(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】車両用表示制御装置及び車両用表示制御方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/09 20060101AFI20241127BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20241127BHJP
G09B 29/00 20060101ALI20241127BHJP
G09B 29/10 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
G08G1/09 D
G08G1/16 C
G09B29/00 C
G09B29/10 Z
(21)【出願番号】P 2021058712
(22)【出願日】2021-03-30
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 賢司
(72)【発明者】
【氏名】野口 将人
(72)【発明者】
【氏名】桧垣 伸俊
(72)【発明者】
【氏名】加藤 一臣
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲士
【審査官】増子 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-047289(JP,A)
【文献】特開2016-173321(JP,A)
【文献】特開2016-212692(JP,A)
【文献】特開2015-170113(JP,A)
【文献】特開2017-045194(JP,A)
【文献】特開2008-176357(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0046855(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102011109387(DE,A1)
【文献】中国特許出願公開第109215364(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
G09B 23/00 - 29/14
G01C 21/00 - 21/36
G01C 23/00 - 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車の進路上に設けられた交通の規制を示す交通規制マークを認識する規制認識部と、
前記規制認識部により認識された前記交通規制マークに基づいて、前記交通規制マークが示す規制の有効範囲である規制有効範囲を特定する有効範囲特定部と、
前記規制認識部により認識された前記交通規制マークが示す規制の内容である規制内容情報を表示領域に表示するように、自車に搭載された表示装置を制御する表示制御部と、
を備え、
前記表示制御部は、
前記有効範囲特定部により前記規制有効範囲を特定できた場合、前記規制有効範囲を退出した時に前記規制内容情報の表示態様を変更し、
前記有効範囲特定部により前記規制有効範囲を特定できなかった場合、
走行距離、走行時間、交通インフラ、都道府県又は市町村の境界、ユーザの選択、ユーザの視線の少なくとも1つに応じた所定条件が成立した場合に
前記規制内容情報の表示態様を変更する、
車両用表示制御装置。
【請求項2】
前記表示領域は、それぞれ位置の異なる複数の表示領域であって、
前記表示制御部は、前記有効範囲特定部により前記規制有効範囲を特定できなかった場合、前記規制内容情報を表示させる前記表示領域を、前記所定条件が成立した場合に切り替える、
請求項1に記載の車両用表示制御装置。
【請求項3】
自車の車両位置から前記規制有効範囲の終了までに要する残り走行距離及び残り走行時間の少なくともいずれかである残存量を特定する残存量特定部を更に備え、
前記表示制御部は、前記規制内容情報に加えて、前記残存量特定部で特定した前記残存量を示す残存量情報を前記表示領域に表示させ、
前記表示制御部は、前記有効範囲特定部により前記規制有効範囲を特定できなかった場合、前記残存量情報の表示を、前記所定条件が成立した場合に切り替える、
請求項1又は請求項2に記載の車両用表示制御装置。
【請求項4】
前記有効範囲特定部は、少なくとも自車の前方の所定範囲を撮像範囲とする画像センサにより取得された画像に基づいて前記規制有効範囲を特定し、
前記有効範囲特定部により前記規制有効範囲を特定できなかった場合とは、前記画像センサにより取得された前記画像に基づいて前記規制有効範囲を特定できなかった場合である、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両用表示制御装置。
【請求項5】
前記有効範囲特定部が、前記規制有効範囲の終了位置を認識できなかったことにより前記規制有効範囲を特定できなかった場合、
前記所定条件は、前記規制有効範囲の開始位置から自車の車両位置までの
前記走行距離が設定値以上となったことである、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両用表示制御装置。
【請求項6】
前記有効範囲特定部が、前記規制有効範囲の終了位置を認識できなかったことにより前記規制有効範囲を特定できなかった場合、
前記所定条件は、前記規制有効範囲の開始位置から自車の車両位置までに要した
前記走行時間が設定値以上となったことである、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両用表示制御装置。
【請求項7】
前記有効範囲特定部が、前記規制有効範囲の終了位置を認識できなかったことにより前記規制有効範囲を特定できなかった場合、
前記所定条件は、前記規制有効範囲の開始位置から自車の車両位置までの間に存在する
前記交通インフラに含まれる交差点又は信号の数が設定値以上となったことである、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両用表示制御装置。
【請求項8】
前記所定条件は、自車が
前記都道府県又は市区町村の境界を通過したことである、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両用表示制御装置。
【請求項9】
前記所定条件は、
前記ユー
ザの選択を受け付けたことである、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両用表示制御装置。
【請求項10】
前記所定条件は、
前記ユーザの視線の方向を検出する視線センサの検出結果に基づいて、前記規制内容情報を前記ユーザが認識したと判定したことである、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両用表示制御装置。
【請求項11】
自車の進路上に設けられた交通の規制を示す交通規制マークを認識する規制認識ステップと、
前記規制認識ステップにより認識された前記交通規制マークに基づいて、前記交通規制マークが示す規制の有効範囲である規制有効範囲を特定する有効範囲特定ステップと、
前記規制認識ステップにより認識された前記交通規制マークが示す規制の内容である規制内容情報を表示領域に表示するように、自車に搭載された表示装置を制御する表示制御ステップと、を含み、
前記表示制御ステップは、
前記有効範囲特定ステップにより前記規制有効範囲を特定できた場合、前記規制有効範囲を退出した時に前記規制内容情報の表示態様を変更し、
前記有効範囲特定ステップにより前記規制有効範囲を特定できなかった場合、
走行距離、走行時間、交通インフラ、都道府県または市町村の境界、ユーザの選択、ユーザの視線の少なくとも1つに応じた所定条件が成立した場合に
前記規制内容情報の表示態様を変更する、
車両用表示制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用表示制御装置及び車両用表示制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、交通規制マークが示す規制の内容を表示する車両用表示制御装置が知られている。例えば特許文献1では、交通規制マークが示す規制の有効範囲に自車が進入した場合に、その有効範囲における規制の内容を示す規制内容情報に加えて、残存量特定部で特定した残存量を示す残存量情報を表示領域に表示させる車両用表示制御装置が開示されている。また、例えば特許文献1では、有効範囲に対する自車の状況に応じて、残存量情報を表示させる表示領域を切り替えることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、規制の有効範囲の終了位置を認識できなかった場合には、自車がその規制の有効範囲を退出してもその規制内容情報及び残存量情報の表示が継続されるおそれがある。
【0005】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであり、規制内容情報を適切に表示することができる車両用表示制御装置及び車両用表示制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示における車両用表示制御装置は、規制認識部と、有効範囲特定部と、表示制御部と、を備える。規制認識部は、自車の進路上に設けられた交通の規制を示す交通規制マークを認識する。有効範囲特定部は、規制認識部により認識された交通規制マークに基づいて、交通規制マークが示す規制の有効範囲である規制有効範囲を特定する。表示制御部は、規制認識部により認識された交通規制マークが示す規制の内容である規制内容情報を表示領域に表示するように、自車に搭載された表示装置を制御する。表示制御部は、前記有効範囲特定部により前記規制有効範囲を特定できた場合、前記規制有効範囲を退出した時に前記規制内容情報の表示態様を変更し、有効範囲特定部により規制有効範囲を特定できなかった場合、走行距離、走行時間、交通インフラ、都道府県又は市町村の境界、ユーザの選択、ユーザの視線の少なくとも1つに応じた所定条件が成立した場合に前記規制内容情報の表示態様を変更する。
【0007】
本開示における車両用表示制御方法は、規制認識ステップと、有効範囲特定ステップと、表示制御ステップと、を含む。規制認識ステップは、自車の進路上に設けられた交通の規制を示す交通規制マークを認識する。有効範囲特定ステップは、規制認識ステップにより認識された交通規制マークに基づいて、交通規制マークが示す規制の有効範囲である規制有効範囲を特定する。表示制御ステップは、規制認識ステップにより認識された交通規制マークが示す規制の内容である規制内容情報を表示領域に表示するように、自車に搭載された表示装置を制御する。表示制御ステップは、前記有効範囲特定部により前記規制有効範囲を特定できた場合、前記規制有効範囲を退出した時に前記規制内容情報の表示態様を変更し、有効範囲特定ステップにより規制有効範囲を特定できなかった場合、走行距離、走行時間、交通インフラ、都道府県又は市町村の境界、ユーザの選択、ユーザの視線の少なくとも1つに応じた所定条件が成立した場合に前記規制内容情報の表示態様を変更する。
