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特許7594362粘着剤層付き光学積層フィルム及び画像表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】粘着剤層付き光学積層フィルム及び画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20241127BHJP
   C09J 7/29 20180101ALI20241127BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20241127BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20241127BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20241127BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20241127BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20241127BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20241127BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J7/29
C09J133/00
G09F9/00 302
B32B27/00 M
G02B5/30
H05B33/02
H05B33/14 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020007847
(22)【出願日】2020-01-21
(65)【公開番号】P2020122141
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2022-07-20
(31)【優先権主張番号】P 2019014794
(32)【優先日】2019-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】藤田 昌邦
(72)【発明者】
【氏名】外山 雄祐
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-039458(JP,A)
【文献】特開2018-120119(JP,A)
【文献】国際公開第2017/122732(WO,A1)
【文献】特開2013-011853(JP,A)
【文献】特開2018-202656(JP,A)
【文献】特開2017-181789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 - 201/10
G02F 1/133
G02F 1/1333
G02F 1/1334
G02F 1/1339 - 1/1341
G02F 1/1347
G02B 5/30
B32B 1/00 - 43/00
H05B 33/00 - 33/28
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護フィルム、光学フィルム、粘着剤層及びセパレータがこの順に積層された粘着剤層付き光学積層フィルムであって、
前記光学フィルムの厚さが80μm以下であり、
前記保護フィルムの厚さが30μm以上50μm以下であり、前記保護フィルムの引張弾性率が1GPa以上であり、
前記粘着剤層は、アクリル系粘着剤組成物から形成されたアクリル系粘着剤層である、粘着剤層付き光学積層フィルム。
【請求項2】
前記保護フィルムがポリエステルフィルムである請求項1に記載の粘着剤層付き光学積層フィルム。
【請求項3】
前記粘着剤層の厚さが25μm以上である請求項1又は2に記載の粘着剤層付き光学積層フィルム。
【請求項4】
前記セパレータの厚さが45μm以上である請求項1~3のいずれかに記載の粘着剤層付き光学積層フィルム。
【請求項5】
前記粘着剤層のゲル分率が60%以上である請求項1~4のいずれかに記載の粘着剤層付き光学積層フィルム。
【請求項6】
前記粘着剤層におけるゾル分の重量平均分子量(Mw)が5万以上である請求項1~5のいずれかに記載の粘着剤層付き光学積層フィルム。
【請求項7】
下記試験により求めた70℃における前記粘着剤層のクリープ量ΔCrが50μm以下である請求項1~6のいずれかに記載の粘着剤層付き光学積層フィルム。
試験:縦20mm×横20mmの接合面にてステンレス製試験板に貼り付けた粘着剤層に対して、前記試験板を固定した状態で500gfの荷重を鉛直下方に加える。荷重を加え始めてから100秒後及び3600秒後の各時点における前記試験板に対する前記粘着剤層のクリープ量(ずれ量)を測定し、それぞれCr100及びCr3600とする。測定したCr100及びCr3600から、式ΔCr=Cr3600-Cr100によりクリープ量ΔCrを求める。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の粘着剤層付き光学積層フィルムにおける前記セパレータを除く部分を備える画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤層付き光学積層フィルム及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ及び有機ELディスプレイ等の各種の薄型の画像表示装置は、通常、液晶層、有機EL発光層等の画像形成層と、1又は2以上の光学フィルムとを含む積層構造を有している。画像表示装置を構成する各層の接合には、粘着剤層が使用されることが一般的であり、少なくとも一方の面に粘着剤層を設けた粘着剤層付き光学フィルムを画像形成層に貼付して画像表示装置を製造する方法が広く採用されている(特許文献1参照)。また、粘着剤層付き光学フィルムを供給するにあたり、粘着剤層を保護するセパレータ及び/又は光学フィルムを保護する保護フィルムをさらに設けた粘着剤層付き光学積層フィルムとして供給されることもある。なお、セパレータは、光学積層フィルムの使用時、例えば画像形成層への貼付時、には剥離される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-28573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
粘着剤層付き光学積層フィルムは、画像形成層等と組み合わせて画像表示装置を製造する前の段階において、ロールに巻回された状態で、あるいは枚葉として積層された状態で保管されることが通常である。しかし、本発明者らの検討によれば、上記保管によって粘着剤層に微小な凹みが発生する傾向にあること、及び薄型化された光学フィルムを備える場合にこの傾向が強くなることが判明した。当該凹みは光学的な欠点となりうる。また、画像表示装置の製造後、当該装置の保管時においても同様の凹みが生じうる。特許文献1では、これらの点について考慮されていない。
【0005】
本発明は、保管時に生じうる凹みの程度を抑制できる粘着剤層付き光学積層フィルムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
保護フィルム、光学フィルム、粘着剤層及びセパレータがこの順に積層された粘着剤層付き光学積層フィルムであって、
前記光学フィルムの厚さが80μm以下であり、
前記保護フィルムの厚さが30μm以上であり、前記保護フィルムの引張弾性率が1GPa以上である、粘着剤層付き光学積層フィルム、
を提供する。
【0007】
別の側面において、本発明は、
上記本発明の粘着剤層付き光学積層フィルムにおける前記セパレータを除く部分を備える画像表示装置、
を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明による粘着剤層付き光学積層フィルムでは、厚さ80μm以下の薄型化された光学フィルムを備えながらも、保護フィルムの厚さ及び引張弾性率の双方を所定の値以上とすることによって、噛み込んだ異物により生じる圧力を分散させて、当該異物の噛み込みに起因して粘着剤層に生じうる凹みの進行を抑制できる。したがって、本発明による粘着剤層付き光学積層フィルムでは、保管時に生じうる凹みの程度を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の粘着剤層付き光学積層フィルムの一例を模式的に示す断面図である。
図2A図2Aは、粘着剤層に対するクリープ量ΔCrの測定方法を説明するための模式図である。
図2B図2Bは、粘着剤層に対するクリープ量ΔCrの測定方法を説明するための模式図である。
