(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】自動箱詰装置及び自動箱詰システム
(51)【国際特許分類】
B65B 5/08 20060101AFI20241127BHJP
B65G 11/20 20060101ALI20241127BHJP
B65B 5/10 20060101ALI20241127BHJP
B65B 35/32 20060101ALI20241127BHJP
B65B 25/04 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
B65B5/08
B65G11/20 Z
B65B5/10
B65B35/32
B65B25/04 A
(21)【出願番号】P 2023108494
(22)【出願日】2023-06-30
【審査請求日】2023-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】500407282
【氏名又は名称】フジプラント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100218280
【氏名又は名称】安保 亜衣子
(74)【代理人】
【識別番号】100108914
【氏名又は名称】鈴木 壯兵衞
(74)【代理人】
【識別番号】100173864
【氏名又は名称】齊藤 健治
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 和昭
(72)【発明者】
【氏名】横山 明
(72)【発明者】
【氏名】加藤 憲一
【審査官】種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-168753(JP,U)
【文献】韓国登録特許第10-1239374(KR,B1)
【文献】特開2003-261111(JP,A)
【文献】特開2002-019706(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 5/08
B65G 11/20
B65B 5/10
B65B 35/32
B65B 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の球状の被処理物を一定方向に自動搬送する搬送装置に隣接して配置され、前記搬送装置から、前記複数の球状の被処理物を、前記一定方向に定義される短辺、該短辺に直交する長辺、並びに前記短辺及び前記長辺に直交する高さで決まる容積を有し、上面が開放状態のコンテナに稠密充填する自動箱詰装置であって、
前記コンテナを載置する平板状のコンテナステージと、
前記一定方向に沿って互いに平行に対峙し、下部に前記コンテナステージを固定し、前記搬送装置から前記複数の球状の被処理物を順次投入する投入窓を前記コンテナステージの上方に設定した一対の側壁部と、
底部に開閉扉を有し、前記コンテナの内部に前記底部を挿入可能なように、前記一対の側壁部の間で上下移動する単一のリフトボックスと、
前記高さを分割した寸法を単位移動長とし、前記リフトボックスを前記単位移動長毎に逐次下降させる駆動が可能なアクチュエータと、
前記投入窓に設けられ、前記複数の球状の被処理物のそれぞれに転がり運動のエネルギを順次付与する傾斜を有する転がり運動設定部と、
前記転がり運動設定部の入り口側の中央に設けられ、前記複数の球状の被処理物に含まれる特定の複数の被処理物を、前記転がり運動設定部の表面に定義される異なる経路をそれぞれ経由するように振り分けて、前記特定の複数の球状の被処理物を前記リフトボックス内の異なる場所に順次投入する振分機構と
を備え、前記振分機構は、2つの三角形の面を有する三角錐で近似可能な多面体であり、前記特定の複数の被処理物が、法線ベクトルが互いに異なる前記2つの三角形の面にそれぞれ非弾性衝突することにより、前記特定の複数の球状の被処理物のそれぞれの重心の並進運動の方向が互いに異なるように設定されることを特徴とする自動箱詰装置。
【請求項2】
前記リフトボックスの内壁に、該内壁に衝突する前記被処理物の運動量ベクトルの方向を非弾性衝突により変える反発弾性率を有する衝撃吸収膜が備えられていることを特徴とする請求項1に記載の自動箱詰装置。
【請求項3】
前記
逐次下降の前、前記
逐次下降と前記
逐次下降の間において、前記リフトボックスの内部に稠密充填される前記複数の球状の被処理物の満杯状態を検知する光学センサと、
該光学センサの出力信号を入力して、前記アクチュエータの動作を制御する制御回路と
を更に備えることを特徴とする請求項1又2に記載の自動箱詰装置。
【請求項4】
短辺、該短辺に直交する長辺、並びに前記短辺及び前記長辺に直交する高さで決まる容積を有し、上面が開放状態のコンテナに複数の球状の被処理物を稠密充填する自動箱詰システムであって、
前記短辺と同一方向となる一定方向に前記複数の球状の被処理物を自動搬送する搬送ベルトを有する搬送装置と、
前記コンテナを載置する平板状のコンテナステージと、
前記短辺の方向に沿って互いに平行に対峙し、下部に前記コンテナステージを固定し、前記搬送装置から前記複数の球状の被処理物を順次投入する投入窓を前記コンテナステージの上方に設定した一対の側壁部と、
底部に開閉扉を有し、前記コンテナの内部に前記底部を挿入可能なように、前記一対の側壁部の間で上下移動する単一のリフトボックスと、
前記高さを分割した寸法を単位移動長とし、前記リフトボックスを前記単位移動長毎に逐次下降させる駆動が可能なアクチュエータと、
前記投入窓に設けられ、前記複数の球状の被処理物のそれぞれに転がり運動のエネルギを順次付与する傾斜を有する転がり運動設定部と、
前記転がり運動設定部の入り口側の中央に設けられ、前記複数の球状の被処理物に含まれる特定の複数の被処理物を、前記転がり運動設定部の表面に定義される異なる経路をそれぞれ経由するように振り分けて、前記特定の複数の球状の被処理物を前記リフトボックス内の異なる場所に順次投入する振分機構と
を備え、前記振分機構は、2つの三角形の面を有する三角錐で近似可能な多面体であり、前記特定の複数の被処理物が、法線ベクトルが互いに異なる前記2つの三角形の面にそれぞれ非弾性衝突することにより、前記特定の複数の球状の被処理物のそれぞれの重心の並進運動の方向が互いに異なるように設定されることを特徴とする自動箱詰システム。
【請求項5】
前記搬送ベルトの途中に、前記被処理物の個数若しくは重量を計測するゾーンが設けられていることを特徴とする請求項4に記載の自動箱詰システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動搬送されてきた果物等の球状の被処理物を、コンテナの内部に自動的に稠密充填する自動箱詰装置、及びこの自動箱詰装置を用いた自動箱詰システムに関する。
【背景技術】
【0002】
リンゴ等の球状の被処理物は、ベルトコンベア等の搬送装置の搬送ベルトの上において、大きさの大小による選別及び品質の良否による選別を行った後、一般に人間の手を介してコンテナの内部に箱詰されている。従来、リンゴ等の被処理物の自動箱詰装置としては、真空吸引機能を有するロボット・ハンドで被処理物を吸着捕捉して、マトリクス状に配列されたポケットを有するトレー(ハニカム材料)上に搬送し、トレーに順次配列する方法が提案されている(特許文献1参照。)。しかしながら、球状の被処理物をロボット・ハンドで捕捉するためには、事前に多数の被処理物を予備配列皿等に予備配列する手間と時間が必要である。更に真空吸引機能等を有するロボット・ハンドは複雑であり、自動箱詰装置が高価になり、故障も発生しやすくなる不都合もある。又、果梗部が窪んだリンゴや梨のようなものや、ヘタのある柿やトマトのようなものは、吸着ミスが生じる恐れがあった。
【0003】
ポケットを有するトレーではなく、木箱等の大きなコンテナの内部に機械的手段によって、搬送装置から連続的に球状の被処理物を投入できれば、より短時間で効率良く、被処理物の自動的な稠密充填が可能になる。しかしながら、りんごの木箱(大箱)は、例えば長辺(幅)WWB=62cm、短辺(奥行き)DWB=31cm、高さHWB=31cm等の寸法である。自動箱詰装置によってダンボール箱や木箱等のコンテナに被処理物が自動的に投入される時、HWB=31cmの高さから木箱の底に勢いよく衝突する為、被処理物が傷みやすい。更にコンテナの最下層に充填された被処理物の上に、2層目以上の充填が予定される被処理物が投入される場合は、最下層の被処理物と2層目以上の被処理物が衝突により共に傷む可能性がある。
