容器情報を前記調製データに対応付けて記録する。つまり、前記空容器情報は前記調製データに対応付けて記録されるので、後から前記調製データに基づいて前記空容器情報を読み出すことにより、前記調製データごとに前記空容器情報をユーザーに提示することができる。読み出された前記空容器情報は、例えば前記操作表示部12への表示、プリンター14による印刷出力、又は音声出力等の様々な態様で、ユーザーに提示される。これにより、前記調製作業の後で、ユーザーは、前記全量廃棄によって空になった前記一の容器の状態を確認することが可能となる。
【0062】
前記判定処理部35は、前記液体が収容されている容器(前記輸液容器202)から前記液体を抜き取る抜取工程が前記調製作業に含まれる場合に、前記抜取工程における前記液体の抜取量の適否を判定する。前記判定処理部35は、判定条件を満たす場合には、前記抜取量の適否の判定に係る処理と、前記抜取量の適否の判定結果の出力処理との少なくとも一方を実行しない。前記判定条件は、前記抜取工程が前記容器(前記輸液容器202)から前記残液を全量廃棄する全量廃棄工程であることを含む。すなわち、前記判定処理部35は、前記輸液容器202から前記液体を抜き取る前記液体抜取工程が行われると、原則、前記液体の前記抜取量の適否を判定し、かつ前記抜取量の適否の判定結果を出力する。一方で、前記液体抜取工程が、前記輸液容器202内の前記残液を全量廃棄するための工程(前記全量廃棄工程)であって前記判定条件を満たすと判断された場合には、前記判定処理部35は、例外的に、前記抜取量の適否の判定に係る処理と、前記抜取量の適否の判定結果の出力処理との少なくとも一方を実行しない。これにより、前記判定条件を満たす場合には、少なくとも前記薬品の前記抜取量の適否の判定結果は出力されないことになる。
【0063】
よって、少なくとも前記液体抜取工程が前記輸液容器202内の前記液体の一部のみを抜き取る通常の前記液体抜取工程であって、前記全量廃棄工程でなければ、前記判定条件を満たさないため、前記判定処理部35は、原則通り、前記抜取量の適否を判定し、かつ前記抜取量の適否の判定結果を出力する。具体的に、前記判定処理部35は、例えば前記液体抜取工程後の前記液体計量工程で計量される前記液体の重量(計量値)を、当該液体抜取工程での前記液体の前記抜取量に対応する重量を基準とする適正範囲と比較し、前記計量値が前記適正範囲内にあれば適正と判定し、当該判定結果を出力する。前記計量値が前記適正範囲外にあれば不適正と判定し、当該判定結果を出力する。このように、前記判定処理部35は、例えば重量鑑査によって前記液体の前記抜取量の適否を判定する。
【0064】
一方、前記液体抜取工程が前記輸液容器202内の前記残液の全量を抜き取って廃棄する前記全量廃棄工程であって、前記判定条件を満たす場合、前記判定処理部35は、前記抜取量の適否をそもそも判定しないか、前記抜取量の適否の判定結果を出力しない。具体的に、前記判定処理部35は、例えば前記液体抜取工程後の前記液体計量工程をスキップする。このように、前記判定処理部35は、前記判定条件を満たす場合には、例えば重量鑑査による前記液体の前記抜取量の適否の判定を行わない。ただし、前記判定条件は、前記液体抜取工程が前記全量廃棄工程であることに加えて、例えば前記抜取量が所定量(例えば注射器203の容量)以下であること等を含んでいてもよい。この場合、前記液体抜取工程が前記全量廃棄工程であっても、前記抜取量が前記所定量を超える場合には、前記判定条件を満たさないことになり、前記判定処理部35は、原則通り、前記抜取量の適否を判定し、かつ前記抜取量の適否の判定結果を出力する。
【0065】
この構成によれば、前記輸液容器202内の前記液体の一部のみを抜き取る通常の前記液体抜取工程であれば、前記判定処理部35は、前記抜取量の適否を判定し、かつ前記抜取量の適否の判定結果を出力することができる。これに対して、前記液体抜取工程が前記全量廃棄工程であって前記判定条件を満たす場合には、前記抜取量の適否の判定、又は前記抜取量の適否の判定結果の出力が行われない。一例として前記輸液容器202を前記投与容器として使用するために、前記輸液容器202内の前記残液を全量廃棄するような場合、前記輸液容器202内の前記残液については廃棄するだけであるので、重量鑑査等による前記抜取量の適否の判定は必須ではない。このような前記抜取量の適否の判定が必須でないケースにあっては、前記判定処理部35による処理が制限されるので、前記制御部11の処理負荷を軽減できる。さらに、前記輸液容器202にあっては、一般的に、過剰充填されており、実際に前記輸液容器202に収容されている前記液体の量は、前記薬品マスター等に登録されている前記液体の収容量よりも多い。そのため、前記全量廃棄の場合には、前記過剰充填分だけ前記抜取量よりも多くなるので、前記抜取量の適否の判定結果は不適正(エラー)となる可能性がある。本実施形態に係る構成によれば、前記全量廃棄に係る前記液体については、前記抜取量が不適正であっても、エラー等が報知されることを回避できる。
【0066】
前記判断処理部36は、全量廃棄工程が前記調製作業に含まれるか否かを判断する。前記全量廃棄工程は、前記液体が収容されているいずれか一の容器(前記輸液容器202)について前記残液を全量廃棄する工程である。前記支援処理部31は、前記全量廃棄工程が前記調製作業に含まれると判断される場合に、全量廃棄指示を、通常指示とは区別可能な態様で行う。前記全量廃棄指示は、前記一の容器(前記輸液容器202)に収容されている前記残液の全量廃棄を指示する「指示」である。前記通常指示は、前記一の容器(前記輸液容器202)に収容されている前記液体の抜取量を指示する「指示」である。つまり、前記支援処理部31は、前記全量廃棄指示と前記通常指示との2種類の指示を使い分けるように構成されており、前記全量廃棄指示と前記通常指示とは互いに区別可能な態様で出力される。
【0067】
具体的に、前記支援処理部31は、前記調製データに基づいて、前記調製作業に含まれる各作業工程に係る指示等を、前記操作表示部12に順次表示させるに際して、前記全量廃棄指示と前記通常指示とは互いに区別可能な態様で前記操作表示部12に表示させる。例えば前記液体抜取工程において、前記支援処理部31は、前記通常指示であれば「溶解液を抜き取ってください。」との指示を「用量:32.6mL」のように前記液体の抜取量の指示と共に前記操作表示部12に表示させる。これに対して、前記全量廃棄指示であれば、前記支援処理部31は、例えば「残液を全量廃棄してください。」、又は「容器を空にしてください。」のように全量廃棄することをユーザーが認識可能な内容の指示を前記操作表示部12に表示させる。あるいは、前記全量廃棄指示において、前記支援処理部31は、例えば前記通常指示と同じ内容の指示を前記操作表示部12に表示させつつ、全量廃棄を示す印(マーク)を前記操作表示部12に表示させてもよい。
【0068】
前記判断処理部36は、例えば少なくとも前記調製データに基づいて、前記全量廃棄工程が前記調製作業に含まれるか否かを判断する。本実施形態では、前記判断処理部36は、少なくとも前記調製データに示される前記薬品の種類に基づいて、前記全量廃棄工程が前記調製作業に含まれるか否かを判断する。すなわち、例えばある特定の種類の前記薬品が前記調製データに示されている場合、当該調製データに基づく前記輸液容器202から前記液体を抜き取る前記液体抜取工程を、前記判断処理部36は前記全量廃棄工程であると判断する。なお、例えば前記調製データに全量廃棄を示す指示(データ)が含まれている場合に、前記判断処理部36は、当該調製データに基づいて前記全量廃棄工程が前記調製作業に含まれると判断してもよい。
【0069】
