(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】磁気応答分布可視化装置、セキュリティ検査システム及び磁気応答分布可視化方法
(51)【国際特許分類】
G01R 33/02 20060101AFI20241127BHJP
G01R 33/10 20060101ALI20241127BHJP
G01N 27/72 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
G01R33/02 Q
G01R33/10
G01N27/72
(21)【出願番号】P 2022514436
(86)(22)【出願日】2021-03-31
(86)【国際出願番号】 JP2021014014
(87)【国際公開番号】W WO2021205966
(87)【国際公開日】2021-10-14
【審査請求日】2024-02-15
(31)【優先権主張番号】P 2020069616
(32)【優先日】2020-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】513034154
【氏名又は名称】株式会社 Integral Geometry Science
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】木村 憲明
(72)【発明者】
【氏名】木村 建次郎
(72)【発明者】
【氏名】美馬 勇輝
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 章吾
【審査官】島田 保
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第5493517(US,A)
【文献】特開2001-74852(JP,A)
【文献】鈴木章吾、松田聖樹、木村建次郎、他,超高感度磁気計測および画像再構成理論に基づく埋め込み型防犯ゲートシステムの開発,応用物理学会春季学術講演会抄録,2019年,11p-M116-13
【文献】MIMA Yuki, KIMURA Kenjiro,Failure analysis of electric circuit board by high resolution magnetic field microscopy,2013 3rd IEEE CPMT Symposium Japan,2014年
【文献】木村建次郎,研究開発課題名:スーパーセキュリティゲートの実現,未来社会創造事業 2019年度終了報告書,国立研究開発法人科学技術振興機構,2020年,p.1-p.3,https://www.jst.go.jp/mirai/jp/uploads/final2019/JPMJMI17D2_end.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 33/02
G01R 33/10
G01N 27/72
G01V 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動物体の外部から、磁場の基礎方程式を満たす磁場の成分である磁場成分を誘起する誘起回路と、
前記移動物体によって変化した前記磁場成分を含む前記磁場の強度及び位相を前記移動物体の外部において複数の時点で感知するセンサと、
前記磁場の強度及び位相の感知結果、前記移動物体の移動速度、及び、前記磁場の基礎方程式に基づいて、前記センサよりも前記移動物体に近い近傍位置における前記磁場の強度及び位相を算出し、前記磁場の強度及び位相の算出結果に基づいて、前記誘起回路によって誘起された前記磁場成分に対する前記移動物体の応答の分布を示す画像でありセキュリティ検査に用いられる画像である磁気応答分布画像を生成する情報処理回路とを備える
磁気応答分布可視化装置。
【請求項2】
前記情報処理回路は、
前記複数の時点のそれぞれにおける前記移動物体に対して相対的な前記センサの位置である感知位置を前記移動速度に基づいて特定することにより、前記複数の時点における前記センサの複数の感知位置を前記移動物体に対して相対的に特定し、
前記複数の時点における前記感知結果の時間的な変化を前記複数の感知位置における前記感知結果の空間的な変化として用いて、前記近傍位置における前記磁場の強度及び位相を算出する
請求項1に記載の磁気応答分布可視化装置。
【請求項3】
前記情報処理回路は、前記磁気応答分布画像に基づいて、前記移動物体に検知対象物が含まれるか否かを判定し、前記移動物体に前記検知対象物が含まれると判定された場合、前記検知対象物又は前記移動物体の位置を示す情報を外部端末へ出力する
請求項1又は2に記載の磁気応答分布可視化装置。
【請求項4】
さらに、前記移動速度を計測する計測器を備える
請求項1~3のいずれか1項に記載の磁気応答分布可視化装置。
【請求項5】
前記誘起回路によって誘起される前記磁場成分は、周期的に変動する磁場成分であり、
前記情報処理回路は、前記感知結果から、前記周期的に変動する磁場成分の周波数と同じ周波数の磁場成分を検波し、検波された前記磁場成分、前記移動速度、及び、前記磁場の基礎方程式に基づいて、前記近傍位置における前記磁場の強度及び位相を算出する
請求項1~4のいずれか1項に記載の磁気応答分布可視化装置。
【請求項6】
前記誘起回路によって誘起される前記磁場成分として、第1周波数を有し前記移動物体における遮蔽物を透過する第1磁場成分と、前記第1周波数よりも高い第2周波数を有し前記移動物体における前記遮蔽物によって遮蔽される第2磁場成分とのそれぞれが誘起され、
前記情報処理回路は、前記誘起回路によって誘起される前記第1磁場成分に対する前記移動物体の応答の分布を示す第1画像と、前記誘起回路によって誘起される前記第2磁場成分に対する前記移動物体の応答の分布を示す第2画像とを生成し、前記第1画像と前記第2画像とを合成することにより、前記磁気応答分布画像を生成する
請求項5に記載の磁気応答分布可視化装置。
【請求項7】
前記センサは、直線上に配置された複数のセンサで構成される
請求項1~6のいずれか1項に記載の磁気応答分布可視化装置。
【請求項8】
前記センサは、第1直線上に配置された複数のセンサ、及び、前記第1直線と平行な直線であり前記第1直線よりも前記移動物体から遠い直線である第2直線上に配置された複数のセンサで構成される
請求項1~6のいずれか1項に記載の磁気応答分布可視化装置。
【請求項9】
前記誘起回路は、直線上に配置された複数の誘起回路で構成される
請求項7又は8に記載の磁気応答分布可視化装置。
【請求項10】
前記センサは、平面上に配置された複数のセンサで構成される
請求項1~6のいずれか1項に記載の磁気応答分布可視化装置。
【請求項11】
前記センサは、第1平面上に配置された複数のセンサ、及び、前記第1平面と平行な平面であり前記第1平面よりも前記移動物体から遠い平面である第2平面上に配置された複数のセンサで構成される
請求項1~6のいずれか1項に記載の磁気応答分布可視化装置。
【請求項12】
前記誘起回路は、平面上に配置された複数の誘起回路で構成される
請求項10又は11に記載の磁気応答分布可視化装置。
【請求項13】
前記誘起回路と前記センサとは、前記移動物体が移動する経路を挟んで配置される
請求項1~6のいずれか1項に記載の磁気応答分布可視化装置。
【請求項14】
前記誘起回路と前記センサとは、前記移動物体が移動する経路を挟まず前記経路に対して同じ側に配置される
請求項1~6のいずれか1項に記載の磁気応答分布可視化装置。
【請求項15】
前記誘起回路は、前記移動物体が移動する経路を挟む第1サイド及び第2サイドに配置される複数の誘起回路で構成され、
前記センサは、前記第1サイド及び前記第2サイドに配置される複数のセンサで構成され、
前記情報処理回路は、前記第1サイドに配置される1つ以上の誘起回路が前記磁場成分を誘起し、前記第2サイドに配置される1つ以上のセンサが前記磁場の強度及び位相を感知する第1動作と、前記第2サイドに配置される1つ以上の誘起回路が前記磁場成分を誘起し、前記第1サイドに配置される1つ以上のセンサが前記磁場の強度及び位相を感知する第2動作とを切り替える
請求項1~13のいずれか1項に記載の磁気応答分布可視化装置。
【請求項16】
前記情報処理回路は、前記第1動作に基づいて生成される第1磁気応答分布画像と、前記第2動作に基づいて生成される第2磁気応答分布画像との中から一方を前記磁気応答分布画像として選択する
請求項15に記載の磁気応答分布可視化装置。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1項に記載の磁気応答分布可視化装置と、
前記移動物体に対応する人に対して画像診断を行うためのサーモグラフィ装置とを備える
セキュリティ検査システム。
【請求項18】
誘起回路を用いて、移動物体の外部から、磁場の基礎方程式を満たす磁場の成分である磁場成分を誘起するステップと、
センサを用いて、前記移動物体によって変化した前記磁場成分を含む前記磁場の強度及び位相を前記移動物体の外部において複数の時点で感知するステップと、
前記磁場の強度及び位相の感知結果、前記移動物体の移動速度、及び、前記磁場の基礎方程式に基づいて、前記センサよりも前記移動物体に近い近傍位置における前記磁場の強度及び位相を算出し、前記磁場の強度及び位相の算出結果に基づいて、前記誘起回路によって誘起された前記磁場成分に対する前記移動物体の応答の分布を示す画像でありセキュリティ検査に用いられる画像である磁気応答分布画像を生成するステップとを含む
磁気応答分布可視化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、外場に対する応答の分布を示す画像を生成する磁気応答分布可視化装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、空港等では、ミリ波によってセキュリティチェックが行われている。これに関して、特許文献1には、走査速度及び正確性を向上させることができるミリ波三次元ホログラフィック走査イメージング設備等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、生体及び金属ケースなど、ミリ波を遮蔽する多数の障害物が存在し、検知対象物を適切に検知することが困難な場合がある。
【0005】
そこで、本開示は、外場に対する移動物体の応答の分布を示す画像をセキュリティ検査に用いられる画像として高精度に生成することができる磁気応答分布可視化装置等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る磁気応答分布可視化装置は、移動物体の外部から、磁場の基礎方程式を満たす磁場の成分である磁場成分を誘起する誘起回路と、前記移動物体によって変化した前記磁場成分を含む前記磁場の強度及び位相を前記移動物体の外部において複数の時点で感知するセンサと、前記磁場の強度及び位相の感知結果、前記移動物体の移動速度、及び、前記磁場の基礎方程式に基づいて、前記センサよりも前記移動物体に近い近傍位置における前記磁場の強度及び位相を算出し、前記磁場の強度及び位相の算出結果に基づいて、前記誘起回路によって誘起された前記磁場成分に対する前記移動物体の応答の分布を示す画像でありセキュリティ検査に用いられる画像である磁気応答分布画像を生成する情報処理回路とを備える。