【発明の効果】
【0008】
本開示における車両用表示制御装置は、規制内容情報を適切に表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態における車両システムの構成の一例を示す図
【
図2】実施の形態における車両用表示制御装置の機能構成の一例を示すブロック図
【
図3】実施の形態における車両用表示制御装置の規制表示制御関連処理の一例を示すフローチャート
【
図4】
図3の有効範囲特定可の時の表示制御処理のサブルーチンの一例を示すフローチャート
【
図5】
図3の有効範囲特定不可の時の表示制御処理のサブルーチンの一例を示すフローチャート
【
図6】規制有効範囲に対する自車の状況の一例を示す模式図
【
図7】
図6の車両位置P1における近位表示領域及び遠位表示領域での規制内容情報及び残存量情報の表示の一例を示す図
【
図8】
図6の車両位置P1における近位表示領域及び遠位表示領域での規制内容情報及び残存量情報の表示の別の例を示す図
【
図9】
図6の車両位置P2における近位表示領域及び遠位表示領域での規制内容情報及び残存量情報の表示の一例を示す図
【
図10】
図6の車両位置P3における近位表示領域及び遠位表示領域での規制内容情報及び残存量情報の表示の一例を示す図
【
図11】規制有効範囲に対する自車の状況の別の例を示す模式図
【
図12】
図11の車両位置P11における近位表示領域及び遠位表示領域での規制内容情報及び残存量情報の表示の一例を示す図
【
図13】
図11の車両位置P12における近位表示領域及び遠位表示領域での規制内容情報及び残存量情報の表示の一例を示す図
【
図14】
図11の車両位置P13における近位表示領域及び遠位表示領域での規制内容情報及び残存量情報の表示の一例を示す図
【
図15】
図11の車両位置P14における近位表示領域及び遠位表示領域での規制内容情報及び残存量情報の表示の一例を示す図
【
図16】
図11の車両位置P15における近位表示領域及び遠位表示領域での規制内容情報及び残存量情報の表示の一例を示す図
【
図17】
図11の車両位置P16における近位表示領域及び遠位表示領域での規制内容情報及び残存量情報の表示の一例を示す図
【
図18】
図11の車両位置P17における近位表示領域及び遠位表示領域での規制内容情報及び残存量情報の表示の一例を示す図
【
図19】
図11の車両位置P14における近位表示領域及び遠位表示領域での規制内容情報及び残存量情報の表示の別の例を示す図
【
図20】
図11の車両位置P14における近位表示領域及び遠位表示領域での規制内容情報及び残存量情報の表示の別の例を示す図
【
図21】自車の走行状況に応じた近位表示領域及び遠位表示領域での規制内容情報及び残存量情報の表示の別の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0011】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0012】
(実施の形態)
以下、
図1~
図21を用いて、実施の形態を説明する。
【0013】
(車両システム1の概略構成)
まず、本実施の形態に係る車両システム1の構成について
図1を用いて説明する。
図1は、実施の形態における車両システム1の構成の一例を示す図である。車両システム1は、自動車といった車両で用いられるものであり、HMI(Human Machine Interface)システム2、ロケータ3、地図データベース4、車両状態センサ5、周辺監視センサ6、及びサーバ7を含んでいる。HMIシステム2、ロケータ3、地図データベース4、車両状態センサ5、周辺監視センサ6、及びサーバ7は、例えば車内LAN(Local Area Network)に接続されているものとする。以下では、車両システム1を用いる車両を自車と呼ぶ。
【0014】
ロケータ3は、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機(図示しない)及び慣性センサ(図示しない)を備えている。GNSS受信機は、複数の人工衛星からの測位信号を受信する。慣性センサは、例えば3軸ジャイロセンサ及び3軸加速度センサを備える。ロケータ3は、GNSS受信機で受信する測位信号と、慣性センサの計測結果とを組み合わせることにより、ロケータ3を搭載した自車の車両位置を逐次測位する。なお、ロケータ3は、自車に搭載された車速センサから逐次出力される信号から求めた走行距離を用いて自車の車両位置を測位してもよい。
【0015】
地図データベース4は、不揮発性メモリであって、リンクデータ、ノードデータ等の地図データを格納している。リンクデータは、リンクを特定するリンクID、リンクの長さを示すリンク長、リンク方位、リンク旅行時間、リンクの形状情報、リンクの始端と終端とのノード座標(緯度/経度)、及び道路属性等の各データから構成される。道路属性のデータは、例えば道路標識及び道路標示の少なくともいずれかである交通規制マークによる規制についてのデータ(以下、規制データという)を含むものとする。この規制の一例としては、制限速度、駐車禁止、追越し禁止、車両横断禁止等がある。また、交通規制マークによる規制に有効範囲が存在する場合には、この有効範囲のデータ(以下、有効範囲データという)も含むものとする。なお、規制データ及び有効範囲データは、リンクデータ以外のデータとして地図データベース4に格納される構成としてもよい。ノードデータは、地図上のノードごとに固有の番号を付したノードID、ノード座標、ノード名称、ノード種別、ノードに接続するリンクのリンクIDが記述される接続リンクID、交差点種別等の各データから構成される。
【0016】
車両状態センサ5は、自車の走行状態を検出するためのセンサ群である。車両状態センサ5としては、自車の車速を検出する車速センサ等がある。車両状態センサ5は、検出結果を車内LANへ出力する。なお、車両状態センサ5での検出結果は、自車に搭載されるECU(Electronic Control Unit)を介して車内LANへ出力される構成であってもよい。
【0017】
周辺監視センサ6は、自車の走行環境を認識する。周辺監視センサ6は、自車周辺の静止物体、移動体等の障害物を検出したり、道路標識、走行区画線等の道路標示を検出したりする。周辺監視センサ6としては、自車の前方の所定範囲を撮像範囲とする前方カメラを用いる構成とすればよい。例えば前方カメラは、自車のルームミラーに設ける構成とすればよい。なお、前方カメラは、自車のインストルメントパネル11の上面に設ける構成等としてもよい。周辺監視センサ6としては、自車の前方以外を撮像するカメラを用いたり、ミリ波レーダ、ソナー、LiDAR(Light Detection And Ranging)等を用いたりする構成としてもよい。
【0018】
HMIシステム2は、車両用表示制御装置20、操作デバイス21、及び表示装置22を備えており、自車のドライバからの入力操作を受け付けたり、自車のドライバに向けて情報を提示したりする。操作デバイス21は、自車のドライバが操作するスイッチ群である。操作デバイス21は、各種の設定を行うために用いられる。例えば、操作デバイス21としては、自車のステアリングのスポーク部に設けられたステアリングスイッチ等がある。なお、ドライバは特許請求の範囲の「ユーザ」の一例である。
【0019】
表示装置22は、車両用表示制御装置20からの指示に基づいて情報を表示することで、ドライバに向けた情報の提示を行う。表示装置22としては、HUD(Head-Up Display)220、コンビネーションメータ、CID(Center Information Display)等がある。HUD220は、車両用表示制御装置20から取得した画像データに基づく表示像の光を、自車の運転席前方の投影領域に投影することで、この表示像の虚像を前景の一部と重ねてドライバが視認可能なように表示する。コンビネーションメータ及びCIDは、例えば液晶ディスプレイ等によって情報を表示する。コンビネーションメータは、運転席前方のインストルメントパネル11に配置される。CIDは、センタクラスタの上方に配置される。
【0020】
本実施の形態では、表示装置22として、特に、位置が異なる2つの投影領域にそれぞれ表示像を投影することでそれぞれの表示像の虚像をドライバに視認可能なように表示することができるHUD220を用いる場合を例に挙げて説明を行う。
【0021】
図1に示すようにHUD220は、自車のインストルメントパネル11に設けられる。HUD220は、例えば液晶式又は走査式のプロジェクタ221によって形成される表示像を、例えば凹面鏡等の光学系222を通じて、投影部材としてのウインドシールド10における既定の投影領域に投影する。プロジェクタ221は、複数の表示像をそれぞれ異なる光路によって、位置が異なる2つの投影領域に投影する。ウインドシールド10によって車室内側に反射された表示像の光束は、運転席に着座するドライバによって知覚される。また、透光性ガラスにより形成されるウインドシールド10を透過した、自車の前方に存在する風景としての前景からの光束も、運転席に着座するドライバによって知覚される。これにより、ドライバは、ウインドシールド10の前方にて結像される複数の表示像のそれぞれの虚像100a,100bを、前景の一部と重ねて視認可能となる。つまりHUD220は、自車の前景にそれぞれの虚像100a,100bを重畳表示し、いわゆるAR(Augmented Reality)表示を実現する。なお、HUD220が表示像を投影する投影部材は、ウインドシールド10に限らず、透光性コンバイナ等であってもよい。
【0022】
図1に示すように、HUD220によって表示される虚像には、近位虚像100a及び遠位虚像100bが含まれている。近位虚像100aを表示可能な範囲(以下、近位表示領域という)及び遠位虚像100bを表示可能な範囲(以下、遠位表示領域という)は、それぞれ車幅方向の辺の方が長い横長の矩形状となっている。遠位表示領域のサイズは、近位表示領域のサイズよりも大きく設定されているものとする。
【0023】
加えて、近位虚像100a及び遠位虚像100bは、ドライバの視認上、自車の前後方向において互いに異なる位置に結像される。近位虚像100aは、遠位虚像100bよりもウインドシールド10に近い位置に結像される。さらに、近位虚像100a及び遠位虚像100bは、ドライバの視認上、上下方向にもずれた位置に結像される。言い換えると、近位虚像100a及び遠位虚像100bは、鉛直方向にもずれた位置に結像される。詳しくは、近位虚像100aの結像位置が、遠位虚像100bの結像位置よりも下方となるように設定されている。また、遠位虚像100bの結像位置は、ドライバの視認上、例えば
