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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】クッション装置
(51)【国際特許分類】
   A47C 27/15 20060101AFI20241127BHJP
【FI】
A47C27/15 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018105617
(22)【出願日】2018-05-31
(65)【公開番号】P2019208699
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-05-10
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】599083411
【氏名又は名称】株式会社 MTG
(74)【代理人】
【識別番号】100111567
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 寛
(72)【発明者】
【氏名】稲田 二千武
(72)【発明者】
【氏名】松下 剛
【合議体】
【審判長】一ノ瀬 覚
【審判官】筑波 茂樹
【審判官】草野 顕子
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-516117(JP,A)
【文献】特開2007-14415(JP,A)
【文献】登録実用新案第3101827(JP,U)
【文献】登録実用新案第3116453(JP,U)
【文献】特開2017-70452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 27/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クッション材と、
前記クッション材を、使用者が載置される側の面である上面に交差する方向に屈曲させるための機構と、を備え、
前記クッション材は、前記上面の面内方向における第1方向に延びる複数の第1部分と、複数の前記第1部分の間において前記第1部分と一体に形成された、前記第1部分よりも変形し易い複数の第2部分と、を有し、
前記第1部分は、前記クッション材の前記上面に形成された、前記第1方向に延びる山部であり、
前記第2部分は、前記クッション材の前記上面に形成された、隣接する前記山部に挟まれた溝部であり、
前記第1方向は、前記上面に載置される使用者の身長方向であり、
前記山部及び前記溝部は、前記上面において前記第1方向に直交する第2方向に複数繰り返し配置され、
前記機構は、複数のセル又は複数のアクチュエータを含み、前記クッション材を押し上げるように、前記クッション材の下面側に配置され、
前記複数のセル又は前記複数のアクチュエータの各々は、前記クッション材において前記第2方向に複数繰り返し配置された前記山部及び前記溝部のうちの一部である複数の山部及び複数の溝部の範囲を部分的に押し上げるように、前記一部である複数の山部及び複数の溝部の前記範囲の下方に配置されている
クッション装置。
【請求項2】
前記第1部分は、前記第1方向に直交する断面が三角形状である
請求項1に記載のクッション装置。
【請求項3】
前記クッション材は、前記第1方向に直交する第2方向に分割されている
請求項1又は請求項2に記載のクッション装置。
【請求項4】
前記クッション材は、前記上面を構成する第1層と、前記第1層の素材よりも固い素材で成形された前記上面の裏面側を構成する第2層とを含む積層構造である
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のクッション装置。
【請求項5】
前記第1部分及び前記第2部分は、前記第1層に設けられている
請求項4に記載のクッション装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、クッション装置及びクッション材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、マット型のマッサージ機であって、使用者の身長方向に沿って並ぶ複数の分割体を含むマット本体と、分割体それぞれに設けられたエアセルと、を有するマッサージ機が開示されている。このマッサージ機は、複数のエアセルの膨張が独立して制御されることによって、マッサージ機に横たわる使用者の身体の一部を持ち上げる動作を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-143939号公報
【発明の概要】
【0004】
