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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】電気回路遮断装置
(51)【国際特許分類】
   H01H 39/00 20060101AFI20241127BHJP
【FI】
H01H39/00 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023164112
(22)【出願日】2023-09-27
(62)【分割の表示】P 2020080298の分割
【原出願日】2020-04-30
(65)【公開番号】P2023165880
(43)【公開日】2023-11-17
【審査請求日】2023-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000204044
【氏名又は名称】太平洋精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中谷 剛尚
(72)【発明者】
【氏名】横井 洋也州
(72)【発明者】
【氏名】近藤 祐介
【審査官】片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-212612(JP,A)
【文献】中国実用新案第210403648(CN,U)
【文献】特開2019-029152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、当該ハウジング内に配置され、電気回路の一部を構成する被切断部と、前記ハウジングの第一端部側に配置される動力源と、を備えた、電気回路遮断装置であって、
前記被切断部を内部に挿通させて収容すると共に、内部に消弧材を充填した第一消弧空間を備える移動体を備え、
前記ハウジングは、前記移動体を、前記第一端部と、当該第一端部の反対側の第二端部との間で移動させることができる移動体収容部を備え、
前記移動体は、前記動力源によって、前記第一端部から前記第二端部に向けて移動しつつ、当該移動体の第一消弧空間内に収容された前記被切断部を切断するように構成されており、
前記ハウジングは、前記移動体が移動して停止した際に、切断されて分離される前記被切断部の分離片の端部に面するように配置され、内部に消弧材を充填した拡張消弧空間を備え、
前記拡張消弧空間は、前記移動体が移動した際に、分離されずに残る前記被切断部の本体部を、当該本体部の周囲を前記消弧材で満たされるように収容しており、
前記拡張消弧空間内に収容された前記消弧材は、前記移動体が移動して前記被切断部を切断し始めてから、前記移動体が停止するまでの間、切断されて分離される前記被切断部の分離片の端部に面しており、
前記第一消弧空間と前記拡張消弧空間は、互いに連通すると共に、前記消弧材が充填されており、
前記移動体の下部と前記移動体収容部の底部との間には、前記消弧材が充填されてない、ことを特徴とする電気回路遮断装置。
【請求項2】
前記移動体は、当該移動体の一部が前記移動体収容部の一部に、直接又は間接的に当接して停止することを特徴とする請求項1に記載の電気回路遮断装置。
【請求項3】
前記被切断部が複数の分離片を備え、
前記移動体が移動して停止した際に、
少なくとも一つの前記分離片の端部が、前記拡張消弧空間に面し、
残りの前記分離片の端部が、前記ハウジングに設けられ、内部に消弧材を充填した中間拡張空間に面することを特徴とする請求項1又は2に記載の電気回路遮断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、主に自動車等の電気回路に使用することができる電気回路遮断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電気回路遮断装置は、自動車等に搭載されている電気回路や、電気回路に接続されている各種電装品を保護するために用いられてきた。詳しくは、電気回路に異常が生じた場合に、電気回路遮断装置は電気回路の一部を切断して、物理的に電気回路を遮断していた。
【0003】
この電気回路遮断装置は様々な種類があり、例えば、特許文献1に示す電気回路遮断装置は、ハウジングと、当該ハウジング内に配置され、電気回路の一部を構成する被切断部と、前記ハウジングの第一端部側に配置される動力源と、前記被切断部を内部に挿通させて収容すると共に、内部に消弧材を充填した第一消弧空間を備える移動体を備え、前記ハウジングは、前記移動体を、前記第一端部と、当該第一端部の反対側の第二端部との間で移動させることができる移動体収容部を備え、前記移動体は、前記動力源によって、前記第一端部から前記第二端部に向けて移動しつつ、当該移動体の第一消弧空間内に収容された前記被切断部を切断するように構成されている。そして、移動体を移動させることで、切断されて分離される被切断部の分離片と、分離されずにハウジング内に残る被切断部の本体部とを遠くに引き離し、両者間に発生するアークを物理的に引き延ばすことで、アークを遮断している。
【0004】
しかしながら、発生するアークを物理的に引き延ばして消弧しているため、移動体を移動させる距離を長く確保する必要があり、その分、移動体を収容する移動体収容部とハウジングの全長も長くなる。その結果、電気回路遮断装置全体が大型化する虞があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-212612
