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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】サスペンションアーム
(51)【国際特許分類】
   B60G 7/00 20060101AFI20241127BHJP
【FI】
B60G7/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023511290
(86)(22)【出願日】2022-03-28
(86)【国際出願番号】 JP2022015122
(87)【国際公開番号】W WO2022210580
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-07-25
(31)【優先権主張番号】P 2021059014
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001553
【氏名又は名称】アセンド弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】大塚 研一郎
(72)【発明者】
【氏名】東 昌史
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼田 幸一
(72)【発明者】
【氏名】田畑 亮
(72)【発明者】
【氏名】漆畑 諒
(72)【発明者】
【氏名】北原 優樹
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-161990(JP,A)
【文献】特開2020-183181(JP,A)
【文献】特開2014-162327(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第3539802(EP,A1)
【文献】中国特許出願公開第107139668(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿って湾曲した湾曲部を含み閉断面を有する本体部と、前記本体部の長手方向の一方端に設けられ第1孔を含む第1被取付け部と、前記本体部の長手方向の他方端に設けられ第2孔を含む第2被取付け部と、を備えるサスペンションアームであって、
前記本体部は、
前記湾曲部の湾曲内方に対応する内側側壁と、
前記湾曲部の湾曲外方に対応する外側側壁と、
前記内側側壁の一方の側縁と前記外側側壁の一方の側縁とをつなぐ第1側壁と、
前記内側側壁の他方の側縁と前記外側側壁の他方の側縁とをつなぎ前記第1側壁と対向する第2側壁と、を備え、
前記内側側壁の厚みは前記外側側壁の厚みよりも大きく、
前記本体部の長手方向に垂直な断面視で、前記第1側壁及び前記第2側壁の長さは、前記内側側壁及び前記外側側壁の長さよりも大きく、
前記湾曲部における前記長手方向に垂直な断面視で、前記内側側壁及び前記外側側壁の長さである前記本体部の幅に対する前記第1側壁及び前記第2側壁の長さである前記本体部の高さの比は、2.0以上4.0未満である、サスペンションアーム。
【請求項2】
請求項1に記載のサスペンションアームであって、
前記内側側壁の厚みta、前記外側側壁の厚みtb、前記内側側壁の表面積Sa、及び前記外側側壁の表面積Sbが、下記式(1)を満足し、且つ、
前記湾曲部における前記内側側壁の長手方向に垂直な断面において、前記内側側壁の厚みがtaで、前記外側側壁の厚みがtbである場合の断面二次モーメントIzは、前記内側側壁の厚み及び前記外側側壁の厚みを「(Sa×ta+Sb×tb)/(Sa+Sb)」と仮定した場合の断面二次モーメントIyと比較して、下記式(2)を満足する、サスペンションアーム。
ta>(Sa×ta+Sb×tb)/(Sa+Sb)>tb (1)
Iz>Iy×0.85 (2)
【請求項3】
請求項1又は2に記載のサスペンションアームであって、
前記第1側壁は、前記内側側壁につながる内側第1側壁と、前記外側側壁につながる外側第1側壁と、に区分され、
前記第2側壁は、前記内側側壁につながる内側第2側壁と、前記外側側壁につながる外側第2側壁と、に区分され、
前記本体部は、
前記内側側壁、前記内側第1側壁、及び前記内側第2側壁を備える第1部材と、
前記外側側壁、前記外側第1側壁、及び前記外側第2側壁を備える第2部材と、を含み、
前記第1部材の板厚は前記第2部材の板厚よりも大きく、
前記第1部材と前記第2部材とが相互に溶接によって接合されている、サスペンションアーム。
【請求項4】
請求項3に記載のサスペンションアームであって、
前記第1部材の前記内側第1側壁と前記第2部材の前記外側第1側壁とが相互に突合せ継手溶接によって接合され、
前記第1部材の前記内側第2側壁と前記第2部材の前記外側第2側壁とが相互に突合せ継手溶接によって接合されている、サスペンションアーム。
【請求項5】
請求項3に記載のサスペンションアームであって、
前記第1部材の前記内側第1側壁と前記第2部材の前記外側第1側壁とが相互に重ね継手溶接によって接合され、
前記第1部材の前記内側第2側壁と前記第2部材の前記外側第2側壁とが相互に重ね継手溶接によって接合されている、サスペンションアーム。
【請求項6】
請求項3から5のいずれか1項に記載のサスペンションアームであって、
前記第1部材は、前記第1被取付け部に対応する第1延長壁、及び前記第1延長壁に形成され前記第1孔に対応する第1円筒部を備え、
前記第2部材は、前記第1延長壁と対向し前記第1被取付け部に対応する第2延長壁、及び前記第2延長壁に形成され前記第1孔に対応する第2円筒部を備える、サスペンションアーム。
【請求項7】
請求項3から6のいずれか1項に記載のサスペンションアームであって、
前記第2部材は、前記第2被取付け部に対応する第3延長壁、前記第3延長壁に形成され前記第2孔に対応する第1孔部、前記第3延長壁と対向し前記第2被取付け部に対応する第4延長壁、及び前記第4延長壁に形成され前記第2孔に対応する第2孔部を備える、サスペンションアーム。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のサスペンションアームであって、
前記湾曲部における前記内側側壁の曲率半径が200mm以下である、サスペンションアーム。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載のサスペンションアームであって、
前記サスペンションアームは、独立懸架式サスペンションを構成する部品の一つであるアッパーアームである、サスペンションアーム。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載のサスペンションアームであって、
前記本体部の長手方向全域に渡って、前記本体部の長手方向に垂直な断面視で、前記第1側壁及び前記第2側壁の長さは、前記内側側壁及び前記外側側壁の長さよりも大きい、サスペンションアーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、サスペンションアームに関し、より詳細には、自動車等の車両のサスペンションを構成する部品の一つであるサスペンションアームに関する。
【背景技術】
【0002】
車両はサスペンションを備える。サスペンションは、車体と車輪とを連結する部品としてサスペンションアームを含む。例えばアッパーアームやロアアームがサスペンションアームに該当する。
【0003】
