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特許7594320省エネ向けのダイカストマシン及び射出成形機の型開閉パラメータ最適化方法
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  • 特許-省エネ向けのダイカストマシン及び射出成形機の型開閉パラメータ最適化方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】省エネ向けのダイカストマシン及び射出成形機の型開閉パラメータ最適化方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 17/26 20060101AFI20241127BHJP
   B29C 45/03 20060101ALI20241127BHJP
   B29C 45/76 20060101ALI20241127BHJP
   B22D 17/32 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
B22D17/26 J
B29C45/03
B29C45/76
B22D17/32 A
B22D17/32 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023122856
(22)【出願日】2023-07-27
【審査請求日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】202310727625.7
(32)【優先日】2023-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520448452
【氏名又は名称】浙大城市学院
(74)【代理人】
【識別番号】100128347
【弁理士】
【氏名又は名称】西内 盛二
(72)【発明者】
【氏名】胡 ▲羅▼克
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ ▲偉▼▲鵬▼
(72)【発明者】
【氏名】彭 涛
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ ▲軍▼
(72)【発明者】
【氏名】章 旭霞
(72)【発明者】
【氏名】万 安平
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 挺
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-144979(JP,A)
【文献】特開2010-094726(JP,A)
【文献】特開2022-144124(JP,A)
【文献】特開2023-041451(JP,A)
【文献】特表2013-529148(JP,A)
【文献】特開平04-368832(JP,A)
【文献】特開2005-297481(JP,A)
【文献】特開2011-050974(JP,A)
【文献】特開2010-042599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 17/26,17/32
B29C 45/00-45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
省エネ向けのダイカストマシン及び射出成形機の型開閉パラメータ最適化方法であって、以下のステップ1~ステップ3を含み、
前記ステップ1では、試験によってダイカストマシン又は射出成形機の型開き電力及び型開き速度、金型位置の関係式、並びに型締め電力及び型締め速度、金型位置の関係式を取得し、
前記ステップ2では、型開き過程及び型締め過程のそれぞれに対して、振動衝撃を制約としてエネルギー消費及び時間の最小化を目標とする最適化モデルを確立し、
前記ステップ3では、型開き過程及び型締め過程のそれぞれの最適化モデルを解いて、型開きパラメータのパレート最適解セット及び型締めパラメータのパレート最適解セットを出力することを特徴とする省エネ向けのダイカストマシン及び射出成形機の型開閉パラメータ最適化方法。
【請求項2】
前記ステップ1では試験によってダイカストマシン又は射出成形機の型開き電力及び型開き速度、金型位置の関係式を取得する具体的な過程は以下のサブステップ1.1~サブステップ1.5を含み、