図3図3は、本発明の画像表示装置の一例を模式的に示す断面図である。
図4図4は、実施例において使用したλ/4板及びλ/2板の作製方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。本発明は、以下に示す実施形態に限定されない。
【0011】
本発明の粘着剤層付き光学積層フィルムの一例を図1に示す。図1の粘着剤層付き光学積層フィルム1は、保護フィルム2、光学フィルム3、粘着剤層4及びセパレータ5を備える。保護フィルム2、光学フィルム3、粘着剤層4及びセパレータ5は、この順に積層されている。光学フィルム3の厚さは80μm以下である。保護フィルム2の厚さは30μm以上である。また、保護フィルム2の引張弾性率は1GPa以上である。なお、保護フィルム2の引張弾性率は常温(23℃)での値である。
【0012】
[光学フィルム]
光学フィルム3は、例えば、偏光フィルム、位相差フィルムである。光学フィルム3は、偏光フィルム及び/又は位相差フィルムを含む積層フィルム又は光学積層体であってもよい。ただし、光学フィルム3は上記例に限定されない。光学フィルム3は、ガラス製のフィルムを含んでいてもよい。
【0013】
光学フィルム3の厚さは80μm以下である。本発明者らの検討によれば、80μm以下の厚さを有する薄型化された光学フィルム3を光学積層フィルム1が備える場合、保管時に生じうる粘着剤層4の凹みの程度が大きくなる傾向にある。しかし、光学積層フィルム1では、上記薄型化された光学フィルム3を備えながらも、保管時に生じうる粘着剤層4の凹みの程度を抑制できる。光学フィルム3の厚さは、70μm以下、60μm以下、50μm以下、40μm以下、さらには35μm以下であってもよい。光学フィルム3の厚さの下限は、例えば1μm以上である。
【0014】
偏光フィルムは、偏光子を含む。偏光子の少なくとも一方の面に偏光子保護フィルムが接合されていてもよい。偏光子と偏光子保護フィルムとの接合には、任意の粘着剤や接着剤を使用できる。偏光子は、典型的には、空中延伸(乾式延伸)、ホウ酸水中延伸等の延伸によってヨウ素が配向されたポリビニルアルコール(PVA)フィルムである。
【0015】
位相差フィルムは、面内方向及び/又は厚さ方向に複屈折を有するフィルムである。位相差フィルムは、例えば、延伸された樹脂フィルム、液晶材料を配向及び固定化させたフィルムである。
【0016】
位相差フィルムは、例えば、λ/4板、λ/2板、反射防止用位相差フィルム(例えば特開2012-133303号公報の段落0221,0222,0228参照)、視野角補償用位相差フィルム(例えば特開2012-133303号公報の段落0225,0226参照)、視野角補償用の傾斜配向位相差フィルム(例えば特開2012-13303号公報の段落0227参照)である。ただし、位相差フィルムは、面内方向及び/又は厚さ方向に複屈折を有する限り、上記例に限定されない。位相差フィルムの位相差値、配置角度、3次元複屈折率、単層であるか多層であるか等についても限定されない。位相差フィルムには、公知のフィルムを使用可能である。
【0017】
位相差フィルムの厚さは、例えば、50μm以下である。
【0018】
光学フィルム3は、単層フィルムであっても、2以上の層から構成される複層フィルムであってもよい。
【0019】
[保護フィルム]
保護フィルム2は、光学積層フィルム1の流通及び保管時、並びに光学積層フィルム1を画像表示装置に組み込んだ状態において、光学フィルム2を保護する機能を有する。保護フィルム2は、画像表示装置に組み込んだ状態において、外部空間へのウィンドウとして機能するフィルムであってもよい。保護フィルム2は、典型的には、樹脂フィルムである。保護フィルム2を構成する樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン、アクリル、シクロオレフィン、ポリイミド、ポリアミドであり、ポリエステルが好ましい。言い換えると、保護フィルム2はポリエステルフィルムであってもよい。ただし、保護フィルム2は上記例に限定されない。保護フィルムは、ガラス製のフィルム、あるいはガラス製のフィルムを含む積層フィルムであってもよい。保護フィルム2には、アンチグレア、反射防止、帯電防止等の表面処理が施されていてもよい。
【0020】
保護フィルム2の厚さは30μm以上である。保護フィルム2の厚さは35μm以上、40μm以上、45μm以上、さらには50μm以上であってもよい。保護フィルム2の厚さの上限は、例えば100μm以下である。
【0021】
保護フィルム2の引張弾性率は1GPa以上である。保護フィルム2の引張弾性率は2GPa以上、3GPa以上、さらには4GPa以上であってもよい。保護フィルム2の引張弾性率の上限は、例えば100GPa以下である。
【0022】
保護フィルム2は、任意の粘着剤層によって光学フィルム3に接合されていてもよい。保護フィルム2と光学フィルム3とを接合する粘着剤層は、以下の粘着剤層4の説明において述べる構成を有していてもよい。
【0023】
[粘着剤層]
粘着剤層4は、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、フッ素系粘着剤、エポキシ系粘着剤、ポリエーテル系粘着剤等の各種の粘着剤組成物から構成される。光学的透明性、加工性、耐久性及び密着性等の各種の特性に優れることから、粘着剤層4は、(メタ)アクリル系ポリマーを含有するアクリル系粘着剤組成物から構成されることが好ましい。なお、本明細書において「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを意味する。また、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートを意味する。
【0024】
粘着剤層4を構成する粘着剤組成物の型は、例えば、エマルション型、溶剤型(溶液型)、活性エネルギー線硬化型、熱溶融型(ホットメルト型)である。なかでも、溶剤型又は活性エネルギー線硬化型の粘着剤組成物が好ましく、生産性及び厚みのある粘着剤層4を形成しやすい等の観点からは、活性エネルギー線硬化型の粘着剤組成物が好ましい。ただし、粘着剤組成物の型は上記例に限定されない。
【0025】
以下、粘着剤層4を構成しうるアクリル系粘着剤組成物について説明する。
【0026】
[(メタ)アクリル系ポリマー]
(メタ)アクリル系ポリマーは、炭素数1~30のアルキル基を側鎖に有する(メタ)アクリル系単量体(A)に由来する構成単位を主たる単位として有することが好ましい。アルキル基は、直鎖状であっても分岐を有していてもよい。(メタ)アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル系単量体(A)に由来する構成単位を1種又は2種以上有していてもよい。(メタ)アクリル系単量体(A)は、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、n-へキシル(メタ)アクリレート、イソヘキシル(メタ)アクリレート、イソヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート(ラウリル(メタ)アクリレート)、n-トリデシル(メタ)アクリレート、n-テトラデシル(メタ)アクリレートである。なお、本明細書における「主たる単位」とは、ポリマーが有する全構成単位のうち、例えば50質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは94質量%以上を占める単位を意味する。
【0027】
(メタ)アクリル系ポリマーは、長鎖アルキル基を側鎖に有する(メタ)アクリル系単量体(A)に由来する構成単位を有していてもよい。当該構成単位は、例えば、n-ドデシル(メタ)アクリレート(ラウリル(メタ)アクリレート)である。なお、本明細書において「長鎖アルキル基」とは、炭素数6~30のアルキル基を意味する。
【0028】
(メタ)アクリル系ポリマーは、ホモポリマーとしたときにガラス転移温度(Tg)が-70~-20℃の範囲にある(メタ)アクリル系単量体(A)に由来する構成単位を有していてもよい。当該構成単位は、例えば、2-エチルヘキシルアクリレートである。
【0029】
(メタ)アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル系単量体(A)に由来する構成単位以外の構成単位を有していてもよい。当該構成単位は、(メタ)アクリル系単量体(A)と共重合可能な単量体(B)に由来する。(メタ)アクリル系ポリマーは、当該構成単位を1種又は2種以上有していてもよい。
【0030】
