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特許7594361梁補強金具の積み重ね構造、積み重ね方法及び梁補強金具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】梁補強金具の積み重ね構造、積み重ね方法及び梁補強金具
(51)【国際特許分類】
   E04C 3/08 20060101AFI20241127BHJP
【FI】
E04C3/08
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019238236
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2021105325
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-11-10
【審判番号】
【審判請求日】2024-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】323005120
【氏名又は名称】センクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】望月 久智
(72)【発明者】
【氏名】冨田 拓
(72)【発明者】
【氏名】林 郁実
【合議体】
【審判長】有家 秀郎
【審判官】加藤 範久
【審判官】藤脇 沙絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-37671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
梁を貫通する貫通孔に固定する梁補強金具の積み重ね構造であって、複数の梁補強金具と複数の固定用クリップとを備え、
前記梁補強金具は、
外径が前記貫通孔の直径より大きく、内径が前記貫通孔の直径より小さく、前記梁の側面に接触する一端面を有するリング状本体と、
前記一端面に突設され、前記貫通孔へ挿入可能な突起と、
前記梁補強金具の内周面に形成された係止凹部と、を備え、
前記固定用クリップは、
縦軸部と、
該縦軸部の両端部からそれぞれ一側へ張り出す挿入軸部と、を備え、
前記梁補強金具が積み重ねられ、上下に隣り合う前記梁補強金具間に前記固定用クリップが掛け渡され、上端部の挿入軸部が上段の梁補強金具の係止凹部に係止され、下端部の挿入軸部が下段の梁補強金具の係止凹部に係止されている
ことを特徴とする梁補強金具の積み重ね構造。
【請求項2】
2個以上の前記係止凹部が前記リング状本体の周方向に等間隔で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の梁補強金具の積み重ね構造。
【請求項3】
前記係止凹部は、前記リング状本体の内周面に形成されており、
前記梁補強金具が積み重ねられ、上下に隣り合う前記梁補強金具間に前記固定用クリップが掛け渡され、上端部の挿入軸部が上段の梁補強金具の係止凹部に係止され、下端部の挿入軸部が下段の梁補強金具の係止凹部に係止されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の梁補強金具の積み重ね構造。
【請求項4】
前記係止凹部は、前記リング状本体の軸線方向に沿う上部及び下部に形成されており、
前記梁補強金具が積み重ねられ、上下に隣り合う前記梁補強金具間に前記固定用クリップが掛け渡され、上端部の挿入軸部が上段の梁補強金具の下部の係止凹部に係止され、下端部の挿入軸部が下段の梁補強金具の上部の係止凹部に係止されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の梁補強金具の積み重ね構造。
【請求項5】
前記係止凹部は、前記突起の内周面に形成されており、
前記梁補強金具が積み重ねられ、上下に隣り合う前記梁補強金具間に前記固定用クリップが掛け渡され、上端部の挿入軸部が上段の梁補強金具の係止凹部に係止され、下端部の挿入軸部が下段の梁補強金具の係止凹部に係止されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の梁補強金具の積み重ね構造。