図1に例示するように、ドライバのアイポイントとおおむね同程度の高さとなるように設定されていることが好ましい。
【0024】
なお、ドライバの視認上、遠位虚像100bの下縁部分は、近位虚像100aの上縁部分よりも下方に位置していてもよい。例えば、遠位表示領域は、近位表示領域を避けるようにして、部分的に切り欠かれた矩形状であってもよい。また、遠位表示領域の下辺と近位表示領域の上辺とが、上下方向に離れていてもよい。
【0025】
車両用表示制御装置20は、プロセッサ、揮発性メモリ及び不揮発性メモリといったコンピュータ読み取り可能な非一時的記録媒体、I/O、並びにこれらを接続するバスを備えるマイクロコンピュータを主体として構成されている。車両用表示制御装置20は、操作デバイス21、表示装置22及び車内LANに接続されている。車両用表示制御装置20は、不揮発性メモリに記憶された制御プログラムを実行することで各種の処理を実行する。例えば車両用表示制御装置20は、HUD220による表示を制御する。なお、HUD220による表示の制御に関する車両用表示制御装置20の機能構成については後で詳述する。
【0026】
(車両用表示制御装置20の概略構成)
次に、本実施の形態に係る車両用表示制御装置20の機能構成について
図2を用いて説明する。
図2は、実施の形態における車両用表示制御装置20の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0027】
車両用表示制御装置20は、HUD220による表示の制御に関して、
図2に示すように、速度取得部201、車両位置取得部202、マーク認識部203、マーク特定部204、残存量特定部205、優先度設定部206、及び表示制御部207としての機能を備える。なお、車両用表示制御装置20が実行する機能の一部または全部を、1又は複数のIC等によりハードウェア的に構成してもよい。車両用表示制御装置20が備える機能の一部または全部は、プロセッサによるソフトウェアの実行とハードウェア部材との組合せによって実現されてもよい。
【0028】
速度取得部201は、車両状態センサ5のうちの車速センサから自車の速度を取得する。車両位置取得部202は、ロケータ3で測位した自車の車両位置を取得する。マーク認識部203は、自車の進路前方に存在する交通規制マークを認識し、マーク特定部204は、この交通規制マークが示す規制の有効範囲を特定する。交通規制マークとしては、規制に有効範囲があるマークであれば、道路標識であっても道路標示であってもよいが、本実施の形態では、特定の交通方法を禁止したり指定したりする規制を示す道路標識を交通規制マークとする場合を例に挙げて以降の説明を行う。
【0029】
マーク認識部203は、車両位置取得部202で取得する自車の車両位置と、地図データベース4に格納されている地図データのうちの前述の規制データとから、自車の進路前方のリンクに紐付けられた規制データが存在するか否かを判定する。マーク認識部203は、自車の進路前方のリンクに紐付けられた規制データが存在する場合に、この規制データが示す交通規制マークを、自車の進路前方に存在する交通規制マークとして認識する。このマーク認識部203が特許請求の範囲の「規制認識部」に相当する。
【0030】
また、マーク認識部203は、周辺監視センサ6での検出結果から、自車の走行環境を認識する。例えば、マーク認識部203は、前方カメラから取得した撮像画像(以下、前方画像という)から、パターンマッチング等の画像認識処理によって、交通規制マークを認識したり、先行車の有無を認識したりする。マーク認識部203での交通規制マークの認識としては、交通規制マークが示す規制の内容の他に、交通規制マークのうちの補助標識の内容の認識も含むことが好ましい。補助標識の内容については、パターンマッチングを用いて認識してもよいし、文字列検出技術を用いて認識してもよい。マーク認識部203は、前方画像から交通規制マークを認識できた場合には、この交通規制マークを、自車の進路前方に存在する交通規制マークとして認識してもよい。
【0031】
マーク特定部204は、マーク認識部203により自車の進路前方に存在する交通規制マークが認識された場合に、この交通規制マークが示す規制の有効範囲(以下、規制有効範囲という)を特定する。よって、このマーク特定部204が特許請求の範囲の「有効範囲特定部」に相当する。マーク特定部204は、地図データベース4に格納されている地図データのうちの前述の有効範囲データから、規制有効範囲を特定する構成とすればよい。他にも、マーク特定部204は、前方カメラから取得した前方画像からマーク認識部203により交通規制マークのうちの補助標識の内容が認識された場合には、この補助標識の内容から、規制有効範囲を特定する構成としてもよい。例えば、マーク特定部204は、マーク認識部203により「この先100m」といった補助標識の内容が認識された場合には、規制有効範囲を100mと特定すればよい。
【0032】
残存量特定部205は、自車の車両位置から規制有効範囲の開始位置までに要する残存量(以下、開始残存量という)を特定したり、自車の車両位置から規制有効範囲の終了位置までに要する残存量(以下、終了残存量という)を特定したりする。一例として、残存量特定部205は、自車の車両位置から規制有効範囲の開始位置までの距離が任意に設定可能な設定値以下となった場合に開始残存量を特定する。自車の車両位置から規制有効範囲の開始位置までの距離は、車両位置取得部202で取得する自車の車両位置と、地図データベース4に格納されている地図データから算出されればよい。他にも、残存量特定部205は、マーク特定部204で特定する、自車から規制有効範囲の開始位置までの距離を用いる構成としてもよい。この場合、残存量特定部205は、規制有効範囲の開始位置を、規制有効範囲の開始位置を示す「ここから」といった補助標識の内容をマーク特定部204で認識したことから特定すればよい。なお、残存量特定部205は、開始残存量を、自車が規制有効範囲に進入するまで逐次特定する構成としてもよいし、自車の車両位置から規制有効範囲の開始位置までの距離が任意に設定可能な設定値以下となった場合に一度特定する構成としてもよい。
【0033】
また、残存量特定部205は、自車が規制有効範囲に進入した場合に、終了残存量の特定を開始する構成とすればよい。残存量特定部205は、自車が規制有効範囲に進入したことを、規制有効範囲の開始位置を示す「ここから」といった補助標識の内容をマーク特定部204で特定したことから判断すればよい。他にも、残存量特定部205は、自車が規制有効範囲に進入したことを、自車の車両位置と地図データのうちの有効範囲データとから判断してもよい。一例として、残存量特定部205は、対象とする規制有効範囲の終了位置まで、その規制有効範囲についての終了残存量の特定を逐次行う構成とすればよい。残存量特定部205は、規制有効範囲の終了位置を、規制有効範囲の終了位置を示す「ここまで」といった補助標識の内容をマーク特定部204で特定したことから判断してもよいし、特定される残存量が0になったことから判断してもよい。
【0034】
残存量特定部205は、開始残存量としての残り走行距離を特定する場合には、自車の車両位置から規制有効範囲の開始位置までの走行距離を、残り走行距離として特定すればよい。一方、残存量特定部205は、終了残存量としての残り走行距離を特定する場合には、自車が規制有効範囲に進入してからの走行距離を、規制有効範囲にあたる距離から減算することで残り走行距離を特定すればよい。
【0035】
残存量特定部205は、上述の残り走行距離を、速度取得部201で取得した自車の速度で除することで、開始残存量としての残り走行時間又は終了残存量としての残り走行時間を特定すればよい。自車の速度としては、任意に設定可能な所定期間における平均速度を用いる等してもよい。
【0036】
優先度設定部206は、交通規制マークが示す規制有効範囲内に自車が位置する場合に、この交通規制マークの優先度を設定する。言い換えると、優先度設定部206は、自車が規制有効範囲内に位置している、有効な交通規制マークの優先度を特定する。
【0037】
一例として、優先度設定部206は、規制有効範囲に対する自車の状況に応じて、交通規制マークの優先度を設定する構成としてもよい。具体的には、優先度設定部206は、残存量特定部205で特定する残存量が少ない規制有効範囲に対する交通規制マークの優先度をより高く設定する構成とすればよい。また、優先度設定部206は、操作デバイス21を介して受け付けるドライバからの選択に応じて設定する構成としてもよい。なお、ドライバからの選択は、音声認識ユニットを自車で用いる場合には、マイクを介して受け付ける構成としてもよい。他にも、優先度設定部206は、交通規制マークの種類に応じて、交通規制マークの優先度を設定する構成としてもよい。この場合、交通規制マークの種類と優先度との対応関係を予め車両用表示制御装置20の不揮発性メモリに格納しておき、優先度設定部206は、この対応関係を参照することで交通規制マークの優先度を設定する構成とすればよい。
【0038】
また、優先度設定部206は、交通規制マークの種類と自車の走行状態とに応じて、交通規制マークの優先度を設定する構成としてもよい。言い換えると、自車の走行状態に応じて、交通規制マークの優先度を切り替える構成としてもよい。この場合、優先度設定部206は、自車の走行状態において対象となりやすいと推定される交通規制マークの優先度をより高く設定する構成とすればよい。なお、交通規制マークの種類と優先度との対応関係を予め車両用表示制御装置20の不揮発性メモリに格納しておき、優先度設定部206は、この対応関係を参照することで交通規制マークの優先度を設定する構成とすればよい。自車の走行状態の例としては、自車の速度、先行車の有無等が挙げられる。自車の速度については、速度取得部201で取得する構成とすればよいし、先行車の有無については、マーク認識部203で認識した走行環境から判断すればよい。
【0039】
交通規制マークの種類と自車の走行状態とに応じて交通規制マークの優先度を設定する例としては、以下が挙げられる。ここでは、交通規制マークとして、「制限速度」、「駐車禁止」、「追越し禁止」を例に挙げて説明を行う。例えば、自車の速度が設定値未満の場合には、「駐車禁止」の優先度を「制限速度」の優先度よりも高く設定する一方、自車の速度が設定値以上の場合には、「制限速度」の優先度を「駐車禁止」の優先度よりも高く設定すればよい。また、先行車ありの場合には、「追越し禁止」の優先度を「制限速度」の優先度よりも高く設定する一方、先行車なしの場合には、「制限速度」の優先度を「追越し禁止」の優先度よりも高く設定すればよい。
【0040】
なお、規制有効範囲に対する自車の状況に基づく優先度の設定処理については、後で詳述する。
【0041】
