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  • 特許-ヨウ素錯体及びその製造方法並びに使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】ヨウ素錯体及びその製造方法並びに使用
(51)【国際特許分類】
   C08L 15/00 20060101AFI20241127BHJP
   C08K 3/02 20060101ALI20241127BHJP
   C08C 19/00 20060101ALI20241127BHJP
   C08F 8/08 20060101ALI20241127BHJP
   A61K 33/18 20060101ALI20241127BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20241127BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20241127BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
C08L15/00
C08K3/02
C08C19/00
C08F8/08
A61K33/18
A61P3/00
A61K47/32
G02B5/30
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021502960
(86)(22)【出願日】2020-03-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-19
(86)【国際出願番号】 CN2020078730
(87)【国際公開番号】W WO2020199872
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】201910263342.5
(32)【優先日】2019-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521021546
【氏名又は名称】北京諾維新材科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】楊建春
(72)【発明者】
【氏名】楊冬梅
(72)【発明者】
【氏名】宴成強
(72)【発明者】
【氏名】朱榮欣
(72)【発明者】
【氏名】汪帆
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-505701(JP,A)
【文献】特開2014-119501(JP,A)
【文献】特開2019-053279(JP,A)
【文献】特開2009-173727(JP,A)
【文献】特開昭51-092888(JP,A)
【文献】KIKUKAWA, Kiyoshi et al.,Effect of 1,2-Glycol Structure and Stereoregularity of Poly(vinyl alcohol) on Poly(vinyl alcohol)-Iodine Reactions,Polymer Journal,1971年03月01日,Vol.2, No.2,212-219
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
C08F6/00-246/00
C08C19/00-19/44
A61K9/00-9/72
A61K47/00-47/69
A61K31/33-33/44
G02B5/30
JMEDPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される構造単位と、必要に応じ、式(II)、式(III)並びに式(IV)で表される構造単位から選ばれた少なくとも1種と、を含むポリマーを担体として、ヨウ素と錯体化して得られたヨウ素錯体。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

式(I)中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、同一でも異なっても良く、各自独立的にHと、C1-8アルキル基と、未置換または任意に1個、2個または複数個のRaで置換されたC6-20アリール基と、から選ばれる;各々のRaは、同一でも異なっても良く、各自独立的にC1-12アルキル基から選ばれる;
aは、50以上の整数であり、eは1以上の整数であり、b、c、d及びfは、各自独立的に0又は0より大きい整数である;
式(II)中、R19は、Hと、シアノと、C1-8アルキル基と、未置換または任意に1個、2個または複数個のRaで置換されたC3-10シクロアルキル基と、未置換または任意に1個、2個または複数個のRaで置換されたC6-20アリール基と、から選ばれる;各々のRaは同一でも異なっても良く、各自独立的にC1-12アルキル基から選ばれる;
gは、1又は1より大きい整数である;
式(III)中、R13、R16、R17及びR18は、同一でも異なっても良く、各自独立的にHと、C1-8アルキル基と、未置換または任意に1個、2個または複数個のRaで置換されたC6-20アリール基と、から選ばれる;各々のRaは、同一でも異なっても良く、各自独立的にC1-12アルキル基から選ばれる;
h、i、j、k及びn’は、各自独立的に1より大きか同じ整数である;
式(IV)中、R7、R8、R9、R10、R11及びR12は、同一でも異なっても良く、各自独立的にHと、C1-8アルキル基と、未置換または任意に1個、2個または複数個のRaに置換されたC6-20アリール基と、から選ばれる;
各々のRaは、同一でも異なっても良く、各自独立的にC1-12アルキル基から選ばれる;
a’、b’、c’、d’、e’及びf’は、各自独立的に0又は0より大きい整数であり、かつ、同時に0になることではない。
【請求項2】
R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、同一でも異なっても良く、各自独立的にHと、C1-4アルキル基と、未置換または任意に1個、2個または複数個のRaで置換されたC6-10アリール基と、から選ばれて、Raの定義は上記と同様である、請求項1に記載のヨウ素錯体。
【請求項3】
R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、同一でも異なっても良く、各自独立的にHと、メチル基と、フェニルと、トリルと、から選ばれる、請求項1に記載のヨウ素錯体。
【請求項4】
aは、50-20000の整数であり、bは0-2000の整数であり;cは、0-2000の整数であり;dは、0-2000の整数であり;eは、1-20000の整数であり;fは、0-2000の整数である、請求項1に記載のヨウ素錯体。
【請求項5】
aは、50-3000の整数である、請求項1に記載のヨウ素錯体。