前記モード切替部37は、前記支援処理部31による前記調製作業に含まれる各作業工程に係る手順及び指示等の提示モードを切り替える。前記提示モードは、少なくとも同一の情報(手順及び指示等)を提示する場合でも、互いに態様が異なる第1モード及び第2モードを含んでいる。前記モード切替部37は、少なくともユーザーに関するユーザー情報に基づいて、前記提示モードの切り替えを行う。本実施形態では、前記支援処理部31は、前記調製データに基づいて、前記調製作業に含まれる各作業工程に係る手順及び指示等を、前記操作表示部12に順次表示させるので、例えば前記操作表示部12に表示される画面の態様が、前記第1モードと前記第2モードとで異なる。すなわち、前記支援処理部31が同一の作業工程に係る手順及び指示等を表示させる場合でも、前記第1モードと前記第2モードとでは、互いに異なる表示がなされる。
【0070】
例えば前記第1モードと前記第2モードとでは、前記操作表示部12に表示される手順及び指示等の細かさ、言い換えれば、情報量が互いに異なる。本実施形態では一例として、前記第1モードは簡易表示モードであって、前記第2モードは詳細表示モードである。前記第2モードとしての前記詳細表示モードでは、前記第1モードとしての前記簡易表示モードに比べて、より詳細な(つまり情報量の多い)手順及び指示等が前記操作表示部12に表示される。前記モード切替部37は、例えば、ユーザーの熟練度、技能レベル、所属、役職、勤続年数、又は年齢等に応じて、前記提示モードを前記第1モードと前記第2モードとで切り替えることにより、ユーザーに見合った前記調製作業の支援が可能となる。例えば前記モード切替部37は、熟練度が閾値より高いベテランのユーザーに対しては前記第1モード(前記簡易表示モード)、熟練度が閾値以下であるユーザーに対しては前記第2モード(前記詳細表示モード)をそれぞれ選択する。これにより、ベテランのユーザーにとっては煩わしい手順及び指示等の表示を省略し、不慣れなユーザーにとっては詳細な手順及び指示等の表示により前記調製作業の手厚い支援が可能である。
【0071】
[調製支援処理]
以下、
図5~
図7を参照しつつ、前記調製支援システム1において主に前記制御部11によって実行される調製支援処理について説明する。ただし、ここでは前記全量廃棄工程が前記調製作業に含まれない場合における前記調製支援処理を例に説明する。
【0072】
<ステップS11>
前記調製支援処理では、まずステップS11において、前記制御部11は、例えば前記操作表示部12を用いてユーザーID及びパスワードなどを入力して前記調製支援システム1にログインするユーザー操作を受け付ける。前記ユーザーIDは、前記ユーザー情報に対応付けられているか、又は前記ユーザー情報を含んでいる。前記制御部11は、ユーザーID及びパスワードなどの認証を行い、認証に成功して正規のユーザーであることが確認されると、処理をステップS12に移行する。
【0073】
<ステップS12>
前記ステップS12において、前記制御部11は、ログインしたユーザーが熟練ユーザーであるか否かを判断する。具体的に、前記制御部11は、ログインに際して取得したユーザーIDに基づいて、前記ユーザー情報を参照する。前記ユーザー情報は、例えば、ユーザーの熟練度、技能レベル、所属、役職、勤続年数、又は年齢等を含んでいる。一例として、前記ユーザー情報は、ユーザーの熟練度を数値化したデータを含んでおり、前記熟練度が閾値より高いユーザーを、前記制御部11では、前記熟練ユーザーであると判断する。ここで、前記熟練ユーザーであると判断されると(S12:Yes)、処理がステップS13に移行し、前記熟練度が前記閾値以下であって前記熟練ユーザーでないと判断されれば(S12:No)、処理がステップS14に移行する。
【0074】
<ステップS13,S14>
前記ステップS13において、前記制御部11の前記モード切替部37は、前記提示モードを前記第1モード(前記簡易表示モード)に設定する。つまり、前記モード切替部37は、前記ユーザー情報に基づいてユーザーが前記熟練ユーザーであると判断される場合、煩わしい手順及び指示等の表示を省略した前記簡易表示モードを選択する。一方、前記ステップS14においては、前記制御部11の前記モード切替部37は、前記提示モードを前記第2モード(前記詳細表示モード)に設定する。つまり、前記モード切替部37は、前記ユーザー情報に基づいてユーザーが前記熟練ユーザーでないと判断される場合、より詳細な手順及び指示等の表示を行う前記詳細表示モードを選択する。
【0075】
本実施形態では、あるユーザーで一度ログインすると、ログインが継続している限り、前記ステップS13,S14で選択された前記提示モードは継続する。つまり、ユーザーに応じて設定された前記提示モードは、ユーザーが変わらない限り継続的に採用される。そのため、一度ログアウトしてログインしなおすか、又はユーザー(アカウント)の変更の処理が行われるまでは、前記ステップS13,S14で選択された前記提示モードは継続する。ただし、この構成に限らず、例えば前記ステップS13,S14で初期設定としての前記提示モードが選択されるだけで、その後のユーザーの操作によって前記提示モードが任意に切り替え可能であってもよい。
【0076】
<ステップS15>
ステップS15において、前記制御部11は、前記調製作業の対象となる前記調製データが選択されたか否かを判断する。具体的に、前記制御部11は、前記第1読取部13により前記調製データの識別情報(前記データ識別情報)が読み取られた場合に、前記データ識別情報に対応する前記調製データが選択されたと判断する。なお、前記操作表示部12に表示される調製データ選択画面において、未調製の前記調製データのいずれか一つが選択された場合に前記調製データが選択されたと判断されてもよい。ここで、前記調製データが選択されたと判断されると(S15:Yes)、処理がステップS16に移行し、前記調製データが選択されていなければ(S15:No)、処理がステップS15で待機する。なお、前記第1読取部13によって読み取られた識別情報に対応する前記調製データが前記記憶部113に記憶されていない場合、又は既に調製済みである場合にはエラーが報知される。
【0077】
<ステップS16>
前記ステップS16において、前記制御部11は、前記ステップS15で選択された前記調製データを前記調製作業の対象として前記操作表示部12に表示させる。ここに、
図6は、前記調製データの内容が表示される調製支援画面D1の一例を示す図である。
図6に示されるように、前記調製支援画面D1には、前記調製データについて、ユーザー名(薬剤師名)、鑑査者名、診療科、病棟、服用開始日、医師名、患者名(患者ID)、年齢、性別、処方内容などが表示されている。また、前記調製支援画面D1には、前記秤量部22による計量結果が表示されている。本開示でいう「画面」は、前記操作表示部12等に表示される映像(画像)を意味し、図像、図形、写真、テキスト、及び動画などを含む。なお、
図6などの前記操作表示部12に表示される画面を示す図面において、領域を表す一点鎖線、引出線及び参照符号は、説明のために付しているに過ぎず、実際に前記操作表示部12に表示される訳ではない。
【0078】
<ステップS17>
ステップS17において、前記制御部11は、前記調製データに基づいて実行されるべき前記調製作業に含まれる各作業工程の情報を、前記操作表示部12に順次表示させる。具体的に、前記制御部11の前記支援処理部31は、前記作業工程に係る情報を前記操作表示部12に表示させる。なお、前記ステップS17に代えて、ステップS19,S21,S23,S25,S27の各処理において、前記調製作業のうち現在の前記作業工程の情報が前記操作表示部12に表示されてもよい。
【0079】