特許文献1に示されたようなマット型のマッサージ機において、エアセルの膨張がマットを介して使用者に適切に伝わらないと使用者の身体に意図した動作をさせることができない。特に、使用者の身体に複雑な動きをさせる場合、エアセルなどのマットを持ち上げる機構による持ち上げる動作をより効果的に使用者の身体に伝えることが重要である。
【0005】
ある実施の形態に従うと、クッション装置は、使用者の載置面を有するクッション材と、クッション材を載置面に交差する方向に屈曲させるための機構と、を備え、クッション材は、載置面の面内方向における第1方向に延びる複数の第1部分と、複数の第1部分の間において第1部分と一体に形成された、第1部分よりも変形し易い第2部分と、を有する。
【0006】
他の実施の形態に従うと、クッション材は使用者の載置面を有するクッション材であって、載置面の面内方向における第1方向に延びる複数の第1部分と、複数の第1部分の間において第1部分と一体に形成された、第1部分よりも変形し易い第2部分と、を有する。
更なる詳細は、後述の実施の形態として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施の形態にかかる睡眠装置の構成の概略を示す斜視図である。
図2図2は、睡眠装置の構成の概略を示すブロック図である。
図3図3は、睡眠装置に含まれるマットレスの分解斜視図である。
図4図4は、マットレスにおけるエアセルの配置状態を説明するための図である。
図5図5は、マットレスを構成するウレタン層の一部の概略図である。
図6図6は、睡眠装置の制御ユニットに含まれるメモリに記憶されているストレッチコースの具体例について説明するための図である。
図7図7は、ウレタン層に設けられたラインの、ウレタン層の変形に対する影響を説明するための図である。
図8図8は、ウレタン層に設けられたラインの、ウレタン層の変形に対する影響を説明するための図である。
図9図9は、比較例にかかるマットレスの構造を表した概略図である。
図10図10は、第2の実施の形態にかかるマットレスの構造を説明するための概略図である。
図11図11は、ウレタン層の構造の他の例を示した概略図である。
図12図12は、ウレタン層の構造の他の例を示した概略図である。
図13図13は、ウレタン層の構造の他の例を示した概略図である。
図14図14は、ウレタン層の構造の他の例を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[1.クッション装置及びクッション材の概要]
【0009】
(1)本実施の形態に含まれるクッション装置は、使用者の載置面を有するクッション材と、クッション材を載置面に交差する方向に屈曲させるための機構と、を備え、クッション材は、載置面の面内方向における第1方向に延びる複数の第1部分と、複数の第1部分の間において第1部分と一体に形成された、第1部分よりも変形し易い第2部分と、を有する。
【0010】
クッション装置はクッションを有する装置であって、ここでは、使用者の載置面を有するクッション材を含むクッションを有する装置である。このクッション装置は、たとえば、マットレス、介護用ベッド、マッサージチェア、椅子、乗り物の座席、などである。
【0011】
クッション材を載置面に交差する方向に屈曲させるための機構は、載置面が上面である場合、たとえば、クッション材を押し上げるための機構である。クッション材を押し上げるための機構は、たとえば、エアセルを含む。エアセルに替えて、アクチュエータや液体などの流体を充填するセル(流体セル)であってもよい。アクチュエータは、たとえば、モータ駆動アクチュエータ、エアシリンダ又は油圧シリンダなどの流体アクチュエータである。
【0012】
クッション材の上面に第1部分と第2部分とが形成されていることによって、第1方向と直行する第2方向には、クッション材を載置面に交差する方向に屈曲させるための機構によって押し上げられる力が第2部分に吸収されて伝搬されにくい。そのため、押し上げられる力が作用する範囲を第2方向には局所的とすることができる。一方で、第1方向には、第1部分が押し上げられる力を伝搬するリブとして機能するために押し上げられる力が作用する範囲は広範囲に及ぶ。つまり、第1方向と第2方向とでクッション材が押し上げられる範囲を異ならせることができる。これにより、クッション材の上面の使用者に対して、たとえば「腰ひねり」や「上半身起こし」などを効果的に行わせることができる。
【0013】
(2)好ましくは、第2部分は、複数の前記第1部分の間に形成された溝である。クッション材の上面に第1方向に延びる溝部及び山部(ライン)が形成されていることによって、クッション材上面に載置される使用者をエアセルの膨張等によって押し上げる際にラインが押し上げに伴って変形する。
