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7594224光送受信装置、光通信方法及びコンピュータープログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】光送受信装置、光通信方法及びコンピュータープログラム
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/61 20130101AFI20241127BHJP
【FI】
H04B10/61
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023568880
(86)(22)【出願日】2021-12-22
(86)【国際出願番号】 JP2021047580
(87)【国際公開番号】W WO2023119487
(87)【国際公開日】2023-06-29
【審査請求日】2024-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松浦 暁彦
(72)【発明者】
【氏名】桑原 昭一郎
(72)【発明者】
【氏名】木坂 由明
【審査官】鴨川 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-163485(JP,A)
【文献】特開平9-214578(JP,A)
【文献】特開2021-34816(JP,A)
【文献】特開平10-136046(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信された光信号について多値信号のシンボル判定を行い、前記シンボル判定の結果に基づいてデータを復元する受信シンボル判定部を備え、
前記受信シンボル判定部は、第1層から第M層(Mは1以上の整数)の領域選択層と、1層の領域判定層と、を備え、
第m層(mは1以上M以下の整数)の領域選択層は、第m-1層の領域選択層での領域分割数(m=1の場合は“1”)と同数の領域選択回路を備え、
第m層の領域選択回路は、受信された前記多値信号について、層の段数(1からM)に応じて複数の領域の中から、受信された前記多値信号のシンボルが属する領域を機械学習の結果に基づいて選択し、選択された領域に応じて次の層へ出力し、
前記第m層の領域選択回路は、前記第m-1層の領域選択回路で選択された領域に応じた領域選択回路が処理を行い、
前記領域判定層は第M層の領域選択層での領域選択回路の出力数の総数に応じた領域判定回路を備え、
前記領域判定回路は、第M層の領域選択層から受信された前記多値信号のシンボルが属する領域を機械学習の結果に基づいて選択し、選択された領域に応じて前記多値信号のシンボルを示す判定結果を出力する、光送受信装置。
【請求項2】
前記領域選択回路及び前記領域判定回路は、トレーニングモードで動作する場合には、受信された前記多値信号と、前記多値信号が有するシンボルを示す正解ラベルと、を用いて機械学習を行うことで、受信された多値信号に応じて前記複数の領域からどの領域を選択するか学習し、
前記領域選択回路及び前記領域判定回路は、データ判定モードで動作する場合には、受信された前記多値信号について、前記トレーニングモードで得られた学習結果に基づいて前記領域を選択する、請求項1に記載の光送受信装置。
【請求項3】
前記領域選択回路及び前記領域判定回路における前記機械学習は、ニューラルネットワークを用いた機械学習であり、前記領域選択回路及び前記領域判定回路は、前記シンボルを複数の領域のうちいずれか一つに分類する、請求項1又は2に記載の光送受信装置。
【請求項4】
前記領域選択回路及び前記領域判定回路における前記機械学習は、サポートベクトルマシンを用いた機械学習であり、1対他方式の機械学習により、前記領域選択回路及び前記領域判定回路は、前記シンボルを複数の領域のうちいずれか一つに分類する、請求項1又は2に記載の光送受信装置。
【請求項5】
受信された光信号について多値信号のシンボル判定を行い、前記シンボル判定の結果に基づいてデータを復元する受信シンボル判定部を備え、
前記受信シンボル判定部は、第1層から第M層(Mは1以上の整数)の領域選択層と、1層の領域判定層と、を備え、
第m層(mは1以上M以下の整数)の領域選択層は、第m-1層の領域選択層での領域分割数(m=1の場合は“1”)と同数の領域選択回路を備え、
前記領域判定層は第M層の領域選択層での領域選択回路の出力数の総数に応じた領域判定回路を備える光通信装置において、
