(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】傘収納装置
(51)【国際特許分類】
A47G 25/12 20060101AFI20241127BHJP
A45B 25/28 20060101ALI20241127BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20241127BHJP
B60R 7/12 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
A47G25/12 L
A45B25/28
B60N2/90
B60R7/12
(21)【出願番号】P 2021158700
(22)【出願日】2021-09-29
【審査請求日】2023-09-08
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】519346930
【氏名又は名称】石川 洋行
(72)【発明者】
【氏名】石川 洋行
【審査官】葛谷 光平
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-008160(JP,U)
【文献】実開昭56-174344(JP,U)
【文献】実開昭52-088136(JP,U)
【文献】実開昭60-078639(JP,U)
【文献】特開平10-043031(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-2198484(KR,B1)
【文献】実開昭60-173440(JP,U)
【文献】特開2006-230872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 25/12
A45B 25/28
B60N 2/90
B60R 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
斜面と、
挿入時の前記斜面上に立てて
置かれた状態の傘より前記斜面を下った所の上方にあり、
前記傘側面に近設された当接部である縦長平面と、
前記縦長平面下端から続く上面と、
前記斜面下端から続く下面と、
前記上面と前記下面を繋ぐ下側面と、
前記斜面、下面、下側面、上面、縦長平面全ての端面に接する本体裏面、本体前面と、を具備し、
前記当接部直下は前記斜面であり、
前記斜面上方は前記当接部以降前記斜面を上った側が開放され、
使用者が前記斜面上に傘を立てて
置き、もしくは前記斜面上空に傘を立てた状態で、手を放した時、
前記傘先端が前記斜面上を滑り、前記傘側面が前記当接部である縦長平面に当接した後、前記傘先端は前記斜面上を滑りつつ、前記当接部である縦長平面上の当接点を中心として前記傘上部は前記斜面に近づくように回動して、遂には、前記傘は前記当接部を離れ、前記斜面に倒れて収納され
、且つ、前記傘が立った状態から前記斜面と平行な角度まで任意の位置で使用者が手を放せば自動的に前記斜面に収納される、傘収納装置。
【請求項2】
前記斜面上に寝かされて収納されるべき傘の上方にあり、前記収納時の傘側面に近設された当接部であ
って、前記縦長平面と前記上面との間にある曲面と、
前記下面上に前記収納時の傘先端が当接する溝と、を具備し、
前記収納時の傘に前記斜面開放側水平方向に外力が加わった時、
前記収納時の傘は傘の柄が前記斜面から離れるように回動し、
前記傘側面が前記当接部である前記曲面に当接し、前記傘先端が前記溝の内壁に当接し、前記傘先端には前記当接部である前記曲面上の当接点を支点としたトルクが作用して、前記傘先端が前記溝の内壁を滑ろうとするも、前記傘先端と前記溝の内壁との摩擦力が働き、前記傘が外れにくい、請求項1記載の傘収納装置。
【請求項3】
前記斜面と前記下面の両方に接する曲面を具備し、
前記当接部直下は前記斜面に代えて前記曲面であ
り、
前記収納時の傘の柄を上方に持ち上げた時、
前記傘先端が途中で引っ掛かることなく前記下面、前記曲面上を滑り、取り出し位置まで移動して取り出すことが可能な、請求項1または2記載の傘収納装置。
【請求項4】
使用者が前記斜面上に立てて
置き、もしくは前記斜面上空に立てた状態で、手を放す位置である、前記傘挿入位置の前記本体前面に、上方に開放しているコの字状の穴を具備した、請求項1乃至3いずれか一項記載の傘収納装置。
【請求項5】
前記当接部が前記
本体前面から
本体裏面まで貫設された丸棒である、請求項1乃至
