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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】移動体、通信システム、および制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/112 20130101AFI20241127BHJP
【FI】
H04B10/112
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023555955
(86)(22)【出願日】2021-10-27
(86)【国際出願番号】 JP2021039662
(87)【国際公開番号】W WO2023073834
(87)【国際公開日】2023-05-04
【審査請求日】2024-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 健之
(72)【発明者】
【氏名】柴田 直剛
(72)【発明者】
【氏名】金子 慎
【審査官】川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-298389(JP,A)
【文献】特表2017-526287(JP,A)
【文献】特開平03-100483(JP,A)
【文献】特開2011-166318(JP,A)
【文献】特開2008-182370(JP,A)
【文献】特開2020-003830(JP,A)
【文献】特開2006-333070(JP,A)
【文献】特開2014-220676(JP,A)
【文献】特開2012-186662(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/112
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体であって、
受信装置の受光部にビームを照射することで光信号を送信する光送信部と、
前記移動体を指定位置まで移動させる移動指示を受信する指示受信部と、
前記移動体の現在位置を取得する位置取得部と、
前記現在位置から前記指定位置への移動方向を取得する方向取得部と、
前記移動体が前記指定位置へ向けて移動を開始する前に、前記受光部にビームが照射される範囲内で、前記移動方向に応じてビームの照射方向を変化させる変化制御を行うビーム制御部と、
を備えた移動体。
【請求項2】
前記移動体を前記指定位置に向けて移動させる移動制御部を備え、
前記移動制御部は、前記変化制御が開始されてから、予め定められた遅延時間が経過した後に前記移動体を前記指定位置に向けて移動させる請求項1に記載の移動体。
【請求項3】
前記ビーム制御部は、前記受光部にビームが照射される範囲内で、前記移動方向とは逆方向に照射方向を変化させる請求項1または請求項2に記載の移動体。
【請求項4】
移動体と、前記移動体から照射されるビームを受光する受信装置とを備えた通信システムであって、
前記移動体は、
前記受信装置の受光部にビームを照射することで光信号を送信する光送信部と、
前記移動体を指定位置まで移動させる移動指示を受信する第1指示受信部と、
前記移動体の現在位置を取得する第1位置取得部と、
前記現在位置から前記指定位置への移動方向を取得する第1方向取得部と、
前記移動体が前記指定位置へ向けて移動を開始する前に、前記受光部にビームが照射される範囲内で、前記第1方向取得部によって取得された前記移動方向に応じてビームの照射方向を変化させる変化制御を行うビーム制御部と、
を備え、
前記受信装置は、
前記移動指示を受信する第2指示受信部と、
前記第2指示受信部によって受信された前記移動指示に応じて前記受光部の指向方向を変化させる変化制御を行う受光制御部と、
を備えた通信システム。
【請求項5】
前記移動体は、前記移動体を前記指定位置に向けて移動させる移動制御部を備え、
前記移動制御部は、前記変化制御が開始されてから、予め定められた遅延時間が経過した後に前記移動体を前記指定位置に向けて移動させる請求項4に記載の通信システム。
【請求項6】
前記受信装置は、
前記移動体の現在位置を複数回にわたり取得する現在位置取得部と、
前記現在位置取得部によって複数回にわたり取得された現在位置から前記移動体の移動速度を測定する測定部と、
を備え、
前記受光制御部は、前記測定部によって測定された移動速度にもとづき、前記受光部の指向方向を変化させる変化制御を行う請求項4に記載の通信システム。
【請求項7】
前記受信装置は、
前記ビームの受光位置を取得する受光位置取得部と、
前記受光位置取得部によって取得された受光位置から、前記移動体の移動開始を検出する検出部と、