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本願発明は、上記問題に鑑み、移動体を移動させる距離を短くして、小型化が可能な電気回路遮断装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明の電気回路遮断装置は、ハウジングと、当該ハウジング内に配置され、電気回路の一部を構成する被切断部と、前記ハウジングの第一端部側に配置される動力源と、を備えた、電気回路遮断装置であって、前記被切断部を内部に挿通させて収容すると共に、内部に消弧材を充填した第一消弧空間を備える移動体を備え、前記ハウジングは、前記移動体を、前記第一端部と、当該第一端部の反対側の第二端部との間で移動させることができる移動体収容部を備え、前記移動体は、前記動力源によって、前記第一端部から前記第二端部に向けて移動しつつ、当該移動体の第一消弧空間内に収容された前記被切断部を切断するように構成されており、前記ハウジングは、前記移動体が移動して停止した際に、切断されて分離される前記被切断部の分離片の端部に面するように配置され、内部に消弧材を充填した拡張消弧空間を備えることを特徴とする。
【0008】
上記特徴によれば、移動体が移動して停止した状態において、切り離された分離片の端部が拡張消弧空間に面するように構成し、分離片の端部と本体部との間に発生するアークを拡張消弧空間内の消弧材によって効果的に消弧している。そのため、従来のように、アークを物理的に引き延ばして消弧するために、移動体を移動させる距離を長く確保する必要がないため、本願発明では、移動体を移動させる距離を短くして、電気回路遮断装置の小型化を可能としたのである。
【0009】
本願発明の電気回路遮断装置は、前記移動体は、当該移動体の一部が前記移動体収容部の一部に、直接又は間接的に当接して停止することを特徴とする。
【0010】
上記特徴によれば、移動体の一部が移動体収容部の一部に当接して、より確実に停止できるようにしたため、電圧や動力源の火薬量の変動等によって、移動体の移動距離や、移動後の分離片の状態(本体部から切り離された距離や、拡張消弧空間との位置関係)にバラツキが生じにくく、電気回路遮断装置の消弧性能や品質が安定するのである。
【0011】
本願発明の電気回路遮断装置は、前記被切断部が複数の分離片を備え、前記移動体が移動して停止した際に、少なくとも一つの前記分離片の端部が、前記拡張消弧空間に面し、残りの前記分離片の端部が、前記ハウジングに設けられ、内部に消弧材を充填した中間拡張空間に面することを特徴とする。
【0012】
上記特徴によれば、分離片の端部と本体部との間に発生するアークを拡張消弧空間及び中間拡張空間内の消弧材によって効果的に消弧し、移動体を移動させる距離を短くして、電気回路遮断装置の小型化が可能となる。
【発明の効果】
【0013】
上記のように、本願発明の電気回路遮断装置によれば、移動体を移動させる距離を短くして、小型化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(a)は、本願発明の実施形態1に係る電気回路遮断装置のハウジングを構成する下側ハウジングの全体斜視図、(b)は、下側ハウジングの平面図である。
図2】(a)は、本願発明の実施形態1に係る電気回路遮断装置のハウジングを構成する上側ハウジングを上面側から見た斜視図、(b)は、上側ハウジングを下面側から見た斜視図、(c)は、上側ハウジングの底面図である。
図3】(a)は本願発明の実施形態1に係る電気回路遮断装置の移動体の斜視図、(b)は移動体の正面図である。
図4】(a)は本願発明の実施形態1に係る電気回路遮断装置の被切断部の斜視図、(b)は被切断部の平面図である。
図5】本願発明の実施形態1に係る電気回路遮断装置の分解斜視図である。
図6図5に示す電気回路遮断装置が組み立てられた状態でのA-A断面図である。
図7図6に示す状態から移動体が移動した様子を示す断面図である。
図8】(a)は、本願発明の実施形態2に係る電気回路遮断装置の被切断部の全体斜視図、(b)は、被切断部の平面図である。
図9】本願発明の実施形態2に係る電気回路遮断装置の分解斜視図である。
図10図9に示す電気回路遮断装置が組み立てられた状態でのB-B断面図である。
図11図10に示す状態から移動体が移動した様子を示す断面図である。
【符号の説明】
【0015】
300 ハウジング
310 移動体収容部
320 第一端部
330 第二端部
400 被切断部
420 分離片
422 端部
430 本体部
500 移動体
P 動力源
X1 第一消弧空間
X2 拡張消弧空間
M 消弧材
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本願発明の各実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下で説明する実施形態における電気回路遮断装置の各部材の形状や材質等は、一例を示すものであって、これらに限定されるものではない。
【0017】
<実施形態1>
まず、本願発明の実施形態1に係るハウジング300を構成する下側ハウジング100を、図1に示す。図1(a)は、下側ハウジング100の全体斜視図、図1(b)は、下側ハウジング100の平面図である。この下側ハウジング100は、合成樹脂で形成された略四角柱体であり、内部に円筒状の下側移動体収容部110と、当該下側移動体収容部
