(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】ダイヤフラムバルブ
(51)【国際特許分類】
F16K 7/12 20060101AFI20241127BHJP
【FI】
F16K7/12 A
(21)【出願番号】P 2021542028
(86)(22)【出願日】2020-06-12
(86)【国際出願番号】 JP2020023183
(87)【国際公開番号】W WO2021039027
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-05-12
(31)【優先権主張番号】P 2019159103
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100129540
【氏名又は名称】谷田 龍一
(74)【代理人】
【識別番号】100137648
【氏名又は名称】吉武 賢一
(72)【発明者】
【氏名】平田 薫
(72)【発明者】
【氏名】永瀬 正明
(72)【発明者】
【氏名】日高 敦志
(72)【発明者】
【氏名】森崎 和之
(72)【発明者】
【氏名】井手口 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】杉本 耕祐
(72)【発明者】
【氏名】北野 真史
(72)【発明者】
【氏名】西野 功二
(72)【発明者】
【氏名】池田 信一
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-101976(JP,A)
【文献】国際公開第2004/074722(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00-3/12
7/00-13/00
15/00-58/40
H02P 21/00-25/03
25/04
25/10-27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路が形成されたボディと、
前記流路に形成されたシートと、
前記シートに対して当接又は離反することにより前記流路を開閉する金属ダイヤフラムと、
前記金属ダイヤフラムの両側面の周縁部を其々挟持して前記金属ダイヤフラムを前記ボディに固定する一対の挟持部と、
前記金属ダイヤフラムを前記シートに対して当接又は離反させるアクチュエータと、
を備え、
前記金属ダイヤフラムのシート側面は、前記シート側面と前記挟持部との挟持領域を除く領域であって、前記挟持領域に囲まれる領域内の少なくとも前記シートとの接触領域に、フッ素樹脂コーティングが形成され
、
前記フッ素樹脂コーティングは、研磨処理によって、Ra≦0.1μmの表面粗さを有する、ダイヤフラムバルブ。
【請求項2】
前記フッ素樹脂コーティングと前記金属ダイヤフラムとの間に下地としての接着層が設けられ、前記接着層はエージング熱処理によって形成されている、請求項1に記載のダイヤフラムバルブ。
【請求項3】
前記フッ素樹脂コーティングは、前記挟持領域に囲まれる全領域に形成されている、請求項1に記載のダイヤフラムバルブ。
【請求項4】
前記フッ素樹脂コーティングは、前記シートとの接触領域にのみ形成されている、請求項1に記載のダイヤフラムバルブ。
【請求項5】
前記フッ素樹脂コーティングは、前記シートとの接触領域、および、前記シートとの接触領域に囲まれる領域にのみ形成されている、請求項1に記載のダイヤフラムバルブ。
【請求項6】
前記金属ダイヤフラムのシート側の面に接触する前記挟持部は金属製である、請求項1に記載のダイヤフラムバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤフラムバルブに係り、特に半導体製造用プロセスガスの流量制御に適した、金属ダイヤフラムを備えるダイヤフラムバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造用プロセスガスの流量制御用として、金属ダイヤフラムを備えるダイヤフラムバルブが知られている(特許文献1、2等)。この種のダイヤフラムバルブの金属ダイヤフラムは、スプロン等の極薄金属板で形成されるが、加工精度上のバラツキがあり、流路を開閉するためにシートに対する接触と離反を繰り返すことにより、損傷や摩耗を生じ、シートリークを生じることがある。また、流通するガス種によってはダイヤフラムが腐食するという問題もあった。