前記第2指示受信部によって前記移動指示が受信されてから、前記検出部によって移動開始が検出されるまでの遅延時間を取得する遅延時間取得部と、
前記遅延時間取得部によって取得された遅延時間を前記移動体に通知する遅延時間通知部と、を備えた請求項4に記載の通信システム。
【請求項8】
移動体から照射されるビームを受光する受信装置にビームを照射することで光信号を送信する光送信部を備えた移動体の制御方法であって、
前記移動体を指定位置まで移動させる移動指示を受信する受信ステップと、
前記移動体の現在位置を取得する位置取得ステップと、
前記現在位置から前記指定位置への移動方向を取得する方向取得ステップと、
前記移動体が前記指定位置へ向けて移動を開始する前に、前記受信装置にビームが照射される範囲内で、前記移動方向に応じてビームの照射方向を変化させる変化制御を行うビーム制御ステップと、
を備えた制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体、通信システム、および制御方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
光空間通信に関する技術として、特許文献1には、首振り可能な光受信部が信号光を最も強く受信可能な方向を指向したり、複数設けられた光受信部のうち、信号光を最も強く受信する光受信部を用いて通信を継続することが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-322772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、信号光にレーザを用いて信号の高速化を図る場合には、光受信部のみならず光送信部の指向性も鋭くなり、送受信を行う場合に互いに指向しあうのが難しくなる。例えば人工衛星と通信を行う場合は、人工衛星の軌道が予め与えられていることから、送受信部を指向させることは容易である。一方、定められた軌道を持たない遠隔操縦の無人飛翔体などの移動体の場合、送受信部を指向させることは容易ではない。
【0005】
具体的に図12A図12B図12C図13A図13B図13Cを用いて説明する。図12A図12B図12Cは、受信部を正面から見た図を示す。図13A図13B図13Cは、移動体と受信部を上方向から見た図を示す。なお、これらの図では、ビーム径は受信部より大きくしたが、ビーム径が受信部より小さくてもよい。また、受信部は固定されている。したがって、移動体がビームの照射方向を制御する。
【0006】
図12A図13Aは、受信部がビーム径に含まれている状態を示す図である。この図12A図13Aに示される状態から、移動体が向かって右方向に移動したとする。このとき、移動量が大きくかつ移動体側での追尾動作の動きはじめが遅い場合には、図12B図13Bに示されるように、追尾機構が十分に動作しないためビーム径は大きく右へずれて受信部から外れる。これにより、通信は途絶えることとなる。
【0007】
その後、移動体での追尾動作が動きはじめ、追尾を行うのに十分な速さになると、図12C図13Cに示されるように、移動体の移動に追いつき、再び受信部をビーム径内に入れることができる。
【0008】
なお、図12図13では移動体がビームの照射方向を制御するものとしているが、受信側でも移動体を指向するように受信部の方向を調整していることが一般的である。また、受信側からもビームを照射して移動体が受信するようになっている。こうした場合、受信側も同様なビーム追尾の動作がなされる。
【0009】
このように、受光部がビーム径から外れてしまうと、通信が途絶えるため、安定した通信を行うことが困難であった。
【0010】
上記事情に鑑み、本発明は、より安定的な光空間通信を実現することができる技術の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、移動体であって、受信装置の受光部にビームを照射することで光信号を送信する光送信部と、前記移動体を指定位置まで移動させる移動指示を受信する指示受信部と、前記移動体の現在位置を取得する位置取得部と、前記現在位置から前記指定位置への移動方向を取得する方向取得部と、前記移動体が前記指定位置へ向けて移動を開始する前に、前記受光部にビームが照射される範囲内で、前記移動方向に応じてビームの照射方向を変化させる変化制御を行うビーム制御部と、を備えた移動体である。
【0012】