110の周囲に略環状に形成された外側消弧空間X3を備える。この下側移動体収容部110は、下側ハウジング100の上面120から下面130に向けて延びており、後述する移動体500を収容できるように構成されている。また、下側移動体収容部110の内面111は、移動体500が内部を上下方向にスライドできるように、滑らかな曲面となっている。さらに、下側移動体収容部110の上端の一部は切り欠かれて、下側移動体収容部110の内部と連通する拡張消弧空間X2が形成されている。なお、拡張消弧空間X2は、下側移動体収容部110の上端の一部を切り欠いて凹状になっているが、これに限定されない。拡張消弧空間X2は、後述するように移動体500が移動して停止した後に、切り離された分離片420の端部422に面するのであれば、ハウジング300の任意の箇所に設けることができる。
【0018】
また、外側消弧空間X3は、下側ハウジング100の上面120から下面130に向けて延びる溝の形状をしており、消弧材を収納できるように構成されている。なお、外側消弧空間X3は、下側移動体収容部110の周囲を囲むように略環状に形成されているが、これに限定されることはない。
【0019】
また、下側ハウジング100の上面120には、後述する被切断部400の本体部430を載置できるように、平坦な載置部121を備える。この載置部121は、上面120の両側に相対する様に配置されると共に、拡張消弧空間X2と直線状に並んでいる。そのため、載置部121は、直線状に延びる被切断部400を両側で支えると共に、被切断部400の両側の本体部430の下方には拡張消弧空間X2が配置されることになる。また、下側ハウジング100の上面120の四隅には連結孔B1が形成されており、この連結孔B1は、後述する上側ハウジング200の連結孔B2と上下に一致するように配置されている。
【0020】
次に、本願発明の実施形態1に係るハウジング300を構成する上側ハウジング200を図2に示す。図2(a)は、上側ハウジング200を上面220側から見た斜視図、図2(b)は、上側ハウジング200を下面230側から見た斜視図、図2(c)は、上側ハウジング200の底面図である。
【0021】
この上側ハウジング200は、合成樹脂で形成された略四角柱体であり、図1に示す下側ハウジング100と対をなすものである。そして、内部に円筒状の上側移動体収容部210と、当該上側移動体収容部210の周囲に略環状に形成された外側消弧空間X3を備える。この上側移動体収容部210は、上側ハウジング200の下面230から上面220に向けて延びており、後述する移動体500を収容できるように構成されている。また、上側移動体収容部210の内面211は、移動体500が内部を上下方向にスライドできるように、滑らかな曲面となっている。この上側移動体収容部210は、後述するように、下側ハウジング100の下側移動体収容部110と上下に配置されて、直線状に延びる移動体収容部310を構成するものであり、上側移動体収容部210の内径は下側移動体収容部110の内径と一致している。そのため、移動体500は、移動体収容部310内を上下に滑らかに移動できるのである。さらに、上側移動体収容部210の下端の一部は切り欠かれて、上側移動体収容部210の内部と連通する上側拡張空間X4が形成されている。
【0022】
また、外側消弧空間X3は、溝の形状をしており、消弧材を収納できるように構成されている。なお、上側ハウジング200の外側消弧空間X3は、下側ハウジング100の外側消弧空間X3と対応する位置に配置されており、下側ハウジング100と上側ハウジング200を連結固定すると、下側ハウジング100の外側消弧空間X3と上側ハウジング200の外側消弧空間X3とが互いに連通するようになる。
【0023】
また、上側ハウジング200の下面230は、後述する被切断部400の本体部430の形状に合わせて窪んだ凹部231を備える。この凹部231は、下面230の両側に相対する様に配置されると共に、上側拡張空間X4と直線状に並んでいる。また、凹部231は、下側ハウジング100の載置部121と対応する位置に配置されている。そのため、凹部231は、下側ハウジング100の載置部121上に載置された被切断部400の本体部430に上方から嵌め合わせられる。そして、被切断部400の本体部430に上側ハウジング200の載置部121を嵌め合わせると、被切断部400の両側の本体部430の上方には上側拡張空間X4が配置されることになる。
【0024】
さらに、上側ハウジング200の上面220の一部には、動力源Pが収容される動力源収納部221が形成されている。そして、動力源収納部221の底面側には、上側移動体収容部210の上面と連通する連結孔222が形成されている。詳しくは、後述するが、動力源収納部221内に収容された動力源Pから生じた空気圧等の動力が、連結孔222を介して上側移動体収容部210内に伝わり、上側移動体収容部210内の移動体500を移動させるのである。なお、下側ハウジング100及び上側ハウジング200は、合成樹脂で形成された略四角柱体となっているが、これに限定されず、絶縁性が高く、使用に耐えうる強度を備えていれば、他の材料で任意の形状に構成してもよい。
【0025】
では次に、本願発明の実施形態1に係る移動体500を、図3に示す。図3(a)は移動体500の斜視図、図3(b)は移動体500の正面図である。この移動体500は、上部560と下部520を備えた、合成樹脂製の略円柱体である。移動体500の外径は移動体収容部310の内径以下となっており、さらに、移動体500の外面530は移動体収容部310の内面形状に対応する滑らかな表面となっているので、移動体500は、移動体収容部310の内側を隙間無く滑らかにスライドできる。
【0026】