【請求項6】
R19は、Hと、シアノ基と、C1-4アルキル基と、未置換または任意に1個、2個または複数個のRaで置換されたC6-10アリール基と、から選ばれる;Raの定義は上記と同様である、請求項1に記載のヨウ素錯体。
【請求項7】
R19は、フェニル基と、トリルと、シアノと、から選ばれ、
gは、1-10000の整数である、請求項1に記載のヨウ素錯体。
【請求項8】
R7、R8、R9、R10、R11及びR12は、同一でも異なっても良く、各自独立的に、Hと、C1-4アルキル基と、未置換または任意に1個、2個または複数個のRaで置換されたC6-10アリール基と、から選ばれる;Raの定義は上記と同様である、請求項6に記載のヨウ素錯体。
【請求項9】
a’は、0-20000の整数であり;b’は0-2000の整数であり;c’は0-2000の整数であり; d’は0-2000の整数であり;e’は0-10000の整数であり;f’は0-2000の整数である、請求項1に記載のヨウ素錯体。
【請求項10】
a’とe’とは、同時に0になることではない;
及び/又は、R7、R8、R9、R10、R11及びR12は、同一でも異なっても良く、各自独立的にHと、メチルと、フェニルと、トリルと、から選ばれる、請求項1に記載のヨウ素錯体。
【請求項11】
R13、R16、R17及びR18は、同一でも異なっても良く、各自独立的に、Hと、C1-4アルキル基と、未置換または任意に1個、2個または複数個のRaで置換されたC6-10アリール基と、から選ばれる;Raの定義は上記と同様である;
hは0-2000の整数であり;iは0-2000の整数であり;jは0-2000の整数であり;kは0-2000の整数である、請求項1に記載のヨウ素錯体。
【請求項12】
R13、R16、R17及びR18は、同一でも異なっても良く、各自独立的に、Hと、メチル基と、フェニルと、トリル、とから選ばれる;
及び/又は、n’は1-10の整数である、請求項1に記載のヨウ素錯体。
【請求項13】
上記ヨウ素は、ヨード分子と、ヨード分子がヨウ素イオンと結合したポリヨウ素イオンと、の1種、またはそれらの混合物である、請求項1に記載のヨウ素錯体。
【請求項14】
上記ポリマーは、ホモ重合体、ランダム共重合体またはブロック共重合体である;
及び/又は、上記ヨウ素錯体中のポリマーとヨウ素との質量比は1:0.00001-1.5である、請求項1に記載のヨウ素錯体。
【請求項15】
以下の工程を含む請求項1-14の何れか一項に記載のヨウ素錯体の製造方法:
式(I)で表される構造単位と、必要に応じて式(II)、式(III)及び式(IV)で表される構造単位から選ばれる少なくとも1種と、を含むポリマーを、ヨウ素と反応させることで、上記ヨウ素錯体を製造し得る;
その内、上記反応は、気固反応、固液反応、または液液単相反応であり;
気固反応とは、ヨウ素を含む気体を、式(I)で表される構造単位と必要に応じて式(II)、式(III)、及び式(IV)で表される構造単位から選ばれる少なくとも1種とを含むポリマー固体と接触反応させることである;
固液反応とは、ヨウ素を含む溶液を、式(I)で表される構造単位と必要に応じて式(II)、式(III)、及び式(IV)で表される構造単位から選ばれる少なくとも1種とを含むポリマー固体と反応させることである;
液液単相反応とは、ヨウ素を含む溶液を、式(I)で表される構造単位と必要に応じて式(II)、式(III)、式(IV)で表される構造単位から選ばれる少なくとも1種とを含むポリマーの溶液と混合することでなる単相反応である。
【請求項16】
反応温度は-20℃~110℃であり、反応時間は0.5-250hである請求項15に記載の方法。
又は、式(I)で表される構造単位を含むポリマーは以下の方法で製造し得ることができる:
(i)式(V)で表される構造単位を含むポリマーを、酸化反応させることでエポキシ化ポリマーを製造しうる;
【化5】

式(V)中、x=a+b+c、y=d+e+f;R1、R2、R3、R4、R5、R6、a、b、c、d、e及びfの定義は上記と同様である;
(ii)エポキシ化ポリマーを加水分解させるか、または先ず加水分解したあとに水素化触媒反応させるか、または先ず水素化触媒反応したあとに加水分解させることで上記式(I)で表される構造単位を含むポリマーを製造し得る。
【請求項17】
式(V)で表される構造単位を含むポリマーは、さらに式(II)、式(VI)、及び式(VII)で表される構造単位中の少なくとも1種を含む、請求項16の方法。
【化6】

式(II)中、R19及びgの定義は上記と同様である;
【化7】

式(VI)中、n=h+i+j+k、R13、R16、R17、R18、h、i、j、kおよびn’の定義は上記と同様である;
【化8】

式(VII)中、x’=a’+b’+c’、y’=d’+e’+f’;R7、R8、R9、R10、R11、R12、a’、b’、c’、d’、e’およびf’の定義は上記と同様である。
【請求項18】
請求項1-14の何れか一項に記載のヨウ素錯体の、放射線マーカー物における使用。
【請求項19】
上記放射線マーカー物は、放射線不透過性マーカー物である、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
請求項1-14の何れか一項に記載のヨウ素錯体の、ヨウ素治療剤における使用。
【請求項21】
請求項1-14の何れか一項に記載のヨウ素錯体の、偏光フィルムにおける使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願では、2019年4月2日、中国国家知的財産権局へ提出した特許の出願番号が201910263342.5で、発明名称が「ヨウ素錯体及びその製造方法と使用」である先行出願の優先権を主張し、当先行出願の全文を引用することで本出願に編み込む。
〔技術分野〕
本発明は、ヨウ素錯体の技術分野に属し、具体的に、ヨウ素錯体およびその製造方法ならびに放射線マーカー物としての使用、またはヨウ素治療剤、または偏光フィルムにおける使用に関するものである。
〔背景技術〕
ヨードは動植物の生命おいて極めて重要な元素の1つであり、人体に必需とされる微量元素でもある。ヨードは、数多くの物質と錯化反応を起こす。例えば、アミノ酸とポリビニルピロリドン(PVP)とを錯化し得られた錯体は水溶性であり、よく植物栄養剤、消毒剤、殺菌剤などとして使われている。ところが、これらの物質がヨードとの錯化で得られた錯体は水および/またはアルコールに易溶性のため、それらの活用範囲を制限している。
【0002】
自然界では、デンプンと、ヨウ素と、が、形成する錯体は620~680nmで最大吸収に達し、青紫色を示すため、多くのヨードによる化学滴定ではデンプンを指示薬として採用する。アミロースは、水中で膨潤、溶解することができるが、ブドウ糖のヒドロキシ基の水素結合によって形成された螺旋構造が破壊されるため、溶解状態でのデンプンはヨードとの結合能が激減される。
【0003】