4いずれか一項記載の傘収納装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傘収納装置に関し、特に自動車その他乗り物に搭載される傘収納装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の自動車用傘収納装置は傘が長尺物であるため、ドアに直立させて収納すると、傘上部が窓側に飛び出してしまい、運転者の視界を一部塞ぐという問題があった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記問題を解決するためにはドアトリムに傘を斜めに収納すればよい。これを満たす先行技術文献はある(例えば、特許文献2参照)。しかし、上記文献では、収納装置は単純な筒形状であるため、傘を収納する際には、上記筒の軸線上に傘を挿入する他なく、ドアが開いた状態でしか操作できない。よって、操作する際利用者が雨に濡れてしまうという問題があるし、開いたドアは不安定であるため、片手でドアを支えながらの操作になり煩雑であるし、また、傘が定位置まで押し込まれなかった場合、ドアを閉めるときにはみ出した傘をボディとの間に挟んでしまい、双方を傷める可能性もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決する、即ち運転者の視界を確保しつつ、ドアを閉めた状態で間便に傘の出し入れの操作が可能で、且つ急ブレーキ時にも傘が外れにくい傘収納装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、傘収納装置であって、斜面と、挿入時の斜面上に立てて置かれた状態の傘より斜面を下った所の上方にあり、前記傘側面に近設された当接部である縦長平面と、縦長平面下端から続く上面と、斜面下端から続く下面と、上面と下面を繋ぐ下側面と、斜面、下面、下側面、上面、縦長平面全ての端面に接する本体裏面、本体前面とを具備し、当接部直下は斜面であり、斜面上方は当接部以降斜面を上った側が開放されたものである。
【0008】
このように構成すると、使用者が斜面上に傘を立てて置き、もしくは斜面上空に傘を立てた状態で、手を放した時、傘先端が斜面上を滑り、傘側面が当接部である縦長平面に当接した後、傘先端は斜面上を滑りつつ当接部である縦長平面上の当接点を中心として傘上部は斜面に近づくように回動して、遂には、傘は当接部を離れ、斜面に倒れて収納され、且つ、傘が立った状態から斜面と平行な角度まで任意の位置で使用者が手を放せば自動的に斜面に収納される。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1記載の発明の構成において、斜面上に寝かされて収納されるべき傘の上方にあり、収納時の傘側面に近設された当接部であって、縦長平面と上面との間にある曲面と、下面上に収納時の傘先端が当接する溝とを具備したものである。
【0010】
このように構成すると、収納時の傘に斜面開放側水平方向に外力が加わった時、収納時の傘は傘の柄が斜面から離れるように回動し、傘側面が当接部である曲面に当接し、傘先端が溝の内壁に当接し、傘先端には当接部である曲面上の当接点を支点としたトルクが作用して、傘先端が溝の内壁を滑ろうとするも、傘先端と溝の内壁との摩擦力が働き、傘が外れにくい。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1または2記載の発明の構成において、斜面と下面の両方に接する曲面を具備し、当接部直下は斜面に代えて曲面であるものである。
【0012】
このように構成すると、収納時の傘の柄を上方に持ち上げた時、傘先端が途中で引っ掛かることなく下面、曲面上を滑り、取り出し位置まで移動して取り出すことが可能になる。
【0013】
なお、取り出し位置とは、斜面上に立てて挿入される傘の挿入位置と同じ位置である。具体的には、当接部直下の平面上、あるいはその平面から繋がる斜面上の範囲を表しており、その範囲の下端は当接部と上記挿入時の傘側面との当接点を平面上に鉛直投影した点である。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1乃至3いずれか一項記載の発明の構成において、使用者が斜面上に立てて置き、もしくは斜面上空に立てた状態で、手を放す位置である、傘挿入位置の本体前面に、上方に開放しているコの字状の穴を具備したものである。
【0015】
このように構成すると、
図1に示すようにコの字状の穴が傘の挿入口であることが一目で分かる。
【0016】
