(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】顕微鏡対物レンズによって生成されるレーザ焦点の軸方向位置を制御するためのデバイス
(51)【国際特許分類】
G02B 21/00 20060101AFI20241127BHJP
G02B 21/06 20060101ALI20241127BHJP
G02B 26/10 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
G02B21/00
G02B21/06
G02B26/10 104Z
(21)【出願番号】P 2023524481
(86)(22)【出願日】2020-10-29
(86)【国際出願番号】 IB2020001123
(87)【国際公開番号】W WO2022090760
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】518059934
【氏名又は名称】ソルボンヌ・ユニヴェルシテ
【氏名又は名称原語表記】SORBONNE UNIVERSITE
(73)【特許権者】
【識別番号】504007888
【氏名又は名称】センター ナショナル デ ラ レシェルシェ サイエンティフィーク
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハリヨ,シナン
(72)【発明者】
【氏名】レニエ,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ゲレナ,エジソン
【審査官】中村 説志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0018940(US,A1)
【文献】特開2005-224328(JP,A)
【文献】特開2015-018045(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102017119478(DE,A1)
【文献】特開2016-224241(JP,A)
【文献】特開2007-047754(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B19/00-21/00
G02B21/04-21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕微鏡対物レンズ(5)によって生成されるレーザ焦点(6)の軸方向位置を制御するためのデバイス(10)であって、
-レーザビーム(3)を放射するレーザ源(2)と、
-前記レーザビーム(3)を軸方向に集束又は脱集束させる可変形状ミラー(4)と、
-前記可変形状ミラー(4)から発せられる前記レーザビーム(3)を前記レーザ焦点(6)に集束させる
前記顕微鏡対物レンズ(5)と
、
前記レーザ源(2)によって放射された前記レーザビーム(3)を前記可変形状ミラー(4)
上に数回
案内するシステム(7)
であって、前記可変形状ミラー(4)上の前記レーザビーム(3)の2つの連続する反射の間に前記レーザビーム(3)を案内する少なくとも1セットの2つのミラー(7)を含む、前記レーザビーム(3)を前記可変形状ミラー(4)上に数回案内する前記システム(7)と、
前記可変形状ミラー(4)面を前記2つの連続する反射の間の次の可変形状ミラー(4)面と共役させる光学リレーシステム(f1、f2;f3、f4;f5、f6)と、
を備えることを特徴とする、デバイス(10)。
【請求項2】
2つの連続する反射の間の前記光学リレーシステム(f1、f2;f3、f4;f5、f6)が
、2つの正レンズ又は1つの負レンズ及び1つの正レンズを有するアフォーカル光学系を含むことを特徴とする、請求項
1に記載のデバイス(10)。
【請求項3】
前記レーザ焦点(6)
の平面(X,Y)位置を制御す
る平面走査システム(8)を備えることを特徴とする、請求項1
又は2に記載のデバイス(10)。
【請求項4】
前記平面走査システム(8)が、ガルバノメータミラーであることを特徴とする、請求項
3に記載のデバイス(10)。
【請求項5】