【0003】
そこで、例えば、
図9に示すように、金属ダイヤフラム5のプロセスガスと接触する側の全面に、フッ素樹脂コーティングFを施すことにより、耐腐食性を向上させるとともに、金属ダイヤフラム5とシート4との接触がソフトタッチとなり、金属ダイヤフラム5の損傷や摩耗を防止し、シートリークを防止するダイヤフラムバルブが知られている(特許文献3等)。
図9において、符号40、41は金属ダイヤフラム5の周縁部を挟持して固定する挟持部であり、メタルガスケット等で形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2011/067891号パンフレット
【文献】国際公開第2016/174832号パンフレット
【文献】国際公開第2004/074722号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、金属ダイヤフラムのシート側の全面にフッ素樹脂コーティングを形成した上記従来のダイヤフラムバルブでは、流路内のガスがダイヤフラムバルブの外部へリークすることがあった。また、特許文献3に記載の弁座の一例に示すように、弁座が樹脂製の場合、樹脂製の弁座そのものの厚みが数mm程度あり、高温状態で使用する場合、熱膨張や経年使用によるクリープによってその厚みが大きく変化する。弁体を作動するアクチュエータ、例えば、ピエゾコントロールバルブの場合、一般的なストローク範囲が100μm未満であり、熱膨張やクリープによる弁座厚みの変化に対応することができず、高温状態の仕様に対応できないという問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、鋭意研究の結果、ヘリウムガスのように分子径の小さいガスをダイヤフラムバルブの流路に流す際に、金属ダイヤフラムの樹脂コーティングをガスが透過する透過リークにより、
図9に破線矢印で示すように、金属ダイヤフラム5の周縁部からダイヤフラムバルブの外部にガスGが漏れ出す外部リークを生じることを見出した。
【0007】
そこで、本発明に係るダイヤフラムバルブは、流路が形成されたボディと、前記流路に形成されたシートと、前記シートに対して当接又は離反することにより前記流路を開閉する金属ダイヤフラムと、前記金属ダイヤフラムの両側面の周縁部を其々挟持して前記金属ダイヤフラムを前記ボディに固定する一対の挟持部と、前記金属ダイヤフラムを前記シートに対して当接又は離反させるアクチュエータと、を備え、前記金属ダイヤフラムのシート側面は、前記シート側面と前記挟持部との挟持領域を除く領域であって、前記挟持領域に囲まれる領域内の少なくとも前記シートとの接触領域に、フッ素樹脂コーティングが形成されている。
【0008】
前記フッ素樹脂コーティングは、一実施形態において、前記挟持領域に囲まれる全領域に形成されている。
【0009】
また、前記フッ素樹脂コーティングは、一実施形態において、前記シートとの接触領域にのみ形成されている。
【0010】
また、前記フッ素樹脂コーティングは、一実施形態において、前記シートとの接触領域、および、前記シートとの接触領域に囲まれる領域にのみ形成されている。
【0011】
また、一実施形態において、前記金属ダイヤフラムのシート側の面に接触する前記挟持部は金属製である。
【0012】
また、前記フッ素樹脂コーティングは、一実施形態において、研磨処理によって、Ra≦0.1μmの表面粗さを有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、金属ダイヤフラムは、シート側の面において、挟持部により挟持される挟持領域にフッ素樹脂コーティングを施さないで母材金属を露出させることにより、上記透過リークによる外部リークを防止することができるとともに、高温環境下での使用も可能となる。一方、本発明によれば、金属ダイヤフラムは、シートとの接触領域にはフッ素樹脂コーティングを施すことで、シートに対する接触と離反を繰り返しても、損傷や摩耗は防止され、シートリークが防止される。
【0014】
また、前記フッ素樹脂コーティングに研磨処理を施すことにより、樹脂表面の凹凸を減らすことで、上記透過リークによるシートリークを低減することができる。また、樹脂表面の凹凸を減らすことにより、シートとの衝突によるパーティクルの発生も抑制することができる。また、研磨処理により前記フッ素樹脂コーティングの実効表面積を低減することにより、フッ素樹脂コーティングからの放出ガス量及びガスの吸着量を低減することもできる。