単量体(B)は、例えば、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体(C)である。(メタ)アクリル系単量体(C)は、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、及び(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)-メチルアクリレートである。粘着剤層4の耐久性及び密着性を向上できることから、(メタ)アクリル系単量体(C)は、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0031】
単量体(B)は、カルボキシル基含有単量体、アミノ基含有単量体、アミド基含有単量体であってもよい。これらの単量体(B)を用いることにより、粘着剤層4の密着性を向上できる。カルボキシル基含有単量体は、例えば、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸である。アミノ基含有単量体は、例えば、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートである。アミド基含有単量体は、例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メチロール-N-プロパン(メタ)アクリルアミド、アミノメチル(メタ)アクリルアミド、アミノエチル(メタ)アクリルアミド、メルカプトメチル(メタ)アクリルアミド、メルカプトエチル(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド系単量体;N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン等のN-アクリロイル複素環単量体;N-ビニルピロリドン、N-ビニル-ε-カプロラクタム等のN-ビニル基含有ラクタム系単量体である。
【0032】
単量体(B)は、多官能性単量体であってもよい。多官能性単量体の使用により、粘着剤層4のゲル分率の調整や凝集力の制御を実施できる。多官能性単量体は、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート(1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート)、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート等の多官能アクリレート;及びジビニルベンゼンである。多官能アクリレートは、好ましくは1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートである。
【0033】
上述した以外のその他の単量体(B)は、例えば、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシトリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸3-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-メトキシブチル、(メタ)アクリル酸4-エトキシブチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジル等のエポキシ基含有単量体;ビニルスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸基含有単量体;リン酸基含有単量体;(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;スチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレン等のオレフィン類又はジエン類;ビニルアルキルエーテル等のビニルエーテル類;塩化ビニルである。
【0034】
(メタ)アクリル系ポリマーにおけるヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体(C)、カルボキシル基含有単量体、アミノ基含有単量体、アミド基含有単量体、及び多官能性単量体に由来する構成単位の含有率の合計は、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは8質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。(メタ)アクリル系ポリマーが当該構成単位を有する場合、当該構成単位の含有率の合計は、例えば0.01質量%以上であり、0.05質量%以上であってもよい。
【0035】
(メタ)アクリル系ポリマーにおけるその他の単量体(B)に由来する構成単位の含有率の合計は、例えば30質量%以下であり、10質量%以下であってもよく、0質量%である(当該構成単位を含まない)ことが好ましい。
【0036】
(メタ)アクリル系ポリマーは、上述した1種又は2種以上の単量体を公知の方法により重合して形成できる。単量体と、単量体の部分重合物とを重合してもよい。重合は、例えば、溶液重合、乳化重合、塊状重合、熱重合、活性エネルギー線重合により実施できる。光学的透明性に優れる粘着剤層4を形成できることから、溶液重合、活性エネルギー線重合が好ましい。重合は、単量体及び/又は部分重合物と酸素との接触を避けて実施することが好ましく、このために、例えば、窒素等の不活性ガス雰囲気下における重合、あるいは樹脂フィルム等により酸素を遮断した状態での重合を採用できる。形成する(メタ)アクリル系ポリマーは、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等のいずれの形態であってもよい。
【0037】
(メタ)アクリル系ポリマーを形成する重合系は、1種又は2種以上の重合開始剤を含んでいてもよい。重合開始剤の種類は、重合反応により選択でき、例えば、光重合開始剤、熱重合開始剤であってもよい。
【0038】
溶液重合に使用する溶媒は、例えば、酢酸エチル、酢酸n-ブチル等のエステル類;トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類;n-ヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類である。ただし、溶媒は上記例に限定されない。溶媒は、2種以上の溶媒の混合溶媒であってもよい。
【0039】
溶液重合に使用する重合開始剤は、例えば、アゾ系重合開始剤、過酸化物系重合開始剤、レドックス系重合開始剤である。過酸化物系重合開始剤は、例えば、ジベンゾイルペルオキシド、t-ブチルペルマレエートである。なかでも、特開2002-69411号公報に開示のアゾ系重合開始剤が好ましい。当該アゾ系重合開始剤は、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4’-アゾビス-4-シアノバレリアン酸である。ただし、重合開始剤は上記例に限定されない。アゾ系重合開始剤の使用量は、例えば、単量体の全量100重量部に対して0.05~0.5重量部であり、0.1~0.3重量部であってもよい。
【0040】
活性エネルギー線重合に使用する活性エネルギー線は、例えば、α線、β線、γ線、中性子線、電子線等の電離性放射線、及び紫外線である。活性エネルギー線は、紫外線が好ましい。紫外線の照射による重合は、光重合とも称される。活性エネルギー線重合の重合系は、典型的には、光重合開始剤を含む。活性エネルギー重合の重合条件は、(メタ)アクリル系ポリマーが形成される限り、限定されない。
【0041】
光重合開始剤は、例えば、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α-ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤である。ただし、光重合開始剤は上記例に限定されない。
【0042】
ベンゾインエーテル系光重合開始剤は、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、アニソールメチルエーテルである。アセトフェノン系光重合開始剤は、例えば、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、4-(t-ブチル)ジクロロアセトフェノンである。α-ケトール系光重合開始剤は、例えば、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、1-[4-(2-ヒドロキシエチル)フェニル]-2-メチルプロパン-1-オンである。芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤は、例えば、2-ナフタレンスルホニルクロライドである。光活性オキシム系光重合開始剤は、例えば、1-フェニル-1,1-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)-オキシムである。ベンゾイン系光重合開始剤は、例えば、ベンゾインである。ベンジル系光重合開始剤は、例えば、ベンジルである。ベンゾフェノン系光重合開始剤は、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンである。ケタール系光重合開始剤は、例えば、ベンジルジメチルケタールである。チオキサントン系光重合開始剤は、例えば、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントンである。