前記可変形状ミラー(4)及び前記平面走査
システム(8)を前記顕微鏡対物レンズ(
5)の入口開口と共役させるために、前記可変形状ミラー(4)と前記平面走査
システム(8)との間に配置された第1の光学リレーシステム(f
7、f
8)と、前記平面走査
システム(8)と前記顕微鏡対物レンズ(5)との間に配置された第2の光学リレーシステム(f
9、f
10)とを備えることを特徴とする、請求項
3又は
4に記載のデバイス(10)。
【請求項6】
前記デバイスが、光学操作デバイス、二光子重合デバイス、共焦点顕微鏡デバイス、二光子顕微鏡デバイス、又は光遺伝学デバイスであることを特徴とする、請求項1~
5のいずれか一項に記載のデバイス(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡対物レンズによって生成されるレーザ焦点の軸方向位置を制御するためのデバイスに関する。特に、本発明によるデバイスは、光遺伝学、光学操作、共焦点顕微鏡法、二光子顕微鏡法、又は二光子重合など、高速3D焦点走査が必要な様々な用途に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
通常、レーザビームを強く集束させるために対物顕微鏡が使用される。レーザ焦点の位置は、顕微鏡対物レンズの入口に到達するレーザビームの(平面軸X、Yにおける)入射角及び(軸方向軸Zにおける)コリメーションの程度によって決定される。集束レーザスポットの品質(例えば、光学的操作におけるトラップの安定性)は、顕微鏡対物レンズの入口に到達するビームの品質に非常に依存する。しかしながら、対物レンズに到達するビームと焦点との間の相関を考慮すると、その形状を歪めることなく、かつその性能を劣化させる収差を導入することなく、焦点の3次元位置を変更することは困難である。
【0003】
レーザビームの軸方向におけるこれらの制約を克服するために、軸方向軸上でレーザビームを集束又は脱集束させることができる可変形状ミラーを使用することが既知である。
【0004】
可変形状ミラーは、曲率を動的に変化させることができるミラーである。それらのミラーは、それらの表面の放物面偏向を可能にするアクチュエータのアレイを含み、ミラー焦点距離を変化させる。
【0005】
しかしながら、可変形状ミラーは、例えば5μmの最大ストロークを有する小さな表面偏向と、例えば5ms(10~90%)の高い整定時間とを有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
その結果、既知のデバイスは、レーザ焦点の狭い作業空間と、例えば200Hzの可変形状ミラーのフルスケール帯域幅とに制限される。これら2つの制限は、レーザ焦点が生成される作業空間と、レーザ焦点を1セットの任意の位置の間で移動させることができる走査周波数とを制限する。これは、例えば、撮像システム(共焦点顕微鏡法、多光子顕微鏡法等)などの様々な用途に制限をもたらし、任意の配向における平面や曲面の3D走査、及び標的走査は、依然として課題である。光学操作において、このことは、例えば、生成され得るトラップの数及び面外回転され得る物体のサイズを制限する。
【0007】
本発明は、これらの欠点を改善することを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のために、顕微鏡対物レンズによって生成されるレーザ焦点の軸方向位置を制御するためのデバイスは、
-レーザビームを放射するレーザ源と、
-レーザビームを軸方向に集束又は脱集束するための可変形状ミラーと、
-可変形状ミラーから発せられるレーザビームをレーザ焦点に集束させるための顕微鏡対物レンズと、を備える。
【0009】
本発明によるデバイスは、レーザ源によって放射されたレーザビームを可変形状ミラー
に数回通過させるシステムを更に備える。
【0010】