【0015】
さらに、研磨処理を施すことによりコーティング膜厚さは数十μmと薄くできるので、弁座を樹脂製としたときの熱による膨張やクリープによる厚みの変動と比べ、その影響は無視できる程度の変化しかないという効果を有する。よって、一般的なストローク範囲が100μm未満のピエゾコントロールバルブにおいても、高温状態の仕様に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係るダイヤフラムバルブの一実施形態であって閉じた状態を示す要部拡大断面図である。
【
図2】
図1のダイヤフラムバルブの開いた状態を示す要部拡大断面図である。
【
図3】本発明に係るダイヤフラムバルブの構成要素である金属ダイヤフラムを示す平面図である。
【
図4】本発明に係るダイヤフラムバルブの構成要素である金属ダイヤフラムを示す平面図である。
【
図5】本発明に係るダイヤフラムバルブの構成要素である金属ダイヤフラムを示す平面図である。
【
図6】本発明に係るダイヤフラムバルブの構成要素である金属ダイヤフラムを示す平面図である。
【
図7】本発明に係るダイヤフラムバルブの他の実施形態を含む気化供給装置を示す断面図である。
【
図8】
図7の気化供給装置の部分拡大断面図である。
【
図9】従来のダイヤフラムバルブの要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態について、以下に
図1~
図8を参照しつつ説明する。なお、全図を通じて同一又は類似の構成要素については同符号を付している。
【0018】
図1及び
図2を参照して、ダイヤフラムバルブ1は、流路2が形成されたボディ3と、前記流路2に形成されたシート4と、前記シート4に対して当接又は離反することにより前記流路2を開閉する金属ダイヤフラム5と、前記金属ダイヤフラム5の両側面の周縁部を其々挟持して前記金属ダイヤフラム5を前記ボディ3に固定する一対の挟持部6、7と、前記金属ダイヤフラム5を前記シート4に対して当接又は離反させるアクチュエータ8と、を備えている。
【0019】
ボディ3は、例えばステンレス鋼等の金属で形成され得る。また、挟持部6、7は、何れも、金属(合金を含む。)で形成され得る。図示例において、金属ダイヤフラム5のシート側面5aに当接する挟持部7は、ボディ3の流路2に形成された開口部にボディ3に一体的に形成されている。
【0020】
前記挟持部6は、後述のブリッジ12を介して、筒状ガイド部材9をボディ3に螺入することにより、金属ダイヤフラム5を押圧する。それにより、金属ダイヤフラム5は、挟持部6と挟持部7とによって両側面の周縁部を其々挟持され、ボディ3に固定されている。
【0021】
筒状ガイド部材9に弁棒ケース10が摺動自在に支持されている。ブリッジ12は、弁棒ケース10を貫通して弁棒ケース10内に延び、弁棒ケース10内に収容された圧電素子11を支持している。圧電素子11は電圧の印加により伸張し、この伸張を利用して、前記金属ダイヤフラム5を前記シート4に対して当接又は離反させるアクチュエータ8を構成する。この種のアクチュエータは、例えば、国際公開第2011/067891号、国際公開第2016/174832号等によって公知であるので、詳細な説明を省略する。この種のダイヤフラムバルブにはノーマルクローズタイプとノーマルオープンタイプとがある。また、この種のダイヤフラムバルブにおいて、高温ガス用として、インバー等で形成したスペーサを弁棒ケース内の圧電素子の下方に収容するタイプ(
図7)もある。
【0022】
金属ダイヤフラム5は、極薄金属板により円形の皿状に形成されている。金属ダイヤフラム5の母材は、スプロン等の金属(合金を含む。)で形成されている。金属ダイヤフラム5は特に限定するものではないが、例えば、直径5~50mm、厚さ20~400μmとすることができる。
【0023】
前記金属ダイヤフラム5のシート4と接する側のシート側面5aは、前記シート側面5aが前記挟持部7によって挟持される挟持領域D-C(
図3)を除く領域であって、前記挟持領域D-Cに囲まれる内側の領域C(
図4)内の少なくとも前記シート4との接触領域B-A(
図5)に、フッ素樹脂コーティングが形成されている。フッ素樹脂コーティングが形成される領域は、前記シート4との接触領域B-A(