また、移動体500の略中央には、一方の外面530から反対側の外面530まで、つまり、移動体500を正面から背面まで貫通する貫通部540が設けられており、この貫通部540は、下壁541、側壁542、側壁543、及び上壁544で囲まれている。そして、この下壁541、側壁542、側壁543、及び上壁544で囲まれて、外面530より内側に窪んだ空間が、第一消弧空間X1となっている。さらに、この第一消弧空間X1には、後述する被切断部400の分離片420を挿通させて収容することができる。また、この第一消弧空間X1内には、後述する消弧材を充填させるので、第一消弧空間X1内に収容された被切断部400の分離片420の周囲を、消弧材で完全に囲むことができるようになっている。なお、移動体500は、合成樹脂製の円柱形状をしているが、これに限定されず、絶縁性が高く、使用に耐えうる強度を備えていれば、他の材料で任意の形状としてもよい。
【0027】
では次に、本願発明の実施形態1に係る電気回路遮断装置600が遮断する電気回路の一部を構成する被切断部400を、図4に示す。図4(a)は被切断部400の斜視図、図4(b)は被切断部400の平面図である。この被切断部400は、電気回路と電気的に接続するために全体が金属製の導電体となっており、両端に電気回路と接続するための本体部430と、略中央に切断されて分離される分離片420とを備える。本体部430の端部には、電気回路と接続する際に利用する接続孔410が形成されている。また、分離片420の中央及び両端には、切り込み421及び貫通孔424が設けられ、幅が局所的に狭くなった溶断部425が形成されている。この溶断部425は、電気回路中に異常電流が流れた際に、発熱して溶断する部分となっている。このように、被切断部400は、ヒューズ機能を備えている。なお、被切断部400はヒューズ機能を備えているが、これに限定されず、被切断部400はヒューズ機能を備えず、電気回路遮断装置600によって所定の第二過電流が流れた際に切断される機能のみを有するようにしてもよい。
【0028】
では次に、本願発明の電気回路遮断装置600の組み立て方について、図5を参照して説明する。この図5は、電気回路遮断装置600の分解斜視図を示している。
【0029】
まず、移動体500の第一消弧空間X1に被切断部400の本体部430を挿入し、被切断部400の分離片420が移動体500の第一消弧空間X1内に収容されるまで被切断部400を挿通させてゆく。
【0030】
次に、被切断部400が収容された移動体500を下部520側から下側ハウジング100の下側移動体収容部110に挿入する。すると、被切断部400の本体部430が、下側ハウジング100の載置部121上に載置され、移動体500が下側移動体収容部110内に挿入された状態で保持されることになる。次に、上側ハウジング200の上側移動体収容部210内に移動体500の上部560が挿入されるように、上側ハウジング200を下側ハウジング100の上から嵌め合わせてゆく。そして、上側ハウジング200を下側ハウジング100に向けて押し込んでゆけば、上側ハウジング200の凹部231が、被切断部400の本体部430に嵌め合わせられる。そして、上下に並んだ連結孔B1及び連結孔B2を連結具等によって連結固定することで、下側ハウジング100及び上側ハウジング200から成るハウジング300は、内部に被切断部400及び移動体500を収容した状態で組み付けられる。
【0031】
さらに、上側ハウジング200の動力源収納部221には、動力源Pが取り付けられている。この動力源Pは、電気回路中に異常な電流が流れるのを検知した際に外部から異常信号が入力されると、例えば、動力源Pの内部の火薬を爆発させて、その爆発による空気圧によって、移動体500を移動体収容部310内で瞬時に押し出して移動させるものである。なお、動力源Pは、移動体500を移動させる動力を発生させるものであれば、火薬を用いた動力源に限られず、その他の既知の動力源を用いても良い。
【0032】
では次に、本願発明の実施形態1に係る電気回路遮断装置600の内部構造について、図6を参照して説明する。この図6は、図5に示す電気回路遮断装置600が組み立てられた状態でのA-A断面図である。
【0033】
図6に示すように、移動体500は、直線状に並んだ下側移動体収容部110及び上側移動体収容部210から構成される移動体収容部310内部に、収容されている。この移動体収容部310は、ハウジング300の第一端部320から、第一端部320の反対側の第二端部330まで延びている。そして、移動体500は、動力源Pが配置された第一端部320側に配置されているので、移動体収容部310の第二端部330側は空洞になっている。そのため後述するように、移動体500は、分離片420を切断して分離しながら、第二端部330側へと移動できるのである。また、移動体500の上部560は、動力源収納部221内に取り付けられた動力源Pに隣接している。そして、後述するように動力源P内の火薬の爆発による空気圧は、移動体500の上部560へと伝達される。
【0034】
また、図6に示すように、第一消弧空間X1、拡張消弧空間X2、外側消弧空間X3、及び上側拡張空間X4には、粒状の消弧材Mが収納されている。そして、被切断部400の分離片420は移動体500の第一消弧空間X1内部を挿通して収容されているので、被切断部400の溶断部425の周囲は、消弧材Mで覆われた状態となっている。また、被切断部400の本体部430は、上方の上側拡張空間X4と下方の拡張消弧空間X2に隣接しており、本体部430の上下面は、上側拡張空間X4と拡張消弧空間X2内の消弧材Mで覆われた状態となっている。