【0043】
光重合開始剤の使用量は、例えば、単量体の全量100重量部に対して0.01~1重量部であり、0.05~0.5重量部であってもよい。
【0044】
なお、単量体(B)である多官能性単量体(多官能性アクリレート等)は、溶剤型及び活性エネルギー線硬化型のいずれの型の粘着剤組成物にも使用可能であるが、溶剤型の粘着剤組成物に対して多官能性単量体及び光重合開始剤の双方を使用する場合には、例えば、熱乾燥による溶剤の除去後に、活性エネルギー線の照射による粘着剤組成物の硬化を進行させればよい。
【0045】
(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、例えば、100万~250万であり、粘着剤層4の耐久性及び耐熱性の観点からは、好ましくは120万~200万であり、より好ましくは140万~180万である。なお、本明細書におけるポリマー及びオリゴマーの重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)の測定に基づく値(ポリスチレン換算)である。
【0046】
アクリル系粘着剤組成物における(メタ)アクリル系ポリマーの含有量は、固形分比で、例えば50質量%以上であり、60質量%以上、さらには70質量%以上であってもよい。
【0047】
[(メタ)アクリル系オリゴマー]
アクリル系粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系オリゴマーをさらに含んでいてもよい。(メタ)アクリル系オリゴマーの含有により、(メタ)アクリル系ポリマーの分子鎖同士の絡み合いが減少することで粘着剤層4の応力緩和性が向上する。
【0048】
(メタ)アクリル系オリゴマーは、重量平均分子量(Mw)が異なる以外は、上述した(メタ)アクリル系ポリマーと同様の組成を有することができる。(メタ)アクリル系オリゴマーの重量平均分子量(Mw)は、例えば、1000以上であり、2000以上、3000以上、さらには4000以上であってもよい。(メタ)アクリル系オリゴマーの重量平均分子量(Mw)の上限は、例えば、30000以下であり、15000以下、10000以下、さらには7000以下であってもよい。これらの範囲の重量平均分子量(Mw)を有する(メタ)アクリル系オリゴマーによれば、粘着剤層4の応力緩和性をより高めることができる。
【0049】
(メタ)アクリル系オリゴマーは、例えば、以下の各単量体に由来する構成単位を1種または2種以上有している:メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と脂環族アルコールとのエステル;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等のアリール(メタ)アクリレート;テルペン化合物誘導体アルコールから得られる(メタ)アクリレート。
【0050】
(メタ)アクリル系オリゴマーは、比較的嵩高い構造を持つアクリル系単量体に由来する構成単位を有することが好ましい。この場合、粘着剤層4の接着性をより高めることができる。当該アクリル系単量体は、例えば、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート等の分岐構造を持つアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と脂環式アルコールとのエステル;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等のアリール(メタ)アクリレートである。当該アクリル系単量体は、環状構造を有することが好ましく、2以上の環状構造を有することがより好ましい。また、(メタ)アクリル系オリゴマーの重合時、及び/又は粘着剤層4の形成時に紫外線の照射を実施する場合、当該重合及び/又は形成の進行が阻害され難いことから、当該アクリル系単量体は不飽和結合を有さないことが好ましく、例えば、分岐構造を持つアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸と脂環式アルコールとのエステルを使用できる。
【0051】
(メタ)アクリル系オリゴマーの具体例は、ブチルアクリレートとメチルアクリレートとアクリル酸との共重合体、シクロヘキシルメタクリレートとイソブチルメタクリレートとの共重合体、シクロヘキシルメタクリレートとイソボルニルメタクリレートとの共重合体、シクロヘキシルメタクリレートとアクリロイルモルホリンとの共重合体、シクロヘキシルメタクリレートとジエチルアクリルアミドとの共重合体、1-アダマンチルアクリレートとメチルメタクリレートとの共重合体、ジシクロペンタニルメタクリレートとイソボルニルメタクリレートとの共重合体、ジシクロペンタニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、イソボルニルアクリレート及びシクロペンタニルメタクリレートから選ばれる少なくとも1種とメチルメタクリレートとの共重合体、ジシクロペンタニルアクリレートの単独重合体、1-アダマンチルメタクリレートの単独重合体、1-アダマンチルアクリレートの単独重合体である。
【0052】
(メタ)アクリル系オリゴマーの重合方法には、上述した(メタ)アクリル系ポリマーの重合方法を採用できる。
【0053】
粘着剤組成物が(メタ)アクリル系オリゴマーを含む場合、その配合量は、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、例えば70重量部以下であり、50重量部以下、さらには40重量部以下であってもよい。配合量の下限は、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、例えば1重量部以上であり、2重量部以上、さらには3重量部以上であってもよい。
【0054】
(メタ)アクリル系オリゴマーは、溶剤型及び活性エネルギー線硬化型のいずれの型の粘着剤組成物にも使用可能である。ただし、活性エネルギー線硬化型の粘着剤組成物に使用する場合であって、(メタ)アクリル系オリゴマーが溶剤に溶解している場合は、当該(メタ)アクリル系オリゴマーを混合した混合物に対して、例えば、熱乾燥により溶剤を除去した後に、活性エネルギー線の照射による硬化を進行させればよい。
【0055】
[架橋剤]
アクリル系粘着剤組成物は、架橋剤をさらに含んでいてもよい。架橋剤の使用により、粘着剤層4の凝集力が向上する。
【0056】
架橋剤は、例えば、有機系架橋剤、多官能性金属キレートである。有機系架橋剤は、例えば、イソシアネート系架橋剤、過酸化物系架橋剤、エポキシ系架橋剤、イミン系架橋剤である。多官能性金属キレートは、多価の金属と有機化合物とが共有結合又は配位結合した構造を有する。多価の金属は、例えば、Al、Cr、Zr、Co、Cu、Fe、Ni、V、Zn、In、Ca、Mg、Mn、Y、Ce、Sr、Ba、Mo、La、Sn、Tiである。多価の金属が共有結合又は配位結合する有機化合物中の原子は、典型的には、酸素原子である。有機化合物は、例えば、アルキルエステル、アルコール化合物、カルボン酸化合物、エーテル化合物、ケトン化合物である。なお、有機系架橋剤及び多官能性金属キレートは、溶剤型及び活性エネルギー線硬化型のいずれの型の粘着剤組成物に対しても使用できる。
【0057】
粘着剤組成物が溶剤型である場合、架橋剤は、好ましくは過酸化物系架橋剤、イソシアネート系架橋剤であり、より好ましくは過酸化物系架橋剤である。なお、過酸化物系架橋剤は(メタ)アクリル系ポリマーの側鎖間での架橋を進行させるため、過酸化物系架橋剤による架橋では、イソシアネート系架橋剤による架橋に比べて架橋後の分子鎖の自由度が高くなる。このため、粘着剤層4の凝集力を高めながら応力緩和性をより確実に確保できる。一方、イソシアネート系架橋剤による架橋では、過酸化物系架橋剤による架橋に比べて、粘着剤層4の耐久性を向上できる。ただし、二官能性のイソシアネート架橋剤による架橋では二次元の架橋構造が形成されるため、過酸化物系架橋剤による架橋ほどではないが、粘着剤層4の応力緩和性のより確実な確保が可能である。イソシアネート系架橋剤を使用する場合、強固な三次元の架橋構造を形成する三官能性の架橋剤と、上記二官能性の架橋剤とを併用することで、耐久性と応力緩和性とのバランスの向上を図ってもよい。また、当該バランスのさらなる向上のために、過酸化物系架橋剤とイソシアネート系架橋剤とを併用してもよい。なお、上述した単量体(B)である多官能性単量体と架橋剤とを併用してもよい。