請求項5の発明は、請求項1乃至4いずれか一項記載の発明の構成において、当接部が本体前面から本体後面まで貫設された丸棒であるものである。
【0017】
このように構成すると、本発明品を成形し易くなる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、請求項1記載の発明は、間便に収納操作が行える。
【0019】
請求項2記載の発明は、急ブレーキ時に収納された傘が外れにくい。
【0020】
請求項3記載の発明は、間便に取り出し操作が行える。
【0021】
請求項4記載の発明は、傘の出し入れする位置が明確で分かりやすい。
【0022】
請求項5記載の発明は、簡単に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1はこの発明の第1の実施の形態による傘収納装置の外観を示す斜視図である。(実施例1)
【
図3】
図3は
図2の下部、下面(13)付近を拡大した図である。
【
図4】
図4は
図1の正面図に挿入時の傘(41)を描いたものである。
【
図5】
図5は
図1の正面図に収納時の傘(51)を描いたものである。
【
図6】
図6は
図1のCーCラインの断面図に斜面(11)開放側水平方向に外力が加わった時の傘(61)を描いたものである。
【
図8】
図8は
図1の正面図に取り出し操作を開始した後の傘(71)を描いたものである。
【
図9】
図9は
図1のCーCラインの断面図に取り出し操作を開始した後の傘(71)を描いたものの下部を拡大した図である。
【
図10】
図10はこの発明の第2の実施の形態による傘収納装置の外観を示す斜視図である。(実施例2)
【
図11】
図11はこの発明の第3の実施の形態による傘収納装置の断面形状を示した図であって、第1の実施の形態による
図2に対応した図である。(実施例3)
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0024】
図1はこの発明の第1の実施の形態による傘収納装置の外観を示す斜視図であり、
図2は
図1のCーCラインの断面図であり、
図3は
図2の下部、下面(13)付近を拡大した図であり、
図4は
図1の正面図に挿入時の傘(41)を描いたものであり、
図5は
図1の正面図に収納時の傘(51)を描いたものである。
【0025】
これらの図を参照して、傘収納装置(1)は、斜面(11)と、斜面(11)上に立てて挿入されるべき傘(41)より斜面(11)を下った所の上方にあり、傘(41)側面に近設された縦長平面(12a)と、斜面(11)上に寝かされて収納されるべき傘(51)の上方にあり、傘(51)側面に近設され、
縦長平面(12a)の下端から続く上面(18)との間にある曲面(12b)と、本体下面(13)と、斜面(11)と下面(13)両方に接する曲面(14)と、下面(13)の収納時の傘先端(53)が当接する断面くさび型の溝(16)と、溝(16)は、
図3左側の平面(16a)と、
図3右側の斜面(11)と平行な平面(16b)とに分かれ、下面(13)図中左側端から上方に設けられた下側面(17)と、下面(13)の上方に上面(18)と、斜面後ろ側側面、つまり本体裏面(19)と、斜面前側側面、つまり本体前面(20)と、上記挿入時の傘(41)挿入位置の
本体前面(20)に
縦長平面(12a)を対向する一辺と成す上方に開放しているコの字状の穴(21)とで構成される。
【0026】
縦長平面(12a)は挿入時の傘(41)側面が当接する平面を差し、曲面(12b)は収納時の傘(51)に斜面(11)開放側水平方向に、つまり図中右側から左側に水平に外力が加わった時に傘側面が当接する部位であり、どちらも当接部(12)と呼んで妥当と捉えられ、今後もこのように呼称する。
【0027】
なお、この傘収納装置(1)で利用される傘の形態は、畳んでフック係止されていないもの、または畳んでフック係止されたものである。
【0028】
斜面(11)はこの傘収納装置(1)が自動車などの乗り物に使われる場合、設置される場所において収納時の傘(51)上部が窓に飛び出さない角度に設定される。
【0029】
本体前面(20)と本体裏面(19)間の水平距離、つまり本体内部奥行は、畳んでフック係止された傘の直径より若干広めに採っている。なぜならその状態は傘の断面積が一番大きいからである。フック係止されていない畳んだ傘は自由度が高く、空いてる方向へ広がるため、例えば図中上下に広がった場合、奥行側は狭まる。よって本体内部奥行を狭くしても収納できる。ただ、それでは畳んでフック係止された傘が収納できないため、上記の長さとした。
