(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】有機発光材料および薄膜
(51)【国際特許分類】
C09K 11/06 20060101AFI20241127BHJP
C07D 209/48 20060101ALI20241127BHJP
C07D 487/04 20060101ALI20241127BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
C09K11/06 650
C07D209/48
C07D487/04 136
C09K11/06 645
G01N21/64 Z
(21)【出願番号】P 2021092280
(22)【出願日】2021-06-01
【審査請求日】2023-08-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和3年5月11日第70回高分子学会年次大会の予稿集(70巻1号)をウェブサイトに掲載
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京科学大学
(73)【特許権者】
【識別番号】591067794
【氏名又は名称】JFEケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(72)【発明者】
【氏名】土井 真里奈
(72)【発明者】
【氏名】安藤 慎治
(72)【発明者】
【氏名】佐野 浩介
(72)【発明者】
【氏名】森 浩章
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/061122(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/144074(WO,A1)
【文献】特開2000-063818(JP,A)
【文献】WAKITA, Junji et al.,Molecular Design, Synthesis, and Properties of Highly Fluorescent Polyimides,J. Phys. Chem. B,Vol. 113,2009年,15212-15224
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/06
C07D 209/48
C07D 487/04
G01N 21/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される構造を有する、有機発光材料。
【化1】
前記一般式(I)中、R
1は、下記式(II)~(V)のいずれかで表される芳香族基を示し、R
2は、
シクロヘキシル基を示す
。
【化2】
前記式(II)~(V)中、*は、結合位置を示す。
【請求項2】
請求項
1に記載の有機発光材料がホスト材料に分散した薄膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光材料および薄膜に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、バイオイメージング、偽造防止、ストレージ等に使用される長寿命の発光材料が開発されている。
特許文献1~2には、CaAl2O4、SrAl2O4などの無機材料にレアメタルを添加した無機発光材料が開示されているが、レアメタルの使用や高温処理が必要であり、高コストである。
これに対して、有機化合物は、製造コストが低く、かつ、持続的に使用可能な元素を用いるという利点を有する。そのため、長寿命の有機発光材料の開発が強く望まれており、研究開発が活発化している。
【0003】
有機発光材料による長寿命発光としては、遅延蛍光や燐光発光が知られている。
もっとも、これらの発光は、三重項励起状態を介する発光現象であり、三重項励起状態は、分子運動や分子間励起エネルギー移動を介した無輻射失活の影響により不安定化しやすいため、分子運動が抑制される極低温(液体窒素温度:-196℃付近)と比較して、室温においては、発光寿命や量子収率が大幅に低下する。
また、従来、遅延蛍光や燐光発光の寿命は長くて100ミリ秒程度であったことから、発光寿命が数100ミリ秒から数秒以上にわたる無機発光材料の代替として有機発光材料を使用することはできなかった。
【0004】
しかし、近年、環境問題や資源の枯渇の点から、持続的に使用可能な有機化合物を用いた長寿命の発光材料の開発が強く望まれており、上述した無輻射失活を抑制することで室温において長寿命発光を達成した有機発光材料が報告されている。
【0005】
例えば、発光性を有する低分子有機化合物を誘起ホスト材料に分散させ、電荷分離状態を維持することにより、室温条件下で1時間以上の長寿命発光を示す有機蓄光材料が報告されている(非特許文献1)。