【請求項6】
前記固定用クリップの前記挿入軸部は、先端が互い接近する方向へ傾斜していることを特徴とする請求項1乃至請求項5のうちいずれか1項に記載の梁補強金具の積み重ね構造。
【請求項7】
前記固定用クリップの前記挿入軸部の先端には、互いに接近する方向に突出する押圧突起が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のうちいずれか1項に記載の梁補強金具の積み重ね構造。
【請求項8】
前記係止凹部の奥端部の上下面に、それぞれ前記固定用クリップの押圧突起と係合可能な凹部が形成されていることを特徴とする請求項7に記載の梁補強金具の積み重ね構造。
【請求項9】
梁を貫通する貫通孔に固定する梁補強金具を、固定用クリップを用いて積み重ねる梁補
強金具の積み重ね方法であって、
前記梁補強金具は、
外径が前記貫通孔の直径より大きく、内径が前記貫通孔の直径より小さく、前記梁の側面に接触する一端面を有するリング状本体と、
前記一端面に突設され、前記貫通孔へ挿入可能な突起と、
前記梁補強金具の内周面に形成された係止凹部と、を備え、
前記固定用クリップは、
縦軸部と、
該縦軸部の両端部からそれぞれ一側へ張り出す挿入軸部と、を備え、
前記梁補強金具を上下に積み重ね、上下に隣り合う前記梁補強金具間に前記固定用クリップを掛け渡し、前記固定用クリップの上端部の挿入軸部を上段の梁補強金具の係止凹部に挿入し係止させるとともに、下端部の挿入軸部を下段の梁補強金具の係止凹部に挿入し係止させる
ことを特徴とする梁補強金具の積み重ね方法。
【請求項10】
請求項1乃至請求項8のうちいずれか1項に記載の梁補強金具の積み重ね構造に用いる梁補強金具であって、
外径が前記貫通孔の直径より大きく、内径が前記貫通孔の直径より小さく、前記梁の側面に接触する一端面を有するリング状本体と、
前記一端面に突設され、前記貫通孔へ挿入可能な突起と、
内周面に形成され、前記固定用クリップが係止される係止凹部と、を備える
ことを特徴とする梁補強金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄骨梁に形成された貫通孔の周囲に固定され、貫通孔を形成したことによって強度が低下した鉄骨梁を補強する梁補強金具の積み重ね構造、積み重ね方法及び梁補強金具に関する。
【背景技術】
【0002】
S構造,SRC構造の構造物においては、鉄骨梁に配管や配線のための貫通孔を形成することがある。このように貫通孔が形成されて強度が低下した鉄骨梁を補強するために、従来、貫通孔の周囲にリング状の鉄骨補強部材を溶接する梁の補強構造が知られていた(特許文献1参照)。
上記特許文献1に記載のような梁の補強構造は、貫通孔に鉄骨補強部材をはめ込み、鉄骨補強部材の一方の面側の周部全周を鉄骨に溶接してあり、他方の面側の周部全周を鉄骨に溶接しないので、施工コストの増加を抑制できる。
しかし、このような梁の補強構造は、鉄骨補強部材を鉄骨の厚み方向に位置決めするのが難しく、あるいは、梁を寝かせた状態で貫通孔に鉄骨補強部材をはめ込み、鉄骨補強部材と梁を仮溶接してから梁を裏返し、その後、鉄骨補強部材の周部全周を梁に溶接しなければならず、作業に多大な労力を要し、コストが増大しかねなかった。
【0003】
そこで、本出願人は、先に、環状の本体部を備え、本体部の軸線方向の一端面に、鉄骨梁のウェブの側面に接触する接触端面が形成され、接触他端面から軸線方向に突出する突出部が形成され、突出部の外周面の断面形状は鉄骨梁の貫通孔の断面形状と略同一である鉄骨梁補強金具を特許文献2として提案した。
この鉄骨梁補強金具は、鉄骨梁を寝かせた状態で、貫通孔の内部に突出部を挿入し、本体部の接触端面を鉄骨梁のウェブの側面に接触させるだけで、貫通孔に対して径方向および軸線方向に位置決めされるので、仮溶接が不要であり、固定作業中に鉄骨梁を裏返す必要がなく、作業の負担を大きく軽減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4859069号公報