ヨードおよびヨウ化物は放射線不透過性を持つため、造影剤の主成分となっている。放射性をもつヨウ素131、ヨウ素125およびヨウ素123などを化合物担体に引き込むことで放射性標識化合物を製造し、それをタンパク質のヨウ化標識に応用できる。但し、既存の化合物担体には結合能に限界があるため、ヨウ素の結合量が限られている。従って、適切な化合物担体を探り出すことは、従来通りこれらの活用分野における重要な研究課題の一つである。
【0004】
ポリビニルアルコール(PVA)フィルムをヨウ素で染色した後に延伸すると、ヨード分子がPVAフィルムにを秩序整然と配列され、均一な双方向吸収性をもつ偏光フィルムを形成する。PVAは、酢酸ビニルポリマーの加水分解から得られるため、製造中での重合度と、エステル基の加水分解程度と、ポリマーの構造と、は、PVAのヨウ素への結合能力に影響を与えている;PVAは強水溶性をもつ;PVAとヨード分子との結合能は弱く、PVAヨウ素フィルムは受熱されるだけでヨウ素の流失を起こす。PVAヨウ素フィルムの高温高湿環境での耐久性を高めることは、偏光フィルムに置けるいつもの技術難題と研究ブームである。
〔発明内容〕
従来技術の不足を改善するため、本発明の目的としては、ヨウ素錯体およびその製造方法並びに使用を提供することとするが、上記ヨウ素錯体を、放射性マーカー物(例:放射線不透過性マーカー物)として使うとか、ヨウ素治療薬の製造に用いるとか、偏光フイルムの製造に用ることすらできる;上記ヨウ素錯体は、ポリマー担体とヨウ素の錯化により形成されたものであり、上記ポリマー担体は良好な生体適合性を有する。上記ヨウ素錯体におけるヨウ素の含有量は、必要に応じて調整できるもので、例として上記ヨウ素の質量含有量は、0.001~60wt%内で可調整である。
【0005】
以下の技術案にて本発明の目的を実現:
本発明では、式(I)で表される構造単位と、必要に応じ式(II)、式(III)及び式(IV)で表される構造単位から選ばれた少なくとも1種とを、含むポリマーをヨウ素担体とする使用を提供する。
【0006】
上記使用は以下を含む:
式(I)で表される構造単位と、必要に応じ式(II)、式(III)並びに式(IV)で表される構造単位から選ばれた少なくとも1種と、を含むポリマーを、担体としてヨウ素と錯化してヨウ素錯体が得られた:
【0007】
【化1】
【0008】
【化2】
【0009】
【化3】
【0010】
【化4】
【0011】
式(I)中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、同一でも異なっても良く、各自独立的にHと、C1-8アルキル基と、未置換または任意に1個、2個または複数個のRaで置換されたC6-20アリール基と、から選ばれる;各々のRaは、同一でも異なっても良く、各自独立的にC1-12アルキル基から選ばれる;
a、b、c、d、e及びfは、各自独立的に0又は0より大きい整数であるが、aとeとは、同時に0になることではない;
式(II)中、R19は、Hと、シアノと、C1-8アルキル基と、未置換または任意に1個、2個または複数個のRaで置換された基:C3-10シクロアルキル基と、C6-20アリール基と、から選ばれる;各々のRaは同一でも異なっても良く、各自独立的にC1-12アルキル基から選ばれる;
gは、1又は1より大きか整数である;
式(III)中、R13、R16、R17及びR18は同一でも異なっても良く、各自独立的にHと、C1-8アルキル基と、未置換または任意に1個、2個または複数個のRaで置換されたC6-20アリール基と、から選ばれる;各々のRaは同一でも異なっても良く、各自独立的にC1-12アルキル基から選ばれる;
h、i、j、k及びn’は、各自独立的に1又は1より大きい整数である;
式(IV)中、R7、R8、R9、R10、R11及びR12は、同一でも異なっても良く、各自独立的にHと、C1-8アルキル基と、未置換または任意に1個、2個または複数個のRaで置換されたC6-20アリール基と、から選ばれる;各々のRaは、同一でも異なっても良く、各自独立的にC1-12アルキル基から選ばれる;
a’、b’、c’、d’、e’及びf’は、各自独立的に0又は0より大きい整数であり、かつ、同時に0になることではない。
【0012】
本発明ではさらにヨウ素錯体を提供する。上記ヨウ素錯体は、式(I)で表される構造単位と、必要に応じ式(II)、式(III)及び式(IV)で表される構造単位から選ばれた少なくとも1種と、を含むポリマーを、担体としてヨウ素と錯体化して得られたヨウ素錯体である:
【0013】
【化5】
【0014】
【化6】
【0015】
【化7】
【0016】
【化8】
【0017】
式(I)中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、同一でも異なっても良く、各自独立的にHと、C1-8アルキル基と、未置換または任意に1個、2個または複数個のRaで置換されたC6-20アリール基と、から選ばれる;各々のRaは、同一でも異なっても良く、各自独立的にC1-12アルキル基から選ばれる;
a、b、c、d、e及びfは、各自独立的に0又は0より大きい整数であり,かつ、aとeとは、同時に0になることではない;
式(II)中、R19は、Hと、シアノ基と、C1-8アルキル基と、未置換または任意に1個、2個または複数個のRaで置換されたC3-10シクロアルキル基と、未置換または任意に1個、2個または複数個のRaで置換されたC6-20アリール基と、から選ばれる;各々のRaは、同一でも異なっても良く、各自独立的にC1-12アルキル基から選ばれる;
gは、1又は1より大きい整数である;
式(III)中、R13、R16、R17及びR18は、同一でも異なっても良く、各自独立的にHと、C1-8アルキル基と、未置換または任意に1個、2個または複数個のRaで置換されたC6-20アリール基と、から選ばれる;各々のRaは、同一でも異なっても良く、各自独立的にC1-12アルキル基から選ばれる;
h、i、j、k及びn’は、各自独立的に1又は1より大きい整数である;
式(IV)中、R7、R8、R9、R10、R11及びR12は、同一でも異なっても良く、各自独立的にHと、C1-8アルキル基と、未置換または任意に1個、2個または複数個のRaで置換されたC6-20アリール基と、から選ばれる;
各々のRaは、同一でも異なっても良く、各自独立的にC1-12アルキル基から選ばれる;
a’、b’、c’、d’、e’及びf’は、各自独立的に0又は0より大きい整数であり、かつ、同時に0になることではない。
【0018】
本発明において、上記錯体化とは、ヨウ素とポリマー分子との間に形成された配位子結合および/またはファンデルワールス力結合を含むが、これらに限らない。例として、上記ポリマーは、2対のo-ヒドロキシル基における酸素原子が提供する孤立電子対の、ヨウ素が提供する空準位との結合から形成される錯体である;例としては以下の結合方法を採用:
【0019】
【化9】
【0020】