本発明の一態様は、移動体と、前記移動体から照射されるビームを受光する受信装置とを備えた通信システムであって、前記移動体は、前記受信装置の受光部にビームを照射することで光信号を送信する光送信部と、前記移動体を指定位置まで移動させる移動指示を受信する第1指示受信部と、前記移動体の現在位置を取得する第1位置取得部と、前記現在位置から前記指定位置への移動方向を取得する第1方向取得部と、前記移動体が前記指定位置へ向けて移動を開始する前に、前記受光部にビームが照射される範囲内で、前記第1方向取得部によって取得された前記移動方向に応じてビームの照射方向を変化させる変化制御を行うビーム制御部と、を備え、前記受信装置は、前記移動指示を受信する第2指示受信部と、前記第2指示受信部によって受信された前記移動指示に応じて前記受光部の指向方向を変化させる変化制御を行う受光制御部と、を備えた通信システムである。
【0013】
本発明の一態様は、移動体から照射されるビームを受光する受信装置にビームを照射することで光信号を送信する光送信部を備えた移動体の制御方法であって、前記移動体を指定位置まで移動させる移動指示を受信する受信ステップと、前記移動体の現在位置を取得する位置取得ステップと、前記現在位置から前記指定位置への移動方向を取得する方向取得ステップと、前記移動体が前記指定位置へ向けて移動を開始する前に、前記受信装置にビームが照射される範囲内で、前記移動方向に応じてビームの照射方向を変化させる変化制御を行うビーム制御ステップと、を備えた制御方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、より安定的な光空間通信を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】通信システムの構成例を示す図である。
図2A】光信号送受信部を正面から見た図である。
図2B】光信号送受信部を正面から見た図である。
図2C】光信号送受信部を正面から見た図である。
図3A】移動体と光信号送受信部を上方向から見た図である。
図3B】移動体と光信号送受信部を上方向から見た図である。
図3C】移動体と光信号送受信部を上方向から見た図である。
図4】第1実施形態における移動体の構成例を示す図である。
図5】第1実施形態における固定局の構成例を示す図である。
図6】第1実施形態における操縦装置の構成例を示す図である。
図7】第2実施形態における固定局の構成例を示す図である。
図8】第3実施形態における固定局の構成例を示す図である。
図9】第4実施形態における固定局の構成例を示す図である。
図10】第4実施形態における移動体の構成例を示す図である。
図11】固定局による遅延時間の計測方法を説明するための図である。
図12A】従来技術を示す図である。
図12B】従来技術を示す図である。
図12C】従来技術を示す図である。
図13A】従来技術を示す図である。
図13B】従来技術を示す図である。
図13C】従来技術を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、実施形態に係る通信システム10の構成例を示す図である。この構成例は、以下に説明する各実施形態1~4で共通する構成例を示している。通信システム10は、移動体100、および固定局200で構成される。また、図1には、操縦装置300が示されている。
【0017】
移動体100は、例えばドローンなど遠隔操縦の無人飛翔体であるが、移動する物体であればよい。移動体100は、光信号送受信部110を備える。光信号送受信部110は、ビームを照射することで光信号を送信する。本実施形態では、光信号の送信だけではなく、受信も可能な構成としている。したがって、光信号送受信部110は、固定局200にビームを送信したり、固定局200からのビームを受信する。光信号送受信部110は、指向を変化させることができる。すなわち、ビームの照射方向を変化させることができる。さらに、光信号送受信部110は、固定局200から照射されたビームを受光する受光部に対する位置のずれを測定し、ビーム制御部124に出力する。
【0018】
操縦装置300は移動体100に移動指示を送信することで、移動体100を操縦する。移動指示は、移動体100に対し、指定位置まで移動させる指示である。移動指示は、第1実施形態では移動体100のみが受信するが、第1実施形態以外の実施形態では、固定局200も受信可能な構成となっている。指定位置は、例えば、東経、北緯、高度などで指定される。操縦装置300と移動体100との通信、または操縦装置300と固定局との通信は、電波または赤外光などを含む可視光を用いた通信である。
【0019】
固定局200は、光信号送受信部210を備える。光信号送受信部210は、移動体100にビームを送信したり、移動体100からのビームを受信する。固定局200においては、ビームを送信する機能を持たずに、受信のみを行うように構成してもよい。各実施形態において、固定局200は移動しないが、光信号送受信部210は、第1実施形態以外の実施形態では指向を変化させることができる。
