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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/06 20060101AFI20241127BHJP
   B60W 40/107 20120101ALI20241127BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20241127BHJP
【FI】
B60W30/06
B60W40/107
B60W60/00
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021186550
(22)【出願日】2021-11-16
(65)【公開番号】P2023073839
(43)【公開日】2023-05-26
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 達士
【審査官】鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-062704(JP,A)
【文献】特開2008-030539(JP,A)
【文献】特開2007-255382(JP,A)
【文献】特開2006-160077(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00- 1/16
B60R 99/00
B62D 6/00- 6/10
B60T 7/12- 8/1769
B60T 8/32- 8/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に駆動力を付与する駆動装置と、
前記車両に制動力を付与する制動装置と、
前記車両の実際の加速度を表す実加速度が、前記車両が予め設定された目標停止位置で停止するように前記車両を走行させるための目標加速度と一致するように前記駆動装置及び前記制動装置を制御する制御ユニットと、
を備え、
前記制御ユニットは、
所定時間が経過する毎に前記目標加速度を取得し、
今回取得した前記目標加速度である今回目標加速度と前回取得した前記目標加速度である前回目標加速度との差を表す変化量の大きさが閾値変化量を超えた場合、前記今回目標加速度を前記変化量の大きさが前記閾値変化量を超えないような値に設定し、
通常時よりも大きな前記駆動力又は前記制動力が必要となる場合に成立する所定の緊急条件が成立した場合、前記緊急条件が成立しない場合と比べて、前記閾値変化量を大きな値に設定する、
ように構成され、
更に、前記制御ユニットは、
前記車両の走行を妨げる外乱の大きさを表す外乱値が閾値以上であるとの第1条件、
前記実加速度が、前記目標停止位置までの残りの距離を表す残距離に基いて設定される閾値加速度以上であるとの第2条件、
前記車両が前記目標停止位置を通過したとの第3条件、及び、
前記残距離が所定の閾値距離以下となったとの第4条件、
の何れか一つが成立した場合、前記緊急条件が成立したと判定し、
前記第1条件乃至前記第3条件の何れか一つが成立した場合、前記第4条件が成立した場合と比べて、前記閾値変化量を大きな値に設定する、
ように構成された
車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を予め設定された目標停止位置で停止するように車両を走行させる車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両を目標停止位置で停止するように車両を目標停止位置まで走行させる車両制御装置が知られている。このような車両制御装置は、車両の加速度である実加速度が「目標停止位置で停止するように車両を走行させるための目標加速度」と一致するように車両の駆動装置及び制動装置を制御する。駆動装置は車両に駆動力を付与する装置であり、制動装置は車両に制動力を付与する装置である。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の車両制御装置(以下、「従来装置」と称呼する。)は、車両が目標停止位置への走行中に車両の走行を妨げる外乱により車両が停止した場合に目標加速度を増大させる。これにより、従来装置は、外乱により車両が停止したとしても、その外乱に抗して車両を走行させることにより目標停止位置まで車両を走行させる可能性を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-15402号公報
【発明の概要】
【0005】
駆動装置及び制動装置の少なくとも一方に制御ヒステリシスがある場合、実加速度が目標加速度と一致するまでにかかる時間が長くなる。これにより、目標加速度が急激に増大したり急激に減少したりする可能性がある。このような目標加速度の急激な増減が繰り返されると、車両は急加速及び急減速を繰り返して車両が上下方向に振動する可能性がある。
【0006】
このような目標加速度の急激な増減が発生する可能性を低減するために、本発明者は、次の構成を備える車両制御装置を検討している。上記構成は、今回取得した目標加速度(今回目標加速度)と前回取得した目標加速度(前回目標加速度)との差を表す変化量の大きさが閾値変化量を超えないように今回目標加速度が設定される構成である。この構成を「変化量リミッタ」と称呼する場合がある。
【0007】
このような変化量リミッタを備える車両制御装置は、必要な目標加速度の大きさよりも小さな大きさの目標加速度に基いて駆動装置及び制動装置を制御する可能性がある。この場合、必要な駆動力又は制動力が車両に付与されない可能性がある。もし、外乱が発生している場合に外乱に抗して車両が走行するために必要な駆動力が車両に付与されなければ、車両が停止してしまう。もし、車両が目標停止位置で停止するために必要な制動力が車両に付与されなければ、車両が目標停止位置で停止できなくなる。