本発明において、上記ヨウ素は、ヨード分子と、ヨード分子がヨウ素イオンと結合したポリヨウ素イオンと、の1種であり、またはそれらの混合物である。
【0021】
本発明において、上記ポリマーは、ホモポリマーであっても良く、ランダム共重合体またはブロック共重合体であってもよい。
【0022】
本発明において、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、同一でも異なっても良く、各自独立的にHと、C1-4アルキル基と、未置換または任意に1個、2個または複数個のRaで置換されたC6-10アリール基と、から選ばれる;Raの定義は上記と同様である。好ましくは、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、同一でも異なっても良く、各自独立的にHと、メチル基と、フェニルと、トリルと、から選ばれる。更に好ましくは、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、同一でも異なっても良く、各自独立的にHと、メチル基と、から選ばれる。最も好ましくは、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、同じであり、Hから選ばれる。
【0023】
本発明において、R19は、Hと、シアノ基と、C1-4アルキル基と、未置換または任意に1個、2個または複数個のRaで置換されたC6-10アリール基と、から選ばれる;Raの定義は上記と同様である。好ましくは、R19は、フェニル基と、トリルと、シアノと、から選ばれる。
【0024】
本発明において、R7、R8、R9、R10、R11及びR12は、同一でも異なっても良く、各自独立的に、Hと、C1-4アルキル基と、未置換または任意に1個、2個または複数個のRaで置換されたC6-10アリール基と、から選ばれる;Raの定義は上記と同様である。好ましくは、R7、R8、R9、R10、R11及びR12は、同一でも異なっても良く、各自独立的にHと、メチルと、フェニルと、トリルと、から選ばれる;より好ましくは、R7、R8、R9、R10、R11及びR12は、同一でも異なっても良く、各自独立的に、Hと、メチル基と、から選ばれる;さらに好ましくは、R7、R8、R9、R10、R11及びR12は、同じであり、Hから選ばれる。
【0025】
本発明において、R13、R16、R17及びR18は、同一でも異なっても良く、各自独立的に、Hと、C1-4アルキル基と、未置換または任意に1個、2個または複数個のRaで置換されたC6-10アリール基と、から選ばれる;Raの定義は上記と同様である。好ましくは、R13、R16、R17及びR18は、同一でも異なっても良く、各自独立的に、Hと、メチル基と、フェニルと、トリル、とから選ばれる;より好ましくは、R13、R16、R17及びR18は、同一でも異なっても良く、各自独立的に、Hと、メチル基と、から選ばれる。最も好ましくは、R13、R16、R17及びR18は、同じであり、Hから選ばれる。
【0026】
本発明において、aは、0-20000の整数であり、例えば、aは、1、50、500、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000、12000、15000、18000、20000が挙げられ、例えばaは、1-7000の整数であってもよい;好ましくは、aは50-3000の整数である。
【0027】
本発明において、bは0-2000の整数であり、例えば1、5、50、100、500、1000、1500または2000である;cは、0-2000の整数であり、例えば1、5、50、100、500、1000、1500または2000である;dは、0-2000の整数であり、例として1、5、50、100、500、1000、1500または2000である;eは、0-20000の整数であり、例えば1、50、500、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000、12000、15000、18000または20000である;fは、0-2000の整数であり、例えば1、5、50、100、500、1000、1500または2000である。
【0028】
本発明において、gは1-10000の整数であり、例えば1、50、500、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000または10000である。
【0029】
本発明において、a’は、1-20000の整数であり、例えば1、50、500、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000、12000、15000、18000または20000である;b’は0-2000の整数であり、例えば1、5、50、100、500、1000、1500または2000である;c’は0-2000の整数であり、例えば1、5、50、100、500、1000、1500または2000である;d’は0-2000の整数であり、例えば1、5、50、100、500、1000、1500または2000である;e’は0-10000の整数であり、例えば1、50、500、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000または10000である;f’は0-2000の整数であり、例えば1、5、50、100、500、1000、1500または2000である。好ましくは、a’はe’と同時に0になることではない。
【0030】
本発明において、hは0-2000の整数であり、例えば1、5、50、100、500、1000、1500または2000である;iは0-2000の整数であり、例えば1、5、50、100、500、1000、1500または2000である;jは0-2000の整数であり、例えば1、5、50、100、500、1000、1500または2000である;kは0-2000の整数であり、例えば1、5、50、100、500、1000、1500または2000である。
【0031】
本発明において、n’は1-10の整数であり、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9または10である。好ましくはn’は1または2である。
【0032】
本発明において、上記ヨウ素錯体におけるポリマーとヨウ素との質量比は、1:0.00001-1.5であり、例えば1:0.00001、1:0.0001、1:0.001、1:0.005、1:0.01、1:0.05、1:0.1、1:0.2、1:0.3、1:0.4、1:0.5、1:0.6、1:0.7、1:0.8、1:0.9、1:1、1:1.2または1:1.5である。
【0033】
本発明では、さらに、上記ヨウ素錯体の製造方法を提供し、その方法とは以下の工程を含む:
式(I)で表される構造単位と、必要に応じ式(II)、式(III)及び式(IV)で表される構造単位から選ばれた少なくとも1種とを含むポリマーを、ヨウ素と反応することで、上記ヨウ素錯体を製造し得る。