有機蓄光材料は、光照射により励起された電子が誘起ホスト材料中に拡散することで電荷分離状態が長時間維持され、その後、低分子有機化合物において電荷再結合を起こすことで長寿命発光を示す。蓄光を示す有機発光材料は、これまでに開発された有機発光材料に比べて長寿命の発光を示し、かつ、室温で利用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2020-164584号公報
【文献】特開2012-193323号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】R. Kabe et al., NATURE, 550, 384-387, (2017).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述した電荷分離状態は酸素存在下では極めて不安定であり、大気中では消光するため、真空中または不活性化ガス中での利用に限られる。
現在使用されている長寿命の無機発光材料の代替として有機発光材料を用いるためには、室温大気中で長寿命発光を示す必要がある。
【0009】
そこで、本発明は、室温大気中で長寿命発光を示す有機発光材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討した結果、有機発光材料として特定のイミド化合物を採用することにより、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[3]を提供する。
[1]後述する一般式(I)で表される構造を有する、有機発光材料。
[2]後述する一般式(I)中のR2が、シクロヘキシル基を示す、上記[1]に記載の有機発光材料。
[3]上記[1]または[2]に記載の有機発光材料がホスト材料に分散した薄膜。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、室温大気中で長寿命発光を示す有機発光材料を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例1で得られたイミド化合物の分散薄膜の発光スペクトルを示すグラフである。
【
図2】実施例1で得られたイミド化合物の分散薄膜の発光強度減衰曲線を示すグラフである。
【
図3】実施例1で得られたイミド化合物の分散薄膜の励起光照射中の蛍光および燐光の発光強度の時間変化を示すグラフである。
【
図4】実施例1で得られたイミド化合物の分散薄膜の真空条件下での励起光照射中の蛍光および燐光の発光強度の時間変化を示すグラフである。
【
図5】実施例2で得られたイミド化合物の分散薄膜の発光スペクトルを示すグラフである。
【
図6】実施例2で得られたイミド化合物の分散薄膜の発光強度減衰曲線を示すグラフである。
【
図7】実施例2で得られたイミド化合物の分散薄膜の励起光照射中の蛍光および燐光の発光強度の時間変化を示すグラフである。
【
図8】実施例2で得られたイミド化合物の分散薄膜の真空条件下での励起光照射中の蛍光および燐光の発光強度の時間変化を示すグラフである。
【
図9】実施例3で得られたイミド化合物の分散薄膜の発光スペクトルを示すグラフである。
【
図10】実施例3で得られたイミド化合物の分散薄膜の発光強度減衰曲線を示すグラフである。
【
図11】実施例3で得られたイミド化合物の分散薄膜の励起光照射中の蛍光および燐光の発光強度の時間変化を示すグラフである。
【
図12】実施例3で得られたイミド化合物の分散薄膜の真空条件下での励起光照射中の蛍光および燐光の発光強度の時間変化を示すグラフである。
【
図13】実施例4で得られたイミド化合物の分散薄膜の発光スペクトルを示すグラフである。
【
図14】実施例4で得られたイミド化合物の分散薄膜の発光強度減衰曲線を示すグラフである。
【
図15】実施例4で得られたイミド化合物の分散薄膜の励起光照射中の蛍光および燐光の発光強度の時間変化を示すグラフである。
【
図16】実施例4で得られたイミド化合物の分散薄膜の真空条件下での励起光照射中の蛍光および燐光の発光強度の時間変化を示すグラフである。
【
図17】比較例1で得られたイミド化合物の分散薄膜の発光強度減衰曲線を示すグラフである。
【
図18】比較例1で得られたイミド化合物の分散薄膜の励起光照射中の蛍光および燐光の発光強度の時間変化を示すグラフである。
【
図19】比較例2で得られたイミド化合物の分散薄膜の発光スペクトルを示すグラフである。
【
図20】比較例2で得られたイミド化合物の分散薄膜の発光強度減衰曲線を示すグラフである。
【
図21】比較例2で得られたイミド化合物の分散薄膜の励起光照射中の燐光の発光強度の時間変化を示すグラフである。
【
図22】実施例1で得られたイミド化合物(NTMC)の
1H NMRチャートを示すグラフである。
【
図23】実施例1で得られたイミド化合物(NTMC)の粉末IRスペクトルを示すグラフである。
【
図24】実施例2で得られたイミド化合物(sBPDAMC)の
1H NMRチャートを示すグラフである。
【
図25】実施例2で得られたイミド化合物(sBPDAMC)の粉末IRスペクトルを示すグラフである。
【
図26】実施例3で得られたイミド化合物(ODPAMC)の