したがって、レーザビームを同じ可変形状ミラーに数回通過させることによって、合焦(可変形状ミラーの凹面構成の場合)又は非合焦(可変形状ミラーの凸面構成の場合)が増幅される。したがって、顕微鏡対物レンズの入口におけるレーザビームの収束が増大される(可変形状ミラーの凹面構成の場合)、又は顕微鏡対物レンズの入口におけるレーザビームの発散が増大される(可変形状ミラーの凸面構成の場合)。したがって、レーザ焦点の軸方向位置は、(可変形状ミラーの凹面構成の場合には)増大させることができる、又は(可変形状ミラーの収束構成の場合には)減少させることができる。本発明は、大きな作業空間におけるレーザ焦点の高速運動制御を可能にする。所与の軸方向位置に関して、可変形状ミラーは、(レーザビームが変形ミラーを1回だけ通過する場合と比較して)より小さい変形振幅を有し、システムの整定時間が短縮され、走査周波数が増大する。デバイスは依然としてミラーのみに基づいているので、光路は双方向であり、すなわち、経路は伝搬方向から独立しており、光効率は最大化される。
【0011】
本発明は、いくつかの「仮想」可変形状ミラーを直列に使用することによって、作動軸作業空間を拡大する。この考え方は、例えば1セットのミラーを使用して、同じ可変形状ミラーにレーザビームを数回通過させることである。仮想可変形状ミラーが対物レンズの入口開口の共役面に配置されることを確実にすることによって、作業空間をかなり増加させることが可能である一方で、対物レンズの入口開口におけるレーザビーム直径のサイズが、レーザビームの収束又は発散の程度、及び軸方向におけるレーザ焦点の移動にかかわらず、同じままであることを確保する。
【0012】
レーザビームを可変形状ミラーに数回通過させるためのシステムは、可変形状ミラー上のレーザビームの2つの連続する通過の間にレーザビームを案内するための少なくとも1セットの2つのミラーを備えることができる。
【0013】
レーザビームを可変形状ミラーに数回通過させるためのシステムは、有利には、可変形状ミラーを通るレーザビームの2つの連続する通過の間に、可変形状ミラー面を上記2つの連続する通過の間の次の可変形状ミラー面と共役させるための光学リレーシステムを備える。
【0014】
光学リレーシステムは、2つの正レンズ(又は1つの負レンズ及び1つの正レンズ)を有するアフォーカルシステムを備えることができる。
【0015】
デバイスは、レーザ焦点の平面位置を制御するための2D平面走査システムを備えることができる。
【0016】
平面走査システムは、典型的にはガルバノメータミラーである。
【0017】
このデバイスは、可変形状ミラー及び平面走査ミラーを顕微鏡対物レンズの入口開口と共役させるために、可変形状ミラーと平面走査ミラーとの間に配置された第1の光学リレーシステムと、平面走査ミラーと顕微鏡対物レンズとの間に配置された第2の光学リレーシステムとを備えることができる。
【0018】
デバイスは、光学操作デバイス、二光子重合デバイス、共焦点顕微鏡デバイス、多光子顕微鏡デバイス、もしくは光遺伝学デバイス、又は3D高速走査レーザを必要とする任意の他のデバイスであり得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明の他の目的、特徴及び利点は、単に非限定的な例として与えられる以下の説明を、添付の図面を参照して読むことによって明らかになるであろう。
【
図1】従来技術による、顕微鏡対物レンズによって生成されるレーザ焦点の軸方向位置を制御するためのデバイスの概略図である。
【
図2】本発明による顕微鏡対物レンズによって生成されるレーザ焦点の軸方向位置を制御するためのデバイスの概略図である。
【
図4】第1の実施形態における、従来技術による作動システムを有するデバイスの概略図である。
【
図5】第1の実施形態における、本発明による作動システムを有するデバイスの概略図である。
【
図6】第2の実施形態における、従来技術による作動システムを有するデバイスの概略図である。
【
図7】第2の実施形態における、本発明による作動システムを有するデバイスの概略図である。
【
図8】第2の実施形態における、本発明による作動システムを有するデバイスの概略図である。
【
図9】第3の実施形態における、従来技術による作動システムを有するデバイスの概略図である。
【
図10】第3の実施形態における、本発明による作動システムを有するデバイスの概略図である。