【0034】
その内、上記反応は、気固反応であったり、固液反応であったり、または液液単相反応であってもよい;
気固反応とは、ヨウ素を含む気体を、式(I)で表される構造単位と必要に応じ式(II)、式(III)、及び式(IV)で表される構造単位から選ばれた少なくとも1種とを含むポリマー固体と接触反応させることである;
固液反応とは、ヨウ素を含む溶液を、式(I)で表される構造単位と必要に応じ式(II)、式(III)、及び式(IV)で表される構造単位から選ばれた少なくとも1種とを含むポリマー固体と、反応させることである;
液液単相反応とは、ヨウ素を含む溶液を、式(I)で表される構造単位と必要に応じ式(II)、式(III)、及び式(IV)で表される構造単位から選ばれた少なくとも1種とを含むポリマーの溶液と混合することでなる単相反応である。
【0035】
本発明では、上記の反応温度および上記の反応時間に対して、当業者が、合理的に調整できることにより、必要なヨウ素含有量のヨウ素錯体を製造し得る;例示的に、上記の反応温度はマイナス20℃~110℃であり、反応時間は0.5-250hである。
【0036】
本発明において、上記反応は密閉条件で行う。
【0037】
本発明において、上記のヨウ素含有ガスは、固体ヨウ素単体を昇華して得られたガスでよい。上記のヨウ素含有溶液は、固体ヨウ素単体、またはポリヨウ素イオンを含む物質と溶媒とからなるヨウ素含有溶液であってよい。上記溶媒としては、例えば、水、ジメチルスルホキシド、酢酸、エタノールなどであり得る;上記ヨウ素含有固体は、ヨウ素単体であったり、またはポリヨウ素イオン含有物質であり得る。上記式(I)で表される構造単位と、必要に応じ式(II)、式(III)、式(IV)が示す構造単から選ばれた少なくとも1種と、を含むポリマーの溶液は、式(I)で表される構造単位と、少なくとも式(II)、式(III)、式(IV)で表される構造単位から任意に選ばれたの1種と、を含むポリマー固体と有機溶媒とからなる溶液である。上記有機溶媒は、例えば、ジメチルスルホキシド、酢酸、エタノールなどであり得る。
【0038】
本発明において、式(I)で表される構造単位を含むポリマーは以下の方法で製造し得ることができる。
【0039】
(i)式(V)で表される構造単位を含むポリマーを酸化反応させることでエポキシ化ポリマーを製造しうる。
【0040】
【化10】
【0041】
式(V)中、x=a+b+c、y=d+e+f;R1、R2、R3、R4、R5、R6、a、b、c、d、e及びfの定義は上記と同様である;
(ii)エポキシ化ポリマーを加水分解させるか、または先ず加水分解したあとに接触水素化反応させるか、または先ず接触水素化反応したあとに加水分解させることで上記ポリマー生成物を製造し得る。
【0042】
本発明において、式(V)で表される構造単位を含むポリマーは、さらに式(II)、式(VI)、及び式(VII)で表される構造単位の少なくとも1種を含んでもよい:
【0043】
【化11】
【0044】
式(II)中、R19及びgの定義は上記と同様である;
【0045】
【化12】
【0046】
式(VI)中、n=h+i+j+k、R13、R16、R17、R18、h、i、j、kおよびn’ の定義は上記と同様である;
【0047】
【化13】
【0048】
式(VII)中、x’=a’+b’+c’、y’=d’+e’+f’;R7、R8、R9、R10、R11、R12、a’、b’、c’、d’、e’およびf’ の定義は上記と同様である。
【0049】
本発明において、工程(i)のうち、式(V)で表される構造単位を含むポリマーは、共役ジエン(dienes)系モノマーの重合から得られるものでよく、上記共役ジエン系モノマーとしては、たとえば1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエンまたはイソプレンでよい。
【0050】
工程(i)中、式(V)で表される構造単位と、式(II)および/または式(VI)で表される構造単位の少なくとも1種と、を含むポリマーは、共役ジエン(dienes)系モノマーを、
R19-CH=CH2および/または
【0051】
【化14】
【0052】
で表される構造モノマーの少なくとも1種と、共重合させることで得られるものであり、上記共役ジエン(dienes)系モノマーとしては、たとえば1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエンまたはイソプレンでよく、上記R19、R13、R16、R17、R18およびn’の定義は上記と同様である。
【0053】
工程(i)中、式(V)で表される構造単位と、少なくとも1種の式(VII)で表される構造単位と、を、含むポリマーは、少なくとも2種の共役ジエン系モノマーの共重合により得られるものであり、上記共役ジエン系モノマーは例えば1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエンまたはイソプレンでよい。
【0054】
工程(i)中、式(V)で表される構造単位と、少なくとも1種の式(VII)で表される構造単位と、少なくとも1種の式(II)および/または式(VI)で表される構造単位と、を、含むポリマーは、少なくとも2種の共役ジエン系モノマーが、少なくとも1種のR19-CH=CH2および/または
【0055】
【化15】
【0056】
が示す構造モノマーと共重合されることで得られるものであり、上記共役ジエン系モノマーは例えば1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエンまたはイソプレンであっても良く、上記R19、R13、R16、R17、R18及びn’ の定義は上記と同様である。
【0057】
具体的には、式(V)で表される構造単位を含むポリマーの製造方法は下記の通り:
連続型の溶液重合方法を採用し、共役ジエン(例、1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエンまたはイソプレン)を、アルカン、芳香族炭化水素またはその二者の混合物(例、トルエン-ヘプタン混合物)溶媒と混合し、30-65℃で、開始剤(例、ナフテン酸ニッケル-BF3-Et3Al)にて反応を開始させ、必要に応じ分子量調整剤(例、オクタノールなどアルコール系)を添加することで分子量を調整し、重合停止剤(例、エタノールなど)を添加して重合を停止させることで、式(V)で表される構造単位を含むポリマーを製造し得る。
【0058】
本発明において、工程(i)のうち、上記酸化反応は、クロロヒドリン法、過酸化物のエポキシ化法または酸素による直接酸化法を含むが、これらに限らない。上記酸化反応はエポキシ化反応であり、上記酸化反応は部分エポキシ化でもよいし、完全エポキシ化でもよい。
【0059】
