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  • 特許-3次元形状計測装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】3次元形状計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/25 20060101AFI20241127BHJP
【FI】
G01B11/25 H
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2024533205
(86)(22)【出願日】2023-12-04
(86)【国際出願番号】 JP2023043283
(87)【国際公開番号】W WO2024122494
(87)【国際公開日】2024-06-13
【審査請求日】2024-06-06
(31)【優先権主張番号】P 2022194894
(32)【優先日】2022-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】300074101
【氏名又は名称】株式会社レイマック
(74)【代理人】
【識別番号】100121337
【弁理士】
【氏名又は名称】藤河 恒生
(72)【発明者】
【氏名】畑辺 真也
(72)【発明者】
【氏名】永谷 弘之
(72)【発明者】
【氏名】上杉 真基
(72)【発明者】
【氏名】橋本 昭平
(72)【発明者】
【氏名】光藤 淳
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-189479(JP,A)
【文献】特開2003-50112(JP,A)
【文献】特開2010-256217(JP,A)
【文献】特開2012-93235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
投影制御部と、
該投影制御部により各々の点灯及び光の放射強度が制御され一列に並んだ複数個の光源及びそれらからの光を縞パターンにして通過させる縞パターン形成光学素子を有し、前記複数個の光源の各々が順次点灯することにより順次所定角度ずつ位相がシフトした縞パターンを物品に投影する投影部と、
前記縞パターンの各々が投影された前記物品を撮影して1組の撮影画像を得る撮影部と、
前記1組の撮影画像の画像処理を行い、かつ、前記縞パターン形成光学素子の周辺部分における光源側に取り付けられた照度センサを有して、該照度センサが検出した照度から多数の前記物品の順次計測中に前記複数個の光源の各々の光の放射強度の変化を検知して該複数個の光源の各々の光の放射強度を基準範囲に入るように調整する3次元形状計測処理部と、
を備えて前記物品の3次元形状を計測する3次元計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相シフト法を用いた3次元形状計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物品の3次元形状を非接触で計測するものとして、位相シフト法を用いた3次元形状計測装置が知られている。この3次元形状計測装置では、正弦波状に変化する縞パターンを物品の表面に投影部で投影しそれを撮影部で撮影するプロセスを、順次縞パターンの位相を所定角度(例えば、π/2或いは2π/3など)ずつシフトさせて1組(例えば、4枚或いは3枚など)の撮影画像を得る。そして、1組の撮影画像の画像処理を行うことにより、物品の3次元形状の計測が行われる。
【0003】
ここで、上記投影部には、例えば特許文献1に記載されているようなプロジェクタを用いるものや、例えば特許文献2に記載されているような一列に並んだ複数個の光源及びそれらからの光を縞パターンにして通過させる縞パターン形成光学素子を用いるものが知られている。後者は、前者に比べて、位相をシフトさせた縞パターンの高速な投影が可能であり低消費電力化や小型化も可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-281491号公報
【文献】特開2011-242178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載されているような複数個の光源を用いるものは、使用環境の変化(例えば、多数の物品の順次計測中の温度変化など)によって、光源の特性変化に光源間で差異が生じる場合が少なくない。そのために光源の光の放射強度の変化に光源間で差異が生じると、3次元形状の計測の誤差が大きくなる。
【0006】