表示制御部207は、規制有効範囲に対する自車の状況に応じて、この規制有効範囲の規制の内容を示す規制内容情報に加え、残存量特定部205で特定したこの規制有効範囲の残存量を示す残存量情報を、HUD220に表示させる。規制内容情報は、規制有効範囲の規制の内容を示す態様であればテキスト情報であってもよいし、アイコン画像であってもよいし、これらの組合せであってもよい。本実施の形態では、規制内容情報として規制有効範囲の規制の内容に対応する交通規制マークのアイコン画像を用いる場合を例に挙げて以降の説明を続ける。また、残存量情報は、残存量を示す情報であれば、テキスト情報であってもよいし、バーグラフ等の画像であってもよいし、これらの組合せであってもよい。本実施の形態では、残存量情報として残存量を示すテキスト情報を用いる場合を例に挙げて以降の説明を続ける。
【0042】
表示制御部207は、規制有効範囲に対する自車の状況に応じて、規制内容情報及び残存量情報を表示させる表示領域を、上述の近位表示領域と遠位表示領域とで切り替える。また、表示制御部207は、最新の規制内容情報及び残存量情報を遠位表示領域に表示させた後、近位表示領域への表示に遷移させるようにしてもよい。ただし、複数種類の交通規制マークについて、規制内容情報及び残存量情報を近位表示領域に表示させることになる場合には、表示制御部207は、優先度設定部206で設定される優先度がより低い交通規制マークについての表示を、近位表示領域から遠位表示領域へ切り替える調整を行う。さらに、表示領域が近位表示領域から遠位表示領域に切り替えられた規制内容情報及び残存量情報が、複数種類の交通規制マークについて存在した場合には、表示制御部207は、それらの交通規制マークについての情報を、優先度設定部206で設定される優先度に従った順に並べて遠位表示領域に表示させる。表示制御部207による規制内容情報及び残存量情報の表示制御については後で詳述する。
【0043】
また、表示制御部207は、残存量情報として、残り走行距離を示す情報を表示させるか、残り走行時間を示す情報を表示させるかを、操作デバイス21を介して受け付けるドライバからの選択に応じて切り替える構成としてもよい。なお、残り走行距離と残り走行時間との両方を示す情報を表示させることができる構成であっても構わない。他にも、表示制御部207は、操作デバイス21を介して受け付けるドライバからの選択に応じて、HUD220での表示の有無を切り替えたり、特定の交通規制マークについての規制内容情報及び残存量情報の表示を選択的に取りやめたりできる構成としてもよい。
【0044】
(車両用表示制御装置20での規制表示制御関連処理)
続いて、
図3~
図5を用いて、車両用表示制御装置20でのHUD220による交通規制マークの表示の制御に関連する処理(以下、規制表示制御関連処理という)の流れの一例について説明を行う。
図3は、車両用表示制御装置20の規制表示制御関連処理の一例を示すフローチャートである。
図3のフローチャートでは、HUD220の電源がオン且つHUD220の機能がオンになった場合に開始する構成とすればよい。HUD220の機能のオン又はオフは、操作デバイス21で受け付ける入力操作に応じて切り替えられる構成とすればよい。また、HUD220の電源のオン又はオフは、自車の内燃機関又はモータジェネレータを始動させるためのスイッチ(以下、パワースイッチという)のオン又はオフに応じて切り替えられる構成とすればよい。
【0045】
まず、ステップS11において、マーク認識部203は、地図データに自車の進路前方のリンクに紐付けられた規制データが存在するか否かを判定する。マーク認識部203によりこの規制データが存在すると判定された場合(ステップS11でYES)、処理はステップS13に進む。一方、マーク認識部203によりこの規制データが存在しないと判定された場合(ステップS11でNO)、処理はステップS12に進む。
【0046】
ステップS12において、マーク認識部203は、前方画像から交通規制マークを認識できるか否かを判定する。マーク認識部203により交通規制マークを認識できると判定された場合(ステップS12でYES)、処理はステップS13に進む。
【0047】
ステップS13において、マーク認識部203は、自車の進路前方に存在する交通規制マークを認識する。その後、処理はステップS14に進む。
【0048】
ステップS14において、マーク特定部204は、ステップS13において認識した交通規制マークについての規制有効範囲を特定できるか否かを判定する。マーク特定部204によりこの規制有効範囲を特定できると判定された場合(ステップS14でYES)、マーク特定部204はこの規制有効範囲を特定し、その後、処理はステップS15に進む。一方、マーク特定部204によりこの規制有効範囲を特定できないと判定された場合(ステップS14でNO)、処理はステップS16に進む。
【0049】
ステップS15では、有効範囲特定可の時の表示制御処理が実行され、その後、処理はステップS17に進む。一方、ステップS16では、有効範囲特定不可の時の表示制御処理が実行され、その後、処理はステップS17に進む。
【0050】
また、マーク認識部203により交通規制マークを認識できないと判定された場合(ステップS12でNO)、処理はステップS17に進む。
【0051】
ステップS17において、規制表示制御関連処理の終了タイミングであった場合(ステップS17でYES)、規制表示制御関連処理は終了となる。規制表示制御関連処理の終了タイミングの例としては、自車のパワースイッチがオフになった場合、HUD220の機能がオフになった場合等がある。
【0052】
一方、規制表示制御関連処理の終了タイミングではなかった場合(ステップS17でNO)、処理はステップS11に戻り、ステップS11以降の処理が実行される。
【0053】
図4は、
図3のステップS15の有効範囲特定可の時の表示制御処理のサブルーチンの一例を示すフローチャートである。
【0054】
ステップS151において、残存量特定部205は、開始残存量又は終了残存量としての残り走行距離を特定する。残存量特定部205は、対象とする規制有効範囲に自車が進入する前にはその規制有効範囲についての開始残存量としての残り走行距離を特定する。一方、残存量特定部205は、その規制有効範囲に自車が進入した後にはその規制有効範囲についての終了残存量としての残り走行距離を特定する。その後、処理はステップS152に進む。
【0055】
ステップS152において、残存量特定部205は、開始残存量又は終了残存量としての残り走行時間を特定する。残存量特定部205は、対象とする規制有効範囲に自車が進入する前にはその規制有効範囲についての開始残存量としての残り走行時間を特定する。一方、残存量特定部205は、その規制有効範囲に自車が進入した後にはその規制有効範囲についての終了残存量としての残り走行時間を特定する。その後、処理はステップS153に進む。
【0056】
ステップS153において、優先度設定部206は、有効な交通規制マークが複数種類存在するか否かを判定する。言い換えると、優先度設定部206は、自車が位置している規制有効範囲に対応する交通規制マークが複数種類存在するか否かを判定する。優先度設定部206により有効な交通規制マークが複数種類存在すると判定された場合(ステップS153でYES)、処理はステップS154に進む。
【0057】
ステップS154において、優先度設定部206は、複数種類存在する有効な交通規制マークのそれぞれの優先度を設定する。その後、処理はステップS155に進む。
【0058】
一方、優先度設定部206により有効な交通規制マークが1種類しか存在しないと判定された場合(ステップS153でNO)、処理はステップS155に進む。
【0059】
ステップS155において、表示制御部207は、有効な交通規制マークについての規制内容情報及び残存量情報をHUD220に表示させる表示制御を行う。表示制御部207は、規制有効範囲に対する自車の状況に応じて、規制内容情報及び残存量情報を表示させる表示領域を、近位表示領域と遠位表示領域とで切り替えつつ表示させる。また、表示制御部207は、有効な交通規制マークが複数種類存在する場合には、ステップS154において優先度設定部206により設定された優先度に従って、規制内容情報及び残存量情報の表示の調整を行う。その後、処理はステップS156に進む。
【0060】
ステップS156において、残存量特定部205は、対象とする規制有効範囲から自車が退出したか否かを判定する。残存量特定部205により対象とする規制有効範囲から自車が退出したと判定された場合(ステップS156でYES)、処理はステップS157に進む。
【0061】
ステップS157において、表示制御部207は、ステップS156において残存量特定部205により自車が退出したと判定された規制有効範囲についての、無効となった規制内容情報及び残存量情報の表示を消去する制御を行う。ここで、自車が位置する規制有効範囲が複数存在しており、そのうちの一部の規制有効範囲から自車が退出した場合には、自車が退出していない規制有効範囲についての規制内容情報及び残存量情報の表示は継続されることとなる。
【0062】
一方、残存量特定部205により対象とする規制有効範囲から自車が退出していないと判定された場合(ステップS156でNO)、処理はステップS151に戻り、ステップS151以降の処理が実行される。
【0063】
図5は、
図3のステップS16の有効範囲特定不可の時の表示制御処理のサブルーチンの一例を示すフローチャートである。
【0064】
ステップS161において、優先度設定部206は、有効な交通規制マークの優先度を設定する。優先度設定部206は、有効な交通規制マークが複数種類存在する場合には、複数種類存在する有効な交通規制マークのそれぞれの優先度を設定する。その後、処理はステップS162に進む。
【0065】
ステップS162において、表示制御部207は、有効な交通規制マークについての規制内容情報及び残存量情報をHUD220に表示させる表示制御を行う。表示制御部207は、規制有効範囲に対する自車の状況に応じて、規制内容情報及び残存量情報を表示させる表示領域を、近位表示領域と遠位表示領域とで切り替えつつ表示させる。また、表示制御部207は、ステップS161において優先度設定部206により設定された優先度に従って、規制内容情報及び残存量情報の表示の調整を行う。なお、ここでいう表示制御には、表示を消去することも含まれる。例えば、表示制御部207は、規制有効範囲に対する自車の状況に応じて、規制内容情報及び残存量情報の表示を消去する。その後、処理はステップS163に進む。
【0066】
ステップS163において、ステップS162における表示制御部207の表示制御により規制内容情報及び残存量情報の表示が消去された場合(ステップS163でYES)、有効範囲特定不可の時の表示制御処理は終了となり、処理は
図4のステップS17に進む。一方、表示制御部207により規制内容情報及び残存量情報の表示が消去されなかった場合(ステップS163でNO)、処理はステップS161に戻り、ステップS161以降の処理が実行される。ここで、有効な交通規制マークが複数存在しており、そのうちの一部についての規制内容情報及び残存量情報の表示が消去された場合には、他の規制内容情報及び残存量情報の表示は継続されることとなる。