例えば、前記制御部11の前記支援処理部31は、前記ステップS17が実行されるごとに、前記薬品認証工程、前記風袋引き工程、前記液体抜取工程、前記液体計量工程、前記液体撮影工程、前記溶解工程、前記薬品抜取工程、前記薬品計量工程、前記薬品撮影工程、及び前記混注工程などの各種の作業工程に係る情報を順次表示させる。前記作業工程に係る情報には、例えば前記作業工程の内容(作業工程の種別など)、作業量(抜取量又は注入量など)、作業対象(薬品、液体、又は注射器の識別情報など)が含まれる。前記調製支援システム1では、前記提示モードが前記簡易表示モードか前記詳細表示モードかによって、前記操作表示部12に表示される前記作業工程に係る情報は異なり、前記簡易表示モードの方が、相対的に簡素化された情報となる。
【0080】
図7は、前記ステップS17で前記操作表示部12に表示される工程画面D11の一例を示す図である。
図7の例では、前記工程画面D11は、ポップアップウィンドウとして、前記調製支援画面D1上に重ねて表示される。ただし、この例に限らず、前記工程画面D11は前記調製支援画面D1の一部の領域として表示されてもよいし、前記操作表示部12に表示される画面が前記調製支援画面D1から前記工程画面D11に切り替わってもよい。前記工程画面D11は、前記調製作業における各作業工程に係る情報を示す領域として、作業工程領域A1、作業量領域A2、及び作業対象領域A3を含んでいる。また、前記工程画面D11は、現在操作可能な操作項目が表示される操作領域A4、及び前記工程画面D11に表示されている前記作業工程の内容のタイトルが文字列で表示されるステータス領域A5を更に含んでいる。
【0081】
一例として、前記作業工程領域A1には、前記作業工程の内容が前記作業工程の内容を示す文字列で表示される。前記作業量領域A2には、前記作業工程における作業量として、抜取量、注入量、又は薬品数などの数値及び単位が表示される。具体的に、前記作業量は、前記液体抜取工程又は前記薬品抜取工程では抜取量であり、前記溶解工程では注入量であり、前記薬品認証工程では認証の必要がある薬品数である。前記作業対象領域A3には、前記作業工程での前記作業対象を特定するための名称又はコードなどの識別情報が表示される。なお、前記操作表示部12では、前述したように前記調製支援画面D1に患者の情報及び前記調製データの詳細情報などが表示されている。そのため、ユーザーは、前記操作表示部12の前記調製支援画面D1及び前記工程画面D11などを参照することにより前記調製作業の詳細を確認することも可能である。ここで、例えば前記工程画面D11において、各種情報を表示しきれない場合には、各種情報がスクロール表示されてもよい。
【0082】
なお、前記操作領域A4における前記操作項目などの画面中に表示されるボタンは、前記操作表示部12に表示される画面中に含まれるオブジェクトであって、当該ボタンの操作は、当該ボタンを選択するような前記操作表示部12の操作になる。例えばユーザーは、前記操作領域A4における「閉じる」と表記されたボタンをタッチする等の操作を、前記操作表示部12で行うことで、当該「閉じる」のボタンを操作できる。当該「閉じる」のボタンが操作されることで、前記工程画面D11が閉じる。
【0083】
また、前記制御部11の前記支援処理部31は、前記作業工程に係る情報を前記操作表示部12に表示させる処理に加えて又は代えて、例えば前記作業工程に係る情報を音声出力してもよい。これにより、ユーザーは、視覚だけでなく聴覚によっても前記作業工程の情報を認識することができ、前記作業工程の人為的ミスが抑制される。なお、音声出力される前記作業工程に係る情報は、前記作業工程の内容、前記作業量、及び前記作業対象のいずれか1つ又は複数であってよい。
【0084】
<ステップS18>
ステップS18において、前記制御部11は、現在の作業工程が前記薬品認証工程であるか否かを判断する。ここで、現在の作業工程が前記薬品認証工程であると判断されると(S18:Yes)、処理がステップS19に移行し、現在の作業工程が前記薬品認証工程でないと判断されると(S18:No)、処理がステップS20に移行する。
【0085】
<ステップS19>
前記ステップS19において、前記制御部11は、前記調製作業で使用する前記薬品又は前記液体の適否を判定する薬品認証処理を実行する。具体的に、前記制御部11は、前記第2読取部21による前記薬品又は前記液体の識別情報の読み取りを待ち受けており、前記薬品の識別情報(前記内容物識別情報)が読み取られた場合に、当該内容物識別情報が現在の前記薬品認証工程で読み取られるべき前記調製データ内の前記薬品又は前記液体の識別情報と一致するか否かを照合する。そして、前記制御部11は、前記内容物識別情報の照合結果が一致である場合、処理を前記ステップS20に移行させる。なお、前記制御部11は、前記内容物識別情報の照合結果が不一致である場合、エラーを報知して当該ステップS19を繰り返し実行する。
【0086】
<ステップS20>
前記ステップS20において、前記制御部11は、現在の作業工程が前記風袋引き工程であるか否かを判断する。ここで、現在の作業工程が前記風袋引き工程であると判断されると(S20:Yes)、処理がステップS21に移行し、現在の作業工程が前記風袋引き工程でないと判断されると(S20:No)、処理がステップS22に移行する。
【0087】
<ステップS21>
前記ステップS21において、前記制御部11は、前記調製作業で使用する前記注射器203の重量を設定する風袋引き処理を実行する。具体的に、前記制御部11は、前記秤量部22への注射器203の載置、及び前記秤量部22による計量値の安定を待ち受けており、前記計量値が安定した場合に前記計量値を前記注射器203の風袋引きの重量として前記記憶部113に記憶し、処理を前記ステップS22に移行させる。
【0088】
<ステップS22>
前記ステップS22において、前記制御部11は、現在の作業工程が前記液体計量工程又は前記薬品計量工程などの計量工程であるか否かを判断する。ここで、現在の作業工程が前記計量工程であると判断されると(S22:Yes)、処理がステップS23に移行し、現在の作業工程が前記計量工程でないと判断されると(S22:No)、処理がステップS24に移行する。
【0089】
<ステップS23>
前記ステップS23において、前記制御部11は、前記計量工程を支援するための処理を実行する。具体的に、前記制御部11の前記判定処理部35は、前記秤量部22への計量対象物の載置、及び前記秤量部22による計量値(以下、「実測計量値」と称する)の安定を待ち受けており、前記実測計量値が安定した場合は前記実測計量値と前記計量対象物の計量目標値との差が予め設定された誤差範囲内であるか否かを判定する。そして、前記判定処理部35は、前記実測計量値と前記計量目標値との差が前記誤差範囲内、つまり前記実測計量値が前記適正範囲内であると判定した場合、前記実測計量値を計量結果として前記記憶部113に記憶し、処理を前記ステップS24に移行させる。なお、前記判定処理部35は、前記実測計量値と前記計量目標値との差が前記誤差範囲内でない場合、つまり前記実測計量値が前記適正範囲内でない場合、エラーを報知して当該ステップS23を繰り返し実行する。
【0090】
<ステップS24>
前記ステップS24において、前記制御部11は、現在の作業工程が前記液体撮影工程又は前記薬品撮影工程などの撮影工程であるか否かを判断する。ここで、現在の作業工程が前記撮影工程であると判断されると(S24:Yes)、処理がステップS25に移行し、現在の作業工程が前記撮影工程でないと判断されると(S24:No)、処理がステップS26に移行する。
【0091】
<ステップS25>