【文献】特願2018-185622号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記先願に係る鉄骨梁補強金具は、突出部があるので、重ねたときに安定性が悪く、多段に積み重ねた場合には傾いて崩れてしまうので、保管および搬送に不便であった。
本発明が解決しようとする課題は、梁の貫通孔にはめ込むことにより軸線方向及び径方向に位置決めできる突起を有する梁補強金具を多段に積み重ねても、傾斜したり崩れることがなく、保管及び搬送に有利な梁補強金具の積み重ね構造、積み重ね方法及び梁補強金具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願請求項1に係る発明は、梁を貫通する貫通孔に固定する梁補強金具の積み重ね構造であって、複数の梁補強金具と複数の固定用クリップとを備え、前記梁補強金具は、外径が前記貫通孔の直径より大きく、内径が前記貫通孔の直径より小さく、前記梁の側面に接触する一端面を有するリング状本体と、前記一端面に突設され、前記貫通孔へ挿入可能な突起と、前記梁補強金具の内周面に形成された係止凹部と、を備え、前記固定用クリップは、縦軸部と、該縦軸部の両端部からそれぞれ一側へ張り出す挿入軸部と、を備え、前記梁補強金具が積み重ねられ、上下に隣り合う前記梁補強金具間に前記固定用クリップが掛け渡され、上端部の挿入軸部が上段の梁補強金具の係止凹部に係止され、下端部の挿入軸部が下段の梁補強金具の係止凹部に係止されていることを特徴とする梁補強金具の積み重ね構造である。
【0007】
本願請求項2に係る発明は、2個以上の前記係止凹部が前記リング状本体の周方向に等間隔で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の梁補強金具の積み重ね構造である。
【0008】
本願請求項3に係る発明は、前記係止凹部は、前記リング状本体の内周面に形成されており、前記梁補強金具が積み重ねられ、上下に隣り合う前記梁補強金具間に前記固定用クリップが掛け渡され、上端部の挿入軸部が上段の梁補強金具の係止凹部に係止され、下端部の挿入軸部が下段の梁補強金具の係止凹部に係止されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の梁補強金具の積み重ね構造である。
【0009】
本願請求項4に係る発明は、前記係止凹部は、前記リング状本体の軸線方向に沿う上部及び下部に形成されており、前記梁補強金具が積み重ねられ、上下に隣り合う前記梁補強金具間に前記固定用クリップが掛け渡され、上端部の挿入軸部が上段の梁補強金具の下部の係止凹部に係止され、下端部の挿入軸部が下段の梁補強金具の上部の係止凹部に係止されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の梁補強金具の積み重ね構造である。
【0010】
本願請求項5に係る発明は、前記係止凹部は、前記突起の内周面に形成されており、前記梁補強金具が積み重ねられ、上下に隣り合う前記梁補強金具間に前記固定用クリップが掛け渡され、上端部の挿入軸部が上段の梁補強金具の係止凹部に係止され、下端部の挿入軸部が下段の梁補強金具の係止凹部に係止されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の梁補強金具の積み重ね構造である。
【0011】
本願請求項6に係る発明は、前記固定用クリップの前記挿入軸部は、先端が互い接近する方向へ傾斜していることを特徴とする請求項1乃至請求項5のうちいずれか1項に記載の梁補強金具の積み重ね構造である。
【0012】
本願請求項7に係る発明は、前記固定用クリップの前記挿入軸部の先端には、互いに接近する方向に突出する押圧突起が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のうちいずれか1項に記載の梁補強金具の積み重ね構造である。
【0013】
本願請求項8に係る発明は、前記係止凹部の奥端部の上下面に、それぞれ前記固定用クリップの押圧突起と係合可能な凹部が形成されていることを特徴とする請求項7に記載の梁補強金具の積み重ね構造である。
