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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】情報処理システム
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/28 20060101AFI20241127BHJP
   F25D 23/00 20060101ALI20241127BHJP
   F25D 11/00 20060101ALI20241127BHJP
   G06F 11/22 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
H04L12/28 500A
F25D23/00 301N
F25D11/00 101B
G06F11/22 675C
G06F11/22 673Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020088672
(22)【出願日】2020-05-21
(65)【公開番号】P2021184132
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-12-15
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100205785
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100203297
【弁理士】
【氏名又は名称】橋口 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100135301
【弁理士】
【氏名又は名称】梶井 良訓
(72)【発明者】
【氏名】竹内 慎
【審査官】羽岡 さやか
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0076640(US,A1)
【文献】特開2019-179300(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111160616(CN,A)
【文献】特開2016-065680(JP,A)
【文献】特開2013-219880(JP,A)
【文献】特開2009-074755(JP,A)
【文献】国際公開第2016/132468(WO,A1)
【文献】特開平10-238920(JP,A)
【文献】特開2019-144174(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110954758(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109308519(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110995384(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0010634(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/28
F25D 23/00
F25D 11/00
G06F 11/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷蔵庫の運転状態を示す情報が入力されると故障診断の結果を出力するように学習された学習モデルを用いて、前記冷蔵庫の故障診断を行う診断部と、
前記診断部による前記故障診断の結果に基づく情報を前記冷蔵庫または端末装置から出力させる通知部と、
前記冷蔵庫の修理または前記冷蔵庫の点検の結果に基づく情報の入力を受け付ける受付部と、
前記受付部により受け付けられた前記情報を用いて追加学習された学習モデルに基づき前記学習モデルを更新する更新部と、
を備え、
前記学習モデルは、
前記冷蔵庫の運転状態を示す情報が入力されると、前記故障診断の結果を出力するように学習された第1学習モデルと、
前記冷蔵庫の正常時の運転状態を示す情報が入力情報として入力されると、前記入力情報と同じ情報を復元して出力するように学習された第2学習モデルとを含み、
前記診断部は、
前記第1学習モデルを用いた第1故障診断によって、前記冷蔵庫の構成部品の故障又は前記冷蔵庫の故障の予兆を検出する前記冷蔵庫の故障診断を実施し、前記第1故障診断で 前記冷蔵庫から故障または故障の予兆が検出されなかった場合、さらに前記第2学習モデルを用いて第2故障診断を実施し、
前記第1学習モデルは、第1データに基づいて生成され、
前記第2学習モデルは、第1データよりも細かく分けられた第2データごとに、前記第2データに基づいて生成される、
情報処理システム。
【請求項2】
前記通知部は、前記故障診断の結果として故障が生じている可能性が第1閾値以上であると判定された場合、ユーザに前記修理を促す通知を出力させる、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記通知部は、前記故障診断の結果として故障が生じている可能性が前記第1閾値未満であるが、故障の予兆が生じている可能性が第2閾値以上であると判定された場合、前記ユーザに前記点検を促す通知を出力させる、
請求項2に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記第1データは、複数の冷蔵庫からのデータであり、
前記第2データは、ユーザごとに対応づけられた区分によって前記第1データよりも細かく分けられたデータである、
請求項1又は請求項2に記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記診断部は、前記冷蔵庫の運転状態を所定の比較対象と比較することで前記第2故障診断を行う、
請求項に記載の情報処理システム。
【請求項6】
前記診断部は、前記冷蔵庫の直近の運転状態と、前記冷蔵庫の過去の運転状態との比較に基づき前記第2故障診断を行う、
請求項1から請求項5の何れか1項に記載の情報処理システム。
【請求項7】
前記故障診断の結果として故障が生じている可能性が第3閾値以上であると判定された場合、前記冷蔵庫の制御を第1態様で変更する制御変更部をさらに備える、
請求項1から請求項のうちいずれか1項に記載の情報処理システム。
【請求項8】
前記制御変更部は、前記故障診断の結果として故障が生じている可能性は前記第3閾値未満であるが、故障の予兆が生じている可能性が第4閾値以上であると判定された場合、前記冷蔵庫の制御を前記第1態様とは異なる第2態様で変更する、
請求項に記載の情報処理システム。
【請求項9】