【0030】
断面くさび型平面の溝(16)の図中左側の平面(16a)は収納時の傘先端(53)の縁が当接し、図中右側の平面(16b)は斜面(11)開放側水平方向に外力が加わった時の傘先端の縁が当接する。より正確には、平面(16a)は平面(16b)と直角になるようにとってあり、収納時の傘先端(53)の縁が傘(51)の自重により両平面の間の曲面の最下端に当接しようとするが、収納時の傘(51)は斜面(11)に対して若干起きるようにして収納されるため、傘先端(53)は平面(16a)上端から下面(13)にかけての曲面に当接する。収納時の傘先端(53)が溝(16)に嵌るように平面(16a)の幅と、平面(16a)図中左側端と下側面(17)との間の隙間を調整する必要がある。
【0031】
溝(16)を断面くさび型としたのは、くさびの頂点に水を貯めやすいためである。この特許では触れていないがこの傘収納装置(1)には排水口を備えたい。水を一か所に集めれば排水もされやすい。もし一般的な断面コの字型にすれば最下面が平面であるため水が残りやすくなる。
【0032】
本体上方は上面(18)を除いて開放されている。傘(41)挿入後収納されるまでに傘(41)が動く範囲のためであるが、製造上の条件でもある。
【0033】
本体前面(20)上側は収納された傘(51)側面が隠れる程度の高さになっている。上に行くほど低くなっているのは、同じく製造上の条件からである。
【0034】
同じく製造上の条件により、上面(18)は上に行くに従い斜面(11)と離れていくように角度をを取らないといけない。最低でも斜面(11)と平行でなければならない。この傘収納装置(1)では上面(18)と斜面(11)は平行としている。
【0035】
同じく製造上の条件により、下側面(17)と当接部(12a)との水平距離はコの字状の穴(21)の対向する辺間の距離の半分としている。
【0036】
当接部(12)直下は曲面(14)である。
【0037】
図4は
図1の正面図に挿入時の傘(41)を描いたものである。
図5は
図1の正面図に収納時の傘(51)を描いたものである。
【0038】
これらの図を参照して、傘収納装置(1)に傘(41)が挿入され、収納されるまでのことを説明する。利用者は傘の柄(42)を持ち、片手で操作する。挿入時の傘(41)は立ててコの字状の穴(21)に横から入れられ、利用者によってそこから落とされ傘先端(43)が斜面(11)もしくは曲面(14)に当接する。または、そこから更に上から下へと挿入されてから傘先端(43)が斜面(11)もしくは曲面(14)に当接した後利用者が手を放す。
【0039】
次に自由になった傘はその自重により傘先端(43)が斜面(11)にあった時は斜面(11)から曲面(14)に、曲面(14)にあった時は曲面(14)を下方に滑って行く。次に傘側面が当接部である縦長平面(12a)に当接する。その後も傘先端(43)は曲面(14)を下方に滑り続ける。それは当接部である縦長平面(12a)上の当接点を中心にして傘上部が斜面(11)に近づくように回動することを意味する。そして遂には傘側面が当接部である縦長平面(12a)から離れ、傘先端(43)を中心として傘の柄(42)が斜面(11)に近づくように回動する。最終的には斜面(11)上に寝かされて収納される。
【0040】
その一方で傘先端(43)は曲面(14)を滑り降り、惰性で下面(13)を超え溝(16)に嵌る。
【0041】
以上のことにより、この傘収納装置(1)は間便に傘(41)を収納することができる。
【0042】
なお、斜面(11)と下面(13)に接する曲面(14)は、その半径を出来るだけ大きく採るとよい。傘先端(43)を確実に溝(16)に収納するためである。もし、小さすぎる場合は傘先端(43)は下面(13)上に留まってしまう可能性があり、それでは設計意図とは違う結果になる。
【0043】
また、傘(41)挿入後、傘先端(43)が斜面(11)もしくは曲面(14)に当接した瞬間に、傘中心軸の角度は鉛直である必要はない。もし、斜面(11)側、つまり図中右側に傾いて置かれた場合は当接部である縦長平面(12a)に傘側面が当接することなく斜面(11)側に倒れるのが自明の理である。もし、当接部である縦長平面(12a)側、つまり図中左側に傾いて挿入された場合は、傘(41)はその体制のまま側面が当接部である縦長平面(12a)に当接する。傘(41)の自重が重心に掛かると考えて、重心には、傘中心軸とは斜面開放側に直角方向の力と傘中心軸下向きの力とに分かれる。