【0058】
粘着剤組成物が架橋剤を含む場合、その配合量は、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、例えば0.1~10重量部であり、0.2~5重量部、さらには0.3~3重量部であってもよい。
【0059】
過酸化物系架橋剤を単独で使用する場合、その配合量は、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、例えば0.2~5重量部であり、1~3重量部であってもよい。
【0060】
過酸化物系架橋剤とイソシアネート系架橋剤とを併用する場合、イソシアネート系架橋剤に対する過酸化物系架橋剤の重量比は、好ましくは1.2以上であり、より好ましくは1.5以上、さらに好ましくは3以上である。また、重量比の上限は、例えば500以下であり、300以下、さらには200以下であってもよい。
【0061】
[添加剤]
アクリル系粘着剤組成物は、その他の添加剤を含んでいてもよい。添加剤は、例えば、シランカップリング剤、ポリエーテル化合物(ポリプロピレングリコールをはじめとするポリアルキレングリコール等)、顔料及び染料等の着色剤、界面活性剤、可塑剤、粘着性付与剤、表面潤滑剤、レベリング剤、軟化剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、帯電防止剤(イオン性化合物であるアルカリ金属塩、イオン液体、イオン固体等)、無機充填材、有機充填材、金属粉等の粉体、粒子、箔状物である。
【0062】
[粘着剤層4の形成]
アクリル系粘着剤組成物から構成される粘着剤層4は、以下のように形成できる。粘着剤組成物が溶剤型である場合、例えば、(メタ)アクリル系ポリマー及び溶剤と、必要に応じて、(メタ)アクリル系オリゴマー、架橋剤、添加剤等との混合物を、基材フィルム上に塗布し、これを乾燥して粘着剤層4を形成する。粘着剤組成物が活性エネルギー線硬化型である場合、例えば、重合により(メタ)アクリル系ポリマーとなる単量体(群)と、必要に応じて、単量体(群)の部分重合物、重合開始剤、(メタ)アクリル系オリゴマー、架橋剤、添加剤、溶剤等との混合物を基材フィルム上に塗布し、必要に応じて乾燥により溶剤を除去した後、活性エネルギー線を照射して粘着剤層4を形成できる。基材フィルムは、表面が剥離処理されたフィルムであってもよい。基材フィルム上に形成された粘着剤層4は、任意の層に転写できる。また、基材フィルムは光学フィルムであってもよく、この場合、保護フィルム2及びセパレータ5のさらなる配置により、粘着剤層4を備える粘着剤層付き光学積層フィルムが得られる。また、基材フィルムはセパレータ5であってもよく、この場合、光学フィルム3及び保護フィルム2のさらなる配置により、粘着剤層4を備える粘着剤層付き光学積層フィルムが得られる。
【0063】
基材フィルムへの上記混合物の塗布には、公知の方法を採用できる。塗布は、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーター等による押出しコートにより実施できる。
【0064】
基材フィルムに塗布する混合物は、取り扱い及び塗工に適した粘度を有することが好ましい。このために、粘着剤組成物が活性エネルギー線硬化型である場合、混合物は、単量体(群)の部分重合物を含むことが好ましい。
【0065】
基材フィルムに使用しうる剥離フィルムは、例えば、シリコーン化合物により表面の剥離処理がなされた樹脂フィルムである。
【0066】
混合物の乾燥温度は、例えば40~200℃であり、50~180℃、さらには70~170℃であってもよい。混合物の乾燥時間は、例えば5秒~20分であり、5秒~10分、さらには10秒~5分であってもよい。
【0067】
粘着剤層4が25μm以上の厚さを有する場合、光学積層フィルム1としての保管時に生じうる上記凹みの程度が増加する傾向を示す。このため、粘着剤層4が25μm以上の厚さを有する場合に、本発明の効果はより顕著となる。粘着剤層4の厚さは30μm以上、40μm以上、さらには50μm以上であってもよい。粘着剤層4の厚さの上限は、例えば150μm以下である。ただし、粘着剤層4の厚さは上記例に限定されず、1~200μm、5~150μm、さらには10~100μmであってもよい。
【0068】
粘着剤層4のゲル分率は、好ましくは60%以上であり、65%以上、さらには70%以上であってもよい。粘着剤層4のゲル分率の上限は、例えば95%以下であり、90%以下であってもよい。粘着剤層4のゲル分率がこれらの範囲にある場合、上記凹みの程度の抑制効果をより確実に得ることができる。
【0069】
粘着剤層4におけるゾル分の重量平均分子量(Mw)は、例えば5万以上であり、8万以上、10万以上、15万以上、さらには20万以上であってもよい。ゾル分の重量平均分子量(Mw)の上限は、例えば120万以下である。粘着剤層4におけるゾル分の重量平均分子量(Mw)がこれらの範囲にある場合、好ましくは15万以上の場合、上記凹みの程度の抑制効果をより確実に得ることができる。
【0070】
粘着剤層4の押込み硬さが3.0×104Pa以下である場合、光学積層フィルム1としての保管時に生じうる上記凹みの程度が増加する傾向を示す。このため、粘着剤層4の押込み硬さが3.0×104Pa以下である場合に、本発明の効果はより顕著となる。粘着剤層4の押込み硬さは1.4×104Pa以下、1.2×104Pa以下、1.0×104Pa以下、8×103Pa以下、さらには5×103Pa以下であってもよい。押込み硬さの下限は、例えば1×102Pa以上である。
【0071】
粘着剤層4の押込み硬さは、ナノインデンテーション法に基づく押込み試験により測定できる。具体的には、次のとおりである。評価対象である粘着剤層4を1cm×1cm程度のサイズに切り出し、切り出した粘着剤層4を支持体の表面に固定して測定用試料とする。支持体は、粘着剤層4を固定する表面として平滑な表面を有するとともに、測定結果に影響しないだけの十分な硬さを持つ材料、典型的にはガラスや金属、から構成される。支持体は、例えば、プレートである。次に、上記測定用試料をナノインデンテーション装置にセットし、曲率半径10μmの球形圧子を用いて、常温下、粘着剤層4の表面から5000nmの深さまで、一定の速度で圧子を押し込む押込み試験を実施する。圧子の押込み速度は、1000nm/秒とする。このときに得られた最大荷重を、圧子における、当該最大荷重が得られたときに測定用試料に接している部分の当該試料に対する投影面積で除した値を、粘着剤層4の押込み硬さとすることができる。
【0072】
下記試験により求めた70℃における粘着剤層4のクリープ量ΔCrは、例えば65μm以下であり、50μm以下、45μm以下、40μm以下、35μm以下、30μm以下、25μm以下、20μm以下、さらには15μm以下であってもよい。クリープ量ΔCrの下限は、例えば0.5μmである。
試験:縦20mm×横20mmの接合面にてステンレス製試験板に貼り付けた粘着剤層に対して、前記試験板を固定した状態で500gfの荷重を鉛直下方に加える。荷重を加え始めてから100秒後及び3600秒後の各時点における前記試験板に対する前記粘着剤層のクリープ量(ずれ量)を測定し、それぞれCr100及びCr3600とする。測定したCr100及びCr3600から、式ΔCr=Cr3600-Cr100によりクリープ量ΔCrを求める。
【0073】
70℃における粘着剤層4のクリープ量ΔCrがこれらの範囲にある場合、上記凹みの程度の抑制効果をより確実に得ることができる。
【0074】