冷蔵庫の運転状態を示す情報が入力されると故障診断の結果を出力するように学習された第1学習モデルを用いて第1故障診断を実施し、前記第1故障診断で前記冷蔵庫から故障または故障の予兆が検出されなかった場合、冷蔵庫の正常時の運転状態を示す情報が入力情報として入力されると、前記入力情報と同じ情報を復元して出力するように学習された第2学習モデルを用いて、前記第2学習モデルに入力する前記冷蔵庫の運転状態を示す情報と、前記第2学習モデルから出力される出力情報との比較に基づき前記冷蔵庫の第2故障診断を行う診断部と、
前記診断部による前記故障診断の結果に基づく情報を前記冷蔵庫または端末装置から出力させる通知部と、
前記冷蔵庫の修理または前記冷蔵庫の点検の結果に基づく情報の入力を受け付ける受付部と、
前記受付部により受け付けられた前記情報を用いて追加学習された学習モデルに基づき前記学習モデルを更新する更新部と、
を備え、
前記第1学習モデルは、第1データに基づいて生成され、
前記第2学習モデルは、第1データよりも細かく分けられた第2データごとに、前記第2データに基づいて生成される、
情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
動作履歴を含む近時データを利用して機器を診断するサーバが提案されている。ところで、故障診断に関する情報処理システムとしては、より適切な故障診断を行うことができる情報処理システムが期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-179300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、より適切な故障診断を行うことができる情報処理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の情報処理システムは、診断部と、通知部と、受付部と、更新部とを持つ。前記診断部は、冷蔵庫の運転状態を示す情報が入力されると故障診断の結果を出力するように学習された学習モデルを用いて、前記冷蔵庫の故障診断を行う。前記通知部は、前記診断部による前記故障診断の結果に基づく情報を前記冷蔵庫または端末装置から出力させる。前記受付部は、前記冷蔵庫の修理または前記冷蔵庫の点検の結果に基づく情報の入力を受け付ける。前記更新部は、前記受付部により受け付けられた前記情報を用いて追加学習された学習モデルに基づき前記学習モデルを更新する。前記学習モデルは、第1学習モデルと、第2学習モデルとを含む。前記第1学習モデルは、前記冷蔵庫の運転状態を示す情報が入力されると、前記故障診断の結果を出力するように学習されている。前記第1学習モデルは、前記冷蔵庫の正常時の運転状態を示す情報が入力情報として入力されると、前記入力情報と同じ情報を復元して出力するように学習されている。前記診断部は、前記第1学習モデルを用いた第1故障診断によって、前記冷蔵庫の構成部品の故障又は前記冷蔵庫の故障の予兆を検出する前記冷蔵庫の故障診断を実施し、前記第1故障診断で 前記冷蔵庫から故障または故障の予兆が検出されなかった場合、さらに前記第2学習モデルを用いて第2故障診断を実施する。前記第1学習モデルは、第1データに基づいて生成される。前記第2学習モデルは、第1データよりも細かく分けられた第2データごとに、前記第2データに基づいて生成される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態の故障診断システムを示す図。
図2】実施形態の冷蔵庫の構成を示すブロック図。
図3】実施形態のサーバの構成を示すブロック図。
図4】実施形態の第1学習モデルを模式的に示す図。
図5】実施形態の第2学習モデルを模式的に示す図。
図6】実施形態の第2学習モデルを別観点で模式的に示す図。
図7】実施形態のサーバの処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の情報処理システムを、図面を参照して説明する。以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。「XXに基づく」とは、「少なくともXXに基づく」ことを意味し、XXに加えて別の要素に基づく場合も含み得る。「XXに基づく」とは、XXを直接に用いる場合に限定されず、XXに対して演算や加工が行われたものに基づく場合も含み得る。「XXまたはYY」とは、XXとYYのうちいずれか一方の場合に限定されず、XXとYYの両方の場合も含み得る。これは選択的要素が3つ以上の場合も同様である。「XX」および「YY」は、任意の要素(例えば任意の情報)である。
【0008】
<1.故障診断システムの全体構成>
図1は、実施形態の故障診断システム1の全体構成を示す図である。故障診断システム1は、例えば、冷蔵庫100、サーバ200、および端末装置300を含む。後述するネットワークNWは、例えば、インターネット、セルラー網、Wi-Fi網、LPWA(Low Power Wide Area)、WAN(Wide Area Network)、LAN(Local Area Network)、またはその他の公衆回線や専用回線などを状況に応じて利用すればよい。
【0009】
冷蔵庫100は、ユーザUの住居に配置されている。冷蔵庫100は、後述する無線モジュール140(図2参照)を有し、例えば同じ住居内に配置された無線ルータRおよびネットワークNWを介して、サーバ200と通信可能である。冷蔵庫100については詳しく後述する。
【0010】
サーバ200は、1台以上のサーバ装置SD(例えばクラウドサーバ)で構成される。サーバ200は、「サーバシステム」と称されてもよい。サーバ200は、ネットワークNW中のルータに含まれる情報処理部など、エッジコンピューティングやフォグコンピューティングを行う情報処理部を含んでもよい。サーバ200については、詳しく後述する。
【0011】
端末装置300は、冷蔵庫100のユーザUが使用する端末装置である。端末装置300は、例えば、スマートフォンまたはタブレット端末のような携帯型端末装置であり、サーバ200から受信する故障診断の結果を表示可能な表示画面を含む。ただし、端末装置300は、上記例に限らず、サーバ200から受信する故障診断の結果を音声で出力可能な音声対話装置(例えばスマートスピーカ)などでもよい。
【0012】
<2.冷蔵庫>
図2は、冷蔵庫100の構成を示すブロック図である。冷蔵庫100は、例えば、冷蔵室温度センサ101、野菜室温度センサ102、冷凍室温度センサ103、冷蔵冷却器温度センサ104、冷凍冷却器温度センサ105、周囲温度センサ106、庫内カメラ107、冷蔵室扉スイッチ108、野菜室扉スイッチ109、冷凍室扉スイッチ110、電流検出部111、圧縮機121、冷媒切替弁122、冷蔵冷却ファン123、冷凍冷却ファン124、ダンパ125、ヒータ126、表示装置130、無線モジュール(通信モジュール)140、記憶部150、および制御部160を有する。なお、冷蔵庫100は、上述した構成に加え、冷蔵庫の一般的な構成(筐体や扉、冷却器など)を有する。
【0013】