【0067】
(規制有効範囲に対する自車の状況に基づく優先度の設定)
優先度設定部206は、規制有効範囲に対する自車の状況に応じて、交通規制マークの優先度を設定する構成としてもよい。特に、残存量特定部205により終了残存量を特定できなかった場合、優先度設定部206は、規制有効範囲に対する自車の状況に応じて交通規制マークの優先度を設定し、表示制御部207は、この優先度に基づいて規制内容情報等の表示を制御し得る。以下、優先度設定部206による、規制有効範囲に対する自車の状況に基づく優先度の設定について、例を挙げて説明する。
【0068】
(1)規制有効範囲の開始位置からの走行距離に基づく優先度の設定
優先度設定部206は、規制有効範囲の開始位置からの自車の走行距離に基づいて、交通規制マークの優先度を設定し得る。具体的には、優先度設定部206は、規制有効範囲の開始位置からの自車の走行距離が設定値以上となった場合に、当該走行距離が設定値未満である場合よりもその交通規制マークの優先度を低く設定し得る。また、優先度設定部206は、規制有効範囲の開始位置からの自車の走行距離が第1設定値以上となった場合に、当該走行距離が第1設定値未満である場合よりもその交通規制マークの優先度を低く設定し、当該走行距離が第1設定値よりも大きい第2設定値以上となった場合には、その交通規制マークの優先度を更に低く設定するというように、複数の設定値を用いて段階的に優先度を低くする構成としてもよい。この設定値は、交通規制マークの種類に応じて異なっていてもよい。また、この設定値は、実際の道路における交通規制マークの規制有効範囲の平均的な距離に基づいて予め設定され得る。なお、この設定値は、ドライバが事前に入力して設定することとしてもよい。
【0069】
(2)規制有効範囲の開始位置からの走行時間に基づく優先度の設定
優先度設定部206は、規制有効範囲の開始位置からの自車の走行時間に基づいて、交通規制マークの優先度を設定し得る。具体的には、優先度設定部206は、規制有効範囲の開始位置からの自車の走行時間が設定値以上となった場合に、当該走行時間が設定値未満である場合よりもその交通規制マークの優先度を低く設定し得る。また、優先度設定部206は、規制有効範囲の開始位置からの自車の走行時間が第1設定値以上となった場合に、当該走行時間が第1設定値未満である場合よりもその交通規制マークの優先度を低く設定し、当該走行時間が第1設定値よりも大きい第2設定値以上となった場合には、その交通規制マークの優先度を更に低く設定するというように、複数の設定値を用いて段階的に優先度を低くする構成としてもよい。この設定値は、交通規制マークの種類に応じて異なっていてもよく、渋滞等の道路状況に応じて異なっていてもよい。つまり、自車が走行している道路が渋滞している場合には、渋滞していない場合に比べて、同じ距離を走行するのに要する時間が長くなるため、このような場合には渋滞していない場合よりも走行時間の設定値を長く設定してもよい。また、この設定値は、実際の道路における交通規制マークの規制有効範囲の平均的な走行時間に基づいて予め設定され得る。なお、この設定値は、ドライバが事前に入力して設定することとしてもよい。
【0070】
(3)交差点、信号の数に基づく優先度の設定
優先度設定部206は、規制有効範囲の開始位置から自車の現在位置までの間に自車が通過した、交差点の数又は信号の数に基づいて、交通規制マークの優先度を設定し得る。また、優先度設定部206は、規制有効範囲の開始位置から自車の現在位置までの間に自車が通過した、交差点及び信号の両方の数に基づいて、交通規制マークの優先度を設定し得る。具体的には、優先度設定部206は、規制有効範囲の開始位置から自車の現在位置までの間に自車が通過した交差点の数等が設定値以上となった場合に、当該走行時間が設定値未満である場合よりもその交通規制マークの優先度を低く設定し得る。また、優先度設定部206は、複数の設定値を用いて段階的に優先度を低くする構成としてもよい。例えば、優先度設定部206は、規制有効範囲の開始位置から自車の現在位置までの間に自車が通過した交差点の数等が第1設定値以上となった場合に当該走行時間が第1設定値未満である場合よりもその交通規制マークの優先度を低く設定し、当該交差点の数等が第1設定値よりも大きい第2設定値以上となった場合にはその交通規制マークの優先度を更に低く設定してもよい。この設定値は、交通規制マークの種類に応じて異なっていてもよい。また、この設定値は、実際の道路における交通規制マークの規制有効範囲の平均的な交差点の数等に基づいて予め設定され得る。なお、この設定値は、ドライバが事前に入力して設定することとしてもよい。
【0071】
(4)都道府県又は市区町村の境界に基づく優先度の設定
優先度設定部206は、都道府県又は市区町村の境界の存在に基づいて、交通規制マークの優先度を設定し得る。具体的には、優先度設定部206は、交通規制マークが示す規制有効範囲内を走行中に、自車が都道府県又は市区町村の境界を通過した場合に、当該境界を通過する前よりもその交通規制マークの優先度を低く設定し得る。また、優先度設定部206は、通過した境界の数に応じて段階的に優先度を低くする構成としてもよい。なお、優先度設定部206は、特定の道路においては、この設定を適用しなくてもよい。例えば、都道府県又は市区町村の境界を短い区間に複数回通過する道路を自車が走行している場合、優先度設定部206は、自車が当該境界を通過しても、交通規制マークの優先度を低く設定しなくてもよい。
【0072】
なお、都道府県又は市区町村の境界とは、例えば地図データから特定可能な行政区分の境界の一例である。したがって、優先度の設定に使用する境界の定義は、国又は地域により異なり得る。
【0073】
(5)ドライバからの選択に基づく優先度の設定
優先度設定部206は、操作デバイス21を介して受け付けるドライバからの選択に基づいて、交通規制マークの優先度を設定し得る。具体的には、優先度設定部206は、交通規制マークが示す規制有効範囲内を走行中に、ドライバが操作デバイス21を介して交通規制マークの選択を入力した場合に、当該選択前よりもその交通規制マークの優先度を低く設定し得る。また、優先度設定部206は、ドライバからの選択に応じて段階的に優先度を低くする構成としてもよい。
【0074】
(6)ドライバの視線検出に基づく優先度の設定
優先度設定部206は、視線センサにより検出されたドライバの視線に基づいて、交通規制マークの優先度を設定し得る。具体的には、優先度設定部206は、視線センサにより検出されたドライバの視線に基づいて、HUD220により表示されている規制内容情報等をドライバが認識したと判定した場合に、当該判定前よりもその交通規制マークの優先度を低く設定し得る。
【0075】
(7)規制有効範囲の特定に基づく優先度の設定
優先度設定部206は、マーク特定部204により特定された規制有効範囲に基づいて、交通規制マークの優先度を設定し得る。具体的には、
図3のステップS14において規制有効範囲を特定できないと判定されて有効範囲特定不可の時の表示清書処理が実行されている間に、マーク特定部204により規制有効範囲が特定された場合には、優先度設定部206は、残存量特定部205により特定される終了残存量に基づいて、交通規制マークの優先度を設定し得る。なお、この場合、有効範囲特定可の時の表示制御処理(
図4のステップS151以降の処理)が実行されるように構成されていてもよい。
【0076】
(設定した優先度に基づく表示制御)
図3及び
図5のフローチャートに示したように、本実施の形態の車両用表示制御装置20では、残存量特定部205により交通規制マークの規制有効範囲を特定できなかった場合、優先度設定部206により設定された優先度に基づいて、表示制御部207は規制内容情報等の表示の制御を行う。以下、表示制御部207による表示の制御について例を挙げて説明する。
【0077】
表示制御部207による表示制御の内容としては、(A)表示を消去する、(B)表示のサイズを小さくする、(C)表示を薄く(輝度を低く)する、(D)表示の色を変更する、(E)表示の表示領域を切り替える、(F)表示のサイズを大きくする、(G)表示を濃く(輝度を高く)する、(H)ランプ等により表示を強調する等がある。表示制御部207は、優先度設定部206により設定された優先度に基づいて、これらの中から1又は複数の制御を実行する。
【0078】
例えば、車両用表示制御装置20では、上で例示した優先度の設定(1)~(7)と、表示制御(A)~(H)とが予め対応付けられていてもよい。つまり、「(1)規制有効範囲の開始位置からの走行距離に基づく優先度の設定」がされた場合には「(A)表示の消去」を実行する、という対応関係が予め設定されていてもよい。この場合、この優先度の設定と表示制御の内容との対応関係を予め車両用表示制御装置20の不揮発性メモリに格納しておき、表示制御部207はこの対応関係を参照することで交通規制マークに関する表示を制御する構成とすればよい。
【0079】
(有効な交通規制マークが1種類の場合の表示制御例)
図6~
図10を用いて、有効な交通規制マークが1種類の場合の表示制御部207による表示制御の例について説明する。
図6は、規制有効範囲に対する自車の状況の一例を示す模式図である。
図7~
図10は、
図6の自車の走行状況に応じた近位表示領域Pro及び遠位表示領域Disでの規制内容情報及び残存量情報の表示の一例を示す図である。
図7及び
図8は車両位置P1、
図9は車両位置P2、
図10は車両位置P3における表示の一例を示す図である。
図6~
図10では、交通規制マークが「駐車禁止」であって、規制有効範囲が100mである場合を例に挙げて説明する。
【0080】
図6は、規制有効範囲の開始位置に設けられた「駐車禁止」の規制標識及び補助標識といった標識NPSを例示している。また、
図6は、規制有効範囲の終点位置に設けられた「駐車禁止」の規制標識及び補助標識といった標識NPEを例示している。
図6は、自車の車両位置P1~P3を例示している。車両位置P1は、標識NPSと自車の前部とが同じ位置となる車両位置、つまり、「駐車禁止」の規制標識に対応する規制有効範囲(以下、「駐車禁止」の規制有効範囲という)に自車が進入する時点の車両位置を示している。車両位置P2は、標識NPSと標識NPEとの間に自車が位置する場合の車両位置、つまり、「駐車禁止」の規制有効範囲内に自車が位置する場合の車両位置を示している。車両位置P3は、自車が標識NPEを通過する場合の車両位置、つまり、「駐車禁止」の規制有効範囲を退出する時点の車両位置を示している。なお、以降の
図11~
図21も同様である。
【0081】
自車が「駐車禁止」の規制有効範囲に進入する場合(
図6の車両位置P1)、表示制御部207は、