一般に、サスペンションアームは、長手方向に沿って湾曲した湾曲部を含む本体部を備える。本体部の両端それぞれには被取付け部が設けられる。一方の被取付け部は車輪とサスペンションアームとの接続に用いられる。他方の被取付け部は車体とサスペンションアームとの接続に用いられる。このため、車両において、サスペンションアームは両端部(被取付け部)を支持される。
【0004】
車両の走行中、サスペンションアームは荷重を受ける。良好な乗り心地を実現するため、サスペンションアームには高い剛性が要求される。特に旋回時や制動時、サスペンションアームは長手方向に高い圧縮荷重を受けることが多い。このため、サスペンションアームには、特に長手方向の圧縮荷重に対する剛性が要求される。
【0005】
従来、サスペンションアームは、鋼板からプレス成形された2つの成形部材から構成される。2つの成形部材は相互に対称な形状を有し、各々の横断面形状は幅の広いU字形である。2つの成形部材の縁部同士をアーク溶接で接合することによって、閉断面を有するサスペンションアームが形成される(例えば、特開2004-262453号公報(特許文献1)参照)。サスペンションアームが閉断面を有するため、サスペンションアームの剛性は高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-262453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
車両の燃費向上のため、サスペンションアームの軽量化が求められる。上記の通り、従来のサスペンションアームは相互に対称な2つの成形部材から構成される。このため、従来のサスペンションアームの板厚は一定である。2つの成形部材の板厚を小さくすれば、サスペンションアーム全体の板厚が小さくなり、サスペンションアームの軽量化が図られる。しかしながら、この場合、サスペンションアームの剛性が低下し、良好な乗り心地を確保することが難しい。
【0008】
本開示の目的は、剛性を確保しつつ軽量化を実現できるサスペンションアームを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係るサスペンションアームは、長手方向に沿って湾曲した湾曲部を含み閉断面を有する本体部と、第1孔を含む第1被取付け部と、第2孔を含む第2被取付け部と、を備える。第1被取付け部は、本体部の長手方向の一方端に設けられる。第2被取付け部は、本体部の長手方向の他方端に設けられる。本体部は、内側側壁と、外側側壁と、第1側壁と、第2側壁と、を備える。内側側壁は、湾曲部の湾曲内方に対応する。外側側壁は、湾曲部の湾曲外方に対応する。第1側壁は、内側側壁の一方の側縁と外側側壁の一方の側縁とをつなぐ。第2側壁は、内側側壁の他方の側縁と外側側壁の他方の側縁とをつなぎ、第1側壁と対向する。内側側壁の厚みは外側側壁の厚みよりも大きい。本体部の長手方向に垂直な断面視で、第1側壁及び第2側壁の長さは、内側側壁及び外側側壁の長さよりも大きい。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係るサスペンションアームによれば、剛性を確保しつつ軽量化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、サスペンションアームの斜視図である。
図2図2は、解析条件を説明するための解析モデルの側面図である。
図3図3は、解析の結果をまとめた図である。
図4図4は、第1実施形態のサスペンションアームの斜視図である。
図5図5は、図4に示すサスペンションアームの分解斜視図である。
図6図6は、図4に示すサスペンションアームの側面図である。
図7図7は、図6の線VII-VIIにおける断面図である。
図8図8は、第2実施形態のサスペンションアームの断面図である。
図9図9は、従来のサスペンションアームの断面図である。
図10図10は、実施例の解析の結果をまとめた図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態について説明する。なお、以下の説明では、本開示の実施形態について例を挙げて説明するが、本開示は以下で説明する例に限定されない。以下の説明において特定の数値や特定の材料を例示する場合があるが、本開示はそれらの例示に限定されない。
【0013】
上記の課題を解決するために本発明者らは鋭意検討を重ね、その結果、下記の知見を得た。本検討では、サスペンションアームの一例として、独立懸架式サスペンションを構成する部品の一つであるアッパーアームを採用した。
【0014】
図1は、サスペンションアーム1Aの斜視図である。サスペンションアーム1Aは、本体部2と、第1被取付け部3と、第2被取付け部4と、を備える。本体部2は、サスペンションアーム1Aのうちの長尺な部分であり、第1被取付け部3と第2被取付け部4との間に配置される。本体部2は、長手方向LDに沿って湾曲した湾曲部2aを含む。長手方向LDとは、サスペンションアーム1Aにおいて、湾曲した湾曲部2aを含む本体部2が延びる方向である。長手方向LDは、第1被取付け部3と第2被取付け部4とを結ぶ直線に沿う方向ではない。本体部2は閉断面を有する。
【0015】
第1被取付け部3は、本体部2の長手方向LDの一方端に設けられる。第2被取付け部4は、本体部2の長手方向LDの他方端に設けられる。第1被取付け部3は第1孔5を有し、第1孔5は車輪(図示省略)とサスペンションアーム1Aとの接続に用いられる。第2被取付け部4は第2孔6を有し、第2孔6は車体(図示省略)とサスペンションアーム1Aとの接続に用いられる。
【0016】
車両において、サスペンションアーム1Aは、第1孔5を挿通する軸部材(図示省略)、及び第2孔6を挿通する他の軸部材(図示省略)によって支持される。つまり、サスペンションアーム1Aは、両端部(第1被取付け部3及び第2被取付け部4)を支持される。
【0017】
本体部2は、内側側壁2iと、外側側壁2oと、第1側壁21と、第2側壁22と、を備える。内側側壁2iは、湾曲部2aの湾曲内方に対応する。外側側壁2oは、湾曲部2aの湾曲外方に対応する。第1側壁21は、内側側壁2iの一方の側縁と外側側壁2oの一方の側縁とをつなぐ。第2側壁22は、内側側壁2iの他方の側縁と外側側壁2oの他方の側縁とをつなぐ。第2側壁22は、第1側壁21と対向する。内側側壁2i、外側側壁2o、第1側壁21、及び第2側壁22によって閉断面が形成される。本体部2の長手方向LDに垂直な断面形状は、概ね長方形である。長手方向LDに垂直な断面視で、第1側壁21及び第2側壁22の長さは、内側側壁2i及び外側側壁2oの長さよりも大きい。
【0018】
サスペンションアーム1Aがアッパーアームである場合、サスペンションアーム1Aが車両に取り付けられた状態において、内側側壁2iは上側に位置し、外側側壁2oは下側に位置する。また、例えば、第1側壁21は車両の前方に向き、第2側壁22は車両の後方に向く。車両の旋回時、サスペンションアーム1Aは長手方向LDに高い圧縮荷重を受ける。
【0019】
図1に示すサスペンションアーム1AについてCAE解析を実施した。解析では、図1に示すサスペンションアーム1Aの解析モデルを作成し、実態に即して長手方向LDに圧縮荷重を受けたサスペンションアーム1Aの変形を模擬した。具体的には、第1孔5回りで第1被取付け部3の回転を許容するように、第1被取付け部3の第1孔5の周囲を回転可能に拘束した。第2被取付け部4の第2孔6の周囲に、第2孔6から第1孔5に向けて荷重を与えた。サスペンションアーム1Aにとって、この荷重は圧縮荷重となる。そして、第2孔6の荷重方向の変位を調査した。第2孔6の変位はサスペンションアーム1Aの変形度合いを表わす。第2孔6の変位が小さいほど、サスペンションアーム1Aが変形しにくく、サスペンションアーム1Aの剛性が高い。