冷蔵室温度センサ101は、冷蔵庫100の冷蔵室に設けられ、冷蔵室の温度を検出する。野菜室温度センサ102は、冷蔵庫100の野菜室に設けられ、野菜室の温度を検出する。冷凍室温度センサ103は、冷蔵庫100の冷凍室に設けられ、冷凍室の温度を検出する。冷蔵室温度センサ101、野菜室温度センサ102、および冷凍室温度センサ103の各々は、冷蔵庫100の庫内温度を検出する「庫内温度センサ」の一例である。以下では、冷蔵室温度センサ101、野菜室温度センサ102、および冷凍室温度センサ103を纏めて「庫内温度センサRS」と称する。
【0014】
冷蔵冷却器温度センサ104は、冷蔵冷却器に取り付けられ、冷蔵冷却器の温度を検出する。冷蔵冷却器は、圧縮機121から冷媒が供給され、冷蔵室および野菜室を冷却する空気を冷却するエバポレータである。冷凍冷却器温度センサ105は、冷凍冷却器に取り付けられ、冷凍冷却器の温度を検出する。冷凍冷却器は、圧縮機121から冷媒が供給され、冷凍室を冷却する空気を冷却するエバポレータである。以下では、冷蔵冷却器温度センサ104と冷凍冷却器温度センサ105を纏めて「冷却器温度センサES」と称する。また、冷蔵冷却器と冷凍冷却器とを纏めて「冷却器」と称する。
【0015】
周囲温度センサ106は、冷蔵庫100の周囲の温度(すなわち、冷蔵庫100が設置された部屋の室温)を検出する。庫内カメラ107は、例えば、冷蔵室、野菜室、または冷凍室に設けられ、冷蔵庫100の庫内の様子を撮影するカメラである。庫内カメラ107は、冷蔵室、野菜室、または冷凍室に対する食品の出し入れおよび/または庫内の貯蔵量(冷却負荷)を検出する検出部である。
【0016】
冷蔵室扉スイッチ108は、冷蔵庫100の冷蔵室扉の開閉を検出する。野菜室扉スイッチ109は、冷蔵庫100の野菜室扉の開閉を検出する。冷凍室扉スイッチ110は、冷蔵庫100の冷凍室扉の開閉を検出する。以下では、冷蔵室扉スイッチ108、野菜室扉スイッチ109、および冷凍室扉スイッチ110を纏めて「扉スイッチDS」と称する。
【0017】
電流検出部111は、冷蔵庫100が有する電気部品に流れる電流の電流値を検出する。電気部品は、例えば、圧縮機121、冷蔵冷却ファン123、冷凍冷却ファン124、製氷皿モータ、給水モータ、またはヒータ126などである。
【0018】
圧縮機121は、冷蔵冷却器および冷凍冷却器に供給される冷媒を圧縮する。冷媒切替弁122は、圧縮機121で圧縮された冷媒が流れる流路を、冷蔵冷却器に供給する流路と、冷凍冷却器に供給する流路とに選択的に接続する。冷蔵冷却ファン123は、冷蔵冷却器により冷やされた冷気を冷蔵室および野菜室で循環させる。冷凍冷却ファン124は、冷凍冷却器により冷やされた冷気を冷凍室で循環させる。以下では、冷蔵冷却ファン123と冷凍冷却ファン124を纏めて「冷却ファンF」と称する。ダンパ125は、冷蔵庫100内の空気流路の途中に設けられ、当該空気流路を開閉する。ヒータ126は、例えば除霜用のヒータである。ヒータ126は、冷却器に設けられ、冷却器に付着した霜が多くなった場合に加熱され、冷却器に付着した霜を溶かす。
【0019】
表示装置130は、例えば液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイ(Electro Luminescence)ディスプレイであり、故障検知の結果を表示可能な表示画面を含む。表示装置130は、「報知器」の一例である。無線モジュール140は、高周波回路およびアンテナを含み、無線ルータRと無線通信可能である。
【0020】
記憶部150は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ、またはこれらのうち複数の組み合わせにより実現される。記憶部150には、制御量情報CIが記憶されている。
【0021】
制御量情報CIは、例えば、各運転モードにおける圧縮機121、冷却ファンF、およびヒータ126などの基本制御量が登録された情報である。基本制御量とは、冷蔵庫100に初期設定されている制御量であり、冷蔵庫100が正常な場合の制御量である。例えば、制御量情報CIには、冷蔵運転の強度が「弱」「中」「強」のそれぞれの場合における圧縮機121の運転周波数や冷却ファンFの回転数(または、冷却目標温度と庫内温度との差に応じた圧縮機121の運転周波数や冷却ファンFの回転数)、冷却器の除霜を開始する冷却器の閾値温度、およびヒータ126の通電量などの基本制御量が登録されている。制御部160は、制御量情報CIに登録された各構成部品の制御量に基づき冷蔵庫100の各構成部品を動作させる。
【0022】
制御部160は、例えば、冷蔵庫100に搭載されたCPU(Central Processing Unit)のようなハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。ただし、制御部160の全部または一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、またはFPGA(Field Programmable Gate Array)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアとの協働によって実現されてもよい。制御部160は、庫内温度センサRS、冷却器温度センサES、周囲温度センサ106、庫内カメラ107、扉スイッチDS、および電流検出部111の検出結果に基づき、冷蔵庫100の制御や食材の在庫管理を行う。
【0023】
本実施形態では、制御部160は、庫内温度センサRS、冷却器温度センサES、周囲温度センサ106、庫内カメラ107、扉スイッチDS、および電流検出部111の検出結果を、冷蔵庫100の運転状態を示す情報(以下、「運転状態情報」と称する)としてサーバ200に送信する。また、制御部160は、そのときの冷蔵庫100の運転モードを示す情報を、運転状態情報の一部としてサーバ200に送信する。制御部160は、無線モジュール140を介して、運転状態情報を所定の周期(例えば10分毎)でサーバ200に送信する。また、制御部160は、後述するサーバ200の通知部250から受信する故障診断の結果を、表示装置130を制御して表示装置130に表示させる。
【0024】
<3.サーバ>
図3は、サーバ200の構成を示すブロック図である。サーバ200は、例えば、情報取得部210、情報蓄積部220、学習部(更新部)230、診断部240、通知部250、受付部260、および制御変更部270を有する。これら機能部は、例えば、サーバ200に搭載されたCPUのようなハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。ただし、これら機能部の全部または一部は、ASIC、PLD、またはFPGAなどのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアとの協働によって実現されてもよい。
【0025】
さらに、サーバ200は、記憶部280を有する。記憶部280は、例えば、RAM、ROM、HDD、フラッシュメモリ、またはこれらのうち複数の組み合わせにより実現される。記憶部280には、過去データPD、第1学習モデルM1、および第2学習モデルM2が記憶されている。これらについては詳しく後述する。