前記サブステップ1.1では、サーボ制御装置及びサーボモータの電力を測定するように、電力分析器の電圧及び電流の収集ヘッドをダイカストマシン又は射出成形機のサーボ制御装置の電源入力線に接続し、
前記サブステップ1.2では、製品の金型及び製品の半製品をダイカストマシン又は射出成形機の可動ダイプレートに取り付け、
前記サブステップ1.3では、型開き速度の選択可能区間[Vmin,Vmax]からN個の点を均一に取って、隣接する2つの点の間の間隔を
とし、Nが2よりも大きな自然数であり、
前記サブステップ1.4では、最大型開き圧力及び各点に対応する速度パラメータを型開きパラメータとし、金型を低圧型開きの終了位置から型締めの開始位置まで等速で押動し、
前記サブステップ1.5では、電力分析器により各回の試験に用いる型開きパラメータに対応する電力曲線を測定及び記録して、電力曲線の横座標を時間から金型位置に変換し、該金型位置が時間を型開き速度に乗じた結果に等しく、更に型開き電力をPk(vk,l)と記し、vkが型開き速度であり、lが金型位置であることを特徴とする請求項1に記載のダイカストマシン及び射出成形機の型開閉パラメータ最適化方法。
【請求項3】
前記ステップ1では試験によってダイカストマシン又は射出成形機の型締め電力及び型締め速度、金型位置の関係式を取得する具体的な過程は以下のサブステップ1.1~サブステップ1.5を含み、
前記サブステップ1.1では、サーボ制御装置及びサーボモータの総電力を測定するように、電力分析器の電圧及び電流の収集ヘッドをダイカストマシン又は射出成形機のサーボ制御装置の電源入力線に接続し、
前記サブステップ1.2では、製品の金型をダイカストマシン又は射出成形機の可動ダイプレートに取り付け、
前記サブステップ1.3では、型締め速度の選択可能区間[Vmin,Vmax]からN個の点を均一に取って、隣接する2つの点の間の間隔を
とし、Nが2よりも大きな自然数であり、
前記サブステップ1.4では、最大型締め圧力及び各点に対応する速度パラメータを型締めパラメータとし、金型を型締めの開始位置から低速型締めの終了位置まで等速で押動し、
前記サブステップ1.5では、電力分析器により各回の試験に用いる型締めパラメータに対応する電力曲線を測定及び記録して、電力曲線の横座標を時間から金型位置に変換し、該金型位置が時間を型締め速度に乗じた結果に等しく、更に型締め電力をPh(vh,l)と記し、vhが型締め速度であり、lが金型位置であることを特徴とする請求項1に記載のダイカストマシン及び射出成形機の型開閉パラメータ最適化方法。
【請求項4】
前記ステップ2では型開き過程に対して最適化モデルを確立する具体的な過程は以下のサブステップ2.1~サブステップ2.4を含み、
前記サブステップ2.1では、型開きパラメータの最適化された既知パラメータを取得し、該既知パラメータが高速及び低速の総型開きストロークLkと、低圧型開きの速度vklpとを含み、
前記サブステップ2.2では、型開き過程における高速速度vkh、低速速度vkl、高速型開きストローク係数αkを最適化変数とし、
にし、
前記サブステップ2.3では、型開きエネルギー消費及び型開き時間の最小化を目標とする最適化モデルを確立し、その目標の関数表現式は以下の式1に示され、
【数1】
ここで、Tkが型開き時間であり、Ekが型開きエネルギー消費であり、mm1が製品の金型及び製品の半製品の総重量であり、Pk()が対応する型開き速度及び金型位置における型開き電力を示し、tが時間を示し、
前記サブステップ2.4では、振動衝撃を最適化モデルの制約とする具体的な制約の関係式は以下の式2に示され、
【数2】
ここで、θzkが型開きに許容できる最大振動値であることを特徴とする請求項2に記載のダイカストマシン及び射出成形機の型開閉パラメータ最適化方法。
【請求項5】
前記ステップ2では型締め過程に対して最適化モデルを確立する具体的な過程は以下のサブステップ2.1~サブステップ2.4を含み、
前記サブステップ2.1では、型締めパラメータの最適化された既知パラメータを取得し、該既知パラメータが高速及び低速の総型締めストロークLと、低圧型締めの速度v lpとを含み、
前記サブステップ2.2では、型締め過程における高速速度v 、低速速度v 、高速型締めストローク係数αを最適化変数とし、
にし、
前記サブステップ2.3では、型締めエネルギー消費及び型締め時間の最小化を目標とする最適化モデルを確立し、その目標の関数表現式は以下の式3に示され、