【0004】
鉱物学分野では「硬さ(hardness)」と「堅さ(firmness)」は明確に区別されている。「硬さ」は、引っかきに対する抵抗(硬度)の指標であり、「モース硬さ」、「ブリネル硬さ」や「ビッカース硬さ」等に代表されるように、圧子や別の鉱物で、押し込んだり引っかいたりした場合のくぼみや欠き傷の大きさによって規定される。「堅さ」は、堅牢性(反意として脆性)の意味であるが,硬度のように計測法の規格化は特に図られていない。農産物に関しては、「硬さ」と「堅さ」を明確に区別して用いることは、殆ど無いようである。本発明では、物理的衝撃によって、欠き傷等の発生しやすい果物や野菜の内、球状の被処理物を対象とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した問題を鑑み、本発明は物理的衝撃に弱い球状の被処理物をコンテナの内部に箱詰する際、被処理物を傷めることなく効率良く稠密充填することが可能な自動箱詰装置、及びこの自動箱詰装置を用いた自動箱詰システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様は、複数の球状の被処理物を一定方向に自動搬送する搬送装置に隣接して配置された自動箱詰装置に関する。この自動箱詰装置は、コンテナの内部に被処理物を稠密充填する。ここでコンテナは、搬送装置の被処理物の搬送方向と同じ方向に定義される短辺と、この短辺に直交する長辺と、並びに短辺及び長辺に直交する高さで決まる容積を有し、上面が開放状態である。即ち、本発明の第1の態様に係る自動箱詰装置は、(a)コンテナを載置する平板状のコンテナステージと、(b) 被処理物を搬送する一定方向と同じ方向に沿って互いに平行に対峙し、下部にコンテナステージを固定し、搬送装置から複数の被処理物を順次投入する投入窓をコンテナステージの上方に設定した一対の側壁部と、(c)底部に開閉扉を有し、コンテナの内部に底部を挿入可能なように、一対の側壁部の間で上下移動するリフトボックスと、(d) コンテナの高さを分割した寸法を単位移動長とし、リフトボックスを単位移動長毎に逐次下降させる駆動が可能なアクチュエータと、(e) 投入窓に設けられ、複数の被処理物のそれぞれの転がり運動のエネルギと方向を順次設定する転がり運動設定部を備えることを要旨とする。
【0008】
本発明の第2の態様は、短辺、この短辺に直交する長辺、並びに短辺及び長辺に直交する高さで決まる容積を有し、上面が開放状態のコンテナに複数の球状の被処理物を稠密充填する自動箱詰システムに関する。本発明の第2の態様に係る自動箱詰システムは、(a)短辺と同一方向となる一定方向に複数の球状の被処理物を自動搬送する搬送ベルトを有する搬送装置と、(b)コンテナを載置する平板状のコンテナステージと、(c) コンテナの短辺の方向に沿って互いに平行に対峙し、下部にコンテナステージを固定し、搬送装置から複数の球状の被処理物を順次投入する投入窓をコンテナステージの上方に設定した一対の側壁部と、(d)底部に開閉扉を有し、コンテナの内部に底部を挿入可能なように、一対の側壁部の間で上下移動するリフトボックスと、(e)高さを分割した寸法を単位移動長とし、リフトボックスを単位移動長毎に逐次下降させる駆動が可能なアクチュエータと、(f)投入窓に設けられ、複数の球状の被処理物のそれぞれに転がり運動のエネルギと方向を順次設定する転がり運動設定部を備えることを要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、球状の被処理物を傷めることなく効率良く、被処理物をコンテナの内部に稠密充填することが可能な自動箱詰装置、及びこの自動箱詰装置を用いた自動箱詰システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の代表実施形態に係る自動箱詰装置及び自動箱詰システムの技術的思想の概略を示す模式的な左側面図である。
【
図2A】
図1に示した代表実施形態に係る自動箱詰装置の正面側から見た投入窓に設けられた転がり運動設定部、及び投入窓の奥に見える衝撃吸収膜等を俯瞰する鳥瞰図である。
【
図2B】
図2Aに示した転がり運動設定部及び転がり運動設定部の下方に設けられた自在壁の駆動機構等を説明する模式的な断面図である。
【
図3】代表実施形態に係る自動箱詰装置の正面側から見た、リフトボックスの内張としての衝撃吸収膜等を俯瞰する鳥瞰図である。
【
図4A】リフトボックス内に被処理物が存在しない状態での、代表実施形態に係る自動箱詰装置に用いる第1及び第2光学センサの動作を説明する模式的な鳥瞰図である。
【
図4B】リフトボックス内に被処理物が少量投入された状態での第1及び第2光学センサの動作を説明する模式的な鳥瞰図である。
【
図4C】リフトボックスの充填深さを満杯に近くまで被処理物が投入された状態における第1及び第2光学センサの動作を説明する模式的な鳥瞰図である。
【
図5】代表実施形態に係る自動箱詰装置に用いる第1及び第2光学センサの動作領域特性グラフの一例を示す図である。
【
図6A】代表実施形態に係る自動箱詰方法の一連の処理動作の代表的な態様の一例を説明する模式的な断面図である。
【
図6B】
図6Aに示した処理に続く自動箱詰方法の処理動作を説明する模式的な断面図である。
【
図6C】
図6Bに示した処理に続く自動箱詰方法の処理動作を説明する模式的な断面図である。
【
図6D】
図6Cに示した処理に続く自動箱詰方法の処理動作を説明する模式的な断面図である。
【
図6E】
図6Dに示した処理に続く自動箱詰方法の処理動作を説明する模式的な断面図である。
【
図6F】
図6Eに示した処理に続く自動箱詰方法の処理動作を説明する模式的な断面図である。
【
図6G】
図6Fに示した処理に続く自動箱詰方法の処理動作を説明する模式的な断面図である。
【
図6H】
図6Gに示した処理に続く自動箱詰方法の処理動作を説明する模式的な断面図である。
【
図7】本発明に至る前に検討した参考技術において、被処理物が凝集する不都合が発見されたことを説明する模式的な鳥瞰図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、図面を参照して、本発明の代表的な実施形態(以下において「代表実施形態」という。)を説明することにより、本発明を例示的に説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各部材の大きさの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。例えば、
図2Bに例示したような衝撃吸収膜12や自在壁13は、ハッチング表示の都合上、厚さを誇張して表現していることに留意されたい。従って、具体的な厚み、寸法、大きさ等は以下の説明から理解できる技術的思想の趣旨を参酌してより多様に判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0012】
また、以下の説明における「右」、「左」等の語を用いた方向の定義等は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。例えば、対象を正面と裏面を逆にすれば、右左は反転して読まれることは勿論である。又、以下に示す代表実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための方法及びその方法に用いる装置等を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等、方法の手順等を下記のものに特定するものではない。本発明の技術的思想は、代表実施形態で記載された内容に限定されず、特許請求の範囲に記載された請求項の発明特定事項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0013】
(自動箱詰装置及び自動箱詰システム)
本発明の代表実施形態に係る自動箱詰装置は、
図1に示すように、複数の球状の被処理物X
s1,X
s2,X
s3,……を一定方向に自動搬送する搬送装置23に隣接して配置された機械装置である。即ち、代表実施形態に係る「自動箱詰装置」とは、搬送装置23を含まない構成の概念である。これに対し、代表実施形態に係る自動箱詰システムは、