【0014】
(3)好ましくは、第1部分は、前記第1方向に直交する断面が三角形状である。これにより、ラインが押し上げに伴って変形するクッション材の上面に載置される使用者に接する面の角度が変化する。このため、使用者はクッション材の押し上げをクッション材と接触した感覚でも実感できる。
【0015】
(4)好ましくは、クッション材は、第1方向に直交する第2方向に分割されている。これにより、クッション材の折り畳み性、持ち運び性が向上するのみならず、上記機構による押し上げる力の第1方向への伝搬が分断される。これにより、押し上げる機構の力を効果的に使用者に作用させることができる。
【0016】
(5)好ましくは、第1方向は、載置面に載置される使用者の身長方向である。これにより、身長方向と直行する方向には、クッション材を屈曲させるための機構によって押し上げられる力がラインの溝部分に吸収されて伝搬されにくい。そのため、押し上げられる力が作用する範囲を身長方向と直行する方向には局所的とすることができる。一方で、身長方向には、ラインが押し上げられる力を伝搬するリブとして機能するために押し上げられる力が作用する範囲は広範囲に及ぶ。つまり、身長方向とその方向に直行する方向とでマットレスが押し上げられる範囲を異ならせることができる。これにより、マットレスの上面の使用者に対して、たとえば「腰ひねり」や「上半身起こし」などを効果的に行わせることができる。
【0017】
(6)好ましくは、クッション材は、載置面を構成する第1層と、第1層の素材よりも固い素材で成形された載置面の裏面側を構成する第2層とを含む積層構造である。第1層を柔らかい素材で成形することで、第1層による使用者へのクッション性を確保できる。第1層の下方にそれよりも固い素材で成形された第2層を設けることで、下にある押し上げる機構によって押し上げられる範囲は第2層がない場合よりも広くなる。その結果、第1層にかかる単位面積当たりの圧力が小さくなり、第1層の素材が押しつぶされにくくなる。これにより、押し上げる機構の力を効果的に使用者に作用させることができる。また、クッション材を柔らかい素材の第1層だけで構成した場合、第1層が沈みすぎて、使用者が、底づき感を受けることがある。底づき感は、柔らかい層を介して受ける、床や、樹脂板、押し上げ機構などの接触感である。底づき感は、比較的固い第2層を設けることによって、軽減される。
【0018】
(7)好ましくは、第1部分及び第2部分は、第1層に設けられている。これにより、クッション材を屈曲させるための機構の力を効果的に使用者に作用させることができる。
【0019】
(8)本実施の形態に含まれクッション材は使用者の載置面を有するクッション材であって、載置面の面内方向における第1方向に延びる複数の第1部分と、複数の第1部分の間において第1部分と一体に形成された、第1部分よりも変形し易い第2部分と、を有する。このクッション材は、たとえば、クッション材を載置面に交差する方向に屈曲させるための機構を有するクッション装置用である。すなわち、このクッション材は、(1)~(7)のいずれか1つに記載のクッション装置用である。そのため、このように用いられることによって、クッション材は(1)~(7)に記載のクッション装置と同様の効果を奏する。
【0020】
[2.クッション装置及びクッション材の例]
[第1の実施の形態]
<睡眠装置の構成>
図1は、本実施の形態にかかる睡眠装置100の構成の概略を示す斜視図である。図2は、睡眠装置100の構成の概略を示すブロック図である。なお、鉛直方向(上下方向)をZ方向とし、Z方向に垂直な一方向(左右方向)をX方向とし、Z方向及びX方向に垂直な方向(前後方向)をY方向とする。各方向において+側に向かう向きを+向き、-側に向かう向きを-向きと称する。
【0021】
図を参照して、睡眠装置100は、身体支持部であるマットレス10と、睡眠装置100を制御する制御ユニット40と、を含む。図3は、マットレス10の分解斜視図である。マットレス10は、クッション装置の一例である。
【0022】
マットレス10は、上下面が水平となり、長手方向がY方向と一致するように床面などに設置される。+Z向きの面を上面、その裏面(-Z向きの面)を下面とする。マットレス10は、上面に横臥する使用者Pを支持する。マットレス10は、ウレタン層17と、エアセル31と、ウレタン層17およびエアセル31の支持部材である樹脂層16と、表面部材である生地カバー層60と、を有し、それらが積層されている。マットレス10のうちのウレタン層17はクッション材である。ウレタン層17の上面、つまり、マットレス10の上面は、使用者の載置面である。載置面は、当該面に直接使用者が載置することのみに限定されず、マットレス10に載置した使用者側の面であることを意味している。クッション材は、たとえば、クッション性を有する発泡樹脂である。発泡樹脂は、たとえば、ウレタンフォームであって、ウレタン層17はウレタンフォームからなる。エアセル31及び樹脂層16は、ウレタン層17を押し上げるための機構である。ウレタン層17を押し上げることは、ウレタン層17を載置面である上面に交差する方向に屈曲させることを指す。上面に交差する方向は、+Z向き、及び、概ね+Z向きを含む。