【0035】
なお、実際の電気回路遮断装置600では、第一消弧空間X1、拡張消弧空間X2、外側消弧空間X3、及び上側拡張空間X4全体に、消弧材Mが充填されているが、図6及び図
7では、図面上の見やすさを考慮して、消弧材Mの一部しか表示していない。また、第一消弧空間X1、拡張消弧空間X2、外側消弧空間X3、及び上側拡張空間X4には、珪砂等の粒状の固体の消弧材Mを充填しているが、これに限定されず、アークを効果的に消弧できるのであれば、液体状やその他の形態の消弧材を各空間に充填してもよい。
【0036】
そして、電気回路中に所定の異常電流が流れた場合は、電気回路に接続された被切断部400の溶断部425が発熱して溶断する。そのため、電気回路は遮断されて、過電流から保護されるのである。さらに、被切断部400の溶断部425の溶断時や溶断後に、残った溶断部425周辺からアークが発生しても、溶断部425周辺の消弧材Mによってアークは効果的に消弧されるのである。
【0037】
このように、電気回路中に所定の異常電流が流れた場合は、ヒューズによって構成されている被切断部400が溶断して電気回路を遮断している。一方で、電気回路に、ヒューズでは遮断できないような異常電流が流れた場合は、図7で説明するように、電気回路遮断装置600によって、被切断部400自体を物理的に切断することになる。なお、ヒューズを溶断させて遮断すべき異常な過電流と、電気回路遮断装置600によって被切断部400自体を物理的に切断して遮断すべき異常な過電流は、ヒューズの定格や動力源Pへ入力する異常信号の設定等を変えることで、任意に変更可能である。そのため、以下の説明では、ヒューズによって構成されている被切断部400が溶断する時の過電流を、所定の第一過電流と呼び、電気回路遮断装置600によって、被切断部400自体を物理的に切断する時の過電流を、所定の第二過電流と呼ぶ。そして、第一過電流及び第二過電流は、任意の値に設定することができる。
【0038】
では、図7に示すように、電気回路に所定の第二過電流が流れる等の異常が検知された場合には、異常信号が動力源Pに入力され、動力源P内の火薬が爆発する。すると、その爆発による空気圧が瞬時に移動体500の上部560に伝わる。すると、この空気圧によって、移動体500は第一端部320から第二端部330に向けて勢いよく吹き飛ばされ、移動体収容部310内を第二端部330に向けて瞬時に移動する。そして、移動体500の下部520が移動体収容部310の第二端部330側の底部311に当接し、移動体500がそれ以上移動しないように停止した状態となる。
【0039】
すると、移動体500が、第二端部330に向けて押し出される力によって、分離片420を切断して本体部430から分離する。具体的には、第一消弧空間X1内部には消弧材Mが充填されているため、移動体500が移動すると、分離片420も周辺の消弧材Mと共に、第二端部330に向けて瞬時に強い力で押し出されて、本体部430から切断されるのである。そして、分離片420は、移動体500と共に第二端部330へ向けて移動し、本体部430から切り離される。なお、第一消弧空間X1内の消弧材Mは、珪砂等の粒状の固体の消弧材に限定されず、分離片420を切断できるように、移動体500が移動した際の力を分離片420に伝達できる材料であれば、任意の形態の任意の素材からなる消弧材を採用することができる。
【0040】
そして、図7に示すように、移動体500が移動した後の停止した状態では、拡張消弧空間X2が、切断されて分離された分離片420の端部422に面するように構成されている。そのため、分離されずにハウジング300に残る両側の本体部430間に高電圧がかかり、分離片420の端部422と本体部430との間にアークYが発生しても、当該アークYは拡張消弧空間X2内の消弧材Mによって効果的に消弧され、電気回路に電流が流れてしまうことを防止できるのである。
【0041】
また、従来では、移動体を移動させる距離を長く確保して、分離片420と本体部430との間に発生するアークを、物理的に引き延ばして効果的に消弧していた。一方、本願
発明によれば、移動体500が移動して停止した状態において、切り離された分離片420の端部422が拡張消弧空間X2に面するように構成し、分離片420の端部422と、分離されずにハウジング300内に残る本体部430との間に発生するアークYを拡張消弧空間X2内の消弧材Mによって効果的に消弧している。そのため、従来のように、アークを物理的に引き延ばして消弧するために、移動体を移動させる距離を長く確保する必要がないため、本願発明では、移動体を移動させる距離を短くして、電気回路遮断装置600の小型化を可能としたのである。
【0042】
例えば、図6及び図7に示すように、本願発明の電気回路遮断装置600では、移動体500が移動する距離H1は、約2.0mm(ミリメートル)となっている。一方、従来では、アークを物理的に引き延ばすために、移動体が移動する距離は、約14.0mm必要であった。そして、本願発明では、距離H1が約2.0mmと短くても、切断された分離片420の端部422が拡張消弧空間X2に面するように構成されているので、アークを物理的に引き延ばさなくても、拡張消弧空間X2内の消弧材Mによって効果的にアークを消弧できるのである。そして、移動体500が移動できる距離H1を短く設定できるので、移動体収容部310の全長が短くなり、その結果、電気回路遮断装置600全体が小型化できるのである。
【0043】