第m層の領域選択回路が、受信された前記多値信号について、層の段数(1からM)に応じて複数の領域の中から、受信された前記多値信号のシンボルが属する領域を機械学習の結果に基づいて選択し、選択された領域に応じて次の層へ出力するステップと、
前記領域判定回路が、第M層の領域選択層から受信された前記多値信号のシンボルが属する領域を機械学習の結果に基づいて選択し、選択された領域に応じて前記多値信号のシンボルを示す判定結果を出力するステップと、を有し、
前記第m層の領域選択回路は、前記第m-1層の領域選択回路で選択された領域に応じた領域選択回路が処理を行う、光通信方法。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一項に記載の光送受信装置としてコンピューターを機能させるためのコンピュータープログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光送受信装置、光通信方法及びコンピュータープログラムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信分野において、デジタルコヒーレント技術を用いた大容量多値光通信が広く導入されつつある(例えば非特許文献1)。デジタルコヒーレント技術は、無線通信の要素技術を光通信に適用したものである。デジタルコヒーレント技術では、伝送路に光ファイバを使用するという光通信特有の条件により、光ファイバの持つ各種分散や非線形特性の影響を受ける。そのため、受信波形が歪むという問題がある。
【0003】
このような問題に対して、機械学習を適用し歪みを補償する方法が検討されている(例えば非特許文献2、非特許文献3)。16QAMや64QAMなどの多値信号を受信判定するには、多クラス分類が必要となる。そのため、多値数が増えるにしたがって機械学習回路の内部変数が増大し計算時間が長くなりやすい。非特許文献2及び非特許文献3では、機械学習にサポートベクトルマシン(以下「SVM」という。)を用い、使用されるSVM回路の個数を少なくする方式が使用されている。
【0004】
図12は、SVM回路を用いた従来の回路構成例を示す図である。図13は、16QAMにおける信号点配列の例を示す図である。なお、図12及び図13は、非特許文献2から引用した図面である。以下の説明では、信号点0~15から成る16QAM信号を判定する構成を例に説明する。信号点0~15を2進数で表現すると0000~1111の4ビットで表現できる。図13の信号点配列の場合、上位2ビットがx軸方向、下位2ビットがy軸方向の位置を示す。
【0005】
まず、上位2ビットについて考える。上位2ビットの中で、上位ビットが“0”か“1”かにより信号点を分けると、二つの領域に分けられる。そこで、これをSVMで2分類する。次に、上位2ビットの中で下位ビットが“0”か“1”かにより信号点を分けると、同様に二つの領域に分けられる。そこで、これをSVMで2分類する。y軸についても同様の処理を行う。その結果、x及びyの両軸で合計4つのSVM分類器を使えば16信号点が判定できる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】S. Tsukamoto et al., OFC2005, PDP29.
【文献】M. Li et al., IEEE Photon. J., vol. 5, no. 6, 2013.
【文献】Y. Han et al., IEEE Photon. J, vol6, no. 5, 2014.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、機械学習回路の数を減らすことができたとしても、個々の機械学習回路における計算量については考慮されていなかった。そのため、計算実行時間が増大するという問題があった。
【0008】
上記事情に鑑み、本発明は、受信された光信号について多値信号のシンボル判定をより少ない計算時間で実現することができる技術の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、受信された光信号について多値信号のシンボル判定を行い、前記シンボル判定の結果に基づいてデータを復元する受信シンボル判定部を備え、前記受信シンボル判定部は、第1層から第M層(Mは1以上の整数)の領域選択層と、1層の領域判定層と、を備え、第m層(mは1以上M以下の整数)の領域選択層は、第m-1層の領域選択層での領域分割数(m=1の場合は“1”)と同数の領域選択回路を備え、第m層の領域選択回路は、受信された前記多値信号について、層の段数(1からM)に応じて複数の領域の中から、受信された前記多値信号のシンボルが属する領域を機械学習の結果に基づいて選択し、選択された領域に応じて次の層へ出力し、前記第m層の領域選択回路は、前記第m-1層の領域選択回路で選択された領域に応じた領域選択回路が処理を行い、前記領域判定層は第M層の領域選択層での領域選択回路の出力数の総数に応じた領域判定回路を備え、前記領域判定回路は、第M層の領域選択層から受信された前記多値信号のシンボルが属する領域を機械学習の結果に基づいて選択し、選択された領域に応じて前記多値信号のシンボルを示す判定結果を出力する、光送受信装置である。