【0007】
なお、これらの包括的又は具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム、又は、コンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの非一時的な記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム、及び、記録媒体の任意の組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様によれば、外場に対する移動物体の応答の分布を示す画像をセキュリティ検査に用いられる画像として高精度に生成することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施の形態における磁気応答分布可視化装置を示す概念図である。
【
図2】
図2は、実施の形態におけるセキュリティゲートの側面を示す概念図である。
【
図3】
図3は、実施の形態における再構成処理を説明するための説明図である。
【
図4】
図4は、実施の形態における測定面及び再構成面を示す概念図である。
【
図5】
図5は、実施の形態における情報処理回路が行う動作を示す概念図である。
【
図6】
図6は、実施の形態における画像合成の例を示す概念図である。
【
図7】
図7は、実施の形態における誘起回路の変形例を示す概念図である。
【
図8】
図8は、実施の形態における磁気応答分布可視化装置の第1変形例を示す概念図である。
【
図9】
図9は、実施の形態における磁気応答分布可視化装置の第2変形例を示す概念図である。
【
図10】
図10は、実施の形態における磁気応答分布可視化装置の第3変形例を示す概念図である。
【
図11】
図11は、実施の形態における誘起回路及び磁気センサの第1配置例を示す概念図である。
【
図12】
図12は、実施の形態における誘起回路及び磁気センサの第2配置例を示す概念図である。
【
図13】
図13は、実施の形態における誘起回路及び磁気センサの第3配置例を示す概念図である。
【
図14】
図14は、実施の形態における誘起回路及び磁気センサの第4配置例を示す概念図である。
【
図15】
図15は、実施の形態における外部端末に表示される情報の例を示す概念図である。
【
図16】
図16は、実施の形態におけるセキュリティ検査システムの例を示す概念図である。
【
図17】
図17は、実施の形態における磁気応答分布可視化装置の第4変形例を示す概念図である。
【
図18】
図18は、参考例において得られる画像、及び、実施の形態において得られる画像を示す概念図である。
【
図19】
図19は、実施の形態における磁気応答分布可視化装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
現在、空港等では、ミリ波によってセキュリティチェックが行われている。これは、被曝の観点からX線は用いられないため、エネルギーがより低い電磁波の活用が検討され、衣服等の透過性が考慮された結果である。
【0011】
警察によると、刃物等の凶器は、衣服の裏側だけでなく、生体中に、あるいは、鞄などの奥深くに隠されている。ミリ波には、鞄を含む障害物が多く存在し、凶器の検知は困難である。ウォークスルータイプのセキュリティ検査装置が販売されているが、信号対雑音比の問題から実際には、検査対象の人がほぼ静止する必要がある。また、脇の下などに隠された場合は検出ができない、及び、鞄の内部は検出できず鞄は別にX線で検査する必要が生じる等、現行の防犯画像検査技術には課題が多い。
【0012】
金属製のスーツケースのような鞄の中の凶器を発見するには、物理学的な見地から、透過性を考慮すると、高エネルギー線、又は、その真逆の静的な磁界が用いられ得る。そして、被曝の観点から、静的な磁界を用いることが望まれる。しかしながら、凶器から発生する磁界は空間的に広がるため、明瞭な画像が得られない。
【0013】
そこで、例えば、本開示の一態様に係る磁気応答分布可視化装置は、移動物体の外部から、磁場の基礎方程式を満たす磁場の成分である磁場成分を誘起する誘起回路と、前記移動物体によって変化した前記磁場成分を含む前記磁場の強度及び位相を前記移動物体の外部において複数の時点で感知するセンサと、前記磁場の強度及び位相の感知結果、前記移動物体の移動速度、及び、前記磁場の基礎方程式に基づいて、前記センサよりも前記移動物体に近い近傍位置における前記磁場の強度及び位相を算出し、前記磁場の強度及び位相の算出結果に基づいて、前記誘起回路によって誘起された前記磁場成分に対する前記移動物体の応答の分布を示す画像でありセキュリティ検査に用いられる画像である磁気応答分布画像を生成する情報処理回路とを備える。
【0014】
これにより、磁気応答分布可視化装置は、移動速度に基づいて複数の時点において相対的に定められるセンサの位置、磁場の強度及び位相の感知結果、及び、磁場の基礎方程式に基づいて、移動物体の近傍における磁場の強度及び位相を適切に算出することができる。そして、磁気応答分布可視化装置は、磁場の強度及び位相の算出結果に基づいて、磁気応答分布画像を高精度に生成することができる。
【0015】
すなわち、磁気応答分布可視化装置は、外場に対する移動物体の応答の分布を示す画像をセキュリティ検査に用いられる画像として高精度に生成することができる。
【0016】
また、例えば、前記情報処理回路は、前記複数の時点のそれぞれにおける前記移動物体に対して相対的な前記センサの位置である感知位置を前記移動速度に基づいて特定することにより、前記複数の時点における前記センサの複数の感知位置を前記移動物体に対して相対的に特定し、前記複数の時点における前記感知結果の時間的な変化を前記複数の感知位置における前記感知結果の空間的な変化として用いて、前記近傍位置における前記磁場の強度及び位相を算出する。
【0017】
これにより、磁気応答分布可視化装置は、感知結果の時間的な変化を空間的な変化として用いることができる。したがって、磁気応答分布可視化装置は、空間的な分布を適切に算出することができ、移動物体の近傍位置における磁場の強度及び位相を適切に算出することができる。
【0018】
また、例えば、前記情報処理回路は、前記磁気応答分布画像に基づいて、前記移動物体に検知対象物が含まれるか否かを判定し、前記移動物体に前記検知対象物が含まれると判定された場合、前記検知対象物又は前記移動物体の位置を示す情報を外部端末へ出力する。
【0019】
これにより、磁気応答分布可視化装置は、特定の検知対象物の位置、又は、特定の検知対象物を含む移動物体の位置を通知することができる。
【0020】
また、例えば、磁気応答分布可視化装置は、さらに、前記移動速度を計測する計測器を備える。
【0021】
これにより、磁気応答分布可視化装置は、移動物体の移動速度を適切に取得することができる。
【0022】
また、例えば、前記誘起回路によって誘起される前記磁場成分は、周期的に変動する磁場成分であり、前記情報処理回路は、前記感知結果から、前記周期的に変動する磁場成分の周波数と同じ周波数の磁場成分を検波し、検波された前記磁場成分、前記移動速度、及び、前記磁場の基礎方程式に基づいて、前記近傍位置における前記磁場の強度及び位相を算出する。
【0023】
これにより、磁気応答分布可視化装置は、誘起回路によって誘起された磁場成分に対する応答を適切に取得することができる。つまり、磁気応答分布可視化装置は、ノイズを抑制することができる。したがって、磁気応答分布可視化装置は、磁気応答分布画像を高精度に生成することができる。
【0024】
また、例えば、前記誘起回路によって誘起される前記磁場成分として、第1周波数を有し前記移動物体における遮蔽物を透過する第1磁場成分と、前記第1周波数よりも高い第2周波数を有し前記移動物体における前記遮蔽物によって遮蔽される第2磁場成分とのそれぞれが誘起され、前記情報処理回路は、前記誘起回路によって誘起される前記第1磁場成分に対する前記移動物体の応答の分布を示す第1画像と、前記誘起回路によって誘起される前記第2磁場成分に対する前記移動物体の応答の分布を示す第2画像とを生成し、前記第1画像と前記第2画像とを合成することにより、前記磁気応答分布画像を生成する。
【0025】
これにより、磁気応答分布可視化装置は、2つの異なる周波数の磁場成分に対して得られる2つの画像の合成画像を磁気応答分布画像として生成することができる。この合成画像は、遮蔽物の奥側と、遮蔽物自体との両方を示し得る。つまり、この合成画像は、遮蔽物によって隠されている物の位置を適切に示し得る。したがって、磁気応答分布可視化装置は、セキュリティ検査に有効な磁気応答分布画像を生成することができる。
【0026】
また、例えば、前記センサは、直線上に配置された複数のセンサで構成される。
【0027】
これにより、磁気応答分布可視化装置は、1次元のセンサアレイを用いて、磁場の強度及び位相を感知することができる。そして、これにより、センサの設置スペースの削減が可能である。
【0028】
また、例えば、前記センサは、第1直線上に配置された複数のセンサ、及び、前記第1直線と平行な直線であり前記第1直線よりも前記移動物体から遠い直線である第2直線上に配置された複数のセンサで構成される。
【0029】
これにより、磁気応答分布可視化装置は、2つの1次元のセンサアレイを用いて、磁場の強度及び位相を感知することができ、移動物体から距離の異なる感知位置で磁場の強度及び位相を感知することができる。
【0030】
また、例えば、前記誘起回路は、直線上に配置された複数の誘起回路で構成される。
【0031】
これにより、磁気応答分布可視化装置は、1次元の誘起回路アレイを用いて、磁場成分を誘起することができる。そして、これにより、誘起回路の設置スペースの削減が可能である。
【0032】
また、例えば、前記センサは、平面上に配置された複数のセンサで構成される。
【0033】
これにより、磁気応答分布可視化装置は、2次元のセンサアレイを用いて、磁場の強度及び位相を感知することができる。そして、これにより、磁気応答分布可視化装置は、1時点で2次元の感知結果を取得することができる。したがって、磁気応答分布可視化装置は、複数の時点で取得される2次元の感知結果を組み合わせてノイズを除去することができる。
【0034】
また、例えば、前記センサは、第1平面上に配置された複数のセンサ、及び、前記第1平面と平行な平面であり前記第1平面よりも前記移動物体から遠い平面である第2平面上に配置された複数のセンサで構成される。
【0035】
これにより、磁気応答分布可視化装置は、2つの2次元のセンサアレイを用いて、磁場の強度及び位相を感知することができ、移動物体から距離の異なる感知位置で磁場の強度及び位相を感知することができる。