本発明は、係る事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、投影装置に一列に並んだ複数個の光源及びそれらからの光を縞パターンにして通過させる縞パターン形成光学素子を用いる3次元形状計測装置において、使用環境の変化によって光源の特性変化に光源間で差異が生じても、3次元形状の計測の誤差が大きくならないようにできるものを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の実施形態に係る3次元形状計測装置は、投影制御部と、該投影制御部により各々の点灯及び光の放射強度が制御され一列に並んだ複数個の光源及びそれらからの光を縞パターンにして通過させる縞パターン形成光学素子を有し、前記複数個の光源の各々が順次点灯することにより順次所定角度ずつ位相がシフトした縞パターンを物品に投影する投影部と、前記縞パターンの各々が投影された前記物品を撮影して1組の撮影画像を得る撮影部と、前記1組の撮影画像の画像処理を行い、かつ、前記縞パターン形成光学素子の周辺部分における光源側に取り付けられた照度センサを有して、該照度センサが検出した照度から多数の前記物品の順次計測中に前記複数個の光源の各々の光の放射強度の変化を検知して該複数個の光源の各々の光の放射強度を基準範囲に入るように調整する3次元形状計測処理部と、を備えて前記物品の3次元形状を計測する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の3次元形状計測装置によれば、使用環境の変化によって光源の特性変化に光源間で差異が生じても、3次元形状の計測の誤差が大きくならないようにすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る3次元形状計測装置の概略を示す平面図である。
図2】同上の3次元形状計測装置の投影及び撮影のタイミングを簡略化して示す波形図である。
図3】同上の3次元形状計測装置における投影部を構成する各部を示すものであって、(a)が複数個の光源の正面図、(b)が複数個の光源及び縞パターン形成光学素子を収容した投影部ケースの正面図である。
図4】同上の3次元形状計測装置における投影部の複数個の光源の回路図である。
図5】同上の3次元形状計測装置における縞パターン形成光学素子の縦方向中央近傍を横方向に切断した平面視断面図であって、(a)が縞状に規則正しく複数個の透過部分が形成された例のもの、(b)が規則正しく複数個のシリンドリカルレンズが形成された例のものである。
図6】同上の3次元形状計測装置における1組の撮影画像の例の写真である。
図7】同上の3次元形状計測装置の変形例の概略を示す平面図である。
図8】同上の3次元形状計測装置の変形例における複数個の光源及び縞パターン形成光学素子を収容した投影部ケースの正面図である。
図9】同上の3次元形状計測装置の3次元形状計測処理部をコンピュータによって実現したときのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。本発明の実施形態に係る3次元形状計測装置1は、図1に示すように、投影制御部2と投影部3と撮影部4と3次元形状計測処理部5を備えている。3次元形状計測装置1は、位相シフト法を用いて物品Mの3次元形状を計測する。なお、図1(及び図7)における各部間などの矢印付き実線(及び破線)は、各制御信号等を模式的に示したものである。
【0011】
投影制御部2は、投影部3の後述する複数個の光源31A、31B、31C、31Dの各々の点灯及び光の放射強度を制御するものである。なお、光源の個数は、特に限定されるものではないが、4個或いは3個などが可能である。本実施形態では、光源の個数は、特に言及しなければ4個としている。
【0012】
詳細には、図2に示すように、同期信号SYに同期した投影期間Taに、複数個の光源31A、31B、31C、31Dの1個ずつに順次電流I、I、I、I図4参照)を供給して光を放射させる。投影期間Taは、予め設定された長さである。電流の供給は、PWMのパルス電流を用いることができる。PWMの周期Tbは、予め設定された長さである。PWMのパルス幅Tc、Tc、Tc、Tcは、光源31A、31B、31C、31Dの各々について制御され得、その幅を広くすると光の放射強度が高くなり、狭くすると光の放射強度が低くなる。なお、投影期間Taは、撮影部4における露光期間Td(図2において信号EXは露光のタイミングを示すものである)と同期している。また、図2においては、上記の周期Tb及びパルス幅Tc、Tc、Tc、Tcは、理解し易いように、拡大して示している。
【0013】
投影部3は、複数個(本実施形態では4個)の光源31A、31B、31C、31Dと縞パターン形成光学素子32を有している。複数個の光源31A、31B、31C、31Dと縞パターン形成光学素子32は、投影部ケース33に収容することができる。