【0020】
CAE解析は複数の条件で行った。図2は、解析条件を説明するための解析モデルの側面図である。この図2には、図1に示すサスペンションアーム1Aを側方から見たときの平面が示される。別の観点では、図2には、車両に取り付けられた図1に示すサスペンションアーム1Aを前方又は後方から見たときの平面が示される。図2には、第1側壁21が示され、第2側壁は示されていない。図2において、第2側壁は第1側壁21の背後に配置され、その形状は第1側壁21と同じである。
【0021】
図2に二点鎖線で示すように、サスペンションアーム1Aの本体部2を多数の領域に区分した。具体的には、内側側壁2iをサスペンションアーム1Aの長手方向LD(図1)に沿って5つの領域Bi、Ci、Di、Ei及びFiに区分した。これと同様に、外側側壁2oをサスペンションアーム1Aの長手方向LDに沿って5つの領域Bo、Co、Do、Eo及びFoに区分した。これと同様に、第1側壁21及び第2側壁(図示省略)をそれぞれ、サスペンションアーム1Aの長手方向LDに沿って5つの領域に区分した。さらに、これらの第1側壁21及び第2側壁の各領域を、サスペンションアーム1Aの長手方向LDに垂直な方向に沿って3つの領域に区分した。内側側壁2iにおいて、領域Bi、Ci及びDiが湾曲部2aに含まれる。外側側壁2oにおいて、領域Bo、Co及びDoが湾曲部2aに含まれる。
【0022】
図2に示すサスペンションアーム1Aについて、全ての領域の板厚を同一に設定し、この条件を基準条件として解析を実施した。さらに、図2に示す領域ごとに板厚を基準条件の板厚の2倍に変更し、変更した条件ごとに解析を実施した。サスペンションアーム1Aの基準条件での板厚は2.6mmとした。サスペンションアーム1Aの材質は780MPa級高張力鋼とした。第2被取付け部4に与える荷重は10Nとした。
【0023】
通常、板厚の増加により剛性の向上が見込まれる。上記のように、領域ごとに板厚を増加させた各条件で解析を実施して第2孔6の変位を調査すれば、サスペンションアーム1Aの剛性に対して各領域の板厚が寄与する度合いを検証することができる。
【0024】
図3は、上記解析の結果をまとめた図である。図3には、図2に示す各領域で板厚を変更した条件ごとの第2孔6の変位が示される。
【0025】
図3を参照して、基準条件では、第2孔6の変位は0.48mmであった(図3中の点線参照)。いずれの領域の板厚を増加させても、第2孔6の変位は基準条件の変位から低下した。特に、変位の低下が著しいのは、内側側壁2iにおいて、湾曲部2aに含まれる領域Bi、Ci及びDi、並びに領域Diに隣接する領域Eiの板厚を増加させた場合であった。第1側壁21及び第2側壁22において、これらの領域Bi、Ci、Di及びEiに近い領域C1及びD1の板厚を増加させた場合も、変位の低下が著しかった。これらの領域Bi、Ci、Di、Ei、C1及びD1以外の領域の板厚を増加させても、変位の低下はそれほど認められなかった。
【0026】
このような結果から下記のことが示される。内側側壁2iの厚み(板厚)がサスペンションアーム1Aの剛性に寄与する。さらに、第1側壁21及び第2側壁22のうちの内側側壁2i付近の厚み(板厚)も、サスペンションアーム1Aの剛性に寄与する。外側側壁2oの厚み(板厚)はサスペンションアーム1Aの剛性にそれほど寄与しない。第1側壁21及び第2側壁22のうちの外側側壁2o付近の厚み(板厚)も、サスペンションアーム1Aの剛性にそれほど寄与しない。要するに、外側側壁2oの厚みを増加させるよりも、内側側壁2iの厚みを増加させれば、サスペンションアーム1Aの剛性がより向上する。
【0027】
このような状況は、以下に示すメカニズムによりもたらされる。
【0028】
湾曲部2aを有するサスペンションアーム1Aが、実態に即して長手方向LDに圧縮荷重を受けた場合、内側側壁2iのうちで湾曲部2aに含まれる領域には、圧縮力が負荷されて、圧縮ひずみが発生する。一方、外側側壁2oのうちで湾曲部2aに含まれる領域には、引張力が負荷されて、引張ひずみが発生する。引張ひずみが発生した領域は面外に変形しない。これに対し、圧縮ひずみが発生した領域は面外に変形する。つまり、内側側壁2iのうちで湾曲部2aに含まれる領域は、曲げ変形する。
【0029】
ここで、材料力学の観点から、断面積を一定とした条件下で板厚を変化させた部材の剛性について考察する。引張力が負荷される場合、剛性は板厚の1乗とヤング率との積に相関する。これに対し、圧縮力が負荷される場合、剛性は板厚のn乗(n:1よりも大きい値(例:2以上の整数))とヤング率の積と相関する。これは以下の理由による。圧縮力が負荷されると、部材の一部が面外に変形する。つまり、部材の一部が曲げ変形する。曲げ変形する部材の曲げ剛性は、断面二次モーメントに依存する。この断面二次モーメントは板厚のn乗と相関する。
【0030】
したがって、サスペンションアーム1Aにおいて、曲げ変形して圧縮ひずみが発生する内側側壁2iの厚み(板厚)を増加させれば、板厚のn乗に相関して剛性が向上する。一方、サスペンションアーム1Aにおいて、引張ひずみが発生する外側側壁2oの厚み(板厚)を増加させれば、板厚の1乗に相関して剛性が向上する。このため、サスペンションアーム1Aの剛性をより向上させるには、外側側壁2oの厚みを増加させるよりも、内側側壁2iの厚みを増加させればよい。特に、内側側壁2iの厚みを少し増加させるだけであっても、サスペンションアーム1Aの剛性が向上する。板厚のn乗に相関して剛性が向上するからである。
【0031】
別の観点では、サスペンションアーム1Aにおいて、引張ひずみが発生する外側側壁2oの厚み(板厚)を減少させれば、板厚の1乗に相関して剛性が低下する。このため、内側側壁2iの厚み(板厚)を増加させれば、内側側壁2iの厚みの増加量よりも大きい量で外側側壁2oの厚みを減少させても、サスペンションアーム1Aの剛性は確保できる。
【0032】
以上より、湾曲部2aを有し、長手方向LDに圧縮荷重を受けるサスペンションアーム1Aにおいて、内側側壁2iの厚みを増加させるとともに、内側側壁2iの厚みの増加量よりも大きい量で外側側壁2oの厚みを減少させれば、サスペンションアームの剛性の確保と軽量化とを両立することができる。この場合、内側側壁2iの厚みは外側側壁2oの厚みよりも大きい。
【0033】
本開示の実施形態に係るサスペンションアームは、上記の知見に基づいて完成されたものである。
【0034】
本開示の実施形態に係るサスペンションアームは、長手方向に沿って湾曲した湾曲部を含み閉断面を有する本体部と、第1孔を含む第1被取付け部と、第2孔を含む第2被取付け部と、を備える。第1被取付け部は、本体部の長手方向の一方端に設けられる。第2被取付け部は、本体部の長手方向の他方端に設けられる。本体部は、内側側壁と、外側側壁と、第1側壁と、第2側壁と、を備える。内側側壁は、湾曲部の湾曲内方に対応する。外側側壁は、湾曲部の湾曲外方に対応する。第1側壁は、内側側壁の一方の側縁と外側側壁の一方の側縁とをつなぐ。第2側壁は、内側側壁の他方の側縁と外側側壁の他方の側縁とをつなぎ、第1側壁と対向する。内側側壁の厚みは外側側壁の厚みよりも大きい。本体部の長手方向に垂直な断面視で、第1側壁及び第2側壁の長さは、内側側壁及び外側側壁の長さよりも大きい(第1の構成)。
【0035】