【数3】
ここで、Tが型締め時間であり、Eが型締めエネルギー消費であり、mが製品の金型の重量であり、P()が対応する型締め速度及び金型位置における型締め電力を示し、tが時間を示し、
前記サブステップ2.4では、振動衝撃を最適化モデルの制約とする具体的な制約の関係式は以下の式4に示され、
【数4】
ここで、θzhが型締めに許容できる最大振動値であることを特徴とする請求項3に記載のダイカストマシン及び射出成形機の型開閉パラメータ最適化方法。
【請求項6】
前記ステップ3では非支配的ソート遺伝的アルゴリズムによって型開き過程の最適化モデルを解く具体的な過程は以下のサブステップ3.1~サブステップ3.6を含み、
前記サブステップ3.1では、二値符号化方式を用いて高速速度v 、低速速度v 、高速型開きストローク係数αを符号化し、
前記サブステップ3.2では、制約条件を満たす解をM個含む親個体群をランダムに生成して、親個体群におけるM個の解の型開き時間T及び型開きエネルギー消費Eを計算し、Mが偶数であり、
前記サブステップ3.3では、型開き時間T及び型開きエネルギー消費Eに基づいて親個体群のM個の解を非支配関係に応じて昇順にソートし、ソート後の解を複数の非支配レベルに分けて、各非支配レベルで各解の混雑度を計算し、
前記サブステップ3.4では、バイナリトーナメントによって親個体群のM個の解をM/2組に分け、各組が2つの解を含み、各組における2つの解の交差及び変動操作に亘って、制約条件を満たす解をM個含む子個体群を生成し、
前記サブステップ3.5では、子個体群におけるM個の解の型開き時間T及び型開きエネルギー消費Eを計算して、型開き時間T及び型開きエネルギー消費Eに基づいて親個体群のM個の解及び子個体群のM個の解を非支配関係に応じて昇順にソートし、ソート後の解を複数の非支配レベルに分けて、各非支配レベルで各解の混雑度を計算し、ソートレベルが低くて混雑度が大きな上位M個の解を新たな親個体群とし、
前記サブステップ3.6では、設定された最大反復回数に達するかどうかを判断し、YESの場合、新たな親個体群におけるM個の解を復号してパレート最適解セットを出力し、NOの場合、前記サブステップ3.4に戻って最大反復回数に達するまで新たな親個体群に対して対応する操作を実行することを特徴とする請求項4に記載のダイカストマシン及び射出成形機の型開閉パラメータ最適化方法。
【請求項7】
前記ステップ3では非支配的ソート遺伝的アルゴリズムによって型締め過程の最適化モデルを解く具体的な過程は以下のサブステップ3.1~サブステップ3.6を含み、
前記サブステップ3.1では、二値符号化方式を用いて高速速度v 、低速速度v 、高速型締めストローク係数αを符号化し、
前記サブステップ3.2では、制約条件を満たす解をM個含む親個体群をランダムに生成して、親個体群におけるM個の解の型締め時間T及び型締めエネルギー消費Eを計算し、Mが偶数であり、
前記サブステップ3.3では、型締め時間T及び型締めエネルギー消費Eに基づいて親個体群のM個の解を非支配関係に応じて昇順にソートし、ソート後の解を複数の非支配レベルに分けて、各非支配レベルで各解の混雑度を計算し、
前記サブステップ3.4では、バイナリトーナメントによって親個体群のM個の解をM/2組に分け、各組が2つの解を含み、各組における2つの解の交差及び変動操作に亘って、制約条件を満たす解をM個含む子個体群を生成し、
前記サブステップ3.5では、子個体群におけるM個の解の型締め時間T及び型締めエネルギー消費Eを計算して、型締め時間T及び型締めエネルギー消費Eに基づいて親個体群のM個の解及び子個体群のM個の解を非支配関係に応じて昇順にソートし、ソート後の解を複数の非支配レベルに分けて、各非支配レベルで各解の混雑度を計算し、ソートレベルが低くて混雑度が大きな上位M個の解を新たな親個体群とし、
前記サブステップ3.6では、設定された最大反復回数に達するかどうかを判断し、YESの場合、新たな親個体群におけるM個の解を復号してパレート最適解セットを出力し、NOの場合、ステップ3.4に戻って最大反復回数に達するまで新たな親個体群に対して対応する操作を実行することを特徴とする請求項5に記載のダイカストマシン及び射出成形機の型開閉パラメータ最適化方法。
【請求項8】
メモリ及びプロセッサを備える電子機器であって、