【0010】
本発明の一態様は、受信された光信号について多値信号のシンボル判定を行い、前記シンボル判定の結果に基づいてデータを復元する受信シンボル判定部を備え、前記受信シンボル判定部は、第1層から第M層(Mは1以上の整数)の領域選択層と、1層の領域判定層と、を備え、第m層(mは1以上M以下の整数)の領域選択層は、第m-1層の領域選択層での領域分割数(m=1の場合は“1”)と同数の領域選択回路を備え、前記領域判定層は第M層の領域選択層での領域選択回路の出力数の総数に応じた領域判定回路を備える光通信装置において、第m層の領域選択回路が、受信された前記多値信号について、層の段数(1からM)に応じて複数の領域の中から、受信された前記多値信号のシンボルが属する領域を機械学習の結果に基づいて選択し、選択された領域に応じて次の層へ出力するステップと、前記領域判定回路が、第M層の領域選択層から受信された前記多値信号のシンボルが属する領域を機械学習の結果に基づいて選択し、選択された領域に応じて前記多値信号のシンボルを示す判定結果を出力するステップと、を有し、前記第m層の領域選択回路は、前記第m-1層の領域選択回路で選択された領域に応じた領域選択回路が処理を行う、光通信方法である。
【0011】
本発明の一態様は、上記の光送受信装置としてコンピューターを機能させるためのコンピュータープログラムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、受信された光信号について多値信号のシンボル判定をより少ない計算時間で実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の光通信システム100のシステム構成例を示す図である。
図2】送信信号選択部121の詳細な構成例を示す図である。
図3】受信シンボル判定部212の詳細な構成例を示す図である。
図4】判定部2122の詳細な構成例を示す図である。
図5】領域選択回路41の具体的な構成例を示す図である。
図6】SVMを用いた領域判定回路51および412の構成例を示す図である。
図7】NNを用いた領域判定回路51および412の構成例を示す図である。
図8】2分岐の領域選択回路41を3層組み合わせて16QAM信号を判定する構成例を示す図である。
図9】2分岐の領域選択回路41を3層組み合わせて16QAM信号を判定する構成の処理の概略を示す図である。
図10】SVMの原理を示す図である。
図11】シミュレーション結果を示す図である。
図12】SVM回路を用いた従来の回路構成例を示す図である。
図13】16QAMにおける信号点配列の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の光通信システム100のシステム構成例を示す図である。光通信システム100は、送信装置10、受信装置20及び制御装置30を備える。
【0015】
送信装置10は、多重装置11及び光変調装置12を備える。光変調装置12は、送信信号選択部121及び光変調部122を備える。送信装置10の多重装置11には、不図示の複数の端末装置から送信された光データ信号が入力される。多重装置11は、入力された複数の光データ信号を多重することで光多重データ信号を生成し、光変調装置12に出力する。光変調装置12の送信信号選択部121は、制御装置30の制御に応じて、光多重データ信号及びトレーニング信号のいずれか一方を光変調部122に出力する。光変調部122は、送信信号選択部121から出力された光信号を変調して送信する。
【0016】