第1の構成のサスペンションアームでは、内側側壁の厚みが外側側壁の厚みよりも大きい。このような状況は、内側側壁の厚みを増加させるとともに、内側側壁の厚みの増加量よりも大きい量で外側側壁の厚みを減少させることによって、現われる。この場合、外側側壁の厚みの減少によってサスペンションアームの軽量化を実現することができ、内側側壁の厚みの増加によってサスペンションアームの剛性を確保することができる。また、衝突特性も向上する。
【0036】
第1の構成のサスペンションアームは、好ましくは、下記の構成を備える。内側側壁の厚みta、外側側壁の厚みtb、内側側壁の表面積Sa、及び外側側壁の表面積Sbが、下記式(1)を満足する。さらに、湾曲部における内側側壁の長手方向に垂直な断面において、内側側壁の厚みがtaで、外側側壁の厚みがtbである場合の断面二次モーメントIzは、内側側壁の厚み及び外側側壁の厚みを「(Sa×ta+Sb×tb)/(Sa+Sb)」と仮定した場合の断面二次モーメントIyと比較して、下記式(2)を満足する(第2の構成)。
ta>(Sa×ta+Sb×tb)/(Sa+Sb)>tb (1)
Iz>Iy×0.85 (2)
【0037】
式(1)中の「(Sa×ta+Sb×tb)/(Sa+Sb)」は均一化厚みである。均一化厚みは、第2の構成のサスペンションアームと断面形状が同じで且つ重量が同じになるように、内側側壁及び外側側壁の全領域の厚みを均一にしたときの厚みを意味する。均一化厚みを有するサスペンションアームは、一定の板厚を有する従来のサスペンションアームに相当する。式(1)の条件により、第2の構成のサスペンションアームにおいて、内側側壁の厚みtaは従来のサスペンションアームの板厚よりも大きくて、外側側壁の厚みtbは従来のサスペンションアームの板厚よりも小さい。この場合、上記の通り、サスペンションアームの軽量化を実現することができ、サスペンションアームの剛性を確保することができる。
【0038】
式(2)中のIyは、均一化厚みを有する従来のサスペンションアームの断面二次モーメントを意味する。式(2)中のIzは、内側側壁の厚みtaが外側側壁の厚みtbよりも大きい第2の構成のサスペンションアームの断面二次モーメントを意味する。一般に、断面二次モーメントによって剛性が決まる。しかしながら、式(2)の条件を満たす限り、第2の構成のサスペンションアームの断面二次モーメントIzは、従来のサスペンションアームの断面二次モーメントIyより小さくてもよい。第2の構成のサスペンションアームでは、圧縮ひずみが発生する内側側壁の厚みの増加により、断面二次モーメントが関係する曲げ変形が抑制されるからである。そのため、第2の構成のサスペンションアームでは、断面二次モーメントIzが小さくても、剛性が向上する。
【0039】
第1の構成又は第2の構成のサスペンションアームは、好ましくは、下記の構成を備える。第1側壁は、内側側壁につながる内側第1側壁と、外側側壁につながる外側第1側壁と、に区分される。第2側壁は、内側側壁につながる内側第2側壁と、外側側壁につながる外側第2側壁と、に区分される。本体部は、第1部材と、第2部材と、を含む。第1部材は、内側側壁、内側第1側壁、及び内側第2側壁を備える。第2部材は、外側側壁、外側第1側壁、及び外側第2側壁を備える。第1部材の板厚は第2部材の板厚よりも大きい。第1部材と第2部材とが相互に溶接によって接合されている(第3の構成)。
【0040】
第3の構成のサスペンションアームでは、本体部が第1部材及び第2部材という2つの部材から構成される。特に、第1部材は内側側壁を備え、第2部材は、内側側壁と形状が異なる外側側壁を備える。このため、第1部材及び第2部材は相互に非対称な形状を有する。また、内側側壁の厚みが外側側壁の厚みよりも大きいことから、第1部材の板厚は第2部材の板厚よりも大きい。例えば、第1部材は、鋼板をプレス加工することによって成形できる。第2部材は、第1部材用の鋼板よりも薄い鋼板をプレス加工することによって成形できる。第1部材の内側第1側壁が第2部材の外側第1側壁と溶接によって接合され、第1部材の内側第2側壁が第2部材の外側第2側壁と溶接によって接合される。これにより、閉断面の本体部を持つサスペンションアームが形成される。このような第3の構成のサスペンションアームであっても、内側側壁の厚みが外側側壁の厚みよりも大きい。以上より、製造上の観点から、第3の構成のサスペンションアームは実用的である。
【0041】
また、第3の構成のサスペンションアームの場合、第1部材と第2部材とを接合する溶接部は、第1側壁及び第2側壁に存在する。つまり、外側側壁に溶接部は存在しない。一般に、引張ひずみが発生する領域に溶接部が存在すると、溶接部を起点として疲労割れが発生しやすい。サスペンションアームで引張ひずみが発生する領域は、外側側壁のうちで湾曲部に含まれる領域である。この点、従来のサスペンションアームでは、内側側壁及び外側側壁に溶接部が存在する。相互に対称な2つの成形部材同士が溶接によって接合されているからである。従来のサスペンションアームでは、溶接部が外側側壁に存在するため、疲労割れのリスクが高い。一方、第3の構成のサスペンションアームでは、溶接部が外側側壁に存在しないため、疲労割れのリスクが低い。
【0042】
第3の構成のサスペンションアームは、好ましくは、下記の構成を備える。第1部材の内側第1側壁と第2部材の外側第1側壁とが相互に突合せ継手溶接によって接合されている。第1部材の内側第2側壁と第2部材の外側第2側壁とが相互に突合せ継手溶接によって接合されている(第4の構成)。
【0043】
第4の構成のサスペンションアームでは、第1部材と第2部材との接合が突合せ継手溶接による。この場合、第1部材と第2部材との接合部に第1部材と第2部材との重ね代が無い。このため、第4の構成のサスペンションアームは、重ね代の重量軽減を実現した上で、剛性の確保と軽量化とを両立することができる。
【0044】
第3の構成のサスペンションアームは、下記の構成を備えてもよい。第1部材の内側第1側壁と第2部材の外側第1側壁とが相互に重ね継手溶接によって接合されている。第1部材の内側第2側壁と第2部材の外側第2側壁とが相互に重ね継手溶接によって接合されている(第5の構成)。
【0045】
第5の構成のサスペンションアームでは、第1部材と第2部材との接合が重ね継手溶接による。この場合、第1部材と第2部材との接合部に第1部材と第2部材との重ね代が存在する。このため、第5の構成のサスペンションアームは、第4の構成のサスペンションアームほどの重量軽減を実現できないが、剛性の確保と軽量化とを両立できる。
【0046】
第3から第5の構成のいずれか1つのサスペンションアームは、下記の構成を備えてもよい。第1部材は、第1被取付け部に対応する第1延長壁、及び第1延長壁に形成され第1孔に対応する第1円筒部を備える。第2部材は、第1延長壁と対向し第1被取付け部に対応する第2延長壁、及び第2延長壁に形成され第1孔に対応する第2円筒部を備える(第6の構成)。
【0047】
第6の構成のサスペンションアームは、本体部が第1部材及び第2部材で構成される場合に適する。第6の構成のサスペンションアームでは、第1部材と一体の第1延長壁、及び第2部材と一体の第2延長壁が、サスペンションアームの第1被取付け部を形成する。例えば、第1延長壁は、鋼板から第1部材をプレス成形するときに成形できる。第2延長壁は、鋼板から第2部材をプレス成形するときに成形できる。
【0048】
また、第6の構成のサスペンションアームでは、第1部材と一体の第1円筒部、及び第2部材と一体の第2円筒部が、サスペンションアームの第1孔を形成する。例えば、第1円筒部は、第1部材の第1延長壁に穴あけ加工及びバーリング加工を施すことによって成形できる。第2円筒部は、第2部材の第2延長壁に穴あけ加工及びバーリング加工を施すことによって成形できる。
【0049】