図5)が最小領域であり、前記挟持領域D-Cに囲まれる領域C(
図4)が最大領域である。
【0024】
ある実施形態において、
図6に示すように、前記フッ素樹脂コーティングは、前記シート4との接触領域B-A、および、前記シート4との接触領域B-Aに囲まれる領域Aにのみ、すなわち、領域Bにのみ形成される。
ある実施形態において、前記フッ素樹脂コーティングは、前記第1触領域D-Cに囲まれる全領域C(
図4)に形成される。
【0025】
フッ素樹脂コーティングは、20~50μm程度の厚みとすることが好ましく、図示例では、PFA(ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂)を30~35μmの厚みでコーティングした後、研磨処理により20~25μmの厚みとされている。フッ素樹脂コーティングは、例えば、研磨処理前において表面粗さRa≦0.8μmであり、研磨処理によりRa≦0.1μmとすることができる。この表面粗さは、Ra≦0.1μmとすることで実効表面積が減少し、異物の付着を低減させる。表面粗さは、Ra≦0.05μmとすることが好ましく、Ra≦0.02μmとすることがより好ましい。フッ素樹脂コーティングは、PFAに代えて、PTFE樹脂(ポリテトラフルオロエチレン)、FEP樹脂(四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体)等の他のフッ素樹脂により形成することもできる。
【0026】
フッ素樹脂コーティングと金属ダイヤフラム5の母材(スプロン等の金属系材料)との間に下地としての接着層を設けることができる。前記接着層は、例えば、厚さ5~10μmのPAI(ポリアミドイミド)の層をエージング熱処理により形成することができる。
【0027】
挟持領域D-Cにはフッ素樹脂コーティングが形成されておらず、金属ダイヤフラム5の母材金属に挟持部7が圧接するため、分子径の小さいガスが樹脂を透過するような透過リークを防止できる。その結果、金属ダイヤフラム5の周縁部からダイヤフラムバルブ1の外部へのガスの透過リークを防止できる。真空法によるヘリウムリークテストでも透過リークが防止されていることが確認された。
【0028】
また、金属ダイヤフラム5とシート4との接触領域B-A(
図5)には、フッ素樹脂コーティングが形成されているため、金属母材の損傷等を防止して、シートリークも防止できる。更に、前記フッ素樹脂コーティングを前記挟持領域D-Cに囲まれる全領域Cに形成することにより、金属ダイヤフラム5は、プロセスガスと接触する部分の全領域が保護され、プロセスガスの分解生成物等による腐食が防止され得る。
【0029】
また、前記フッ素樹脂コーティングに研磨処理を施すことにより、樹脂表面の凹凸を減らすことで、上記透過リークを低減することができる。また、研磨処理により、前記フッ素樹脂コーティング表面の凹凸を減らすことにより、シート4との衝突によるパーティクルの発生も抑制することができる。更に、研磨処理により前記フッ素樹脂コーティングの実効表面積を低減することにより、フッ素樹脂コーティングからの放出ガス量及びガスの吸着量を低減することもできる。
【0030】
上記構成を有するダイヤフラムバルブを組み込んだ流体制御装置を気化器と組み合わせた気化供給装置を用いたシートリーク試験について次に説明する。
【0031】
図7は、前記気化供給装置の概略構成を示す断面図である。前記気化供給装置20は、液体原料LをヒーターHにより加熱して気化させる気化器21と、気化器21から送出されるガスGの流量を制御する流量制御装置22と、気化器21への液体原料Lの供給路23に介在された第1開閉弁24と、気化器21で気化され流量制御装置22に送られるガスGの圧力を検出するための圧力検出器25と、を備えている。気化器21に、液体原料Lの予備加熱用ブロック体26が連結されている。流量制御装置22の下流側に第2開閉弁27が接続されている。
【0032】
流量制御装置22は、
図7及びその部分拡大