前記ステップS25において、前記制御部11は、前記撮影部16に画像の撮影を実行させるための処理を実行する。具体的に、前記制御部11は、前記操作入力部15を用いた前記撮影部16による撮影操作を待ち受けており、前記撮影操作が行われた場合に前記撮影部16に撮影要求を送信する。これにより、前記撮影部16が制御されて前記撮影部16による撮影が実行され、撮影された画像が前記制御部11に送信される。そして、前記制御部11は、前記画像を前記操作表示部12に表示させた後、ユーザーによる確認操作が行われた場合に、前記画像を前記調製データに対応付けて前記記憶部113に履歴データとして記憶する。なお、前記制御部11は、ユーザーにより再撮影操作などが行われた場合には、前記撮影要求を再度前記撮影部16に送信することにより、前記撮影部16による撮影を再実行させることも可能である。
【0092】
<ステップS26>
前記ステップS26において、前記制御部11は、現在の作業工程が、前記ステップS18~S25で判断された前記薬品認証工程、前記風袋引き工程、前記計量工程、及び前記撮影工程のいずれでもない「他の作業工程」であるか否かを判断する。つまり、前記他の作業工程は、前記液体抜取工程、前記溶解工程、前記薬品抜取工程、及び前記混注工程などである。ここで、現在の作業工程が前記他の作業工程であると判断されると(S26:Yes)、処理がステップS27に移行し、現在の作業工程が前記他の作業工程ではないと判断されると(S26:No)、処理が前記ステップS17に移行する。
【0093】
<ステップS27>
前記ステップS27において、前記制御部11は、前記他の作業工程の情報の確認操作を受け付ける確認処理を実行する。具体的に、前記制御部11は、前記作業工程の確認操作を待ち受けており、前記確認操作が行われた場合に、処理をステップS28に移行させる。なお、前記確認操作は、前記操作表示部12又は前記操作入力部15を用いてユーザーによって行われる。
【0094】
<ステップS28>
前記ステップS28において、前記制御部11は、前記調製データに基づく前記調製作業の全ての作業工程が終了したか否かを判断する。ここで、全ての前記作業工程が終了していないと判断されると(S28:No)、処理が前記ステップS17に移行して次の作業工程について同様の処理が実行される。なお、全ての前記作業工程が終了したと判断された場合には(S28:Yes)、前記調製データについての一連の前記調製支援処理が終了し、処理が例えば前記ステップS15に戻される。
【0095】
このように、前記調製支援処理では、前記調製データに基づいて前記調製作業に含まれる作業工程が順次表示されるため、ユーザーがその表示に従って順に前記作業工程を進めることが可能である。
【0096】
[作業工程各々に対応する表示例]
以下、
図8~
図10を参照しつつ、前記調製作業に含まれる各作業工程が実行される場合の前記工程画面D11の表示例について説明する。ただし、ここでは前記全量廃棄工程が前記調製作業に含まれない場合における前記調製支援処理を例に説明する。つまり、前記判断処理部36によって、前記全量廃棄工程が前記調製作業に含まれないと判断されるケースについて説明する。
【0097】
図8~
図10では、前記操作表示部12に表示される前記工程画面D11の画面遷移を模式的に表しており、各図面の矢印に沿って(上から下に)前記工程画面D11が遷移することを示している。なお、以下では、複数の前記工程画面D11を互いに区別する場合、各工程画面D11を工程画面D101~D115と称する。これら複数の工程画面D101~D115は、工程画面D101、工程画面D102、工程画面D103、…、工程画面D114、工程画面D115の順に遷移する。
【0098】
<薬品認証工程>
図8に示す工程画面D101,D102は、前記薬品認証工程に対応する表示例である。
【0099】
前記工程画面D101では、前記作業工程領域A1に、前記作業工程の内容として「認証を行ってください。」の文字列が表示されている。また、前記作業量領域A2には、前記作業量として「本数:0/1」の文字列が表示されている。さらに、前記作業対象領域A3には、前記作業対象として「アリムタ(登録商標)注射用500mg」の文字列が表示されている。
【0100】
前記調製作業で他の薬品も使用される場合には、続けて前記他の薬品についても同様に前記工程画面D11に前記薬品認証工程に対応する情報が表示される。例えば、
図8では、前記工程画面D102において、前記他の薬品についての前記薬品認証工程の情報として、前記作業工程の内容が薬品認証工程であり、前記作業対象がアリムタ注射用100mgであり、前記作業量が3本である旨が表示されている。
【0101】
<風袋引き工程>
図8に示す工程画面D103は、前記風袋引き工程に対応する表示例である。
【0102】
前記工程画面D103では、前記作業工程領域A1に、前記作業工程の内容として「空シリンジの風袋引きをしてください。」の文字列が表示されている。また、前記作業対象領域A3には、前記作業対象として「50mLシリンジ-1」の文字列が表示されている。
【0103】
<液体抜取工程>
図8に示す工程画面D104は、前記液体抜取工程に対応する表示例である。ここでは、前記液体抜取工程が前記全量廃棄工程ではなく、前記輸液容器202内の前記液体の一部のみを抜き取る「通常の」前記液体抜取工程である場合を例示する。
【0104】
前記工程画面D104では、前記作業工程領域A1に、前記作業工程の内容として「溶解液を抜き取ってください。」の文字列が表示されている。また、前記作業量領域A2には、前記作業量、つまり前記液体の抜取量として「用量:32.6mL」の文字列が表示されている。さらに、前記作業対象領域A3には、前記作業対象として「生理食塩液500ml」の文字列が表示されている。
【0105】
すなわち、前記全量廃棄工程ではない通常の前記液体抜取工程においては、前記支援処理部31は、前記輸液容器202に収容されている前記液体の抜取量を指示する通常指示を行う。具体的に、前記支援処理部31によって前記操作表示部12に表示される前記工程画面D104においては、「用量:32.6mL」のように前記液体の抜取量の指示の指示がなされる。これにより、ユーザーは、前記工程画面D104に従って、前記輸液容器202から、指定された抜取量(32.6mL)の前記液体を抜き取ることになる。
【0106】
<液体計量工程>
図8に示す工程画面D105は、前記液体計量工程に対応する表示例である。
【0107】
前記工程画面D105では、前記作業工程領域A1に、前記作業工程の内容として「溶解液を計量してください。」の文字列が表示されている。また、前記作業量領域A2には、前記作業量として「用量:32.6mL」の文字列が表示されている。さらに、前記作業対象領域A3には、前記作業対象として「生理食塩液500ml」の文字列が表示されている。
【0108】
なお、前記制御部11は、前記工程画面D105において、前記実測計量値が前記適正範囲内であるか否かに応じて、例えば前記作業量領域A2の文字色などの表示態様を変更することが考えられる。具体的に、前記制御部11は、前記実測計量値が前記適正範囲内でなければ、前記作業量領域A2の文字色を第1の色とし、前記実測計量値が前記適正範囲内であれば前記作業量領域A2の文字色を第2の色とする。
【0109】
<液体撮影工程>
図9に示す工程画面D106は、前記液体撮影工程に対応する表示例である。
【0110】
前記工程画面D106では、前記作業工程領域A1に、前記作業工程の内容として「画像を撮影してください。」の文字列が表示されている。また、前記作業対象領域A3には、前記作業対象として「生理食塩液500ml」の文字列が表示されている。
【0111】
<溶解工程>
図9に示す工程画面D107~D110は、前記溶解工程に対応する表示例である。