【0008】
本発明は前述した課題に対処するためになされたものである。即ち、本発明の目的の一つは、駆動装置及び制動装置の少なくとも一方に制御ヒステリシスがある場合であっても、通常時には車両の振動を低減させ、通常時よりも大きな駆動力又は制動力が必要となる場合には必要な目標加速度で駆動装置及び制動装置を制御できる車両制御装置を提供することにある。
【0009】
本発明の車両制御装置(以下、「本発明装置」とも呼称する。)は、
車両に駆動力を付与する駆動装置(34a)と、
前記車両に制動力を付与する制動装置(44a)と、
前記車両の実際の加速度を表す実加速度が、前記車両が予め設定された目標停止位置で停止するように前記車両を走行させるための目標加速度と一致するように前記駆動装置及び前記制動装置を制御する制御ユニット(20、30、40)と、
を備え、
前記制御ユニットは、
所定時間が経過する毎に前記目標加速度を取得し(ステップ325)、
今回取得した前記目標加速度である今回目標加速度と前回取得した前記目標加速度である前回目標加速度との差を表す変化量の大きさが閾値変化量を超えた場合(ステップ335「No」)、前記今回目標加速度を前記変化量の大きさが前記閾値変化量を超えないような値に設定し(ステップ355)、
通常時よりも大きな前記駆動力又は前記制動力が必要となる場合に成立する所定の緊急条件が成立した場合(ステップ515「Yes」、ステップ535「Yes」、ステップ545「Yes」)、前記緊急条件が成立しない場合と比べて(ステップ545「No」、ステップ555)、前記閾値変化量を大きな値に設定する(ステップ520、ステップ550)、
ように構成されている。
【0010】
本発明装置は、今回目標加速度を「変化量の大きさが閾値変化量を超えないような値」に設定する。これにより、駆動装置及び制動装置の少なくとも一方に制御ヒステリシスがある場合であっても、車両が急激に加速度及び減速することを防止できる。この結果、車両VAが振動してしまう可能性を低減できる。
【0011】
更に、本発明装置は、緊急条件が成立している場合には、緊急条件が成立していない場合に比べて、閾値変化量を大きな値に設定する。これにより、通常時よりも大きな駆動力又は制動力が必要となる場合には、通常時よりも目標加速度が大きく変化することが許容される。この結果、通常時よりも大きな駆動力が必要となる場合には、駆動装置に必要な駆動力を車両に付与できる可能性を高めることができ、通常時よりも大きな制動力が必要となる場合には、駆動装置及び制動装置に必要な制動力を車両に付与できる可能性を高めることができる。
【0012】
本発明装置の一態様において、
前記制御ユニットは、前記車両の走行を妨げる外乱の大きさを表す外乱値、及び、前記目標停止位置までの残りの距離を表す残距離に基いて、前記緊急条件が成立したか否かを判定するように構成されている(ステップ515、ステップ525、ステップ540、ステップ545)。
【0013】
外乱値が大きければ、車両が外乱に抗して走行するためにより大きな駆動力が必要となる可能性が高い。残距離が短ければ、車両が目標停止位置に停止するためによりも大きな制動力が必要となる可能性が高い。このような外乱値及び残距離に基いて緊急条件が成立したか否かが判定されるため、通常時よりも大きな前記駆動力又は前記制動力が必要となる場合に緊急条件が成立したと判定される確実性(緊急条件の判定の確実性)を高めることができる。
【0014】
上記態様において、
前記制御ユニットは、
前記外乱値が閾値以上であるとの第1条件(ステップ515)、
前記実加速度が、前記残距離基いてに設定される閾値加速度以上であるとの第2条件(ステップ535)、
前記車両が前記目標停止位置を通過したとの第3条件(ステップ540)、及び、
前記残距離が所定の閾値距離以下となったとの第4条件(ステップ545)、
の何れか一つが成立した場合、前記緊急条件が成立したと判定するように構成されている。
【0015】
第1条件は大きな駆動力が必要となる可能性が高い場合に成立する。第2条件及び第4条件は、車両が目標停止位置で停止するために大きな制動力が必要となる可能性が高い場合に成立する。第3条件は、目標停止位置を通過してしまっているときに成立する。このため、第3条件は、即座に車両を停止させる必要があるため、大きな制動力が必要となる可能性が高い場合に成立する。このような第1条件乃至第4条件の何れか一つが成立した場合、緊急条件が成立したと判定されるため、上記緊急条件の判定の確実性を高めることができる。
【0016】
上記態様において、
前記制御ユニットは、前記第1条件乃至前記第3条件の何れか一つが成立した場合、前記第4条件が成立した場合と比べて(ステップ550)、前記閾値変化量を大きな値に設定する(ステップ520)ように構成されている。
【0017】
第1条件乃至第3条件の何れか一つが成立した場合には、「大きな駆動力又は制動力」が必要となる緊急度が、第4条件が成立した場合よりも高いため、いち早く必要とされる駆動力又は制動力を車両に付与する必要がある。このため、第1条件乃至第3条件の何れか一つが成立した場合、第4条件が成立した場合と比べて、閾値変化量が大きな値に設定される。これにより、上記車両が振動する可能性をより低減しつつ、駆動装置及び制動装置に必要な制動力を車両に付与できる可能性をより高めることができる。
【0018】
なお、上記説明においては、発明の理解を助けるために、後述する実施形態に対応する発明の構成に対し、その実施形態で用いた名称及び/又は符号を括弧書きで添えている。しかしながら、発明の各構成要素は、前記名称及び/又は符号によって規定される実施形態に限定されるものではない。本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、以下の図面を参照しつつ記述される本発明の実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の実施形態に係る車両制御装置の概略構成図である。