1H NMRチャートを示すグラフである。
【
図27】実施例3で得られたイミド化合物(ODPAMC)の粉末IRスペクトルを示すグラフである。
【
図28】実施例4で得られたイミド化合物(NPMC)の
1H NMRチャートを示すグラフである。
【
図29】実施例4で得られたイミド化合物(NPMC)の粉末IRスペクトルを示すグラフである。
【
図30】比較例1で得られたイミド化合物(DBrNTMC)の
1H NMRチャートを示すグラフである。
【
図31】比較例1で得られたイミド化合物(DBrNTMC)の粉末IRスペクトルを示すグラフである。
【
図32】比較例2で得られたイミド化合物(BTDAMC)の
1H NMRチャートを示すグラフである。
【
図33】比較例2で得られたイミド化合物(BTDAMC)の粉末IRスペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[有機発光材料]
本発明の有機発光材料は、後述する一般式(I)で表される構造を有するイミド化合物である。
【0015】
本発明の有機発光材料において特筆すべきことは、長寿命の残光を、室温大気中(酸素存在下)で示すことである。具体的には、室温大気中において、波長420~800nmの残光を発現する。なお、室温は、20℃と定義する。
【0016】
また、本発明の有機発光材料は、室温大気中での紫外線照射の過程において、燐光強度の増大が観測され、燐光強度が増大するまでに発光強度の変化しない誘導時間を有する。
すなわち、誘導時間では紫外線照射停止後に残光は観測されない。一方、誘導時間後、燐光強度が増大し始めると、紫外線照射停止後に残光が観測される。
【0017】
また、本発明の有機発光材料は、室温大気中における短時間(1秒以下)の紫外線照射では燐光発光を示すことはないが、室温真空条件下では短時間の紫外線照射によっても燐光発光を示す。
【0018】
本発明の有機発光材料(および、後述する本発明の薄膜)は、これらの特性を有することから、光デバイス(発光デバイス)用材料として使用できる。
【0019】
このような本発明の有機発光材料であるイミド化合物は、下記一般式(I)で表される構造を有する。
【0020】
【0021】
上記一般式(I)中、R1は、下記式(II)~(V)のいずれかで表される芳香族基を示す。なお、下記式(II)~(V)中、*は、結合位置を示す。
【0022】
【0023】
上記一般式(I)中、R2は、脂環式構造、または、同一であっても異なっていてもよい脂環式構造どうしが直接または架橋員を介して相互に連結した非縮合多環式構造からなる1価の有機基を示す。脂環式構造は、置換基を有していてもよい。
【0024】
脂環式構造としては、例えば、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環などの単環の脂環式構造が挙げられる。
架橋員としては、例えば、酸素原子(-O-)、カルボニル基(-CO-)、エステル基(-C(O)O-又は-OC(O)-)、硫黄原子(-S-)、スルフィニル基(-SO-)、スルホニル基(-SO2-)、アルキレン基(-CH2-、-C(CH3)2-など)、アリーレン基などが挙げられ、アルキレン基、アリーレン基は、ハロゲンで置換されていてもよい。
脂環式構造どうしが直接連結した非縮合多環式構造としては、例えば、ビシクロデカン環が挙げられる。
置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、ハロゲン原子などが挙げられる。
【0025】
上記一般式(I)中のR2が示す1価の有機基としては、例えば、上述した脂環式構造または非縮合多環式構造から1個の水素原子を除いた基が挙げられ、その具体例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などが挙げられる。
【0026】
本発明の有機発光材料の具体例としては、下記式(1)~(4)のいずれかで表されるイミド化合物が挙げられる。
【0027】
【0028】
次に、本発明の有機発光材料であるイミド化合物を合成する方法を説明する。ここでは、上記一般式(1)中のR2が、シクロヘキシル基である場合を例に説明する。
まず、シクロヘキシルアミンをプロピオン酸に溶解させる。次いで、氷冷下において、下記一般式(VI)で表されるテトラカルボン酸二無水物を添加して、溶解させる。このとき、シクロヘキシルアミンがテトラカルボン酸二無水物に対して二当量以上となるように添加する。下記一般式(I)中のR1は、上記一般式(I)中のR1と同じである。
【0029】
【0030】
上述した成分を添加した後、一定時間攪拌する。攪拌時間は、例えば、15~45分間である。攪拌後、徐々に昇温し、プロピオン酸の沸点(141℃)付近で還流する。還流時間は、例えば、4~8時間である。還流後、室温まで放冷し、その後、沈殿物をろ過により回収する。回収した沈殿物を真空乾燥し、その後、再結晶を行う。これにより、本発明の有機発光材料であるイミド化合物の固体粉末が得られる。