また、移動体500を移動させる距離H1が短くなるので、動力源Pの火薬量を減らすことができる。その結果、火薬の爆発による衝撃を低減できるため、ハウジング300の壁厚を薄くすることができ、電気回路遮断装置600の製造コストを削減することが出来る。
【0044】
また、本願発明では、移動体500を移動させる距離H1を短くして、移動体500の下部520が移動体収容部310の底部311により確実に到達して停止できるようにした。そのため、電圧や動力源Pの火薬量の変動等によって、移動体500が移動体収容部310の底部311に到達できず、底部311の手前で停止することを防止でき、その結果、移動体500の移動距離や、移動後の分離片420の状態(本体部430から切り離された距離や、拡張消弧空間X2との位置関係)にバラツキが生じにくく、電気回路遮断装置600の消弧性能や品質が安定するのである。
【0045】
なお、移動体500の下部520が移動体収容部310の底部311に直接当接して、移動体500を停止させているが、これに限定されない。例えば、移動体500の下部520が、移動体収容部310の底部311に設けられた衝撃吸収材に当接して、すなわち、移動体500の下部520が移動体収容部310の底部311に、衝撃吸収材を介して間接的に当接して、移動体500を停止させてもよい。また、この衝撃吸収材の他にも、移動体500の移動距離を短くするために、移動体500の下部520と移動体収容部310の底部311との間に配置する任意の中間部材を用いてもよい。
【0046】
さらに、移動体500の下部520が移動体収容部310の底部311に当接して、移動体500を停止させているが、これに限定されない。例えば、移動体500の外面530に設けられた当接孔に、移動体収容部310の内面に設けられた当接突起が入り込んで当接することで、移動体500を停止させてもよい。その他にも、移動体500を停止させることができるのであれば、移動体500と移動体収容部310のそれぞれの任意の箇所に、移動体500を停止させる構造を設けることができる。このように、移動体500の一部と、移動体収容部310の一部とが直接又は間接的に当接して、移動体500を確実に停止させることができるため、移動体500の移動距離や、移動後の分離片420の状態(本体部430から切り離された距離や、拡張消弧空間X2との位置関係)にバラツキが生じにくく、電気回路遮断装置600の消弧性能や品質が安定するのである。
【0047】
さらに、本願発明では、移動体500を移動させる距離H1を短くしたことで、分離片420を切断した直後から、切り離された分離片420の端部422が拡張消弧空間X2に面するように構成し、分離片420の端部422と本体部430との間に発生するアークYを拡張消弧空間X2内の消弧材Mによって消弧している。そのため、分離片420の切断直後に生じる突発的な逆起電力を低減することができる。その結果、遮断時の負荷を低減でき、更に電気回路遮断装置600を構成する樹脂を減らして電気回路遮断装置600を小型化できる。
【0048】
なお、電気回路遮断装置600が遮断すべき所定の第二過電流の値として、約50A~1000Aが想定される場合、移動体500が移動する距離H1は、2~5mm(ミリメートル)が好ましい。距離H1が1.5mm以下であると、分離片420を本体部430から切り離しにくくなり、距離H1が6mm以上であると、移動体収容部310が大型化するだけでなく、従来のようにアークを物理的に引き延ばして消弧することになるため、突発的な逆起電力が生じやすくなる。しかし、上記の値は被切断部400の設計によって変わるため参考値であり、これに限定されるものではない。
【0049】
また、図7に示すように、移動体500が移動した後の停止した状態では、分離片420の端部422は、拡張消弧空間X2に面しており移動体収容部310の内面には面していないので、分離片420の端部422からアークが発生しても、移動体収容部310の内面がアークによって炭化することを防止出来る。
【0050】
さらに、拡張消弧空間X2は本体部430の下方に面するように配置されているので、両側の本体部430間に電圧がかかり、本体部430から分離片420の端部422へ向けてアークが発生しても、当該アークは拡張消弧空間X2内の消弧材Mによって効果的に消弧され、電気回路に電流が流れてしまうことを効果的に防止できるのである。
【0051】
さらに、拡張消弧空間X2は、移動体500が移動する上下方向に沿って広がっているので、切断時に分離片420の端部422が上下に多少曲がってしまっても、拡張消弧空間X2は分離片420の端部422に面することができ、拡張消弧空間X2内の消弧材Mが端部422から発生するアークを効果的に消弧することができる。
【0052】
また、外側消弧空間X3は、拡張消弧空間X2の外側に隣接すると共に、本体部430の下面に面しているので、本体部430と分離片420の端部422との間に延びるアークYが拡張消弧空間X2を超えて広がる場合は、外側消弧空間X3内の消弧材MがアークYを消弧する。また、上側拡張空間X4は、本体部430の上面に面しているので、本体部430から上方に向けて発生するアークを、上側拡張空間X4内の消弧材Mが消弧することができる。
【0053】
<実施形態2>
では、次に図8から図11では、実施形態2に係る本願発明の電気回路遮断装置600Aについて、説明する。なお、実施形態2に係る電気回路遮断装置600Aの構成は、実施形態1に係る電気回路遮断装置600の構成と、被切断部400Aが複数の分離片420Aを備えている点、及び、被切断部400Aの大きさに対応して、ハウジング300Aと移動体500Aの大きさを変更した点で異なるが、その他の構成は、実施形態1に係る電気回路遮断装置600の構成と基本的に同一なので、同一の構成については詳細な説明を省略する。