【0026】
本実施形態では、サーバ200は、「情報処理システム」の一例である。ここで、上述した情報取得部210、情報蓄積部220、学習部230、診断部240、通知部250、受付部260、制御変更部270、および記憶部280の一部または全部は、サーバ200に代えて、冷蔵庫100に設けられてもよい。これら場合、サーバ200と冷蔵庫100とが協働することで「情報処理システム」の一例が構成されてもよく、冷蔵庫100が単独で「情報処理システム」の一例に該当してもよい。以下では、上記機能部がサーバ200に設けられる例について説明する。
【0027】
情報取得部210は、不図示の通信モジュールを介して通信を行い、冷蔵庫100から送信された運転状態情報を取得する(受け取る)。すなわち、情報取得部210は、庫内温度センサRS、冷却器温度センサES、周囲温度センサ106、庫内カメラ107、扉スイッチDS、および電流検出部111の検出結果などを所定の周期で取得する。情報取得部210は、故障診断の実行段階では、故障診断対象の冷蔵庫100から運転状態情報を取得する。一方で、情報取得部210は、後述する学習モデルの学習段階では、学習用データとして多数の冷蔵庫100から運転状態情報を収集する。
【0028】
情報蓄積部220は、情報取得部210によって新しい運転状態情報が取得された場合、新しく取得された運転状態情報を日時情報と対応付けて記憶部280の過去データPDに追加して蓄積する。本実施形態では、情報蓄積部220は、冷蔵庫100から所定の周期(例えば10分毎)で取得される運転状態情報を、過去データPDに随時追加して蓄積する。これにより、情報蓄積部220は、冷蔵庫100の運転状態の変化の履歴を蓄積する。
【0029】
学習部230は、第1学習モデルM1および第2学習モデルM2を生成する。第1学習モデルM1および第2学習モデルM2は、機械学習により学習された学習済みモデルであり、サポートベクターマシンまたはニューラルネットワークなどにより構成される。
【0030】
図4は、第1学習モデルM1を模式的に示す図である。例えば、第1学習モデルM1は、入力層、隠れ層(中間層)、および出力層を含むニューラルネットワークによって構成される。第1学習モデルM1は、教師データを用いたディープラーニングなどによって入力層、隠れ層、および出力層に含まれるノードnの間の重み付け係数などが調整されることで学習が行われる。なお図4では、入力情報および出力情報について一部の構成部品に関する情報だけを例示している。これは図5および図6でも同様である。
【0031】
第1学習モデルM1は、冷蔵庫100の運転状態情報が入力されると故障診断の結果を出力するように学習された学習モデルである。例えば、第1学習モデルM1は、冷蔵庫100の運転状態情報が入力情報として入力された場合、冷蔵庫100に故障が生じている可能性、および冷蔵庫100に故障の予兆が生じている可能性を出力情報として出力する。
【0032】
入力情報である運転状態情報は、直近に取得された1回分の運転状態情報(所定の周期で取得される運転状態情報の1回分)でもよいし、情報蓄積部220によって一定期間に亘り蓄積された運転状態情報でもよい。「一定期間に亘り蓄積された運転状態情報」は、例えば、1日分の運転状態情報でもよいし、1週間分の運転状態情報でもよいし、1ヶ月分の運転状態情報でもよし、その他の期間の運転状態情報でもよい。本実施形態では、入力情報である運転状態情報は、第1期間(例えば1ヶ月)分の運転状態情報である。入力情報である運転状態情報は、庫内温度センサRS、冷却器温度センサES、周囲温度センサ106、庫内カメラ107、扉スイッチDS、および電流検出部111の検出結果などを含む。
【0033】
本実施形態では、第1学習モデルM1の出力情報は、冷蔵庫100に含まれる複数の構成部品(圧縮機121、冷却ファンF、冷却器、ヒータ126、扉、筐体など)の各々についての故障の可能性および故障の予兆の可能性を含む。本実施形態で「故障」とは、構成部品の正常な働きが損なわれている状態を意味する。一方で、本実施形態では「予兆」とは、故障が生じる前段階の小さな変化が生じている状態であり、構成部品は動作するが、動作が不安定になることがある状態や異常な動作を伴うことがある状態などを意味する。
【0034】
圧縮機121に関して言えば、「故障」とは、冷媒の漏れが生じて圧縮率が低下する場合や、過電流が流れる場合などであり、「予兆」とは、圧縮機121の振動が大きくなる場合や、圧縮機121から異音がする場合などである。冷却ファンFに関して言えば、「故障」とは、冷却ファンFの回転が停止してしまう場合などであり、「予兆」とは、冷却ファンFの振動が大きくなる場合や、冷却ファンFから異音がする場合などである。冷却器に関して言えば、「故障」とは、経年劣化により表面のコーティングが剥がれ、多くの霜が付着し、冷却器としての機能が維持できなくなる場合などであり、「予兆」とは、霜が付着しやすくなり、運転モードや冷蔵庫100の周囲温度などの条件によっては、冷蔵室や冷凍室の冷え(冷却時の温度低下率や最低温度など)が悪くなることなどである。
【0035】
ヒータ126に関して言えば、「故障」とは、冷却器を加熱できない場合や過電流が流れる場合などであり、「予兆」とは、運転モードや冷蔵庫100の周囲温度などの条件によっては、冷却器を十分に加熱できない(所定時間内に目標温度まで到達できない)場合などである。筐体や扉に関して言えば、「故障」とは、保温機能が所定以下に低下してしまう場合などであり、「予兆」とは、筐体や扉の内部に含まれる真空断熱材でスローリークが生じ、冷蔵室や冷凍室の冷えが徐々に悪くなる場合などである。
【0036】
学習部230は、記憶部280に蓄積された過去データPDに基づいて生成された教師データに基づき教師あり学習を行い、第1学習モデルM1を生成する。教師データは、冷蔵庫100の正常時の運転状態情報に対して、冷蔵庫100の各構成部品が正常であること(正解データ)が対応付けられた第1データセット、冷蔵庫100の1つ以上の構成部品に実際に故障が生じた状態の運転状態情報に対して、上記1つ以上の構成部品に故障が生じていること(正解データ)が対応付けられた第2データセット、および、冷蔵庫100の1つ以上の構成部品に実際に故障の予兆が生じた状態での運転状態情報に対して、上記1つ以上の構成部品に故障の予兆が生じていること(正解データ)が対応付けられた第3データセットを含む。これら正解データは、例えば、冷蔵庫100の実際の修理やメンテナンスなどのサポートサービスで確認された内容に基づいて登録されている。
【0037】
第1学習モデルM1は、第1区分をひと纏まり(1つの単位)として生成される。第1区分は、冷蔵庫100の機種ごとに分けられた区分、または、基本設計が同じ複数機種ごとに分けられた区分である。以下では、第1区分が冷蔵庫100の機種ごとに設定される例について説明する。すなわち、複数の家庭に配置された同じ機種である複数の冷蔵庫100から収集された運転状態情報および修理や点検の結果に基づき、第1学習モデルM1が学習される。