【
図11】本発明によるデバイスの様々な実施形態を概略的に示す。
【
図12】本発明によるデバイスの様々な実施形態を概略的に示す。
【
図13】本発明によるデバイスの様々な実施形態を概略的に示す。
【
図14】本発明によるデバイスの様々な実施形態を概略的に示す。
【
図15】本発明によるデバイスの様々な実施形態を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に示すように、従来技術による顕微鏡対物レンズによって生成されるレーザ焦点の軸方向位置を制御するためのデバイス1は、レーザビーム3を放射するレーザ源2を備える。
【0021】
レーザビーム3は、レーザ焦点の3次元位置を制御するための作動システムを、すなわち、軸Z方向並びに平面X、Y方向に通過する。システムは、レーザ焦点の軸方向Z位置を制御するための可変形状ミラー4と、レーザ焦点の平面X、Y位置を制御するためのガルバノメータ(図示せず)とを含む。
【0022】
顕微鏡対物レンズ5は、作動システムから発せられるレーザビーム3をレーザ焦点6に集束させ、レーザ焦点6を結像させるために使用される。
【0023】
Z軸上には、レーザ光3を集束又は脱集束することができる可変形状ミラー4が用いられる。可変形状ミラー4及びガルバノメータは、好ましくは、顕微鏡対物レンズ5の入口開口上の共役面に配置される。したがって、レーザビーム3は、顕微鏡対物レンズ6の入口開口の周りを旋回し、入射ビーム2の角度又はコリメーションの程度とは無関係に、同じ程度のオーバーフィルを保持し、等しく効率的なレーザ焦点6を生成する。共役面は記号「*」によって描かれている。
【0024】
可変形状ミラー4が平坦構成(
図1の位置4a)にあるとき、顕微鏡対物レンズ5は、レーザビーム3をレーザ焦点6aに集束させる。可変形状ミラー4が平坦構成でない場合、例えば、
図1に示すように、凸状の構成である場合、顕微鏡対物レンズ5は、レーザビーム3をレーザ焦点6に集束させる。レーザ焦点6は、レーザ焦点6aから距離
lに位置している。
【0025】
本発明によれば、
図2に示されるように、デバイス10は、レーザ源2から発せられるレーザビーム3を可変形状ミラー4に数回通過させるシステムを更に備える。
【0026】
システムは、複数のミラー7を含むことができる。例えば、2つの反射ミラー7を、可変形状ミラー4上のレーザビーム3の2つの連続する通過の間に使用することができる。
【0027】
レーザ源2から発せられるレーザビーム3は、可変形状ミラーに向けられる(レーザビーム3の通過P1)。次に、レーザビーム3の第2の通過P2が、2つのミラー7を用いて行われる。同様にして、次に連続する通過P3及びP4が実行される。当然ながら、通過の数は限定されず、Pn回の通過も同様に行うことができる。
【0028】
したがって、レーザ源から発せられるレーザビーム3を可変形状ミラー4を通して連続的に数回通過させることによって、非合焦が増幅され、したがって、顕微鏡対物レンズの入口におけるレーザビームの角度が増大する。したがって、レーザ焦点6の軸方向位置が増大する。
lは、可変形状ミラー4(
図1)の平坦構成の場合のレーザ焦点6aの軸方向位置からのレーザ焦点6の軸方向位置であり、レーザビームが可変形状ミラー4を4回通
過するときのレーザ焦点6aの軸方向位置からのレーザ焦点6の軸方向位置は、約4×
lである。より一般的には、レーザビームが可変形状ミラー4をn回通過した後のレーザ焦点6aの軸方向位置からのレーザ焦点6の軸方向位置は、約
l×nである。
【0029】
可変形状ミラーの変形は、それらの焦点距離を変化させ、光学収差を補償するために使用される。
【0030】
作業空間及び帯域幅は、使用される可変形状ミラーに依存する。現在のシステムでは、軸方向変位の全動作範囲は、例えば、可変形状ミラーの最大脱集束位置と最小脱集束位置との間で10μmと推定され、例えば、200Hzで実行することができる(ミラーの最大位置から最小位置までのミラーの移動時間によって制限される)。z軸における小さな相対変位(例えば、2μm未満)の場合、可変形状ミラーの最大変形及び最小変形が小さくなるにつれて、サンプリングレートを(典型的には2kHzまで)増加させることができる。