【0031】
[薄膜]
本発明の薄膜は、本発明の有機発光材料がホスト材料に分散した薄膜である。
ホスト材料は、本発明の有機発光材料の発光特性に関与せず、紫外線および可視光線を透過する有機または無機化合物であり、その具体例としては、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル樹脂が挙げられるが、これに限定されない。
【0032】
本発明の薄膜を製造する方法は、特に限定されない。例えば、まず、ホスト材料を溶媒に溶解させて溶液を得る。得られた溶液に、本発明の有機発光材料であるイミド化合物を添加し、これを基板に塗布し乾燥することにより、イミド化合物の分散薄膜が得られる。
【0033】
より具体的には、例えば、まず、ホスト材料であるポリメチルメタクリレートを、クロロホルムに溶解させ、攪拌後、上記式(1)で表されるイミド化合物であるN,N′-ジシクロヘキシル-2,3,6,7-ナフタレンジイミド(NTMC)を添加し溶解させる。このとき、ホスト材料は、限定されないが、イミド化合物と共通溶媒を有する化合物が好ましい。
【0034】
上述のようにして得られたイミド化合物の溶液を、溶融石英板などの基板上に塗布し、真空条件下で、例えば90℃程度の温度で加熱乾燥する。
基板の材料としては、溶融石英、単結晶シリコンなどの無機系材料だけでなく、ポリイミド成形体などの有機高分子材料を用いてもよい。
溶液の塗布方法は限定されず、例えば、回転塗布、滴下塗布などが挙げられる。加熱乾燥温度も限定されないが、イミド化合物の凝集を避けるため、ホスト材料のガラス転移点以下の温度が好ましい。
加熱乾燥後、空気中または水中で基板から剥離することにより、イミド化合物の分散薄膜が得られる。
【実施例】
【0035】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施例に限定されない。
【0036】
〈実施例1〉
まず、シクロヘキシルアミンをプロピオン酸に溶解させ、氷冷下、さらに、テトラカルボン酸二無水物(2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸2,3:6,7-二無水物)を添加し溶解させた。このとき、シクロヘキシルアミンがテトラカルボン酸二無水物に対して二当量以上となるように添加した。30分間攪拌後、徐々に昇温し、プロピオン酸の沸点(141℃)付近で6時間還流した。還流後、室温まで放冷し、その後、沈殿物をろ過により回収した。回収した沈殿物を真空乾燥し、その後、再結晶を行った。こうして、上記式(1)で表されるイミド化合物であるN,N′-ジシクロヘキシル-2,3,6,7-ナフタレンジイミド(NTMC)の固体粉末を得た。
【0037】
得られたイミド化合物(NTMC)について、1H NMRチャートおよび粉末IRスペクトルを測定した。
【0038】
図22は、イミド化合物(NTMC)の
1H NMRチャートを示すグラフである。
図22において、ピーク1はフェニル基水素の信号、ピーク4はシクロヘキシル基の1位水素の信号、ピーク5~9はシクロヘキシル基の1位以外の水素の信号である。
以下、
1H NMRチャートにおける信号帰属は、各図中に示すとおりである。
各イミド化合物の
1H NMRチャートは、日本電子社製のAL-400分光計(
1H共鳴周波数:400MHz)を用いて測定した。測定条件は、以下のとおりである。
・溶媒:重水素化クロロホルム(CDCl
3)
・化学シフト基準:テトラメチルシラン
【0039】
図23は、イミド化合物(NTMC)の粉末IRスペクトルを示すグラフである。
図23において、2950~2860cm
-1のピークはシクロヘキシル基のC-H伸縮振動、1760cm
-1付近のピークはイミド基に含まれる2つのカルボニル炭素の対称伸縮振動、1700cm
-1付近のピークは同カルボニル炭素の非対称伸縮振動、1370cm
-1付近のピークはイミド環窒素(N)とシクロヘキシル基1位炭素の単結合の伸縮振動に帰属される信号である。以下、粉末IRスペクトルにおける信号帰属は、各図中に示すとおりである。
各イミド化合物の粉末IRスペクトルは、日本分光社製のFT/IR-4200型フーリエ変換赤外分光光度計を用いて、粉末KBr法により測定した。測定条件は、以下のとおりである。
・波数域:4000~1000cm
-1
・分解能:4cm
-1
・積算回数:32回
【0040】
次に、得られたイミド化合物(NTMC)の分散薄膜を作製した。
具体的には、まず、サンプル瓶中で、ポリメチルメタクリレート0.9076gに、クロロホルム5mLを加え、室温(20℃付近)で半日攪拌後、イミド化合物(NTMC)0.002gを加えた。このとき、NTMCの固形分濃度が0.2質量%になるように調製した。その後、室温で半日攪拌した。得られた液体を10×13mmの石英基板上に塗布し、真空条件下、90℃で1時間加熱乾燥した。こうして、イミド化合物(NTMC)の分散薄膜を得た。
【0041】