例示的に、上記の過酸化物は、過酸化水素、過ギ酸、過酢酸、過安息香酸、3-クロロ過安息香酸、tert-ブチルヒドロペルオキシドなどの1種または複数種の混合物を用いることができる。
【0060】
例示的に、上記の酸化反応は、ポリマーを含む有機溶媒のなかで行われてもよいし、水/有機溶媒の乳液中で行われてもよい。上記有機溶媒は、脂肪族アルカン、ハロゲン化脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、環状アルカン、石油系溶媒などが含まれるが、これらに限られない。好ましくは、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ジクロロメタン、ベンゼン、トルエン、石油系溶媒などを選ぶ。上記酸化反応の温度は0-120℃であるが、好ましくは、20-80℃である。
【0061】
本発明において、工程(ii)のうち、上記接触水素化反応は、接触水素化などの方法でエポキシ化ポリマーのエポキシ環を開環させることで、C-C連鎖にヒドロキシ基を含むポリマーを得ることができる;上記加水分解は、一般的な酸性物質またはアルカリ性物質にてエポキシ化ポリマーを加水分解させることで、エポキシ環を開環させC-C連鎖にo-ビスヒドロキシ基を含むポリマーを得ることができる。上記接触水素化反応は、部分的接触水素化でもよいし、完全接触水素化でもよい。上記加水分解反応も、部分的の加水分解でもよいし、完全な加水分解でもよい。上記記載の接触水素化反応および加水分解反応の具体的な反応条件と材料の配合割合などはすべて当該分野内の一般的なやり方を選択し、特に制限はしないが、本出願の式(I)で表される構造単位のポリマーを製造することすらできればよいものとする。
【0062】
例示的に、上記酸性物質には、ハロゲン化水素水溶液、硫酸、硝酸などの無機酸;アルキルスルホン酸などの有機酸;固体酸;ヘテロポリ酸が含まれる。
【0063】
例示的に、上記アルカリ性物質には、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩の水溶液が含まれる。
【0064】
例示的に、上記接触水素化は、ラネーニッケル、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウムまたは白金、パラジウムなどの触媒作用の下で行われる。
【0065】
例示的に、上記接触水素化反応は、ポリマーを含む有機溶媒中で行うこともできるし、または水/有機溶媒の乳液中で行うこともできるが、上記有機溶媒には、脂肪族アルカン、ハロゲン化脂肪族炭化水素、環状アルカン、石油系溶媒、環状エーテル化合物、アルコールなどが含まれるが、これらに限られない。好ましくは、ヘキサン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノールなどを採用する。上記接触水素化反応の温度は0~120℃であり、好ましくは20~80℃である。
【0066】
例示的に、上記加水分解反応は、ポリマーを含む有機溶媒中で行うこともできるし、または水/有機溶媒の乳液中で行うこともできるが、上記有機溶媒には、脂肪族アルカン、ハロゲン化脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、環状アルカン、石油系溶媒、環状エーテル化合物、スルホキシド、スルホン、ピロリジノン、メチルピロリジノンなどが含まれるが、これらに限られない。好ましくは、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、メチルピロリジノンなどである。上記加水分解反応の温度は-20~150℃であり、好ましくは-10~80℃である。
【0067】
本発明ではさらに、上記ヨウ素錯体を放射線マーカー物とする使用と、またはヨウ素治療剤中での使用、または偏光フィルム中での使用を提供する。
【0068】
好ましくは、上記放射線マーカー物は、放射線不透過性マーカー物である。
用語および解釈:
用語「C1-12アルキル」は、1-12個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖飽和一価炭化水素基を優先的に表現していると理解されるべく、好ましくは、C1-8アルキルである。「C1-8アルキル」は、1、2、3、4、5、6、7または8個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖飽和一価炭化水素基を優先的に表現していると理解されるべきである。上記アルキルは、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソペンチル、2-メチルブチル、1-メチルブチル 、1-エチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、ネオペンチル、1,1-ジメチルプロピル、4-メチルペンチル、3-メチルペンチル、2-メチルペンチル、1-メチルペンチル、2-エチルブチル、1-エチルブチル、3,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、1,1-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、または1,2-ジメチルブチルなど、またはそれらの異性体である。特に、上記基は、1、2、3、4、5または6個の炭素原子を有する(“C1-6アルキル基”)が、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチルがあり、より特に、上記基は1、2または3個の炭素原子を有する( "C1-3 アルキル ")が、例えばメチル、エチル、n-プロピルまたはイソプロピルがある。
【0069】
用語「C6-20アリール基」は、6-20個の炭素原子を有する一価芳香族性または部分芳香族性の単環式、二環式または三環式の環状炭化水素を優先的に表現していると理解されるべく、好ましくは、C6-14アリール基である。用語「C6-14アリール基」は、6、7、8、9、10、11、12、13または14個の炭素原子を有する一価芳香族性または部分芳香族性の単環式、二環式または三環式の環状炭化水素(C6-14アリール基)を優先的に表現していると理解されるべく、特に、6個の炭素原子を有する環(Cアリール基)であるが、例えば、フェニルであったり、またはビフェニル基であったり、または9個の炭素原子を有する環(C9アリール基)であるが、例えば、インダニルまたはインデニルがあるし、または10個の炭素原子を有する環(C10アリール基)であるが、例えば、テトラヒドロナフチル、ジヒドロナフチルまたはナフチルがあるし、または13個の炭素原子を有する環(C13アリール基)であるが、例えば、フルオレニルがあるし、または14個の炭素原子を有する環(C14アリール基)であるが、例えば、アントラセニルがある。
〔発明の効果〕