第1部材が第2部材と接合されることにより、サスペンションアームが形成される。このサスペンションアームでは、第1延長壁が第2延長壁と対向する。これにより、第1延長壁及び第2延長壁によって、サスペンションアームの第1被取付け部が形成される。さらに、第1部材の第1円筒部が第2部材の第2円筒部と同軸上に配置され、第1部材の第1円筒部の先端が第2円筒部の先端と近接又は接触する。これにより、第1円筒部の内周と第2円筒部の内周とによって、サスペンションアームの第1孔が形成される。
【0050】
以上より、製造上の観点から、第6の構成のサスペンションアームは実用的である。
【0051】
第3から第6の構成のいずれか1つのサスペンションアームは、下記の構成を備えてもよい。第2部材は、第2被取付け部に対応する第3延長壁、第3延長壁に形成され第2孔に対応する第1孔部、第3延長壁と対向し第2被取付け部に対応する第4延長壁、及び第4延長壁に形成され第2孔に対応する第2孔部を備える(第7の構成)。
【0052】
第7の構成のサスペンションアームは、本体部が第1部材及び第2部材で構成される場合に適する。第7の構成のサスペンションアームでは、第2部材と一体の第3延長壁及び第4延長壁が相互に対向し、サスペンションアームの第2被取付け部を形成する。例えば、第3延長壁及び第4延長壁は、鋼板から第2部材をプレス成形するときに成形できる。
【0053】
また、第7の構成のサスペンションアームでは、第2部材の第1孔部及び第2孔部が、サスペンションアームの第2孔を形成する。第1孔部が第2孔部と同軸上に配置されるように、例えば、第1孔部及び第2孔部はそれぞれ、第3延長壁及び第4延長壁に穴あけ加工を施すことによって成形できる。
【0054】
以上より、製造上の観点から、第7の構成のサスペンションアームは実用的である。
【0055】
典型的な例では、第1から第7の構成のいずれか1つのサスペンションアームにおいて、湾曲部における内側側壁の曲率半径が200mm以下である(第8の構成)。
【0056】
第8の構成のサスペンションアームでは、湾曲部における内側側壁の曲率半径が小さい。湾曲部の曲率半径が小さい場合、内側側壁に発生する圧縮ひずみが大きくなりやすく、サスペンションアームの剛性が問題視されやすい。一方、湾曲部の曲率半径が200mmよりも大きい場合、内側側壁に過大な圧縮ひずみは発生しにくく、サスペンションアームの剛性は問題視されにくい。したがって、第8の構成のサスペンションアームによれば、剛性が問題視されやすい場合であっても、剛性の確保と軽量化を両立することができる。
【0057】
典型的な例では、第1から第8の構成のいずれか1つのサスペンションアームは、独立懸架式サスペンションを構成する部品の一つであるアッパーアームである(第9の構成)。
【0058】
ただし、第9の構成のサスペンションアームは、独立懸架式サスペンション(例:ダブルウィッシュボーン式サスペンション、マルチリンク式サスペンションなど)のアッパーアームに限定されない。例えば、サスペンションアームは、独立懸架式サスペンションのロアアームであってもよいし、他の形式のサスペンションを構成する部品の一つであってもよい。
【0059】
以下に、図面を参照しながら、本実施形態のサスペンションアームについてその具体例を説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0060】
[第1実施形態]
図4図7を参照して、第1実施形態のサスペンションアーム1を説明する。本実施形態では、サスペンションアーム1の一例として、独立懸架式サスペンションを構成する部品の一つであるアッパーアームを採用する。
【0061】
図4は、第1実施形態のサスペンションアーム1の斜視図である。図5は、図4に示すサスペンションアーム1の分解斜視図である。図6は、図4に示すサスペンションアーム1の側面図である。この図6には、車両に取り付けられた図4に示すサスペンションアーム1を前方又は後方から見たときの平面が示される。図6には、第1側壁21が示され、第2側壁は示されていない。図6において、第2側壁は第1側壁21の背後に配置され、その形状は第1側壁21と同じである。図7は、図6の線VII-VIIにおける断面図である。図7に示す断面は、湾曲部2aにおける内側側壁2iの長手方向LDに垂直な断面である。つまり、図7に示す断面は、サスペンションアーム1の横断面である。
【0062】
図4図7を参照して、本実施形態のサスペンションアーム1は、図1に示すサスペンションアーム1Aと同様に、本体部2と、第1被取付け部3と、第2被取付け部4と、を備える。本体部2は、長手方向LDに沿って湾曲した湾曲部2aを含む。本体部2の長手方向LDに垂直な断面は、閉断面である。つまり、本体部2は閉断面を有する(図7参照)。
【0063】
第1被取付け部3は、本体部2の長手方向LDの一方端に設けられる。第2被取付け部4は、本体部2の長手方向LDの他方端に設けられる。第1被取付け部3は第1孔5を有する。第1孔5は円形である。第1孔5は車輪(図示省略)とサスペンションアーム1との接続に用いられる。第2被取付け部4は第2孔6を有する。第2孔6は円形である。第2孔6は車体(図示省略)とサスペンションアーム1との接続に用いられる。
【0064】
サスペンションアーム1が車両に取り付けられるとき、第1孔5に軸部材(図示省略)が挿通され、第2孔6に他の軸部材(図示省略)が挿通される。各軸部材の断面形状は円形である。車両において、サスペンションアーム1は、第1孔5を挿通する軸部材、及び第2孔6を挿通する軸部材によって支持される。つまり、サスペンションアーム1は、両端部(第1被取付け部3及び第2被取付け部4)を支持される。
【0065】
本体部2は、内側側壁2iと、外側側壁2oと、第1側壁21と、第2側壁22と、を備える。内側側壁2iは、湾曲部2aの湾曲内方に対応する。外側側壁2oは、湾曲部2aの湾曲外方に対応する。つまり、内側側壁2iは湾曲部2aの湾曲の内側に配置され、外側側壁2oは湾曲部2aの湾曲の外側に配置される。第1側壁21は、内側側壁2iの一方の側縁と外側側壁2oの一方の側縁とをつなぐ。第2側壁22は、内側側壁2iの他方の側縁と外側側壁2oの他方の側縁とをつなぐ。第2側壁22は、第1側壁21と対向する。
【0066】
サスペンションアーム1がアッパーアームである場合、サスペンションアーム1が車両に取り付けられた状態において、本体部2の湾曲部2aは下向きに凸となるように湾曲する。このため、内側側壁2iは上側に位置し、外側側壁2oは下側に位置する。また、サスペンションアーム1の長手方向LDは、車両の幅方向と概ね一致する。このため、例えば、第1側壁21は車両の前方に向き、第2側壁22は車両の後方に向く。車両の旋回時、サスペンションアーム1は長手方向LDに高い圧縮荷重を受ける。
【0067】
図6及び図7を参照して、サスペンションアーム1において、本体部2の高さHは、本体部2の幅Lよりも大きいことが好ましい。ここで、本体部2の高さHは、第1側壁21及び第2側壁22の高さに相当する。第1側壁21の高さは、典型的には第2側壁22の高さと同じである。本体部2の高さHは、長手方向LDに垂直な断面視で、第1側壁21及び第2側壁22の長さを意味する。また、本体部2の幅Lは、長手方向LDに垂直な断面視で、内側側壁2i又は外側側壁2oの長さを意味する。本実施形態の例では、長手方向LDに垂直な断面視で、内側側壁2iの長さは外側側壁2oの長さと同じである。幅Lに対する高さHの比H/Lは、例えば1.0~4.0であり、好ましくは1.5~3.5、さらに好ましくは2.0~3.0である。
【0068】