【0014】
本願請求項9に係る発明は、梁を貫通する貫通孔に固定する梁補強金具を、固定用クリップを用いて積み重ねる梁補強金具の積み重ね方法であって、前記梁補強金具は、外径が前記貫通孔の直径より大きく、内径が前記貫通孔の直径より小さく、前記梁の側面に接触する一端面を有するリング状本体と、前記一端面に突設され、前記貫通孔へ挿入可能な突起と、前記梁補強金具の内周面に形成された係止凹部と、を備え、前記固定用クリップは、縦軸部と、該縦軸部の両端部からそれぞれ一側へ張り出す挿入軸部と、を備え、前記梁補強金具を上下に積み重ね、上下に隣り合う前記梁補強金具間に前記固定用クリップを掛け渡し、前記固定用クリップの上端部の挿入軸部を上段の梁補強金具の係止凹部に挿入し係止させるとともに、下端部の挿入軸部を下段の梁補強金具の係止凹部に挿入し係止させることを特徴とする梁補強金具の積み重ね方法である。
【0015】
本願請求項10に係る発明は、請求項1乃至請求項8のうちいずれか1項に記載の梁補強金具の積み重ね構造に用いる梁補強金具であって、外径が前記貫通孔の直径より大きく、内径が前記貫通孔の直径より小さく、前記梁の側面に接触する一端面を有するリング状本体と、前記一端面に突設され、前記貫通孔へ挿入可能な突起と、内周面に形成され、前記固定用クリップが係止される係止凹部と、を備えることを特徴とする梁補強金具である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、突起を有する梁補強金具を重ねたときに、突起の周囲に隙間が形成されても、上下の梁補強金具どうしが固定用クリップで離間する方向への移動を規制して連結されるので、梁補強金具を安定して多段に積み重ねることができ、保管や搬送の際に傾斜したり崩れる心配がない。
【0017】
加えて、2個以上の係止凹部をリング状本体の周方向に等間隔で形成することにより、梁補強金具を安定して連結することができ、連結強度も高まる。
【0018】
加えて、固定用クリップの両端部から張り出す挿入軸部の先端に押圧突起を形成することにより、固定用クリップの梁補強金具に対する定着性が増す。
【0019】
加えて、係止凹部の奥端部の上下面に固定用クリップの押圧突起と係合可能な凹部を形成することにより、固定用クリップの脱落を確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1の実施形態における使用状態の梁補強金具を示す図であり、(ア)は断面図、(イ)は正面図である。
図2】第1の実施形態における梁補強金具を示し、(ア)は平面図、(イ)は断面図である。
図3】第1の実施形態における固定用クリップの側面図である。
図4】第1の実施形態における梁補強金具の積み重ね構造の要部断面図である。
図5】第2の実施形態における梁補強金具の積み重ね構造の要部断面図である。
図6】第3の実施形態における梁補強金具の積み重ね構造の要部断面図である。
図7】第4の実施形態における梁補強金具の積み重ね構造の要部断面図である。
図8】第5の実施形態における梁補強金具の積み重ね構造の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態につき図面を参照する等して説明する。なお、本発明は、実施形態に限定されないことはいうまでもない。
【0022】
〔第1の実施形態〕
第1の実施形態を、図1乃至図4を参照して説明する。
図1は、使用状態の梁補強金具1を示し、図2は、梁補強金具1を示し、図3は、固定用クリップ3を示し、図4は、積み重ねた状態の梁補強金具1を示している。
【0023】
本発明の梁補強金具1の積み重ね構造は、複数の梁補強金具1と、複数の固定用クリップ3とを備える(図4参照)。
【0024】
梁補強金具1は、H型鋼より成る梁2のウェブ20を厚さ方向に貫通する円形の貫通孔21に固定され、貫通孔21を形成したことによって強度が低下した梁2を補強している。