受信装置20は、光復調装置21及び分離装置22を備える。光復調装置21は、分散補償部211及び受信シンボル判定部212を備える。受信装置20は、送信装置10から送信された光信号を受信する。分散補償部211は、受信された光信号について分散補償処理やX-Y偏波分離などの変調の次元分離処理を行う。受信シンボル判定部212は、分散補償部211から出力された光信号についてシンボル判定を行い、判定結果を分離装置22に出力する。受信シンボル判定部212は、受信シンボルをデジタルデータに復元する。受信シンボル判定部212は、復元データ値を、対向する送信装置10内の多重装置11と対をなす分離装置22に送出する。受信シンボル判定部212は、シンボル判定を行うに際して、予め実施された機械学習の結果を用いる。分離装置22は、判定結果に応じた信号を宛先に応じた方路へ出力する。
【0017】
制御装置30は、受信シンボル判定部212において機械学習を行うモード(以下「トレーニングモード」という。)か、機械学習の結果を用いて通信を行うモード(以下「データ判定モード」という。)か、について制御する。制御装置30は、例えばトレーニングモードとして光通信システム100を動作させる場合には、トレーニング制御信号を送信信号選択部121及び受信シンボル判定部212に出力する。トレーニング制御信号には、トレーニングモードとして通信することを示す情報と、トレーニング信号としてどのようなシンボルの信号が送信されるかを示す情報と、が含まれる。制御装置30は、図1に示されるように送信装置10及び受信装置20とは異なる装置として構成されてもよいし、送信装置10の一部として構成されてもよいし、受信装置20の一部として構成されてもよい。
【0018】
図2は、送信信号選択部121の詳細な構成例を示す図である。送信信号選択部121は、トレーニング制御回路1211及び選択スイッチ1212を備える。トレーニング制御回路1211は、制御装置30から送信されたトレーニング制御信号を受信する。トレーニング制御回路1211は、受信されたトレーニング制御信号が示すシンボルの信号(以下「トレーニング信号」という。)を選択スイッチ1212に出力する。また、トレーニング制御回路1211は、トレーニング制御信号を受信した際には、トレーニング信号を出力することを示す選択制御信号を選択スイッチ1212に出力する。
【0019】
選択スイッチ1212は、トレーニング信号及びデータ信号のいずれか一つ又は両方を入力する。選択スイッチ1212は、トレーニング信号とデータ信号とを切り替えて送出する機能を持つ。選択スイッチ1212は、トレーニング信号とデータ信号とのうち、選択制御信号が示す方の信号を送出する。
【0020】
図3は、受信シンボル判定部212の詳細な構成例を示す図である。受信シンボル判定部212は、トレーニング制御回路2121及び判定部2122を備える。トレーニング制御回路2121は、制御装置30から送信されたトレーニング制御信号を受信する。トレーニング制御回路2121は、受信されたトレーニング制御信号が示すシンボルの情報を含むトレーニング制御信号を判定部2122に出力する。
【0021】
判定部2122は、トレーニング制御信号が受信された場合(トレーニングモードである場合)には、分散補償部211から出力されたデータ信号と、トレーニング制御信号が示すシンボルのパターンを示す情報と、を教師データとして用いて機械学習を行う。すなわち、判定部2122は、分散補償部211から出力されたデータ信号のパターンが、トレーニング信号が示すパターンであるという前提で学習処理を行う。判定部2122は、この学習処理において、非線形歪みの補償パラメータを学習する。判定部2122は、トレーニング制御信号が受信されない場合(データ判定モードである場合)には、分散補償部211から出力されたデータ信号について機械学習の結果に基づいて非線形歪み補償を行ってシンボル判定を行う。判定部2122は、判定結果に基づいて復元データ値を出力する。
【0022】
図4は、判定部2122の詳細な構成例を示す図である。機械学習のトレーニングモードでは、送信信号選択部121からトレーニング信号を送信中であることと、送信中のトレーニング信号のパターンと、が受信装置20にトレーニング制御信号として通知される。受信装置20内のトレーニング制御回路2121は、トレーニング信号のパターンにしたがって正解ラベルを生成する。
【0023】
判定部2122は、複数の領域選択層40と、領域判定層50と、多重化回路60と、を備える。図4の例では、領域選択層40はN層設けられている。ここで、Nは2以上の整数値である。各領域選択層40は、1又は複数の領域選択回路41を備える。第1層の領域選択層40_1は、1つの領域選択回路41を備える。第2層~第N層の各領域選択層40は、各一つ前段の領域選択層40の領域選択回路41における出力数の総数に応じた領域選択回路41を備える。領域判定層50は、複数の領域判定回路51を備える。
【0024】