【0031】
本発明では、同じ可変形状ミラーを使用して、レーザビームが可変形状ミラーを通して6回偏向される場合、軸方向作業空間は、200Hzで約60μm、又は2kHzで約12μmである。したがって、この新しい解決策は、作業空間を拡大し、帯域幅も拡大する。
【0032】
レーザビーム3が可変形状ミラー4を通過するたびに、可変形状ミラー4は、有利には、顕微鏡対物レンズ5の入口開口と共役である。この目的のために、レーザビーム3を可変形状ミラー4に数回通過させるためのシステムは、レーザビーム3が可変形状ミラーを2回連続して通過する間に、可変形状ミラー4を可変形状ミラー4自体と共役させるための光学リレーを備えることができる。光学リレーシステムは、2つの正レンズのセットを有するアフォーカルシステムであり得、2つのレンズ間の距離は、各要素の焦点距離の合計に等しい。
【0033】
通過P2の場合、可変形状ミラー4から発せられるビームは、第1のレンズf1、第1のミラー7、第2のミラー7、第2のレンズf2、及び再び可変形状ミラー4を連続的に通過する。通過P3の場合、可変形状ミラー4から発せられるビームは、第1のレンズf
3、第1のミラー7、第2のミラー7、第2のレンズf4、及び再び可変形状ミラー4を連続的に通過する。通過P4の場合、可変形状ミラー4から発せられるビームは、第1のレンズf5、第1のミラー7、第2のミラー7、第2のレンズf6、及び再び可変形状ミラー4を連続的に通過する。
【0034】
図3に示すように、例えば通過P4の場合、d1は、可変形状ミラー4と第1のレンズf1との間のレーザビーム3の経路の長さであり、d2は、第1のレンズf1と第2のレンズf2との間のレーザビーム3の経路の長さであり、d3は、第2のレンズf2と可変形状ミラー4との間のレーザビーム3の経路の長さであり、f1は、第1のレンズf1の焦点距離であり、f2は、第2のレンズf2の焦点距離である。
【0035】
アフォーカルシステム(d2=f1+f2)では、d1、d2、d3、f1及びf2が(薄レンズ形式で)以下の関係を満たす場合、可変形状ミラー4上のレーザビーム3の2つの連続する通過は共役である。
d1=f1/f2*(f1+f2-f1/f2*d3)
【0036】
各通過において可変形状ミラーの同じ表面直径を結像するために、アフォーカル望遠鏡の倍率を1:1に設定することができる。この場合、f1=f2であり、d1=2f1-d3である。d3=f1であれば、d1=f1となり、光学リレーシステムは4fシステムとなる。
【0037】
図4に示されるように、作動システムは、レーザ焦点6の3次元位置を、すなわち、軸方向Z並びに平面X、Y方向に制御する。システムは、レーザ焦点6の軸方向Z位置及び平面X、Y位置をそれぞれ制御するために使用される可変形状ミラー4及びガルバノメータ8を含む。
【0038】
Z軸上には、レーザビーム2を集束又は脱集束させることができる可変形状ミラー4が用いられる。可変形状ミラー4及びガルバノメータ8は、好ましくは、顕微鏡対物レンズ5の入口開口上の共役面に配置される。したがって、レーザビーム3は、顕微鏡対物レンズ5の入口開口の周りを旋回し、入射ビーム3の角度及びコリメーションの程度とは無関係に、同じオーバーフィルの程度を保持する。
【0039】
可変形状ミラー4は、111個のアクチュエータと、2kHzの更新レートを有する37個のピストン先端傾斜セグメントとを有する微小電気機械部品とすることができる。各セグメントの直径は700μmであり、アレイの開口は3.5mmであり、最大ダイナミックレンジ(ストローク)は5μmである。静電作動は、ナノメートル及びマイクロラジアンの分解能(波面分解能<15nm rms)で各セグメントの正確な位置決めを可能にする。
【0040】
レーザビーム3は、ガルバノメータ8、可変形状ミラー4、及び標準的な光学素子を介して顕微鏡対物レンズ5に案内される。レンズf7、f8及びf9、f10を有する2つのアフォーカルシステムは、好ましくは、2つのアクチュエータ4、8を顕微鏡対物レンズ5の入口開口と共役させ、レーザビーム3を拡大するために使用される。