得られたイミド化合物の分散薄膜の発光スペクトル測定を、室温大気中で行ったところ、紫外線(波長365nm)の短時間(1秒以下)照射によって、400nm付近に蛍光発光を示したが、燐光発光は示さなかった。一方、室温真空条件下では、525nm付近に燐光発光を示した。
ここで、発光スペクトル測定における蛍光と燐光との判別は、次のように行った。すなわち、紫外光源からの連続波光を光学チョッパー用いてパルス幅が約2msの擬似パルス光に変換し、これを試料に照射した後、約1msの遅延時間を設け、蛍光が消光した後に観測された発光成分を燐光とした。
【0042】
イミド化合物の分散薄膜に対し、光量5.83mW/cm
2、波長365nmの紫外光を室温大気中で15分照射し続けたところ、蛍光強度の減少および燐光強度の増大が観測された。この結果を
図1に示す。
図1は、発光スペクトルを示すグラフであり、より詳細には、励起光照射開始0分後、15分後および励起光照射停止直後の発光スペクトルを示す。
図1において、縦軸は発光強度、横軸は波長(nm)を示す。
図1中には、450~650nmの波長範囲の発光スペクトルの拡大図を載せている。
【0043】
図1に示されるように、励起光照射停止直後に、波長450~650nmに残光を示した。光量5.83mW/cm
2、波長365nmの励起光を15分照射し、照射停止前後における残光の発光強度減衰曲線を測定したところ、時定数1.491秒の残光が観測された。この結果を
図2に示す。
図2は、発光強度減衰曲線を示すグラフであり、縦軸は発光強度、横軸は励起光照射開始からの経過時間(分)を示す。
図2に示すように、励起光を長時間照射することで、室温大気中で長寿命の残光を発現した。
【0044】
イミド化合物の分散薄膜の励起光照射中に、蛍光および燐光の発光強度の時間変化を測定したところ、蛍光強度の減少および燐光強度の増大が生じた。
また、発光強度の変化が生じるまでに、発光強度が変化しない誘導時間が観測された。この誘導時間の間は、励起光の照射停止後に残光は観測されず、誘導時間後、燐光強度が増大し始めると、励起光の照射停止後に
図2で示されるような残光が観測された。この結果を
図3に示す。
図3は、波長400nmの蛍光および波長530nmの燐光の発光強度の時間変化を示すグラフであり、縦軸は発光強度、横軸は励起光照射開始からの経過時間(分)を示す。
図3は、光量5.83mW/cm
2、波長365nmの紫外光を照射し続けたときの発光強度変化を示しており、誘導時間は57.2秒であった。
さらに、イミド化合物の分散薄膜の励起光照射中における蛍光および燐光の発光強度の時間変化を、光量が0.50mW/cm
2、1.58mW/cm
2、3.00mW/cm
2および11.05mW/cm
2の紫外光(波長はいずれも365nm)を用いて測定した。その結果、光量の増大に伴い、誘導時間の減少が観測された。この結果を下記表1に示す。
【0045】
また、光量が0.50mW/cm2、1.58mW/cm2、3.00mW/cm2、5.83mW/cm2および11.05mW/cm2の紫外光(波長365nm)を用いて、イミド化合物の分散薄膜に対し15分間紫外線を照射し、その後、励起光の照射停止後に観測される発光強度減衰曲線を用い、残光の寿命の時定数を算出した。この結果を下記表2に示す。
【0046】
さらに、イミド化合物の分散薄膜に、室温真空条件下で紫外光を照射し続けたところ、蛍光強度の減少および燐光強度の増大が即座に生じ、発光強度が変化しない誘導時間は観測されなかった。この結果を
図4に示す。
図4は、光量0.50mW/cm
2、波長365nmの紫外光を照射し続けたときの蛍光および燐光の発光強度の時間変化を示すグラフであり、縦軸は発光強度、横軸は励起光照射開始からの経過時間(分)を示す。
【0047】
〈実施例2〉
まず、実施例1と同様の手順で、上記式(2)で表されるイミド化合物であるN,N′-ジシクロヘキシル-3,3′,4,4′-ビフェニルジイミド(sBPDAMC)の固体粉末を得た。
得られたイミド化合物(sBPDAMC)について、
1H NMRチャートおよび粉末IRスペクトルを測定した。
図24は、イミド化合物(sBPDAMC)の
1H NMRチャートを示すグラフであり、
図25は、イミド化合物(sBPDAMC)の粉末IRスペクトルを示すグラフである。
【0048】
次に、実施例1と同様の手順で、イミド化合物(sBPDAMC)の分散薄膜を得た。
得られたイミド化合物の分散薄膜の発光スペクトル測定を、室温大気中で行ったところ、紫外線(波長340nm)の短時間照射によって、390nm付近に蛍光発光を示したが、燐光発光は示さなかった。一方、室温真空条件下では、520nm付近に燐光発光を示した。
イミド化合物の分散薄膜に対し、光量0.50mW/cm
2、波長340nmの紫外光を室温大気中で15分照射し続けたところ、蛍光強度の減少および燐光強度の増大が観測された。この結果を
図5に示す。
図5は、発光スペクトルを示すグラフであり、より詳細には、励起光照射開始0分後、15分後および励起光照射停止直後の発光スペクトルを示す。
図5において、縦軸は発光強度、横軸は波長(nm)を示す。