図2図2は、緊急条件の説明図である。
図3図3は、駐車ECUのCPUが実行する自動駐車ルーチンを表すフローチャートである。
図4図4は、駐車ECUのCPUが実行する終了判定ルーチンを表すフローチャートである。
図5図5は、駐車ECUのCPUが実行する閾値変化量設定ルーチンを表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<構成>
図1に示したように、本実施形態に係る車両制御装置10(以下、「本制御装置10」と称呼する。)は、車両VAに搭載(適用)されている。本制御装置10は、駐車ECU20、駆動ECU30、ブレーキECU40及びステアリングECU50を備える。これらのECU20、30、40及び50は、図示しないCAN(Controller Area Network)を介して互いにデータを送受信できるように接続されている。
【0021】
ECUは、エレクトロニックコントロールユニットの略称であり、CPU、ROM、RAM及びインターフェース等を含むマイクロコンピュータを主要構成部品として有する電子制御回路である。ECUを「制御ユニット」又は「コントローラ」と称呼する場合もある。CPUは、メモリ(ROM)に格納されたインストラクション(ルーチン)を実行することにより各種機能を実現する。上記ECU20、30、40及び50の総て又は幾つかは、一つのECUに統合されてもよい。
【0022】
本制御装置10は、複数のカメラ22、複数のソナー24、加速度センサ26、複数の車輪速センサ28及び自動駐車スイッチ29を備える。これらは22乃至29は駐車ECU20に対してデータを送受信できるように駐車ECU20と接続されている。
【0023】
複数のカメラ22は、前方カメラ、後方カメラ、左側方カメラ及び右側方カメラを含む。複数のカメラ22のそれぞれは、所定時間が経過する毎に、以下に述べる領域を撮影することにより画像データを生成し、その画像データを駐車ECU20に送信する。前方カメラ、後方カメラ、左側方カメラ及び右側方カメラは、それぞれ、車両VAの前方の領域、車両VAの後方の領域、車両VAの左側方の領域及び車両VAの右側方の領域を撮影する。
【0024】
複数のソナー24は、前方ソナー、後方ソナー、左側方ソナー及び右側方ソナーを含む。複数のソナー24のそれぞれは、以下に述べる領域に音波を送信し、その音波の物体による反射波を受信する。複数のソナー24のそれぞれは、所定時間が経過する毎に、送信した音波及び受信した反射波に関する情報(即ち、ソナーデータ)を駐車ECU20に送信する。前方ソナー、後方ソナー、左側方ソナー及び右側方ソナーは、それぞれ、車両VAの前方の領域、車両VAの後方の領域、車両VAの左側方の領域及び車両VAの右側方の領域に音波を送信する。
【0025】
駐車ECU20は、画像データ及びソナーデータに基いて車両VAの周囲に存在する物体を認識し、画像データに基いて車両VAの周囲の路面上の白線を認識する。
【0026】
加速度センサ26は、車両VAの前後方向の実際の加速度Gを測定し、加速度Gを表す検出信号を発生させる。駐車ECU20は、加速度センサ26から受け取った検出信号に基いて車両VAの加速度Gを特定する。なお、この加速度Gを「実加速度」と称呼する場合もある。
【0027】
車輪速センサ28は、車両VAの車輪毎に設けられている。各車輪速センサ28は、対応する車輪が所定角度回転する毎に一つの車輪パルス信号を発生させる。駐車ECU20は、各車輪速センサ28から受け取った車輪パルス信号の単位時間におけるパルス数をカウントし、そのパルス数に基いて各車輪の回転速度を取得する。そして、駐車ECU20は、各車輪の車輪速度に基いて車両VAの速度を示す車速Vsを取得する。一例として、駐車ECU20は、四つの車輪の車輪速度の平均値を車速Vsとして取得する。
【0028】
自動駐車スイッチ29は、車両のステアリングホイール52a付近に配設される。運転者は、自動駐車制御の実行を所望する場合に自動駐車スイッチ29を操作する。自動駐車制御は、車両VAが目標停止位置で停止するように車両VAを目標停止位置まで自動で走行させる制御である。
【0029】
駆動ECU30は、アクセルペダル操作量センサ32及び駆動源アクチュエータ34とデータを送受信できるようにアクセルペダル操作量センサ32及び駆動源アクチュエータ34に接続されている。
【0030】
アクセルペダル操作量センサ32は、運転者によるアクセルペダル32aの操作量であるアクセルペダル操作量APを検出し、アクセルペダル操作量APを表す信号を発生する。駆動ECU30は、アクセルペダル操作量センサ32が発生する信号に基いてアクセルペダル操作量APを特定する。
【0031】
駆動源アクチュエータ34は、車両VAに付与される駆動力を発生する駆動源(電動機及び内燃機関等)34aと接続されている。なお、駆動源34aは「駆動装置」と称呼する場合もある。駆動ECU30は、駆動源アクチュエータ34を制御することにより駆動源34aの運転状態を変更する。これにより、駆動ECU30は、車両VAに付与される駆動力を調整できる。駆動ECU30は、アクセルペダル操作量AP又は駐車ECU20からの要求量が大きいほど車両VAに付与される駆動力が大きくなるように、駆動源アクチュエータ34を制御する。
【0032】
ブレーキECU40は、ブレーキペダル操作量センサ42及びブレーキアクチュエータ44とデータを送受信できるようにブレーキペダル操作量センサ42及びブレーキアクチュエータ44に接続されている。
【0033】
ブレーキペダル操作量センサ42は、ブレーキペダル42aの操作量であるブレーキペダル操作量BPを検出し、ブレーキペダル操作量BPを表す信号を発生する。ブレーキECU40は、ブレーキペダル操作量センサ42が発生する信号に基いてブレーキペダル操作量BPを特定する。