【0036】
また、例えば、前記誘起回路は、平面上に配置された複数の誘起回路で構成される。
【0037】
これにより、磁気応答分布可視化装置は、2次元の誘起回路アレイを用いて、磁場成分を一様に誘起することができる。
【0038】
また、例えば、前記誘起回路と前記センサとは、前記移動物体が移動する経路を挟んで配置される。
【0039】
これにより、磁気応答分布可視化装置は、移動物体に対して、誘起回路とは反対側のセンサで磁場の強度及び位相を感知することができる。したがって、磁気応答分布可視化装置は、センサで磁場の強度及び位相を感知する際、誘起回路が誘起する直接の磁場成分であって、環境磁場等の移動物体によらない磁場成分の影響を抑制することができる。
【0040】
また、例えば、前記誘起回路と前記センサとは、前記移動物体が移動する経路を挟まず前記経路に対して同じ側に配置される。
【0041】
これにより、磁気応答分布可視化装置は、移動物体に対して、誘起回路と同じ側のセンサで磁場の強度及び位相を感知することができる。したがって、誘起回路及びセンサの配置スペースの削減が可能である。
【0042】
また、例えば、前記誘起回路は、前記移動物体が移動する経路を挟む第1サイド及び第2サイドに配置される複数の誘起回路で構成され、前記センサは、前記第1サイド及び前記第2サイドに配置される複数のセンサで構成され、前記情報処理回路は、前記第1サイドに配置される1つ以上の誘起回路が前記磁場成分を誘起し、前記第2サイドに配置される1つ以上のセンサが前記磁場の強度及び位相を感知する第1動作と、前記第2サイドに配置される1つ以上の誘起回路が前記磁場成分を誘起し、前記第1サイドに配置される1つ以上のセンサが前記磁場の強度及び位相を感知する第2動作とを切り替える。
【0043】
これにより、磁気応答分布可視化装置は、両サイドにおいて時分割で磁場の強度及び位相を感知することができ、多くの情報を得ることができる。
【0044】
また、例えば、前記情報処理回路は、前記第1動作に基づいて生成される第1磁気応答分布画像と、前記第2動作に基づいて生成される第2磁気応答分布画像との中から一方を前記磁気応答分布画像として選択する。
【0045】
これにより、磁気応答分布可視化装置は、両サイドに対応する2つの磁気応答分布画像のうち一方を適応的に採用することができる。
【0046】
また、例えば、本開示の一態様に係るセキュリティ検査システムは、前記磁気応答分布可視化装置と、前記移動物体に対応する人に対して画像診断を行うためのサーモグラフィ装置とを備える。
【0047】
これにより、セキュリティ検査システムは、外場に対する移動物体の応答の分布を示す画像をセキュリティ検査に用いられる画像として高精度に生成することができ、かつ、ウィルスの保持者である可能性を有する人に対して画像診断を行うことができる。
【0048】
また、例えば、本開示の一態様に係る磁気応答分布可視化方法は、誘起回路を用いて、移動物体の外部から、磁場の基礎方程式を満たす磁場の成分である磁場成分を誘起するステップと、センサを用いて、前記移動物体によって変化した前記磁場成分を含む前記磁場の強度及び位相を前記移動物体の外部において複数の時点で感知するステップと、前記磁場の強度及び位相の感知結果、前記移動物体の移動速度、及び、前記磁場の基礎方程式に基づいて、前記センサよりも前記移動物体に近い近傍位置における前記磁場の強度及び位相を算出し、前記磁場の強度及び位相の算出結果に基づいて、前記誘起回路によって誘起された前記磁場成分に対する前記移動物体の応答の分布を示す画像でありセキュリティ検査に用いられる画像である磁気応答分布画像を生成するステップとを含む。
【0049】
これにより、移動速度に基づいて複数の時点において相対的に定められるセンサの位置、磁場の強度及び位相の感知結果、及び、磁場の基礎方程式に基づいて、移動物体の近傍における磁場の強度及び位相を適切に算出することが可能になる。そして、磁気応答分布可視化装置は、磁場の強度及び位相の算出結果に基づいて、磁気応答分布画像を高精度に生成することが可能になる。
【0050】
すなわち、磁気応答分布可視化装置は、外場に対する移動物体の応答の分布を示す画像をセキュリティ検査に用いられる画像として高精度に生成することが可能になる。
【0051】
以下、図面を用いて、実施の形態について説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示す。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序等は、一例であり、請求の範囲を限定する主旨ではない。
【0052】
また、ここでは、磁気応答分布可視化装置の例として、磁場を用いる磁気応答分布可視化装置を主に説明する。また、ここでの説明における磁場成分は、磁場を構成する成分である。磁場成分は、全体の磁場に重畳される複数の磁場のそれぞれであってもよい。
【0053】
(実施の形態)
図1は、本実施の形態における磁気応答分布可視化装置を示す概念図である。
図1に示された磁気応答分布可視化装置100は、誘起回路112、磁気センサ113、カメラ114、赤外線センサ115、レーザー装置116、プリアンプ121、スイッチ122、AD変換器123、情報処理回路124、DA変換器125、及び、アンプ126等を備える。
【0054】
磁気応答分布可視化装置100は、カメラ114、赤外線センサ115及びレーザー装置116の全てを備えていなくてもよく、カメラ114、赤外線センサ115及びレーザー装置116のうちいずれかのみを備えていてもよい。また、磁気応答分布可視化装置100は、複数の誘起回路112、複数の磁気センサ113、複数のカメラ114、複数の赤外線センサ115、及び、複数のレーザー装置116を備えていてもよい。
【0055】
図1の例において、複数の誘起回路112、及び、複数の磁気センサ113は、セキュリティゲート111の内部に含まれる。具体的には、1つの誘起回路112と、その両側の2つの磁気センサ113とのセットでそれぞれが構成される複数のセットが、高さ方向、つまり鉛直方向に配列されている。
【0056】
そして、磁気応答分布可視化装置100は、セキュリティゲート111を通過する移動物体の磁気応答分布を示す画像を生成する。この画像は、磁場の強度及び位相を示し得る。また、この画像は、移動物体に含まれる磁性体、より具体的には強磁性体を示し得る。例えば、移動物体は、人、及び、人が保持する荷物等である。したがって、磁気応答分布可視化装置100によって生成される画像は、人が隠し持つ凶器等を示し得る。
【0057】
図示が省略されているが、カメラ114、赤外線センサ115及びレーザー装置116は、情報処理回路124に接続されている。また、全ての磁気センサ113がプリアンプ121に接続されている。また、全ての誘起回路112がアンプ126に接続されている。
【0058】
誘起回路112は、磁場成分を誘起する電気回路である。誘起回路112は、例えば、数ミリテスラ以下の磁場成分を誘起するコイルである。誘起回路112は、導線又はプリント基板の配線等であってもよい。例えば、誘起回路112には、情報処理回路124によって交流電流がDA変換器125及びアンプ126を介して印加される。これにより、交流の磁場成分が誘起される。また、誘起回路112によって誘起された磁場成分は、移動物体によって変化する。
【0059】
上記の交流電流の周波数は、100kHz以下の低周波数の交流電流である。したがって、上記の交流の磁場成分は、緩やかに変動する磁場成分である。その際、高周波数の交流電流が用いられた場合、渦電流の発生によって、例えば導電性の高い金属ケース内の物体における磁場成分の変化を識別することが困難になる。一方、直流電流が用いられた場合、ノイズを除去することが困難になる。したがって、低周波数の交流電流が用いられる。
【0060】
図1の例では、複数の誘起回路112が、セキュリティゲート111の右サイドと左サイドとのそれぞれにおいて、鉛直方向に1次元で配置される。
【0061】
磁気センサ113は、磁気を感知するセンサである。磁気センサ113は、TMR(Tunneling Magneto Resistive)素子、GMR(Giant Magneto Resistive)素子、SQUID(Superconducting Quantum Interference Device)素子、又は、MI(Magneto-Impedance element)素子等であってもよい。
【0062】
具体的には、磁気センサ113は、移動物体によって変化した磁場成分を含む磁場における磁気を感知する。例えば、磁気センサ113は、ナノテスラ又はピコテスラの精度で磁気を感知する。そして、磁気センサ113は、磁気センサ信号を感知結果として出力する。なお、ここで、感知は、測定とも表現され得る。
【0063】
図1の例において、複数の磁気センサ113は、セキュリティゲート111の右サイドと左サイドとのそれぞれにおいて、鉛直方向に並んで配置される。さらに、複数の磁気センサ113は、各サイドにおいて、セキュリティゲート111の内側に近い直線と、セキュリティゲート111の内側から遠い直線とのそれぞれに沿って配置される。
【0064】
カメラ114は、被写体を撮像する撮像装置である。具体的には、カメラ114は、セキュリティゲート111を通過する移動物体を撮像する。カメラ114は、セキュリティゲート111を通過する移動物体の移動速度を計測するモーションカメラであってもよい。
【0065】
赤外線センサ115は、赤外線を感知するセンサである。赤外線センサ115は、セキュリティゲート111を通過する移動物体から放射される赤外線、又は、移動物体によって反射される赤外線を感知する。
【0066】
レーザー装置116は、レーザー光を放射する装置である。レーザー装置116は、例えば、半導体レーザーである。具体的には、レーザー装置116は、レーザー光を放射し、セキュリティゲート111を通過する移動物体から反射されたレーザー光を受光することで、移動物体を感知する。移動物体の感知結果に従って、移動物体までの距離が取得されてもよい。
【0067】
また、間隔を空けて配置された複数のレーザー装置116のそれぞれが移動物体を感知してもよい。そして、複数のレーザー装置116における移動物体の感知結果に従って、移動速度が取得されてもよい。
【0068】
プリアンプ121は、微小な信号を増幅する回路である。これにより、後段の回路(AD変換器123及び情報処理回路124等)で利用可能な信号が得られる。例えば、プリアンプ121は、磁気センサ113から出力された磁気センサ信号を増幅し、増幅された磁気センサ信号を出力する。プリアンプ121は、複数の磁気センサ113のそれぞれに対して設けられていてもよい。
【0069】
スイッチ122は、電気的な経路を切り替えるための回路である。具体的には、スイッチ122は、複数の磁気センサ113からプリアンプ121を介して得られる磁気センサ信号を順次AD変換器123へ入力する。
【0070】