【0049】
図5に示されるように、励起光照射停止直後に、波長450~650nmに残光を示した。光量5.76mW/cm
2、波長340nmの励起光を15分照射し、照射停止前後における残光の発光強度減衰曲線を測定したところ、時定数0.753秒の残光が観測された。この結果を
図6に示す。
図6は、発光強度減衰曲線を示すグラフであり、縦軸は発光強度、横軸は励起光照射開始からの経過時間(分)を示す。
図6に示すように、励起光を長時間照射することで、室温大気中で長寿命の残光を発現した。
【0050】
イミド化合物の分散薄膜の励起光照射中に、蛍光および燐光の発光強度の時間変化を測定したところ、蛍光強度の減少および燐光強度の増大が生じた。
また、発光強度の変化が生じるまでに、発光強度が変化しない誘導時間が観測された。この誘導時間の間は、励起光の照射停止後に残光は観測されず、誘導時間後、燐光強度が増大し始めると、励起光の照射停止後に
図6で示されるような残光が観測された。この結果を
図7に示す。
図7は、波長390nmの蛍光および波長525nmの燐光の発光強度の時間変化を示すグラフであり、縦軸は発光強度、横軸は励起光照射開始からの経過時間(分)を示す。
図7は、光量2.99mW/cm
2、波長340nmの紫外光を照射し続けたときの発光強度変化を示しており、誘導時間は23.9秒であった。
さらに、イミド化合物の分散薄膜の励起光照射中における蛍光および燐光の発光強度の時間変化を、光量が0.50mW/cm
2、1.00mW/cm
2、5.76mW/cm
2および11.03mW/cm
2の紫外光(波長はいずれも340nm)を用いて測定した。その結果、光量の増大に伴い、誘導時間の減少が観測された。この結果を下記表1に示す。
【0051】
また、光量が0.50mW/cm2、1.00mW/cm2、2.99mW/cm2、5.76mW/cm2および11.03mW/cm2の紫外光(波長340nm)を用いて、イミド化合物の分散薄膜に対し15分間紫外線を照射し、その後、励起光の照射停止後に観測される発光強度減衰曲線を用い、残光の寿命の時定数を算出した。この結果を下記表2に示す。
【0052】
さらに、イミド化合物の分散薄膜に、室温真空条件下で紫外光を照射し続けたところ、蛍光強度の減少および燐光強度の増大が即座に生じ、発光強度が変化しない誘導時間は観測されなかった。この結果を
図8に示す。
図8は、光量0.50mW/cm
2、波長340nmの紫外光を照射し続けたときの蛍光および燐光の発光強度の時間変化を示すグラフであり、縦軸は発光強度、横軸は励起光照射開始からの経過時間(分)を示す。
【0053】
〈実施例3〉
まず、実施例1と同様の手順で、上記式(3)で表されるイミド化合物であるN,N′-ジシクロヘキシル-4,4′-オキシジフタル酸ジイミド(ODPAMC)の固体粉末を得た。
得られたイミド化合物(ODPAMC)について、
1H NMRチャートおよび粉末IRスペクトルを測定した。
図26は、イミド化合物(ODPAMC)の
1H NMRチャートを示すグラフであり、
図27は、イミド化合物(ODPAMC)の粉末IRスペクトルを示すグラフである。
【0054】
次に、実施例1と同様の手順で、イミド化合物(ODPAMC)の分散薄膜を得た。
得られたイミド化合物の分散薄膜の発光スペクトル測定を、室温大気中で行ったところ、紫外線(波長340nm)の短時間照射によって、390nm付近に蛍光発光を示したが、燐光発光は示さなかった。一方、室温真空条件下では、480nm付近に燐光発光を示した。
イミド化合物の分散薄膜に対し、光量2.99mW/cm
2、340nmの紫外光を室温大気中で15分照射し続けたところ、蛍光強度の減少と燐光強度の増大が観測された。この結果を
図9に示す。
図9は、発光スペクトルを示すグラフであり、より詳細には、励起光照射開始0分後、15分後および励起光照射停止直後の発光スペクトルを示す。
図9において、縦軸は発光強度、横軸は波長(nm)を示す。
【0055】
図9に示されるように、励起光照射停止直後に、波長450~650nmに残光を示した。光量5.76mW/cm
2、波長340nmの励起光を15分照射し、照射停止前後における残光の発光強度減衰曲線を測定したところ、時定数0.336秒の残光が観測された。この結果を
図10に示す。
図10は、発光強度減衰曲線を示すグラフであり、縦軸は発光強度、横軸は励起光照射開始からの経過時間(分)を示す。
図10に示すように、励起光を長時間照射することで、室温大気中で長寿命の残光を発現した。
【0056】
イミド化合物の分散薄膜の励起光照射中に、蛍光および燐光の発光強度の時間変化を測定したところ、蛍光強度の減少および燐光強度の増大が生じた。
また、発光強度の変化が生じるまでに、発光強度が変化しない誘導時間が観測された。この誘導時間の間は、励起光の照射停止後に残光は観測されず、誘導時間後、燐光強度が増大し始めると、励起光の照射停止後に
図10で示されるような残光が観測された。この結果を
図11に示す。