各領域選択回路41と各領域判定回路51には、トレーニング制御信号として正解ラベルが入力される。領域選択回路41は、受信シンボルを正解ラベルに従って分類するように機械学習回路の内部変数を設定する。領域選択回路41は、正解ラベルに従って次の領域選択層40の該当する領域選択回路41に受信シンボルを出力する。次の領域選択層40においても同様に、領域選択回路41は、機械学習回路の内部変数を設定し、次の領域選択層の該当する領域選択回路41に受信シンボルを出力する。
【0025】
判定部2122の階層数と各領域選択回路41の分岐数は、最終層にあたる領域判定層50において各領域判定回路51の判定の結果、各領域に含まれるシンボルが1種類となるように予め設定される。このようにトレーニング用のデータ信号を次々と入力して、すべてのパスの学習を行うことで、全ての領域選択回路41及び領域判定回路51が備える機械学習回路の内部のノード状態を学習し決定する。
【0026】
データ判定モードでは、最初の領域選択層40_1の領域選択回路41において受信シンボルを受信し、機械学習結果に従って領域選択を行う。領域選択回路41は、次の領域選択層40(40_2)の該当する領域選択回路41に受信シンボルを出力する。領域選択層40_2においても同様に、領域選択回路41は機械学習結果に従って次の領域選択層40(40_3)の該当する領域選択回路41に受信シンボルを出力する。最終層にあたる領域判定層50の出力では、シンボルは1種類に定まる。多重化回路60には、領域判定層50のいずれか一つの領域判定回路51からのみ判定結果が結線を介して入力される。結線の番号は最後に判定を行った領域を示す。その結線からの入力値は最後の判定結果を示す。結線の番号と判定結果とに基づいて、受信シンボルが表すデータ値が一意に定まる。多重化回路60は、そのデータ値を復元データ値として出力する。
【0027】
次に、各層における処理についてさらに説明する。
第1層の領域選択層40_1は、1個の領域選択回路41を備える。データ判定モードにおいては、領域選択回路41は、機械学習結果を用いることで受信シンボルをL(1,1)個の領域のうちいずれか一つに分類する。領域選択回路41は、該当する領域を担当する次層(第2層)の領域選択回路41のみに受信シンボルをそのまま出力する。ここでL(m,n)は第m層を構成する第n個目の領域選択回路の出力接続数とする。また第m層からの総出力接続数をLS(m)とすると、以下の式1が成り立つ。
【0028】
【数1】
【0029】
第2層の領域選択層40_2は、L(1,1)個の領域選択回路41を備える。これらの複数の領域選択回路41のうち、第1層から受信シンボルの入力があった領域選択回路41のみが動作する。例えば、第2層n番目の領域選択回路41のみに入力があった場合、その領域選択回路41は、機械学習結果を用いることで受信シンボルをL(2,n)個の領域のうちいずれか一つに分類する。領域選択回路41は、該当する領域を担当する次層(第3層)の領域選択回路41にのみ受信シンボルをそのまま出力する。
【0030】
以下同様に、受信シンボルを順次次の層に送りながら領域選択が進められ、第M層では以下の式2が成り立つ。
【0031】
【数2】
【0032】
第M層の領域選択層40_Mの出力は、領域判定層50に入力される。領域判定層50はLS(M)個の領域判定回路51を備える。第M層の領域選択層40_Mから受信シンボルの入力があった領域判定回路51のみが動作する。n番目の領域判定回路51のみに入力があった場合、領域判定回路51は、機械学習結果を用いることで受信シンボルをL(x,n)個の領域のうちいずれか一つに分類し、判定結果のみを後段の多重化回路60に出力する。ここで領域判定層50を表す記号を“x”とした。
【0033】
多重化回路60は、入力のあった領域判定回路51の位置(番号)とその値から、一意に定まる復元データ値を出力する。
【0034】
上述した各層の領域選択回路41及び領域判定回路51は、ニューラルネットワークを用いた機械学習により受信シンボルをL(m,n)個の領域のうちいずれか一つに分類するように構成されてもよい。上述した各層の領域選択回路41及び領域判定回路51は、サポートベクトルマシンを用いた1対他方式の機械学習により受信シンボルをL(m,n)個の領域のうちいずれか一つに分類するように構成されてもよい。なお、m及びnはいずれも1以上の整数を示す。
【0035】
図5は、領域選択回路41の具体的な構成例を示す図である。領域選択回路41は、2分岐回路411、領域判定回路412及び1xnsスイッチ413を備える。2分岐回路411は、トレーニング信号又はデータ信号を2分岐し、一方を領域判定回路412へ、他方を1xnsスイッチ413へ出力する。領域判定回路412は機械学習回路である。ns=L(m,n)である。