【0112】
前記工程画面D107では、前記作業工程領域A1に、前記作業工程の内容として「溶解してください。」の文字列が表示されている。また、前記作業量領域A2には、前記作業量として「溶解量:20mL」の文字列が表示されている。さらに、前記作業対象領域A3には、前記作業対象として「アリムタ注射用500mg」の文字列が表示されている。
【0113】
前記調製作業で他の薬品も使用される場合には、続けて前記他の薬品についても同様に前記工程画面D11に前記溶解工程に対応する情報が表示される。例えば、
図9では、前記工程画面D108~D110の各々において、前記他の薬品についての前記溶解工程の情報として、前記作業工程の内容が溶解工程であり、前記作業対象がアリムタ注射用100mgであり、前記作業量が4.2mLである旨が表示されている。
【0114】
<薬品抜取工程>
図10に示す工程画面D111,D112は、前記薬品抜取工程に対応する表示例である。
【0115】
前記工程画面D111では、前記作業工程領域A1に、前記作業工程の内容として「抜き取ってください。」の文字列が表示されている。また、前記作業量領域A2には、前記作業量として「用量:20mL」の文字列が表示されている。さらに、前記作業対象領域A3には、前記作業対象として「アリムタ注射用500mg」の文字列が表示されている。
【0116】
前記調製作業で他の薬品も使用される場合には、続けて前記他の薬品についても同様に前記工程画面D11に前記薬品抜取工程に対応する情報が表示される。例えば、
図10では、前記工程画面D112において、前記他の薬品についての前記薬品抜取工程の情報として、前記作業工程の内容が薬品抜取工程であり、前記作業対象がアリムタ注射用100mgであり、前記作業量が12mLである旨が表示されている。
【0117】
<薬品計量工程>
図10に示す工程画面D113は、前記薬品計量工程に対応する表示例である。
【0118】
前記工程画面D113では、前記作業工程領域A1に、前記作業工程の内容として「計量してください。」の文字列が表示されている。また、前記作業量領域A2には、前記作業量として「用量:32mL」の文字列が表示されている。さらに、前記作業対象領域A3には、前記作業対象として「アリムタ注射用」の文字列が表示されている。なお、前記制御部11は、前記工程画面D113において、前記実測計量値が前記適正範囲内であるか否かに応じて、例えば前記作業量領域A2の文字色などの表示態様を変更することが考えられる。
【0119】
<薬品撮影工程>
図10に示す工程画面D114は、前記薬品撮影工程に対応する表示例である。
【0120】
前記工程画面D114では、前記作業工程領域A1に、前記作業工程の内容として「画像を撮影してください。」の文字列が表示されている。また、前記作業対象領域A3には、前記作業対象として「50mLシリンジ-1」の文字列が表示されている。
【0121】
<混注工程>
図10に示す工程画面D115は、前記混注工程に対応する表示例である。前記工程画面D11では、前記作業工程領域A1に、前記作業工程の内容として「混注してください。」の文字列が表示されている。
【0122】
以上説明したように、本実施形態に係る前記調製支援システム1では、前記操作表示部12に、前記調製作業の各作業工程に係る情報を表示できる。そのため、ユーザーは、前記工程画面D11を参照して前記調製作業を効率的に進めることが可能である。
【0123】
なお、前記支援処理部31が、少なくとも前記作業工程領域A1、前記作業量領域A2、及び前記作業対象領域A3を予め設定された一定期間ごとに順次、前記工程画面D11に表示させることも考えられる。これにより、前記作業工程領域A1、前記作業量領域A2、及び前記作業対象領域A3の各々の表示内容を前記操作表示部12で大きく表示させることが可能である。
【0124】
[モード切替処理]
次に、
図10及び
図11を参照しつつ、前記モード切替部37によって実行されるモード切替処理について説明する。前記モード切替処理によれば、少なくとも前記ユーザー情報に基づいて、前記提示モードの切り替えが行われる。
【0125】
具体的に、ユーザーが前記熟練ユーザーであると判断される場合、前記モード切替部37は、前記工程画面D11を表示する前記提示モードとして、煩わしい手順及び指示等の表示を省略した前記簡易表示モード(前記第1モード)を選択する。一方、前記ユーザー情報に基づいてユーザーが前記熟練ユーザーでないと判断される場合、前記工程画面D11を表示する前記提示モードとして、より詳細な手順及び指示等の表示を行う前記詳細表示モード(前記第2モード)を選択する。
【0126】
例えば、前記簡易表示モードでは、同一の前記薬品(又は前記液体)が収容されている複数の前記薬品容器201(又は前記輸液容器202)を対象として、同一の前記作業工程が複数回連続して実行される場合に、前記支援処理部31は、これら複数回の前記作業工程を1つの工程画面D11にまとめて表示する「まとめ表示」を行う。これに対して、前記詳細表示モードでは、同一の前記薬品(又は前記液体)が収容されている複数の前記薬品容器201(又は前記輸液容器202)を対象として、同一の前記作業工程が複数回連続して実行される場合に、前記支援処理部31は、これら複数回の前記作業工程を複数の工程画面D11で個別に表示する「個別表示」が実行される。
【0127】
一例として、
図10に示す前記工程画面D111及び前記工程画面D112のように、同一の前記薬品(ここでは「アリムタ注射用」)が収容されている複数の前記薬品容器201を対象として、同一の前記作業工程(ここでは前記薬品抜取工程)が複数回連続して実行される場合を想定する。
【0128】
この場合において、前記詳細表示モードでは、
図10に示す前記工程画面D111及び前記工程画面D112のように、同種の前記薬品抜取工程に係る情報が複数回連続して表示される。具体的に、「アリムタ注射用500mg」に対応する一の前記薬品容器201、「アリムタ注射用100mg」に対応する他の前記薬品容器201から、それぞれ「アリムタ注射用」を20mL,12mL抜き取ることが、前記工程画面D111及び前記工程画面D112にて指示される。
【0129】
これに対して、前記簡易表示モードでは、
図11に示す前記工程画面D11のように、同種の前記薬品抜取工程に係る情報がまとめて表示される。具体的に、「アリムタ注射用」に対応する複数の前記薬品容器201から、「アリムタ注射用」を合計32mL抜き取ることが、1つの前記工程画面D11にて指示される。このような前記まとめ表示によれば、前記熟練ユーザーにとっては煩わしい手順及び指示等の表示が省略され、より効率的な前記調製作業を実現しやすくなる。
【0130】
また、前記まとめ表示と前記個別表示とに限らず、例えば前記簡易表示モードでは、前記作業対象である前記薬品、若しくは前記液体、又は前記作業工程の内容などを、略称を用いて表示してもよい。具体的に、前記液体が「生理食塩液」であれば、前記簡易表示モードでは「生食」のような略称を用いて表示することで、正式名称(生理食塩液)が用いられる前記詳細表示モードと区別可能である。なお、前記第1モード及び前記第2モードと前記簡易表示モード及び前記詳細表示モードとの関係も上記例に限らず、例えば前記第1モードが前記詳細表示モード、前記第2モードが前記簡易表示モードであってもよい。
【0131】
[投与容器の特定処理]
次に、
図12及び
図13を参照しつつ、前記特定処理部32が実行する前記投与容器の特定処理について説明する。
【0132】
図12は、前記調製データの内容が表示される前記調製支援画面D1a及び前記調製支援画面D1bの一部を示す図である。前記調製支援画面D1a,D1bは、いずれも前記調製データの内容(処方内容)を示す処方内容領域A10を含んでいる。ここで、