前記メモリがプロセッサに結合され、メモリがプログラムデータを記憶することに用いられ、プロセッサが前記プログラムデータを実行することにより上記請求項1~7のいずれか1項に記載のダイカストマシン及び射出成形機の型開閉パラメータ最適化方法を実現することに用いられることを特徴とする電子機器。
【請求項9】
コンピュータプログラムが記憶されるコンピュータ読み取り可能なストレージ媒体であって、
前記コンピュータプログラムがプロセッサにより実行されるとき、請求項1~7のいずれか1項に記載のダイカストマシン及び射出成形機の型開閉パラメータ最適化方法を実現することを特徴とするコンピュータ読み取り可能なストレージ媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はダイカストマシン及び射出成形機の効率的で省エネな動作最適化の技術分野に属し、具体的には省エネ向けのダイカストマシン及び射出成形機の型開閉パラメータ最適化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイカストマシンはよく見られるアルミニウム、マグネシウムなどの非鉄金属を鋳造成形する重要な機器であり、生産量が多くて適用範囲が広いという特徴を有し、現在では中国は全世界でダイカストマシンの生産及び消費量が最も多い国であり、アルミニウム、マグネシウムの合金ダイカスト材は主に自動車分野に使用され、50%を超える自動車用のアルミニウム、マグネシウム合金鋳物はダイカストにより生産したものであり、中国の自動車分野における軽量化の傾向の1つは「アルミニウムで鋼を代替し、鋳造で鍛造を代替する」及び「大型一体化ダイカスト」であり、これはダイカストマシンの使用量を更に促進する。射出成形機は最もよく見られるプラスチック成形装置であり、圧倒的多数のプラスチック製品を生産しており、生産量が多くて適用範囲が広いという特徴も有し、中国も全世界で射出成形機の生産及び消費量が最も多い国である。ダイカストマシン及び射出成形機は多くの共通点を有し、その中で最も大きな共通点は型開き機構及び型締め機構、型開きパラメータ及び型締めパラメータが基本的に同じであり、型開き及び型締め(型開閉と総称される)がダイカスト及び射出成形の重要な過程であることにあり、型開閉パラメータは製品の品質、機械の安定性、機械の耐用年数、エネルギー消費にいずれも重要な影響を与え、最適な型開閉パラメータをどのように効率的に定めるかはダイカスト及び射出成形プロセスの作業者の目の前にある技術的難題の1つである。
【0003】
省エネ型のダイカストマシン及び射出成形機は基本的にいずれも油圧サーボ制御システムを用い、図1はダイカストマシン及び射出成形機の型開閉機構であり、このような型開閉機構はサーボ制御装置+サーボモータ+定量ポンプを油圧システムの動力源として用い、油圧シリンダを型開閉のアクチュエータ素子として用い、よく見られる3つのダイプレートを有するダイカストマシン又は射出成形機は油圧シリンダと可動ダイプレートとの間に1つのダブルトグル機構を追加することとなり、よく見られる2つのダイプレートを有するダイカストマシン又は射出成形機は4つの小型油圧シリンダにより可動ダイプレートを直接駆動する。図2中の(a)及び(b)に示すように、多くのダイカストマシン及び射出成形機は型開閉過程を4つの段階に分け、型締め過程が高速型締め、低速型締め、低圧型締め、高圧型締めを含み、型開き過程が高圧型開き、低圧型開き、高速型開き、低速型開きを含み、異なるメーカー製のダイカストマシン及び射出成形機における型開閉の4つの段階の過程の命名に相違がある可能性があるが、機能と特徴が類似する。型開閉過程に設定する必要があるパラメータは型開閉過程における各段階それぞれの速度、圧力及び各段階の開始・停止位置を含み、低圧型締め、高圧型締め、高圧型開き、低圧型開きの4つの過程それぞれの速度、圧力、各段階の開始・停止位置は製品の特性に関連し且つ選択可能な値が少なく、経験及びより少ない回数の試験により取得されることができ、最適化する必要がなく、高速型締め、低速型締め、高速型開き、低速型開きに必要な圧力は外部負荷(主に摩擦力)によって決定され、最適化する必要もない。高速型締め、低速型締め、高速型開き、低速型開きそれぞれの速度及び高低速の開始・停止位置は設定範囲が広く、且つこれらのパラメータは型開閉時間、機械の安定性、エネルギー消費などに影響を与え、1組の最適な値を取得することが困難である。
【0004】