本発明では、ヨウ素錯体およびその製造方法ならびに放射線マーカー物としての使用、またはヨウ素治療剤中での使用、または偏光フィルム中での使用を提供している。上記ヨウ素錯体は、ポリマー担体とヨウ素との錯体化により形成されるものであり、上記ポリマー担体は良好な生体適合性をもつ一方、当該ヨウ素錯体はヨウ素の溶出率が低いため、放射線マーカー物として使ったり、またはヨウ素治療薬の製造に用いたり、または偏光フィルムの製造に用いたりすることができる。そして、本発明が提供する製造方法において、上記ヨウ素錯体中のヨウ素の含有量は、必要に応じて調整することができるし、そのヨウ素の含有量は、0.001~60%内で可調整である。ヨウ素含有量の違いは、その放射線マーカー物としての透過解像度およびヨウ素治療薬の使用量に影響を与えている。
〔添付図の説明〕
図1は、実施例5のヨウ素錯体フィルムの産業用CT走査図である。
【0070】
図2は、実施例5のヨウ素錯体のTGA図である。
〔発明を実施するための形態〕
以下、本発明の方法に対して、具体的な実施例をもってさらに詳しく説明する。理解すべきなことは、以下の実施例は、本発明に対する単なる例示的な説明および解釈であるため、本発明の保護範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことである。 本発明の上記の内容を基盤に実現されるすべての技術は、本発明の保護範囲内に含まれるものとする。
【0071】
特に説明しない限り、以下の実施例で使われる実験方法はすべて慣用の方法とする;以下の実施例で使われる試薬、材料なども特に説明しない限り、すべて市販品調達とする。
機器および設備
物質構造の測定:1HNMR、13CNMRは、JOEL社の600MHzフーリエ変換核磁気共鳴分析装置を採用した;
IRは、Thermofisher社のフーリエ赤外変換分光計nicolet is50で測定する;
Tg値の測定は、TA社のQ100示差走査熱量計で測定する;
TGA測定は、TA社のQ500熱重量測定装置で測定する;
ポリマーの分子量は、アンジレント(Agilent)社のPL-GPC50(示差屈折率検出器と蒸発光散乱射検出器付き)で測定する;
偏光度は、紫外可視光分光計UV3600(日本島津社)で測定する。
〔製造例1〕
シスポリブタジエン:シスポリブタジエンゴムブロックは、市販調達(四川石油化工有限公司、式IVが示す構造のうち、1,4-シス式の含有量は約98%で、1,4-トランス式及び1,2-構造の含有量は約2%である;数平均分子量Mn=170,000)、約2mmのゴム粒に剪断する。
【0072】
エポキシ化:攪拌機と温度計付きの250mlの三口フラスコに、7gの上記シスポリブタジエンゴム粒と100mlのジクロロメタンとを加える。恒温水浴槽で室温溶解し、攪拌し、完全溶解され粘ねばしてきた時に、窒素を数分間通す。9.90gのギ酸を加え、攪拌しながら30%の過酸化水素水溶液を21.40g滴下する;引き続き約15hr保温反応させてから、1HNMR(CDCl3)分析をしたが、1,4-シス式二重結合特有の化学シフトのシグナルが消失した(エポキシ基特有化学シフトδ=2.98,1,4-シス式二重結合特有化学シフトδ=5.40)。反応生成物は、10%炭酸ナトリウム溶液でpH=7に中和し、水相を排除し、水洗・分液を経て、分離されたゴム液内に無水エタノールを加え、沈殿物が析出されたら、析出された沈殿物を分離し、無水エタノールにて1回洗浄し、廃液を濾別すると濡れたゴムが得られるが、室温で12時間乾かしてから真空乾燥箱で40℃で24時間恒量になるまで乾かし、エポキシ化シスブタジエンゴム7.3gが得られた。
【0073】
加水分解:上記で製造したエポキシ化シスブタジエンゴム1 gを計量し、100 mlのテトラヒドロフランに溶解し、25℃で攪拌しながら5mlの水と1mlの過塩素酸とからなる溶液を30 分掛けて滴下したあと、引き続き25°Cで12時間攪拌する。、1HNMR(DMSO)分析をしたが、エポキシ化シスプタジエンゴム特有化学シフトのシグナルが消失した(エポキシ基特有の化学シフトδ=2.98,o-ビスヒドロキシ基特有化学シフトδ=4.18)。反応液を、炭酸ナトリウム溶液で中和した。反応液内に1000mlの水を滴下し、沈殿物が析出されたら、沈殿物を分離し、400mの水で24時間浸漬してから、水を濾別することで得られた高分子物質を室温で24時間乾かしてから、さらに真空乾燥箱で40℃で恒量になるまで乾かす。半透明状の固形物1.12gが得られた。生成物の分子量はMn=146000であり、o-ビスヒドロキシ基C4単位のモル含有量は98%で、Tg値は56℃である。
〔製造例2〕
上記で製造したエポキシ化シスブタジエンゴム2gを計量し、200 mlの蒸留したてのテトラヒドロフランに溶解したあと、500mlのステンレス高圧反応釜に加える;0.4gのラネーニッケル(エタノールで覆い、反応器に加える前にテトラヒドロフランで3回洗浄。)を添加する;窒素ガスで高圧釜内の圧力を1MPaまで加圧しては、常圧に排圧するが、この窒素加圧と排圧とを3回繰り返した。50℃で攪拌しながら水素ガスを通すが、1MPaになるまで加圧する。水素ガス圧を維持しながら12時間攪拌反応させる。1HNMR(DMSO)で測定し、エポキシ基の開環率は約75%(mol)であった。
【0074】
反応溶液を0℃に冷却し、排圧した。 触媒を濾別する。触媒を濾過排除した反応液に、水5mlと、過塩素酸1mlと、テトラヒドロフラン5mlと、からなる溶液を滴下するが、30分に掛けて滴下し、反応温度は25℃までに昇温してもよいが、保温しながら12時間攪拌した。1HNMR(DMSO)測定をしたが、エポキシ化シスプタジエンゴム特有の化学シフトのシグナルが消失した。反応溶液内に固体炭酸ナトリウムを0.37g加え、2時間撹拌した。反応溶液内に水を滴下し沈殿物を析出させてから、24時間水に浸漬してから、水を濾別し、得られた高分子物質を室温で24時間乾燥させた後、さらに真空乾燥箱で40°Cで恒量になるまで乾燥させた。乳白色の固形物が2.35g得られた。 数平均分子量は133000で、o-ビスヒドロキシC4単位のモル含有量は24.7%、Tg値は66°Cであった。
〔製造例3〕
ブチルベンゼンゴム:ブチルベンゼンゴムゴムブロックは市販品調達し(斉魯石油化工有限公司、スチレン単位/ブタジエン単位(S/B):27/73、重量平均分子量Mw=320,000)約2mmゴム粒に剪断する。
【0075】
エポキシ化:攪拌機と温度計付きの1000mlの三口フラスコに、6gの上記ブチルベンゼンゴムのゴム粒と550mlのトルエンとを加える。恒温水浴槽で室温溶解し、攪拌し、完全溶解され粘ねばしてきた時に、窒素ガスを数分間通す。40℃まで加熱し、3.0gのギ酸を加え、攪拌しながら30%の過酸化水素水溶液を8.2g 滴下する;引き続き約5時間保温反応させてから、1HNMR(CDCl3)分析をしたが、二重結合特有の化学シフトシグナルが消失した。反応生成物は、10%炭酸ナトリウム溶液でpH=7に中和し、水相を排除し、水洗・分液を経て、分離されたゴム液内に無水エタノールを加え、沈殿物が析出されたら、析出された沈殿物を分離し、無水エタノールにて1回洗浄し、廃液を濾別することで濡れたゴムが得られるが、室温で12時間乾かしてから真空乾燥箱で40℃で約24時間恒量になるまで乾かし、エポキシ化ブチルベンゼンゴム6.33gが得られた。