AD変換器123は、デジタルアナログ変換器であって、アナログ信号をデジタル信号に変換するための変換器である。AD変換器123は、磁気センサ113からプリアンプ121及びスイッチ122を介して入力される磁気センサ信号をアナログ信号として取得し、アナログ信号として取得された磁気センサ信号をデジタル信号に変換する。そして、AD変換器123は、デジタル信号に変換された磁気センサ信号を情報処理回路124に入力する。
【0071】
情報処理回路124は、情報処理を行う電気回路である。情報処理回路124は、コンピュータ、又は、コンピュータのプロセッサ等であってもよい。
【0072】
具体的には、情報処理回路124は、磁気センサ信号を磁気の感知結果として取得する。また、情報処理回路124は、カメラ114、赤外線センサ115、レーザー装置116、又は、これらの組み合わせ等から得られる情報に基づいて、移動物体の移動速度を取得する。
【0073】
そして、情報処理回路124は、磁気の感知結果、移動物体の移動速度、及び、場(具体的には静磁場)が満たす基礎方程式であるラプラス方程式に基づいて、移動物体の近傍位置における磁場の強度及び位相を算出する。つまり、情報処理回路124は、磁場の強度及び位相を再構成する。
【0074】
そして、情報処理回路124は、磁場の強度及び位相の算出結果に基づいて、移動物体の磁気応答分布を示す画像を生成する。情報処理回路124は、画像をディスプレイに出力することにより、画像をディスプレイに表示してもよい。あるいは、情報処理回路124は、画像をプリンタに出力することにより、プリンタを介して画像を印刷してもよい。あるいは、情報処理回路124は、有線又は無線の通信によって画像を電子データとして他の装置に送信してもよい。
【0075】
また、情報処理回路124は、DA変換器125へ制御信号を入力することにより、DA変換器125及びアンプ126を介して、誘起回路112に電流を印加する。例えば、情報処理回路124は、DA変換器125及びアンプ126を介して、誘起回路112に交流電流を印加する。
【0076】
DA変換器125は、デジタルアナログ変換器であって、デジタル信号をアナログ信号に変換するための変換器である。具体的には、DA変換器125は、情報処理回路124から入力された制御信号をデジタル信号として取得し、デジタル信号として取得された制御信号をアナログ信号に変換する。そして、DA変換器125は、アナログ信号に変換された制御信号をアンプ126に入力する。
【0077】
アンプ126は、アナログ信号に変換された制御信号に対応する電流を誘起回路112に印加する。例えば、アンプ126は、交流電流を誘起回路112に印加する。
【0078】
例えば、セキュリティゲート111の右サイドの誘起回路112によって磁場成分が誘起される。そして、右サイドの誘起回路112によって誘起された磁場成分は、移動物体によって変化する。特に、移動物体に含まれる磁性体、より具体的には強磁性体によって磁場成分は大きく変化する。そして、変化した磁場成分を含む磁場における磁気がセキュリティゲート111の左サイドの磁気センサ113によって感知される。
【0079】
また、図示しないスイッチ等によって、左右の動作が交互に切り替えられる。つまり、右サイドから磁場成分が誘起され左サイドで磁気が感知される動作と、左サイドから磁場成分が誘起され右サイドで磁気が感知される動作とが交互に切り替えられる。
【0080】
そして、情報処理回路124は、左サイド及び右サイドのそれぞれにおける感知結果をノイマン型境界条件及びディリクレ型境界条件として用いて、移動物体の近傍位置における磁場の強度及び位相を算出する。そして、情報処理回路124は、算出結果に基づいて、移動物体の磁気応答分布を示す画像を生成する。
【0081】
なお、
図1は、概念図であり、複数の誘起回路112の数及びサイズ、並びに、複数の磁気センサ113の数及びサイズは、
図1の例とは異なっていてもよい。より小さい多数の誘起回路112がより高密に配置されていてもよいし、より小さい多数の磁気センサ113がより高密に配置されていてもよい。他の概念図も同様である。
【0082】
また、カメラ114、赤外線センサ115及びレーザー装置116のそれぞれは、セキュリティゲート111を通過する移動物体の移動速度を計測する計測器の役割を果たしてもよい。
【0083】
図2は、
図1に示されたセキュリティゲート111の側面を示す概念図である。複数の誘起回路112及び複数の磁気センサ113は、移動物体の進行方向に対して垂直な方向に並んでいる。
【0084】
そして、移動物体の進行方向とは垂直な方向に1次元に配列された複数の誘起回路112は、移動物体がセキュリティゲート111を通ることにより、相対的に、移動物体の進行方向とは反対方向に1次元の走査を行うことができる。同時に、移動物体の進行方向とは垂直な方向に1次元に配列された複数の磁気センサ113は、移動物体がセキュリティゲート111を通ることにより、相対的に、移動物体の進行方向とは反対方向に1次元の走査を行うことができる。
【0085】
これにより、複数の磁気センサ113は、移動物体に対して相対的な平面であって、移動物体の進行方向に平行な平面に沿って走査を行うことができる。また、この時に磁気を感知する複数の磁気センサ113とは移動物体に対して反対側の誘起回路112によって磁場成分が誘起される。そして、移動物体によって変化した磁場成分を含む磁場の磁気を複数の磁気センサ113が感知する。これにより、上記のような平面上の磁気の感知結果が得られる。
【0086】
また、磁気応答分布可視化装置100は、移動物体の移動速度を取得することができる。そして、磁気応答分布可視化装置100は、移動物体の移動速度に基づいて、複数の時点において移動物体に対して相対的に各磁気センサ113の位置を特定することができる。つまり、磁気応答分布可視化装置100は、感知結果が得られる各位置の情報を特定することができ、特定された位置における感知結果に基づいて、磁場の強度及び位相を適切に再構成することができる。
【0087】
また、
図1に示されているように、移動物体に相対的に近い複数の磁気センサ113、及び、移動物体から相対的に遠い複数の磁気センサ113が存在する。これにより、2つの平面上の磁気の感知結果が得られる。
【0088】
図3は、
図1に示された情報処理回路124によって行われる再構成処理を説明するための説明図である。
図3に示された2つの測定面は、磁気の感知結果が得られる2つの平面を示す。
図3では省略されているが、誘起回路112から誘起された磁場成分によって物体が磁化される。そして、磁化された物体から誘起される磁場成分を含む磁場の磁気を磁気センサ113が感知する。
【0089】
例えば、磁気発生源の存在しない自由空間における場の基礎方程式は、ラプラス方程式で表現される。具体的には、xyz直交座標系における磁場ベクトルのz成分であるHz(x,y,z)に関して、以下の式(1)が成立する。
【0090】
【0091】
上記の式(1)の一般解は、以下の式(2)のように表される。
【0092】
【0093】
上記の式(2)において、kx及びkyは、それぞれ、x方向の波数及びy方向の波数を表している。また、a(kx,ky)及びb(kx,ky)は、kx及びkyで表される関数である。例えば、測定によって、z=0の平面における磁場ベクトルのz成分であるHz(x,y,0)、及び、磁場ベクトルのz成分のz方向の勾配である∂/∂zHz(x,y,z)|z=0が得られる。これらを用いて、式(2)のa(kx,ky)及びb(kx,ky)が、それぞれ、以下の式(3)及び式(4)のように求められる。
【0094】
【0095】
【0096】
上記の式(3)及び式(4)において、f(kx,ky)は、Hz(x,y,0)の2次元フーリエ変換像であり、g(kx,ky)は、∂/∂zHz(x,y,z)|z=0の2次元フーリエ変換像である。式(2)に式(3)及び式(4)を代入することで、Hzが、次の式(5)のように得られる。
【0097】
【0098】
上記の方法によって、ディリクレ型境界条件であるHz(x,y,0)、及び、ノイマン型境界条件である∂/∂zHz(x,y,z)|z=0を用いて、磁気発生源が存在しない空間の任意のz座標におけるHz(x,y,z)を取得することが可能である。つまり、z=0のxy平面である測定面、及び、その付近の測定面における磁場から、物体に近い再構成面における磁場を再構成することが可能である。
【0099】
具体的には、Hz(x,y,0)は、z=0の測定面における感知結果として得られる。∂/∂zHz(x,y,z)|z=0は、2つの測定面における感知結果に基づいて算出される。例えば、z=0の測定面における感知結果と、z=dの測定面における感知結果とが取得される。そして、z=0の測定面における感知結果と、z=dの測定面における感知結果との差を測定面間の距離であるdで割ることにより、∂/∂zHz(x,y,z)|z=0が近似的に得られる。
【0100】
そして、感知結果から得られたHz(x,y,0)及び∂/∂zHz(x,y,z)|z=0に対してx及びyに関する2次元フーリエ変換を行うことにより、f(kx,ky)、及び、g(kx,ky)が得られる。そして、2次元フーリエ変換によって得られたf(kx,ky)、及び、g(kx,ky)を式(5)に代入することにより、磁気発生源が存在しない空間の任意のz座標におけるHz(x,y,z)が得られる。これにより、再構成面における磁場の情報を正確に取得することが可能である。
【0101】
ここで、感知結果に対応する測定データは、磁場ベクトルのz成分を要素として有する2次元データマトリックスである。しかし、磁場ベクトルのz成分のz方向の高階微分を要素として有する2次元データマトリックスである場合でも同様に再構成を行うことが可能である。
【0102】
なお、感知結果として得られるHz(x,y,0)は、(x,y,0)の位置における磁場の強度及び位相に対応する。また、算出結果として得られるHz(x,y,z)は、(x,y,z)の位置における磁場の強度及び位相に対応する。
【0103】
図4は、
図1に示された磁気応答分布可視化装置100において、
図3に示された測定面及び再構成面を示す概念図である。
【0104】
磁気応答分布可視化装置100は、左サイドの2列の磁気センサ113に対応する2つの測定面における感知結果に基づいて、再構成面の磁場を示す画像であって、移動物体の磁気応答分布を示す画像を生成することができる。同様に、磁気応答分布可視化装置100は、右サイドの2列の磁気センサ113に対応する2つの測定面における感知結果に基づいて、再構成面の磁場を示す画像であって、移動物体の磁気応答分布を示す画像を生成することができる。
【0105】
磁気応答分布可視化装置100の情報処理回路124は、左サイドの感知結果に基づいて生成される画像と、右サイドの感知結果に基づいて生成される画像とのうち、一方を採用してもよい。
【0106】