【0038】
図5は、第2学習モデルM2を模式的に示す図である。例えば、第2学習モデルM2は、入力層、隠れ層(中間層)、および出力層を含むニューラルネットワークによって構成される。第2学習モデルM2は、教師データを用いたディープラーニングなどによって入力層、隠れ層、および出力層に含まれるノードnの間の重み付け係数などが調整されることで学習が行われる。
【0039】
第2学習モデルM2では、入力層のノード数と、出力層のノード数が同じである。第2学習モデルM2では、少なくとも1つの隠れ層のノード数は、入力層のノード数よりも少なく、且つ、出力層のノード数よりも少ない。第2学習モデルM2は、ある情報が入力層に入力された場合、入力された情報を隠れ層で圧縮し、圧縮した情報を復元し、復元した情報を出力層から出力するモデルである。本実施形態では、第2学習モデルM2は、冷蔵庫100の正常時の運転状態情報が入力情報として入力された場合、入力情報と同じ情報を復元して出力するように学習されている。入力情報と同じ情報とは、入力情報に対する差分が予め設定された所定の閾値未満である情報を意味する。
【0040】
本実施形態では、第2学習モデルM2に入力される入力情報である運転状態情報は、例えば、直近に取得された1回分の運転状態情報(所定の周期で取得される運転状態情報の1回分)でもよいし、情報蓄積部220によって一定期間に亘り蓄積された運転状態情報でもよい。「一定期間に亘り蓄積された運転状態情報」は、例えば、1日分の運転状態情報でもよいし、1週間分の運転状態情報でもよいし、1ヶ月分の運転状態情報でもよし、その他の期間の運転状態情報でもよい。本実施形態では、第2学習モデルM2に入力される入力情報である運転状態情報は、上記第1期間よりも短い第2期間(例えば1日)分の蓄積された運転状態情報である。入力情報である運転状態情報は、庫内温度センサRS、冷却器温度センサES、周囲温度センサ106、庫内カメラ107、扉スイッチDS、および電流検出部111の検出結果などを含む。本実施形態では、出力情報は、入力情報と同じ庫内温度センサRS、冷却器温度センサES、周囲温度センサ106、庫内カメラ107、扉スイッチDS、および電流検出部111の検出結果などである。
【0041】
学習部230は、記憶部280に蓄積された過去データPDに基づいて生成された教師データに基づき教師あり学習を行い、第2学習モデルM2を生成する。教師データは、入力情報である冷蔵庫100の正常時の運転状態情報に対して、同じ運転状態情報(正解データ)が出力情報として対応付けられたデータセットである。言い換えると、第2学習モデルM2の教師データとしては、冷蔵庫100の正常時の運転状態情報があればよく、冷蔵庫100に故障が生じた場合や、冷蔵庫100に故障の予兆が生じている場合の運転状態情報は不要である。
【0042】
図6は、第2学習モデルM2を別観点で模式的に示す図である。上述したような学習が行われた結果、第2学習モデルM2は、冷蔵庫100に異常が生じている場合の運転状態情報が入力情報として入力された場合、第2学習モデルM2から出力された出力情報は、入力情報とは一致しない。すなわち、入力情報と出力情報の差分が上記所定の閾値以上となる。
【0043】
第2学習モデルM2は、上述した第1区分とは異なる第2区分をひと纏まり(1つの単位)として生成される。第2区分は、例えば、第1区分よりも細分化された区分である。第2区分は、冷蔵庫100のユーザUごとに分けられた区分、同じ属性(単身/核家族/大家族、または若者/子育て世代/高齢者など)のユーザUごとに分けられた区分、または、冷蔵庫100の機種ごとに分けられた区分である。以下では、第2区分が冷蔵庫100のユーザUごとに設定される例について説明する。すなわち、あるユーザUの冷蔵庫100から収集された正常時の運転状態情報に基づき、ユーザUごとに第2学習モデルM2が学習される。
【0044】
診断部240は、冷蔵庫100の運転状態を示す情報に基づき、冷蔵庫100の故障診断を行う。例えば、診断部240は、第1診断部241と、第2診断部242とを有する。
【0045】
第1診断部241は、第1学習モデルM1を用いて、冷蔵庫100の第1故障診断を行う。すなわち、第1診断部241は、故障診断対象の冷蔵庫100から取得された運転状態情報(例えば上記第1期間の運転状態情報)を第1学習モデルM1に入力し、故障診断対象の冷蔵庫100の各構成部品に故障が生じている可能性と、冷蔵庫100の各構成部品に故障の予兆が生じている可能性を出力させる。
【0046】
第1診断部241は、冷蔵庫100の第1故障診断の結果として、冷蔵庫100の各構成部品に故障が生じている可能性を示す情報(例えば、「圧縮機に故障が生じている可能性は〇〇%」)と、冷蔵庫100の各構成部品に故障の予兆が生じている可能性を示す情報(例えば、「圧縮機に故障の予兆が生じている可能性は〇〇%」)を通知部250に出力する。
【0047】
第2診断部242は、第2学習モデルM2を用いて、冷蔵庫100の第2故障診断を行う。第2診断部242は、故障診断対象の冷蔵庫100から取得された運転状態情報(例えば上記第2期間分の運転状態情報)を第2学習モデルM2に入力する。第2診断部242は、第2学習モデルM2に入力した冷蔵庫100の各構成部品の運転状態情報と、第2学習モデルM2から出力された冷蔵庫100の各構成部品の運転状態情報とを比較する。第2学習モデルM2から出力された運転状態情報は、「所定の比較対象」の一例である。
【0048】
そして、第2診断部242は、第2学習モデルM2に入力した冷蔵庫100の構成部品の運転状態情報と第2学習モデルM2から出力された当該構成部品の運転状態情報との差異が上記所定の閾値以上である場合、当該構成部品に関連する異常が存在すると判定する。一方で、第2診断部242は、第2学習モデルM2に入力した全ての構成部品の運転状態情報と第2学習モデルM2から出力された全ての構成部品の運転状態情報との差異が予め上記所定の閾値未満である場合、冷蔵庫100に全ての構成部品に異常が存在しないと判定する。第2診断部242は、冷蔵庫100の第2故障診断の結果として、冷蔵庫100の構成部品ごとの異常の有無を示す情報を通知部250に出力する。なお、第2故障診断は、冷蔵庫100の構成部品ごとの異常の有無の判定に代えて、冷蔵庫100全体に対する異常の有無の判定のみを行ってもよい。
【0049】
通知部250は、冷蔵庫100に含まれる各構成部品について、第1故障診断の結果として出力された故障が生じている可能性が第1閾値以上であるか否かを判定する。通知部250は、各構成部品について故障が生じている可能性が第1閾値以上である場合、冷蔵庫100または端末装置300に所定の制御指令を送信することで、所定の第1報知を冷蔵庫100の表示装置130または端末装置300から出力させる。「報知を出力」とは、所定のメッセージを表示画面に表示させること、またはスピーカから音声出力することなどを意味する。