射出成形機における低速速度、高速速度、高低速切り替え位置のパラメータ最適化問題に対して、公開第CN106079333A号の中国特許出願にはモデルなしの最適化に基づく射出成形機の型開きパラメータ自動調整方法が提案されており、該方法は1組のより最適なパラメータを取得することができるが、下記欠点がまだある。第1として、型開閉過程のエネルギー消費を考慮せず、型開閉過程のエネルギー消費が高く、どのように省エネをするかは差し迫ったニーズであり、型開閉過程が油圧サーボシステムにより駆動され、油圧サーボシステムは異なる速度及び圧力の場合にエネルギー効率に一定の相違があり、従って、型開閉パラメータを最適化する目標の1つはエネルギー消費を十分に小さくすることである。第2として、型開閉の時間を考慮せず、生産効率を向上させるために、型開閉時間が短ければ短いほど、良くなるため、型開閉パラメータを最適化する目標の2つは時間を十分に小さくすることである。第3として、型開閉過程における衝撃及び速度変動の影響を定量化及び考慮せず、型開閉過程における速度が急激に増加・減少することは、エネルギー消費、機器への衝撃、型開閉の安定性に重要な影響を与えるため、考慮する必要がある。
【0005】
以上のようにして、現在では更に早急に重要な技術の難題に取り組んで、自動化されたダイカストマシン及び射出成形機の型開閉パラメータ最適化方法を研究開発してはならない必要があり、生産品質、安定性への要件を満たし且つ型開閉時間及びエネルギー消費がいずれも最も小さい1組のパラメータを迅速に取得することがサポートされ、これはダイカスト及び射出成形過程のスマート低炭素実行を効果的に促進する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記に鑑みて、本発明は省エネ向けのダイカストマシン及び射出成形機の型開閉パラメータ最適化方法を提供し、型開閉パラメータと型開閉時間、エネルギー消費、振動衝撃との複雑な関係を効果的にデカップリングでき、且つ最適なパラメータを迅速に探して型開閉過程におけるパラメータ最適化の難題を高品質に解決できる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1態様では、本発明は省エネ向けのダイカストマシン及び射出成形機の型開閉パラメータ最適化方法を提供し、 試験によってダイカストマシン又は射出成形機の型開き電力及び型開き速度、金型位置の関係式、並びに型締め電力及び型締め速度、金型位置の関係式を取得するステップ1と、 型開き過程及び型締め過程のそれぞれに対して、振動衝撃を制約としてエネルギー消費及び時間の最小化を目標とする最適化モデルを確立するステップ2と、 型開き過程及び型締め過程のそれぞれの最適化モデルを解いて、型開きパラメータのパレート最適解セット及び型締めパラメータのパレート最適解セットを出力するステップ3と、を含む。
【0008】
第2態様では、本発明は電子機器を提供し、メモリ及びプロセッサを備え、前記メモリがプロセッサに結合され、メモリがプログラムデータを記憶するためのものであり、プロセッサが前記プログラムデータを実行することにより上記ダイカストマシン及び射出成形機の型開閉パラメータ最適化方法を実現するためのものである。
【0009】
第3態様では、本発明はコンピュータ読み取り可能なストレージ媒体を提供し、コンピュータプログラムが記憶され、前記コンピュータプログラムがプロセッサにより実行されるとき、上記ダイカストマシン及び射出成形機の型開閉パラメータ最適化方法を実現する。
【発明の効果】
【0010】
従来技術に比べて、本発明は以下の有益な技術的効果を有する。
【0011】
第1として、本発明に係る省エネ向けのダイカストマシン及び射出成形機の型開閉パラメータ最適化方法は初めて型開閉パラメータの型開閉衝撃、型開閉時間、型開閉エネルギー消費への影響を同時に考慮し、該方法が実際のニーズをより満たすことができるようにする。本発明に係る多目標最適化モデルの確立及び解く方法は型開閉パラメータと型開閉時間、エネルギー消費、振動衝撃との複雑な関係を効果的にデカップリングでき、且つ衝撃要件を満たし且つ時間及びエネルギー消費がいずれも最も小さい1組のパラメータを迅速且つ効果的に探すことができ、型開閉過程におけるパラメータ最適化の難題を高品質に解決したのである。
【0012】