【0054】
まず、本願発明の実施形態2に係る電気回路遮断装置600Aが遮断する電気回路の一部を構成する被切断部400Aを、図8に示す。図8(a)は被切断部400Aの斜視図、
図8(b)は被切断部400Aの平面図である。この被切断部400Aは、電気回路と電気的に接続するために全体が金属製の導電体となっており、両端に電気回路と接続するための本体部430Aと、略中央に切断されて分離される分離片420Aを4つ備える。
【0055】
具体的には、各分離片420Aの中央及び両端には、切り込み421A及び貫通孔424Aが設けられ、幅が局所的に狭くなった溶断部425Aが形成されている。この溶断部425Aは、電気回路中に異常電流が流れた際に、発熱して溶断する部分となっており、ヒューズ機能を備えている。そして、2つの分離片420Aが、本体部430Aを挟んで上下に相対するように配置されている。さらに、相対する分離片420Aの組が、被切断部400Aの短手方向に2つ並列に配置されている。そのため、両端の本体部430Aには、計4つの分離片420Aが接続されており、ヒューズ機能を備えた分離片420Aを増やした分だけ、被切断部400Aの定格を大きくすることが出来る。なお、被切断部400Aは、計4つの分離片420Aを備えているが、これに限定されず、被切断部400Aは、上下に相対する2つの分離片420Aのみを備えることや、被切断部400Aは、上下に間隔をあけて重なる3つの分離片420Aを備えるなど、2つ以上の任意の数の分離片420Aを任意の配置で本体部430A間に備えることが出来る。
【0056】
では次に、本願発明の電気回路遮断装置600Aの組み立て方について、図9を参照して説明する。この図9は、電気回路遮断装置600Aの分解斜視図を示している。
【0057】
まず、移動体500Aの第一消弧空間X1Aに被切断部400Aの本体部430Aを挿入し、被切断部400Aの分離片420Aが移動体500Aの第一消弧空間X1A内に収容されるまで被切断部400Aを挿通させてゆく。なお、移動体500Aは、被切断部400Aの4つの分離片420Aを収容できるように略直方体形状に構成されており、移動体500Aの第一消弧空間X1Aも4つの分離片420Aを収容できるように拡張されている。
【0058】
次に、移動体500Aを下部520A側から下側ハウジング100Aの下側移動体収容部110Aに挿入する。すると、被切断部400Aの本体部430Aが、下側ハウジング100Aの載置部121A上に載置され、移動体500Aが下側移動体収容部110A内に挿入された状態で保持されることになる。なお、下側ハウジング100Aは、実施形態1にかかる下側ハウジング100と基本的な構成は同一であるが、移動体500Aの形状に対応するように、下側移動体収容部110Aを略直方体形状に拡張したこと、さらに、下側移動体収容部110Aの拡張に伴って外側消弧空間X3を設けていない点で、実施形態1にかかる下側ハウジング100と異なる。
【0059】
次に、上側ハウジング200Aの上側移動体収容部210A内に移動体500Aの上部560Aが挿入されるように、上側ハウジング200Aを下側ハウジング100Aの上から嵌め合わせてゆく。そして、上側ハウジング200Aを下側ハウジング100Aに向けて押し込んでゆけば、上側ハウジング200Aの凹部231Aが、被切断部400Aの本体部430Aに嵌め合わせられる。そして、上下に並んだ連結孔B1及び連結孔B2を連結具等によって連結固定することで、下側ハウジング100A及び上側ハウジング200Aから成るハウジング300Aは、内部に被切断部400A及び移動体500Aを収容した状態で組み付けられる。
【0060】
なお、上側ハウジング200Aは、実施形態1にかかる上側ハウジング200と基本的な構成は同一であるが、移動体500Aの形状に対応するように、上側移動体収容部210Aを略直方体形状に拡張したこと、さらに、上側移動体収容部210Aの拡張に伴って外側消弧空間X3を設けない点で、実施形態1にかかる上側ハウジング200と異なる。また、下側ハウジング100A及び上側ハウジング200Aは、外側消弧空間X3を設けて
いないが、これに限定されず、任意で外側消弧空間X3を設けてもよい。
【0061】
では次に、本願発明の実施形態2に係る電気回路遮断装置600Aの内部構造について、図10を参照して説明する。この図10は、図9に示す電気回路遮断装置600が組み立てられた状態でのB-B断面図である。なお、実際の電気回路遮断装置600Aでは、第一消弧空間X1A、拡張消弧空間X2A、外側消弧空間X3A、上側拡張空間X4A、及び中間拡張空間X5A全体に、消弧材Mが充填されているが、図10及び図11では、図面上の見やすさを考慮して、消弧材Mの一部しか表示していない。
【0062】
図10に示すように、移動体500Aは、直線状に並んだ下側移動体収容部110A及び上側移動体収容部210Aから構成される移動体収容部310A内部に、収容されている。この移動体収容部310Aは、ハウジング300Aの第一端部320Aから、第一端部320Aの反対側の第二端部330Aまで延びている。そして、移動体500Aは、動力源Pが配置された第一端部320A側に配置されているので、移動体収容部310Aの第二端部330A側は空洞になっている。
【0063】