粘着剤層4のクリープ量ΔCrは、以下のように評価できる(図2A及び図2B参照)。評価対象である粘着剤層4とサポートフィルム51との積層体を20mm×30mmの短冊状に切り出して試験片52とする。サポートフィルム51は、試験時に荷重が加えられる粘着剤層4における当該荷重の印加部分の変形を抑え、これにより、クリープ量ΔCrをより精度よく測定することを目的として配置する。サポートフィルム51には、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等の樹脂フィルムを使用できる。サポートフィルム51は、画像表示装置において粘着剤層4と接合する(接合した)光学フィルムであってもよい。サポートフィルム51の厚さは、上記荷重により自らが変形しない厚さであればよく、例えば、20~200μmである。サポートフィルム51は、光学フィルム3、あるいは光学フィルム3を含む積層フィルムであってもよい。積層フィルムは、例えば、光学フィルム3と保護フィルム2との積層体である。次に、図2A及び図2Bに示すように、縦20mm×横20mmの接合面にて、ステンレス製試験板53の表面に試験片52を粘着剤層4により貼り付ける。なお、図2Bは、図2Aの断面B-Bである。試験板53への試験片52の貼り付けは、試験板53と粘着剤層4との間に気泡が混入しないように実施する。また、手で貼り付けた後、50℃及び5気圧(絶対圧)のオートクレーブ内に15分収容して試験板53と粘着剤層4との接合を均質化させ、その後、60℃の大気圧雰囲気下に2時間放置してエージングを完了させる。次に、試験板53及び試験片52を、試験板53が上方となるように垂直に保持して70℃の雰囲気に少なくとも5分放置した後、試験板53を固定した状態で試験片52の下端中央に質量500gの錘を固定して500gfの荷重54を鉛直下方に加える。荷重54を加え始めてから100秒後及び3600秒後の各時点における試験板53に対する粘着剤層4のクリープ量(ずれ量)を、各時点における錘の落下量として測定し、それぞれCr100及びCr3600とする。測定したCr100及びCr3600から、式ΔCr=Cr3600-Cr100によりクリープ量ΔCrを求めることができる。錘の落下量の測定には、レーザー変位計を使用できる。なお、クリープ量ΔCrを求めるにあたってCr100を基準とするのは、荷重54を加えた直後における錘の落下量には同一の試験片であってもばらつきが大きく、初期段階において避けられない当該ばらつきによる影響をできるだけ排除して、測定の精度を高めるためである。
【0075】
70℃における粘着剤層4のクリープ量ΔCrを制御するために、例えば、以下の手法を単独又は組み合わせて採用できる。70℃における粘着剤層4のクリープ量ΔCrをより確実に制御するためには、以下の手法を組み合わせることが好ましい。ただし、制御の手法は、以下に示す例に限定されない。
・手法1
粘着剤組成物が含む(メタ)アクリル系モノマーの組成を制御する。例えば、(メタ)アクリル系モノマーが、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体(C)に由来する構成単位を有する場合、及び/又は、架橋性単量体である単量体(B)に由来する構成単位を有する場合、70℃における粘着剤層4のクリープ量ΔCrは、通常、減少する傾向を示す。
・手法2
粘着剤組成物に加える架橋剤の種類及び配合量を制御する。架橋剤の配合量を増加させることにより、70℃における粘着剤層4のクリープ量ΔCrは、通常、減少する傾向を示す。また、この傾向は、架橋剤の系統により異なるため、系統の異なる架橋剤を組み合わせることにより、70℃における粘着剤層4のクリープ量ΔCrをより細かく制御することができる。例えば、粘着剤組成物が溶剤型である場合には、過酸化物系架橋剤によれば、3官能性の架橋剤に比べて、粘着剤層4の弾性率の増加を抑えて応力緩和性を維持しつつ、70℃におけるクリープ量ΔCrを低減させやすい。また、光重合開始剤と多官能性単量体により硬化させる活性エネルギー線硬化型の粘着剤組成物によれば、溶剤型の粘着剤組成物に比べて、70℃におけるクリープ量ΔCrを低減させやすく、上記凹みの程度をより確実に抑制できる。
・手法3
粘着剤組成物に(メタ)アクリル系オリゴマーを加える。(メタ)アクリル系オリゴマーの配合によって、70℃における粘着剤層4のクリープ量ΔCrは、通常、増加する傾向を示す。
【0076】
[セパレータ]
セパレータ5は、典型的には、樹脂フィルムである。セパレータ5を構成する樹脂は、例えば、PET等のポリエステル、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリカーボネート、アクリル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミドである。セパレータ5における粘着剤層4と接する面には、剥離処理が施されていてもよい。剥離処理は、例えば、シリコーン化合物により実施できる。ただし、セパレータ5は上記例に限定されない。セパレータ5は、光学積層フィルム1の使用時、例えば画像形成層への貼付時、には剥離される。
【0077】
セパレータ5の厚さは、例えば20μm以上であり、30μm以上、35μm以上、40μm以上、45μm以上、50μm以上、さらには75μm以上であってもよい。セパレータ5の厚さが45μm以上、特に75μm以上である場合、光学積層フィルム1の保管時に粘着剤層4に生じうる上記凹みの程度をより確実に抑制できる。セパレータ5の厚みによって、噛み込んだ異物により生じる圧力を分散できるためである。
【0078】
本発明の粘着剤付き光学積層フィルムは、上述した以外の他の層を備えていてもよい。
【0079】
粘着剤層付き光学積層フィルム1は、例えば、帯状の当該フィルム1を巻回した巻回体として、あるいは枚葉状の当該フィルム1の積層体として、流通及び保管が可能である。
【0080】
粘着剤層付き光学積層フィルム1は、典型的には、画像表示装置に用いられる。画像表示装置は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイである。画像表示装置の種類及び構成は、限定されない。
【0081】
[画像表示装置]
本発明の画像表示装置の一例を図3に示す。図3に示す画像表示装置6は、基板8、画像形成層(例えば有機EL層)7、粘着剤層4、光学フィルム3及び保護フィルム2がこの順に積層された光学積層体を有している。画像表示装置6は、光学積層フィルム1におけるセパレータ5を除く部分を備えている。基板8及び画像形成層7は、公知の画像表示装置が備える基板及び画像形成層と、それぞれ同様の構成を有していればよい。画像表示装置6は、粘着剤層4に生じうる上記凹みの程度が抑制されているため、信頼性が高く、光学的な欠点が少ない等の利点を有する。
【0082】
図3の画像表示装置6は有機ELディスプレイである。ただし、画像表示装置6の種類及び構成は、限定されない。
【0083】
本発明の画像表示装置は、粘着剤層付き光学積層フィルム1におけるセパレータ5を除く部分を備える限り、任意の構成を有しうる。
【実施例
【0084】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、以下に示す実施例に限定されない。
【0085】
最初に、実施例及び比較例において作製した光学積層フィルム及び粘着剤層等の評価方法を示す。
【0086】
[重量平均分子量(Mw)]
(メタ)アクリル系ポリマー及び(メタ)アクリル系オリゴマーの重量平均分子量(Mw)の測定は、GPCにより、以下の測定条件にて実施した。
・分析装置:Waters製、Acquity APC
・カラム:東ソー製、G7000HXL+GMHXL+GMHXL
・カラム温度:40℃
・溶離液:テトラヒドロフラン(酸添加)
・流速:0.8mL/分
・注入量:100μL
・検出器:示差屈折計(RI)
・標準試料:Agilent製、ポリスチレン(PS)
【0087】
[70℃におけるクリープ量ΔCr]
作製した粘着剤層に対する70℃におけるクリープ量ΔCrの評価は、上述の方法により実施した。サポートフィルム51には、光学積層フィルムの作製に使用したセパレータを使用した。試験板53には、SUS304の板(30mm×75mm、厚さ2.5mm)を使用した。レーザー変位計には、キーエンス製LK-H057/LK-HD500を用いた。また、試験板53が上方となるように垂直に保持してから試験を開始するまでの間に、試験板53を70℃の雰囲気に5分放置した。
【0088】
[ゲル分率]
作製した粘着剤層に対するゲル分率の評価は、以下のように実施した。最初に、作製した粘着剤層から約0.2g掻き取って小片を得た。次に、得られた小片を、ポリテトラフルオロエチレンの延伸多孔質膜(日東電工製NTF1122、平均孔径0.2μm)により包んで凧糸で縛り、試験片を得た。次に、得られた試験片の重量Aを測定した。重量Aは、粘着剤層の小片、延伸多孔質膜及び凧糸の重量の合計である。なお、使用した延伸多孔質膜及び凧糸の合計の重量Bを予め測定しておいた。次に、酢酸エチルで満たされた内容積50mLの容器に試験片を浸漬して、23℃で1週間静置した。静置後、容器から試験片を取り出し、130℃に設定した乾燥機中で2時間乾燥させた後、試験片の重量Cを測定した。そして、測定した重量A、重量B及び重量Cから、式:ゲル分率(重量%)=(C-B)/(A-B)×100(%)により、粘着剤層のゲル分率を算出した。
【0089】
[粘着剤層におけるゾル分の重量平均分子量(Mw)]