【0020】
次に、各実施形態で共通する制御内容について説明する。図2A図2B図2Cは、光信号送受信部210を正面から見た図を示す。図3A図3B図3Cは、移動体100と光信号送受信部210を上方向から見た図を示す。なお、これらの図では、ビーム径は光信号送受信部210より大きくしたが、ビーム径が光信号送受信部210より小さくてもよい。
【0021】
図2A図3Aは、光信号送受信部210がビーム径に含まれている状態を示す図である。この図2A図3Aに示される状態において、操縦装置300が移動体100に、移動体100の右方向にある指定位置に移動する移動指示を送信したとする。このとき、移動体100は、現在位置を取得し、現在位置から指定位置への移動方向を取得する。図2図3の場合の移動方向は、上述したように右方向である。
【0022】
移動体100は、光信号送受信部210にビームが照射される範囲内で、移動方向に応じてビームの照射方向を変化させる。具体的には、図2Bに示されるように、移動体100は、光信号送受信部210にビームが照射される範囲内で、図3Bに示されるように、移動方向とは逆方向(ここでは左方向)に照射方向を変化させる変化制御を行う。移動体100は、図3Cに示されるように、変化制御が開始された後(例えば、変化制御が開始されてから予め定められた遅延時間が経過した後)に移動体100を指定位置に向けて移動させる。このとき、図2Cに示されるように、変化制御が開始された後のため、光信号送受信部210がビーム径から外れることを抑制できるので、より安定的な光空間通信を実現することができる。
【0023】
このように、本実施形態では、移動体100が移動する前に照射方向を変化させる変化制御を行うことで、追尾するまでの時間に余裕ができる。この余裕によって、従来技術と比較して、光信号送受信部210がビーム径から外れることを抑制できることから、より安定的な光空間通信を実現することができる。
【0024】
なお、移動指示として、指定位置までの移動の他に、移動体100の姿勢を変える指示を設けてもよい。姿勢を変える指示とは、例えば右に90度回転するなどの指示である。このような指示であっても、移動体100が回転する前に照射方向を変化させる変化制御を行うことで、追尾するまでの時間に余裕ができる。
【0025】
以上を踏まえ、各実施形態について説明する。以下の実施形態においては、既出の符号に対応する構成の説明を省略することがある。また、各実施形態において、移動体100から固定局200に光信号を送信する例について説明するが、各実施形態では、固定局200から移動体100に光信号を送信することも可能である。
【0026】
(第1実施形態)
第1実施形態は、上述したように、操縦装置300の移動指示は、移動体100のみが受信する。また、固定局200の光信号送受信部210の指向を変化制御は行われない。
【0027】
図4は、第1実施形態における移動体100の構成例を示す図である。移動体100は、光信号送受信部110、ジャイロスコープ111を備える。ジャイロスコープ111は、光信号送受信部110と一体的に構成され、光信号送受信部110の姿勢(ロール、ピッチ、ヨー)を検出し、姿勢情報として方向取得部123に出力する。
【0028】
また、移動体100は、データ処理部131、データ取得部132を含む。データ処理部131は、送信するデータを処理して光信号送受信部110に出力する。光信号送受信部110は、データ処理部131から出力されたデータにもとづき、固定局200の光信号送受信部の受光部にビームを照射することで光信号を送信する。光信号送受信部110は、光送信部の一例である。データ取得部132は、光信号送受信部110が受信したデータを取得する。
【0029】
さらに、移動体100は、指示受信部121、位置取得部122、方向取得部123、ビーム制御部124、GPS/RTC125、移動制御部126、および駆動機構127を備える。指示受信部121は、操縦装置300からの移動指示を受信し、位置取得部122に出力する。位置取得部122は、GPS/RTC125から現在位置と現在時刻とを取得し、移動指示とともに方向取得部123に出力する。GPS/RTC125は、GPS(Global Positioning System)およびRTC(Real Time Clock)で構成される。
【0030】