図11は、波長390nmの蛍光および波長480nmの燐光の発光強度の時間変化を示すグラフであり、縦軸は発光強度、横軸は励起光照射開始からの経過時間(分)を示す。
図11は、光量1.00mW/cm
2、波長340nmの紫外光を照射し続けたときの発光強度変化を示しており、誘導時間は183.3秒であった。
さらに、イミド化合物の分散薄膜の励起光照射中における蛍光および燐光の発光強度の時間変化を、光量が0.50mW/cm
2、2.99mW/cm
2、5.76mW/cm
2および11.03mW/cm
2の紫外光(波長はいずれも340nm)を用いて測定した。その結果、光量の増大に伴い、誘導時間の減少が観測された。この結果を下記表1に示す。
【0057】
また、光量が0.50mW/cm2、1.00mW/cm2、2.99mW/cm2、5.76mW/cm2および11.03mW/cm2の紫外光(波長340nm)を用いて、イミド化合物の分散薄膜に対し15分間紫外線を照射し、その後、励起光の照射停止後に観測される発光強度減衰曲線を用い、残光の寿命の時定数を算出した。この結果を下記表2に示す。
【0058】
さらに、イミド化合物の分散薄膜に、室温真空条件下で紫外光を照射し続けたところ、蛍光強度の減少および燐光強度の増大が即座に生じ、発光強度が変化しない誘導時間は観測されなかった。この結果を
図12に示す。
図12は、光量0.50mW/cm
2、波長340nmの紫外光を照射し続けたときの蛍光および燐光の発光強度の時間変化を示すグラフであり、縦軸は発光強度、横軸は励起光照射開始からの経過時間(分)を示す。
【0059】
〈実施例4〉
まず、実施例1と同様の手順で、上記式(4)で表されるイミド化合物であるN,N′-ジシクロヘキシル-1,4,5,8-ナフタレンジイミド(NPMC)の固体粉末を得た。
得られたイミド化合物(NPMC)について、
1H NMRチャートおよび粉末IRスペクトルを測定した。
図28は、イミド化合物(NPMC)の
1H NMRチャートを示すグラフであり、
図29は、イミド化合物(NPMC)の粉末IRスペクトルを示すグラフである。
【0060】
次に、実施例1と同様の手順で、イミド化合物(NPMC)の分散薄膜を得た。
得られたイミド化合物の分散薄膜の発光スペクトル測定を、室温大気中で行ったところ、紫外線(波長365nm)の短時間照射によって、410および480nm付近に蛍光発光を示したが、燐光発光は示さなかった。一方、室温真空条件下では、620nm付近に燐光発光を示した。
イミド化合物の分散薄膜に対し、光量6.05mW/cm
2、365nmの紫外光を室温大気中で15分照射し続けたところ、燐光強度の増大が観測された。この結果を
図13に示す。
図13は、発光スペクトルを示すグラフであり、より詳細には、励起光照射開始0分後、15分後および励起光照射停止直後の発光スペクトルを示す。
図13において、縦軸は発光強度、横軸は波長(nm)を示す。
【0061】
図13に示されるように、励起光照射停止直後に、波長600~800nmに残光を示した。光量11.01mW/cm
2、波長365nmの励起光を15分照射し、照射停止前後における残光の発光強度減衰曲線を測定したところ、時定数0.027秒の残光が観測された。この結果を
図14に示す。
図14は、発光強度減衰曲線を示すグラフであり、縦軸は発光強度、横軸は励起光照射開始からの経過時間(分)を示す。
図14に示すように、励起光を長時間照射することで、室温大気中で長寿命の残光を発現した。
【0062】
イミド化合物の分散薄膜の励起光照射中に、蛍光および燐光の発光強度の時間変化を測定したところ、蛍光強度の減少および燐光強度の増大が生じた。
また、発光強度の変化が生じるまでに、発光強度が変化しない誘導時間が観測された。この誘導時間の間は、励起光の照射停止後に残光は観測されず、誘導時間後、燐光強度が増大し始めると、励起光の照射停止後に
図14で示されるような残光が観測された。この結果を
図15に示す。
図15は、波長480nmの蛍光および波長620nmの燐光の発光強度の時間変化を示すグラフであり、縦軸は発光強度、横軸は励起光照射開始からの経過時間(分)を示す。
図15は、光量1.51mW/cm
2、波長365nmの紫外光を照射し続けたときの発光強度変化を示しており、誘導時間は424.9秒であった。
さらに、イミド化合物の分散薄膜の励起光照射中における蛍光および燐光の発光強度の時間変化を、光量が3.10mW/cm
2、6.05mW/cm
2、11.01mW/cm
2および20.04mW/cm
2の紫外光(波長はいずれも365nm)を用いて測定した。その結果、光量の増大に伴い、誘導時間の減少が観測された。この結果を下記表1に示す。
【0063】
また、光量が1.51mW/cm2、3.10mW/cm2、6.05mW/cm2、11.01mW/cm2および20.04mW/cm2の紫外光(波長365nm)を用いて、イミド化合物の分散薄膜に対し15分間紫外線を照射し、その後、励起光の照射停止後に観測される発光強度減衰曲線を用い、残光の寿命の時定数を算出した。この結果を下記表2に示す。