図1に示すように、自動箱詰装置と、この自動箱詰装置に被処理物X
s1,X
s2,X
s3,……を一定方向に自動搬送する搬送ベルト(コンベア・ベルト)を有する搬送装置23を備える。なお、本明細書においては上記の「一定方向」である搬送ベルトの搬送方向を、「x方向」と定義する。そして、搬送ベルトの搬送面上においてx方向に直交する方向を「y方向」、搬送面の法線方向、即ち重力の方向を「z方向」とするデカルト座標系(直交座標系)を本明細書では採用するものとする。代表実施形態に係る自動箱詰装置は、搬送装置23が搬送してきた球状の被処理物X
s1,X
s2,X
s3,……を、
図1の中央下部に隠れ線で示したコンテナ1の内部に稠密充填する。ここでコンテナ1は、搬送装置23が被処理物X
s1,X
s2,X
s3,……を自動搬送する方向と同じ方向(x方向)に測られる短辺の長さD
WB、この短辺に直交する長辺の長さW
WB、並びに短辺と長辺に共に直交する高さH
WBで決まる容積(V
WB=W
WB×D
WB×H
WB)を有し、上面が開放状態である。即ち、
図1に示すように、代表実施形態に係る自動箱詰装置は、コンテナ1を載置する平板状のコンテナステージ45と、このコンテナステージ45を下部に固定する一対の側壁部(10a,10b)を有している。
【0014】
コンテナ1の短辺の長さD
WB及び長辺の長さW
WBに対して、コンテナステージ45の短辺の長さD
CS及び長辺の長さW
CSは、D
CS>D
WB、W
CS>W
Wの関係になる。
図1において、搬送装置23側から代表実施形態に係る自動箱詰装置をx方向に沿って見た図を「正面図」と定義すると、
図1はy方向に沿って見た「左側面図」を示していることになるので、
図1には左側面に位置する第1側壁部10aが示されている。第1側壁部10aと、紙面の奥に位置する第2側壁部10bは、搬送装置23が被処理物X
s1,X
s2,X
s3,……を自動搬送する方向と同じ方向(x方向)に沿って互いに平行に対峙している。コンテナステージ45は一対のスライドレールに挟まれており、一対の側壁部(10a,10b)の間において左右方向に摺動可能なスライド機構を備えている。コンテナステージ45の長辺の長さW
CSに対し、左の第1側壁部10aの内壁面と、右の第2側壁部10bの内壁面は、W
SWS≒W
CSだけ離間している。
【0015】
図1に示すように、代表実施形態に係る自動箱詰装置は、一対の側壁部(10a,10b)の間で上下移動するリフトボックス11と、リフトボックス11を駆動するアクチュエータ42と、リフトボックス11内へ被処理物X
s1,X
s2,X
s3,……を順次投入する転がり運動設定部16を備えている。転がり運動設定部16は、被処理物X
s1,X
s2,X
s3,……のそれぞれに転がり運動のエネルギを順次付与し、且つ転がり運動の方向が不規則(ランダム)になるように順次設定する。リフトボックス11内に投入された被処理物X
s1,X
s2,X
s3,……の転がり運動の方向が非一様になるように設定されることにより、リフトボックス11内における被処理物X
s1,X
s2,X
s3,……の稠密な仮充填が可能になる。
図4Aに示すように、転がり運動設定部16は、x-z面に沿って平行に対峙している一対の側壁部(10a,10b)のそれぞれの内壁面の間の正面側に設定された投入窓に設けられている。なお、上述したように
図1の構造を搬送装置23側からx方向に沿って見た図を「正面図」と定義したことに倣い、本明細書では、搬送装置23から代表実施形態に係る自動箱詰装置が見える面を「正面」と呼ぶことにする。即ち、
図1に示したコンテナステージ45の上方において、搬送装置23から被処理物X
s1,X
s2,X
s3,……を、順次リフトボックス11内に投入する投入窓が、一対の側壁部(10a,10b)のそれぞれの内壁面の間に設定されている。投入窓は、搬送装置23の搬送面とほぼ同じ水平レベル(高さ)となる位置に設定されている。
【0016】
リフトボックス11は被処理物Xs1,Xs2,Xs3,……を仮充填するための金属製の箱である。仮充填された被処理物Xs1,Xs2,Xs3,……は、コンテナステージ45に載置されたコンテナ1の内部に一括転送され、コンテナ1の内部に稠密充填される。リフトボックス11の外形は、ほぼ直方体で推定できるが、直方体の上面が開放面である。更に、リフトボックス11の外形を推定させる直方体の4つの側面の内、投入窓側(正面側)に位置する1つの側面は、底部側の一部を残して開放面になっているので「完全な箱形」ではない。即ち、リフトボックス11は、底面と、この底面に直角に接続される3つの側面によって、主なる内部空間(存在空間)の容積が定義される外形の形状をなしている。
【0017】
3つの側面は、底面の互いに連続する3辺に接続するように、互いにコの字型に連続している。コンテナ1の短辺の長さD
WBに対して、リフトボックス11の短辺の長さD
LBは、D
LB<D
WBである。又、コンテナ1の長辺の長さW
WBに対して、リフトボックス11の長辺の長さ(幅)W
LBは、W
LB<W
Wであり、リフトボックス11は、後述する
図6Eに示すように、コンテナ1の内部に上方から挿入可能な大きさになっている。
図2Bに示すように、リフトボックス11の投入窓側の側面の下部には、底部側の一部に端部が固定された幅W
LBの可撓性の膜からなる自在壁13が設けられている。自在壁13の下側の先端は留め具14によって、リフトボックス11に固定されている。なお、
図2Bにおいて自在壁13の厚さは、誇張して表現されており、実際には厚さ0.35mm程度のビニールシート等が採用される。
【0018】
即ち、コンテナ1の底面よりも上方のエレベータ空間において、リフトボックス11はコンテナ1の底面の法線方向(z方向)に沿って上下移動するように、アクチュエータ42によって駆動される。リフトボックス11の投入窓側の側面の下部に設けられた自在壁13は、
図2Bに示す巻き付けローラ21と補助ローラ22を用いて、リフトボックス11の上下移動に伴って長さを変えるように、アクチュエータ42の動作と連動している。
図1の第1側壁部10aの右上には、巻き付けローラ21の回転を駆動するためのギヤモータ等の電動機41が設けられている。左に位置する第1側壁部10aの内壁面にはリフトボックス11を上下方向(z方向)に移動させる左側ガイド用レールが設けられ、右に位置する第2側壁部10bの内壁面にも、リフトボックス11を上下方向に移動させる右側ガイド用レールが、左側ガイド用レールに平行に設けられている。
【0019】
質量m[kg]の被処理物がリフトボックス11の底から高さh[m]のところにある転がり運動設定部16の下端から落下したときの被処理物の重心のリフトボックス11の底での、重力方向(z方向)の速度vzg[m/s]は、重力加速度をg[m/s2]として、
mgh=1/2mvzg
2 ……(1)
となる。なお後述するように、被処理物の重心は転がり運動設定部16によって、水平方向の速度成分vh0=vh0(vx0,vy0)のベクトルも、転がり運動設定部16の下端における初速度として付与される。vx0は転がり運動設定部16の下端におけるx方向の初速度であり、vy0は転がり運動設定部16の下端におけるy方向の初速度である。詳細には、被処理物の重心は転がり運動設定部16によって、z方向の初速度成分vz0も付与されるが、式(1)のz方向の速度vzgに比し小さいので、z方向に関し、以下の評価では近似的に初速度成分vz0を無視して議論をする。しかし、被処理物の重心の水平方向の初速度成分vh0のベクトルは無視できない。被処理物の重心が水平方向の初速度成分vh0のベクトルを有するので、リフトボックス11の内部において被処理物は放物線を描いて落下する。リフトボックス11の底での被処理物の重心の重力方向(z方向)の速度vzgは、
vzg =(2gh)1/2 ……(2)
で与えられる。
【0020】
即ち、重力のエネルギにより、被処理物の重心は、リフトボックス11の底で重力方向にmvzg[kg・m/s]という運動量を持つ。ここでは簡略化のために、被処理物はリフトボックス11の底において、z方向のエネルギ成分を完全に失うとする完全非弾性衝突を仮定して大まかな評価をする。z方向に関し完全非弾性衝突が成立するという前提においては、落下点(リフトボックス11の底)での重力方向(z方向)への衝撃力Fzg[N]を時間Δt[s]だけ受け、この運動量はゼロになる。時間Δtの間において、重力方向(z方向)への衝撃力Fzgが一定であると仮定(近似)すると、