本実施形態のサスペンションアーム1は、第1部材11及び第2部材12から構成される。第1部材11と第2部材12とが相互に溶接によって接合され、これによりサスペンションアーム1が形成される。以下、第1部材11及び第2部材12の構成を具体的に説明する。
【0069】
本体部2において、第1側壁21は、内側第1側壁21iと外側第1側壁21oとに区分される。内側第1側壁21iは内側側壁2iにつながる。外側第1側壁21oは外側側壁2oにつながる。また、本体部2において、第2側壁22は、内側第2側壁22iと外側第2側壁22oとに区分される。内側第2側壁22iは内側側壁2iにつながる。外側第2側壁22oは外側側壁2oにつながる。第1部材11は、内側側壁2i、内側第1側壁21i及び内側第2側壁22iを備える。第2部材12は、外側側壁2o、外側第1側壁21o及び外側第2側壁22oを備える。
【0070】
第1部材11及び第2部材12は、それぞれ個別に成形されたものである。第1部材11の板厚は第2部材12の板厚よりも大きい。このため、内側側壁2iの厚みtaは外側側壁2oの厚みtbよりも大きい(図7参照)。また、内側第1側壁21i及び内側第2側壁22iの厚みも、外側第1側壁21o及び外側第2側壁22oの厚みよりも大きい。これは、内側第1側壁21i及び内側第2側壁22iの厚みが内側側壁2iの厚みtaと同じであり、外側第1側壁21o及び外側第2側壁22oの厚みは外側側壁2oの厚みtbと同じであるからである。
【0071】
第1部材11及び第2部材12の材質は特に限定されない。ただし、第2部材12の材料強度は、第1部材11の材料強度よりも高い方が好ましい。その理由は、第1部材11の板厚は第2部材12の板厚よりも大きいからである。第1部材11は、第2部材12よりも板厚が大きいため、材料強度が第2部材12より低くても部材としての強度を確保することができる。一方で、第2部材12の板厚は第1部材11の板厚よりも小さいため、第2部材12の材料強度は高いことが好ましい。第1部材11と第2部材12との材料強度の差は、例えば0~250MPaである。
【0072】
第1部材11の内側第1側壁21iが第2部材12の外側第1側壁21oと溶接によって接合される。第1部材11の内側第2側壁22iが第2部材12の外側第2側壁22oと溶接によって接合される。これにより、第1部材11と第2部材12とが相互に接合され、閉断面の本体部2を持つサスペンションアーム1が形成される。
【0073】
図4及び図5を参照して、本実施形態では、第1部材11は、さらに第1延長壁31及び第1円筒部51を備える。第1延長壁31は第1被取付け部3に対応する。第1円筒部51は第1孔5に対応する。
【0074】
第1部材11において、第1延長壁31は、本体部2の長手方向LDの一方端に設けられる。第1延長壁31は、第1部材11の内側第2側壁22iから滑らかに広がりつつ延びる。この第1延長壁31は、内側第2側壁22iと実質的に同一平面上に存在する。第1延長壁31は、内側側壁2i及び内側第1側壁21iからも滑らかに延びる。
【0075】
第1円筒部51は、第1延長壁31のうちで内側第2側壁22iから延びる部分に形成される。第1円筒部51は、内側第1側壁21iが存在する側に向けて突出する。第1円筒部51の内周は内側第2側壁22iを貫通している。第1円筒部51の内径は第1孔5の直径と同じである。
【0076】
本実施形態では、第2部材12は、さらに第2延長壁32及び第2円筒部52を備える。第2延長壁32は第1被取付け部3に対応する。第2円筒部52は第1孔5に対応する。
【0077】
第2部材12において、第2延長壁32は、本体部2の長手方向LDの一方端に設けられる。第2延長壁32は、第2部材12の外側第1側壁21oから滑らかに広がりつつ延びる。この第2延長壁32は、外側第1側壁21oと実質的に同一平面上に存在する。第2延長壁32は、外側側壁2oからも滑らかに延びる。
【0078】
第2円筒部52は、第2延長壁32のうちで外側第1側壁21oから延びる部分に形成される。第2円筒部52は、外側第2側壁22oが存在する側に向けて突出する。第2円筒部52の内周は外側第1側壁21oを貫通している。第2円筒部52の内径は第1孔5の直径と同じである。
【0079】
上記の通り、第1部材11が第2部材12と溶接によって接合されるとき、内側第1側壁21iが外側第1側壁21oと接合され、内側第2側壁22iが外側第2側壁22oと接合される。このとき、第1延長壁31のうちで内側第2側壁22iから延びる部分は、第2延長壁32のうちで外側側壁2oから延びる部分と溶接によって接合されるとともに、外側第2側壁22oと溶接によって接合される。
【0080】
第1部材11が第2部材12と接合された状態では、第1延長壁31のうちで内側第2側壁22iから延びる部分が、第2延長壁32のうちで外側第1側壁21oから延びる部分と対向する。これにより、第1延長壁31及び第2延長壁32によって、サスペンションアーム1の第1被取付け部3が形成される。
【0081】
さらに、第1部材11が第2部材12と接合された状態では、第1円筒部51が第2円筒部52と同軸上に配置され、第1円筒部51の先端が第2円筒部52の先端と近接又は接触する。これにより、第1円筒部51の内周と第2円筒部52の内周とによって、サスペンションアーム1の第1孔5が形成される。
【0082】
なお、上記とは逆に、第1延長壁31は、第1部材11の内側第1側壁21iから滑らかに広がりつつ延びてもよい。この場合、第1延長壁31は、内側側壁2i及び内側第2側壁22iからも滑らかに延びる。第1円筒部51は、第1延長壁31のうちで内側第1側壁21iから延びる部分に形成される。第1円筒部51は、内側第2側壁22iが存在する側に向けて突出する。第1円筒部51の内周は内側第1側壁21iを貫通している。
【0083】
この場合、上記とは逆に、第2延長壁32は、第2部材12の外側第2側壁22oから滑らかに広がりつつ延びる。第2延長壁32は、外側側壁2oからも滑らかに延びる。第2延長壁32のうちで外側第2側壁22oから延びる部分は、第1延長壁31のうちで内側第1側壁21iから延びる部分と対向する。第2円筒部52は、第2延長壁32のうちで外側第2側壁22oから延びる部分に形成される。第2円筒部52は、外側第1側壁21oが存在する側に向けて突出する。第2円筒部52の内周は外側第2側壁22oを貫通している。
【0084】
本実施形態では、第2部材12は、さらに第3延長壁41、第1孔部61、第4延長壁42及び第2孔部62を備える。第3延長壁41及び第4延長壁42は第2被取付け部4に対応する。第1孔部61及び第2孔部62は第2孔6に対応する。
【0085】
第2部材12において、第3延長壁41及び第4延長壁42は、本体部2の長手方向LDの他方端に設けられる。第3延長壁41は、第2部材12の外側第1側壁21oから滑らかに延びる。この第3延長壁41は、外側第1側壁21oと実質的に同一平面上に存在する。第4延長壁42は、第2部材12の外側第2側壁22oから滑らかに延びる。この第4延長壁42は、外側第2側壁22oと実質的に同一平面上に存在する。第3延長壁41及び第4延長壁42は、外側側壁2oからも滑らかに延びる。外側側壁2oから延びる第3延長壁41及び第4延長壁42は一体である。第3延長壁41のうちで外側第1側壁21oから延びる部分は、第4延長壁42のうちで外側第2側壁22oから延びる部分と対向する。これにより、第3延長壁41及び第4延長壁42によって、サスペンションアーム1の第2被取付け部4が形成される。
【0086】