【0034】
ブレーキアクチュエータ44は、周知の油圧式の制動装置44aと接続されている。ブレーキECU40はブレーキアクチュエータ44を制御することにより、制動装置44aが発生する摩擦制動力を変更する。これにより、ブレーキECU40は、車両VAに付与される制動力を調整できる。ブレーキECU40は、ブレーキペダル操作量BP又は駐車ECU20からの要求量が大きいほど車両VAに付与される制動力が大きくなるように、ブレーキアクチュエータ44を制御する。
【0035】
ステアリングECU50は、操舵角センサ52、操舵トルクセンサ54及び操舵モータ56に接続されている。
【0036】
操舵角センサ52は、ステアリングホイール52aの中立位置からの回転角度を操舵角θsとして検出し、操舵角θsを表す信号を発生する。ステアリングECU50は、操舵角センサ52が発生する信号に基いて操舵角θsを特定する。
【0037】
操舵トルクセンサ54は、ステアリングホイール52aに連結されたステアリングシャフト54aに作用するトルクを表す操舵トルクTrを検出し、操舵トルクTrを表す信号を発生する。ステアリングECU50は、操舵トルクセンサ54が発生する信号に基いて操舵トルクTrを特定する。
【0038】
操舵モータ56は、図示しない車両バッテリから供給される電力に応じたトルクを発生する。ステアリングECU50は、操舵モータ56に供給される電力の向き及び大きさを制御する。操舵モータ56は、上記トルクを車両VAの操舵機構56aに伝達可能に組み込まれている。操舵機構56aは、ステアリングホイール52a、ステアリングシャフト54a及び操舵用ギア機構等を含む。操舵モータ56が発生させるトルクは、操舵アシストトルクが発生させ、左右の操舵輪を操舵(転舵)させる。
【0039】
ステアリングECU50は、通常時においては、操舵トルクTrに応じた操舵アシストトルクを操舵モータ56を用いて発生させる。更に、ステアリングECU50は、「目標操舵角を含む操舵指令」を駐車ECU20から受信した場合、操舵角θsが「受信した操舵指令に含まれる目標操舵角」に一致するように操舵モータ56を制御し、それにより操舵輪を自動的に転舵する。
【0040】
(作動の概要)
本制御装置10は、自動駐車制御を実行する。本制御装置10は、自動駐車制御を実行している間、所定時間が経過する毎に、車両VAが「目標停止位置までの走行ルート」に沿って走行し且つ目標停止位置にて車両VAが停止するための目標加速度Gtgtを取得する。本制御装置10は、今回目標加速度Gtgtから前回目標加速度Gtgt’を減算することにより変化量ΔGtgtを取得する。今回目標加速度Gtgtは現時点にて取得した(今回取得した)目標加速度Gtgtである。前回目標加速度Gtgt’は現時点から所定時間前に取得した(前回取得した)目標加速度Gtgtである。
【0041】
本制御装置10は、変化量ΔGtgtの大きさ(|ΔGtgt|)が閾値変化量ΔGthを超えないように目標加速度Gtgtを設定し、その目標加速度Gtgtを含む加減速指令を駆動ECU30及びブレーキECU40に送信する。
【0042】
駆動ECU30及びブレーキECU40は、それぞれ、加速度Gが「加減速指令に含まれる目標加速度Gtgt」と一致するように、駆動源アクチュエータ34及びブレーキアクチュエータ44を介して駆動源34a及び制動装置44aを制御する。目標加速度Gtgtが0よりも大きな値である場合、駆動ECU30及びブレーキECU40は、それぞれ、車両VAを加速させる(即ち、車両VAに駆動力を付与する)ように駆動源34a及び制動装置44aを制御する。目標加速度Gtgtが0よりも小さな値である場合、駆動ECU30及びブレーキECU40は、それぞれ、車両VAを減速させる(即ち、車両VAに制動力を付与する)ように駆動源34a及び制動装置44aを制御する。
【0043】
本制御装置10は、通常時よりも大きな駆動力又は制動力が必要となる場合に成立する所定の緊急条件(図2を参照しながら後述する。)が成立したか否かを判定している。緊急条件が成立しない場合、本制御装置10は、閾値変化量ΔGthを通常閾値Gnthに設定する。これに対し、緊急条件が成立した場合、本制御装置10は、閾値変化量ΔGthを緊急閾値Gkthに設定する。緊急閾値Gkthは通常閾値Gnthよりも大きな値に設定されている。
【0044】
本制御装置10は、緊急条件が成立した場合には、緊急条件が成立しない場合に比べて、閾値変化量ΔGthを増大させる。これにより、本制御装置10は、通常時には、目標加速度Gtgtの急激な増減の繰り返しによって車両VAが振動してしまう可能性を低減できる。更に、本制御装置10は、通常時よりも大きな駆動力又は制動力が必要となる場合には、必要な目標加速度で駆動源34a及び制動装置44aを制御できる。よって、車両VAの進行を妨げる外乱が発生しても車両VAが目標停止位置まで走行できる可能性を高め、車両VAを目標停止位置で正確に停止できる可能性を高めることができる。
【0045】
(緊急条件)
図2を参照しながら、緊急条件について説明する。本制御装置10は、以下の第1条件乃至第4条件の何れかが成立した場合、緊急条件が成立したと判定する。
【0046】
<第1条件>
本制御装置10は、車両VAの走行を妨げる外乱の大きさを表す外乱値Dvが閾値Dvth以上である場合、第1条件が成立したと判定する。
本制御装置10は、目標加速度Gtgtから加速度Gを減算することにより、外乱値Dvを取得する。外乱値Dvが大きいほど、外乱が大きいことを表す。
例えば、図2に示したように車両VAの前輪が段差と接触している場合、段差により車両VAの走行が妨げられ、車両VAは加速できなくなる。このため、上記外乱値Dvは通常時よりも大きくなり、第1条件が成立する可能性が高くなる。第1条件は、通常時よりも大きな駆動力が必要となる場合に成立する条件である。
【0047】
<第2条件>
