(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】鋏
(51)【国際特許分類】
B26B 13/20 20060101AFI20241127BHJP
【FI】
B26B13/20
(21)【出願番号】P 2023182057
(22)【出願日】2023-10-23
【審査請求日】2024-07-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390025678
【氏名又は名称】株式会社サボテン
(74)【代理人】
【識別番号】100165755
【氏名又は名称】藤田 典彦
(72)【発明者】
【氏名】石田 昌宏
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/060732(WO,A1)
【文献】特開2010-178984(JP,A)
【文献】実開昭53-123684(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2005/0217118(US,A1)
【文献】特開平11-273812(JP,A)
【文献】特開昭58-200228(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26B13/00-17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の柄体と、前記柄体に挿入固定された一対の刃体と、前記刃体を交差位置で回動可能に軸支された鋏であって、
前記柄体を閉じた閉状態で各々対向する位置に磁石を収容する磁石収容部
と、前記柄体に
、前記磁石収容部に隣接して開口
する磁石を取り出すための道具を挿入可能な案内口と、前記磁石収容部に連通する連通路
と、を有し、
前記磁石収容部は、その内部底面側に磁石を吸着して収容保持する吸着部と空洞部分とを有し、前記案内口から挿入した道具を前記空洞部分に案内可能としたことを特徴とする鋏。
【請求項2】
刃体は、切断可能な刃部と柄体に挿入される柄体挿入部とを有し、吸着部は前記柄体に挿入された部位が磁石収容部内に露出する刃体露出部分であることを特徴とする請求項
1に記載の鋏。
【請求項3】
磁石収容部の周囲を立設した突出縁を有することを特徴とする請求項
2に記載の鋏。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁石を用いた鋏に関する発明である。
【0002】
鋏を用いて切断対象物の切断を行う場合、鋏の柄体の指掛孔に指を掛け、鋏の刃体を開く方向に力を加えると鋏が開放し、切断対象物に鋏の刃体を当接し、鋏の刃体を閉じる方向に指の力を加える。鋏の切断動作には力を要するため、採果用に用いる農業従事者など何度も切断を繰り返す場合に負担になっていた。
【0003】
上記の理由から負担を軽減するために磁力を利用した鋏が提案されていた。特許文献1に記載の先行技術は、磁石の吸着力や反発力で負担軽減をするものであり、磁石の着脱についても開示されている。しかし、特許文献1では磁石の凸部をケースの凹部に係合することで磁石をケースに取り付けることができ、磁石をケースの開口部に引き出すことで、磁石とケースの係合を解除し、取り外すもので、係合解除が必ずしも簡易なものではなかった。すなわち、磁石をケースに凹凸で係合されている磁石を取り外すことを前提としており、容易に磁石の取り外しを行えるものではなかった。特に、農業従事者のなかには磁石の反発力により鋏が開動作を行うものが好まれているが、自らの好みに応じた反発力とするために磁石を容易に取り換えることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
そこで、本発明は上記特許文献1の発明の問題点を鑑み、柄体に配置された磁石の磁力により開動作や閉動作を補助する鋏について、磁石を簡易な構成で交換が容易に行える磁石付き鋏を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明にかかる鋏は、一対の柄体と、前記柄体に挿入固定された一対の刃体と、前記刃体を交差位置で回動可能に軸支された鋏であって、前記柄体を閉じた閉状態で各々対向する位置に磁石を収容する磁石収容部と、前記柄体に、前記磁石収容部に隣接して開口する磁石を取り出すための道具を挿入可能な案内口と、前記磁石収容部に連通する連通路と、を有し、前記磁石収容部は、その内部底面側に磁石を吸着して収容保持する吸着部と空洞部分とを有し、前記案内口から挿入した道具を前記空洞部分に案内可能としたことを特徴とするものである。
【0008】
また、刃体は、切断可能な刃部と柄体に挿入される柄体挿入部とを有し、吸着部は前記柄体に挿入された部位が磁石収容部内に露出する刃体露出部分であることを特徴とすることが好ましい。
【0009】
また、磁石収容部の周囲を立設した突出縁を有することを特徴とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明により、閉状態で各々対向する位置に磁石収容部を設けることで、磁石の反発力により鋏の開動作を補助することが可能となり、磁着する作用を利用して閉動作を補助することも可能になる。この誘導作用を適宜変化させたり、磁力の強さを好みのものに変更するために磁石収容部に連通する案内口に千枚通し等の棒状器具を挿入することで、磁石を容易に取り外して交換することが可能となる。