方向取得部123は、現在位置から指定位置への移動方向を取得し、ビーム制御部124に出力する。また、方向取得部123は、指定位置を移動制御部126に出力する。なお、方向取得部123は、ジャイロスコープ111からの姿勢情報も加味して移動方向を取得する。ビーム制御部124は、移動体100が指定位置へ向けて移動を開始する前に、固定局200の光信号送受信部210にビームが照射される範囲内で、移動方向に応じてビームの照射方向を変化させる変化制御を行う。また、ビーム制御部124は、光信号送受信部110が送信するビームの照射位置を取得して、固定局200の光信号送受信部210にビームが照射されるように追尾する追尾制御を行う。
【0031】
移動制御部126は、ビーム制御部124によって変化制御が開始された後に移動体100を指定位置に向けて、駆動機構127によって移動させる。駆動機構127は、移動体100を移動させるための機構である。移動体100がドローンであれば、プロペラなどである。
【0032】
上述した移動制御部126は、変化制御が開始されてから、予め定められた遅延時間が経過した後に移動体100を指定位置に向けて移動させる。この遅延時間として、追尾制御の開始から所望の移動速度で安定するまでの時間が挙げられる。この時間は予め測定しておく。なお、遅延時間は、現在位置や姿勢の変化量の大小により応じて異ならせるようにしてもよい。
【0033】
図5は、第1実施形態における固定局200の構成例を示す図である。固定局200は、光信号送受信部210、データ処理部231、およびデータ取得部132を備える。光信号送受信部210は、受光窓などの受光部を備え、移動体100から照射されたビームを受光することで、光信号を受信する。データ取得部232は、光信号送受信部210が受信したデータを取得する。データ処理部231は、送信するデータを処理して光信号送受信部210に出力する。光信号送受信部210は、データ処理部231から出力されたデータにもとづき、光信号を送信する。
【0034】
図6は、第1実施形態における操縦装置300の構成例を示す図である。操縦装置300は、指示送信部310、およびデータ取得制御部320を備える。指示送信部310は、不図示の操作機構に対する操作者の操作にもとづいて、移動体100に移動指示を送信する。データ取得制御部320は、移動体100のデータ取得部132を制御する。操縦装置300は、以降の実施形態において、固定局200にも移動指示を送信すること以外の構成は図6の構成と同じである。
【0035】
以上説明したように、第1実施形態では、移動体100が指定位置へ向けて移動を開始する前に変化制御を行う。そして、変化制御が開始されてから、予め定められた遅延時間が経過した後に移動体100を指定位置に向けて移動させる。この遅延時間として、追尾制御の開始から所望の移動速度で安定するまでの時間としているので、従来技術と比較して、光信号送受信部210がビーム径から外れることを抑制できることから、より安定的な光空間通信を実現することができる。
【0036】
(第2実施形態)
第2実施形態は、第1実施形態の構成において、固定局200の光信号送受信部210が移動体100を追尾可能な構成とした形態である。さらに、操縦装置300が移動体100に送信する移動指示を固定局200も受信する構成である。これにより、移動指示を固定局200も知ることができるため、移動体100の将来の位置を把握することができる。これにより、移動体100の将来の位置を把握できない場合と比較して、固定局200の光信号送受信部210が移動体100を追尾することが可能となるので、従来技術と比較して、光信号送受信部210がビーム径から外れることを抑制できることから、より安定的な光空間通信を実現することができる。
【0037】
第2実施形態における通信システム10では、上記のように固定局200の構成のみが第1実施形態と異なる。図7は、第2実施形態における固定局200の構成例を示す図である。図7に示されるように、第2実施形態では、固定局200の構成として、ジャイロスコープ211、指示受信部221、受光制御部224、およびGPS/RTC225を備える。
【0038】
なお、図4に示した移動体100の構成の指示受信部121は、第2実施形態において第1指示受信部に対応する。位置取得部122は、第1位置取得部に対応する。方向取得部123は、第1方向取得部に対応する。また、図7に示される構成において、指示受信部221は、第2指示受信部に対応する。
【0039】
光信号送受信部210は、移動体100から照射されたビームを受光する受光部に対する位置のずれ(位置ずれ量)を測定し、ビーム制御部124に出力する。ジャイロスコープ211は、光信号送受信部210の姿勢情報を受光制御部224に出力する。指示受信部121は、操縦装置300からの移動指示を受信し、受光制御部224に出力する。受光制御部224は、GPS/RTC225から固定局200の位置と現在時刻とを取得する。
【0040】