第2として、本発明に係る省エネ向けのダイカストマシン及び射出成形機の型開閉パラメータ最適化方法はダイカストマシン及び射出成形機の制御システムに統合されて、効率的で省エネな型開閉パラメータ最適化モジュールを形成することができ、これは本発明を容易に大面積に普及応用させることができ、製造コストの削減、製造品質及び機器の耐用年数の向上を効果的にサポートし、ダイカスト及び射出成形業界のグリーンで低炭素な発展に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1はダイカストマシン及び射出成形機の型開閉機構の模式図である。
図2図2はダイカストマシン及び射出成形機の型開閉過程の模式図であり、ここで、(a)が型締め過程に対応し、(b)が型開き過程に対応する。
図3図3は本発明に係るダイカストマシン及び射出成形機の型開閉パラメータ最適化方法のフローチャートである。
図4図4は電子機器の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明をより具体的に説明するために、以下に図面を参照しながら具体的な実施形態によって本発明の技術案を詳しく説明する。
【0015】
図3に示すように、本発明に係る省エネ向けのダイカストマシン及び射出成形機の型開閉パラメータ最適化方法は以下のステップを含む。
【0016】
ステップ1では、試験によってそれぞれダイカストマシン又は射出成形機の型開き電力及び型開き速度、金型位置の関係式、並びに型締め電力及び型締め速度、金型位置の関係式を取得する。
【0017】
サブステップ1.1において、サーボ制御装置及びモータの総電力を測定するように、電力分析器の電圧及び電流の収集ヘッドをダイカストマシン又は射出成形機のサーボ制御装置の電源入力線に接続し、 サブステップ1.2において、生産しようとする製品のダイカスト又は射出成形金型及び製品の半製品をダイカストマシン又は射出成形機の可動ダイプレートに取り付け、 サブステップ1.3において、型開き速度の選択可能区間[Vmin,Vmax]からN個の点(Nが2よりも大きな整数であり、Nが大きければ大きいほど良くなる)を均一に取って、隣接する2つの点の間の間隔を
とし、 サブステップ1.4において、最大型開き圧力及び選択可能区間[Vmin,Vmax]におけるN個の点の速度パラメータvを型開きパラメータとし、金型を低圧型開きの終了位置から型締めの開始位置まで等速で押動し、この2つの位置が既知パラメータであり、 サブステップ1.5において、電力分析器により各回の試験に用いる型開きパラメータに対応する電力曲線を測定及び記録して、電力曲線の横座標を時間座標から位置座標に変換し、変換方式は位置座標が時間を速度に乗じた結果に等しいことであり、且つ型開き電力をP(v,l)と記し、vが型開き速度であり、lが金型の位置である。
【0018】
型締め電力及び型締め速度、金型位置の関係式を取得するステップは上記した型開き電力及び型開き速度、金型位置の関係式を取得するステップとほぼ同じであり、相違点は、ステップ1.2において鋳造又は射出成形製品の半製品を金型に置く必要がなく、ステップ1.4において金型を型締めの開始位置から低圧型締めの開始位置まで等速で押動し、ステップ1.5において型締め電力をP(v,l)と記すことにある。
【0019】
ステップ2では、型開き過程及び型締め過程のそれぞれに対して、振動衝撃を制約としてエネルギー消費及び時間の最小化を目標とする最適化モデルを確立する。
【0020】
型開き過程に対して、振動衝撃を制約としてエネルギー消費、時間を最小化する多目標最適化モデルを確立するステップは、 型開きパラメータの最適化された既知パラメータを取得し、該既知パラメータが高速及び低速の型開きストロークLと、低圧型開きの速度v lpとを含むサブステップ2.1と、 型開き過程の高速速度v 、低速速度v 、高速型開きストローク係数α(高速型開きストロークを高速及び低速型開き総ストロークで割った結果)を最適化変数とし、
にするサブステップ2.2と、 エネルギー消費、時間をいずれも最小化する目的関数を確立し、目標の関数表現式は、以下の式1に示され、
【数1】
ここで、Tが型開き時間であり、Eが型開きエネルギー消費であり、mm1が金型及び製品の半製品の総重量であるサブステップ2.3と、 振動衝撃を最適化モデルの制約とし、制約の表現式は、以下の式2に示され、
【数2】
ここで、θzkが型開きに許容できる最大振動値であるサブステップ2.4と、を含む。
【0021】