FzgΔt=mvzg ……(3)
が成り立つので、
Fzg=mvzg/Δt=m(2gh)1/2/Δt ……(4)
が、被処理物の重心のリフトボックス11の底で受ける重力方向の衝撃力Fzgになる。式(4)は、リフトボックス11の底と、転がり運動設定部16の下端の間の距離(高さ)hが、重力のエネルギによる衝撃力Fzgの大きさの要因であることを示している。
【0021】
完全非弾性衝突の条件が成立しないで、被処理物がリフトボックス11の底において、弾性衝突により速度vzupで跳ね上がるとすれば、式(3)は運動量保存の法則から、
FzpΔt=mvzg-mvzup ……(5)
と、書き換えられ、式(5)で示される重力方向の衝撃力Fzpが発生することになる。実際の衝突では被処理物の形状が時間Δtの間において変化して接触面積が増え、相手のリフトボックス11の底も変形するので、複雑な現象である。電球を高所から落下したとき、電球が壊れないときは高く跳ね上がり、電球が壊れる(変形が大きい)ときは跳ね上がらない。ここでは式(5)の弾性衝突の場合については検討せず、式(4)の完全非弾性衝突での仮定に戻る。
【0022】
式(4)の評価で難しいのは、z方向に関し完全非弾性衝突であるとの仮定において、z方向のエネルギを失うまでの時間Δtの値の推定である。転がり運動設定部16の下端から落下した被処理物の重心は、リフトボックス11の底で、重力方向に速度vzg[m/s]を持っている。完全非弾性衝突での仮定では簡単化のために、被処理物が、リフトボックス11の底に衝突後におよそ重力方向にΔhz[m]だけ進むことによって衝撃を吸収し、速度vzgがゼロになったと考える。Δhz[m]は、リフトボックス11の内張りに用いる衝撃吸収膜12の厚さと衝撃吸収能力に依存する(衝撃吸収膜12については後述する。)。実際には金属製のリフトボックス11の底も僅かに変位するはずである。被処理物が、リフトボックス11の底で、重力方向におよそΔhz[m]だけ進むと仮定すると、衝撃吸収膜12のバネ定数等を無視すれば、衝突後の重力方向の速度vzgがゼロになるまでの時間は、Δhz/vzg[s]で近似できる。それ故に、次元解析から
Δt=Δhz/vzg ……(6)
と、近似的な大雑把な評価ができる。よって、z方向に関し完全非弾性衝突での仮定が成立する場合には、式(4)から、被処理物の重心のリフトボックス11の底で受ける重力方向の衝撃力Fzgは、
Fzg=mvzg/Δt=mvzg
2/Δhz=m(2gh)/Δhz ……(7)
となる。
【0023】
一方、一定の力が働き、加速度-α[m/s2]の等加速度運動によって重力方向の速度vzgがゼロになるとする完全非弾性衝突での仮定をした場合には、衝撃吸収膜12のバネ定数等を無視できるとすれば、vzg=αΔt、Δhz=(1/2)α(Δt)2から
Δt=2Δhz/vzg ……(8)
となる(実際にはバネの他、バネと並列に重力方向の速度vzgに比例する粘性抵抗を考慮した計算が必要である。)。完全非弾性衝突での仮定がz方向に成立する場合は、式(4)から、被処理物の重心のリフトボックス11の底で受ける重力方向の衝撃力Fzgは、
Fzg=mvzg/Δt=mvzg
2/2Δhz=m(gh)/Δhz ……(9)
となる。式(7)と式(9)ではファクター2だけ異なるが、完全非弾性衝突での仮定において、落下点(リフトボックス11の底)での重力方向の衝撃力Fzg[N]は、いずれも転がり運動設定部16の下端の高さとリフトボックス11の底からの距離h[m]に依存することがわかる。
【0024】
そこで、コンテナ1の高さH
WBを、複数mに分割した寸法を、「単位移動長ΔH(=H
WB /m)」と定義する(mは2以上の正の整数。)。そして、リフトボックス11に設定される充填深さの底と転がり運動設定部16の下端の高さとの差(長さ)hが、単位移動長ΔHになるように、リフトボックス11の底面の位置を調整して衝撃力F
zgを弱める。設定した充填深さが満杯になったら、新たな単位移動長ΔHに相当する充填深さとなるように、リフトボックス11の底面の位置を下降させる。代表実施形態に係る自動箱詰装置では、衝撃力F
zgが弱まるリフトボックス11の充填深さに対して仮充填する操作を、m回繰り返すことにより、最終的にコンテナ1の高さH
WBに相当する容量を仮充填する。式(7)又は式(9)から、コンテナ1の高さH
WBを複数mに分割した単位移動長ΔH(=H
WB /m)でリフトボックス11の充填深さを定義することで(ΔH<H
WB)、落下点における被処理物に対する重力方向(z方向)の衝撃力F
zgを、1/mに低減できることが分かる。なお、
図2Bに示す巻き付けローラ21と補助ローラ22を用いることにより、リフトボックス11の底部が単位移動長ΔHだけ下がると、自在壁13の長さは単位移動長ΔHだけ伸びる。
【0025】
アクチュエータ42は、リフトボックス11の底部を下方に単位移動長ΔH毎に逐次移動させながら、段階的にリフトボックス11の内部に被処理物Xs1,Xs2,Xs3,……を、m回仮充填して、mΔH=HWB を実現する。冒頭で述べたように、りんごの木箱(大箱)の高さは、HWB=31cm程度の寸法である。HWB=31cmの高さから、物理的衝撃に弱いりんごが木箱の底に勢いよく重力方向に衝突した場合は、りんごが傷みやすい。例えば、m=2とした場合は、ΔH=31/2=15.5cmの高さからりんごが木箱の底に落下するので、式(7)又は式(9)から分かるように、物理的衝撃に弱いりんごの傷みが軽減できる。
【0026】
りんごの直径は品種にもよるが6~12cm程度が、日本では一般的である。仮にりんごの直径を10cmと仮定すると、コンテナ1の最下層に平面充填されたりんごの上に、2層目のりんごが充填される場合は、15.5-10=5.5cmの高さから落下する。このため、最下層のりんごと、その上に落下した2層目のりんごが衝突により、共に傷む可能性が低減できる。なお、コンテナ1の高さHWBを、分割する数mは、被処理物Xs1,Xs2,Xs3,……の直径や、被処理物Xs1,Xs2,Xs3,……の傷み易さを考慮して決めればよい。リフトボックス11は、オープンループ構造の開閉リンク機構43によって駆動される開閉扉(旋回扉)を底部に有している。
【0027】
図1に示すように開閉リンク機構43は、観音開きが可能な2つの旋回扉(開閉扉)にそれぞれ接続された2つの作用リンクと1つの中間リンクが下部待遇(ジョイント)で結合された人型の作用機構と、この作用機構の中間リンクと駆動リンクが上部待遇で結合されたL字型の駆動機構を含む。そして、駆動機構の駆動リンクがアクチュエータ42に接続されることにより、開閉リンク機構43はアクチュエータ42によって駆動される。リフトボックス11の底部をコンテナ1の内部に挿入した状態で、底部の開閉扉を開状態にすることにより、リフトボックス11の内部に仮充填された被処理物X
s1,X
s2,X
s3,……は、後述する
図6Gに示すように、コンテナ1の内部へ一括転送される。
【0028】
転がり運動設定部16は、
図1に示すように、互いに平行に対峙している一対の側壁部(10a,10b)のそれぞれの内壁面の間の正面側に設定された投入窓に設けられている。
図2A及び
図3は正面側から見た投入窓を俯瞰する鳥瞰図であり、一対の側壁部(10a,10b)の正面側に転がり運動設定部16が設けられていることが分かる。
図1及び
図2Bに示すように、転がり運動設定部16は傾斜を有しているので、搬送装置23で搬送されてきた球状の被処理物X
s1,X
s2,X
s3,……のそれぞれには、回転軸が固定されない回転運動(転がり運動)のエネルギが順次付与されて、リフトボックス11内に落下する(投入される)。実際には、搬送装置23の搬送ベルトの端部は曲面となっているので、搬送ベルトの端部から転がり運動設定部16に転送される際にも、搬送装置23の搬送による慣性力と搬送装置23の表面との摩擦力により、被処理物X
s1,X
s2,X
s3,……のそれぞれには転がり運動のエネルギが付与される。
【0029】