【0023】
マットレス10は、Y方向に第1マット部11、第2マット部12、及び、第3マット部13の3つ部分が順に並ぶように、X方向に分割されている。マットレス10の上面に足を+Y向き、頭をその反対向き(-Y向き)として使用者Pが横臥したときに、第1マット部11は使用者Pの頭肩を支持し、第2マット部12は胴体を支持し、第3マット部13は足を支持することが想定されている。
【0024】
第1マット部11と第2マット部12との接合面の下面側には、切り欠き構造の連結部14が形成されている。また、第2マット部12と第3マット部13との接合面の上面側には、同様の連結部15が形成されている。これにより、マットレス10は3つ折りが可能となっている。
【0025】
第3マット部13は、樹脂層16Fと、ウレタン層17Fと、表面部材である生地カバー層60とが積層されたものである。図3に示されたように、ウレタン層17Fと生地カバー層60との間に、第3マット部13用のカバー層がさらに積層されていてもよい。これは、他のマット部でも同様である。樹脂層16Fとウレタン層17Fとの間に2個のエアセル31C,31Toが配置されている。
【0026】
第2マット部12は、樹脂層16Bと、ウレタン層17Bと、生地カバー層60とが積層されたものである。樹脂層16Bとウレタン層17Bとの間に4個のエアセル31HiL,31HiR,31L,31Thが配置されている。X方向に並列するエアセル31HiL,31HiRを代表させてエアセル31Hiとも称する。
【0027】
第1マット部11は、樹脂層16Hと、ウレタン層17Hと、生地カバー層60とが積層されたものである。樹脂層16Hとウレタン層17Hとの間に5個のエアセル31HeL,31HeR,31SL,31SR,31Bが配置されている。X方向に並列するエアセル31HeL,31HeRを代表させてエアセル31He、エアセル31SL,31SRを代表させてエアセル31Sと称する。
【0028】
エアセル31は、エアチューブ33及び電磁弁34を介して、外部に配置されたポンプボックス32と連結されている。一例として、第3マット部13のY方向の端部には、コネクタボックス35が設けられている。コネクタボックス35は、ポンプボックス32から伸びるエアチューブ33を接続するための接続口を有し、接続口を介してポンプボックス32から伸びるエアチューブ33をマットレス10内部のエアチューブ33と連結する。ポンプボックス32には図示しないポンプが内蔵されている。ポンプボックス32からコネクタボックス35へは、エアチューブ33に加えて、電磁弁34や制御ユニット40に電力供給するための配電線も接続されている。
【0029】
図4は、マットレス10におけるエアセル31の配置状態を説明するための図である。図4を参照して、マットレス10の上面に使用者Pが仰向けに横臥したときに、エアセル31HeL,31HeRは使用者Pの頭部の左右に、エアセル31SL,31SRは左右の肩部の下に、エアセル31Bは背中の下に、エアセル31HiL,31HiRは左右の腰部に、エアセル31Lは腰部中央の下に、エアセル31Thは臀部の下に、エアセル31Cは両膝裏の下に、エアセル31Toは両ふくらはぎの下に配置されることが想定されている。
【0030】
制御ユニット40は、一例として、第3マット部13のY方向の端部に配置されている。制御ユニット40は、図示しないCPU(Central Processing Unit)及びメモリ20を含み、睡眠装置100全体を制御する。メモリ20には、CPUで実行されるプログラムが記憶されているとともに、ストレッチコースにかかるデータが格納されている。ストレッチコースの具体例については後述する。
【0031】
制御ユニット40は、ポンプボックス32に内蔵されたポンプの駆動及び電磁弁34の開閉を制御する制御部43を有する。制御部43が電磁弁34を開放し、かつ、ポンプボックス32を駆動させることで、複数のエアセル31のうちの解放した電磁弁34に接続されているエアセル31が膨張し、ウレタン層17のうちの膨張したエアセル31に重なる部分が押し上げられる。これにより、マットレス10の上面に横臥していた使用者Pの、上記部分に接していた身体の一部が持ち上がる。制御部43がポンプを駆動し続けることでエアセル31の最大の膨張状態を維持することができる。また、制御部43がその後にポンプの駆動を停止し、かつ、電磁弁34を閉鎖することによって上記エアセル31の膨張状態が維持され、その結果、使用者Pの身体の一部が持ち上げられた状態が維持される。