図7に示すように、遠位表示領域Disに、規制内容情報としての「駐車禁止」の標識を模したアイコン画像と、終了残存量を示す残存量情報としての「この先100m」といったテキストとを表示させる。これにより、ドライバに新たに特定された交通規制マークを認知させることができる。このときの規制内容情報と残存量情報との表示は、ドライバの視界の妨げにならないように、遠位表示領域Disのうちの下側に表示させる。ただし、この表示は一時的とし、表示制御部207はその後、
図8に示すように、規制内容情報と残存量情報とについて、近位表示領域Proへの表示に切り替える。
【0082】
自車が「駐車禁止」の規制有効範囲に進入した後から退出時まで(
図6の車両位置P2)は、
図9に示すように、近位表示領域Proに、「駐車禁止」の標識を模したアイコン画像と終了残存量を示す「残り50m」といったテキストとを表示させる。終了残存量を示すテキストは、残存量特定部205で逐次特定する終了残存量に応じて更新して表示させればよい。以降で述べる、有効な交通規制マークが2種類の場合の表示制御例、有効な交通規制マークが3種類以上の場合の表示制御例でも同様である。
【0083】
そして、自車が「駐車禁止」の規制有効範囲を退出する時点(
図6の車両位置P3)では、表示制御部207は、
図10に示すように、近位表示領域Proに、「駐車禁止」の標識を模したアイコン画像と終了残存量としての「ここまで」といったテキストとを表示させる。つまり、「駐車禁止」の交通規制マークが無効になったことを示す。終了残存量として表示させるテキストは、規制有効範囲の終了地点に設けられた補助標識から認識した内容を表示させる構成としてもよい。また、終了残存量として表示させるテキストは、「残り0m」等としてもよい。以降で述べる、有効な交通規制マークが2種類の場合の表示制御例、有効な交通規制マークが3種類以上の場合の表示制御例でも同様である。
【0084】
表示制御部207は、自車が「駐車禁止」の規制有効範囲を退出した場合には、それまで近位表示領域Proに表示させていた規制内容情報と残存量情報とを消去させる。つまり、退出した規制有効範囲に対応する規制内容情報と残存量情報との表示を終了させる。なお、表示制御部207は、規制有効範囲への進入をドライバに予告する目的で、自車が規制有効範囲に進入する前に、その規制有効範囲についての開始残存量を示す残存量情報を規制内容情報とともに遠位表示領域Disに表示させる構成としてもよい。
【0085】
(有効な交通規制マークが2種類の場合の表示制御例)
図11~
図20を用いて、有効な交通規制マークが2種類の場合の表示制御部207による表示制御例について説明を行う。
図11~
図20では、交通規制マークが「追越し禁止」と「駐車禁止」とであって、「追越し禁止」の規制有効範囲が800m、「駐車禁止」の規制有効範囲が100mである場合を例に挙げて説明を行う。また、
図11~
図20では、「追越し禁止」の規制有効範囲の途中で「駐車禁止」の規制有効範囲が重複する場合を例に挙げて説明を行う。
図11は、規制有効範囲に対する自車の状況の例を示す模式図である。
図12~
図20は、
図11の自車の走行状況に応じた近位表示領域Pro及び遠位表示領域Disでの規制内容情報及び残存量情報の表示の一例を示す図である。詳細には、
図12~
図18はそれぞれ車両位置P11~P17における表示の一例を示す図であり、
図19及び
図20は車両位置P14における表示の別の例を示す図である。
【0086】
図11に示す例では、標識NPSは、「駐車禁止」の規制有効範囲の開始位置に設けられた「駐車禁止」の規制標識及び補助標識といった標識を示している。また、標識NPEは、この規制有効範囲の終点位置に設けられた「駐車禁止」の規制標識及び補助標識といった標識を示している。さらに、
図11に示す例では、標識PPSは、「追越し禁止」の規制有効範囲の開始位置に設けられた「追越し禁止」の規制標識及び補助標識といった標識を示している。また、標識PPEは、この規制有効範囲の終点位置に設けられた「追越し禁止」の規制標識及び補助標識といった標識を示している。
【0087】
図11は、自車の車両位置P11~P17を例示している。車両位置P11は、自車が「追越し禁止」の規制有効範囲に進入する前の車両位置を示している。車両位置P12は、標識PPSと自車の前部とが同じ位置となる車両位置、つまり、「追越し禁止」の規制標識に対応する規制有効範囲(以下、「追越し禁止」の規制有効範囲という)に自車が進入する時点の車両位置を示している。車両位置P13は、標識NPSと自車の前部とが同じ位置となる車両位置、つまり、「駐車禁止」の規制有効範囲に自車が進入する時点の車両位置を示している。車両位置P14は、自車が「追越し禁止」の規制有効範囲と「駐車禁止」の規制有効範囲との両方の範囲内に位置する場合の車両位置を示している。車両位置P15は、自車が標識NPEを通過する場合の車両位置、つまり、「駐車禁止」の規制有効範囲を退出する時点の車両位置を示している。車両位置P16は、自車が標識PPEを通過する場合の車両位置、つまり、「追越し禁止」の規制有効範囲を退出する時点の車両位置を示している。車両位置P17は、「追越し禁止」の規制有効範囲を退出した後の車両位置を示している。
【0088】
自車が「追越し禁止」の規制有効範囲に進入する前(
図11の車両位置P11)には、表示制御部207は、
図12に示すように、遠位表示領域Disに、規制内容情報としての「追越し禁止」の標識を模したアイコン画像と、開始残存量を示す残存量情報としての「100m先」といったテキストとを表示させる。
【0089】
自車が「追越し禁止」の規制有効範囲に進入する場合(
図7の車両位置P12)、表示制御部207は、
図13に示すように、近位表示領域Proに、規制内容情報としての「追越し禁止」の標識を模したアイコン画像と、規制有効範囲が開始することを示す「ここから」といったテキストとを表示させる。表示制御部207は、遠位表示領域Disには、規制内容情報としての「駐車禁止」の標識を模したアイコン画像と、開始残存量を示す残存量情報としての「100m先」といったテキストとを表示させる。
【0090】
なお、表示制御部207は、近位表示領域Proに規制有効範囲が開始することを示すテキストを表示させる代わりに、終了残存量を示す残存量情報としての「この先800m」といったテキストとを表示させる構成としてもよい。また、「ここから」といったテキストを一時的に表示させた後に、「この先800m」といったテキストの表示に切り替えさせる構成としてもよい。
【0091】
続いて、自車が「駐車禁止」の規制有効範囲に進入する場合(
図11の車両位置P13)、表示制御部207は、
図14に示すように、近位表示領域Proに、新しく有効となる交通規制マークに対応する、規制内容情報としての「駐車禁止」の標識を模したアイコン画像と、規制有効範囲が開始することを示す「ここから」といったテキストとを表示させる。表示制御部207は、遠位表示領域Disには、既に有効となっていた交通規制マークに対応する、規制内容情報としての「追越し禁止」の標識を模したアイコン画像と、終了残存量を示す残存量情報としての「残り800m」といったテキストとを表示させる。なお、表示制御部207は、新しく有効となる交通規制マークに対応する情報を近位表示領域Proに表示させるのに伴って、すでに有効となっていた交通規制マークに対応する情報を近位表示領域Proでの表示から遠位表示領域Disでの表示に遷移させる構成としてもよい。
【0092】
自車が「追越し禁止」の規制有効範囲と「駐車禁止」の規制有効範囲とが重複した領域に位置する場合(
図11の車両位置P14)は、表示制御部207は、
図15に示すように、近位表示領域Proに、終了残存量のより少ない「駐車禁止」の規制有効範囲に対応する、「駐車禁止」の標識を模したアイコン画像と、終了残存量を示す「残り60m」といったテキストとを表示させる。一方、表示制御部207は、遠位表示領域Disに、終了残存量のより多い「追越し禁止」の規制有効範囲に対応する、「追越し禁止」の標識を模したアイコン画像と、終了残存量を示す「残り760m」といったテキストとを表示させる。これによれば、終了残存量のより少ない規制有効範囲についての規制内容情報及び残存量情報が優先して近位表示領域Proに表示されるので、ドライバが複数種類の交通規制マークが示すそれぞれの規制有効範囲についての自車の状況をより容易に認識することが可能になる。
【0093】
表示制御部207は、優先度設定部206で設定される優先度がより高い交通規制マークについての情報を近位表示領域Proに表示させ、優先度がより低い交通規制マークについての情報を遠位表示領域Disに表示させる構成とすればよい。表示制御部207は、優先度がより低い交通規制マークについての規制内容情報及び残存量情報を表示する表示領域を、近位表示領域Proから遠位表示領域Disに切り替えた場合に、この遠位表示領域Disに表示させる規制内容情報及び残存量情報を、当初に遠位表示領域Disに表示させていたよりも目立たない態様で表示させる。
【0094】
ここで言うところの当初とは、自車がこの交通規制マークについての規制有効範囲に進入した時点を示している。また、目立たない態様としては、表示させるサイズを小さくする表示態様、表示させる輝度を低くする表示態様、表示させる位置を遠位表示領域Disの中央からより外れた位置とさせる表示態様等が挙げられる。これによれば、ドライバの視界を妨げないようにしつつ、規制有効範囲の進入時に遠位表示領域Disに表示させる情報とのドライバによる区別をより容易にすることが可能になる。
【0095】
そして、自車が「駐車禁止」の規制有効範囲を退出する時点(
図11の車両位置P15)では、表示制御部207は、
図16に示すように、近位表示領域Proに「駐車禁止」の標識を模したアイコン画像と終了残存量としての「ここまで」といったテキストとを表示させる。つまり、「駐車禁止」の交通規制マークが無効になったことを示す。表示制御部207は、遠位表示領域Disには、「追越し禁止」の規制有効範囲に対応する規制内容情報及び残存量情報を継続して表示させる。具体例としては、表示制御部207は、「追越し禁止」の標識を模したアイコン画像と、終了残存量を示す「残り700m」といったテキストとを表示させる。
【0096】
自車が「追越し禁止」の規制有効範囲を退出する時点(
図11の車両位置P16)では、表示制御部207は、
図17に示すように、近位表示領域Proに「追越し禁止」の標識を模したアイコン画像と終了残存量としての「ここまで」といったテキストとを表示させる。つまり、「追越し禁止」の交通規制マークが無効になったことを示す。表示制御部207は、遠位表示領域Disでの「追越し禁止」の規制有効範囲に対応する規制内容情報及び残存量情報の表示は終了させる。
【0097】
自車が「追越し禁止」の規制有効範囲を退出した場合(
図11の車両位置P17)には、表示制御部207は、
図18に示すように、近位表示領域Proに表示させていた規制内容情報と残存量情報とを消去させる。また、有効な交通規制マークがないので、表示制御部207は、
図18に示すように、遠位表示領域Disにも規制内容情報と残存量情報とを表示させない。