【0041】
図4及び
図5は、平坦構成にある可変形状ミラー4を示す。
図4は、可変形状ミラー4を1回通過するレーザビーム3を示しており、
図5は、可変形状ミラー4を3回通過するレーザビーム3を示している。レーザ焦点6は、
図4及び
図5において同じ軸方向位置を有する。
【0042】
第2の実施形態では、
図6、
図7及び
図8に示されるように、可変形状ミラー4は、合焦構成である(すなわち、可変形状ミラー4は凹状構成である)。レーザビーム3が可変形状ミラー4を1回通過するとき(
図6)、レーザ焦点6の軸方向位置は、可変形状ミラーが平坦構成にあるとき(
図4)のレーザ焦点基準と比較して
lから減少する。レーザビーム3が可変形状ミラー4を2回通過するとき(
図7)、レーザ焦点6の軸方向位置は、可変形状ミラー4が平坦構成にあるときのレーザ焦点基準と比較して、約2
lから減少する。レーザビーム3が可変形状ミラー4を3回通過するとき(
図8)、レーザ焦点6の軸方向位置は、可変形状ミラー4が平坦構成にあるときのレーザ焦点基準と比較して約3
lから減少する。
【0043】
第3の実施形態では、
図9及び
図10に示されるように、可変形状ミラー4は、非合焦構成である(すなわち、可変形状ミラー4は凸状構成である)。レーザビーム3が可変形状ミラー4を1回通過するとき(
図9)、レーザ焦点6の軸方向位置は、可変形状ミラーが平坦構成にあるとき(
図4)のレーザ焦点基準と比較して
lから増加する。レーザビーム3が可変形状ミラー4を3回通過するとき(
図10)、レーザ焦点6の軸方向位置は、可変形状ミラー4が平坦構成にあるときのレーザ焦点基準と比較して約3
lから増加する。
【0044】
上述した作動システムは、本発明によるいくつかのデバイスで使用することができる。
【0045】
本発明によるデバイス10は、光学的操作のために、典型的には複数の物体を捕捉するために使用することができる(
図11)。この場合、レーザビーム3は、いくつかの捕捉点6の間で作動システム4、8によって偏向される。カメラ9は、捕捉された物体の各々の位置を判定する。
【0046】
図12に示すように、本発明によるデバイス10は、多光子重合に使用することができる。
【0047】
2つ以上の光子が、レーザ焦点6において「ボクセル」と呼ばれる非常に小さい体積で感光性ポリマー11によって同時に吸収され得る。化学反応が始まり、ボクセル内で液体モノマーが固体ポリマーとなり、構造体12が形成される。
【0048】
別の実施形態では、デバイス10は、共焦点顕微鏡デバイスである(
図13)。共焦点顕微鏡法は、画像形成において焦点外の光を遮断するために空間的ピンホール13を使用することによって、顕微鏡写真の光学的解像度及びコントラストを増加させるための光学的画像化技術である。
【0049】
システムは有利にはミラーのみを使用し、光路は双方向であるので、検出器は、放出された光が励起レーザビームと同じ経路に沿って戻る「デスキャン」構成で使用することができる。光電子増倍管などの高感度検出器14を用いてサンプル内の異なる深さで複数の2次元画像を捕捉することにより、物体内の3次元構造の再構成が可能になる。
【0050】
別の実施形態では、デバイス10は、多光子顕微鏡デバイスである(
図14)。二光子励起顕微鏡法は、厚さが約1ミリメートルまでの生体組織の撮像を可能にする蛍光撮像技術である。励起波長が発光波長よりも短い従来の蛍光顕微鏡法とは異なり、二光子励起は、発光よりも長い波長を有する2つの光子による同時励起を必要とする。二光子励起顕微鏡法は、典型的には、蛍光色素を励起することもできる近赤外励起光を使用する。次いで、サンプルからの蛍光は、光電子増倍管などの光検出器14によって収集される。
【0051】
最後の実施形態では、デバイス10は、カメラ9を使用する光遺伝学デバイスである(
図15)。光遺伝学は、最も一般的には、光感受性イオンチャネルを発現するように遺伝
子改変されたニューロンを制御するための光の使用を含む生物学的技術を指す。したがって、レーザビーム3は、感光性セル15を活性化するために使用される。