受光制御部224は、姿勢情報、移動指示、固定局の位置、および位置ずれ量に応じて光信号送受信部210の指向方向を変化させる変化制御を行う。変化制御例として、受光制御部224は1つ前に受信した移動指示に示された指定位置を保持しておく。そして、受光制御部224は、保持している指定位置と、今回受信した移動指示に示された指定位置と、固定局200の位置とから、移動体100が固定局200に対する移動経路を求める。受光制御部224は、位置ずれ量や姿勢情報を用いて求まった経路に沿って追尾させるように制御する。
【0041】
このようにすることで、固定局200は、指示情報を受信しない場合と比較して、光信号送受信部210がビーム径から外れることを抑制できることから、より安定的な光空間通信を実現することができる。さらに、第1実施形態と同様に、移動体100が指定位置へ向けて移動を開始する前に変化制御を行い、変化制御が開始されてから、予め定められた遅延時間が経過した後に移動体100を指定位置に向けて移動させるので、従来技術と比較して、光信号送受信部210がビーム径から外れることを抑制できることから、より安定的な光空間通信を実現することができる。
【0042】
(第3実施形態)
第3実施形態は、第2実施形態の構成において、固定局200が移動体100から現在位置を取得する構成を加えた形態である。第3実施形態において、移動体100の位置取得部122は、取得した現在位置と、そのときの現在時刻とを固定局200に通知する。
【0043】
第3実施形態における通信システム10では、上記のように、移動体100が現在位置を通知する点と、固定局200の構成が第2実施形態と異なる。図8は、第3実施形態における固定局200の構成例を示す図である。図8に示されるように、第3実施形態では、固定局200の構成として、第2実施形態の構成に加え、移動体位置取得部241、および速度測定部242を備える。
【0044】
移動体位置取得部241は、移動体100の位置取得部122から現在位置と、そのときの現在時刻とを複数回にわたり取得して、速度測定部242に出力する。移動体位置取得部241は、現在位置取得部に対応する。移動体位置取得部241は、例えば移動体100が移動に要する時間に比べて十分短い時間周期で複数回にわたり現在位置と、そのときの現在時刻を取得する。
【0045】
例えば、移動体100は、移動体100の位置Pと、その位置を測定したときの時刻Tの組み合わせ(P、T)を固定局200に送信する。固定局200は(P、T)を受信し、移動体位置取得部241で(P、T)を解析し、このときの時刻をtとする。なお、本実施形態で用いられるRTCは、Tとtとの時間差を測定可能な高精度なRTCとする。時刻tは、時刻Tより後であることから、固定局200は、少し前の時刻Tのときに移動体が在った位置しか認識できない。
【0046】
そこで、移動体100は、移動体100の位置Pk(kは自然数)と、その位置を測定したときの時刻Tkの組み合わせAk=(Pk、Tk)を固定局200に送信する。これにより、固定局200は、複数のAk(k=1、2、…)を取得できる。また、固定局200がAkを受信し、移動体位置取得部241で(P、T)を解析した時刻をtkとする。固定局200は、複数のAkから、移動体100の速度vを求める。
【0047】
固定局200がk=nまでAkを受信し、次のk=n+1における移動体100の推定位置をpとすると、推定位置pはPn+v×(tn-Tn)を算出することにより求まる。このようにすることで、移動体100が位置を取得した時刻と、固定局200が移動体100から位置を受信して解析した時刻の差によって生じる誤差を極力低下させることができる。
【0048】
このように、固定局200が移動体100の位置を推測することにより、位置を推測しない場合と比較して、光信号送受信部210がビーム径から外れることを抑制できることから、より安定的な光空間通信を実現することができる。さらに、第1実施形態と同様に、移動体100が指定位置へ向けて移動を開始する前に変化制御を行い、変化制御が開始されてから、予め定められた遅延時間が経過した後に移動体100を指定位置に向けて移動させるので、従来技術と比較して、光信号送受信部210がビーム径から外れることを抑制できることから、より安定的な光空間通信を実現することができる。
【0049】
さらに、振動や強風などの外乱による操縦装置300の操縦者の意図しない移動体100の移動があった場合、すなわち、指示情報では知りようがない移動体100の移動があった場合であっても、移動体100の現在位置を固定局200が知ることができるため、光信号送受信部210は容易に移動体100を追尾することができる。
【0050】
(第4実施形態)