また、磁石収容部に吸着部と空洞部分とを分け、案内口からの連通路を空洞部分に通じるようにすることで、簡易な構成で磁石を磁石収容部に収容保持することができるのみならず、棒状器具を案内口から空洞部分へ連通されているために、棒状器具で磁石の裏側から容易に引き出すことが可能となる。これにより簡易な構成で磁石の保持と引き出しが容易となる。棒状器具を挿入して磁石の裏側に至るようにして取り外しを容易にすることが可能となる。
【0012】
請求項2に記載の発明により、吸着部を刃体露出部分とすることで、刃体を利用して磁石を吸着して保持することができ、簡易な構成で磁石を磁石収容部に収容保持することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明により、磁石収容部に突出縁が形成されることにより、容易に磁石を磁石収容部へと取付時にガイドすることができるのみならず、鋏の開閉に伴って2つの磁石が接触して破損することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態の鋏を示すものであって、(a)は全体正面図、(b)は(a)のZ―Z線断面図である。
【
図3】本実施形態の一対の柄体のうち
図1の上側の柄体を対向面側から見た一部拡大底面図であって、(a)は磁石Aを取り付けた状態、(b)は磁石Aを取り外した状態である。
【
図4】
図3のY―Y線断面図であり、(a)は磁石を取り付けた状態、(b)は磁石を取り外した状態である。
【
図5】
図3のX―X線断面図であり、(a)は磁石を取り付けた状態、(b)は磁石を取り外した状態である。
【
図6】柄体から磁石Aを取り外す状態を説明するものであって左側は部分拡大斜視図、右側は部分横断面図であって、(a)は棒状器具を挿入する前の段階、(b)は棒状器具を案内口に挿入した段階、(c)は棒状器具により磁石を取り外す状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の磁石付き鋏の実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に記載する説明は一つの実施形態によるものであり、これによって本発明が限定されるものではない。
【0016】
図1に示すように、鋏1は、―対の柄体2、2と、柄体2、2に刃体挿入部32を挿入して固定する一対の刃体3、3と、前記刃体3、3を交差位置で回動可能に軸部Xにより軸支されたものである。柄体2、2を閉じた閉状態で各々対向する位置に磁石Aを収容する一対の磁石収容部40、40を設け、一対の磁石収容部40、40に隣接して内部に連通する案内口45(
図2,3参照)を有するものである。案内口45から磁石Aを取り出すための道具を挿入可能としている。
【0017】
図2に示すように、柄体2は、樹脂製のカバー部材であって、長手方向の一端が開口し、他端が閉塞した中空の刃体収容部21と、刃体収容部21の開口端部22に内側に突出し、刃体3の係合段部34を係合する係合部23を備え、刃体3を取り付ける。尚、開口端部22はどちらかに向かって傾斜する形状としてもよい。柄体2は刃体収容部21から一方に略円形状又は略楕円形状に延長する指掛部24を有し、使用者が指掛部24に指を通し、外側及び内側に力を加えることで磁石付き鋏1の開閉が可能となる。
【0018】
刃体3、3は、細長く鋭利な形状で、金属製で且つ磁性体のある部材であって、先端側の刃付けがなされた刃部31、31と、柄体2、2に挿入して固定される柄体挿入部32、32とからなり、刃部31、31と柄体挿入部32、32との間の中央部分に軸支するための連結孔33が形成され、2つで一対の刃体3、3が螺子等の連結具Gにより連結孔33で各々が回動可能に軸支されることで、各々の刃体3、3が開閉する。これにより、切断対象物を切断することが可能である。
【0019】
鋏1の凹状の磁石収容部40、40について説明する。
図2乃至
図5に示すように、磁石収容部40、40は、柄体2、2の対向面(内側面)2a、2aから箱型、略台形状に凹んだものである。磁石収容部40、40は、柄体2、2の対向面2a、2aから対向する柄体2、2に向かって突出する突出縁41、41が形成され、かかる突出縁41、41で各々囲まれる部分が凹むように形成される。突出縁41、41があることで、鋏の閉動作において磁石A、Aが直接接触して破損することを防止できるのみならず、磁石A、Aを磁石収容部40、40へと挿入する際にもガイドとして機能して挿入を容易にしている。
【0020】
磁石収容部40、40は、手前側に内部に磁石Aを収容するための磁石収容空間42に加え、磁石収容空間42の奥側、底面側には吸着部43、43と空洞部分44、44が形成される(
図4、
図5参照)。吸着部43、43は磁石を吸着し、磁石収容空間42に収容された磁石Aの収容状態を保持するものであるが、本実施形態の吸着部43、43は、刃体3、3の柄体挿入部32、32が磁石収容部40、40内に露出している刃体露出部分32a、32aとしている。すなわち、磁石収容部40、40の凹みは柄体2、2の刃体収容部21、21にまで至っているため、刃体収容部21、21内に挿入された刃体3、3の柄体挿入部32、32の一部が磁石収容部40、40内に露出しており、刃体露出部分32a、32aとしている。かかる刃体露出部分32a、32aを磁石収容部40、40の吸着部43、43としている。磁石収容部40、40の磁石収容空間42、42に磁石A、Aを収容したとき、吸着部43、43(刃体露出部分32a、32a)と磁着して、磁石A、Aの収容状態が保持される。
【0021】