【0032】
制御部43が、ポンプの駆動を停止した状態で電磁弁34を開放することで、複数のエアセル31のうちの解放した電磁弁34に接続されているエアセル31内の空気が排気され、膨張が収縮する。これにより、ウレタン層17のうちのこのエアセル31に重なる部分であって、押し上げられていた部分が元の位置に戻る。その結果、使用者Pの持ち上げられた身体の一部が元の位置に戻る。
【0033】
制御ユニット40は、スマートフォン53との間でデータの送受信を可能とする送受信部44を有する。送受信部44は、一例として、スマートフォン53と無線通信を行う。送受信部44とスマートフォン53との通信は有線による通信であってもよい。スマートフォン53は、使用者Pによる制御ユニット40に対する入力操作を受け付ける装置の一例であって、他の例として、リモコン50などであってもよい。リモコン50との通信は、スマートフォン53との通信と同様に、無線通信であってもよいし有線による通信であってもよい。有線による通信の場合、一例として、第1マット部11の-Y方向の端部には、通信ボックス51が設けられている。通信ボックス51は、リモコン50などの外部装置との間で通信ケーブルを接続するための接続口を有し、接続口を介して制御ユニット40との通信を中継する。
【0034】
<ウレタン層の構造>
図5は、ウレタン層17の一部の概略図であって、水平に置かれたウレタン層17を上方から見下ろした状態で示している。図5を参照して、ウレタン層17は、上面側の第1層17aと下面側の第2層17bとからなる二層構造である。第1層17aはマットレス10の上面に横臥した使用者Pに向く側の層であり、第2層17bはエアセル31に接する側の層である。
【0035】
第1層17aの上面には、マットレス10の上面の水平方向である面内方向における第1方向に延びる複数の第1部分と、複数の第1部分の間において第1の部分と一体に形成された、第1部分よりも変形し易い第2部分と、を有する。図5の例では、上記面内方向はXY平面内の任意の方向である。第1方向と、マットレス10が分割される方向とは直交する。本実施の形態では、マットレス10が分割される方向はX方向であり、第1方向はY方向であり(図5)、第1部分はY方向に延びる山部18A、第2部分は隣接する山部18Aに挟まれた溝部18Bである。
【0036】
好ましくは、図5に示されたように、溝部18BはX方向に平行して複数設けられている。以下の説明で、一対以上の山部18A及び溝部18Bが交互に配置された形状をラインとも呼ぶ。第1層17aの上面にラインが形成されていることによって、マットレス10上面に横臥した使用者Pをエアセル31の膨張によって持ち上げる際にラインがエアセル31の膨張に伴って変形し、それにより第1層17aの使用者Pに当接する位置が変化する。山部18AはXZ平面と平行な断面は三角形状であるため、第1層17aの使用者Pに当接する位置が変化すると使用者Pに接する面の角度が変化する。このため、使用者Pはマットレス10の押し上げをマットレス10と接触した感覚でも実感できる。
【0037】
第1層17aと第2層17bとは、それぞれ、ウレタンフォームなどの発泡樹脂によって形成されている。第1層17aと第2層17bとでは、例えば、素材又は密度が異なる。第2層17bの素材は、第1層17aの素材よりも固い。第1層17aを柔らかい素材で成形することで、第1層17aによる使用者Pへのクッション性を確保できる。その一方で、第2層17bがなく、柔らかい素材で成形された第1層17aのみとすると、下にあるエアセル31の膨張によって第1層17aの素材が押しつぶされ、マットレス10の上面に横臥した使用者Pを押し上げるに至らない場合がある。また、第1層17aにラインが形成されている場合、第1層17aの素材が押しつぶされると使用者Pへラインではなく面で接触するため、使用者Pへの圧迫感が大きくなる場合がある。
【0038】
その点、第1層17aの下方にそれよりも固い素材で成形された第2層17bを設けることで、下にあるエアセル31の膨張によって押し上げられる範囲は第2層17bがない場合よりも広くなる。その結果、エアセル31の膨張によって第1層17aにかかる単位面積当たりの圧力が小さくなり、第1層17aの素材が押しつぶされにくくなる。これにより、エアセル31の挙動を効果的に使用者Pに作用させることができる。
【0039】
<制御ユニットによる制御>