粘着剤層をテトラヒドロフランに溶解させて濃度0.2重量%の溶液とし、これを常温で20時間放置した。その後、濾過精度0.45μmのメンブランフィルターにより溶液を濾過し、得られた濾液に対してGPCによる重量平均分子量(Mw)の測定を実施して得られた値を、粘着剤層におけるゾル分の重量平均分子量(Mw)とした。なお、GPCの測定条件は、(メタ)アクリル系ポリマー及び(メタ)アクリル系オリゴマーに対する重量平均分子量(Mw)を測定する際の条件と同一とした。
【0090】
[引張弾性率]
保護フィルムの引張弾性率は、引張試験機(島津製作所製AG-IS)を用いた引張試験により評価した。サンプルの形状は幅15mm×長さ50mmの短冊状とし、初期のチャック間距離を30mm、引張速度を20mm/分とした。なお、測定は23℃で実施した。
【0091】
[凹み量]
作製した光学積層フィルムにおいて粘着剤層に生じうる凹みの程度は、「凹み量」として以下のように評価した。測定ステージを有するデジタル式厚み計(尾崎製作所製デジタルアップライトゲージDG-205)を準備し、測定子の先端に、両面粘着テープ(日東電工製No.500)を介して直径5.5mmの鉄球を固定した。次に、厚み計を作動させて測定子を上下させ、測定子の先端に固定した鉄球を測定ステージに押し当てて開放する動作を10回繰り返した後、測定子を下ろして測定ステージに対して100gfの定荷重で当該鉄球を3分間押し当て続けることで、両面粘着テープを厚さ方向に十分に圧縮するとともに、測定子と鉄球との固定状態を安定化させて、高い精度の測定を実施できるようにした。次に、上記処置がなされた後の鉄球と測定ステージとが接触する位置をゼロ点に設定した。次に、作製した光学積層フィルムを保護フィルムが露出面となるように測定ステージに戴置した。次に、厚み計を作動させ、測定子を下ろして100gfの定荷重で上記鉄球を保護フィルムに押し当てた。鉄球の押し当てによって保護フィルムに加わる圧力は、約2MPaであった。鉄球が保護フィルムに接触した時点(押し当て後0秒)の時点におけるゼロ点からの鉄球の変位と、当該時点から60秒が経過した時点(押し当て後60秒)の時点におけるゼロ点からの鉄球の変位とを厚み計により測定し、その差の絶対値を、粘着剤層の厚さ方向への押込み量である凹み量とした。ゼロ点の設定及び凹み量の評価は、23℃で実施した。
【0092】
次に、実施例及び比較例の各粘着剤層の作製方法を説明する。
【0093】
以下の説明に示す略称又は名称と化合物との対応は、次のとおりである。
BA:n-ブチルアクリルレート
LA:ラウリルアクリレート
MA:メチルアクリレート
NVP:N-ビニルピロリドン
AA:アクリル酸
HBA:4-ヒドロキシブチルアクリレート
DCPMA:ジシクロペンタニルメタクリレート(日立化成製、FA-513M)
HEA:2-ヒドロキシエチルアクリレート
2EHA:2-エチルヘキシルアクリレート
MMA:メチルメタクリレート
AIBN:2,2’-アゾビスイソブチロニトリル
Omnirad651:2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(IGM Resins B.V.製)
Omnirad184:1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(IGM Resins B.V.製s)
D110N:トリメチロールプロパン/キシリレンジイソシアネート付加物(三井化学製タケネートD110N)
C/L:トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業製コロネートL)
A-HD-N:ヘキサンジオールジアクリレート(新中村化学製)
過酸化物:ベンゾイルパーオキサイド(日本油脂製ナイパーBMT)
Irganox1010:ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)(BASF製)
【0094】
[(メタ)アクリル系ポリマーの作製]
(合成例1)
撹拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、及び冷却器を備えた4つ口フラスコに、BA99重量部及びHBA1重量部を仕込んだ。次に、BA及びHBAの混合物100重量部に対して、重合開始剤としてAIBN0.1重量部を加え、緩やかに撹拌しながら窒素ガスを導入してフラスコ内を窒素置換した後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って重合反応を7時間進行させた。次に、得られた反応液に酢酸エチルを加えて固形分濃度30重量%に調整して、(メタ)アクリル系ポリマーA1の溶液を得た。(メタ)アクリル系ポリマーA1の重量平均分子量(Mw)は160万であった。
【0095】
(合成例2,3)
以下の表1に示す種類及び量の単量体及び重合開始剤をフラスコに仕込んだ以外は、合成例1と同様にして、(メタ)アクリル系ポリマーA2,A3を得た。
【0096】
[(メタ)アクリル系モノマーシロップの作製]
(合成例4)
窒素ガス導入管、及びB型粘度計(回転粘度計)に接続されたスピンドルを備えた4つ口フラスコに、2EHA40重量部、LA50重量部、NVP9重量部、HBA1重量部と、光重合開始剤であるOminirad651及びOmnirad184をそれぞれ0.05重量部仕込んだ。次に、スピンドルを回転させながら、窒素ガスを導入してフラスコ内を窒素置換した後、粘度計により測定される重合系の粘度が約15Pa・sになるまで紫外線を照射して光重合を進行させ、単量体群の部分重合物を含む(メタ)アクリル系モノマーシロップA4を得た。なお、粘度計には東機産業製BH形を使用し、スピンドル(ローターNo.5)の回転速度は10rpmとした。また、フラスコ内の液温は30℃に保持した。
【0097】
(合成例5)
以下の表1に示す種類及び量の単量体及び光重合開始剤をフラスコに仕込んだ以外は、合成例4と同様にして、(メタ)アクリル系モノマーシロップA5を得た。
【0098】
[(メタ)アクリル系オリゴマーの作製]
(合成例6)
撹拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、及び冷却器を備えた4つ口フラスコに、BA95重量部、MA3重量部、AA2重量部、重合開始剤としてAIBN0.1重量部、及びトルエン140重量部を仕込んだ。次に、緩やかに撹拌しながら窒素ガスを導入してフラスコ内を窒素置換した後、フラスコ内の液温を70℃付近に保って重合反応を8時間進行させ、(メタ)アクリル系オリゴマーB1の溶液を得た。(メタ)アクリル系オリゴマーB1の重量平均分子量は4500であった。
【0099】
(合成例7)
モノマー成分としてDCPMA60重量部及びMMA40重量部、連鎖移動剤としてα-チオグリセロール3.5重量部、並びに重合溶媒としてトルエン100重量部を混合し、窒素雰囲気下にて70℃で1時間撹拌した。次に、熱重合開始剤としてAIBN0.2重量部を投入し、70℃で2時間反応させた後、80℃に昇温して2時間反応させた。その後、反応液を130℃に加熱して、トルエン、連鎖移動剤及び未反応モノマーを乾燥除去して、(メタ)アクリル系オリゴマーB2を得た。
【0100】
各合成例において作製した(メタ)アクリル系ポリマー、(メタ)アクリル系モノマーシロップ及び(メタ)アクリル系オリゴマーの組成(単量体の仕込み比)及び重量平均分子量(Mw)を以下の表1に示す。
【0101】
【表1】
【0102】
[粘着剤層の作製]
(製造例1~8,11)
以下の表2に示す組成となるように(メタ)アクリル系ポリマー、(メタ)アクリル系オリゴマー、架橋剤及び添加剤を混合して、溶剤型の粘着剤組成物を得た。次に、セパレータであるPETフィルム(厚さ38μm、50μm又は75μm)の表面に得られた粘着剤組成物を塗布した後、155℃に設定した空気循環式恒温オーブンにて2分間乾燥させて、製造例1~8,11の粘着剤層(厚さ50μm)を形成した。粘着剤組成物の塗布には、ファウンテンコーターを使用した。
【0103】
(製造例9,10)
以下の表2に示す組成となるように(メタ)アクリル系モノマーシロップ、架橋剤及び添加剤を混合して混合物を得た。次に、セパレータであるPETフィルム(厚さ38μm)の表面に上記混合物を塗布した後、混合物の塗布膜の上にさらなる上記PETフィルムを配置して、1対のPETフィルムにより塗布膜を挟持した。次に、照度4mW/cm2及び光量1200mJ/cm2の照射条件にて紫外線を照射して塗布膜を硬化させ、粘着剤層(厚さ50μm)を形成した。粘着剤層の形成後、上記さらなるPETフィルムを剥離して粘着剤層を露出させた。
【0104】
【表2】
【0105】
製造例1~11で作製した各粘着剤層に対する評価結果を以下の表3に示す。
【0106】
【表3】
【0107】
[光学積層フィルムの作製]