【0050】
第1報知は、第1故障診断の結果を示す情報と、ユーザUに修理を促す通知とを含む。第1報知に含まれる第1故障診断の結果を示す情報は、「故障診断の結果に基づく情報」の一例である。第1報知に含まれる第1故障診断の結果を示す情報は、冷蔵庫100に含まれるどの構成要素に故障が生じている可能性があるかを示す情報を含み得る。第1報知は、例えば、「圧縮機に故障が生じている可能性があります。サポートセンターに修理を依頼してください」のようなメッセージである。一方で、通知部250は、冷蔵庫100の全ての構成要素について故障が生じている可能性が第1閾値未満である場合、第1報知は出力させない。
【0051】
さらに、通知部250は、冷蔵庫100に含まれる各構成部品について第1故障診断の結果として出力された故障の予兆が生じている可能性が第2閾値以上であるか否かを判定する。通知部250は、各構成部品について故障が生じている可能性が第1閾値未満であるが、当該構成部品について故障の予兆が生じている可能性が第2閾値以上である場合、冷蔵庫100または端末装置300に所定の制御指令を送信することで、所定の第2報知を冷蔵庫100の表示装置130または端末装置300から出力させる。第2閾値は、第1閾値と同じ値でもよく、第1閾値よりも高い値でもよく、第1閾値よりも低い値でもよい。例えば、第2閾値は、第1閾値よりも低く設定される。これにより、実際に故障が生じる前に、故障の予兆を早い段階でユーザUに知らせることができる。
【0052】
第2報知は、第1故障診断の結果を示す情報と、ユーザUに点検を促す通知とを含む。第2報知に含まれる第1故障診断の結果を示す情報は、「故障診断の結果に基づく情報」の一例である。第2報知に含まれる第1故障診断の結果を示す情報は、冷蔵庫100に含まれるどの構成要素に故障の予兆が生じている可能性があるかを示す情報を含み得る。第2報知は、例えば、「圧縮機に故障の予兆が生じている可能性があります。圧縮機から異音が聞こえないか点検してください」のようなメッセージである。一方で、通知部250は、冷蔵庫100の全ての構成要素について故障の予兆が生じている可能性が第2閾値未満である場合、第2報知は出力させない。
【0053】
さらに、通知部250は、冷蔵庫100に含まれる少なくとも1つの構成部品について第2故障診断の結果として当該構成部品に異常が存在すると判定された場合、冷蔵庫100または端末装置300に所定の制御指令を送信することで、所定の第3報知を冷蔵庫100の表示装置130または端末装置300から出力させる。
【0054】
第3報知は、第2故障診断の結果を示す情報と、ユーザUに冷蔵庫100の調子の確認を促す通知とを含む。第3報知に含まれる第2故障診断の結果を示す情報は、「故障診断の結果に基づく情報」の一例である。第3報知に含まれる第2故障診断の結果を示す情報は、冷蔵庫100に含まれるどの構成要素に異常が存在するかを示す情報を含み得る。第3報知は、例えば、「圧縮機に異常が存在する可能性があります。圧縮機から異音が聞こえるなどの異常がないか確認してください」のようなメッセージである。一方で、通知部250は、冷蔵庫100の全ての構成要素について異常が生じていないと判定された場合、第3報知は出力させない。
【0055】
さらに、通知部250は、後述する受付部260によって第3報知に対するユーザの確認結果の入力が受け付けられ、受け付けられたユーザの入力が冷蔵庫100に故障の可能性があることを示唆する内容である場合、冷蔵庫100または端末装置300に所定の制御指令を送信することで、所定の第4報知を冷蔵庫100の表示装置130または端末装置300から出力させてもよい。第4報知は、ユーザに確認してもらった異常が冷蔵庫100の構成部品の故障または故障の予兆であることをユーザに知らせる報知である。
【0056】
受付部260は、上記修理または上記点検の結果に基づく情報の入力を受け付ける。修理の結果に基づく情報は、例えば、上記第1報知に応じて修理またはメンテナンスが行われた場合に実際に故障が生じていたか否か、および故障が生じていた場合に実際にどの構成部品に故障が生じていたかを示す情報などを含む。修理の結果に基づく情報は、例えば、サポートセンターの作業員が不図示の入力装置を用いることで入力される。受付部260は、上記入力装置を用いて入力された情報を受け付ける。受付部260は、当該受付部260により受け付けられた情報(正解データ)を、第1故障診断に用いられた運転状態情報と対応付けて教師データの一部に加える。
【0057】
一方で、点検の結果に基づく情報は、例えば、上記第2報知に応じてユーザUが点検を行った場合に実際に故障の予兆が生じていたか否か、および故障の予兆が生じていた場合に実際にどの構成部品に故障の予兆が生じていたかを示す情報などを含む。点検の結果に基づく情報は、例えば、端末装置300または冷蔵庫100の表示装置130などを用いて冷蔵庫100のユーザUによって入力される。受付部260は、端末装置300または冷蔵庫100の表示装置130などを用いて入力された情報を受け付ける。受付部260は、当該受付部260により受け付けられた情報(正解データ)を、第1故障診断に用いられた運転状態情報と対応付けて教師データの一部に加える。
【0058】
本実施形態では、学習部230は、受付部260により受け付けられた情報を用いて第1学習モデルM1を追加学習させる。そして、学習部230は、追加学習することで新しく生成された第1学習モデルM1を用いて古い第1学習モデルM1を更新する。学習部230は、受付部260により新しい情報が受け付けられるごとに第1学習モデルM1を追加学習してもよく、受付部260により受け付けられた情報が所定量以上に蓄積された場合に第1学習モデルM1を追加学習してもよい。
【0059】
制御変更部270は、第1故障診断の結果として故障が生じている可能性が第3閾値以上あると判定された場合、冷蔵庫100の制御を変更する。例えば、制御変更部270は、冷蔵庫100に所定の制御指令を送信することで、冷蔵庫100の記憶部150に記憶されている制御量情報CIを変更する。例えば、制御変更部270は、制御量情報CIに含まれる基本制御量を第1修正制御量に変更する。これにより、冷蔵庫100の制御部160は、第1修正制御量に基づき冷蔵庫100を運転する。第3閾値は、上記第1閾値と同じでもよく、第1閾値よりも高くてもよく、第1閾値よりも低くてもよい。例えば、第3閾値が第1閾値よりも低く設定されると、より早い段階で故障の予防を行うように冷蔵庫100の制御を変更することができる。基本制御量を第1修正制御量に変更することは、「第1態様で変更」の一例である。
【0060】
本実施形態では、制御変更部270は、圧縮機121に故障が生じている可能性が上記第3閾値以上あると判定された場合、変更前と変更後で同じ運転条件(例えば同じ運転モード)に対して圧縮機121の駆動量が少なくするように冷蔵庫100の制御を変更する。同様に、制御変更部270は、冷却ファンFに故障が生じている可能性が上記第3閾値以上あると判定された場合、変更前と変更後で同じ運転条件(例えば同じ運転モード)に対して冷却ファンFの駆動量が少なくするように冷蔵庫100の制御を変更する。