第1孔部61は、第3延長壁41のうちで外側第1側壁21oから延びる部分に形成される。第1孔部61は外側第1側壁21oを貫通している。第2孔部62は、第4延長壁42のうちで外側第2側壁22oから延びる部分に形成される。第2孔部62は外側第2側壁22oを貫通している。第1孔部61及び第2孔部62は円形の孔であり、その直径は第2孔6の直径と同じである。第1孔部61は第2孔部62と同軸上に配置されるように成形される。これにより、第1孔部61と第2孔部62とによって、サスペンションアーム1の第2孔6が形成される。
【0087】
なお、上記とは逆に、第3延長壁41、第1孔部61、第4延長壁42及び第2孔部62は、第1部材11に設けられてもよい。この場合、第1部材11において、第3延長壁41及び第4延長壁42は、本体部2の長手方向LDの他方端に設けられる。第3延長壁41は、第1部材11の内側第1側壁21iから滑らかに延びる。第4延長壁42は、第1部材11の内側第2側壁22iから滑らかに延びる。第3延長壁41及び第4延長壁42は、外側側壁2oからも滑らかに延びる。外側側壁2oから延びる第3延長壁41及び第4延長壁42は一体である。第3延長壁41のうちで内側第1側壁21iから延びる部分は、第4延長壁42のうちで内側第2側壁22iから延びる部分と対向する。
【0088】
この場合、第1孔部61は、第3延長壁41のうちで内側第1側壁21iから延びる部分に形成される。第1孔部61は内側第1側壁21iを貫通している。第2孔部62は、第4延長壁42のうちで内側第2側壁22iから延びる部分に形成される。第2孔部62は内側第2側壁22iを貫通している。第1孔部61は第2孔部62と同軸上に配置されるように形成される。
【0089】
このように本実施形態のサスペンションアーム1は、第1部材11及び第2部材12から構成される。特に、第1部材11は内側側壁2iを備え、第2部材12は、内側側壁2iとは形状が異なる外側側壁2oを備える。このため、第1部材11及び第2部材12は相互に非対称な形状を有する。また、第1部材11の板厚は第2部材12の板厚よりも大きい。
【0090】
第1部材11は、鋼板をプレス加工することによって成形できる。第2部材12は、第1部材11用の鋼板よりも薄い鋼板をプレス加工することによって成形できる。ただし、第1部材11及び第2部材12の成形方法は、プレス加工に限定されない。
【0091】
また、第1被取付け部3となる第1延長壁31は、鋼板から第1部材11をプレス成形するときに成形できる。第1被取付け部3となる第2延長壁32は、鋼板から第2部材12をプレス成形するときに成形できる。第1孔5となる第1円筒部51は、第1部材11の第1延長壁31に穴あけ加工及びバーリング加工を施すことによって成形できる。第1孔5となる第2円筒部52は、第2部材12の第2延長壁32に穴あけ加工及びバーリング加工を施すことによって成形できる。
【0092】
また、第2被取付け部4となる第3延長壁41及び第4延長壁42は、鋼板から第2部材12をプレス成形するときに成形できる。第2孔6となる第1孔部61及び第2孔部62はそれぞれ、第1部材11を第2部材12と接合する前に、第3延長壁41及び第4延長壁42に穴あけ加工を施すことによって成形できる。ただし、第2孔6となる第1孔部61及び第2孔部62は、第1部材11を第2部材12と接合した後に成形されても構わない。
【0093】
図7を参照して、第1部材11及び第2部材12それぞれの横断面形状は、幅の狭いU字形である。本実施形態では、第1部材11と第2部材12との接合が突合せ継手溶接による。具体的には、第1部材11の内側第1側壁21iの開放端(下端)が、第2部材12の外側第1側壁21oの開放端(上端)と突き合わされ、両者が溶接によって接合される。第1部材11の内側第2側壁22iの開放端(下端)が、第2部材12の外側第2側壁22oの開放端(上端)と突き合わされ、両者が溶接によって接合される。溶接方法は、特に限定されないが、好ましくはアーク溶接である。溶接方法はレーザー溶接であってもよい。
【0094】
この場合、第1部材11と第2部材12とを接合する溶接部Wは、第1側壁21及び第2側壁22に存在する。つまり、外側側壁2oに溶接部は存在しない。また、突合せ継手溶接による接合の場合、第1部材11と第2部材12との接合部に第1部材11と第2部材12との重ね代が無い。
【0095】
本実施形態では、内側側壁2iの厚みta及び外側側壁2oの厚みtbは、内側側壁2iの表面積Sa及び外側側壁2oの表面積Sbを加味して、上記の式(1)及び式(2)を満足するように設定される。例えば、内側側壁2iの厚みta(第1部材11の板厚)は2.9mmであり、外側側壁2oの厚みtb(第2部材12の厚み)は2.3mmである。
【0096】
図6を参照して、本実施形態では、湾曲部2aにおける内側側壁2iの曲率半径Rが200mm以下である。湾曲部2aにおける内側側壁2iが、曲率半径の異なる複数の湾曲を連ねてなるものである場合、最小の曲率半径が200mm以下である。
【0097】
[効果]
本実施形態のサスペンションアーム1では、内側側壁2iの厚みtaが外側側壁2oの厚みtbよりも大きい。このような状況は、内側側壁2iの厚みtaを増加させるとともに、内側側壁2iの厚みtaの増加量よりも大きい量で外側側壁2oの厚みtbを減少させることによって、現われる。この場合、外側側壁2oの厚みtbの減少によってサスペンションアーム1の軽量化を実現することができ、内側側壁2iの厚みtaの増加によってサスペンションアーム1の剛性を確保することができる。また、衝突特性も向上する。
【0098】
特に、内側側壁2iの厚みta及び外側側壁2oの厚みtbは、上記の式(1)及び式(2)を満足するように設定される。式(1)の条件により、本実施形態のサスペンションアーム1において、内側側壁2iの厚みtaは、板厚が一定の従来のサスペンションアームの板厚よりも大きくて、外側側壁2oの厚みtbは、従来のサスペンションアームの板厚よりも小さい。この場合、上記の通り、サスペンションアーム1の軽量化を実現することができ、サスペンションアーム1の剛性を確保することができる。また、式(2)の条件を満たす限り、本実施形態のサスペンションアーム1の断面二次モーメントIzは、従来のサスペンションアームの断面二次モーメントIyより小さくすることができる。
【0099】
また、本実施形態のサスペンションアーム1は、内側側壁2iを備える第1部材11と、外側側壁2oを備える第2部材12と、から構成される。第1部材11及び第2部材12は、それぞれ個別に成形される。第1部材11と第2部材12とが相互に溶接によって接合されることにより、閉断面の本体部2を持つサスペンションアーム1が形成される。したがって、製造上の観点から、本実施形態のサスペンションアーム1は実用的である。
【0100】
さらに、第1部材11と第2部材12とが相互に溶接によって接合されることにより、第1被取付け部3及び第2被取付け部4を備えるサスペンションアーム1が形成される。この点でも、製造上の観点から、本実施形態のサスペンションアーム1は実用的である。
【0101】
一般に、引張ひずみが発生する領域に溶接部が存在すると、溶接部を起点として疲労割れが発生しやすい。サスペンションアーム1で引張ひずみが発生する領域は、外側側壁2oのうちで湾曲部2aに含まれる領域である。この点、本実施形態のサスペンションアーム1の場合、第1部材11と第2部材12とを接合する溶接部Wは、外側側壁2oに存在しない。このため、疲労割れのリスクが低い。
【0102】
また、本実施形態のサスペンションアーム1では、第1部材11と第2部材12との接合部に第1部材11と第2部材12との重ね代が無い。このため、重ね代の重量軽減を実現した上で、剛性の確保と軽量化とを両立することができる。