以下の表4に示す組み合わせに基づき、製造例1~11で作製したセパレータ及び粘着剤層と、光学フィルムと、保護フィルムとを順に積層して、実施例1~12及び比較例1~3の光学積層フィルムを得た。ただし、比較例1では、保護フィルムを配置しなかった。光学フィルムには、保護フィルムと接合される側から、偏光子保護フィルム(厚さ20μm)、偏光子(厚さ5μm)、λ/2板(1/2波長板、厚さ3μm)及びλ/4板(1/4波長板、厚さ3μm)が順に積層された厚さ31μmの偏光板を使用した。保護フィルムには、実施例1~12及び比較例3についてPETフィルム(厚さ25μm、38μm又は50μm)を、比較例2についてポリエチレンフィルム(厚さ30μm)を、それぞれ使用した。保護フィルムは、アクリル系粘着剤層(厚さ10μm)を介して光学フィルムに接合した。なお、光学フィルムを構成する各層及び光学フィルムは、以下のように準備した。
【0108】
(λ/4板及びλ/2板)
λ/4板(1/4波長板)及びλ/2板(1/2波長板)の積層体である位相差フィルムは、配向膜の形成後にネマチック液晶相を示す重合性液晶材料(BASF社製、PaliocolorLC242)を使用して作製した。具体的には、次のとおりである。上記重合性液晶材料、及び光重合開始剤(BASF製、イルガキュア907)をトルエンに溶解させた後、塗工性向上を目的としてフッ素系界面活性剤(DIC製メガファック)を液晶厚みに応じて0.1~0.5重量%さらに加えて塗工液Lを調製した。塗工液Lの固形分濃度は25重量%とした。
【0109】
次に、図4に示す、位相差フィルムの製造装置200を準備した。製造装置200は、帯状のPET基材214を供給する供給リール221、加圧ローラ224,234、賦形ローラ230,240、剥離ローラ226,236、搬送ローラ231、ダイ222,229,232,239、及び高圧水銀灯による紫外線を照射する紫外線照射装置225,227,235,237を備えている。次に、供給リール221から繰り出したPET基材214の一方の面に対して、紫外線硬化性樹脂の溶液210をダイ222により塗布した。次に、加圧ローラ224により上記塗布膜と賦形ローラ230とを接触させ、両者が接触した状態のまま賦形ローラ230に沿ってPET基材214を搬送させるとともに、紫外線照射装置225によりPET基材214の側から紫外線を照射して塗布膜を硬化させた。賦形ローラ230におけるPET基材214の搬送面には、上記重合性液晶材料の配向膜をさらに形成したときにλ/4板が形成される線状の凹凸(PET基材のMD方向に対して75°の方向に延びる)が形成されており、上記硬化により、当該凹凸に対応する形状を露出面に有する紫外線硬化性樹脂の硬化膜が形成された。次に、剥離ローラ226によって、硬化膜が形成されたPET基材214を賦形ローラ230から剥離した後、上記硬化膜の露出面に、ダイ229により塗工液Lを塗布し、紫外線照射装置227により紫外線を照射して塗布膜を配向硬化させた。このようにして、PET基材214上に、紫外線硬化性樹脂の硬化膜及び重合性液晶材料の配向硬化膜からなるλ/4板(厚さ3μm)を形成した。
【0110】
次に、λ/4板を形成したPET基材214を搬送ローラ231により搬送し、さらに、λ/4板の露出面に対して、上記紫外線硬化性樹脂の溶液212をダイ232により塗布して塗布膜を形成した。次に、加圧ローラ234により上記塗布膜と賦形ローラ240とを接触させ、両者が接触した状態のまま賦形ローラ240に沿ってPET基材214を搬送させるとともに、紫外線照射装置235によりPET基材214の側から紫外線を照射して塗布膜を硬化させた。賦形ローラ240におけるPET基材214の搬送面には、上記重合性液晶材料の配向膜をさらに形成したときにλ/2板が形成される線状の凹凸(PET基材のMD方向に対して15°の方向に延びる)が形成されており、上記硬化により、当該凹凸に対応する形状を露出面に有する紫外線硬化性樹脂の硬化膜が形成された。次に、剥離ローラ236によって、硬化膜が形成されたPET基材214を賦形ローラ240から剥離した後、上記硬化膜の露出面に、ダイ239により塗工液Lを塗布し、紫外線照射装置237により紫外線を照射して塗布膜を配向硬化させた。このようにして、PET基材214のλ/4板上に、紫外線硬化性樹脂の硬化膜及び重合性液晶材料の配向硬化膜からなるλ/2板(厚さ3μm)をさらに形成して積層体(b)を得た。
【0111】
(偏光フィルム)
偏光子及び偏光子保護フィルムの積層体である偏光フィルムは、以下のように作製した。
【0112】
熱可塑性樹脂基材として、イソフタル酸(IPA)ユニットを7モル%有するアモルファスのIPA共重合PETフィルム(厚さ100μm)を準備し、その表面にコロナ処理(58W/m2/分)を施した。これとは別に、アセトアセチル変性PVA(日本合成化学工業製、ゴーセファイマーZ200、平均重合度1200、ケン化度98.5モル%、アセトアセチル化度5モル%)を1重量%添加したPVA(重合度4200、ケン化度99.2%)を水に溶解させて、濃度5.5重量%のPVA塗工液を得た。次に、IPA共重合PETフィルムにおけるコロナ処理面に対して、乾燥後の膜厚が12μmになるように上記PVA塗工液を塗布し、60℃の熱風乾燥により塗布膜を10分間乾燥させて、基材と、基材上のPVA層とからなる積層体を得た。
【0113】
次に、得られた積層体を空気中、130℃にて1.8倍の延伸倍率で自由端延伸(空中補助延伸)して、延伸積層体を得た。次に、延伸積層体を液温30℃のホウ酸不溶化水溶液に30秒間浸漬させて、PVA層を不溶化した。ホウ酸不溶化水溶液におけるホウ酸の含有量は、水100重量部に対して3重量部とした。次に、PVA層を不溶化した延伸積層体を染色して、着色積層体を得た。染色は、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含む液温30℃の染色液に延伸積層体を浸漬することで実施した。上記染色では、延伸積層体に含まれるPVA層がヨウ素により染色される。染色の時間は、最終的に得られる偏光子を構成するPVA層の単体透過率が40~44%の範囲となるように調整した。染色液には、ヨウ素濃度0.1~0.4重量%、ヨウ化カリウム濃度0.7~2.8重量%の水溶液を使用した。染色液におけるヨウ素濃度に対するヨウ化カリウム濃度の比は7とした。次に、着色積層体を液温30℃のホウ酸架橋水溶液に60秒間浸漬させることで、ヨウ素を吸着したPVA層におけるPVA分子間に架橋構造を形成する架橋処理を実施した。ホウ酸架橋水溶液におけるホウ酸の含有量及びヨウ化カリウムの含有量は、いずれも水100重量部に対して3重量部とした。
【0114】
次に、架橋処理後の着色積層体を、ホウ酸水溶液中にて、延伸温度70℃及び延伸倍率3.05倍で延伸(ホウ酸水中延伸)して、最終的な延伸倍率が5.50倍である延伸積層体を得た。ホウ酸水中延伸の延伸方向は、最初に実施した空中補助延伸の延伸方向に一致させた。次に、延伸後の延伸積層体をホウ酸水溶液から取り出し、PVA層の表面に付着したホウ酸をヨウ化カリウム溶液(ヨウ化カリウムの含有量が水100重量部に対して4重量部)により洗浄した。次に、洗浄後の延伸積層体を60℃の熱風乾燥により乾燥させて、基材と、基材上に形成された偏光子(厚さ5μm)との積層体を得た。
【0115】
次に、偏光子保護フィルムとして、グルタルイミド環単位を有するメタクリル樹脂の延伸フィルム(厚さ20μm、透湿度160g/m2)を準備した。次に、上記作製した積層体における偏光子の露出面に対して準備した偏光子保護フィルムを接合して、基材と、偏光子及び偏光子保護フィルムを有する偏光フィルムとの積層体(c)を得た。偏光子と偏光子保護フィルムとの接合には、公知のアクリル系接着剤を使用した。
【0116】
次に、上記作製した積層体(b)及び積層体(c)を用いて、以下のように光学フィルムを作製した。最初に、積層体(c)から基材を剥離して偏光子を露出させた。次に、露出させた偏光子と積層体(b)のλ/2板とを公知のアクリル系接着剤により接合して光学フィルムを得た。なお、光学フィルムと粘着剤層との接合は、積層体(b)からPET基材214を剥離してλ/4板を露出させて実施した。
【0117】
以下の表4に、実施例及び比較例の各光学積層フィルムの構成と、その評価結果とを示す。
【0118】
【表4】
【0119】
表4に示すように、実施例の光学積層フィルムでは凹み量が低減された。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明の粘着剤層付き光学積層フィルムは、画像表示装置の製造に使用できる。
【符号の説明】
【0121】
1 粘着剤層付き光学積層フィルム
2 保護フィルム
3 光学フィルム
4 粘着剤層
5 セパレータ
6 画像表示装置
7 画像形成層(有機EL層)
8 基板
図1
図2A
図2B
図3
図4