【0076】
加水分解:上記で製造したエポキシ化ブチルベンゼンゴム1 gを計量し、100 mlのテトラヒドロフランに溶解し、25℃で攪拌しながら5mlの水と1mlの過塩素酸とからなる溶液を30 分掛けて滴下してから、引き続き25°Cで12時間攪拌する。1HNMR(DMSO)分析をしたが、エポキシ化特有化学シフトのシグナルが消失した。反応液を、炭酸ナトリウムで中和した。反応液内に1000mlの水を滴下し、沈殿物が析出されたら、沈殿物を分離し、500mの水で24時間浸漬してから、水を濾別することで得られた高分子物質を室温で24時間乾かしてから、さらに真空乾燥箱で40℃で恒量になるまで乾かす。白色の固形物1.1gが得られたが、o-ビスヒドロキシ基C4単位の割合は62%であった。
〔実施例1〕
製造例1の方法で製造した半透明状の固形物1gと、ヨウ素単体粒子1.1gと、を一緒に20mlのガラスフラスコに入れ、密封し、50°Cで24時間保管することで、気体-固体反応を経てヨウ素錯体を得た。当ヨウ素錯体は黒色の硬い塊状物で、重量は2.0 gあり、ヨウ素錯体中のヨウ素の質量百分率は50%であった。
〔実施例2〕
製造例1の方法で製造した半透明状の固形物1gを、20mlのジメチルスルホキシドに溶解させることでポリマーのジメチルスルホキシド溶液を生成し、25°Cで単体ヨウ素粒子1.1gを加え撹拌すると、反応液はヨウ素の溶解のため褐色になる。2時間後、攪拌を中止し、液液単相反応が終了され200mlのメタノールを加え、濃い褐色の固形糯塊状が析出され、固形物を30°Cで24時間真空乾燥させると、1.48gの黒色の固形塊状物、つまり本発明のヨウ素錯体が得られて、当該ヨウ素錯体中のヨウ素の質量百分率は32%であった。
〔実施例3〕
製造例1の方法で製造した半透明状の固形物1gを、密閉型のガラス瓶に加え、そして20mlの水と、2.0gのヨウ素単体を加えると、水に溶解されたヨウ素単体が固形物に吸着され(即ち液固反応)、25°Cで8時間撹拌し、溶解なく且つ変形ない固形物質は黒色であり、固形物質を取り出し、30°Cの真空乾燥箱で24時間乾燥させたら、重量が1.21gの固形物、つまり本発明のヨウ素錯体が得られ、当該ヨウ素錯体中のヨウ素の質量百分率は17.4%%であった。
〔実施例4〕
ヨウ素単体の吸着実験:
関連物質:製造例1、2、3の方法で製造した固形生成物(約3mmの粒子状);エチレン-ビニルアルコールポリマー(EVOH、日本株式会社クラレF171B、エチレン含有量32%、約3mmの粒子);ポリビニルアルコール(PVA、上海臣啓化工科学技術有限公司、重合度1680、アルコール分解度99%、分子量 81000、白色粉末);分析純度の可溶性純デンプン、使用前にそれらをそれぞれに120℃で恒量になるまで乾かす。
【0077】
上記6種の固形物を2gずつ計量(正確度:0.0001g)して、100mlのガラス瓶にいれてから、さらに4gのヨウ素単体(正確度:0.0001g)が入っている開口小瓶を上記ガラス瓶内にいれ、20℃で100時間密閉放置する。固形物を取り出し重さを計量し、重量の増加を算出する。
【0078】
【表1】
【0079】
〔実施例5〕
製造例1で得られた半透明状の固形物1gを、20mlのジメチルスルホキシドに溶解させ、溶液をステンレス製パレット(304材質、27×20×2cm)に移し、自然レベリングさせる。恒量になるまで乾燥させ、柔らかいポリマーフィルムを得る。ポリマーフィルムとヨウ素粒子とを密閉ガラス瓶にいれ、50°Cで12時間放置すると黒色の錯体フィルム1.2gが得られた。ヨウ素錯体中のヨウ素の質量百分率は16.7%であった。
【0080】
実施例5で得られたヨウ素錯体フィルムを、225kVマイクロフォーカスX線源のXTH225系産業用CTスキャナーで造影した結果は図1に示す通り。
【0081】
実施例5で得られたヨウ素錯体をIR分析したグラフトから分かるように、製造例1で製造した半透明状の固形物と比較して、ヒドロキシ基の伸縮振動ピークの値が徐々に高周波数方向に移動しており、いわゆるブルーシフト現象が現れ、ポリマー構造内のヒドロキシの水素結合が弱まり、2対のo-ヒドロキシ基中の酸素原子が提供する孤立電子対は、ヨウ素が提供する価電子の空準位に入り、配位子結合の形でヨウ素錯体を形成する。
【0082】
実施例5で得られたヨウ素錯体を無重力分析した結果は、図2に示す通り、温度の上昇につれ、ヨウ素は解離揮発し続け、350℃でヨウ素は完全揮発した。
〔実施例6〕
生理食塩水浸漬実験で、以下の物質を準備する:
実施例1で製造されたヨウ素錯体(ヨウ素含有量50.0%);
実施例4で製造されたヨウ素を結合した澱粉(ヨウ素含有量19.4%);
市販品ポビドンヨード固体(ヨウ素含有量11.2%);
生理食塩水は、中国薬典基準通りに調製した。
【0083】
上記の各物質1gを正確に計量し、生理食塩水100mlに加え、24時間浸漬した。固形物質を取り出し、少量の生理食塩水で洗浄し、洗浄液は浸漬液に戻す。 浸漬液はチオ硫酸ナトリウム標準液で滴定し、ヨウ素の溶出率を算出した。
【0084】
ヨウ素溶出率%=(浸漬液中のヨウ素含有量wt%×浸漬液重量)/固形物浸漬前のヨウ素含有重量×100。
【0085】
【表2】
【0086】
〔実施例7〕
実施例5で製造したヨウ素含有フィルムを、大きさ5cm×4cm、厚さ0.05~0.07mmに裁断する;延伸機で厚さ0.02mmのフィルムに延伸した。延伸後のヨウ素フィルムを、大きさ2cm×2cmに二枚を裁断し、其々白いガラス板(透過率100%)上に仕掛ける。紫外可視光分光光度計でフィルムの透過率Tsp(単体透過率、理論値は50%)、T⊥(2枚の偏光フィルムを軸方向に垂直配置した直交透過率)、T∥(2枚の偏光フィルムを軸方向に並行配置した並行透過率)を測定し、偏光度PE=(T∥-T⊥)/(T∥+T⊥)×100%、フィルム偏光度を算出した。測定算出結果として、偏光度PE=90%。延伸後のヨウ素フィルムを実施例6に準じて測定したところ、生理食塩水に浸漬したヨウ素フィルムは変形せず、ヨウ素溶出率は0.09wt%であり、強水溶性のPVAと比較して、本発明が提供するポリマーから製造した偏光フィルムはPVA系の偏光フィルムよりも優れた耐湿性を持っていた。
【0087】
以上、本発明の実施方法について説明した。 ただし、本発明は上記実施方法だけに限定されるものではない。本発明の精神および原則内で行われるいずれの変更、同価置換、改良などは、すべて本発明の保護範囲内に含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0088】
図1図1は、実施例5のヨウ素錯体フィルムの産業用CT走査図である。
図2図2は、実施例5のヨウ素錯体のTGA図である。
図1
図2