型締め過程に対して、振動衝撃を制約としてエネルギー消費、時間を最小化する多目標最適化モデルを確立するステップは、 型締めパラメータの最適化された既知パラメータを取得し、該既知パラメータが高速及び低速の型締めストロークLと、低圧型締めの速度v lpとを含むサブステップ2.1と、 型締め過程の高速速度v 、低速速度v 、高速及び低速の切り替え位置係数α(高速型締めストロークを高速及び低速型締め総ストロークで割った結果)を最適化変数とし、
にするサブステップ2.2と、 エネルギー消費、時間をいずれも最小化する目的関数を確立し、目標の関数表現式は、以下の式3に示され、
【数3】
ここで、Tが型締め時間であり、Eが型締めエネルギー消費であり、mが金型の重量であるサブステップ2.3と、 振動衝撃を最適化モデルの制約とし、制約の表現式は、以下の式4に示され、
【数4】
ここで、θzhが型締めに許容できる最大振動値であるサブステップサブ2.4と、を含む。
【0022】
ステップ3では、ヒューリスティックアルゴリズムによって型開き過程及び型締め過程のそれぞれの多目標最適化モデルを解いて、型開きパラメータのパレート最適解セット及び型締めパラメータのパレート最適解セットを出力する。
【0023】
型開き過程に対して、本発明が非支配的ソート遺伝的アルゴリズム(NSGA-II)によってその最小型開き時間及びエネルギー消費の双目標最適化モデルを解くことについて、具体的なステップは、 二値符号化方式を用いて高速速度、低速速度、高速及び低速の切り替え位置係数を符号化するサブステップ3.1と、 制約条件を満たす解をM個含む親個体群をランダムに生成して、親個体群におけるM個の解の型開き時間及びエネルギー消費を計算し、Mが1つの偶数であるサブステップ3.2と、 親個体群のM個の解を非支配関係に応じて昇順にソートし、ソート後の解を複数の非支配レベルに分けて、各非支配レベルで各解の混雑度を計算するサブステップ3.3と、 バイナリトーナメントによって親個体群のM個の解からM/2組の解を選択して中間個体群を構成し、各組が2つの解を含み、且つそれぞれ中間個体群の各組の2つの解に対して交差及び変動操作を行って、制約条件を満たす解をM個含む子孫を生成するサブステップ3.4と、 子孫におけるM個の解の型開き時間及びエネルギー消費を計算して、親個体群のM個の解及び子個体群のM個の解を非支配関係に応じて昇順にソートし、ソート後の解を複数の非支配レベルに分けて、各非支配レベルで各解の混雑度を計算し、ソートレベルが低くて混雑度が大きな上位M個の解を新たな親とするサブステップ3.5と、 設定された反復回数に達するかどうかを判断し、YESの場合、ステップ3.5における新たな親におけるM個の解を復号してパレート最適解セットを出力し、NOの場合、反復回数に達するまでサブステップ3.5における新たな親におけるM個の解を入力としてサブステップ3.4~3.6を順次実行するサブステップ3.6と、を含む。
【0024】
型締め過程に対して、同様に非支配的ソート遺伝的アルゴリズムによって最小型締め時間及びエネルギー消費の双目標最適化モデルを解き、具体的なステップは型開き過程の多目標最適化モデルを解く場合と同じである。
【0025】
実施例 以下、1つのダイカストマシンにより1つのオフィスチェアのベース製品を生産する型開閉パラメータ最適化過程を本発明の実施例とし、具体的なステップは以下のとおりである。
【0026】
ステップ1では、電力分析器をダイカストマシンのサーボ制御装置の電源入力線に接続し、ベースを生産する金型及びベース半製品を可動金型に取り付け、ダイカストマシンの型開き圧力を100barとして設定し、型開き速度が50mm/sを始点とし、500mm/sに達するまで1回当たりに10mm/s増加し、異なる速度で金型を低圧型開きの終了位置から型締めの開始位置まで等速で押動する電力を測定し、次にベースを取り出して、ダイカストマシンの型開き圧力を100barとして設定し、型開き速度が50mm/sを始点とし、500mm/sに達するまで1回当たりに10mm/s増加し、異なる速度で金型を型締めの開始位置から低圧型締めの開始位置まで等速で押動する電力を測定し、最後に取得された異なる速度における型開き電力曲線及び型締め電力曲線の座標を時間に変換する。
【0027】
ステップ2では、型開閉パラメータを最適化するために必要なパラメータを取得し、該パラメータは型開きの高速及び低速総ストローク625mm、低圧型開きの速度100mm/s、型締めの高速及び低速総ストローク565mm、低圧型締めの速度100mm/s、金型の重量4520kg、ベース半製品の重量2.5kg、型開閉の最大及び最小速度500mm/s及び50mm/s、θzk及びθzhの300kg.m/sを含む。