また、図10に示すように、第一消弧空間X1A、拡張消弧空間X2A、外側消弧空間X3A、及び上側拡張空間X4Aには、粒状の消弧材Mが収納されている。そして、被切断部400Aの分離片420Aは移動体500Aの第一消弧空間X1A内部を挿通して収容され、上下に相対する分離片420Aの間にも消弧材Mが充填されている。そのため、被切断部400Aの各溶断部425Aの周囲は、消弧材Mで覆われた状態となっている。また、被切断部400Aの本体部430Aと分離片420Aとが連結されている上下の各連結部分431Aは、それぞれ上方の上側拡張空間X4Aと下方の拡張消弧空間X2Aに隣接しており、上側拡張空間X4Aと拡張消弧空間X2A内の消弧材Mで覆われた状態となっている。また、上下の連結部分431Aは、移動体収容部310Aの外側のハウジング300Aの中間拡張空間X5A内に配置されており、上下の連結部分431Aの間に位置するこの中間拡張空間X5Aにも消弧材Mが充填されている。
【0064】
そして、図11に示すように、電気回路に所定の第二過電流が流れる等の異常が検知された場合には、異常信号が動力源Pに入力され、動力源P内の火薬が爆発する。すると、その爆発による空気圧が瞬時に移動体500Aの上部560Aに伝わり、移動体500Aは第一端部320Aから第二端部330Aに向けて勢いよく吹き飛ばされ、移動体収容部310A内を第二端部330Aに向けて瞬時に移動する。そして、移動体500Aの下部520Aが移動体収容部310Aの第二端部330A側の底部311Aに当接し、移動体500Aがそれ以上移動しないように停止した状態となる。
【0065】
すると、第一消弧空間X1A内部には消弧材Mが充填されているため、移動体500Aが移動すると、各分離片420Aも周辺の消弧材Mと共に、第二端部330Aに向けて瞬時に強い力で押し出されて、各分離片420Aは本体部430Aから切断されるのである。そして、各分離片420Aは、移動体500Aと共に第二端部330Aへ向けて移動し、本体部430Aから切り離される。なお、第一消弧空間X1A内では、上下に相対する分離片420Aの間にも消弧材Mが充填されているので、各分離片420Aは互いの距離を維持したまま切り離される。また、本体部430Aと分離片420Aとが連結されている上下の各連結部分431Aは、切り離されずに本体部430側に残っている。
【0066】
そして、図11に示すように、移動体500Aが移動した後の停止した状態では、切断されて分離された下側の分離片420Aの端部422Aが、拡張消弧空間X2に面するように構成されている。そのため、両側の本体部430A間に高電圧がかかり、下側の分離片420Aの端部422Aと本体部430Aの連結部分431Aとの間にアークYaが発生しても、当該アークYaは拡張消弧空間X2A内の消弧材Mによって効果的に消弧され
、電気回路に電流が流れてしまうことを防止できるのである。また、移動体500Aが移動した後の停止した状態では、切断されて分離された上側の分離片420Aの端部422Aが、連結部分431A間の中間拡張空間X5Aに面するように構成されている。そのため、両側の本体部430A間に高電圧がかかり、上側の分離片420Aの端部422Aと本体部430Aの連結部分431Aとの間にアークYbが発生しても、当該アークYbは中間拡張空間X5A内の消弧材Mによって効果的に消弧され、電気回路に電流が流れてしまうことを防止できるのである。
【0067】
また、従来では、移動体を移動させる距離を長く確保して、分離片420Aと本体部430Aとの間に発生するアークを、物理的に引き延ばして効果的に消弧していた。特に、切断された上側の分離片420Aの端部422Aと下側の連結部分431Aとの間に発生するアークを引き延ばすために、上側の分離片420Aが下側の連結部分431Aからより遠くに離れるように、移動体を移動させる距離を長くする必要があった。一方、本願発明によれば、移動体500Aが移動して停止した状態において、切り離された下側の分離片420Aの端部422Aが拡張消弧空間X2Aに面するように構成し、切り離された上側の分離片420Aの端部422Aが連結部分431A間の中間拡張空間X5Aに面するように構成したため、分離片420Aの端部422Aと本体部430Aとの間に発生するアークを拡張消弧空間X2A及び中間拡張空間X5A内の消弧材Mによって効果的に消弧している。そのため、従来のように、アークを物理的に引き延ばして消弧するために、移動体を移動させる距離を長く確保する必要がないため、本願発明では、移動体を移動させる距離を短くして、電気回路遮断装置600Aの小型化を可能としたのである。
【0068】
なお、被切断部400Aが、上下に間隔をあけて重なる3つ以上の分離片420Aを備える場合は、移動体500Aが移動して停止した状態において、少なくとも1つの分離片420Aの端部422Aが拡張消弧空間X2Aに面するように構成し、その他の残りの分離片420Aの端部422Aが、各連結部分431A間の中間拡張空間X5Aに面するように構成してもよい。これにより、分離片420Aの端部422Aと本体部430Aとの間に発生するアークを拡張消弧空間X2A及び中間拡張空間X5A内の消弧材Mによって効果的に消弧し、移動体を移動させる距離を短くして、電気回路遮断装置600Aの小型化が可能となる。
【0069】
また、本願発明の電気回路遮断装置は、上記の実施例に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲、実施形態の範囲で、種々の変形例、組み合わせが可能であり、これらの変形例、組み合わせもその権利範囲に含むものである。
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図11