第4実施形態は、第2実施形態の構成において、固定局200が遅延時間を計測し、計測した遅延時間を移動体100に通知する形態である。図9は、第4実施形態における固定局200の構成例を示す図である。
【0051】
第4実施形態において、固定局200は、新たに遅延時間処理部251を備える。また、光信号送受信部210は、4分割フォトディテクタ(QPD)やカメラなど、移動体100からの受光したビームの位置をビームの移動時間に対して十分にまた頻回に把握することができる機構を備える。このように第4実施形態における光信号送受信部210は、ビームの受光位置を取得する受光位置取得部としての機能を備える。
【0052】
光信号送受信部210は、4分割フォトディテクタやカメラなどにより把握されたビームの位置を遅延時間処理部251に出力する。これにより、遅延時間処理部251は、移動体100が動き始めたか、または動き終わりとなったのかなど移動体100の動きを把握できる。すなわち、遅延時間処理部251は、受光位置から、移動体100の移動開始を検出する。
【0053】
また、図9における指示受信部221は、遅延時間処理部251に移動指示を出力する。これにより、遅延時間処理部251は、移動指示が受信されてから、移動開始が検出されるまでの遅延時間を取得する。具体的に、遅延時間処理部251は、移動指示が出力した時刻をGPS/RTC225から取得する。遅延時間処理部251は、移動指示が出力されたタイミングから動き始めるまでに経過した時間から、遅延時間を計測できる。遅延時間処理部251は、計測した遅延時間を移動体100に通知する。
【0054】
図10は、第4実施形態における移動体100の構成例を示す図である。第4実施形態において、移動体100は、新たに遅延時間取得部141を備える。遅延時間取得部141は、検出部、遅延時間取得部、および遅延時間通知部に対応する。
【0055】
図11は、固定局200による遅延時間の計測方法を説明するための図である。縦軸は、受光したビームの位置を示す。ビームの位置が「0」は、基準位置(例えば、受光部の中央)を示し、それ以外は基準位置からずれていることを示す。横軸は時間を示す。
【0056】
区間Aは、操縦装置300から移動指示を受信したタイミングから始まる区間である。この区間Aでは、ビームの位置に変化がないことから、この区間の時間は遅延時間に該当する。区間Bは、移動体100の動き始めの動作収束に要する時間に該当する。区間Cは、移動体100の移動中に安定して追尾されている時間に該当する。区間Dは、動き終わりの動作収束に要する時間に該当する。
【0057】
以上より、遅延時間処理部251は、区間Aの時間を遅延時間として、移動体100の遅延時間取得部141に通知する。実際の運用では、移動体100に移動を複数回行わせ、その結果得られた複数の遅延時間を用いて1つの遅延時間(例えば平均遅延時間)を決定してもよい。また、移動する回数の上限を定め、そのなかで遅延時間が収束するまで行うようにしてもよい。
【0058】
なお、移動指示から移動体100の現在位置と移動先から得られる移動経路の通りに動いたときの位置「0」からのずれの大きさと時間の関係と、実際に測定されたすれの大きさと時間の関係の間での相互相関を取り得られた値を動作遅延時間としてもよい。また、固定局200は、移動体100の移動開始時の追尾制御におけるアンダーシュートやオーバーシュートもわかるので、それらの大きさが小さくなるように固定局側での追尾動作を調整するようにしてもよい。
【0059】
第4実施形態によれば、より実環境に即した遅延時間を得られるので、無駄に長い時間をかけたり、短すぎて追尾ができなくなるようなことがないため、より精細な変化制御を行うことができる。ができるようになる。
【0060】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、光空間通信システムに適用可能である。
【符号の説明】
【0062】
10…通信システム、100…移動体、110…光信号送受信部、111…ジャイロスコープ、121…指示受信部、122…位置取得部、123…方向取得部、124…ビーム制御部、126…移動制御部、127…駆動機構、131…データ処理部、132…データ取得部、141…遅延時間取得部、200…固定局、210…光信号送受信部、211…ジャイロスコープ、221…指示受信部、224…受光制御部、231…データ処理部、232…データ取得部、241…移動体位置取得部、242…速度測定部、251…遅延時間処理部、300…操縦装置、310…指示送信部、320…データ取得制御部
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図13C