【0036】
まずトレーニングモードにおける動作について説明する。領域判定回路412は、トレーニング制御信号に基づいて、入力信号がトレーニング信号であるかデータ信号であるかを識別する。入力信号がトレーニング信号である場合、トレーニング制御信号に基づいて正解ラベルも通知される。領域判定回路412は、ニューラルネットワーク(以下「NN」という。)やSVM等を用いた機械学習による学習を行う。また、領域判定回路412は、トレーニング制御信号に従って、入力信号を後段の層(領域選択層40又は領域判定層50)のどの領域選択回路41又は領域判定回路51へ出力するかを決定する。領域判定回路412は、決定にしたがって、1xnsスイッチ413へ制御信号を出力する。
【0037】
次にデータ判定モードにおける動作について説明する。領域判定回路412は、予め行われた機械学習の学習結果に基づいて、入力信号を後段の層(領域選択層40又は領域判定層50)のどの領域選択回路41又は領域判定回路51へ出力するかを決定する。領域判定回路412は、決定にしたがって、1xnsスイッチ413へ制御信号を出力する。1xnsスイッチ413は、領域判定回路412の出力に応じて、受信シンボルの出力先を1~nsのうちいずれか一つに切り替える。
【0038】
図6は、SVMを用いた領域判定回路51の構成例を示す図である。領域判定回路51は、領域選択回路41の一部(領域判定回路412)を構成するものであるとともに、領域判定層50でも使用される。領域判定回路51には、トレーニング信号又はデータ信号が入力される。領域判定回路51はSVM回路511を備える。領域判定回路51は、1個のSVM回路511そのものとして構成されてもよい。領域判定回路51は、複数個のSVM回路511の総当たり判定回路として構成されてもよい。
【0039】
トレーニング制御信号により、入力信号がトレーニング信号であるかデータ信号であるかが指定される。入力信号がトレーニング信号である場合には、その正解ラベルも同時に通知される。この場合、SVM回路511は、トレーニング信号及び正解ラベルを用いて、SVMによる機械学習を行う。入力信号がデータ信号である場合、機械学習の結果を用いた判定を行い、判定結果を出力する。領域判定回路51が領域選択回路41の一部(領域判定回路412)である場合は、判定結果は1xnsスイッチ413の制御信号として使用される。
【0040】
図7は、NNを用いた領域判定回路51の構成例を示す図である。領域判定回路51は、領域選択回路41の一部(領域判定回路412)を構成するものであるとともに、領域判定層50でも使用される。領域判定回路51には、トレーニング信号又はデータ信号が入力される。領域判定回路51はNN回路512を備える。領域判定回路51は、1個のNN回路512そのものとして構成されてもよい。
【0041】
トレーニング制御信号により、入力信号がトレーニング信号であるかデータ信号であるかが指定される。入力信号がトレーニング信号である場合には、その正解ラベルも同時に通知される。この場合、NN回路512は、トレーニング信号及び正解ラベルを用いて、NNによる機械学習を行う。入力信号がデータ信号である場合、機械学習の結果を用いた判定を行い、判定結果を出力する。領域判定回路51が領域選択回路41の一部(領域判定回路412)である場合は、判定結果は1xnsスイッチ413の制御信号として使用される。
【0042】
図8は、2分岐の領域選択回路41を3層組み合わせて16QAM信号を判定する構成例を示す図である。図9は、2分岐の領域選択回路41を3層組み合わせて16QAM信号を判定する構成の処理の概略を示す図である。領域選択層40_1では、図9の第1層に示されるように、16QAMコンスタレーションを左右2つの領域に分け、機械学習のトレーニングが行われる。
【0043】
領域選択層40_2では、図9の第2層に示されるように、左右各々の領域を上下に分けて機械学習のトレーニングが行われる。以下同様に、領域が16分割されるまでこのような領域分割が繰り返される。すなわち、図8の具体例では、全ての領域選択回路41においてL(m,n)=2と設定され、且つ、全ての領域判定回路51においてL(x,n)=2と設定されている。また、領域判定回路51は、サポートベクトルマシンを用いた1対1方式の機械学習により受信シンボルを2個の領域のうちいずれか一つに分類する。
【0044】