【0064】
さらに、イミド化合物の分散薄膜に、室温真空条件下で紫外光を照射し続けたところ、蛍光強度の減少および燐光強度の増大が即座に生じ、発光強度が変化しない誘導時間は観測されなかった。この結果を
図16に示す。
図16は、光量1.51mW/cm
2、波長365nmの紫外光を照射し続けたときの蛍光および燐光の発光強度の時間変化を示すグラフであり、縦軸は発光強度、横軸は励起光照射開始からの経過時間(分)を示す。
【0065】
〈比較例1〉
まず、実施例1と同様の手順で、ナフタレン部に臭素を含むイミド化合物である、下記式(X1)で表されるN,N′-ジシクロヘキシル-1,5-ジブロモ-2,3,6,7-ナフタレンジイミド(DBrNTMC)の固体粉末を得た。
【0066】
【0067】
得られたイミド化合物(DBrNTMC)について、
1H NMRチャートおよび粉末IRスペクトルを測定した。
図30は、イミド化合物(DBrNTMC)の
1H NMRチャートを示すグラフであり、
図31は、イミド化合物(DBrNTMC)の粉末IRスペクトルを示すグラフである。
【0068】
次に、実施例1と同様の手順で、イミド化合物(DBrNTMC)の分散薄膜を得た。
得られたイミド化合物の分散薄膜の発光スペクトル測定を、室温大気中で行ったところ、紫外線(波長365nm)の短時間照射によって、415nm付近に蛍光発光を、525nm付近に燐光発光を示した。
イミド化合物の分散薄膜に対し、光量0.50mW/cm
2、365nmの紫外光を室温大気中で20分照射し続けたところ、発光スペクトルに変化は観測されなかった。光量0.50mW/cm
2、波長365nmの励起光を20分照射し、照射停止前後における残光の発光強度減衰曲線を測定したところ、残光は観測されなかった。この結果を
図17に示す。
図17は、発光強度減衰曲線を示すグラフであり、縦軸は発光強度、横軸は励起光照射開始からの経過時間(分)を示す。
図17に示すように、室温大気中で燐光発光を示すDBrNTMCの分散薄膜は、残光を発現しなかった。
【0069】
イミド化合物の分散薄膜の励起光照射中に、蛍光および燐光の発光強度の時間変化を測定したところ、蛍光強度および燐光強度の変化は観測されなかった。この結果を
図18に示す。
図18は、波長415nmの蛍光および波長525nmの燐光の発光強度の時間変化を示すグラフであり、縦軸は発光強度、横軸は励起光照射開始からの経過時間(分)を示す。
図18は、光量0.50mW/cm
2、波長365nmの紫外光を照射し続けたときの発光強度変化を示す。
【0070】
〈比較例2〉
まず、実施例1と同様の手順で、下記式(X2)で表されるイミド化合物であるN,N′-ジシクロヘキシル-3,3′,4,4′-ベンゾフェノンジイミド(BTDAMC)の固体粉末を得た。
【0071】
【0072】
得られたイミド化合物(BTDAMC)について、
1H NMRチャートおよび粉末IRスペクトルを測定した。
図32は、イミド化合物(BTDAMC)の
1H NMRチャートを示すグラフであり、
図33は、イミド化合物(BTDAMC)の粉末IRスペクトルを示すグラフである。
【0073】
次に、実施例1と同様の手順で、イミド化合物(BTDAMC)の分散薄膜を得た。
得られたイミド化合物の分散薄膜の発光スペクトル測定を、室温大気中で行ったところ、紫外線(波長340nm)の短時間照射によって蛍光発光は示さず、510nm付近に燐光発光を示した。
イミド化合物の分散薄膜に対し、光量0.50mW/cm
2、340nmの紫外光を室温大気中で15分照射し続けたところ、燐光強度の増大および燐光ピークの長波長化が観測された。この結果を
図19に示す。
図19は、発光スペクトルを示すグラフであり、より詳細には、励起光照射開始0分後、15分後および励起光照射停止直後の発光スペクトルを示す。
図19において、縦軸は発光強度、横軸は波長(nm)を示す。
【0074】
図19に示されるように、励起光照射停止直後に残光は示さなかった。光量0.50mW/cm
2、波長340nmの励起光を室温大気中で15分照射し、照射停止前後における残光の発光強度減衰曲線を測定したところ、発光強度が即座に減衰することが確認された。この結果を
図20に示す。
図20は、発光強度減衰曲線を示すグラフであり、縦軸は発光強度、横軸は励起光照射開始からの経過時間(分)を示す。
図20に示すように、BTDAMCの分散薄膜においては、励起光を長時間照射しても、残光を発現しなかった。
【0075】
イミド化合物の分散薄膜の励起光照射中に、燐光の発光強度の時間変化を測定したところ、燐光強度の増大が生じた。このとき、発光強度の変化は即座に生じ、発光強度が変化しない誘導時間は観測されなかった。この結果を
図21に示す。
図21は、波長510nmの燐光の発光強度の時間変化を示すグラフであり、縦軸は発光強度、横軸は励起光照射開始からの経過時間(分)を示す。
図21は、光量0.50mW/cm
2、波長340nmの紫外光を照射し続けたときの発光強度変化を示す。
【0076】
【0077】