本制御装置10は、加速度Gが「目標停止位置までの残りの距離を表す残距離Dに基いて設定される閾値加速度Gth」以上である場合、第2条件が成立したと判定する。一例としては、閾値加速度Gthは、残距離Dが短くなるにつれて0よりも大きな値から小さくなるように設定されている。この例をより詳細に説明すると、閾値加速度Gthは、通常閾値Gnthの範囲内で目標加速度Gtgtの変化が許容されるとの仮定下で、残距離Dが「0」となったときに(即ち、車両VAが目標停止位置に到達したときに)加速度Gが「0」となる値に予め設定されている。従って、加速度Gが閾値加速度Gth以上であれば、車両VAが目標停止位置に到達したときに加速度Gが「0」とならずに車両VAが停止できない可能性がある。よって、第2条件は、通常時より大きな制動力が必要となる場合に成立する条件である。
【0048】
なお、残距離Dは、以下のように取得される。本制御装置10は、画像データ及びソナーデータに基いて、所定時間が経過する毎に車両VAの現在位置から目標停止位置までの走行ルートに沿って移動した場合に車両VAが移動する距離を残距離Dとして取得する。なお、例えば、カメラ22と目標停止位置との間に存在する立体物が原因となり画像データに目標停止位置が含まれない場合がある。この場合には、画像データ及びソナーデータに基生きて上記残距離Dが取得できない。このような場合には、本制御装置10は、車輪速センサ28からの車輪パルス信号に基いて前回の残距離Dの取得時点から車両VAが実際に移動した距離である実測距離Dmを特定し、前回の残距離Dから実測距離Dmを減算することにより残距離Dを取得する。
【0049】
<第3条件>
本制御装置10は、車両VAが目標停止位置に到達しても車両VAが停止していないと残距離Dに基いて判定した場合、第3条件が成立したと判定する。より詳細に説明すると、本制御装置10は、残距離Dが「0」である場合に車速Vsが「0」でない場合、第3条件が成立したと判定する。第3条件が成立した場合、車両VAはすぐに停止する必要がある。よって、第3条件は、通常時よりも大きな制動力が必要となる場合に成立する条件である。
【0050】
<第4条件>
本制御装置10は、残距離Dが閾値距離Dth以下である場合、第4条件が成立したと判定する。残距離Dが閾値距離Dth以下である場合、車両VAは目標停止位置に比較的接近しており、車両VAが目標停止位置で停止するための急激な減速を許容する必要がある。よって、第4条件は、通常時よりも大きな制動力が必要となる場合に成立する条件である。
【0051】
ここで、第1緊急閾値Gkth1及び第2緊急閾値Gkth2が緊急閾値Gkthとして用意されている。第1緊急閾値Gkth1は第2緊急閾値Gkth2よりも大きな値に設定されている。通常閾値Gnth、第1緊急閾値Gkth1及び第2緊急閾値Gkth2の中で通常閾値Gnthが最も小さく、第1緊急閾値Gkth1が最も大きくなる。
【0052】
第1条件乃至第3条件の何れかが成立した場合、本制御装置10は、閾値変化量ΔGthを第1緊急閾値Gkth1に設定する。
第4条件が成立した場合、本制御装置10は、閾値変化量ΔGthを第2緊急閾値Gkth2に設定する。
第1条件乃至第3条件の何れか一つが成立した場合には、「大きな駆動力又は制動力」が必要となる緊急度が、第4条件が成立した場合よりも高いため、いち早く必要とされる駆動力又は制動力を車両に付与する必要がある。このため、第1条件乃至第3条件の何れか一つが成立した場合、第4条件が成立した場合と比べて、閾値変化量ΔGthが「第2緊急閾値Gkth2よりも大きな第1緊急閾値Gkth1」に設定される。
【0053】
第1条件乃至第4条件の何れも成立しない場合、即ち、緊急条件が成立しない場合、本制御装置10は、閾値変化量ΔGthを通常閾値Gnthに設定する。
【0054】
以上により、本制御装置10は、外乱値Dv及び残距離Dに基いて第1条件乃至第4条件の何れか(即ち、緊急条件)が成立したか否かを判定しており、緊急条件が成立した場合には、緊急条件が成立していない場合に比べて大きな値の閾値変化量ΔGthを設定する。
【0055】
(具体的作動)
<自動駐車ルーチン>
駐車ECU20のCPU(以下、「CPU」と表記した場合、特に断りがない限り、駐車ECU20のCPUを指す。)は、図3にフローチャートにより示した自動駐車ルーチンを所定時間が経過する毎に実行する。
【0056】
従って、所定のタイミングになると、CPUは、図3のステップ300から処理を開始し、ステップ305に進み、実行フラグXexeの値が「0」であるか否かを判定する。
【0057】
実行フラグXexeの値は、自動駐車制御が実行される場合に「1」に設定され、自動駐車制御が実行されない場合に「0」に設定される。なお、実行フラグXexeの値は、イニシャルルーチンにて「0」に設定される。イニシャルルーチンは、図示しないイグニッションスイッチがオフ位置からオン位置へと変更されたときにCPUによって実行される。
【0058】
実行フラグXexeの値が「0」である場合、CPUは、ステップ305にて「Yes」と判定し、ステップ310に進む。ステップ310にて、CPUは、運転者が自動駐車スイッチ29を操作したか否かを判定する。
【0059】
運転者が自動駐車スイッチ29を操作していない場合、CPUは、ステップ310にて「No」と判定し、ステップ395に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0060】
一方、運転者が自動駐車スイッチ29を操作した場合、CPUは、ステップ310にて「Yes」と判定し、ステップ315乃至ステップ335を順に実行する。
【0061】
ステップ315:CPUは、実行フラグXexeの値を「1」に設定するとともに、閾値変化量ΔGthを通常閾値Gnthに設定する。
ステップ320:CPUは、目標停止位置を設定する。