図8を参照して、ダイヤフラムバルブ1のボディ3に、金属ダイヤフラム5の下流側の流路2に介在され微細孔が形成された孔空き薄板28と、金属ダイヤフラム5と孔空き薄板28との間の流路2内の圧力を検出する流量制御用圧力検出器29と、を備え、流量制御用圧力検出器29の検出値に基づいてアクチュエータ8を制御する。アクチュエータ8は、筒状ガイド部材9に摺動可能に挿入された弁棒ケース10と、弁棒ケース10の下部に形成された孔10a、10aを貫通し筒状ガイド部材9によりボディ3に押圧固定されたブリッジ12と、弁棒ケース10内に収容されるとともにブリッジ12に支持された放熱スペーサ30及び圧電素子11と、弁棒ケース10の外周に突設され筒状ガイド部材9に形成された孔9aを貫通して延びる鍔受け10bと、鍔受け10bに装着された鍔体31と、筒状ガイド部材9の上端部に形成された鍔部9bと、鍔部9bと鍔体31との間に圧縮状態で配設されたコイルバネ32と、を備えている。放熱スペーサ30は、インバー材等で形成されており、流路2に高温のガスが流れても圧電素子11が耐熱温度以上になることを防ぐ。
【0033】
圧電素子11の非通電時には、コイルバネ32により弁棒ケース10が
図7の下方に押され、
図8に示すように、金属ダイヤフラム5がシート4に当接し、流路2を閉じている。圧電素子11に通電することにより圧電素子11が伸張し、コイルバネ32の弾性力に抗して弁棒ケース10を
図8の上方へ持ち上げると金属ダイヤフラム5が自己弾性力により元の逆皿形状(
図2参照)に復帰して流路2が開通する。なお、
図7及び
図8に示すダイヤフラムバルブ1のシート4及び流路2の形状は、
図1及び2に示したシート4及び流路2とは異なっている。
【0034】
流量制御装置22は、孔空き薄板28の少なくとも上流側のガス圧力を流量制御用圧力検出器29によって検出し、検出した圧力信号に基づいて圧電素子11を駆動することにより、流路2に介在された金属ダイヤフラム5を開閉させて流量制御する。孔空き薄板28の上流側の絶対圧力が孔空き薄板28の下流側の絶対圧力の約2倍以上(臨界膨張条件)になると孔空き薄板28の微細孔を通過するガスが音速となり、それ以上の流速にならないことから、その流量は微細孔上流側の圧力のみに依存し、孔空き薄板28の微細孔を通過する流量は圧力に比例するという原理を利用している。なお、図示しないが、孔空き薄板28の下流側の圧力も検出して、孔空き薄板28の上流側と下流側の差圧に基づいて流量制御することも可能である。なお、孔空き薄板28は、図示例ではオリフィスが形成されたオリフィスプレートであるが、孔空き薄板28の孔はオリフィスに限らず流体を絞る構造のものであればよい。
前記シートリーク試験における条件は以下の通りである:
【0035】
金属ダイヤフラムは、スプロン510製で直径15mmとした。フッ素樹脂コーティングは、材質をPFAとし、研磨処理後の表面粗さRa≦0.02μm、研磨処理後の厚さ約20~25μmで、前記挟持領域に囲まれた全領域に形成した(
図4の形態)。下地接着層は、材質をPAIとし、厚さ5~10μmとした。
【0036】
フッ素樹脂コーティングを形成していないオールメタルの金属ダイヤフラムを比較例とした。
【0037】
試験方法は、以下の手順で行った。
【0038】
手順1.流量制御装置22のボディ3を210℃に加熱した後、ダイヤフラムバルブ1を閉じ、第2開閉弁27を開き、ダイヤフラムバルブ1の二次側を減圧(真空)とする。
【0039】
手順2.第1開閉弁24を2秒間開き、気化器21の内部にTEOS(テトラエトキシシラン)を封止し、圧力検出器25の圧力を210℃、200kPa(abs)の高温高圧状態とする。
【0040】
手順3.第2開閉弁27を閉じた瞬間から2分後の流量制御用圧力検出器29の出力から、ビルドアップ法を用いてシートリーク量を算出する。
【0041】
ビルドアップ法は、流路に介在した所定の体積(ビルドアップ体積V)内の圧力上昇率(ΔP/Δt)と温度(T)とを測定することによりQ=(ΔP/Δt)×V/RTの関係(Rは気体定数)を用いて流量(Q)を測定する方法である。本シートリーク試験において、ビルドアップ体積Vは、ダイヤフラムバルブ1から第2開閉弁27までの流路内の体積であり、2.23ccであった。
【0042】
上記シートリーク試験の結果、ダイヤフラムバルブの開閉を50万回繰り返したところ、比較例では判定基準である4.2×10-5Pa・m3/秒を超えるリークがあったが、実施例ではほとんどリークがなかった。
【0043】
本発明は上記実施形態に限定解釈されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 ダイヤフラムバルブ
2 流路
3 ボディ
4 シート
5 金属ダイヤフラム
6,7 挟持部
8 アクチュエータ