図12に示すように、前記調製支援画面D1aと前記調製支援画面D1bとでは、前記処方内容領域A10の表示が異なっている。具体的に、前記調製支援画面D1a,D1bは、いずれも前記調製データに示される前記薬品として「アブラキサン(登録商標)100mg」を含み、かつ前記調製データに示される前記液体として「生理食塩液100mL」及び「生理食塩液500mL」を含む。ただし、前記調製支援画面D1aと前記調製支援画面D1bとでは、「生理食塩液100mL」及び「生理食塩液500mL」の示される順番が異なる。前記調製データ(又はレジメン情報)は、例えば病院ごとに任意に登録されているので、実質的に同一の処方データ(又はレジメン)であっても、このように順番が異なるようなことがあり得る。
【0133】
このようなケースにおいて、例えば先に取得される前記液体が収容されている前記輸液容器202、つまり前記輸液容器202の中で前記処方内容領域A10の1行目に表示される前記液体が収容されている前記輸液容器202を、前記投与容器として使用するとすれば、前記調製支援画面D1aでは「生理食塩液100mL」の前記輸液容器202が、前記調製支援画面D1bでは「生理食塩液500mL」の前記輸液容器202が、それぞれ前記投与容器として指示される。しかし、「生理食塩液100mL」の前記輸液容器202であれば、容量(最大収容量)はせいぜい120mL以下であって、前記調製済み薬品を収容する前記投与容器として使用できないため、実際には、「生理食塩液500mL」の前記輸液容器202が前記投与容器として使用される。本実施形態に係る前記調製支援システム1は、実際に前記投与容器として使用される容器(前記輸液容器202)を特定する前記特定処理により、前記調製作業の更なる効率化を図りやすくする。
【0134】
具体的に、前記制御部11は、
図13に例示するようなフローチャートに従って、前記特定処理を実行する。以下では、
図12に示す前記調製支援画面D1aの前記調製データが用いられる場合を例に説明する。
【0135】
<ステップS31>
ステップS31において、前記制御部11は、前記調製データに示される前記液体を収容している個々の容器(前記輸液容器202)について、前記輸液容器202の属性を表す前記容器属性情報を取得する。具体的に、前記制御部11は、前記調製データに示される前記輸液容器202に1つずつ着目し、当該着目した前記輸液容器202について、前記薬品マスターから前記容器属性情報を取得する。前記調製支援画面D1aでは、前記調製データが「生理食塩液100mL」及び「生理食塩液500mL」をこの順で示すので、前記制御部11は、まず「生理食塩液100mL」を収容する前記輸液容器202に着目し、当該輸液容器202について前記容器属性情報を取得する。前記容器属性情報は、少なくとも前記輸液容器202の容量の情報を含む。ここでいう容量は最大収容量であって、「生理食塩液100mL」を収容する前記輸液容器202であれば、例えば「120mL」である。
【0136】
<ステップS32>
ステップS32において、前記制御部11は、着目している前記輸液容器202について、前記投与容器候補であるか否かを判断する。具体的に、着目している前記輸液容器202が前記薬品マスターにおいて前記投与容器候補として登録されていれば、前記制御部11の前記特定処理部32は、前記投与容器候補であると判断し(S32:Yes)、処理をステップS33に移行する。一方、着目している前記輸液容器202が前記薬品マスターにおいて前記投与容器候補として登録されていなければ、前記特定処理部32は、前記投与容器候補でないと判断し(S32:No)、処理をステップS35に移行する。
【0137】
<ステップS33>
前記ステップS33において、前記制御部11は、着目している前記輸液容器202が、暫定投与容器よりも大きい、つまり大容量であるか否かを判断する。具体的に、前記制御部11の前記特定処理部32は、着目している前記輸液容器202と、前記暫定投与容器とで、容量(最大収容量)同士を比較する。前記暫定投与容器とは、ステップS34にて設定されるフラグであって、初期状態では前記暫定投与容器の容量は「0」に設定される。そして、前記特定処理部32は、着目している前記輸液容器202の容量が前記暫定投与容器の容量より大きければ(S33:Yes)、処理を前記ステップS34に移行する。一方、着目している前記輸液容器202の容量が前記暫定投与容器の容量以下であれば(S33:No)、前記特定処理部32は、処理を前記ステップS35に移行する。
【0138】
<ステップS34>
前記ステップS34において、前記制御部11は、着目している前記輸液容器202について、暫定フラグをセットし、当該輸液容器202を前記暫定投与容器として登録する。具体的に、前記制御部11の前記特定処理部32は、「生理食塩液100mL」を収容する前記輸液容器202を、まずは前記暫定投与容器に登録する。
【0139】
<ステップS35>
前記ステップS35において、前記制御部11は、前記調製データに示される前記液体を収容する全ての前記輸液容器202について、前記容器属性情報の取得(S31)を含む一連の処理が終了したか否かを判断する。ここで、全ての前記輸液容器202についての処理が終了していないと判断されると(S35:No)、処理が前記ステップS31に移行して次の前記輸液容器202について同様の処理が実行される。一方、全ての前記輸液容器202についての処理が終了したと判断されると(S35:Yes)、前記特定処理部32は、処理をステップS36に移行する。
【0140】
<ステップS36>
前記ステップS36において、前記制御部11は、その時点で前記暫定投与容器として登録されている前記輸液容器202を、前記投与容器として特定する。具体的に、前記制御部11の前記特定処理部32は、前記暫定投与容器としての前記輸液容器202について、投与フラグをセットし、当該輸液容器202を前記投与容器として特定する。具体的に、前記制御部11の前記特定処理部32は、相対的に容量の大きい「生理食塩液500mL」を収容する前記輸液容器202を、前記投与容器として特定する。「生理食塩液500mL」を収容する前記輸液容器202の容量(最大収容量)は、例えば「550mL」である。
【0141】
<ステップS37>
前記ステップS37において、前記制御部11は、前記投与容器の容量(最大収容量)が、前記調製済み薬品の総量よりも大きいか否かを判断する。具体的に、前記制御部11の前記可否判断処理部33は、前記調製データから前記調製済み薬品の総量を求め、当該総量(ここでは540mL)と、前記投与容器の容量(ここでは550mL)とを比較する。そして、前記可否判断処理部33は、前記投与容器の容量が前記調製済み薬品の総量より大きければ(S37:Yes)、処理をステップS39に移行する。一方、前記投与容器の容量が前記調製済み薬品の総量以下であれば(S37:No)、前記可否判断処理部33は、処理をステップS38に移行する。
【0142】
<ステップS38>
前記ステップS38において、前記制御部11は、別容器を前記投与容器として設定する。すなわち、この場合、前記調製済み薬品の総量が、前記調製データに示される複数の前記輸液容器202のうち容量が最大の容器(前記投与容器)の容量以上であるので、前記制御部11は、前記調製データに示される前記液体を収容する前記輸液容器202以外の容器(別容器)であって、前記調製済み薬品を収容可能な容量の別容器を、新たに前記投与容器として設定する。
【0143】
<ステップS39>