梁補強金具1は、鋼材を鍛造あるいは鋳造して成形され、貫通孔21と同心の円環状のリング状本体10を備える。リング状本体10の外径は貫通孔21の直径より大きく、リング状本体10の内径は貫通孔21の直径よりやや小さい。
また、リング状本体10の一端面10a及び他端面10bは、互いに平行で、かつ、梁2のウェブ20の側面と平行であり、一端面10aが梁2のウェブ20の側面に接触するようになっている。他端面10bは、一端面10aの反対側の面である。
【0025】
リング状本体10の一端面10aには、貫通孔21へ挿入可能で、外周面が貫通孔21の内周面に当接され、貫通孔21と同心の円環状の位置決め突起11が内周縁に沿って突設される。
位置決め突起11の断面は角形であり、貫通孔21の直径を配管や配線に必要な寸法より無用に大きくしないために、位置決め突起11の径方向の幅は4mm~5mmとしてある。
【0026】
梁補強金具1を貫通孔21に固定するには、梁2を倒してウェブ20の側面を上にした状態で、梁補強金具1の位置決め突起11を上から貫通孔21へ挿入し、位置決め突起11の外周面を貫通孔21の内周面に当接するとともにリング状本体10の一端面10aを梁2のウェブ20の側面に接触させ、梁補強金具1を貫通孔21に対して軸線方向および径方向に位置決めしてから、リング状本体10の外周面の全周を梁2のウェブ20の側面に溶接する。
【0027】
図2に示すように、リング状本体10の内周面には、後述する固定用クリップ3を係止するための係止凹部として係止穴12が軸線方向(図2における奥行き方向)の中間部に形成される。
係止穴12はリング状本体10の内周面から径方向に沿って延び、3個の係止穴12がリング状本体10の周方向に等間隔で形成されている。
【0028】
固定用クリップ3は、図3に示すように、梁補強金具1の係止穴12の幅よりやや幅狭い金属帯を略コ字状に折り曲げて形成され、縦軸部30と、縦軸部30の両端部からそれぞれ一側へ張り出す挿入軸部31とを備える。
縦軸部30は梁補強金具1の軸線方向の寸法よりわずかに短く、挿入軸部31は、梁補強金具1の係止穴12に挿入できる長さを有する。
また、縦軸部30の両端部に形成された挿入軸部31は、先端が互いに接近する方向に傾斜している。
【0029】
梁補強金具1を積み重ねるには、上下の梁補強金具1の中心軸を一致させて、下段のリング状本体10の一端面10aに形成された位置決め突起11の上に、上段のリング状本体10の他端面10bを載せる。
そして、上下に隣り合う梁補強金具1間に固定用クリップ3を掛け渡し、上端部の挿入軸部31を上段の梁補強金具1の係止穴12に挿入し、下端部の挿入軸部31を下段の梁補強金具1の係止穴12に挿入する。
固定用クリップ3の両端部の挿入軸部31は互いに接近する方向に傾斜しているので、その弾性力によって、上下の梁補強金具1は離間する方向への移動が規制されて強固に連結される。
【0030】
周方向の3箇所に配置された係止穴12に固定用クリップ3を係止した後、連結された梁補強金具1の上にさらに梁補強金具1を乗せて中心軸を一致させ、同様にして、図4に示すように、上下の梁補強金具1どうしを固定用クリップ3で連結する。
これを繰り返して、梁補強金具1を多段に積み重ねると、重なった梁補強金具1は固定用クリップ3で互いに連結されているため、傾いたり崩れたりする虞がない。
【0031】
〔第2の実施形態〕
図5を参照して、本発明の第2の実施形態を説明する。なお、第1の実施形態と共通する部分については、説明を省略する。
【0032】
第2の実施形態においては、リング状本体10の内周面には、軸線方向(図5における上下方向)に沿って、上部および下部にそれぞれ係止穴12が形成されている。
また、固定用クリップ3の縦軸部30の長さは、梁補強金具1を上下に重ねたとき、下段に位置する梁補強金具1の上部の係止穴12と、上段に位置する梁補強金具1の下部の係止穴12との距離よりもわずかに短い。
【0033】
梁補強金具1をその中心軸を一致させて多段に積み重ね、梁補強金具1の上部の係止穴12に、この梁補強金具1とその上方に重なる梁補強金具1とを連結する固定用クリップ3の下端部の挿入軸部31が挿入され、下部の係止穴12に、この梁補強金具1とその下方に重なる梁補強金具1とを連結する固定用クリップ3の上端部の挿入軸部31が挿入されて、梁補強金具1の積み重ね構造が構成される。