【0014】
複数個の光源31A、31B、31C、31Dは、一列(横方向に一列)に並んでいる。複数個の光源31A、31B、31C、31Dの各々は、図3(a)に示すように、縦方向に一列に並んだ複数個(本実施形態では6個)の発光素子310で構成することができる。複数個の発光素子310は、回路的には、並列又は直列或いはそれらが組み合わせられて接続されており、例えば、図4に示すように、光源31A、31B、31C、31Dの各々について全てが直列に接続されるようにすることができる。
【0015】
なお、図4において、符号311で示すものは電流制限用の抵抗である。また、符号31Aa、31Ba、31Ca、31Daで示すものは電流流入端子であり、符号31Ab、31Bb、31Cb、31Dbで示すものは電流流出端子である。電流流入端子31Aa、31Ba、31Ca、31Daと電流流出端子31Ab、31Bb、31Cb、31Dbのどちらか一方は、複数個をまとめて共通に(1個に)することも可能である。
【0016】
縞パターン形成光学素子32は、複数個の光源31A、31B、31C、31Dからの光を縞パターンにして通過させる。縞パターン形成光学素子32は、図3(b)及び図5(a)に示すように、縞状(格子状)に規則正しく複数個の透過部分32aが形成されている。複数個の透過部分32aにおいて、複数個の光源31A、31B、31C、31Dからの光を通過させる。複数個の透過部分32a以外は、光を透過させない遮蔽部分32bである。本実施形態では、縞パターン形成光学素子32は、投影部ケース33の前面の後方に接近して配置されており、また、投影部ケース33の前面には、開口部33aが形成されている。縞パターン形成光学素子32の複数個の透過部分32aを透過した光は、開口部33aを通って投影部3の外部に放射される。なお、図3(b)及び図5(a)(及び図8)においては、縞パターン形成光学素子32の遮蔽部分32bは、理解を容易にするために黒で塗りつぶしている。
【0017】
縞パターン形成光学素子32は、縞状に規則正しく複数個の透過部分32aが形成されているものの他に、図5(b)に示すように、規則正しく複数個のシリンドリカルレンズ32cが形成されているものを用いることも可能である。複数個のシリンドリカルレンズ32cの各々は、凸レンズになっており、光を屈折させ集光して外部に放射する。それにより、この縞パターン形成光学素子32を通過した光は、縞パターンになる。このようなシリンドリカルレンズ32cが形成されている縞パターン形成光学素子32では、光が全て透過するので放射される光の量を多くすることができる。
【0018】
このような投影部3では、複数個の光源31A、31B、31C、31Dが順次点灯することにより、順次所定角度ずつ位相がシフトした縞パターンP1、P2、P3、P4を物品Mに投影する。投影部3から放射される縞パターンP1、P2、P3、P4は、光の放射強度が正弦波状に変化するものとなる。シフトする位相の所定角度は、本実施形態ではπ/2である。なお、光源の個数を3個とした場合は、2π/3となる。
【0019】
投影部3は、動作としては複数個の光源31A、31B、31C、31Dが順次点灯するだけなので、位相をシフトさせた縞パターンの高速な投影が可能であり低消費電力化や小型化も可能である。この小型化により、投影部3は、次に述べる撮影部4とともに、図1に示すように、1個の筐体1a内に容易に収容することができる。なお、図1では、筐体1a内に収容しない投影制御部2と3次元形状計測処理部5は、ブロック図で示している。
【0020】
撮影部4は、縞パターンP1、P2、P3、P4の各々が投影された物品Mを撮影して、図6(a)~(d)に示すような1組の撮影画像を得る。物品Mの背景(例えば、物品Mが置かれている台M’)が平坦であると、その背景に投影された縞パターンP1、P2、P3、P4の各々は一定の規則正しいものとなる。物品M(図6(a)~(d)では切妻形状の物品)に投影された縞パターンP1、P2、P3、P4の各々は、歪みが生じる。1組の撮影画像は、本実施形態では4枚である。なお、光源の個数を3個とした場合は、3枚となる。
【0021】
3次元形状計測処理部5は、前記1組の撮影画像の画像処理を行う。3次元形状計測処理部5では、物品Mに投影された縞パターンP1、P2、P3、P4の各々の歪みが位相解析され、それにより、物品Mの3次元形状の計測が行われることになる。
【0022】
また、3次元形状計測処理部5は、複数個の光源31A、31B、31C、31Dの各々の光の放射強度の変化を検知する。
【0023】