【0098】
なお、
図15では、終了残存量のより少ない交通規制マークの優先度をより高くする場合の例を示したが、必ずしもこれに限らない。優先度設定部206での優先度の設定によっては、
図19に示すように、近位表示領域Proに、「追越し禁止」の規制有効範囲に対応する規制内容情報及び残存量情報を表示させる一方、遠位表示領域Disに、「駐車禁止」の規制有効範囲に対応する規制内容情報及び残存量情報を表示させる構成としてもよい。
【0099】
また、
図7~
図10、及び
図12~
図19では、開始残存量、終了残存量として、残り走行距離を表示させる構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、
図20に示すように、残存量として残り走行時間を表示させる構成としてもよい。
【0100】
(有効な交通規制マークが3種類以上の場合の表示制御例)
図21を用いて、有効な交通規制マークが3種類以上の場合の表示制御部207による表示制御の例について説明を行う。
図21は、自車の走行状況に応じた近位表示領域Pro及び遠位表示領域Disでの規制内容情報及び残存量情報の表示の別の例を示す図である。
図21では、交通規制マークが「追越し禁止」と「駐車禁止」と「車両横断禁止」との3種類である場合を例に挙げて説明を行う。なお、この3種類の交通規制マークの規制有効範囲が重複した領域に位置する以外の場合については、前述した有効な交通規制マークが2種類以上の場合と同様であるので、説明は省略する。
【0101】
自車が「追越し禁止」の規制有効範囲と「駐車禁止」の規制有効範囲と「車両横断禁止」の規制有効範囲が重複した領域に位置する場合は、表示制御部207は、優先度設定部206で設定される優先度が最も高い交通規制マークについての規制内容情報及び残存量情報を近位表示領域Proに表示させる。一方、表示制御部207は、残りの交通規制マークについての規制内容情報及び残存量情報に関しては、優先度設定部206で設定される優先度の高いものから近位表示領域Proに近い順に並べて遠位表示領域Disに表示させる構成とすればよい。
【0102】
これによれば、設定される優先度の順に並べることで、ドライバが3種類以上の交通規制マークが示すそれぞれの規制有効範囲についての自車の状況をより容易に認識することが可能になる。例えば、終了残存量のより少ない規制有効範囲に対する交通規制マークの優先度をより高く設定する場合には、終了残存量のより少ない規制有効範囲についての情報ほど、近位表示領域Proに近い位置に表示されるので、ドライバがそれぞれの規制有効範囲についての残存量の多寡の順を直感的に認識することが可能になる。
【0103】
また、表示制御部207は、優先度設定部206で設定される優先度の高い交通規制マークについての規制内容情報及び残存量情報ほど、サイズを大きくして表示させ、又は輝度を高くして表示させることで、同様の効果を奏するようにしてもよい。
【0104】
なお、前述した例では、交通規制マークとして「追越し禁止」、「駐車禁止」、「車両横断禁止」を例に挙げて説明を行ったが、必ずしもこれに限らない。交通規制マークとしては、交通規制マークが示す規制に領域的な有効範囲が定められているものであれば、「制限速度」等の他の交通規制マークについて適用する構成としてもよい。
【0105】
(まとめ)
以上のように、本実施の形態において、車両用表示制御装置20は、マーク認識部203、マーク特定部204、及び表示制御部207を備える。表示制御部207は、マーク特定部204により規制有効範囲を特定できなかった場合、規制内容情報の表示を、所定条件が成立した場合に切り替える。
【0106】
これにより、規制有効範囲が特定されず終了残存量が特定されていない交通規制マークについて、自車が規制有効範囲を退出してもその規制内容情報等の表示が継続されることを抑制し得る。したがって、本実施の形態によれば、規制有効範囲に対する自車の状況をドライバがより容易に認識し得るとともに、ドライバにとってより適切な規制内容情報等の表示を実現し得る。
【0107】
また、本実施の形態に係る車両用表示制御装置20は、優先度設定部206を更に備え、表示制御部207は、マーク特定部204により規制有効範囲を特定できなかった場合、規制内容情報の表示を、優先度設定部206による優先度の設定に基づいて所定条件が成立した場合に切り替える。
【0108】
これにより、規制有効範囲が特定されず終了残存量が特定されていない交通規制マークについても、優先度設定部206により設定された優先度に基づいて表示制御がされることとなり、自車が規制有効範囲を退出してもその規制内容情報等の表示が継続されることを抑制し得る。したがって、本実施の形態によれば、規制有効範囲に対する自車の状況をドライバがより容易に認識し得るとともに、ドライバにとってより適切な規制内容情報等の表示を実現し得る。
【0109】
また、本実施の形態によれば、規制有効範囲に対する自車の状況(つまり、位置関係)に応じて、規制内容情報及び残存量情報を表示させる表示領域を切り替える。これにより、規制内容情報及び残存量情報を表示させる表示領域の遷移によって、ドライバが規制有効範囲に対する自車の状況をより容易に認識し得る。具体例としては、規制有効範囲の進入時に最初は遠位表示領域Disに規制内容情報及び残存量情報を表示させた後、近位表示領域Proに遷移させることで、規制有効範囲に新たに進入したことをドライバがより容易に認識し得る。
【0110】
さらに、本実施の形態によれば、複数種類の交通規制マークが示す規制有効範囲がお互いに重複している領域に自車が位置する場合、自車の状況に応じて、それぞれの規制有効範囲についての規制内容情報及び残存量情報を表示させる表示領域を切り替える。これにより、ドライバがそれぞれの規制有効範囲に対する自車の状況をより容易に認識し得る。例えば、規制有効範囲の進入時に最初は遠位表示領域Disに規制内容情報及び残存量情報を表示させることで、どの規制有効範囲に新たに進入したかをドライバがより容易に認識し得る。また、それぞれの規制有効範囲についての規制内容情報及び残存量情報を表示領域に表示させることで、それぞれの規制有効範囲に対する自車の状況をドライバがより容易に認識し得る。
【0111】
なお、本実施の形態においては、規制有効範囲が特定されなかった場合には所定条件の成立に基づいて規制内容情報の表示が切り替えられるように当該所定条件が予め定めされている場合を例示したが、これに限らない。規制有効範囲が特定されなかった場合には所定条件の不成立に基づいて規制内容情報の表示が切り替えられるように、当該所定条件が予め定められていてもよい。
【0112】
(他の実施の形態)
上記の実施の形態では、「規制有効範囲に対する自車の状況に基づく優先度の設定」において挙げた優先度の設定(1)~(7)と、「設定した優先度に基づく表示制御」において挙げた表示制御(A)~(H)とが予め対応付けられている例を示したが、1種類以上の優先度の設定と1種類以上の表示制御とが対応付けられていてもよい。
【0113】
例えば、1種類の優先度の設定(1)と2種類の表示制御(A)、(B)とが対応付けられていてもよい。この場合、規制有効範囲の開始位置からの自車の走行距離が第1設定値以上となった場合に規制内容情報等の表示のサイズを小さくし、当該走行距離が第1設定値よりも大きい第2設定値以上となった場合にその規制内容情報等の表示を消去することとしてもよい。
【0114】
別の例として、2種類の優先度の設定(1)、(3)と2種類の表示制御(A)、(B)とが対応付けられていてもよい。この場合、規制有効範囲の開始位置からの自車の走行距離が第1設定値以上となった場合に規制内容情報等の表示のサイズを小さくし、規制有効範囲の開始位置から自車の現在位置までの間に自車が通過した交差点の数が第2設定値以上となった場合にその規制内容情報等の表示を消去することとしてもよい。
【0115】
また、上述した優先度の設定(1)~(7)のそれぞれに重み付けがされ、それに基づいて上述した表示制御(A)~(H)が対応付けられていてもよい。この場合、例えば、重み付けが低いものから順に、(A)表示を消去する、(C)表示を薄くする、(B)表示のサイズを小さくする、の表示制御が対応付けられるようにしてもよい。例えば、優先度の設定について、(1)の走行距離に基づく優先度の設定よりも(5)のドライバの選択に基づく優先度の設定の方に高い重み付けが設定されている場合を考える。この場合、規制有効範囲の開始位置からの自車の走行距離が設定値以上となった場合には規制内容情報等の表示サイズを小さくし、ドライバにより交通規制マークの選択がされた場合にはその規制内容情報等の表示を消去するというように、重み付けに対応付けられた表示制御がされてもよい。さらに、この重み付け及び重み付けに応じた表示制御の対応付けは、交通規制マークの種類に応じて異なっていてもよい。
【0116】
また、上述した優先度の設定と表示制御との対応付けや、優先度の設定に関する重み付け、そして表示制御は、サーバ7から自車に送信される情報に基づいて設定されてもよい。例えば、サーバ7から送信される情報は自車のドライバの走行履歴に基づいて生成されたドライバモデルであって、車両用表示制御装置20ではこのドライバモデルに基づいて、優先度の設定と表示制御との対応付けや優先度の設定に関する重み付けがされてもよい。この場合、車両用表示制御装置20は、自車のドライバの運転傾向に基づいて、より自車のドライバに適した表示制御をなし得る。具体的には、自車のドライバについて制限速度を超過する傾向が強い場合、車両用表示制御装置20はこの傾向を示すドライバモデルに基づいて、制限速度の道路標識についての優先度の設定の重み付けを高く設定する。これにより、この規制内容情報等の表示について、高い優先度に基づく表示制御がされることとなり、このドライバによる制限速度の超過を抑制し得、すなわちドライバに適した表示制御をなし得る。なお、ここでいうドライバモデルは、ドライバ個人や自車単体を対象としたものに限られず、複数人の集団や多数の車両を対象としてその行動パターン等をモデル化したものであってもよい。
【0117】
別の例として、サーバ7から送信される情報は、自車が走行中の経路における過去の交通違反や交通事故のデータであって、車両用表示制御装置20ではこのデータに基づいて、優先度の設定と表示制御との対応付けや優先度の設定に関する重み付けがされてもよい。これにより、例えば、交通違反又は交通事故の原因との関連が強い交通規制マークについての優先度の設定の重み付けを高く設定することができ、交通違反及び交通事故を抑制し得る。
【0118】
さらに別の例として、サーバ7から送信される情報は、自車が走行中の経路を走行する他の車両における表示制御の情報であって、車両用表示制御装置20ではこの表示制御の情報に基づいて規制内容情報等の表示制御を実行してもよい。これにより、自車のドライバが操作デバイス21を介して入力等することなく、不要な規制内容情報等の表示を消去する等の表示制御をなし得る。