例えば、情報処理回路124は、カメラ114、赤外線センサ115、レーザー装置116、又は、これらの組み合わせ等から得られる情報に基づいて、移動物体が左サイドに近いか右サイドに近いかを判定してもよい。そして、移動物体が左サイドに近い場合、左サイドの感知結果に基づいて生成される画像が採用されてもよい。また、移動物体が右サイドに近い場合、右サイドの感知結果に基づいて生成される画像が採用されてもよい。
【0107】
左サイドの感知結果に基づいて生成される画像と、右サイドの感知結果に基づいて生成される画像とのうち、コントラストの強い画像が採用されてもよい。
【0108】
また、情報処理回路124は、カメラ114、赤外線センサ115、レーザー装置116、又は、これらの組み合わせ等から得られる情報に基づいて、再構成面の位置を特定してもよい。例えば、情報処理回路124は、カメラ114、赤外線センサ115、レーザー装置116、又は、これらの組み合わせ等から得られる情報に基づいて、移動物体の位置を特定してもよい。そして、情報処理回路124は、移動物体の位置、又は、移動物体の位置に近い位置を再構成面の位置として特定してもよい。
【0109】
あるいは、情報処理回路124は、複数の再構成面に対応する複数の再構成画像を生成し、複数の再構成画像の中からコントラストの強い再構成画像を最終的な再構成画像として採用してもよい。
【0110】
図5は、
図1に示された情報処理回路124が行う動作を示す概念図である。情報処理回路124は、磁気センサ113からプリアンプ121等を介して磁気センサ信号を取得する。そして、情報処理回路124は、位相検波を行う。具体的には、まず、情報処理回路124は、磁気センサ信号と参照信号との乗算を行う。参照信号は、誘起回路112に印加される交流電流を示す交流信号である。乗算によって得られる乗算結果信号の直流成分は、誘起回路112に印加される交流電流の周波数と同じ周波数の磁場成分に対応する。
【0111】
そして、情報処理回路124は、乗算結果信号に対してローパスフィルタを適用し、乗算結果信号の交流成分を遮断し、乗算結果信号の直流成分を透過させる。これにより、誘起回路112に印加される交流電流の周波数と同じ周波数の磁場成分に対応する検波信号が取得される。この検波信号が、感知結果として用いられてもよい。つまり、プリアンプ121の処理、及び、位相検波の処理等が適用された感知結果が、再構成処理に用いられてもよい。
【0112】
例えば、情報処理回路124は、AD変換器123においてデジタル信号に変換された磁気センサ信号に対してデジタル回路上で位相検波の処理をデジタル信号処理として行う。あるいは、情報処理回路124は、AD変換器123を介さずに、磁気センサ信号をアナログ信号として取得してもよい。そして、情報処理回路124は、アナログ信号として取得された磁気センサ信号に対してアナログ回路上で位相検波の処理をアナログ信号処理として行ってもよい。
【0113】
そして、情報処理回路124は、
図3を用いて説明したような再構成処理を行う。これにより、再構成面における磁場の強度及び位相を示す画像であって、移動物体の磁気応答分布を示す画像が再構成画像として取得される。
【0114】
そして、情報処理回路124は、再構成画像と、データベースに記憶されたデータパターンとを照合し、再構成画像の認識処理を行う。再構成画像とデータパターンとの照合は、再構成画像とデータパターンとの乗算を用いて行われてもよい。
【0115】
認識処理の結果、凶器が認識された場合、情報処理回路124は、データベースに記憶された地図情報にセキュリティゲート111の座標をマッピングする。例えば、情報処理回路124は、地図上のセキュリティゲート111の座標に対してピンが刺された画像であって、リスク数値が書き込まれた画像を生成する。そして、情報処理回路124は、生成された画像を外部端末200へ送信する。
【0116】
外部端末200は、汎用コンピュータ装置であってもよいし、モニタリング装置であってもよいし、携帯電話であってもよいし、携帯端末であってもよいし、スマートフォン又はタブレット端末等であってもよい。
【0117】
例えば、警察は、複数のセキュリティゲート111のうち、凶器が認識されたセキュリティゲート111の座標を常にモニタリングし、危険人物を確保するための行動を行う。また、情報処理回路124は、様々な場所に設置された複数のセキュリティゲート111から、危険人物の移動経路を割り出してもよい。その際、危険人物の保持する携帯電話等の情報が収集されて移動経路の割り出しに用いられてもよい。そして、例えば周囲1km以内の一般の人に最適な避難経路の情報が伝達されてもよい。
【0118】
情報処理回路124は、有線又は無線の通信によって、上記のような、凶器が認識されたセキュリティゲート111の座標を示す画像、危険人物の移動経路、及び、最適な避難経路等の情報を外部端末200に出力してもよい。また、情報処理回路124は、カメラ114から危険人物の画像を取得して、外部端末200に出力してもよい。
【0119】
また、情報処理回路124は、カメラ114、赤外線センサ115、レーザー装置116、又は、これらの組み合わせ等に基づいて、危険人物の移動速度を取得し、危険人物の移動速度を危険人物の移動経路に反映させてもよい。
【0120】
また、情報処理回路124は、カメラ114、赤外線センサ115、レーザー装置116、又は、これらの組み合わせ等に基づいて、セキュリティゲート111を通過する人を検知してもよい。そして、情報処理回路124は、セキュリティゲート111を通過する人が検知された場合に、上述された動作を行ってもよい。
【0121】
また、上記では、セキュリティゲート111に誘起回路112及び磁気センサ113が含まれているが、車両の進入を禁止するためのポール等に誘起回路112及び磁気センサ113が含まれていてもよい。
【0122】
本実施の形態における磁気応答分布可視化装置100は、移動速度に基づいて移動物体に対して相対的に定められる磁気センサ113の位置、磁気の感知結果、及び、場の基礎方程式に基づいて、移動物体の近傍における磁場の強度及び位相を適切に算出することができる。そして、磁気応答分布可視化装置100は、磁場の強度及び位相の算出結果に基づいて、磁気応答分布を示す画像をセキュリティ検査に用いられる画像として高精度に生成することができる。
【0123】
また、人が通常保持する物品の磁気応答は小さく、凶器は強磁性体のため磁気応答は大きいと想定される。例えば、人が通常保持する電気製品に用いられるアルミ及び銅等の磁気応答は小さい。一方で、凶器に用いられる鉄の磁気応答は大きい。したがって、磁気応答分布を示す画像は、特にセキュリティ検査に有効である。
【0124】
また、例えば、コイル等である誘起回路112から加えられる磁場の周波数を高めて、アルミニウム等の金属の遮蔽を利用することによって、犯罪者が持つ金属の分布と、磁場応答の分布とが分離して観測されてもよい。これにより、より精密な凶器の判定を実施することが可能となる。
【0125】
図6は、本実施の形態における画像合成の例を示す概念図である。
図6の例では、アルミケースの中に鉄製の銃が収納されている。そして、例えば、まず、誘起回路112によって、低周波の磁場成分が誘起される。低周波の磁場成分は、アルミケースを透過する。すなわち、低周波の磁場成分は、アルミケースによって遮蔽されない。したがって、低周波に対して生成される画像には、アルミケースの中に収納されている鉄製の銃が映し出される。
【0126】
また、例えば、次に、誘起回路112によって、高周波の磁場成分が誘起される。高周波の磁場成分は、アルミケース自体において渦電流を誘起し、アルミケースを透過しない。すなわち、高周波の磁場成分は、アルミケースによって遮蔽される。高周波に対して生成される画像には、アルミケースの中に収納されている鉄製の銃が映し出されずに、アルミケース自体が映し出される。
【0127】
情報処理回路124は、低周波に対して生成される画像と、高周波に対して生成される画像とを合成してもよい。例えば、情報処理回路124は、低周波に対して生成される画像と、高周波に対して生成される画像とを平均化することでこれらを合成してもよい。このような合成画像は、アルミケースの中に収納されている鉄製の銃と、アルミケース自体との両方を示し得る。すなわち、このような合成画像は、鉄製の銃がアルミケースに収納されていることを明確に示し得る。
【0128】
よって、情報処理回路124は、セキュリティ検査に有効な合成画像を生成することができる。
【0129】
なお、誘起回路112は、低周波の磁場成分と高周波の磁場成分との両方を同時に誘起してもよいし、時間をずらして低周波の磁場成分と高周波の磁場成分とを誘起してもよい。低周波の磁場成分と高周波の磁場成分とのそれぞれについて、磁場成分が誘起されるタイミングに従って、磁気センサ113が磁気を感知し、情報処理回路124が画像を生成する。
【0130】
図7は、
図1に示された誘起回路112の変形例を示す概念図である。
図1の例では、セキュリティゲート111の各サイドのそれぞれに複数の誘起回路112が配置されているが、
図7の例では、各サイドに、1つの誘起回路112が配置されている。
【0131】
つまり、磁気応答分布可視化装置100は、セキュリティゲート111の各サイドに1つの大きな誘起回路112を備えていてもよいし、セキュリティゲート111の各サイドに複数の誘起回路112を備えていてもよい。例えば、磁気応答分布可視化装置100は、セキュリティゲート111の各サイドに1つの大きなコイルを誘起回路112として備えていてもよいし、セキュリティゲート111の各サイドに複数のコイルを複数の誘起回路112として備えていてもよい。
【0132】
図8は、
図1に示された磁気応答分布可視化装置100の第1変形例を示す概念図である。
図8の例では、セキュリティゲート111は、1つのサイドのみ、つまり、片側のみで構成される。例えば、誘起回路112によって誘起された磁場成分によって、凶器が磁化される。これによって、凶器が2次的な磁場成分を誘起する。そして、誘起回路112と同じサイドの磁気センサ113が、凶器によって誘起された2次的な磁場成分を含む磁場の磁気を感知する。
【0133】
言い換えれば、誘起回路112によって誘起された磁場成分が、凶器の磁化によって変化し、変化した磁場成分が、誘起回路112と同じサイドの磁気センサ113によって感知される。このような態様は、反射型と呼ばれ得る。
【0134】
反射型においても、磁気センサ113は、凶器の磁化によって変化する磁場成分を含む磁場における磁気を適切に感知することができる。よって、磁気応答分布可視化装置100は、磁気応答分布を示す画像を適切に生成することができる。
【0135】
図9は、
図1に示された磁気応答分布可視化装置100の第2変形例を示す概念図である。
図9の例では、誘起回路112及び磁気センサ113は、床に埋め込まれる。これにより、磁気応答分布可視化装置100は、凶器を保持する危険人物に気付かれずに、磁気応答分布を示す画像を生成することができる。なお、
図9の例における態様も、
図8の例と同様に、反射型である。
【0136】
図10は、