制御ユニット40の制御部43は、メモリ20に記憶されているストレッチコースに従ってポンプの駆動及び電磁弁34の開閉を制御する。図6は、メモリ20に記憶されているストレッチコースの具体例について説明するための図であって、ストレッチコースのうちの、「腰ひねり」、「クロスひねり」、及び「上半身起こし」を示した図である。図は、左から右に向かって時間経過を示し、左から順に、時間t1,t2,t3,…とする。なお、図において、ハッチングされたエアセルは膨張していることを示し、ハッチングされていないエアセルは膨張していないことを示している。
【0040】
図を参照して、「腰ひねり」で制御部43は、時間t1に左右腰及び腰中央の下のエアセル31を膨張させ、時間t2に左腰及び腰中央の下のエアセル31を膨張させ、時間t3に右腰及び腰中央の下のエアセル31を膨張させ、時間t4に左腰及び腰中央の下のエアセル31を膨張させ、時間t5に右腰及び腰中央の下のエアセル31を膨張させる。時間t2~t5の制御により、使用者Pには、腰部が左右にひねられるストレッチが実行される。なお、時刻t1の制御により、使用者Pは腰部がエアセル31によって持ち上げられた位置に一致するようにマットレス10上面での位置を調整することができる。
【0041】
図を参照して、「クロスひねり」で制御部43は、時間t1に左右肩及び左右腰の下のエアセル31を膨張させ、時間t2に左肩及び右腰の下のエアセル31を膨張させ、時間t3に右肩及び左腰の下のエアセル31を膨張させ、時間t4に左肩及び右腰の下のエアセル31を膨張させ、時間t5に右肩及び左腰の下のエアセル31を膨張させる。時間t2~t5の制御により、使用者Pには、腰部と肩部とが互いに逆側に左右にひねられるストレッチが実行される。なお、時刻t1の制御により、使用者Pは左右肩及び左右腰部がエアセル31によって持ち上げられた位置に一致するようにマットレス10上面での位置を調整することができる。
【0042】
図を参照して、「上半身起こし」で制御部43は、頭部左右、左右肩、及び背中の下のエアセル31を膨張させる。この制御により、使用者Pには、上半身が持ち上げられる向きの力が働く。
【0043】
<実施の形態の効果>
本実施の形態にかかる睡眠装置100に含まれるマットレス10では、クッション材であるウレタン層17の第1層17aに1本以上のY方向に延びるラインが形成されている。図7及び図8は、ウレタン層17に設けられたラインの、ウレタン層17の変形に対する影響を説明するための図である。図7はウレタン層17のXZ平面に平行な断面、図8はウレタン層17のYZ平面に平行な断面を示している。
【0044】
図7は、第1マット部11のウレタン層17Hと、その下方に配置された、X方向に並列したエアセル31HeL,31HeRと、を例に、これらエアセル31HeL,31HeRの挙動とウレタン層17Hの変形とを説明するものである。図7を参照して、X方向に並列したエアセル31HeL及びエアセル31HeRのうちの一方のエアセル(図7の例の場合にはエアセル31HeL)のみが膨張し、他方のエアセル(図7の例ではエアセル31HeR)が膨張していない場合、ウレタン層17のエアセル31HeL,31HeRの真上の位置を含むXZ平面に平行な断面では、エアセル31HeLの真上のウレタン層17はエアセル31HeLの膨張に伴って押し上げられる。一方、エアセル31HeLの膨張による押し上げる力はX方向にはラインの溝部18Bに吸収されて伝搬されにくい。そのため、押し上げられる範囲をX方向には局所的とすることができる。
【0045】
図8は、第1マット部11のウレタン層17Hと、その下方に配置された、Y方向に並列したエアセル31HeR,31SRと、を例に、これらエアセル31HeR,31SRの挙動とウレタン層17Hの変形とを説明するものである。図8を参照して、Y方向に並列したエアセル31HeR及びエアセル31SRのうちの一方のエアセル(図8の例の場合にはエアセル31HeR)のみが膨張し、他方のエアセル(図8の例ではエアセル31SR)が膨張していない場合、ウレタン層17のエアセル31HeR,31SRの真上の位置を含むYZ平面に平行な断面では、エアセル31HeRの真上のウレタン層17はエアセル31HeRの膨張に伴って押し上げられる。また、ラインの山部18Aがエアセル31HeRの膨張によって押し上げる力を伝搬するリブとして機能し、Y方向に伝搬する。その結果、押し上げられる範囲がY方向には広範囲となる。
【0046】
なお、エアセル31によって押し上げられる範囲をX方向に局所的とし、Y方向には広範囲とする構成の比較例として、図9の構成が挙げられる。図9に示された比較例にかかる構成は、X方向に2分割され、Y方向に3分割されて、Y方向に並ぶマット部11R,12R,13R及びこれらにX方向に並列するマット部11L,12L,13Lからなる。各マット部にはエアセル31が配置されている。