即ち、被処理物Xs1,Xs2,Xs3,……のそれぞれの重心が並進運動をするのと同時に、転がり運動設定部16の表面との摩擦力により回転運動が合成された転がり運動のエネルギが、転がり運動設定部16によって付加される。よって、被処理物Xs1,Xs2,Xs3,……のそれぞれの重心は、転がり運動設定部16の下端において、初速度成分v0s1,v0s2,v0s3,……をそれぞれ有する。初速度成分v0s1は、v0s1=v0s1(vx0s1,vy0s1,vz0s1)と表現されるx方向の速度成分、y方向の速度成分及びz方向の速度成分を有するベクトルである。初速度成分v0s2,v0s3,……も同様に、それぞれx方向の速度成分,y方向の速度成分及びz方向の速度成分を有する異なるベクトルである。
【0030】
転がり運動設定部16は、一定の反発弾性率を有した衝撃吸収能力(可撓性)のある膜(層)である。実際には、
図2Bの断面図から分かるように金属製の傾斜板からなる転がり運動設定部支持板15の上に設けられ、所定の剛性を実現して、反発弾性率を強化している。被処理物X
s1,X
s2,X
s3,……のそれぞれに転がり運動の回転トルクが付与されることにより、重力のエネルギによる被処理物X
s1,X
s2,X
s3,……のそれぞれの重心の並進運動の加速度は、回転運動のエネルギ分だけ減少する。したがって、被処理物X
s1,X
s2,X
s3,……のそれぞれの重心の並進運動による衝突エネルギが減少し、物理的衝撃に弱い被処理物X
s1,X
s2,X
s3,……の傷みが緩和される。転がり運動設定部16において、転がり運動のエネルギを付与された被処理物X
s1,X
s2,X
s3,……のそれぞれは、リフトボックス11の底面側に落下した後、回転トルクの慣性によって、リフトボックス11の底面において、被処理物X
s1,X
s2,X
s3,……のそれぞれの重心が直進運動を継続する。直進運動した被処理物X
s1,X
s2,X
s3,……のそれぞれは、自在壁13を含むリフトボックス11の壁面に衝突し、エネルギ保存則に従って、リフトボックス11の壁面から跳ね返される。
【0031】
図2Aに示すリフトボックス11の底面の上において、被処理物X
p1,X
p2,X
p3,X
p4,……が一様に平面稠密充填されるためには、被処理物X
p1,X
p2,X
p3,X
p4,……が、不規則にランダムウォーク(乱歩)して停止位置を再調整する自由度が必要である。代表実施形態に係る自動箱詰装置では、
図2Aに示すように、転がり運動設定部16の中央には略三角錐状の振分機構18が設けられている。振分機構18は物理的衝撃に弱い被処理物X
p1,X
p2,X
p3,X
p4,……を傷めることのない衝撃吸収能力(可撓性)と、被処理物X
p1,X
p2,X
p3,X
p4,……と非弾性衝突することが可能な所定の反発弾性率を有する膜(層)である。ここで「非弾性衝突」とは、式(1)~(9)で仮定したような、衝突によってエネルギを完全に失う完全非弾性衝突ではなく、衝撃吸収能力により一部のエネルギが消耗される(弾性衝突ではない)衝突を意味する。非弾性衝突を成立させるため、実際には
図2Bの断面図から分かるように、振分機構18は、金属製の振分機構支持部17からなる下地層を被覆するように設けて、所定の剛性を実現している。
【0032】
三角錐は4面体であるが、
図2Aから分かるように振分機構18は5面以上の面を有する多面体である。但し便宜上、振分機構18を三角錐で近似すると、転がり運動設定部16の中央には、異なる法線ベクトルを有する2つの三角形の面が配置されたことになる。このため、転がり運動設定部16の中央に振分機構18を設けることにより、被処理物X
p1,X
p2,X
p3,X
p4,……のそれぞれの重心の直線運動(並進運動)のベクトルが、少なくとも3つの異なる方向に、順次付与された転がり運動になる。3つの異なる方向の内2つの方向は、搬送装置23の搬送ベルトの中央付近で搬送された被処理物X
p1,X
p2,X
p3,X
p4,……が振分機構18に非弾性衝突した場合の方向である。即ち、
図2Aにおいて振分機構18の手前側の略三角形の斜面に非弾性衝突した被処理物の重心の移動方向と、振分機構18の奥側の略三角形の斜面に非弾性衝突した被処理物の重心の移動方向は、互いに異なる方向になる。
【0033】
一方、搬送装置23の搬送ベルトの中央から離れた位置で搬送され、振分機構18に衝突することのない被処理物の重心の移動方向は、搬送装置23の自動搬送方向に維持される。
図4Aに示すように、転がり運動設定部16の上端(搬送装置23に近い側の端部)の両側には、それぞれ同一形状、同一大きさの板状の第1制御壁20aと第2制御壁20bが鏡像関係で配置されている。したがって、搬送装置23の搬送ベルトの左端近傍で搬送され、左側の第1制御壁20aに衝突した被処理物の重心の移動方向は右方向のベクトル成分が付与される。一方、搬送装置23の搬送ベルトの右端近傍で搬送され、右側の第2制御壁20bに衝突した被処理物の重心の移動方向は左方向のベクトル成分が付与される。したがって、第1制御壁20aと第2制御壁20bとの衝突を考慮すると、被処理物X
p1,X
p2,X
p3,X
p4,……のそれぞれの重心は、5つの異なる方向の直線運動(並進運動)ベクトルを含む転がり運動になる。
【0034】
そして、リフトボックス11の底面に落下した被処理物Xp1,Xp2,Xp3,Xp4,……のそれぞれの重心は、リフトボックス11の底面の上において、それぞれ異なる方向に転がり運動のエネルギで自由移動する。更に、被処理物Xp1,Xp2,Xp3,Xp4,……のそれぞれが、リフトボックス11の側面と衝突することにより、底面の上において、被処理物Xp1,Xp2,Xp3,Xp4,……のそれぞれの重心移動の乱歩(酔歩)が実現し、一様な平面稠密充填が可能になる。被処理物Xp1,Xp2,Xp3,Xp4,……のそれぞれの転がり運動のエネルギと方向の不規則性が足りず、それぞれの重心移動の乱歩が不十分の場合には、一様な平面稠密充填が実現せず、空孔(vacancy)や、被処理物の凝集(乗り上げ)が発生する。一様な平面稠密充填されていない層の上に、新たな平面稠密充填されていない層を積み上げ、多層構造にしても、一様な立体稠密充填にはならず、多層構造の内部に内圧の不均一分布が発生する。
【0035】
図3に示すように、リフトボックス11の内壁に、この内壁に転がり運動で衝突する被処理物X
p1,X
p2,X
p3,X
p4,……(
図2A参照。)のそれぞれの重心の運動量ベクトルの方向を、非弾性衝突により変える反発弾性率を有する衝撃吸収膜12が備えられている。衝撃吸収膜12には、3mm厚の塩ビ発泡シートが用いられている。当初、本発明者らはリフトボックス11の内壁に設ける内張りとして、
図7に示すようにポリプロピレン(PP)樹脂製のプラスチックダンボールシートを衝撃吸収膜92a,92b,92cとして用いた。被処理物となるリンゴの損傷を防止するためには、金属製のリフトボックス11の内面には衝撃エネルギ吸収性能の高い完全非弾性衝突に近い保護材が必要と考え、PP樹脂製の中空構造のプラスチックダンボールシートを選択した。
【0036】
当初採用した内張りの構造は、リフトボックス11の矩形の内角の構造を反映して、
図7に示すように衝撃吸収膜92aと衝撃吸収膜92bは、互いに内角が直交していた。しかしながら、
図7に示した参考技術に関する構造では、リフトボックス11の底部の開閉扉を開放状態にしたとき、一部のリンゴX
z1,X
z2,X
z3,X
z4,X
z5,……が積み上げられる凝集状態(以下において「架橋(ブリッジ)状態」と称する。)Bが発生し、リフトボックス11のコーナー部に残留し、コンテナ1の内部へ落ちない不都合が生じた。
図7には、参考技術に関する構造において、リフトボックス11の下方にあるコンテナ1の内部に、リンゴX
y(k-1),X
yk,X
y(k+1),X
y(k+2),……が落下した状態を示している。架橋状態Bが発生するのは、リンゴがリフトボックス11の内部に内圧の一様な稠密充填がされず、リフトボックス11のコーナー部等の特定の領域に内圧が集中し、特定の位置でリンゴX
y(k-1),X
yk,X
y(k+1),X
y(k+2),……の互いの密着力が強い分布になるからと考えられる。
【0037】
そこで、リフトボックス11の内角を板金部品で埋めて直交面ではなく、45°の角度で削り落とすコーナー面取り面(以下において「C面」と称する。)としても、架橋状態Bに寄与するリンゴXz1,Xz2,Xz3,Xz4,Xz5,……の個数は減少したものの、依然として架橋状態Bは発生した。衝撃エネルギ吸収性能の指標の1つに反発弾性率がある。反発弾性率の測定法はJIS K6400-3等で定められている。ウレタンフォームに関するJIS6401では反発弾性率15%以下を低反発タイプ、50%以上を高弾性タイプと定めている。衝撃吸収材料は、外部から加えられる衝撃エネルギを高分子の分子内摩擦により熱として散逸することにより衝撃エネルギを吸収する。衝撃エネルギを完全に吸収する場合には完全非弾性衝突になる。