本実施形態の吸着部43、43は刃体露出部分32a、32aを利用したものであるが、本実施形態に限定されず、刃体露出部分32a、32aと磁石A、Aとの間に薄い壁を有するものであったり、刃体とは別に磁石吸着のための磁性体を配置するものであってもよい。
【0022】
磁石収容部40、40の底面部分には吸着部43、43とともに空洞部分44、44を有する。本実施形態の空洞部分44、44は一方の柄体2では吸着部43の正面側にあり、他方の柄体2では吸着部43の背面側にある。鋏1とは一対の刃体3、3が交差するものであり、例えば
図1の上側の柄体2に挿入する刃体3は柄体2の正面側(図面上手前側)に挿入され、
図1の下側の柄体2に挿入する刃体3は柄体2の背面側(図面上奥側)に挿入されるように、刃体3、3のうち柄体挿入部31、31は面一とはならずに、正面側と背面側にずれが生じる(
図1(b)参照)。
【0023】
図3に示すように、磁石収容部40、40の内部では、一方の柄体挿入部32の露出部分32aである吸着部43は磁石収容部40の正面側に位置しており、背面側では開放された空洞部分44を形成する。他方の柄体挿入部32の露出部分32aである吸着部43は磁石収容部40の背面側に位置しており、正面側では開放された空洞部分44を形成する。
【0024】
磁石収容部40、40は周囲に突出縁41、41を有するところ、突出縁41、41は一部が切り欠かれるよう案内口45、45が設けられている。案内口45、45は傾斜して磁石収容部40、40に連通しているところ、より具体的には案内口45、45の連通先は磁石収容部40、40の吸着部43、43ではなく、空洞部分44、44に連通するようにしている。つまり、案内口45、45から傾斜する連通路46、46は磁石収容部40、40の空洞部分44、44にまで至っている。
【0025】
また、空洞部分44、44が存在することで千枚通し等の棒状機具B(
図6参照)を磁石Aの裏側に当接させることが可能である。連通路46、46は、案内口45、45から空洞部分44、44へ導くためのガイドであり向かって下っている傾斜面としている。
【0026】
刃体3、3を柄体2、2に取り付け、磁石A、Aを柄体2、2の磁石収容部40、40に取り付ける方法について説明する。まず、刃体3、3の柄体挿入部32、32を柄体2、2の内部の刃体収容部21、21に挿入する。このとき、柄体2、2の係合部23に刃体の係合段部34が係合されることで、刃体3の胴体のみを挿入するストッパーとしている。これにより、刃体3、3と柄体2、2の取り付けが完了するが、この状態で磁石収容部40、40内に刃体挿入部32の一部である刃体露出部分32a、32aが露出した状態となる。
【0027】
磁石A、Aを磁石収容部40、40の磁石収容空間42、42に収容する。このとき、磁石収容部40、40の底面側であって一方では正面側、他方では背面側にある吸着部43、43(刃体露出部分32a、32a)と収容された磁石A、Aが磁着することで、磁石Aが磁石収容部40、40への収容が完了する。
【0028】
これにより、磁石収容部40、40は、鋏が閉状態(
図1の状態)において磁石A、Aの反発力で開状態にすることを補助し、誘導することができる。これにより、農業従事者など鋏を頻繁に使用するものにとっては楽に鋏1を継続使用することができる。また、磁石収容部40、40に収容される磁石の吸着力を利用して鋏1を開状態から閉状態にすることを補助し、誘導させることも可能である。
【0029】
上記が磁石を用いた鋏の使用であるが、使用者にとっては磁石A、Aの反発力を利用するか、吸着力を利用するかを選択したい場合もあり、いずれか一方のみを利用する場合であっても適度な反発力にするために磁石を選択する必要が生じる。このときに磁石収容部40、40に収容されている磁石A、Aを取り外して交換や位置変更をする必要がある。
【0030】
上記磁石収容部40、40から磁石A、Aを取り外す方法について説明する。
図6には斜視方向と横断面において磁石を取り外す工程を記載している。千枚通し等の棒状器具Bを案内口45、45から挿入する。このとき、連通路46、46のガイド面が空洞部分44、44に案内しているので、空洞部分44、44に向かって千枚通し等の棒状器具Bが到達可能となる。案内された千枚通し等の棒状器具Bは空洞部分44、44に到達し、磁石Aの裏側に当接させて引き出すことで磁石収容部40、40から取り出すことができる。上記の取り付け動作を再度行うことで磁力の異なる磁石の取り付けが可能となる。対向する側の磁石Aも同様の取外しとなる。
【符号の説明】
【0031】
1…鋏、2…柄体、3…刃体、
21…刃体収容部、22…開口端部、23…係合部、24…指掛部
31…刃部、32…柄体挿入部、32a…刃体露出部(吸着部)、33…連結孔、
40…磁石収容部、41…突出縁、42…磁石収容空間、43…吸着部、
44…空洞部分、45…案内口、46…連通路、
A…磁石、B…棒状器具、X…軸部。
【要約】 (修正有)
【課題】柄体に配置された磁石の磁力により開動作や閉動作を補助する鋏について、磁石を簡易な構成で交換が容易に行える鋏を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明にかかる鋏は、一対の柄体2、2と、柄体2、2に挿入固定された一対の刃体3、3と、刃体3、3を交差位置で回動可能に軸支された鋏であって、柄体2、2を閉じた閉状態で各々対向する位置に磁石を収容する磁石収容部を設け、柄体2、2に開口して磁石収容部に連通する案内口45、45を有することを特徴とする鋏。
【選択図】
図2