図1に示された磁気応答分布可視化装置100の第3変形例を示す概念図である。磁気センサ113は、セキュリティゲート111の内側を通る移動物体から来る磁気ではなく、セキュリティゲート111の外側に存在する物質から来る磁気も感知する。このような磁気は、移動物体の磁気応答分布を示す情報ではなく、ノイズを構成する。
【0137】
図1の例では、セキュリティゲート111の各サイドにおいて、複数の磁気センサ113が2列で構成されている。これにより、複数の磁気センサ113は、セキュリティゲート111を通る移動物体から距離の異なる2つの位置において磁場の強度及び位相を感知することができる。したがって、磁気応答分布可視化装置100は、2つの測定面における感知結果を取得することができ、感知結果の勾配を取得することができる。
【0138】
そして、磁気応答分布可視化装置100の情報処理回路124は、
図3を用いて説明された方法によって、移動物体の近傍位置における磁場の強度及び位相を算出することができる。そして、これにより、情報処理回路124は、セキュリティゲート111の外側に存在する物質から来る磁気によって構成されるノイズを計算上排除することができる。
【0139】
図10の例では、セキュリティゲート111の各サイドにおいて、複数の磁気センサ113が1列で構成されている。この場合も、磁気応答分布可視化装置100の情報処理回路124は、
図3を用いて説明された方法と類似の方法によって、移動物体の近傍位置における磁場の強度及び位相を算出することができる。
【0140】
具体的には、ラプラス方程式の一般解として示された式(2)では、z方向の順方向及び逆方向の両側から磁気が来ることが想定されており、z方向に指数関数的に増大する項と、指数関数的に減衰する項とが含まれる。z方向について片側から磁気が来ることが前提であれば、ラプラス方程式の一般解は、z方向に指数関数的に増大する項と、指数関数的に減衰する項とのうち一方で表現され得る。したがって、この場合、未知の項が1つに絞られる。
【0141】
よって、ノイマン型境界条件である∂/∂zHz(x,y,z)|z=0を用いずに、ディリクレ型境界条件であるHz(x,y,0)を用いて、ラプラス方程式を解くことが可能である。すなわち、複数の磁気センサ113が各サイドにおいて1列で構成されている場合であっても、情報処理回路124は、移動物体の近傍位置における磁場の強度及び位相を算出することができる。
【0142】
なお、この場合、セキュリティゲート111の外側に存在する物質から来る磁気によって構成されるノイズが排除されない。しかしながら、セキュリティゲート111の外側に存在する物質から来る磁気によって構成されるノイズの影響がないとみなされる場合、
図10の例も有効である。
【0143】
図11は、
図1に示されたセキュリティゲート111の側面の例を示す概念図であって、誘起回路112及び磁気センサ113の第1配置例を示す概念図である。
図11の例は、
図2の例と同様である。複数の誘起回路112及び複数の磁気センサ113は、移動物体の進行方向に対して垂直な方向に並ぶ。
【0144】
つまり、セキュリティゲート111の1つのサイドにおいて、1つの誘起回路112と1つ又は2つの磁気センサ113とを1つの組として含む複数の組が1次元に配列される。すなわち、これらの複数の組が、1次元アレイを構成する。
【0145】
そして、セキュリティゲート111の一方のサイドにおいて1次元に配列された複数の誘起回路112と、セキュリティゲート111の他方のサイドにおいて1次元に配列された複数の磁気センサ113とが、移動物体を挟み込むように走査する。あるいは、反射型の例のように、複数の誘起回路112と複数の磁気センサ113とが一方のサイドのみで移動物体を走査してもよい。そして、複数の磁気センサ113は、複数の時点で磁気を感知する。
【0146】
また、例えば、複数のレーザー装置116によって、移動物体の移動速度が測定される。そして、感知結果の時間的な変化は、移動速度に基づいて位置をずらすことで、感知結果の空間的な変化に置き換えられる。これにより、2次元の感知結果が得られる。そして、2次元の感知結果が、再構成処理の境界条件に用いられる。
【0147】
図12は、
図1に示されたセキュリティゲート111の側面の例を示す概念図であって、誘起回路112及び磁気センサ113の第2配置例を示す概念図である。
【0148】
図12の例において、セキュリティゲート111の1つのサイドにおいて、1つの誘起回路112と1つ又は2つの磁気センサ113とを1つの組として含む複数の組が2次元に配列される。すなわち、これらの複数の組が、2次元アレイを構成する。
【0149】
そして、セキュリティゲート111の一方のサイドにおいて2次元に配列された複数の誘起回路112と、セキュリティゲート111の他方のサイドにおいて2次元に配列された複数の磁気センサ113とが、移動物体を挟み込むように走査する。あるいは、反射型の例のように、複数の誘起回路112と複数の磁気センサ113とが一方のサイドのみで移動物体を走査してもよい。そして、複数の時点で磁気が感知され、各時点で2次元の感知結果が得られる。
【0150】
また、例えば、複数のレーザー装置116によって、移動物体の移動速度が測定される。そして、移動速度に基づいて、複数の時点の2次元の感知結果の位置合わせが行われ、ノイズ及び歪み等が除去される。そして、統合された2次元の感知結果が、再構成処理の境界条件に用いられる。
【0151】
図13は、
図1に示されたセキュリティゲート111の側面の例を示す概念図であって、誘起回路112及び磁気センサ113の第3配置例を示す概念図である。
図13の例は、
図11の例と類似しているが、具体的には
図7の例に対応している。すなわち、各サイドに、1つの大きな誘起回路112が配置されている。1つの大きな誘起回路112は、例えば、1つの大きなコイルである。
【0152】
つまり、
図11の例における1次元に配置された複数の誘起回路112の代わりに、
図13の例のような1つの大きな誘起回路112が用いられてもよい。このような1つの大きな誘起回路112が、
図11の例における1次元に配置された複数の誘起回路112と同じ役割を果たし得る。
【0153】
また、セキュリティゲート111の右サイドと左サイドとのそれぞれにおいて、1つの大きな誘起回路112が配置されてもよいし、反射型の例のように、一方のサイドのみにおいて、1つの大きな誘起回路112が配置されてもよい。
【0154】
図14は、
図1に示されたセキュリティゲート111の側面の例を示す概念図であって、誘起回路112及び磁気センサ113の第4配置例を示す概念図である。
図14の例は、
図12の例と類似しているが、
図14の例では、鉛直方向のライン毎に誘起回路112が配置されている。具体的には、鉛直方向に長い複数の誘起回路112が、水平方向に並んで配置されている。
【0155】
つまり、
図12の例における2次元に配置された複数の誘起回路112の代わりに、
図14の例のような鉛直方向に長い複数の誘起回路112が用いられてもよい。このような鉛直方向に長い複数の誘起回路112が、
図12の例における2次元に配置された複数の誘起回路112と同じ役割を果たし得る。
【0156】
図14の例では、鉛直方向のライン毎に誘起回路112が配置されているが、水平方向のライン毎に誘起回路112が配置されていてもよい。具体的には、水平方向に長い複数の誘起回路112が、鉛直方向に並んで配置されていてもよい。このような水平方向に長い複数の誘起回路112も、
図12の例における2次元に配置された複数の誘起回路112と同じ役割を果たし得る。
【0157】
図15は、
図5に示された外部端末200に表示される情報の例を示す概念図である。
図15の例において、外部端末200は、警察又は市民が保持するスマートフォンである。
【0158】
例えば、磁気応答分布可視化装置100の情報処理回路124は、複数のセキュリティゲート111のそれぞれにおける複数の磁気センサ113から取得される感知結果に基づいて、磁気応答分布を示す画像を生成する。そして、情報処理回路124は、画像から凶器が認識された場合、複数のセキュリティゲート111のうち、凶器が認識された画像の情報源であるセキュリティゲート111を特定し、その位置を特定する。
【0159】
情報処理回路124は、特定されたセキュリティゲート111の位置を、凶器を保持する危険人物の位置として外部端末200へ送信してもよい。外部端末200は、危険人物の位置を示す情報を受信し、危険人物の位置を表示してもよい。
【0160】
あるいは、さらに、情報処理回路124は、特定されたセキュリティゲート111の位置、及び、その付近のレーザー装置116等によって得られる移動速度に基づいて、危険人物の位置を特定してもよい。より具体的には、情報処理回路124は、感知時刻及び現在時刻の差と、移動速度との乗算によって得られる距離をセキュリティゲート111の位置からずらして、危険人物の位置を特定してもよい。そして、情報処理回路124は、特定された位置を外部端末200へ送信してもよい。
【0161】
ここで、移動方向は、一方通行等の規則に基づいて識別されてもよいし、カメラ114、赤外線センサ115又はレーザー装置116等によって得られてもよい。
【0162】
また、情報処理回路124は、レーザー装置116等によって得られる移動速度を示す情報を外部端末200へ送信してもよい。外部端末200は、情報を受信し、受信された情報によって示される移動速度を危険人物の移動速度として表示してもよい。
【0163】
外部端末200は、上述された各種情報をAR(拡張現実:Augmented Reality)画像として表示してもよい。
【0164】
図16は、
図1に示された磁気応答分布可視化装置100を用いるセキュリティ検査システムの例を示す概念図である。
【0165】
例えば、
図16に示されたセキュリティ検査システム900は、磁気応答分布可視化装置100を備える。そして、セキュリティ検査システム900は、準静的な磁場を計測し、逆問題を解析的に解き、磁場の画像を再構成する。これにより、セキュリティ検査システム900は、鞄、衣服、衣服と生体との間、又は、生体内等に隠された刃物又は銃器等の凶器を非侵襲的にリアルタイムに映像化する。
【0166】
さらに、セキュリティ検査システム900は、気相化学剤分析装置910及びパイプ920を備え、ガソリン又は毒ガス等をリアルタイムに分析する。例えば、壁面に微細な穴が1次元又は2次元状に形成され、周辺の空気を多チャンネルに吸引する。吸引された空気は、パイプ920を介して、気相化学剤分析装置910に送られる。
【0167】
例えば、気相化学剤分析装置910は、ガスクロマトグラフィ、質量分析装置、イオン移動度分析装置又はこれらのうちの2つ以上の組み合わせで構成され、ガス分類検出器とも表現され得る。気相化学剤分析装置910は、気相化学剤分析装置910に送られた空気を同定(識別)し、リスクを分析する。
【0168】