詳細には、CPUは、画像データ及びソナーデータに基いて車両VAが駐車可能なスペースを探索し、車両VAの現在位置から最も近いスペースと車両VAとの位置関係をディスプレイに表示する。運転者は、車両VAをそのスペースに駐車することに同意する場合、図示しない決定ボタンを操作する。運転者が決定ボタンを操作した場合、CPUは、上記スペースを目標停止位置に設定する。
【0062】
なお、目標停止位置を設定する処理には種々の処理があり、上記した例に限定されない。例えば、運転者がディスプレイに表示された車両VAの周囲の画像から目標停止位置を決定し、CPUは、運転者が決定した位置を目標停止位置に設定してもよい。
【0063】
ステップ325:CPUは、目標加速度Gtgt(今回目標加速度Gtgt)を取得する。
目標加速度Gtgtを処理の詳細は、特開2020-15402号公報に記載されており、ここでは簡単に説明する。
まず、加速度フィードフォワード項(加速度FF項)に位置・速度フィートバック項(位置・速度FB項)が加算され、第1目標加速度が取得される。そして、第1目標加速度に加速度フィードバック項(加速度FB項)が加算され、第2目標加速度が取得される。最後に、第2目標加速度に外乱フィードフォワード項(外乱FF項)が加算され、目標加速度が取得される。
【0064】
<加速度FF項>
加速度FF項として、車両VAの現在位置から目標停止位置までの走行ルートに沿って車両VAを走行させるための加速度が用いられる。
<位置・速度FB項>
位置・速度FB項は、目標車速及び目標停止位置に実際の車速Vs及び車両VAの位置を一致させるためのフィードバック項である。位置・速度FB項は、目標車速及び目標停止位置と車速Vs及び車両VAの現在位置との差分に対する比例制御により取得される。
【0065】
<加速度FB項>
加速度FB項は、目標加速度Gtgtに加速度Gを一致させるためのフィードバック項である。加速度FB項は、目標加速度Gtgtと加速度Gとの差分に対する比例積分制御により取得される。
<外乱FF項>
外乱FF項は、外乱の影響を補正するためのフィードフォワード項である。外乱FF項は、可観測外乱FF項と未知外乱FF項とが加算されることにより取得される。例えば、可観測外乱FF項は、加速度Gに基いて取得される路面勾配に基き取得される。未知外乱FF項は、上記外乱値Dvに基き取得される。
【0066】
なお、目標加速度Gtgtの取得方法は上記した方法に限定されない。
【0067】
ステップ330:CPUは、今回目標加速度Gtgtから前回目標加速度Gtgt’を減算することにより変化量ΔGtgtを取得する。
ステップ335:CPUは、変化量ΔGtgtの大きさ(|ΔGtgt|)が閾値変化量ΔGth以下であるか否かを判定する。
【0068】
変化量ΔGtgtの大きさが閾値変化量ΔGth以下である場合、CPUは、ステップ335にて「Yes」と判定し、ステップ340乃至ステップ350を順に実行する。
【0069】
ステップ340:CPUは、車両VAが走行ルートに沿って走行するための目標転舵角θtgtを取得する。
ステップ345:CPUは、今回目標加速度Gtgtを含む加減速指令を駆動ECU30及びブレーキECU40に送信するとともに、目標転舵角θtgtを含む操舵指令をステアリングECU50に送信する。
ステップ350:CPUは、今回目標加速度Gtgtを前回目標加速度Gtgt’としてRAMに記憶する。
その後、CPUは、ステップ395に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0070】
CPUがステップ335に進んだときに変化量ΔGtgtの大きさが閾値変化量ΔGthよりも大きい場合、CPUは、ステップ335にて「No」と判定し、ステップ355に進む。ステップ355にて、CPUは、今回目標加速度Gtgtを変化量ΔGtgtの大きさが閾値変化量ΔGthよりも小さくなるような値に設定する。
【0071】
詳細には、変化量ΔGtgtが「0」以上である場合(即ち、今回目標加速度Gtgtが前回目標加速度Gtgt’以上である場合)、CPUは、今回目標加速度Gtgtを「前回目標加速度Gtgt’と閾値変化量ΔGthとを加算することにより得られた値」に設定する。
【0072】
これに対し、変化量ΔGtgtが「0」未満である場合(即ち、今回目標加速度Gtgtが前回目標加速度Gtgt’未満である場合)、CPUは、今回目標加速度Gtgtを「前回目標加速度Gtgt’から閾値変化量ΔGthを減算することにより得られた値」に設定する。
【0073】
CPUは、ステップ355の実行後、ステップ340乃至ステップ350を実行し、ステップ395に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0074】
一方、CPUがステップ305に進んだときに実行フラグXexeの値が「1」である場合、CPUは、ステップ305にて「No」と判定し、ステップ325に進む。
【0075】
<終了判定ルーチン>
CPUは、図4にフローチャートにより示した終了判定ルーチンを所定時間が経過する毎に実行する。
【0076】
従って、所定のタイミングになると、CPUは、図4のステップ400から処理を開始し、ステップ405に進み、実行フラグXexeの値が「1」であるか否かを判定する。
【0077】
実行フラグXexeの値が「0」である場合、CPUは、ステップ405にて「No」と判定し、ステップ495に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0078】
これに対し、実行フラグXexeの値が「1」である場合、CPUは、ステップ405にて「Yes」と判定し、ステップ410に進む。ステップ410にて、CPUは、通過フラグXovrの値が「0」であるか否かを判定する。
【0079】