【0061】
本実施形態では、制御変更部270は、冷却器に故障が生じている可能性が上記第3閾値以上あると判定された場合、変更前と変更後で同じ運転条件(例えば同じ運転モード)に対して冷却器に設けられたヒータ126の加熱量が多くなるように冷蔵庫100の制御を変更する。本実施形態では、制御変更部270は、ヒータ126に故障が生じている可能性が上記第3閾値以上あると判定された場合、変更前と変更後で同じ運転条件(例えば同じ運転モード)に対してヒータ126の加熱量が小さくなるように冷蔵庫100の制御を変更する。本実施形態では、制御変更部270は、筐体または扉に故障が生じている可能性が上記第3閾値以上あると判定された場合、変更前と変更後で同じ運転条件(例えば同じ運転モード)に対して圧縮機121および/または冷却ファンFの駆動量が多くなるように冷蔵庫100の制御を変更する。
【0062】
一方で、制御変更部270は、第1故障診断の結果として故障が生じている可能性は上記第3閾値未満であるが、故障の予兆が生じている可能性が第4閾値以上あると判定された場合、冷蔵庫100の制御を変更する。例えば、制御変更部270は、冷蔵庫100に所定の制御指令を送信することで、冷蔵庫100の記憶部150に記憶されている制御量情報CIを変更する。例えば、制御変更部270は、制御量情報CIに含まれる基本制御量を第2修正制御量に変更する。これにより、冷蔵庫100の制御部160は、第2修正制御量に基づき冷蔵庫100を運転する。例えば、第2修正制御量は、第1修正制御量と比べて、基本制御量に対する修正量が少ない制御量である。第4閾値は、上記第2閾値と同じでもよく、第2閾値よりも高くてもよく、第2閾値よりも低くてもよい。例えば、第4閾値が第2閾値よりも低く設定されると、より早い段階で故障の予防を行うように冷蔵庫100の制御を変更することができる。基本制御量を第2修正制御量に変更することは、「第2態様で変更」の一例である。
【0063】
本実施形態では、制御変更部270は、冷蔵庫100に含まれる各構成部品について故障が生じている可能性がある場合と、当該構成部品について故障の予兆が生じている可能性がある場合とで、基本的に同じ方向(例えば駆動量を減らす方向、または増やす方向)の制御量の変更を行う。このため、故障の予兆が生じている可能性がある場合についての制御例は、上述した圧縮機121、冷却ファンF、冷却器、ヒータ126、筐体および扉に関する各々の制御例の説明において「故障が生じている可能性が上記第1閾値以上あると判定された場合」を「故障の予兆が生じている可能性が上記第2閾値以上あると判定された場合」と読み替えればよい。
【0064】
<4.処理の流れ>
図7は、実施形態のサーバ200の処理の流れを示すフローチャートである。まず、情報取得部210は、故障診断対象の冷蔵庫100から運転状態情報を取得する(S101)。情報蓄積部220は、情報取得部210により取得された情報を過去データPDに追加して蓄積する(S102)。
【0065】
診断部240は、情報取得部210により第1期間に亘り蓄積された直近の運転状態情報を入力情報として第1学習モデルM1に入力し、第1故障診断を行う(S103)。すなわち、診断部240は、第1故障診断として、冷蔵庫100の全ての構成部品が正常であるか否か(つまり、各構成部品についての故障が生じている可能性が第1閾値未満であり、且つ、各構成部品についての故障の予兆が生じている可能性が第2閾値未満であるか否か)を判定する。
【0066】
第1故障診断で冷蔵庫100の少なくとも1つの構成部品が正常でないと判定された場合(S103:故障/故障の予兆)、通知部250は、当該構成部品について故障が生じている可能性が第1閾値以上であるか否かを判定する(S104)。通知部250は、少なくとも1つの構成部品について故障が生じている可能性が第1閾値以上であると判定した場合(S104:故障)、故障が生じている可能性が高いものとして、上述した第1報知を行う(S105)。
【0067】
一方で、通知部250は、冷蔵庫100に含まれる構成部品について故障が生じている可能性が第1閾値未満であるが、当該構成部品について故障の予兆が生じている可能性が第2閾値以上である場合(S104:故障の予兆)、故障の予兆が生じている可能性が高いものとして、上述した第2報知を行う(S106)。
【0068】
次に、学習部230は、修理または点検の結果に基づく追加学習用の情報の入力が受付部260によって受け付けられたか否かを判定する(S111)。学習部230は、追加学習用の情報の入力が受付部260によって受け付けられた場合(S111:YES)、受付部260により受け付けられた情報に基づき、第1学習モデルM1を追加学習させ、第1学習モデルM1を更新する(S112)。一方で、追加学習用の情報の入力が受付部260によって受け付けられない場合(S111:NO)、S101の処理に戻り、上述した処理が繰り返される。
【0069】
次に、制御変更部270は、第1故障診断で冷蔵庫100の少なくとも1つの構成部品が正常でないと判定された場合、第1修正制御量または第2修正制御量に基づき、冷蔵庫100の制御量情報CIを変更する。これにより、制御変更部270は、冷蔵庫100の制御を変更する(S113)。その後、S101の処理に戻り、上述した処理が繰り返される。
【0070】
一方で、第1故障診断で冷蔵庫100の全ての構成部品が正常であると判定された場合(S103:正常)、情報蓄積部220は、第2学習モデルM2を生成するために十分な正常時の冷蔵庫100の運転状態情報(正常データ)が蓄積されているか否かを判定する(S121)。十分な正常時の冷蔵庫100の運転状態情報(正常データ)が蓄積されていない場合(S121:NO)、情報蓄積部220は、取得された直近の運転状態情報を正常データの一部として蓄積する(S122)。
【0071】
一方で、十分な正常時の冷蔵庫100の運転状態情報(正常データ)が蓄積され、第2学習モデルM2が学習されて既に生成されている場合(S121:YES)、診断部240は、情報取得部210により第2期間に亘り蓄積された直近の運転状態情報を入力情報として第2学習モデルM2に入力し、第2故障診断を行う(S123)。すなわち、診断部240は、第2故障診断として、冷蔵庫100に含まれる各構成部品について異常があるか否かを判定する。
【0072】
そして、冷蔵庫100に含まれる各構成部品について正常と判定された場合(S123:正常)、情報蓄積部220は、第2故障診断に用いられた運転状態情報を正常データの一部として蓄積する(S122)。一方で、冷蔵庫100に含まれる少なくとも1つの構成部品について異常があると判定された場合(S123:異常)、通知部250は、第3報知を行うことで、冷蔵庫100の調子を確認することをユーザに促す(S124)。