直角方向の力は傘(41)側面と当接部である縦長平面(12a)との当接点を支点としてトルクを発生し、てこの原理によって傘先端(43)には傘中心軸とは斜面(11)側に直角に力が掛かる。このトルクによる力で傘先端(43)は摩擦力を越えて斜面(11)もしくは曲面(14)を上る方向へ力を持つ。一方、もう一方の分力である下向きの力はそのまま傘先端(43)に働き、それも摩擦力を越えて斜面(11)もしくは曲面(14)を下る方向へ力を持つ。トルクによる上へ向かおうとする力よりも傘中心軸下向きの力による下へ向かおうとする力の方が強いため、傘先端(43)は斜面(11)もしくは曲面(14)を下る方向へ滑り、傘(41)は傘の柄(42)が斜面(11)に近づくように回動するため問題ない。なお、挿入時の傾きが大きいほどトルクによる上へ向かおうとする力が強まり、傘中心軸下向きの力による下へ向かおうとする力は弱まるため、傾けすぎには注意が必要である。
【0044】
図6は
図1のCーCラインの断面図に斜面(11)開放側水平方向に外力が加わった時の傘を描いたものである。
図7は
図6の下部を拡大した図である。
【0045】
これらの図を参照して、収納時の傘(51)に斜面(11)開放側水平方向に外力が加わった時のことを説明する。
【0046】
収納時の傘(51)の重心に斜面(11)開放側水平方向に外力が加わると考える。傘(51)は傘の柄(52)が斜面(11)から離れるように回動し、傘(61)側面が当接部(12b)に当接し、傘先端(63)の縁が溝(16)の平面(16b)に当接し、
図6、7の状態になる。
【0047】
傘重心(64)に掛かる力は、傘中心軸とは斜面開放側に直角方向の力と傘中心軸下向きの力とに分かれる。傘中心軸下向きの力は傘(61)を本体に押さえつける働きをする。直角方向の力は傘(61)側面と当接部(12b)との当接点を支点としてトルクを発生し、てこの原理によって傘先端(43)には傘中心軸とは斜面(11)側に直角に力が平面(16b)に掛かる。平面(16b)は斜面(11)と平行だから、この力の方向と平面(16b)との角度は90度から傘(61)中心軸と斜面(11)の成す角度を引いたもので、十分大きいため、摩擦力が大きく傘先端(63)は滑りにくい。つまり、溝(16)から外れにくい。なお、平面(16b)の水平と成す角度が小さくなるほど摩擦力が減少し外れやすくなる。
【0048】
万が一、傘先端(63)が溝(16)から外れて傘の柄(62)が斜面(11)から離れる方へ回動してしまっても、当接部である縦長平面(12a)で傘側面を広く受けるため本体から外れることはない。
【0049】
以上のことからこの傘収納装置(1)は急ブレーキ時に収納された傘(51)が外れにくい。
【0050】
図8は
図1の正面図に取り出し操作を開始した後の傘(71)を描いたものである。
図9は
図1のCーCラインの断面図に取り出し操作を開始した後の傘(71)を描いたものの下部を拡大した図である。
【0051】
これらの図を参照して、収納時の傘(51)を取り出す時のことを説明する。
【0052】
収納時の傘(51)を取り出すために斜面(11)に沿って傘(51)を引き上げる必要はない。もしそうすると、ドアを閉めた状態では取り出せず課題に反する。利用者は収納された傘(51)の柄を片手で引っ掛けるように軽く持ち、上方へ持ち上げる。傘の柄(72)の利用者の手を引っ掛けたところを中心に傘(71)はその自重により回ろうとする。そのため傘先端(73)は溝(16)の平面(16b)上に始まり、下面(13)、曲面(14)、最終的には斜面(11)上をなぞるようにして移動する。但し、取り出し位置が曲面(14)上であれば斜面(11)まで移動させずともよい。傘先端(73)が取り出し位置まで来たら、利用者は持ち上げるのを止め、傘先端(73)を中心として傘の柄(72)が斜面(11)から離れる方向へ回動させる。傘(71)が取り出し位置で立った状態になったら上方に引き上げ、コの字状の穴(21)から手前に引き出す。以上の操作は最初に傘の柄(72)を上方に引き上げることだけを意識すれば後は自然に出来てしまうものである。
【0053】
以上のことからこの傘収納装置(1)は間便に収納された傘(51)を取り出すことができる。
【0054】
なお、ここで曲面(14)がない場合を考えてみよう。下面(13)と斜面(11)との交点が極小さい曲面か角の場合である。この場合に上記のように取り出し操作をしていくと、傘先端(73)が交点に着いた時に利用者は抵抗を感じるはずである。すると利用者の心理としてその場で回動動作を始めたくなるものである。交点が取り出し可能な位置にない位置で回動動作をした場合、傘側面が当接部(12b)に当接し、傘先端(73)と斜面(11)との間に生じた摩擦力により引っ掛かってしまう可能性がある。その場合でも再び傘の柄(72)を上方へ引き上げれば傘先端(73)は滑り斜面(11)上を上るので取り出すことは可能であるが煩雑である。