【0103】
[好適な条件]
図7を参照して、以下に、第1部材11の高さh11の好適な条件を説明する。第1部材11の高さh11は、第1側壁21のうちの内側第1側壁21iの高さに相当する。内側第1側壁21iの高さは、長手方向LDに垂直な断面視で、内側第1側壁21iの長さを意味する。また、第1部材11の高さh11は、第2側壁22のうちの内側第2側壁22iの高さにも相当する。内側第2側壁22iの高さは、長手方向LDに垂直な断面視で、内側第2側壁22iの長さを意味する。
【0104】
第1部材11の高さh11が大きすぎる場合、第1側壁21の高さHに対して内側第1側壁21iの占める割合が大きくなる。これと同様に、第1部材11の高さh11が大きすぎる場合、第2側壁22の高さHに対して内側第2側壁22iの占める割合が大きくなる。この場合、第2部材12に対する第1部材11の割合が大きくなる。そうすると、第1部材11の板厚は第2部材12の板厚よりも大きいため、サスペンションアーム1の重量軽減が抑制されるおそれがある。よって、第1部材11の高さh11は大きすぎないことが好ましい。
【0105】
一方、第1部材11の高さh11が小さすぎる場合、第1側壁21の高さHに対して内側第1側壁21iの占める割合が小さくなる。これと同様に、第1部材11の高さh11が小さすぎる場合、第2側壁22の高さHに対して内側第2側壁22iの占める割合が小さくなる。この場合、第2部材12に対する第1部材11の割合が小さくなる。そうすると、サスペンションアーム1の重量軽減が著しくなる。その反面、サスペンションアーム1の剛性が低下するおそれがある。したがって、第1部材11の高さh11は小さすぎないことが好ましい。
【0106】
[第2実施形態]
図8を参照して、第2実施形態のサスペンションアーム1を説明する。本実施形態のサスペンションアーム1は、第1実施形態のサスペンションアーム1を変形したものである。第1実施形態の説明と重複する説明は適宜省略する。
【0107】
図8は、第2実施形態のサスペンションアーム1の断面図である。この図8は、上記の図7に示す断面に対応する。
【0108】
図8を参照して、本実施形態では、第1部材11と第2部材12との接合が重ね継手溶接による。具体的には、第1部材11の内側第1側壁21iの開放縁部(下縁部)が、第2部材12の外側第1側壁21oの開放縁部(上縁部)と重ね合わされ、両者が溶接によって接合される。第1部材11の内側第2側壁22iの開放縁部(下縁部)が、第2部材12の外側第2側壁22oの開放縁部(上縁部)と重ね合わされ、両者が溶接によって接合される。溶接方法は、特に限定されないが、好ましくはアーク溶接である。溶接方法はレーザー溶接であってもよい。
【0109】
図8に示す例では、第1部材11の内側第1側壁21iが第2部材12の外側第1側壁21oの外面に重ね合わされ、第1部材11の内側第2側壁22iが第2部材12の外側第2側壁22oの外面に重ね合わされる。しかしながら、第1部材11の内側第1側壁21iが第2部材12の外側第1側壁21oの内面に重ね合わされてもよいし、第1部材11の内側第2側壁22iが第2部材12の外側第2側壁22oの内面に重ね合わされてもよい。
【0110】
本実施形態の例では、長手方向LDに垂直な断面視で、内側側壁2iの長さは外側側壁2oの長さと異なる。この場合、長手方向LDに垂直な断面視における内側側壁2iの長さと外側側壁2oの長さのうち大きい方を本体部2の幅Lという。
【0111】
本実施形態のサスペンションアーム1の場合、第1実施形態と同様に、第1部材11と第2部材12とを接合する溶接部Wは、第1側壁21及び第2側壁22に存在する。また、重ね継手溶接による接合のため、第1部材11と第2部材12との接合部に第1部材11と第2部材12との重ね代Mが存在する。重ね代Mは5mm程度である。このため、第1実施形態と比較して、重ね代Mの分だけ重量が増える。したがって、本実施形態のサスペンションアーム1は、第1実施形態のサスペンションアーム1ほどの重量軽減を実現できないが、第1実施形態のサスペンションアーム1と同様に剛性の確保と軽量化とを両立できる。
【実施例
【0112】
本実施形態のサスペンションアームの効果を確認するため、上記したCAE解析と同様の手法でCAE解析を実施した。本発明例1として、第1実施形態のサスペンションアームを想定した解析モデルを作成した。本発明例1では、上記の図7に示すように第1部材を第2部材と突合せ継手溶接によって接合した。本発明例2として、第2実施形態のサスペンションアームを想定した解析モデルを作成した。本発明例2では、上記の図8に示すように第1部材を第2部材と重ね継手溶接によって接合した。
【0113】
さらに、比較のために、従来のサスペンションアームを想定した解析モデルを作成した。図9は、従来のサスペンションアーム101の断面図である。この図9は、上記の図7及び図8に示す断面に対応する。図9を参照して、比較例では、サスペンションアーム101を、相互に対称な2つの成形部材111、112から構成した。2つの成形部材111、112の板厚は同じであった。2つの成形部材111、112は相互に重ね継手溶接によって接合した。2つの成形部材111、112の溶接部Wは、内側側壁2i及び外側側壁2oに存在した。
【0114】
本発明例1及び2では、第1部材の板厚が2.9mmであり、第2部材の板厚が2.3mmであった。つまり、内側側壁の厚みが2.9mmであり、外側側壁の厚みが2.3mmであった。このため、内側側壁の厚みが外側側壁の厚みよりも大きかった。これに対して、比較例では、2つの成形部材111、112の板厚は2.6mmであった。このため、内側側壁の厚みが外側側壁の厚みと同じであった。本発明例1及び2では、幅Lに対する高さHの比H/Lは、2.5であった。
【0115】
本発明例1及び2、並びに比較例の各解析モデルにおいて、第2孔から第1孔に向けて荷重を与えた。与える荷重は15N及び40Nの2種類とした。サスペンションアームの材質は780MPa級高張力鋼とした。そして、第2孔の荷重方向の変位を調査した。また、各解析モデルからサスペンションアームの重量を算出した。
【0116】
図10は、実施例の解析の結果をまとめた図である。図10を参照して、本発明例1の変位は、15N及び40Nのいずれの荷重を負荷した場合でも、比較例の変位から低下した。つまり、本発明例1の剛性は向上した。さらに、本発明例1の重量は比較例の重量よりも減少した。また、本発明例2の変位は比較例の変位と同じであった。つまり、本発明例2の剛性は比較例と同じであった。さらに、本発明例2の重量は比較例の重量よりも減少した。
【0117】
したがって、本実施形態のサスペンションアームによれば、剛性を確保しつつ軽量化を実現できることが実証された。
【0118】
以上、本開示の実施の形態を説明した。しかしながら、上述した実施の形態は本開示を実施するための例示に過ぎない。したがって、本開示は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0119】
1:サスペンションアーム
2:本体部
2a:湾曲部
2i:内側側壁
2o:外側側壁
21:第1側壁
22:第2側壁
11:第1部材
12:第2部材
21i:内側第1側壁
21o:外側第1側壁
22i:内側第2側壁
22o:外側第2側壁
3:第1被取付け部
4:第2被取付け部
5:第1孔
6:第2孔
ta:内側側壁の厚み
tb:外側側壁の厚み
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10