前記ステップS39において、前記制御部11は、前記投与容器をユーザーに提示する。具体的に、前記制御部11の前記支援処理部31は、前記ステップS36又は前記ステップS38にて前記投与容器として特定された容器を、例えば前記操作表示部12への表示によってユーザーに提示する。
【0144】
なお、前記特定処理部32が前記投与容器を特定するのは、前記調製データに示される前記液体を収容している容器の中に、前記投与容器として使用し得る容器が複数存在する場合だけでよい。すなわち、前記投与容器として使用し得る容器が1つだけの場合には、当該容器のみが前記投与容器たり得るのであって、前記投与容器を前記容器属性情報に基づいて特定するまでもない。そこで、前記投与容器候補としての容器が、前記調製データに示される前記液体を収容している容器の中に2つ以上存在する場合に限って、前記特定処理部32が前記投与容器を特定する前記特定処理を実行すればよい。
【0145】
[全量廃棄工程がある場合の調製支援処理]
次に、
図12、
図14及び
図15を参照しつつ、前記全量廃棄工程が前記調製作業に含まれる場合における前記調製支援処理について説明する。つまり、前記判断処理部36によって、前記全量廃棄工程が前記調製作業に含まれると判断されるケースについて説明する。
【0146】
一例として、
図12に示す前記調製支援画面D1aのように、前記調製データが「アブラキサン100mg」を含み、かつ前記調製データに示される前記液体として「生理食塩液100mL」及び「生理食塩液500mL」を含む場合を想定する。この場合の前記調製データは、「生理食塩液100mL」のうち「40mL」を前記薬品(アブラキサン)の溶解に使用することを示している。つまり、前記処方内容領域A10には、「生理食塩液100mL」のうち「40mL」を使用することが示されている。このような場合に、「生理食塩液100mL」を収容している前記輸液容器202には、「40mL」を抜き取った後に、残液として「60mL」以上の前記液体(生理食塩液)が存在する。そこで、前記調製データで示される前記調製作業には、当該残液を全量廃棄する前記全量廃棄工程が含まれることになる。
【0147】
このようなケースにおいて、「生理食塩液100mL」を収容している前記輸液容器202からの前記残液の抜き取りを、前記輸液容器202内の前記液体の一部のみを抜き取る通常の前記液体抜取工程とすれば、前記調製支援システム1は、ユーザーに対して前記抜取量を指示する。そのため、ユーザーによっては、本来的には全量を抜き取ればよいにも関わらず、前記注射器203にて抜取量を調節しながら前記残液を抜き取る作業を行うことになり、必要以上に手間がかかることがある。また、抜き取られた前記残液に対しては、重量鑑査等による前記抜取量の適否の判定が行われるとすれば、当該判定に係る処理によって無駄に前記制御部11の処理負荷が増加する。さらに、前記全量廃棄の場合の実際の前記抜取量は、前記輸液容器202に過剰充填されている分だけ、前記調製支援システム1から指示される前記抜取量よりも多くなるので、前記抜取量の適否の判定結果は不適正(エラー)となる可能性がある。つまり、上記の例では抜取量として「60mL」が指示されるにも関わらず、実際の抜取量は例えば「65mL」(5mLが前記過剰充填分)などになり、前記抜取量の適否の判定結果は不適正(エラー)となる可能性がある。本実施形態に係る前記調製支援システム1は、前記全量廃棄工程がある場合には、前記全量廃棄工程に合わせた前記調製支援処理を実行するので、これらの問題を解決し、前記調製作業の更なる効率化を図りやすくする。
【0148】
具体的に、前記制御部11は、
図14に例示するようなフローチャートに従って、前記全量廃棄工程が前記調製作業に含まれるか否かによって、異なる前記調製支援処理を実行する。
図14は特に、前記調製支援処理のうち前記液体抜取工程に係る処理を示している。以下では、
図12に示す前記調製支援画面D1aの前記調製データが用いられる場合を例に説明する。
【0149】
<ステップS41>
ステップS41において、前記制御部11は、前記全量廃棄工程が前記調製作業に含まれるか否かを判断する。このとき、前記制御部11前記判断処理部36は、前記調製データに基づいて、現在の前記液体抜取工程が前記全量廃棄工程であるか否かを判断する。具体的に、前記判断処理部36は、前記全量廃棄工程の実施が必要な特定の種類の前記薬品が前記調製データに示されている場合、前記液体抜取工程が前記全量廃棄工程であると判断し(S41:Yes)、処理をステップS42に移行する。一方、ある特定の種類の前記薬品が前記調製データに示されていなければ、前記判断処理部36は、前記液体抜取工程が前記全量廃棄工程でないと判断し(S41:No)、処理をステップS44に移行する。
【0150】
<ステップS42>
前記ステップS42において、前記制御部11は、前記通常指示とは区別可能な態様で前記全量廃棄指示を行う。具体的に、前記制御部11の前記支援処理部31は、
図15に例示するような工程画面D121を、前記操作表示部12に表示させることで、前記全量廃棄指示を行う。
図15では、前記操作表示部12に表示される前記工程画面D11の画面遷移を模式的に表しており、各図面の矢印に沿って(上から下に)前記工程画面D11が遷移することを示している。つまり、複数の工程画面D121,D122は、工程画面D121、工程画面D122の順に遷移する。
【0151】
前記工程画面D121では、前記作業工程領域A1に、前記作業工程の内容として「全量を抜き取って廃棄してください。」の文字列が表示されている。また、前記作業量領域A2は、空欄とされている。さらに、前記作業対象領域A3には、前記作業対象として「生理食塩液100ml」の文字列が表示されている。さらに、前記ステータス領域A5には「全量廃棄」の文字列が表示されている。このように、前記工程画面D121は、前記残液を全量廃棄することをユーザーが認識可能な内容の指示(前記全量廃棄指示)を含んでいる。特に、
図15の例では、前記工程画面D121は、前記作業量領域A2を空欄とすることで、不必要な抜取量の情報が表示されることを回避している。前記工程画面D121において、前記操作領域A4における「確認」と表記されたボタンが操作されると、前記制御部11は、処理をステップS43に移行する。
【0152】
前記全量廃棄指示を受けて、ユーザーは、前記作業対象について全量廃棄を実施することができる。具体的に、ユーザーは、前記注射器203を用いて、前記作業対象としての「生理食塩液100ml」の前記輸液容器202から、前記残液を抜き取って廃棄する。このとき、ユーザーは、前記輸液容器202から前記残液を全量抜き取ればよいので、抜取量を気にせずに抜き取り作業を行う。つまり、「生理食塩液100mL」を収容している前記輸液容器202には、「40mL」を抜き取った後に、例えば残液として「65mL」の前記液体が存在する場合、ユーザーは「65mL」の前記液体の抜き取りを行う。
【0153】
<ステップS43>
前記ステップS43において、前記制御部11は、前記全量廃棄工程の対象とされた前記一の容器(前記輸液容器202)の画像を撮影する。具体的に、前記制御部11の前記記録処理部34は、前記全量廃棄工程後に、
図15に例示するような工程画面D122を、前記操作表示部12に表示させることで、前記ユーザーによる前記画像の撮影を支援する。前記工程画面D122では、前記作業工程領域A1に、前記作業工程の内容として「空き容器の画像を撮影してください。」の文字列が表示されている。さらに、前記作業対象領域A3には、前記作業対象として「生理食塩液100ml」の文字列が表示されている。
【0154】