【0028】
ステップ3では、型開閉の多目標最適化モデルの目的関数、制約条件、変数、非支配的ソート遺伝的アルゴリズムなどをMatlabソフトウェアで実行可能なプログラムに符号化し、非支配的ソート遺伝的アルゴリズムのパラメータを設定し、該パラメータが個体群の数100、交差率0.6、変動率0.05、最大反復回数500回を含み、且つ解くプログラムを実行して型開き及び型締めのパレート最適フロンティアパラメータを取得する。
【0029】
ステップ4では、プロセスの作業者はダイカストマシンが他の周辺機器と協働する実際の状況に応じてパレート最適解セットからラインバランスを満足できるだけでなくエネルギー消費も最も低いパラメータを選択する。本実施例に係るダイカストによりベースを生産する最適な型開きパラメータは高速速度300mm/s、低速速度150mm/s、高速型開きストローク係数0.6であり、最適な型締めパラメータは高速速度320mm/s、低速速度190mm/s、高速型開きストローク係数0.8であり、この組の最適なパラメータは企業が以前に用いたパラメータよりも型開閉時間を10%短縮し、エネルギー消費を8%節約することを実現する。
【0030】
それに対応して、本発明の出願は電子機器を更に提供し、1つ又は複数のプロセッサを備え、メモリが1つ又は複数のプログラムを記憶するためのものであり、前記1つ又は複数のプログラムが前記1つ又は複数のプロセッサにより実行されるとき、前記1つ又は複数のプロセッサに上記ダイカストマシン及び射出成形機の型開閉パラメータ最適化方法を実現させる。図4は本発明の実施例に係るダイカストマシン及び射出成形機の型開閉パラメータ最適化方法を用いる、データ処理能力を有する任意の機器のハードウェア構造図であり、図4に示されるプロセッサ、内部メモリ及びネットワークインターフェース以外に、実施例における装置が位置するデータ処理能力を有する任意の機器は一般的に該データ処理能力を有する任意の機器の実際の機能によって、他のハードウェアを更に備えてもよく、これについて詳細な説明は省略する。
【0031】
それに対応して、本発明の出願はコンピュータ読み取り可能なストレージ媒体を更に提供し、コンピュータ命令が記憶され、該命令がプロセッサにより実行されるとき、上記ダイカストマシン及び射出成形機の型開閉パラメータ最適化方法を実現する。前記コンピュータ読み取り可能なストレージ媒体は上記いずれか1つの実施例に記載のデータ処理能力を有する任意の機器の内部記憶ユニット、例えばハードディスク又は内部メモリであってもよい。前記コンピュータ読み取り可能なストレージ媒体は外部記憶装置、例えば前記機器に配置されるプラグインハードディスク、スマートメディアカード(SMC、Smart Media Card)、SDカード、フラッシュカード(Flash Card)などであってもよい。更に、前記コンピュータ読み取り可能なストレージ媒体はデータ処理能力を有する任意の機器の内部記憶ユニットだけでなく、外部記憶装置も備えてもよい。前記コンピュータ読み取り可能なストレージ媒体は前記コンピュータプログラム並びに前記データ処理能力を有する任意の機器に必要な他のプログラム及びデータを記憶するためのものであり、既に出力したデータ又は出力しようとするデータを一時的に記憶するためのものであってもよい。
【要約】      (修正有)
【課題】本発明は省エネ向けのダイカストマシン及び射出成形機の型開閉パラメータ最適化方法を提供する
【解決手段】試験によってそれぞれダイカストマシン又は射出成形機の型開き電力及び型開き速度、金型位置の関係式、並びに型締め電力及び型締め速度、金型位置の関係式を取得するステップ1と、型開き過程及び型締め過程のそれぞれに対して、振動衝撃を制約としてエネルギー消費及び時間の最小化を目標とする最適化モデルを確立するステップ2と、型開き過程及び型締め過程のそれぞれの最適化モデルを解いて、型開きパラメータ及び型締めパラメータのパレート最適解セットを出力するステップ3と、を含む。本発明は型開閉パラメータと型開閉時間、エネルギー消費、振動衝撃との複雑な関係を効果的にデカップリングでき、且つ最適なパラメータを迅速に探して型開閉過程におけるパラメータ最適化の難題を高品質に解決できる。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4