【0119】
また、上記の実施の形態では、規制内容情報及び残存量情報を表示させる複数の表示領域が、HUD220の複数の投影領域にそれぞれ対応する虚像の表示領域である構成を例に挙げて説明したが、必ずしもこれに限らない。例えば、規制内容情報及び残存量情報を表示させる複数の表示領域は、HUD220による表示領域とHUD220以外の種類の表示装置22の表示領域とである構成としてもよい。HUD220以外の種類の表示装置22として用いる表示装置22は、ドライバの視線の移動を小さく抑えることができるように、前述したコンビネーションメータ、CID等とすることが好ましい。
【0120】
例えば、上記の実施の形態の遠位表示領域DisとしてHUD220による表示領域を用い、近位表示領域Proとしてコンビネーションメータ又はCIDの表示領域を用いる構成とすればよい。なお、遠位表示領域Disとしてコンビネーションメータ又はCID表示領域を用い、コンビネーションメータとCIDとの表示領域のうち遠位表示領域Disとして用いないものを近位表示領域Proとして用いる構成としてもよい。この場合、CIDの表示領域とコンビネーションメータの表示領域とが上下方向に並んでいることが、ドライバの視線の移動を小さく抑える観点から好ましい。
【0121】
また、上記の実施の形態では、規制内容情報及び残存量情報を表示可能な表示領域が2つである場合の例を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、規制内容情報及び残存量情報を表示可能な表示領域が3つ以上である構成であってもよい。この場合にも、複数の表示領域のうちの運転席に着座したドライバからより遠位に見える像を表示する表示領域に規制内容情報及び残存量情報を表示させた後に、その規制内容情報及び残存量情報を表示させる表示領域を、運転席に着座したドライバからより近位に見える像を表示する表示領域に切り替える構成とすればよい。
【0122】
上記の実施の形態の車両用表示制御装置20で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
【0123】
また、上記の実施の形態の車両用表示制御装置20で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、上記の実施の形態の車両用表示制御装置20で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供又は配布するように構成してもよい。また、上記の実施の形態の車両用表示制御装置20で実行されるプログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0124】
本開示のいくつかの実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0125】
(付記)
上記実施の形態から明らかなように、本開示は、下記の態様を含む。以下では、実施の形態との対応関係を明示するためだけに、符号を括弧付きで付している。
【0126】
第1の態様の車両用表示制御装置(20)は、規制認識部(203)と、有効範囲特定部(204)と、表示制御部(207)と、を備える。規制認識部(203)は、自車の進路上に設けられた交通の規制を示す交通規制マークを認識する。有効範囲特定部(204)は、規制認識部(203)により認識された交通規制マークに基づいて、交通規制マークが示す規制の有効範囲である規制有効範囲を特定する。表示制御部(207)は、規制認識部(203)により認識された交通規制マークが示す規制の内容である規制内容情報を表示領域に表示するように、自車に搭載された表示装置(22)を制御する。表示制御部(207)は、有効範囲特定部(204)により規制有効範囲を特定できなかった場合、規制内容情報の表示を、所定条件が成立した場合に切り替える。第1の態様によれば、有効範囲を特定できなかった場合に、有効範囲を退出後に規制内容情報の表示が切り替えられずに表示され続けることを抑制し得る。このため、有効範囲に対する自車の状況をドライバが容易に認識し得る。
【0127】
第2の態様の車両用表示制御装置(20)は、第1の態様との組合せにより実現され得る。第2の態様では、表示領域は、それぞれ位置の異なる複数の表示領域である。表示制御部(207)は、有効範囲特定部により規制有効範囲を特定できなかった場合、規制内容情報を表示させる表示領域を、所定条件が成立した場合に切り替える。第2の態様によれば、有効範囲を特定できなかった場合に、有効範囲を退出後に規制内容情報が優先度の高い表示領域に表示され続けることを抑制し得る。このため、有効範囲に対する自車の状況をドライバが容易に認識し得る。
【0128】
第3の態様の車両用表示制御装置(20)は、第1又は第2の態様との組合せにより実現され得る。第3の態様では、車両用表示制御装置(20)は、残存量特定部(205)を更に備える。残存量特定部(205)は、自車の車両位置から規制有効範囲の終了までに要する残り走行距離及び残り走行時間の少なくともいずれかである残存量を特定する。表示制御部(207)は、規制内容情報に加えて、残存量特定部(205)で特定した残存量を示す残存量情報を表示領域に表示させる。表示制御部(207)は、有効範囲特定部により規制有効範囲を特定できなかった場合、残存量情報の表示を、所定条件が成立した場合に切り替える。第3の態様によれば、有効範囲を特定できなかった場合に、有効範囲を退出後に残存量情報の表示が切り替えられずに表示され続けることを抑制し得る。このため、有効範囲に対する自車の状況をドライバが更に容易に認識し得る。
【0129】
第4の態様の車両用表示制御装置(20)は、第1~第3の態様のいずれか1つとの組合せにより実現され得る。第4の態様では、有効範囲特定部(204)は、少なくとも自車の前方の所定範囲を撮像範囲とする画像センサにより取得された画像に基づいて規制有効範囲を特定する。有効範囲特定部(204)により規制有効範囲を特定できなかった場合とは、画像センサにより取得された画像に基づいて規制有効範囲を特定できなかった場合である。第4の態様によれば、画像センサにより取得された画像に基づいて有効範囲を特定できなかった場合に、有効範囲を退出後に残存量情報が優先度の高い表示領域に表示され続けることを抑制し得る。このため、有効範囲に対する自車の状況をドライバが更に容易に認識し得る。
【0130】
第5の態様の車両用表示制御装置(20)は、第1~第4の態様のいずれか1つとの組合せにより実現され得る。第5の態様では、所定条件は、規制有効範囲の開始位置から自車の車両位置までの走行距離が設定値以上となったことである。第5の態様によれば、規制有効範囲の開始位置からの自車の走行距離が設定値以上となった場合に、規制内容情報を表示させる表示領域を切り替えることができる。このため、有効範囲に対する自車の状況をドライバが更に容易に認識し得る。
【0131】
第6の態様の車両用表示制御装置(20)は、第1~第4の態様のいずれか1つとの組合せにより実現され得る。第6の態様では、所定条件は、規制有効範囲の開始位置から自車の車両位置までに要した時間が設定値以上となったことである。第6の態様によれば、規制有効範囲の開始位置からの自車の走行時間が設定値以上となった場合に、規制内容情報を表示させる表示領域を切り替えることができる。このため、有効範囲に対する自車の状況をドライバが更に容易に認識し得る。
【0132】
第7の態様の車両用表示制御装置(20)は、第1~第4の態様のいずれか1つとの組合せにより実現され得る。第7の態様では、所定条件は、規制有効範囲の開始位置から自車の車両位置までの間に存在する交差点又は信号の数が設定値以上となったことである。第7の態様によれば、規制有効範囲の開始位置から自車が通過した交差点又は信号の数が設定値以上となった場合に、規制内容情報を表示させる表示領域を切り替えることができる。このため、有効範囲に対する自車の状況をドライバが更に容易に認識し得る。
【0133】
第8の態様の車両用表示制御装置(20)は、第1~第4の態様のいずれか1つとの組合せにより実現され得る。第8の態様では、所定条件は、自車が都道府県又は市区町村の境界を通過したことである。第8の態様によれば、自車が都道府県又は市区町村の境界を通過した場合に、規制内容情報を表示させる表示領域を切り替えることができる。このため、有効範囲に対する自車の状況をドライバが更に容易に認識し得る。
【0134】
第9の態様の車両用表示制御装置(20)は、第1~第4の態様のいずれか1つとの組合せにより実現され得る。第9の態様では、所定条件は、ユーザからの選択を受け付けたことである。第9の態様によれば、ドライバの意思に基づいて規制内容情報を表示させる表示領域を切り替えることができる。このため、ドライバの意思に沿った規制内容情報の表示制御を実現し得る。
【0135】
第10の態様の車両用表示制御装置(20)は、第1~第4の態様のいずれか1つとの組合せにより実現され得る。第10の態様では、所定条件は、ユーザの視線の方向を検出する視線センサの検出結果に基づいて、規制内容情報をユーザが認識したと判定したことである。第10の態様によれば、ドライバがすでに認識した規制内容情報について、その表示をさせる表示領域を切り替えることができる。このため、ドライバが認識すべき規制内容情報を優先的に表示し得る。
【0136】
第11の態様の車両用表示制御方法は、規制認識ステップと、有効範囲特定ステップと、表示制御ステップと、を含む。規制認識ステップは、自車の進路上に設けられた交通の規制を示す交通規制マークを認識する。有効範囲特定ステップは、規制認識ステップにより認識された交通規制マークに基づいて、交通規制マークが示す規制の有効範囲である規制有効範囲を特定する。表示制御ステップは、規制認識ステップにより認識された交通規制マークが示す規制の内容である規制内容情報を表示領域に表示するように、自車に搭載された表示装置(22)を制御する。表示制御ステップは、有効範囲特定ステップにより規制有効範囲を特定できなかった場合、規制内容情報の表示を、所定条件が成立した場合に切り替える。第11の態様によれば、有効範囲を特定できなかった場合に、有効範囲を退出後に規制内容情報の表示が切り替えられずに表示され続けることを抑制し得る。このため、有効範囲に対する自車の状況をドライバが容易に認識し得る。
【符号の説明】
【0137】
1 車両システム
2 HMIシステム
3 ロケータ
4 地図データベース
5 車両状態センサ
6 周辺監視センサ
7 サーバ
10 ウインドシールド
11 インストルメントパネル
20 車両用表示制御装置
21 操作デバイス
22 表示装置
100a、100b 虚像
201 速度取得部
202 車両位置取得部
203 マーク認識部(規制認識部)
204 マーク特定部(有効範囲特定部)
205 残存量特定部
206 優先度設定部
207 表示制御部
220 HUD
221 プロジェクタ
222 光学系