【0047】
マットレス10を図9に示された比較例の構成とすることで、X方向にもY方向にもエアセル31の膨張による押し上げる力の伝搬を分断することができる。つまり、マット部ごとにエアセル31の膨張によって押し上げられ、隣接するマット部に押し上げる力が伝播しない。
【0048】
マットレス10をこのような構造としても、第1の実施の形態にかかるマットレスと同様にエアセル31の膨張による押し上げる力の伝搬を制御できるようにも思われる。しかしながら、図9の構成では、マットレス10の折り畳み性、持ち運び性が劣る。そのため、折り畳み性や持ち運び性をさらに考慮し、本実施の形態にかかるマットレス10は図1図5に示された構成とする。
【0049】
エアセル31の膨張による押し上げる力がX方向に広範囲に作用すると、図6に示された「腰ひねり」などにおいてウレタン層17がX方向に全体的に押し上げられる場合がある。その結果、効果的に使用者Pを左右異なる体勢とさせることができない。
【0050】
これに対して、エアセル31の膨張による押し上げる力がX方向に局所的となることで(図7)、図6に示された「腰ひねり」などにおいて、効果的に使用者Pを左右異なる体勢とさせることができる。すなわち、時間t2では左腰及び腰中央を持ち上げるとともに、右腰を持ち上げないようにすることができる。また、時間t3では右腰及び腰中央を持ち上げるとともに、左腰を持ち上げないようにすることができる。これが繰り返されることで、効果的な腰ひねりが実現される。
【0051】
また、エアセル31の膨張による押し上げる力がY方向に局所的となると、図6に示された「上半身起こし」などにおいて、ウレタン層17がY方向にエアセル31真上付近のみしか押し上げられない場合がある。その結果、効果的に使用者Pを身長方向に持ち上げることができない。
【0052】
これに対して、エアセル31の膨張による押し上げる力がY方向には広範囲となることで(図8)、図6に示された「上半身起こし」などにおいて、効果的に使用者Pを身長方向に持ち上げることができる。
【0053】
さらに、マットレス10がラインの延長する方向(Y方向)と直交する方向(X方向)に分割されていることによって、マットレス10の折り畳み性、持ち運び性が向上するのみならず、エアセル31の膨張による押し上げる力のY方向への伝搬が分断される。これにより、図6に示された「クロスひねり」などにおいて、効果的に使用者Pを左右及び上下異なる体勢とさせることができる。
【0054】
すなわち、時間t2では左肩を持ち上げるとともに右肩を持ち上げないようにすることができ、かつ、右腰を持ち上げるとともに左腰を持ち上げないようにすることができる。さらに、左肩を持ち上げるとともに左腰を持ち上げないようにすることができ、かつ、右腰を持ち上げるとともに右肩を持ち上げないようにすることができる。時間t3では右肩を持ち上げるとともに左肩を持ち上げないようにすることができ、かつ、左腰を持ち上げるとともに右腰を持ち上げないようにすることができる。さらに、右肩を持ち上げるとともに右腰を持ち上げないようにすることができ、かつ、左腰を持ち上げるとともに左肩を持ち上げないようにすることができる。これが繰り返されることで、効果的なクロスひねりが実現される。
【0055】
[第2の実施の形態]
ラインの延びる方向(第1方向)、及び、ラインの延びる方向に直交する、マットレス10を分割する方向(第2方向)は、それぞれ、Y方向及びX方向に限定されず、他の方向であってもよい。他の例として、図10に示されたように、ラインの延びる方向(第1方向)がX方向、ラインの延びる方向に直交する、マットレス10を分割する方向(第2方向)がY方向であってもよい。
【0056】
このような構成とすることで、エアセル31の膨張による押し上げる力がY方向には局所的に作用するとともに、X方向には広範囲に作用する。このように作用させるための構造はウレタン層17の第1層17aに形成されるラインに限定されない。
【0057】
[第3の実施の形態]
第1の実施の形態、及び、第2の実施の形態にかかるマットレス10では、第1層17aの上面の第1部分と第2部分とが第1層17a上面の形状によって、それぞれ、山部18A及び溝部18Bとして実現されている。第1部分と第2部分とはこの構成に限定されず、図11図14に示されたような、他の例であってもよい。図11図14は、マットレス10の第1層17aの構造の他の例を表した図であって、マットレス10のXZ平面の断面概略図である。
【0058】
図11に例示された第1層17aの構造は、第1部分19Aと第2部分19Bとが交互に配置されて、第2部分19Bが第1部分19Aよりも変形し易い素材で成形されている。または、第1部分19Aと第2部分19Bとが同じ素材であって、第2部分19Bが第1部分19Aよりも低い密度の素材で成形されている。