【0038】
反発弾性率の小さい材料ほど衝撃エネルギ吸収性能に優れるので完全非弾性衝突に近づく。よって、反発弾性率と衝撃エネルギ吸収性能は二律背反(トレードオフ)の関係にある。したがって、本発明者らは、架橋状態Bの発生状況を鑑みて、反発弾性率と衝撃エネルギ吸収性能の選択を試行錯誤して非弾性衝突になる条件を検討した。その結果、
図3に示すようなC面を有する構造において、塩ビ発泡シートを採用し、更に
図2Aに示したような振分機構18を用いることにより、架橋状態Bの発生が解消できる非弾性衝突になる条件が得られるという知見を得た。更に、この非弾性衝突になる条件において、塩ビ発泡シートを衝撃吸収膜12に採用しても、リンゴX
z1,X
z2,X
z3,X
z4,X
z5,……に損傷が生じないことを確認した。
【0039】
式(5)のところで説明したとおり、衝突時の運動エネルギが大きく、そのため被処理物の変形量が大きい場合には完全非弾性衝突に近づき、衝突時の運動エネルギが小さく、被処理物の変形量が小さい場合には弾性衝突に近づく。式(2)で示される被処理物の重力方向(z方向)の速度vzgに比し、転がり運動設定部16によって被処理物に付加される水平方向の速度成分vh0は小さい。したがって、リフトボックス11の側壁の衝撃吸収膜12に衝突する被処理物の運動エネルギは、リフトボックス11の底面の衝撃吸収膜12への衝突の運動エネルギはより小さい。このため、底面の衝撃吸収膜12へ衝突した被処理物が跳ね上がらない状況においても、衝撃吸収膜12の反発弾性率を選択することにより、側壁の衝撃吸収膜12との衝突は弾性衝突に近づいた跳ね返りが期待できる。
【0040】
既に述べたとおり、リフトボックス11の内部に被処理物としてのリンゴXz1,Xz2,Xz3,Xz4,Xz5,……を一様に稠密充填させて内圧の分布を一様にして架橋状態Bの発生を抑制するためには、リンゴXz1,Xz2,Xz3,Xz4,Xz5,……が不規則に乱歩(泳動)し、それぞれの停止位置を再調整する運動エネルギと方向の自由度が必要である。プラスチックダンボールシートの場合は、衝撃吸収膜92a,92b,92cとしての衝撃エネルギ吸収性能は十分であるが、運動エネルギを完全に消耗させない非弾性衝突を実現するための反発弾性率が不足していた。3mm厚の塩ビ発泡シートは、衝撃エネルギ吸収性能はプラスチックダンボールシートよりも劣るが、非弾性衝突に必要な反発弾性率がプラスチックダンボールシートより大きい。なお、実際には、衝撃吸収膜12は金属製のリフトボックス11の内張りとして用いられているので、金属製のリフトボックス11の剛性が、複合構造の全体としての反発弾性率を強化して、非弾性衝突による運動エネルギを実現している。
【0041】
このため、
図3に示すように衝撃吸収膜12を内張に用いた代表実施形態に係る自動箱詰装置においては、リンゴX
z1,X
z2,X
z3,X
z4,X
z5,……が非弾性衝突により十分な運動エネルギを得ることができる。又、可撓性の膜からなる自在壁13は、
図2Bに示すように巻き付けローラ21と補助ローラ22によって張りが調整できるので、風船のような弾力性を有して非弾性衝突に寄与できる。衝撃吸収膜12と自在壁13との非弾性衝突により十分な運動エネルギを得ることにより、リンゴX
z1,X
z2,X
z3,X
z4,X
z5,……は、リフトボックス11の内部において、不規則に乱歩(泳動)できるようになる。この結果、架橋状態Bの発生が抑制されたと考えることができる。
【0042】
代表実施形態に係る自動箱詰装置においては、逐次単位移動長ΔH(=H
WB /m)でリフトボックス11の底部の位置が下方に離散的(ステップ状)に移動するので、リフトボックス11の内部には、移動に伴い新たに単位移動長ΔHに対応する充填深さが設定される。この充填深さの容量を仮充填して満杯にする動作と、満杯が確認されたら搬送装置23を停止する動作と、リフトボックス11の底部を更に下方に単位移動長ΔHだけ移動する動作がセットになっている。このため、単位移動長ΔHで逐次設定される充填深さの容量のそれぞれに対し、
図4C,
図6B、
図6D等に示すように、被処理物X
r(j-1),X
rj,X
r(j+1),……(
図4C参照。)が仮充填され満杯になったことを検知し、直ちに搬送装置23を停止する必要がある。
【0043】
逐次下降の各段階で設定される充填深さの容量が満杯になったことを検知するため、
図4A~4Cに示すように、投入窓の両側に第1光学センサ19aと第2光学センサ19bが鏡像関係となるように配置されている。
図4Aに示すように、第1光学センサ19aは左の第1側壁部10aに固定され、リフトボックス11の内張である衝撃吸収膜12の右側内壁の一部を、第1側壁部10aの位置から所定の立体角で光を照射し照射面積S
I(破線の円参照。)を得て、この照射面積S
Iからの反射光を検出する。しかし、衝撃吸収膜12の光の反射率が小さいので、第1光学センサ19aは十分な反射光を検知できない。同様に、第2光学センサ19bは右の第2側壁部10bに固定され、第2側壁部10bの位置から衝撃吸収膜12の左側内壁の一部を照射する立体角で光を照射し、反射光を検出する。しかし、衝撃吸収膜12の光の反射率も小さいので、第2光学センサ19bも十分な反射光を検知できない。
【0044】
図4Bには、リフトボックス11の内部に被処理物X
q1と被処理物X
q2が投入され、被処理物X
q3が正に投入されんとしている瞬間を模式的に示している。
図4Bは、リフトボックス11の内部に2個の被処理物X
q1,X
q2のみが存在するので、第1側壁部10aの位置に存在する第1光学センサ19aから出射した光は被処理物X
q2の一部を照射し、大部分は
図4Aと同様な衝撃吸収膜12の右側内壁の一部の照射面積S
Iを照射する光になる。第1光学センサ19aから出射する光は、被処理物X
q1,X
q2,……からの反射率の高い波長の光を選定している。被処理物X
q2の第1光学センサ19aから出射した光に対する反射率が高くても、光は被処理物X
q2の一部にしか照射されていないので、第1光学センサ19aは十分な反射光を被処理物X
q2から得ることができない。
図4Bにおいて第2光学センサ19bから出射する光は、リフトボックス11の内部に2個の被処理物X
q1,X
q2しか存在していないので、
図4Aの場合と同様に、衝撃吸収膜12の左側内壁の一部を照射する立体角で光を照射する。しかし、衝撃吸収膜12の光の反射率が小さいので、第2光学センサ19bは十分な反射光を検知できない。
【0045】
図4Cは、リフトボックス11の内部に多数の被処理物X
r(j-1),X
rj,X
r(j+1),……が投入され、満杯に近づきつつあるが、満杯ではない状態を模式的に示している。
図4Cでは、第1側壁部10a側の第1光学センサ19aから出射した光は被処理物X
rjの全体を照射し、残余の光が、
図4Aと同様な衝撃吸収膜12の右側内壁の一部の照射面積S
Iの一部を照射する光になる。被処理物X
rjの第1光学センサ19aから出射した光に対する反射率が高いので、第1光学センサ19aには満杯位置に非処理物が存在することを示す十分な反射光が被処理物X
rjから到達する。
【0046】
一方、
図4Cにおいて右側の第2光学センサ19bから出射した光は被処理物X
r(j+1)の一部を照射し、大部分は
図4A及び
図Bと同様な衝撃吸収膜12の左側内壁の一部を照射する光になる。被処理物X
r(j+1)の第2光学センサ19bから出射した光に対する反射率が高くても、光は被処理物X
r(j+1)の一部にしか照射されていないので、第2光学センサ19bは満杯位置の非処理物の存在を示す十分な反射光を被処理物X
r(j+1)から得ることができない。代表実施形態に係る自動箱詰装置においては、第1光学センサ19aと第2光学センサ19bの両方が、満杯位置の非処理物の存在を示す十分な反射光を同時に入力したときに、リフトボックス11の内部に被処理物X
r(j-1),X
rj,X
r(j+1) ,……が稠密充填されて満杯状態になったと判断し、搬送装置23を自動停止する。
【0047】