【0034】
〔第3の実施形態〕
図6を参照して、本発明の第3の実施形態を説明する。なお、第1及び第2の実施形態と共通する部分については、説明を省略する。
【0035】
第3の実施形態では、固定用クリップ3の両端部に形成された挿入軸部31の先端に、互いに接近する方向に突出する押圧突起32が形成されている。
上下に隣り合う梁補強金具1間に固定用クリップ3を掛け渡したとき、上端部の挿入軸部31の押圧突起32が上段の梁補強金具1の係止穴12の奥部下面に圧接され、下端部の挿入軸部31の押圧突起32が下段の梁補強金具1の係止穴12の奥部上面に圧接される。
従って、固定用クリップ3の梁補強金具1に対する定着性が高まり、積み重ねた梁補強金具1を保管あるいは搬送中に固定用クリップ3が外れにくい。
【0036】
〔第4の実施形態〕
図7を参照して、本発明の第4の実施形態を説明する。
第4の実施形態は、第3の実施形態とほぼ同じ構造を有するが、係止穴12の奥端部の上下面に、それぞれ固定用クリップ3の押圧突起32と係合可能な凹部13が形成されている。
これにより、固定用クリップ3の脱落を確実に防ぐことができる。
【0037】
〔第5の実施形態〕
図8を参照して、本発明の第5の実施形態を説明する。
第5の実施形態は、第1の実施形態とほぼ同じ構造を有するが、梁補強金具1の内周面に設けられる係止穴12の配置が異なる。係止穴12は、リング状本体10の内周面ではなく、位置決め突起11の内周面に設けられている。
係止穴12を、梁を補強するために必要な強度が考慮されるリング状本体10でなく、考慮されない位置決め突起11の内周面に設けているので、設計上の負担が少なく、また、梁の補強に影響を与えることを防止することができる。
【0038】
〔その他の実施形態〕
本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。例えば以下のようなものも含まれる。
【0039】
本実施形態においては、梁をH型鋼としてあるが、その他の断面形状の梁であってもよい。
【0040】
本実施形態においては、リング状本体および位置決め突起を円環状としてあるが、貫通孔の形状に応じて角形の環状とすることもできる。
【0041】
本実施形態では、位置決め突起をリング状本体の内周縁全周に亘って連続した環状に形成してあるが、断続的に形成することも可能である。
【0042】
本実施形態では、係止凹部を係止穴としてその数を3個としてあるが、2個あるいは4個以上の係止穴をリング状本体の周方向に等間隔で設けてもよい。
【0043】
本実施形態では、固定用クリップ3を金属製にしていたが、これに限られず、合成樹脂製などにしても良い。
【0044】
本実施形態では、固定用クリップ3を縦軸部の両端部から張り出した挿入軸部は先端が近接する方向へ傾斜するようなものもあったが、これに限られず、係止穴に係止するものであって弾性によって上下段の梁補強金具を固定できるようなものでものであれば良い。
【0045】
本実施形態では、位置決め突起は、その外周面が梁の貫通孔の内周面に当接する態様のものであったが、これに限られない。当接するものよりは、位置決めの精度は低下するが、外周面が梁の貫通孔の内周面に当接しないようなものでも良い。
【0046】
本実施形態では、係止凹部として係止穴を採用したが、これに限られない。例えば、リング状本体10の内周面の一周すべて又は一部にわたって係止溝を設けて構成するものであっても良い。このような係止溝にすれば、固定用クリップの取り付け位置の自由度が高くなる。
【0047】
いずれの実施形態における各技術的事項を他の実施形態に適用して実施例としても良い。
【符号の説明】
【0048】
1 梁補強金具
10 リング状本体
11 位置決め突起
12 係止穴
13 凹部
2 梁
20 ウェブ
21 貫通孔
3 固定用クリップ
30 縦軸部
31 挿入軸部
32 押圧突起
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8