本実施形態では、必要な機械学習回路数(領域判定回路412及び領域判定回路51の数)は15個となり、従来方式で必要な4個と比べると機械学習回路数は増加する。しかし、個々の機械学習回路の内部変数が減少するため、全体での内部変数の数は同程度となる。一方、トレーニング(機械学習処理)を終了してシンボルの判定を行う際には、例えば第1層(領域選択層40_1)で受信シンボルが右側の領域に属すると判定されると、それ以降の計算では左側の領域の演算は行われない。このため、従来方式と比べて演算量及び計算実行時間を減らすことができる。この例では領域2分割を繰り返すように仮定したが、2分割以上の多分割でも良いし、階層ごとに分割数が異なっても良い。同じ階層内の異なる領域において分割数が異なっても良い。
【0045】
図10は、SVMの原理を示す図である。○で示す受信シンボルと△で示す受信シンボルとを、できるだけ低い謝り率で判別できるような境界線を引きたい。SVMの機械学習のトレーニング時には、境界線から○、△各々の領域の内側にマージン領域が設定される。そして、各々の領域から見てマージン領域の外側にある受信シンボルのみが判定に使用される。以下この受信シンボルをサポートベクトルと呼ぶ。マージン領域の内側にある受信シンボルは、判定には使用されない。このため、トレーニング時において、マージン領域の外側にある受信シンボルの数を減らせば、データ判定時の演算量を減らすことができる。このような処理が行われることで、判定に当たって無視できる行列係数が増加するため、パラメータが減少し、データ判定時の演算量を減らすことができる。NNの場合は、内部変数のうち0に近いものをあえて削除することで、データ判定時の演算量を減らすことができる。
【0046】
図11は、シミュレーション結果を示す図である。図中の既存方式は、従来技術による非線形補償である。提案方式1は、図8にて説明した領域分割手順により1層につき2分割ずつの非線形補償を行なったものである。提案方式2はSVMを用いた総当たり方式により1層につき4分割ずつの非線形補償を行なったものである。16QAM、64QAM、256QAMの3つのパターンにてシミュレーションを行ない、1シンボルの判定が完了するまでに演算に使用するSVの総数をカウントし、その平均値を算出した。同時にQ値についても確認した。SVMのカーネル関数にはRBFカーネルを使用し、ハイパーパラメーターはシミュレーション条件毎にSV数が最小となる最適値に設定している。非線形歪みについてはQAM信号の各々のシンボル点をその強度に比例して平均10度回転させることにより模擬している。いずれの条件でもSV数の減少とQ値の上昇が認められ、本提案の効果が確認できる。
【0047】
本実施形態における各回路は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーとメモリーとを用いて構成されてもよい。本実施形態における各回路の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されても良い。上記のプログラムは、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記録されても良い。コンピューター読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM、半導体記憶装置(例えばSSD:Solid State Drive)等の可搬媒体、コンピューターシステムに内蔵されるハードディスクや半導体記憶装置等の記憶装置である。上記のプログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0048】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、光通信に適用可能である。
【符号の説明】
【0050】
100…光通信システム、10…送信装置、11…多重装置、12…光変調装置、121…送信信号選択部、122…光変調部、20…受信装置、21…光復調装置、22…分離装置、211…分散補償部、212…受信シンボル判定部、30…制御装置、1211…トレーニング制御回路、1212…選択スイッチ、2121…トレーニング制御回路、2122…判定部、40…領域選択層、41…領域選択回路、50…領域判定層、51…領域判定回路、60…多重化回路、411…2分岐回路、412…領域判定回路、413…1xnsスイッチ、511…SVM回路、512…NN回路
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