図5(a)の左上に、一例として、波長624nmの赤色LEDを用いた拡散反射型の光学センサが白抜きの矩形で示されている。白抜きの矩形の右端に含まれる半円が、光学センサのレンズである。そして、
図5(a)の光学センサの中心線に沿って、レンズの端面(レンズ面)から距離X離れ、レンズ面の中心線の位置から距離Y下がった位置に、左上がりの斜線のハッチングで埋めた矩形が、光学センサの検出対象となる検出物体である。
図5(b)は、100mm
□の白画用紙を標準検出物体とした場合の、
図5(a)に示した配置における光学センサの動作領域特性グラフの一例を示す。
図5(b)のX軸(横軸)は、光学センサから検出物体までの検出距離(単位mm)、Y軸(縦軸)は光学センサから出射する光が広がる距離(単位mm)を表す。
図5(b)の縦軸の0mmの位置に光学センサのレンズ面の中央が位置する。
図5(b)によれば、白画用紙を標準検出物体の場合には、標準検出物体までの検出距離が約350mmのときに光の広がりが最大値の約35mm程度になることを示している。
【0048】
図5(b)に示す動作領域特性グラフは、検出物体が標準検出物体よりも小さい場合や、黒っぽい場合は、反射する光の量が少なくなる。このため、直径80~120mmの球形のリンゴを検出物体とするときは、
図5(b)に示す動作領域特性グラフの特性からずれてくる。波長624nmの赤色光を用いている場合は、赤色のリンゴを検出物体とするときにはリンゴからの反射率が高くなる。例えば、一例として、
図4A等に示した投入窓の間口を560mmとし、間口から40mm外側に離れた位置に第1光学センサ19aと第2光学センサ19bのそれぞれを配置したとする。この例では、標準検出物体からの動作領域特性のずれを無視した場合には、被処理物X
rjまでの検出距離600mmで光の広がりは約20mmになり、検出距離500mmで光の広がりは約30mmになる。
【0049】
図1の第1側壁部10aの左上には制御回路44が設けられている。制御回路44は、リフトボックス11の充填深さの容量が満杯になったことを示す第1光学センサ19aと第2光学センサ19bの出力信号を入力して、アクチュエータ42の動作を制御する。
図1では図示を省略しているが、第1側壁部10aには、リフトボックス11の位置を検知する位置センサが設けられており、制御回路44は、位置センサからの信号と、第1光学センサ19aと第2光学センサ19bからの信号を用いて、リフトボックス11の底部を逐次単位移動長ΔH毎に下降させる動作を制御する。制御回路44は、更に、位置センサからの信号を用いて、リフトボックス11をコンテナ1の内部から開始位置まで上昇させる動作を制御する。又、リフトボックス11の上下移動の動作と自在壁13の動作を連動(同期)させるため、制御回路44は、巻き付けローラ21の回転を駆動する電動機41の動作も制御する。制御回路44は、更にアクチュエータ42がリフトボックス11の開閉扉を駆動する開閉リンク機構43の動作も制御する。
【0050】
以上のとおり、代表実施形態に係る自動箱詰装置によれば、単位移動長ΔH(=HWB /m)で充填深さをコンテナ1の高さより浅く設定しているので、物理的衝撃に弱く表面が傷みやすいリンゴ等の球状の被処理物の品質を、傷等により低下させることなく、効率良く被処理物をコンテナ1の内部に稠密充填することができる。特に転がり運動設定部16により不規則な方向の運動エネルギを付し、且つ反発弾性率が衝撃吸収能力に比して相対的に大きな衝撃吸収膜12を採用しているので、リフトボックス11の内部に被処理物を稠密かつ一様に仮充填することが可能になる。又、単位移動長ΔHで充填深さをコンテナ1の高さより浅く設定することにより、架橋状態Bが発生しない被処理物の稠密かつ一様な仮充填も可能になる。又、代表実施形態に係る自動箱詰システムによれば、自動箱詰装置に搬送装置23の動作を連動させることにより、リンゴ等の球状の被処理物の品質を傷等により低下させることなく、効率良く被処理物をコンテナ1の内部に稠密充填することができる。
【0051】
(自動箱詰方法)
本発明の代表実施形態に係る自動箱詰装置及び自動箱詰システムを用いた自動箱詰方法(以下において「代表実施形態に係る自動箱詰方法」という。)は、
図6Aに示すように、搬送装置23によって、複数の球状の被処理物X
t1,X
t2,X
t3,X
t4,……が一定方向(x方向)に自動搬送されて、自動箱詰装置の投入窓から、転がり運動設定部16を介してリフトボックス11の内部に投入される。代表実施形態に係る自動箱詰装置のコンテナステージ45の上に、コンテナ1が搭載され、コンテナ1の開放面の上方にリフトボックス11の底面が位置している。リフトボックス11の4つの側面の内、3つの側面には衝撃吸収膜12が内張されている。リフトボックス11の投入窓の下方に位置する側面には自在壁13が設けられている。
図6Aにおいては、最初の1個である被処理物X
t1がリフトボックス11の内部に投入され、2個目の被処理物X
t2が転がり運動設定部16を通過中であり、被処理物X
t3,X
t4,……が、搬送装置23の搬送ベルトの上にある状態を模式的に示している。
【0052】
図6Aに示す状態から一定時間経過した
図6Bに示す状態においては、多数の被処理物X
uj,X
u(j+1),……がリフトボックス11の内部に稠密充填された状態が示されている。転がり運動設定部16によって、被処理物X
uj,X
u(j+1),……には転がり運動のエネルギが付与され、且つ重心の並進運動の方向が不規則(ランダム)に設定されることにより、リフトボックス11の内部において、被処理物X
uj,X
u(j+1),……は乱歩(ランダムウォーク)して、リフトボックス11の内部に稠密充填される。
図6Bでは、被処理物X
uj,X
u(j+1),……が、リフトボックス11の内部に2層に平面稠密充填された状態に近づきつつある態様が示されている。
図6Bに示すように、単位移動長ΔHで充填深さを浅く設定しているので、
図7に例示したような架橋状態Bが発生しない、被処理物の一様かつ稠密な仮充填が可能になる。
【0053】
図6Aに示す状態のリフトボックス11の底面位置と、
図6Bに示す状態のリフトボックス11の底面位置は同じである。
図6A及び
図6Bでは図示を省略しているが、
図6Bに示す状態になると、第1光学センサ19aと第2光学センサ19bの両方が、被処理物X
uj,X
u(j+1),……による満杯を示す十分な反射光を同時に入力する。第1光学センサ19aと第2光学センサ19bの出力信号を入力した制御回路44は満杯状態になったと判断し、制御回路44は搬送装置23を自動停止させる命令を出す。更に制御回路44は、アクチュエータ42にリフトボックス11の底面位置を逐次単位移動長ΔHだけ下降させる命令を出す。
【0054】
制御回路44は、
図6B及び
図6C等で図示を省略した位置センサからの信号を使いながら、リフトボックス11の底面位置を、
図6Cに示すように逐次単位移動長ΔHだけ下降させる。リフトボックス11の底面位置の下降に伴い、自在壁13の長さは逐次単位移動長ΔHだけ伸びる。
図6Cにおいては、平面稠密充填の3層目に被処理物X
vjがリフトボックス11の内部に投入され、被処理物X
v(j+1)が転がり運動設定部16を通過中であり、被処理物X
v(j+2)が、搬送装置23の搬送ベルトの上にある状態を模式的に示している。
【0055】
図6Cに示す状態から一定時間経過した
図6Dに示す状態においては、3層目と4層目が平面稠密充填しつつある被処理物X
wj,……がリフトボックス11の内部に仮充填された状態が示されている。
図6Dにおいては、被処理物X
w(j+1)が転がり運動設定部16を通過中であり、被処理物X
w(j+2)が、搬送装置23の搬送ベルトの上にある状態を模式的に示している。転がり運動設定部16によって、被処理物X
wj,X
w(j+1),……には転がり運動のエネルギが付与され、且つ重心の並進運動の方向が不規則に設定されることにより、リフトボックス11の内部において、被処理物X
wjが乱歩して、リフトボックス11の内部に稠密充填される。
図6Dに示すように、単位移動長ΔHで充填深さを浅く設定しているので、架橋状態Bが発生しない被処理物の一様かつ稠密な仮充填が可能になる。
【0056】
図6Cに示す状態のリフトボックス11の底面位置と、
図6Dに示す状態のリフトボックス11の底面位置は同じである。
図6C及び
図6Dでは図示を省略しているが、
図6Dに示す状態になると、第1光学センサ19aと第2光学センサ19bの両方が、被処理物X