【0059】
又は、第1部分と第2部分とは、厚みの異なる段差形状で実現されてもよい。厚い方が第1部分、薄い方が第2部分となる。
【0060】
図12に例示された第1層17aの構造は、第1層17a上面が矩形波形状に成形されている。図12の第1層17aの構造は、第1層17aの上面に、上面と平行な山部21Aと谷部21Bとが交互に現れ、山部21Aと谷部21Bとの間は第1層17a上面に直交する平面21Cで結ばれた形状である。この場合、厚い方の山部21Aが第1部分、及び、薄い方の谷部21Bが第2部分となる。
【0061】
図13に例示された第1層17aの構造は、第1層17a上面が台形波形状に成形されている。図13の第1層17aの構造は、第1層17aの上面に、上面と平行な山部22Aと谷部22Bとが交互に現れ、山部22Aから谷部22Bは斜面22C、谷部22Bから山部22Aは斜面22Cに対称の斜面22Dで結ばれた形状である。この場合、厚い方の山部22Aが第1部分、及び、薄い方の谷部22Bが第2部分となる。
【0062】
図14に例示された第1層17aの構造は、第1層17aの上部の断面が三角形で下部の断面が矩形断面の形状に成形されている。図14の第1層17aの構造は、第1層17aの上面に、点23Aを頂点として向き合う斜面23B,23Cで構成される三角部23Dと、斜面23Cと斜面23Bとを結ぶ上面と平行な谷部23Eとが交互に現れる形状である。この場合、厚い方の三角部23Dが第1部分、及び、薄い方の谷部23Eが第2部分となる。
【0063】
図11図14に例示されたような第3の実施の形態に示されたマットレス10も、第1の実施の形態、及び、第2の実施の形態にかかるマットレス10と同じ効果をもたらす。すなわち、第3の実施の形態に示されたマットレス10も、エアセル31によって押し上げられる範囲をX方向には局所的とし、Y方向には広範囲とすることができる。
【0064】
[第4の実施の形態]
クッション装置はマットレスのみに限定されない。他の例として、たとえば、マッサージチェア、椅子、乗り物の座席、介護用ベッド、などを含む。
【0065】
[第5の実施の形態]
クッション材を載置面に交差する方向に屈曲させるための機構の配置は、クッション材であるウレタン層の下面側に限定されない。他の例として、ウレタン層の内部に配置され、その位置で膨張することで当該機構よりも上面側にあるウレタン層を持ち上げてもよい。
【0066】
[3.付記]
なお、本実施の形態の他の局面に従うと、次のようなクッション装置が含まれる。すなわち、ある実施の形態に従うと、クッション装置は、使用者の載置面を有するクッション材と、クッション材を載置面に交差する方向に屈曲させるための機構と、を備え、載置面を構成する第1層と、第1層の素材よりも固い素材で成形された載置面の裏面側を構成する第2層とを含む積層構造である。
【0067】
本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0068】
10 :マットレス
11 :第1マット部
11L :マット部
11R :マット部
12 :第2マット部
12L :マット部
12R :マット部
13 :第3マット部
13L :マット部
13R :マット部
14 :連結部
15 :連結部
16 :樹脂層
16B :樹脂層
16F :樹脂層
16H :樹脂層
17 :ウレタン層
17B :ウレタン層
17F :ウレタン層
17H :ウレタン層
17a :第1層
17b :第2層
18A :山部(第1部分)
18B :溝部(第2部分)
19A :第1部分
19B :第2部分
20 :メモリ
21A :山部
21B :谷部
22A :山部
22B :谷部
22C :斜面
22D :斜面
23A :頂点
23B :斜面
23C :斜面
23D :三角部
23E :谷部
31 :エアセル
31B :エアセル
31C :エアセル
31He :エアセル
31HeL :エアセル
31HeR :エアセル
31Hi :エアセル
31HiL :エアセル
31HiR :エアセル
31L :エアセル
31R :エアセル
31S :エアセル
31SL :エアセル
31SR :エアセル
31Th :エアセル
31To :エアセル
32 :ポンプボックス
33 :エアチューブ
34 :電磁弁
35 :コネクタボックス
40 :制御ユニット
43 :制御部
44 :送受信部
50 :リモコン
51 :通信ボックス
53 :スマートフォン
60 :生地カバー層
100 :睡眠装置
P :使用者
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14