通過フラグXovrの値は、車両VAが目標停止位置に到達したにもかかわらず車両VAが停止してなかった場合、「1」に設定される。通過フラグXovrの値は、車両VAが目標停止位置を通過した後に車両VAが停止した場合、「0」に設定される。なお、通過フラグXovrの値は、イニシャルルーチンにて「0」に設定される。
【0080】
通過フラグXovrの値が「0」である場合、CPUは、ステップ410にて「Yes」と判定し、ステップ415に進む。ステップ415にて、CPUは、車両VAが目標停止位置に到達したか否かを判定する。
【0081】
車両VAが目標停止位置に到達していない場合、CPUは、ステップ415にて「No」と判定し、ステップ495に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0082】
これに対し、車両VAが目標停止位置に到達した場合、CPUは、ステップ415にて「Yes」と判定し、ステップ420に進む。ステップ420にて、CPUは、車両VAが停止したか否か、即ち、車速Vsが「0」であるか否かを判定する。
【0083】
車両VAが停止した場合、CPUは、ステップ420にて「Yes」と判定し、ステップ425及びステップ430を順に実行する。
ステップ425:CPUは、実行フラグXexeの値を「0」に設定する。
ステップ430:CPUは、通過フラグXovrの値が「1」であるか否かを判定する。
【0084】
通過フラグXovrの値が「0」である場合、CPUは、ステップ430にて「No」と判定し、ステップ435に進む。ステップ435にて、CPUは、図示しないパーキングブレーキアクチュエータを作動させるとともに、シフトポジションをパーキングに変更する。パーキングブレーキアクチュエータが作動すると車輪に摩擦制動力が付与され、シフトポジションがパーキングに変更されることにより、車両VAの停止状態が維持される。
【0085】
その後、CPUは、ステップ495に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0086】
一方、車両VAが目標停止位置に到達した場合に車両VAが停止していない場合、CPUは、ステップ420にて「No」と判定し、ステップ440に進む。ステップ440にて、CPUは、通過フラグXovrの値を「1」に設定する。その後、CPUは、ステップ495に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0087】
通過フラグXovrの値が「1」に設定された後にCPUが本ルーチンを実行してステップ410に進むと、CPUは、ステップ410にて「No」と判定し、ステップ420に進む。車両VAが目標停止位置を通過した後に車両VAが停止していない場合、CPUは、そのステップ420にて「No」と判定し、ステップ440に進んで通過フラグXovrの値を「1」に設定する。その後、CPUは、ステップ495に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0088】
これに対し、車両VAが目標停止位置を通過した後に車両VAが停止した場合、CPUは、ステップ420にて「Yes」と判定し、ステップ425にて実行フラグXexeの値を「0」に設定する。その後、CPUは、ステップ430にて「Yes」と判定してステップ445に進み、通過フラグXovrの値を「0」に設定し、ステップ435を実行する。その後、CPUは、ステップ495に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0089】
<閾値変化量設定ルーチン>
CPUは、図5にフローチャートにより示した閾値変化量設定ルーチンを所定時間が経過する毎に実行する。
【0090】
従って、所定のタイミングになると、CPUは、図5のステップ500から処理を開始し、ステップ505に進み、実行フラグXexeの値が「1」であるか否かを判定する。
【0091】
実行フラグXexeの値が「0」である場合、CPUは、ステップ505にて「No」と判定し、ステップ595に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0092】
これに対し、実行フラグXexeの値が「1」である場合、CPUは、ステップ505にて「Yes」と判定し、ステップ510及びステップ515を順に実行する。
ステップ510:CPUは、直近に取得された目標加速度Gtgtから加速度Gを減算することにより外乱値Dvを取得する。
ステップ515:CPUは、第1条件が成立したか否か(即ち、外乱値Dvが閾値Dvth以上であるか否か)を判定する。
【0093】
第1条件が成立した場合(外乱値Dvが閾値Dvth以上である場合)、CPUは、ステップ515にて「Yes」と判定し、ステップ520に進む。ステップ520にて、CPUは、閾値変化量ΔGthを第1緊急閾値Gkth1に設定する。その後、CPUは、ステップ595に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0094】
これに対し、第1条件が成立していない場合(外乱値Dvが閾値Dvth未満である場合)、CPUは、ステップ515にて「No」と判定し、ステップ525乃至ステップ535を順に実行する。
【0095】
ステップ525:CPUは、上記したように、残距離Dを取得する。
ステップ530:CPUは、残距離Dに応じた閾値加速度Gthを取得する。
ステップ535:CPUは、第2条件が成立したか否か(加速度Gが閾値加速度Gth以上であるか否か)を判定する。
【0096】
第2条件が成立した場合(加速度Gが閾値加速度Gth以上である場合)、CPUは、ステップ535にて「Yes」と判定してステップ520に進み、閾値変化量ΔGthを第1緊急閾値Gkth1に設定する。その後、CPUは、ステップ595に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0097】