気相化学剤分析装置910は、上記の刃物又は銃器等の凶器を所持する人と同様に、毒ガス等を所持する人の情報を通信ネットワークにおいて共有する。気相化学剤分析装置910は、このような危険人物の情報を警察等の危機管理対策者に通報してもよいし、周辺の市民に対する避難ルートの指示に、このような危険人物の情報を反映させてもよい。
【0169】
なお、
図16は、概念図であり、気相化学剤分析装置910にパイプ920を介して繋がる穴の数及びサイズは、
図16の例とは異なっていてもよい。より小さい多数の穴がより高密に形成されていてもよい。
【0170】
また、気相化学剤分析装置910及びパイプ920は、
図1に示されたセキュリティゲート111に含まれていてもよい。また、気相化学剤分析装置910及びパイプ920は、セキュリティゲート111の各サイドに含まれていてもよいし、一方のサイドのみに含まれていてもよいし、床に含まれていてもよいし、ポールに含まれていてもよい。
【0171】
また、セキュリティ検査システム900は、サーモグラフィ装置を備えていてもよい。また、セキュリティ検査システム900は、サーモグラフィ装置から取得される感知結果に基づいて、コロナウィルス等のウィルスの保持者である可能性を有する人に対してリアルタイムで画像診断を行うための機器を備えていてもよい。具体的には、セキュリティゲート111を通過する人に対して画像診断が行われる。
【0172】
また、磁気応答分布可視化装置100が、このような画像診断を行うための機器の役割を有していてもよい。また、このような画像診断を行うための機器の役割は、サーモグラフィ装置に含まれていてもよい。また、磁気応答分布可視化装置100が、サーモグラフィ装置を備えていてもよい。また、カメラ114等に、サーモグラフィ装置が含まれていてもよい。
【0173】
また、例えば、情報処理回路124は、各時点において磁気センサ113から取得される感知結果と同様に、各時点においてサーモグラフィ装置から取得される感知結果に移動物体の移動速度を反映させて、画像診断のための画像を生成し出力してもよい。
【0174】
図17は、
図1に示された磁気応答分布可視化装置100の第4変形例を示す概念図である。
図17の例では、磁気応答分布可視化装置100が空港等における荷物検査に用いられる。
図1の例では、移動物体は、人、及び、人が保持する荷物等であったが、
図17の例では、移動物体は荷物である。
【0175】
例えば、荷物は、フレーム117の内部をベルトコンベア118に乗って通過する。磁気応答分布可視化装置100は、この荷物の磁気応答分布を示す画像を生成する。磁気応答分布を示す画像を生成するための原理は、
図1の例と同じである。
【0176】
この場合も、レーザー装置116によって取得される移動速度が用いられてもよい。レーザー装置116の代わりに、
図1に示されたカメラ114又は赤外線センサ115等によって移動速度が取得されてもよい。あるいは、ベルトコンベア118の仕様によって定められる移動速度が用いられてもよい。ベルトコンベア118の仕様によって定められる移動速度が用いられる場合、磁気応答分布可視化装置100は、レーザー装置116等を備えなくてもよい。
【0177】
特に、ベルトコンベア118が用いられず人が荷物を通過させる場合、又は、ベルトコンベア118の動作速度が不定である場合等において、レーザー装置116等は、有効である。
【0178】
複数の誘起回路112及び複数の磁気センサ113は、
図11のように1次元で配置されてもよいし、
図12のように2次元で配置されてもよい。複数の誘起回路112及び複数の磁気センサ113が1次元で配置される場合、移動する荷物を複数の誘起回路112及び複数の磁気センサ113が相対的に走査することで2次元の感知結果が得られる。そして、2次元の感知結果を境界条件として用いて、荷物の近傍位置における磁場の強度及び位相が算出され、荷物の磁気応答分布を示す画像が生成される。
【0179】
また、複数の誘起回路112及び複数の磁気センサ113は、
図8のように、一方のサイドのみに配置されてもよい。このような構成でも、荷物の磁気応答分布を示す画像の生成が可能である。また、複数の磁気センサ113は、
図10のように、各サイドにおいて、1列に配置されてもよい。
【0180】
図18は、参考例において得られる画像、及び、本実施の形態において得られる画像を示す概念図である。
【0181】
例えば、空港等における荷物検査にX線が用いられる場合がある。X線によって得られる画像には、全ての金属が映し出される。具体的には、人が通常保持する携帯電話、携帯端末、スマートフォン又はタブレット端末等の電気製品が映し出される(
図18の参考例)。そのため、凶器を検知することは容易では無い。また、コントラスト比が低い場合、AI(人工知能)も有効でない。
【0182】
本実施の形態の画像には、電気製品が映し出されず、凶器が映し出される(
図18の実施の形態)。したがって、空港等におけるミスの防止に有効である。
【0183】
上記の通り、本実施の形態の各例における磁気応答分布可視化装置100は、移動物体の移動速度、磁気の感知結果、及び、場の基礎方程式に基づいて、移動物体の近傍における磁場の強度及び位相を適切に算出することができる。そして、磁気応答分布可視化装置100は、磁場の強度及び位相の算出結果に基づいて、磁気応答分布を示す画像をセキュリティ検査に用いられる画像として高精度に生成することができる。
【0184】
なお、セキュリティゲート111の左サイド及び右サイドのうち、一方のサイドに複数の誘起回路112が含まれ、他方のサイドに複数の磁気センサ113が含まれていてもよい。そして、左サイドの動作と右サイドの動作とが切り替えられることなく、常に、一方のサイドで磁場成分が誘起され、他方のサイドで磁気が感知されてもよい。このような動作は、
図17に示された荷物検査の例に適用されてもよい。また、反射型の動作が左サイドと右サイドとで切り替えて行われてもよい。
【0185】
また、上記に示されたセキュリティゲート111は、壁に含まれていてもよい。すなわち、通路の両サイドに複数の誘起回路112及び複数の磁気センサ113が含まれていてもよいし、通路の一方のサイドのみに複数の誘起回路112及び複数の磁気センサ113が含まれていてもよい。
【0186】
また、上記の説明において、磁場が用いられているが、本開示の概念は、場の基礎方程式であるラプラス方程式を満たすあらゆる場に適用可能である。特に、本開示の概念は、静的又は準静的な場に適用可能である。ここで、準静的な場は、実質的に静的な場であって、波動の性質を有さないとみなされ得る100kHz以下の電磁場等であってもよい。具体的には、磁場の代わりに、電場が用いられてもよい。また、本開示の概念が適用される範囲は、温度場及び圧力場等に拡張されてもよい。
【0187】
したがって、上記の磁気応答分布可視化装置(100)は、外場応答分布可視化装置(100)と表現されてもよい。例えば、外場応答分布可視化装置(100)は、外場に対する応答の分布である外場応答分布を示す画像を生成する。また、上記の磁気センサ(113)は、場の強度及び位相を感知するセンサ(113)であってもよい。そして、磁気の強さの代わりに、場の強度及び位相が用いられ得る。
【0188】
つまり、上記の説明における磁場を単に「場」と置き換えることが可能であり、磁気応答分布を外場応答分布に置き換えることが可能である。
【0189】
図19は、本実施の形態における磁気応答分布可視化装置(100)の動作を示すフローチャートである。
【0190】
例えば、誘起回路(112)は、移動物体の外部から、磁場の基礎方程式を満たす磁場の成分である磁場成分を誘起する(S101)。そして、センサ(113)は、移動物体によって変化した磁場成分を含む磁場の強度及び位相を移動物体の外部において複数の時点で感知する(S102)。
【0191】
情報処理回路(124)は、磁場の強度及び位相の感知結果、移動物体の移動速度、及び、磁場の基礎方程式に基づいて、センサ(113)よりも移動物体に近い近傍位置における磁場の強度及び位相を算出する。そして、情報処理回路(124)は、磁場の強度及び位相の算出結果に基づいて、誘起回路(112)によって誘起された磁場成分に対する移動物体の応答の分布を示す画像でありセキュリティ検査に用いられる画像である磁気応答分布画像を生成する(S103)。
【0192】
これにより、磁気応答分布可視化装置(100)は、移動速度に基づいて複数の時点において相対的に定められるセンサ(113)の位置、磁場の強度及び位相の感知結果、及び、磁場の基礎方程式に基づいて、移動物体の近傍における磁場の強度及び位相を適切に算出することができる。そして、磁気応答分布可視化装置(100)は、磁場の強度及び位相の算出結果に基づいて、磁気応答分布画像を高精度に生成することができる。
【0193】
すなわち、磁気応答分布可視化装置(100)は、外場に対する移動物体の応答の分布を示す画像をセキュリティ検査に用いられる画像として高精度に生成することができる。
【0194】
例えば、情報処理回路(124)は、複数の時点のそれぞれにおける移動物体に対して相対的なセンサ(113)の位置である感知位置を移動速度に基づいて特定することにより、複数の時点におけるセンサ(113)の複数の感知位置を移動物体に対して相対的に特定してもよい。そして、情報処理回路(124)は、複数の時点における感知結果の時間的な変化を複数の感知位置における感知結果の空間的な変化として用いて、近傍位置における磁場の強度及び位相を算出してもよい。
【0195】
これにより、磁気応答分布可視化装置(100)は、感知結果の時間的な変化を空間的な変化として用いることができる。したがって、磁気応答分布可視化装置(100)は、空間的な分布を適切に算出することができ、移動物体の近傍位置における磁場の強度及び位相を適切に算出することができる。
【0196】
また、例えば、情報処理回路(124)は、磁気応答分布画像に基づいて、移動物体に検知対象物が含まれるか否かを判定してもよい。そして、情報処理回路(124)は、移動物体に検知対象物が含まれると判定された場合、検知対象物又は移動物体の位置を示す情報を外部端末(200)へ出力してもよい。これにより、磁気応答分布可視化装置(100)は、特定の検知対象物の位置、又は、特定の検知対象物を含む移動物体の位置を通知することができる。
【0197】
また、例えば、磁気応答分布可視化装置(100)は、さらに、移動速度を計測する計測器(114、115、116)を備えていてもよい。これにより、磁気応答分布可視化装置(100)は、移動物体の移動速度を適切に取得することができる。
【0198】
また、例えば、誘起回路(112)によって誘起される磁場成分は、周期的に変動する磁場成分であってもよい。情報処理回路(124)は、感知結果から、周期的に変動する磁場成分の周波数と同じ周波数の磁場成分を検波してもよい。そして、情報処理回路(124)は、検波された磁場成分、移動速度、及び、磁場の基礎方程式に基づいて、近傍位置における磁場の強度及び位相を算出してもよい。
【0199】