詳細には、3次元形状計測処理部5は、1組の撮影画像のうちの各々の撮影画像の予め決められた位置部分の輝度から複数個の光源31A、31B、31C、31Dの各々の光の放射強度の変化を検知することができる。例えば、予め決められた位置部分は、物品Mの背景(例えば、物品Mが置かれている台M’)において物品Mの影響を受けない(つまり、物品Mの有無によらない)一部(例えば、図6中、符号p1、p2、p3、p4で示す□で囲った部分)とすることができる。
【0024】
或いは、3次元形状計測処理部5は、図7及び図8に示すように、照度センサ51を有し、照度センサ51が検出した照度から複数個の光源31A、31B、31C、31Dの各々の光の放射強度の変化を検知することができる。例えば、照度センサ51は、特に限定されるものではないが、縞パターン形成光学素子32の上部又は下部などの周辺部分(遮蔽部分32bの一部)における光源側に取り付けられるようにすることができる(図7及び図8参照)。
【0025】
3次元形状計測処理部5は、複数個の光源31A、31B、31C、31Dの各々の放射強度の変化を検知すると、以下のようにして、物品Mの3次元形状の計測の誤差が大きくならないようにする。
【0026】
すなわち、3次元形状計測処理部5は、投影制御部2を介して、複数個の光源31A、31B、31C、31Dの各々の光の放射強度を調整する(図1及び図7においては、3次元形状計測処理部5から投影制御部2に向かう矢印付き破線を参照)。例えば、多数の物品Mの順次計測中に光源31A、31B、31C、31Dの光の放射強度が低下し、その低下の度合が光源間で差異が生じたとき、複数個の光源31A、31B、31C、31Dの各々の光の放射強度を基準範囲に入るように調整することができる。基準範囲は、キャリブレーション時などで予め決められた範囲であり、複数個の光源31A、31B、31C、31Dについて同じであってもよいし、3次元形状計測処理部5での画像処理時に明るさの補正を行えば、違う範囲であってもよい。また、基準範囲は、絶対値で決めてもよいし光源間の相対値で決めてもよい。
【0027】
又は、3次元形状計測処理部5は、撮影部4における露光時間(図2の露光期間Tdの長さ)、絞り値又はゲインを調整するようにすることも可能である(図1及び図7においては、3次元形状計測処理部5から撮影部4に向かう矢印付き破線を参照)。
【0028】
又は、3次元形状計測処理部5は、1組の撮影画像の明るさを調整(補正)するようにすることも可能である。
【0029】
3次元形状計測処理部5は、具体的には、例えば、図9に示すように、CPU5a、プログラムメモリ5b、ワークメモリ5c、入出力インターフェイス5d(図9では入出力端子を省略)などから構成されるコンピュータによって実現することができる。プログラムメモリ5bの中に、画像処理を行う画像処理プログラム5baと複数個の光源31A、31B、31C、31Dの各々の放射強度の変化を検知し上記のように調整する検知調整プログラム5bbが記憶されているようにすることができる。
【0030】
このように、3次元形状計測装置1は、使用環境の変化(例えば、多数の物品Mの順次計測中の温度変化など)によって、光源31A、31B、31C、31Dの特性変化に光源間で差異が生じても、物品Mの3次元形状の計測の誤差が大きくならないようにできる。
【0031】
以上、本発明の実施形態に係る3次元形状計測装置について説明したが、本発明は、実施形態に記載したものに限られることなく、請求の範囲に記載した事項の範囲内でのさまざまな設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 3次元形状計測装置
1a 筐体
2 投影制御部
3 投影部
31A、31B、31C、31D 光源
31Aa、31Ba、31Ca、31Da 電流流入端子
31Ab、31Bb、31Cb、31Db 電流流出端子
310 発光素子
311 抵抗
32 縞パターン形成光学素子
32a 透過部分
32b 遮蔽部分
32c シリンドリカルレンズ
33 投影部ケース
4 撮影部
5 3次元形状計測処理部
5a CPU
5b プログラムメモリ
5ba 画像処理プログラム
5bb 検知調整プログラム
5c ワークメモリ
5d 入出力インターフェイス
51 照度センサ
EX 露光のタイミングを示す信号
、I、I、I 光源に流れる電流
M 物品
M’ 台
P1、P2、P3、P4 縞パターン
p1、p2、p3、p4 縞パターンが写った撮影画像の一部
SY 同期信号
Ta 投影期間
Tb PWMの周期
Tc、Tc、Tc、Tc PWMのパルス幅
Td 露光期間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9