wj,……による満杯を示す十分な反射光を同時に入力する。第1光学センサ19aと第2光学センサ19bの出力信号を入力した制御回路44は満杯状態になったと判断し、搬送装置23を自動停止させる命令を出す。更に制御回路44はアクチュエータ42にリフトボックス11の底面位置を、コンテナ1の底面に近い位置まで、コンテナ1の内部に下降させる命令を出す。
【0057】
制御回路44は、
図6D及び
図6E等で図示を省略した位置センサからの信号を使いながら、リフトボックス11の底面位置を、
図6Eに示すようにコンテナ1の内部に下降させる。
図6Fに示すように、リフトボックス11の底部の開閉扉が開けられる高さまで、リフトボックス11の底面位置を、コンテナ1の底面の位置に近づける。リフトボックス11の底面位置の下降に伴い、自在壁13の長さは底面位置の下降分の長さだけ伸びる。その後、
図6Fに示すように、開閉リンク機構43によってリフトボックス11の底部の2つの旋回扉(開閉扉)を観音開きし、リフトボックス11の内部の被処理物をコンテナ1の内部に転送可能にする。架橋状態Bが発生しないように、一様な内圧で被処理物が稠密に仮充填されているので、リフトボックス11の内部の被処理物のすべては、コンテナ1の内部に効率良く移動でき、コンテナ1の内部に被処理物のすべてが稠密充填される。その後、
図6Gに示すように、アクチュエータ42によってリフトボックス11を上昇させると、リフトボックス11の内部に仮充填された被処理物は、コンテナ1の内部に転送され、コンテナ1の内部に稠密充填される。更に
図6Hに示すように、コンテナステージ45のスライド機構を用いて、被処理物が稠密充填されたコンテナ1を、代表実施形態に係る自動箱詰装置の裏面側に引き出す。
【0058】
以上のとおり、代表実施形態に係る自動箱詰方法によれば、充填深さの浅いリフトボックス11の内部に仮充填する操作を繰り返した後に、被処理物をコンテナ1の内部に転送できる。よって、代表実施形態に係る自動箱詰方法によれば、物理的衝撃に弱く表面が傷みやすいリンゴ等の球状の被処理物であっても、被処理物の品質を、傷等により低下させることなく、効率良く被処理物をコンテナ1の内部に稠密充填することができる。特に転がり運動設定部16により不規則な方向の運動エネルギを付し、且つ反発弾性率が衝撃吸収能力に比して相対的に大きな衝撃吸収膜12を採用しているので、リフトボックス11の内部に被処理物を稠密かつ一様に仮充填することが可能になる。又、単位移動長ΔHで充填深さを浅く設定することにより、架橋状態Bが発生しない被処理物の稠密かつ一様な仮充填も可能になる。
【0059】
(その他の実施の形態)
本発明は上記の代表実施形態によって自動箱詰装置、自動箱詰システム及び自動箱詰方法を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。例えば、被処理物を自動搬送する搬送装置23の搬送ベルトの途中に被処理物の個数若しくは重量を計測するゾーンを設けて、第1光学センサ19aと第2光学センサ19bの出力信号と、個数若しくは重量を計測結果と連動させて、搬送装置23を自動停止する自動箱詰システムを構成するようにしてもよい。
【0060】
個数若しくは重量を計測結果と搬送装置23の動作を効率よく連動させるためには、第1光学センサ19aと第2光学センサ19bが照射する範囲よりも、リフトボックス11の奥側に仮充填されつつある被処理物を照射する第3及び第4光学センサを設けて、満杯に近づいたことを検知できるようにしてもよい。この場合、搬送装置23の搬送ベルトの上を搬送される被処理物の位置を、途中で1個ずつの搬送に切り替えるような搬送位置調整装置を更に付加してもよい。即ち、第1~第4光学センサの全体の出力信号を用いて、リフトボックス11の所定の充填深さの仮充填が満杯近傍を検知したら、搬送位置調整装置を用いて、搬送装置23の搬送ベルトの上を1個ずつ被処理物が搬送されるように設定して、1個単位の精密な仮充填の制御が可能なようにしてもよい。なお、本明細書で単に「光学センサ」と呼ぶときは、第1及び第2光学センサの全体、又は第1~第4光学センサの全体、若しくは第1~第4光学センサのいずれか等を包括的に意味する。
【0061】
更に、代表実施形態に係る自動箱詰システムにおいて、更にコンピュータシステムを有する構成としてもよい。この場合は、光学センサの出力信号と、リフトボックス11の仮充填の満杯判断の結果を1個単位の精密さでコンピュータシステムに機械学習させ、機械学習の結果を用いて、1個単位の精密な仮充填の制御を可能にすることができる。
【0062】
また、上記の代表実施形態に係る自動箱詰装置及び自動箱詰システムではリンゴを例示的に説明した。しかし、転がり運動を付与できる球形の被処理物であれば、柿、桃、梨、温州みかん、伊予かん、ネープル、メロン、トマト等であっても、同様に本発明の技術的思想が適用なことは勿論である。一般に果物は圧力を印加すると変位量が大きくなるので、フックの法則に対応しており、弾性変形の特性を示す。そして、弾性変形の範囲において、圧力による変位量が大きくなると硬度が低下する傾向にある。例えば、リンゴ(サン津軽)の場合は、圧縮空気を用いた圧力による変位量0.02~0.03mmにおいて、ユニバーサル硬度計(又はマグネス硬度計)で測定した硬度(抵抗力)は2.4~2.73kg程度であるが、変位量が大きくなると硬度が低下する。但しCA貯蔵した場合、貯蔵日数が増えるとリンゴの硬度は低下する。
【0063】
又、リンゴ(黄王)は、変位量0.027~0.047mmにおいて硬度は1.95~2.37kg程度であるが、変位量が大きくなると硬度が低下する。南水梨の場合、変位量0.03~0.06mmにおいて硬度は1.8~2.12kg程度である。プリンスメロンの場合、変位量0.02~0.075mmにおいて硬度は0.4~1.7kg程度である。これらの傷つきやすい果物であっても、本発明の技術的思想は、単位移動長ΔHを定義する分割数mを調整することにより、適宜適用可能である。
【0064】
即ち、上記の代表実施形態に係る自動箱詰装置及び自動箱詰システムでは、コンテナの高さをm分割する説明に際し、m=2としコンテナの高さを2分割した寸法を単位移動長ΔHとする場合を記述したが、例示に過ぎない。予備実験により被処理物の傷つきやすさを評価して、分割数mを3以上に増やすことは勿論である。重力の加速度による被処理物に対する損傷を減らすためには、傷つきやすい被処理物の性質に合わせて、分割数mを、適宜選択し、逐次単位移動長ΔHを設定すればよい。
【0065】
上記のとおり、本発明は、既に述べた代表実施形態の説明に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。従って、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲の記載に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0066】
1…コンテナ、10a…第1側壁部、10b…第2側壁部、11…リフトボックス、12…衝撃吸収膜、13…自在壁、14…留め具、15…転がり運動設定部支持板、16…転がり運動設定部、17…振分機構支持部、18…振分機構、19a…第1光学センサ、19b…第2光学センサ、20a…第1制御壁、20b…第2制御壁、21…巻き付けローラ、22…補助ローラ、23…搬送装置、41…電動機、42…アクチュエータ、43…開閉リンク機構、44…制御回路、45…コンテナステージ、92a,92b,92c…衝撃吸収膜
【要約】
【課題】物理的衝撃に弱い球状の被処理物を、傷めることなく効率良くコンテナに稠密充填することが可能な自動箱詰装置を提供する。
【解決手段】コンテナ1を載置する平板状のコンテナステージ45と、下部にコンテナステージ45を固定し搬送装置23から複数の被処理物X
s1,X
s2,X
s3を順次投入する投入窓をコンテナステージ45の上方に設定した一対の側壁部10aと、底部に開閉扉を有しコンテナ1の内部に底部を挿入可能なように一対の側壁部10aの間で上下移動するリフトボックス11と、コンテナ1の高さを分割した寸法を単位移動長としリフトボックス11を単位移動長毎に逐次下降させる駆動が可能なアクチュエータ42と、投入窓に設けられ複数の被処理物のそれぞれの転がり運動のエネルギと方向を順次設定する転がり運動設定部16を備える。
【選択図】
図1