【0055】
間便な取り出しのためには取り出し位置まで出来るだけ抵抗をなくすことが必要である。よって前述のとおり、曲面(14)はできるだけその半径を大きく採るのが良い。
【実施例2】
【0056】
図10はこの発明の第2の実施の形態による傘収納装置の外観を示す斜視図である。
【0057】
図を参照して、傘収納装置(1)は、当接部(12)が丸棒で構成され、他の構成は上面(18)と本体前面(20)に設けられたコの字状の穴(21)とが省かれた他は第1の実施の形態と同様であるのでここでの説明は繰り返さない。
【0058】
下面(13)上方、斜面(11)上方が開放されている。第1の実施の形態と違い、上面(18)が無いため、製造し易いという利点がある。当接部(12)の丸棒は別体で製造される。傘(41)挿入位置と取り出し位置は前述したように同じ位置にあり、傘(41)は当接部(12)より図中右側の空間に上方から挿入される。傘(41)挿入時には傘側面には当接部(12)の図中右端の縁が当接し、収納時の傘(51)に斜面(11)開放側水平方向に外力が加わった時には傘側面には当接部(12)の上記より下側の縁が当接する。
【0059】
当接部(12)の直下は曲面(14)であるため、第1の実施の形態と同様に傘(41)は収納される。
【0060】
収納時の傘(51)に斜面(11)開放側水平方向に外力が加わった時には当接部(12)と溝(16)の位置関係が第1の実施の形態と同様なので外れにくい。
【0061】
曲面(14)も第1の実施の形態と同様なので取り出ししやすい。
【0062】
以上のことからこの傘収納装置(1)も第1の実施の形態と同様に間便に傘(41)の出し入れが可能であり、急ブレーキ時にも収納された傘(51)が外れにくい。
【0063】
なお、第1の実施の形態の説明の箇所で前述したように、傘(41)挿入時には、傘(41)中心軸が鉛直である必要はない。傘の柄(42)が斜面(11)から離れる方向にある時、つまり傘(41)が図中左側に傾いていても収納されるため問題ない。
【実施例3】
【0064】
図11はこの発明の第3の実施の形態による傘収納装置の断面形状を示した図であって、第1の実施の形態による
図2に対応した図である。
【0065】
図を参照して、傘収納装置(1)は下面(13)が斜面(11)と直角に構成され、他の構成は曲面(14)と溝(16)と下側面(17)が省かれた他は第2の実施の形態と同様であるのでここでの説明は繰り返さない。
【0066】
下面(13)は斜面(11)との角度が90度より小さくても大きくてもよい。但し、大き過ぎると傘(41)挿入時に傘(41)が下面(13)を乗り越えてこの傘収納装置から飛び出してしまう危険性がある。また、小さくすると型がその分大きくなり、製造コストがかかる。
【0067】
当接部(12)の直下が斜面(11)であるため、第1の実施の形態と同様に傘(41)は収納される。
【0068】
以上のことにより、この傘収納装置(1)は間便に傘(41)を収納することができる。
【0069】
なお、第2の実施の形態に比べて下側面(17)が無く、下面(13)は斜面(11)と直角になっているため、第2の実施の形態に比べてより製造がし易くなる。
【0070】
収納時の傘(51)に斜面(11)開放側水平方向に外力が加わった時には、当接部(12)を斜面(11)からの距離を小さく、下面(13)からの距離を大きく採れば収納時の傘(51)は外れにくくなるが、同時に取り出し時の上方に引き上げる長さが増すため、利便性を損なう。よって、この傘収納装置(1)は乗り物には利用すべきではない。例えば、スーパーやホームセンターのショッピングカートや、学校の机などの利用が考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
乗り物に限らず、個人が一時的に所有するスペースには設置可能と考えられる。例えばスーパーやホームセンターにあるショッピングカート、学校の机などである。
【符号の説明】
【0072】
1 傘収納装置
11 斜面
12 当接部
13 下面
14 曲面
16 溝
41 挿入時の傘
51 収納時の傘
61 急ブレーキ時の傘
71 取り出し時の傘
81 畳んでフック係止された傘
42、62、72 傘の柄
43、53、63、73、83 傘先端