このとき、前記記録処理部34は、前記撮影部16で空の状態の前記輸液容器202を撮影して得られる画像のデータ(画像データ)を、前記空容器情報として前記記憶部113に記憶することで記録する。前記記録処理部34は、前記空容器情報として、前記画像に加えて又は代えて、前記輸液容器202が空であることを示す空容器フラグ、及び前記秤量部22で計量された空の状態の前記輸液容器202の重量情報等を記録してもよい。ただし、前記空容器情報は、前記一の容器(前記輸液容器202)が空であることを必須とするものではなく、例えば、当該容器に前記液体が一部残っている状態であっても、当該容器の画像は前記空容器情報として記録される。
【0155】
そして、前記液体抜取工程が前記全量廃棄工程である場合には、前記ステップS43をもって前記調製支援処理のうちの前記液体抜取工程に係る一連の処理を終了する。すなわち、この場合、前記判定処理部35は、前記判定条件を満たすと判断して、前記抜取量の適否の判定に係る処理を実行しない。前記抜取量の適否の判定に係る処理が実行されないため、当然ながら、前記抜取量の適否の判定結果の出力処理も実行されない。すなわち、本実施形態では、前記全量廃棄工程に関しては、前記抜取量の適否の判定結果が不適正としてエラーが報知されて当該報知を解除するといった手間をかけることなく、前記全量廃棄が行われたことの証明(エビデンス)としての前記空容器情報を、簡単な手順で残すことができる。
【0156】
<ステップS44>
前記ステップS44において、前記制御部11は、前記全量廃棄指示とは区別可能な態様で前記通常指示を行う。具体的に、前記制御部11の前記支援処理部31は、例えば
図8に示す前記工程画面D104を、前記操作表示部12に表示させることで、前記通常指示を行う。
【0157】
<ステップS45>
ステップS45は、
図5における前記ステップS23の計量処理に相当する。つまり、前記ステップS45において、前記制御部11の前記判定処理部35は、抜き取られた前記液体を前記計量対象物として、当該計量対象物の前記実測計量値が前記適正範囲内にあるか否かを判定し、更に判定結果を出力する。
【0158】
<ステップS46>
ステップS46は、
図5における前記ステップS25の撮影処理に相当する。前記ステップS46をもって、前記調製支援処理のうちの前記液体抜取工程に係る一連の処理を終了する。
【0159】
[その他の機能]
前記判定処理部35は、前記抜取工程が前記全量廃棄工程を含まない、つまり判定条件を満たさない場合であっても、特定条件を満たす場合には、前記抜取量の適否の判定に係る処理と、前記抜取量の適否の判定結果の出力処理との少なくとも一方を実行しなくてもよい。前記特定条件は、一例として、前記液体の抜取量が所定量を超えることを含む。前記所定量は、例えば病院ごとに設定され、具体的に前記注射器203の容量などである。例えば前記液体抜取工程において、前記輸液容器202などの容器から、前記液体を全量ではなく一部抜き取って廃棄する場合がある。この場合において、前記抜取量が前記所定量である前記注射器203の容量を超えると、当該注射器203で複数回抜き取りを行う必要がある。このような場合には、前記判定処理部35は、前記抜取量の適否の判定に係る処理と、前記抜取量の適否の判定結果の出力処理との少なくとも一方を実行しない。
【0160】
[調製支援システム1の他の構成例]
他の構成例に係る前記調製支援システム1は、
図16に示すように、調製装置4と連携可能に構成されている。前記調製装置4は、ユーザーに代えて、前記調製作業の少なくとも一部を行う。つまり、前記調製装置4によれば、前記調製作業の少なくとも一部を自動化できる。本構成例では、前記調製支援システム1は、前記調製装置4で自動的に行われる前記調製作業の一部又は全部を支援する。
【0161】
具体的に、前記調製支援システム1は、通信網NT1を介して前記調製装置4と通信可能に構成され、前記調製データに基づいて前記調製装置4を制御する自動調製処理を実行する。前記自動調製処理に係る制御に従って、前記調製装置4は前記調製作業を実行する。前記調製装置4は、多関節構造の第1ロボットアーム41、第2ロボットアーム42、及びコンテナ搬送部43などを有している。前記第1ロボットアーム41、前記第2ロボットアーム42、及び前記コンテナ搬送部43は、前記安全キャビネット100の前記作業室101に相当する混注処理室内に配置されている。前記混注処理室には、アンプルカッター、攪拌装置、載置棚、薬品読取部、秤量計、カメラ、及び殺菌灯などが配置されている。
【0162】
前記調製装置4は、前記調製支援システム1からの制御信号に従って、双腕型の前記第1ロボットアーム41及び前記第2ロボットアーム42により自動的に前記調製作業を実行する。なお、前記調製装置4は、自動的に前記調製作業を実行できる構造であれば、例えば1本のロボットアームを有する構成、3本以上のロボットアームを含む構成、又はロボットアームを用いない構成であってもよい。
【0163】
前記他の構成例において、前記支援処理部31は、前記複数の容器(前記輸液容器202)のうち前記投与容器として特定された容器に、調製後の薬品(前記調製済み薬品)を投入するように、前記調製装置4を制御する。すなわち、前記支援処理部31は、前記投与容器として特定された容器をユーザーに提示する代わりに、当該容器を前記投与容器として使用するように前記調製装置4を制御する。
【0164】
前記他の構成例においても、前記調製支援システム1は、前記全量廃棄工程がある場合の前記調製支援処理を実行可能である。すなわち、前記調製支援システム1は、例えば前記全量廃棄工程に際して、前記調製装置4に前記全量廃棄指示を出したり、前記調製装置4に前記空容器情報を記録させたり、前記調製装置4に前記抜取量の適否の判定を実行させなかったりすることが可能である。
【0165】
ここで、前記調製装置4が前記輸液容器202などの容器内の前記残液の全量廃棄を実行するための手段は特に限定しないが、一例として、再表2015/041092号公報の
図59、及び
図59に係る説明を参照されたい。なお、前記調製支援システム1は、前記調製装置4と一体化されていてもよい。
【0166】
[変形例]
前記調製支援システム1に含まれる複数の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。反対に、上記実施形態において、複数の筐体に分散している複数の構成要素(前記操作表示部12及び前記撮影部16など)が、1つの筐体に集約して設けられていてもよい。
【0167】
また、上記実施形態では、前記特定処理部32は、前記複数の容器のうち容量が最大の容器を前記投与容器として特定する場合について説明したが、これに限らず、前記特定処理部32は、前記容器属性情報に基づいて前記投与容器を特定すればよい。例えば前記特定処理部32は、前記容器属性情報に基づいて、所定の種類(一例としてプラスチックボトル)の容器を、前記投与容器として特定してもよい。
【0168】
また、前記投与容器を特定する前記特定処理部32は、前記調製支援システム1に必須の処理ではなく、適宜省略可能である。同様に、前記可否判断処理部33、前記記録処理部34、前記判定処理部35、前記判断処理部36、及び前記モード切替部37などについても、前記調製支援システム1に必須の処理ではなく、これらのうちの少なくとも1つの機能が適宜省略されてもよい。
【0169】
また、前記薬品の種類によっては、前記溶解工程において、前記液体を前記薬品容器201に入れてから前記液体抜取工程を行うまでの間に、前記薬品容器201を、一定時間、静置させる必要がある。この種の前記薬品が前記調製データに示されている場合に、前記調製支援システム1は、前記薬品容器201を静置したことを示す入力を、例えばユーザーから受けると、前記一定時間の計時を開始し、前記一定時間の経過後に、前記静置の終了をユーザーに報知(提示)してもよい。