これに対し、第2条件が成立していない場合(加速度Gが閾値加速度Gth未満である場合)、CPUは、ステップ535にて「No」と判定し、ステップ540に進む。ステップ540にて、CPUは、第3条件が成立したか否か(通過フラグXovrの値が「1」に設定されているか否か)を判定する。上記したように、車両VAが目標停止位置にて車両VAが停止していない場合(即ち、車両VAが目標停止位置を通過した場合)、通過フラグXovrの値は「1」に設定される。
【0098】
第3条件が成立した場合(通過フラグXovrの値が「1」に設定されている場合)、CPUは、ステップ540にて「Yes」と判定してステップ520に進み、閾値変化量ΔGthを第1緊急閾値Gkth1に設定する。その後、CPUは、ステップ595に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0099】
これに対し、第3条件が成立していない場合(通過フラグXovrの値が「0」に設定されている場合)、CPUは、ステップ540にて「No」と判定し、ステップ545に進む。ステップ545にて、CPUは、第4条件が成立したか否か(残距離Dが閾値距離Dth以下であるか否か)を判定する。
【0100】
第4条件が成立した場合(残距離Dが閾値距離Dth以下である場合)、CPUは、ステップ545にて「Yes」と判定し、ステップ550に進む。ステップ550にて、CPUは、閾値変化量ΔGthを第2緊急閾値Gkth2に設定する。その後、CPUは、ステップ595に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0101】
第4条件が成立していない場合(残距離Dが閾値距離Dthよりも長い場合)、CPUは、緊急条件が成立していないと判定する。この場合、CPUは、ステップ545にて「No」と判定してステップ555に進み、閾値変化量ΔGthを通常閾値Gnthに設定する。その後、CPUは、ステップ595に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0102】
以上説明した通り、本制御装置10は、今回目標加速度Gtgtを「変化量ΔGtgtが閾値変化量ΔGthを超えないような値」に設定されるので、加速度Gが急激に増減することを防止できる。これにより、駆動源34a及び制動装置44aの少なくとも一方に制御ヒステリシスがある場合であっても、車両VAが急激に加速及び減速することを防止でき、車両VAが振動してしまう可能性を低減できる。
【0103】
更に、本制御装置10は、緊急条件が成立している場合には、緊急条件が成立していない場合よりも、閾値変化量ΔGthを大きな値(第1緊急閾値Gkth1又は第2緊急閾値Gkth2)に設定する。緊急条件は、通常時よりも大きな駆動力又は制動力が必要となる場合に成立する。通常時よりも大きな駆動力が必要となる場合には、駆動源34aに必要な駆動力を車両VAに付与させる可能性を高めることができ、通常時よりも大きな制動力が必要となる場合には、駆動源34a及び制動装置44aに必要な制動力を車両VAに付与させる可能性を高めることができる。
【0104】
本発明は上記実施形態に限定されることなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。
【0105】
(第1変形例)
第1変形例に係る車両制御装置10は、画像データに目標停止位置が含まれる否かにかかわらず、前回取得した残距離Dから「前回から現時点までに車両VAが実際に移動した実測距離Dm」を減算することにより残距離Dを取得してもよい。
【0106】
(第2変形例)
自動駐車制御は、車両VAに運転者が乗車しない状態(運転者が車両VAから降りた状態)で行われてもよい。このような自動駐車制御はリモート自動駐車制御として知られており、例えば、特開2020-104529号公報に記載されている。更に、本制御装置10は、車両VAを目標停止位置で停止するように走行させる制御であれば、適用することができる。例えば、本制御装置10は、駐車している車両VAを自動で出庫させる自動出庫制御にも適用可能である。
【0107】
(第3変形例)
第4条件が成立したか否かに用いる閾値距離Dthは、車両VAが目標停止位置で停止するための所定の停止加速度Gstと残距離Dとの関係に基いて、設定されてもよい。
車両VAが停止するまでにかかる時間は、以下の(1)式で表される。
t=Vsp/Gst ・・・(1)式
(1)式の「Vsp」は、現在の車速Vsである。
【0108】
更に、t秒間に車両VAが走行する距離Dは、以下の(2)式で表される。
【0109】
【数1】
【0110】
(1)式を(2)式に代入すると、停止加速度Gstと残距離Dとの関係は、以下の(3)式で表される。
【0111】
【数2】
【0112】
第3変形例に係る車両制御装置10は、上記(3)式の「Vsp」に現在の車速Vsを適用することにより残距離Dを求める。そして、車両制御装置10は、この残距離Dを閾値距離Dthに設定する。
【0113】
(第4変形例)
車両制御装置10は、エンジン自動車、ハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、プラグインハブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、燃料電池車(FCEV:Fuel Cell Electric Vehicle)及び電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)等の車両に搭載可能である。
【符号の説明】
【0114】
10…車両制御装置、20…駐車ECU、26…加速度センサ、30…駆動ECU、34…駆動源アクチュエータ、34a…駆動源、40…ブレーキECU、44…ブレーキアクチュエータ、44a…制動装置。
図1
図2
図3
図4
図5