これにより、磁気応答分布可視化装置(100)は、誘起回路(112)によって誘起された磁場成分に対する応答を適切に取得することができる。つまり、磁気応答分布可視化装置(100)は、ノイズを抑制することができる。したがって、磁気応答分布可視化装置(100)は、磁気応答分布画像を高精度に生成することができる。
【0200】
また、例えば、誘起回路(112)によって誘起される前記磁場成分として、第1磁場成分と、第2磁場成分とのそれぞれが誘起されてもよい。ここで、第1磁場成分は、第1周波数を有し、移動物体における遮蔽物を透過する。第2磁場成分は、第1周波数よりも高い第2周波数を有し、移動物体における遮蔽物によって遮蔽される。
【0201】
情報処理回路(124)は、誘起回路(112)によって誘起される第1磁場成分に対する移動物体の応答の分布を示す第1画像と、誘起回路(112)によって誘起される第2磁場成分に対する移動物体の応答の分布を示す第2画像とを生成してもよい。そして、情報処理回路(124)は、第1画像と第2画像とを合成することにより、磁気応答分布画像を生成してもよい。
【0202】
これにより、磁気応答分布可視化装置(100)は、2つの異なる周波数の磁場成分に対して得られる2つの画像の合成画像を磁気応答分布画像として生成することができる。この合成画像は、遮蔽物の奥側と、遮蔽物自体との両方を示し得る。つまり、この合成画像は、遮蔽物によって隠されている物の位置を適切に示し得る。したがって、磁気応答分布可視化装置(100)は、セキュリティ検査に有効な磁気応答分布画像を生成することができる。
【0203】
また、例えば、センサ(113)は、直線上に配置された複数のセンサ(113)で構成されていてもよい。これにより、磁気応答分布可視化装置(100)は、1次元のセンサアレイを用いて、磁場の強度及び位相を感知することができる。そして、これにより、センサ(113)の設置スペースの削減が可能である。
【0204】
また、例えば、センサ(113)は、第1直線上に配置された複数のセンサ(113)、及び、第1直線と平行な直線であり第1直線よりも移動物体から遠い直線である第2直線上に配置された複数のセンサ(113)で構成されていてもよい。これにより、磁気応答分布可視化装置(100)は、2つの1次元のセンサアレイを用いて、磁場の強度及び位相を感知することができ、移動物体から距離の異なる感知位置で磁場の強度及び位相を感知することができる。
【0205】
また、例えば、誘起回路(112)は、直線上に配置された複数の誘起回路(112)で構成されていてもよい。これにより、磁気応答分布可視化装置(100)は、1次元の誘起回路アレイを用いて、磁場成分を誘起することができる。そして、これにより、誘起回路(112)の設置スペースの削減が可能である。
【0206】
また、例えば、センサ(113)は、平面上に配置された複数のセンサ(113)で構成されていてもよい。これにより、磁気応答分布可視化装置(100)は、2次元のセンサアレイを用いて、磁場の強度及び位相を感知することができる。そして、これにより、磁気応答分布可視化装置(100)は、1時点で2次元の感知結果を取得することができる。したがって、磁気応答分布可視化装置(100)は、複数の時点で取得される2次元の感知結果を組み合わせてノイズを除去することができる。
【0207】
また、例えば、センサ(113)は、第1平面上に配置された複数のセンサ(113)、及び、第1平面と平行な平面であり第1平面よりも移動物体から遠い平面である第2平面上に配置された複数のセンサ(113)で構成されていてもよい。これにより、磁気応答分布可視化装置(100)は、2つの2次元のセンサアレイを用いて、磁場の強度及び位相を感知することができ、移動物体から距離の異なる感知位置で磁場の強度及び位相を感知することができる。
【0208】
また、例えば、誘起回路(112)は、平面上に配置された複数の誘起回路(112)で構成されていてもよい。これにより、磁気応答分布可視化装置(100)は、2次元の誘起回路アレイを用いて、磁場成分を一様に誘起することができる。
【0209】
また、例えば、誘起回路(112)とセンサ(113)とは、移動物体が移動する経路を挟んで配置されていてもよい。これにより、磁気応答分布可視化装置(100)は、移動物体に対して、誘起回路(112)とは反対側のセンサ(113)で磁場の強度及び位相を感知することができる。したがって、磁気応答分布可視化装置(100)は、センサ(113)で磁場の強度及び位相を感知する際、誘起回路(112)が誘起する直接の磁場成分であって移動物体によらない磁場成分の影響を抑制することができる。
【0210】
また、例えば、誘起回路(112)とセンサ(113)とは、移動物体が移動する経路を挟まず経路に対して同じ側に配置されていてもよい。これにより、磁気応答分布可視化装置(100)は、移動物体に対して、誘起回路(112)と同じ側のセンサ(113)で磁場の強度及び位相を感知することができる。したがって、誘起回路(112)及びセンサ(113)の配置スペースの削減が可能である。
【0211】
また、例えば、誘起回路(112)は、移動物体が移動する経路を挟む第1サイド及び第2サイドに配置される複数の誘起回路(112)で構成されていてもよい。また、センサ(113)は、第1サイド及び第2サイドに配置される複数のセンサ(113)で構成されていてもよい。
【0212】
情報処理回路(124)は、第1動作と、第2動作とを切り替えてもよい。ここで、第1動作は、第1サイドに配置される1つ以上の誘起回路(112)が磁場成分を誘起し、第2サイドに配置される1つ以上のセンサ(113)が磁場の強度及び位相を感知する動作である。第2動作は、第2サイドに配置される1つ以上の誘起回路(112)が磁場成分を誘起し、第1サイドに配置される1つ以上のセンサ(113)が磁場の強度及び位相を感知する動作である。
【0213】
これにより、磁気応答分布可視化装置(100)は、両サイドにおいて時分割で磁場の強度及び位相を感知することができ、多くの情報を得ることができる。
【0214】
また、例えば、情報処理回路(124)は、第1動作に基づいて生成される第1磁気応答分布画像と、第2動作に基づいて生成される第2磁気応答分布画像との中から一方を磁気応答分布画像として選択してもよい。これにより、磁気応答分布可視化装置(100)は、両サイドに対応する2つの磁気応答分布画像のうち一方を適応的に採用することができる。
【0215】
また、例えば、セキュリティ検査システム(900)は、磁気応答分布可視化装置(100)と、移動物体に対応する人に対して画像診断を行うためのサーモグラフィ装置とを備えていてもよい。これにより、セキュリティ検査システム(100)は、外場に対する移動物体の応答の分布を示す画像をセキュリティ検査に用いられる画像として高精度に生成することができ、かつ、ウィルスの保持者である可能性を有する人に対して画像診断を行うことができる。
【0216】
また、例えば、磁場の位相は、磁場の周期的な変化に関する位相である。上記の説明において、磁場の位相が考慮されているが、磁場の位相は考慮されなくてもよい。つまり、磁場の位相が省略されてもよい。また、再構成画像の輝度は、磁場の強度に対応していてもよい。また、磁場の強度及び位相は、磁場の値、又は、磁場の情報等に置き換えられてもよい。
【0217】
以上、磁気応答分布可視化装置の態様を実施の形態に基づいて説明したが、磁気応答分布可視化装置の態様は、実施の形態に限定されない。実施の形態に対して当業者が思いつく変形が施されてもよいし、実施の形態における複数の構成要素が任意に組み合わされてもよい。
【0218】
例えば、実施の形態において特定の構成要素によって実行される処理を特定の構成要素の代わりに別の構成要素が実行してもよい。また、複数の処理の順序が変更されてもよいし、複数の処理が並行して実行されてもよい。また、複数の変形例が組み合わされて適用されてもよい。また、説明に用いられた第1及び第2等の序数は、適宜、付け替えられてもよい。また、構成要素などに対して、序数が新たに与えられてもよいし、取り除かれてもよい。
【0219】
また、磁気応答分布可視化装置の各構成要素が行うステップを含む磁気応答分布可視化方法が任意の装置又はシステムによって実行されてもよい。例えば、磁気応答分布可視化方法の一部又は全部が、プロセッサ、メモリ及び入出力回路等を備えるコンピュータによって実行されてもよい。その際、コンピュータに磁気応答分布可視化方法を実行させるためのプログラムがコンピュータによって実行されることにより、磁気応答分布可視化方法が実行されてもよい。
【0220】
また、非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体に、上記のプログラムが記録されていてもよい。
【0221】
また、磁気応答分布可視化装置の各構成要素は、専用のハードウェアで構成されてもよいし、上記のプログラム等を実行する汎用のハードウェアで構成されてもよいし、これらの組み合わせで構成されてもよい。また、汎用のハードウェアは、プログラムが記録されたメモリ、及び、メモリからプログラムを読み出して実行する汎用のプロセッサ等で構成されてもよい。ここで、メモリは、半導体メモリ又はハードディスク等でもよいし、汎用のプロセッサは、CPU等でもよい。
【0222】
また、専用のハードウェアが、メモリ及び専用のプロセッサ等で構成されてもよい。例えば、専用のプロセッサが、計測データを記録するためのメモリを参照して、上記の磁気応答分布可視化方法を実行してもよい。
【0223】
また、磁気応答分布可視化装置の各構成要素は、電気回路であってもよい。これらの電気回路は、全体として1つの電気回路を構成してもよいし、それぞれ別々の電気回路であってもよい。また、これらの電気回路は、専用のハードウェアに対応していてもよいし、上記のプログラム等を実行する汎用のハードウェアに対応していてもよい。
【0224】
また、磁気応答分布可視化装置は、画像生成装置とも表現され得る。また、磁気応答分布可視化装置は、ボディスキャナ又は荷物検査装置のような、セキュリティ検査装置であってもよいし、セキュリティ検査装置に含まれていてもよい。また、磁気応答分布可視化装置は、分散して配置される複数の装置で構成されていてもよい。磁気応答分布可視化装置は、磁気応答分布可視化システムとも表現され得る。
【産業上の利用可能性】
【0225】
本開示の一態様は、磁気応答分布を示す画像を生成する磁気応答分布可視化装置に有用であり、ボディスキャナ、荷物検査装置、及び、セキュリティ検査装置等に適用可能である。
【符号の説明】
【0226】
100 磁気応答分布可視化装置(外場応答分布可視化装置)
111 セキュリティゲート
112 誘起回路
113 磁気センサ(センサ)
114 カメラ
115 赤外線センサ
116 レーザー装置
117 フレーム
118 ベルトコンベア
121 プリアンプ
122 スイッチ
123 AD変換器
124 情報処理回路
125 DA変換器
126 アンプ
200 外部端末
900 セキュリティ検査システム
910 気相化学剤分析装置
920 パイプ