【0073】
次に、受付部260は、第3報知に対するユーザの確認結果の入力を受け付け、受け付けたユーザの入力が冷蔵庫100に故障の可能性があることを示唆する確認結果であるか否かを判定する(S125)。受付部260により冷蔵庫100に故障の可能性がないことを示すユーザの入力が受け付けられた場合(S125:NO)、情報蓄積部220は、第2故障診断に用いられた運転状態情報を正常データの一部として蓄積する(S122)。一方で、受付部260により冷蔵庫100に故障の可能性があることを示すユーザの入力が受け付けられた場合(S125:YES)、上述した第4報知を行う(S126)。この場合、制御変更部270は、冷蔵庫100の制御を変更する(S113)。その後、S101の処理に戻り、上述した処理が繰り返される。
【0074】
<5.作用>
比較例として、電流値やセンサ値に対して閾値を設定して故障診断を行う故障診断システムについて考える。このような故障診断システムでは、冷蔵庫の運転状態と故障の有無との対応付けが難しい故障のような場合に、故障診断の精度向上が難しい場合があり得る。
【0075】
本実施形態では、情報処理システムは、冷蔵庫の運転状態を示す情報が入力されると第1故障診断の結果を出力するように学習された第1学習モデルM1を用いて冷蔵庫100の第1故障診断を行う診断部240と、診断部240による第1故障診断の結果に基づく情報を冷蔵庫100または端末装置300から出力させる通知部250とを含む。このような構成によれば、冷蔵庫の運転状態と故障の有無との対応付けが難しい故障のような場合でも、より適切な故障診断を行うことができる。
【0076】
本実施形態では、通知部250は、第1故障診断の結果として故障が生じている可能性が第1閾値以上あると判定された場合、ユーザUに修理を促す通知を出力させる。このような構成によれば、故障の可能性がある段階でユーザUが対応を取ることができ、冷蔵庫100の機能が停止する前に修理やメンテナンスを行うことができる。これにより、ユーザUの利便性を高めることができる。
【0077】
本実施形態では、通知部250は、第1故障診断の結果として故障が生じている可能性が第1閾値未満であるが、故障の予兆が生じている可能性が第2閾値以上あると判定された場合、ユーザUに点検を促す通知を出力させる。このような構成によれば、より早い段階でユーザUが対応を取ることができ、より確実に冷蔵庫100の機能が停止する前に修理やメンテナンスを行うことができる。これにより、ユーザUの利便性をさらに高めることができる。
【0078】
本実施形態では、情報処理システムは、修理または点検の結果に基づく情報の入力を受け付ける受付部260と、受付部260により受け付けられた情報を用いて追加学習された学習モデルに基づき第1学習モデルM1を更新する学習部230とを備える。このような構成によれば、修理または点検の結果に基づく情報を用いて第1学習モデルM1を更新することができる。これにより、故障診断の精度をさらに高めることができる。
【0079】
本実施形態では、診断部240は、冷蔵庫100の運転状態を示す情報が入力されると故障診断の結果を出力するように学習された第1学習モデルM1を用いた第1故障診断を行い、第1故障診断で冷蔵庫100が正常であると判定された場合、冷蔵庫100の運転状態を示す情報に基づき異常の有無を追加で判定する第2故障診断を行う。このような構成によれば、発生件数が少ない故障のような教師データを十分に集めにくい故障についても、異常の有無を検出することができる。これにより、より適切な故障診断を行うことができる。
【0080】
本実施形態では、診断部240は、冷蔵庫100の運転状態を所定の比較対象と比較することで上記第2故障診断を行う。このような構成によれば、比較的簡便な方法によって異常の有無を検出することができる。
【0081】
本実施形態では、診断部240は、冷蔵庫100の正常時の運転状態を示す情報が入力情報として入力されると、上記入力情報と同じ情報を復元して出力するように学習された第2学習モデルM2を用いて、第2学習モデルM2に入力する冷蔵庫100の運転状態を示す情報と、第2学習モデルM2から出力される出力情報との比較に基づき上記第2故障診断を行う。このような構成によれば、このような構成によれば、発生件数が少ない故障のような教師データを十分に集めにくい故障についても、さらに精度良く故障診断を行うことができる。例えば、ユーザUの使い方を反映した異常判定や、運転状態と故障の有無との対応付けが難しい場合などにも対応可能になる。
【0082】
本実施形態では、情報処理システムは、故障診断の結果として故障が生じている可能性が第3閾値以上あると判定された場合、冷蔵庫100の制御を変更する制御変更部270をさらに備える。このような構成によれば、実際にはまだ故障が生じてない場合、故障の予防を図ることができる。
【0083】
本実施形態では、制御変更部270は、故障診断の結果として故障が生じている可能性は第3閾値未満であるが、故障の予兆が生じている可能性が第4閾値以上あると判定された場合、冷蔵庫100の制御を変更する。このような構成によれば、より早い段階で故障の予防を図ることができる。
【0084】
<6.変形例>
上述した実施形態では、第2故障診断は、第2学習モデルM2を用いて行う例について説明した。ただし、第2故障診断は、上記例に限定されず、冷蔵庫100の直近の運転状態と、冷蔵庫100の過去の運転状態との比較に基づき行われてもよい。冷蔵庫100の直近の運転状態は、例えば、直近の第2期間における運転状態である。冷蔵庫100の過去の運転状態は、過去データPDに蓄積された過去の第2期間における運転状態である。冷蔵庫100の過去の運転状態は、「所定の比較対象」の一例である。
【0085】
本変形例では、図7に示されたS123の処理において、冷蔵庫100の直近の運転状態と冷蔵庫100の過去の運転状態との比較に基づき第2故障診断が行われる。その他の構成および処理については、上記実施形態と同様である。
【0086】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、情報処理システムは、冷蔵庫の運転状態を示す情報が入力されると故障診断の結果を出力するように学習された学習モデルを用いて前記冷蔵庫の故障診断を行う診断部と、上記診断部による故障診断の結果に基づく情報を冷蔵庫または端末装置から出力させる通知部とを持つ。このような構成によれば、より適切な故障診断を行うことができる。
【0087】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0088】
1…故障診断システム、100…冷蔵庫、200…サーバ、210…情報取得部、220…情報蓄積部、230…学習部(更新部)、240…診断部、250…通知部、260…受付部、270…制御変更部、300…端末装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7