(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】吸収体及び吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/534 20060101AFI20241127BHJP
A61F 13/53 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
A61F13/534 110
A61F13/53 100
A61F13/53 300
(21)【出願番号】P 2020093572
(22)【出願日】2020-05-28
【審査請求日】2023-04-07
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】水口 克
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 景
【審査官】嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-017466(JP,A)
【文献】特開2019-136150(JP,A)
【文献】特表2003-523791(JP,A)
【文献】特開2017-176508(JP,A)
【文献】特開2004-041339(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/534
A61F 13/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラッフパルプを含有しない吸収性物品用の吸収体であって、
高吸収性シートと、内部に高吸収性ポリマーを含む複数の袋体と、前記高吸収性シート及び前記袋体を包む親水性シートと、を含み、
前記高吸収性シートは、
前記トップシートを臨む起毛面を有する基体不織布と、前記基体不織布の前記起毛面の起毛繊維間に固着担持された高吸収性ポリマーと、を含み、
前記袋体は、親水性不織布により構成された袋体本体と、前記袋体本体の内部に密封される高吸収性ポリマーと、を含み、
前記袋体は、部位に応じた吸収性能を付与するために前記高吸収性シートの任意の領域に配置可能で、
前記高吸収性シートの起毛面に、前記袋体が複数個固着されている、
ことを特徴とする、吸収体。
【請求項2】
前記袋体は、
長さが30mm以上110mm以下、幅が9mm以上30mm以下、厚みが1.0mm以上2.5mm以下であり、
1個当たりの前記高吸収性ポリマーの封入量が、0.03g以上0.3g以下であり、
前記高吸収性シート中に5個以上固着されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の吸収体。
【請求項3】
少なくとも、着用者の股間部に当接する排尿域と、長手方向両端部と、に配置され
る請求項1又は2に記載の吸収体。
【請求項4】
ハンディ圧縮機KES-G5による圧縮エネルギーWCが2.0gf・cm/cm
2以上8.0gf・cm/cm
2以下であり、圧縮回復性RCが35%以上65%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の吸収体。
【請求項5】
前記基体不織布の前記起毛面の前記繊維間に固着担持された前記高吸収性ポリマーの坪量が200g/m
2以上1200g/m
2以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の吸収体。
【請求項6】
前記高吸収性ポリマーが前記基体不織布の起毛した部分の繊維間にホットメルト接着剤により固着担持され、かつ前記袋体が前記基体不織布の前記起毛面に前記ホットメルト接着剤により固着担持され、前記ホットメルト接着剤が前記基体不織布の前記起毛面に10g/m
2以下の割合で存在する、請求項1~5のいずれか1項に記載の吸収体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収体及び該吸収体を備えた吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、吸収性物品は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、トップシート及びバックシートの間に配置された吸収体と、で構成されており、これにより、尿等の体液は、トップシートを通って吸収体に吸収される。吸収性物品には、成人用又は幼児用であるかどうかを問わず、テープタイプの紙おむつ、パンツタイプの紙おむつ、尿取りパッド、軽失禁パッドなど、用途に応じて様々な種類が存在する。
【0003】
従来から、吸収体としては、フラッフパルプと高吸収性ポリマー(Super Absorbent Polymer、以下「SAP」ともいう)とを併用したものが一般的である。しかしながら、吸収性物品の着用感、外観、肌触り等の一層の向上や、尿等の体液の逆戻りのさらなる低減を目的として、2枚の不織布と、これらの間にホットメルト接着剤により固定されたSAP粒子と、を含む高吸収性シート(以下「SAPシート」ともいう)を吸収体として用いた吸収性物品が種々提案されている。
【0004】
特許文献1には、超薄型で、体液吸収後に型崩れを起こさず、しかも吸収能力を充分発揮し得る形態の吸収用積層体として、不織布状以外のパルプ繊維を含まず、ホットメルト接着剤からなる網状体層を層間に介在させることによって接着された2枚の不織布層と、網状体層に付着した高吸収性ポリマー粉末と、を含むSAPシートが開示されている。
【0005】
特許文献2には、繊維材料からなる第1シート及び第2シートと、これらのシート間に配置された、SAP粒子を含むSAP層とを備え、SAP粒子の一部が、第1シートと第2シートに挟まれた閉空間を形成する接着部となり、SAP粒子の残部が、該閉空間内で第1シート及び第2シートに対して自由状態で封止された自由SAP粒子群になる、SAPシートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-106554号公報
【文献】特開2019-136152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の吸収用積層体は、パルプレスのSAPシートからなる吸収体である。このようなパルプレスのSAPシートは、自重の数百倍の液体成分を吸収できるSAPの吸液能力の高さにより、薄型化が可能となる。しかしながら、SAPは高い吸液能力を有するものの、吸液速度がパルプに比べて遅いため、SAPシートを例えば紙おむつに用いると、SAPが吸い始めるまでに尿が漏れ、さらにゲルブロッキングを生じて繰り返し吸収性が悪化する等の不具合が起るため、エアレイドやフラッフパルプからなる層の追加が必要となるという問題があった。さらに、これらエアレイドやフラッフパルプからなる層を追加した場合でも、単純に重ねただけでは、前後左右からの漏れや、吸液速度の悪さからくる表面からの液戻り、べたつき等が生じる問題があった。
【0008】
特許文献2のSAPシートも、体液を繰り返し吸収するときに発生し易いゲルブロッキングに対しては有効ではなく、また、SAPシート内でのSAP粒子の移動やずれが起こりやすいため、SAPシートの部位ごとのSAP量の調整は容易ではない。また、第1シート及び第2シート間に閉空間を形成する接着層が、ゲルブロッキングを誘発し易いことから、閉空間内の自由SAP粒子群がその吸収能力を十分に発揮することができない場合がある。
【0009】
本発明の目的は、SAPを任意の部位に配置することができ、部位に応じた吸収性能、特に排尿部や端部に高吸収領域を付与しつつ、SAPの漏れ、ずれ、移動やゲルブロッキングが生じにくく、吸収性能及び着用感の良好な吸収体及び該吸収体を備える吸収性物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、吸収成分として、SAP単体を起毛不織布上に担持した高吸収性シートと、内部にSAPを収納した袋体と、を用いたSAPシートを用いることにより、所望の吸収体及び吸収性物品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、以下の吸収体及び該吸収体を備える吸収性物品に係る。
【0011】
(1)フラッフパルプを含有しない吸収性物品用の吸収体であって、
高吸収性シートと、内部に高吸収性ポリマーを含む複数の袋体と、前記高吸収性シート及び前記袋体を包む親水性シートと、を含み、
前記高吸収性シートは、
前記起毛面を有する基体不織布と、前記基体不織布の前記起毛面の起毛繊維間に固着担持された高吸収性ポリマーと、を含み、
前記袋体は、親水性不織布により構成された袋体本体と、前記袋体本体の内部に密封される高吸収性ポリマーと、を含み、
前記高吸収性シートの起毛面に、前記袋体が複数個固着されている、
ことを特徴とする、吸収体。
(2)前記吸収体は、少なくとも、着用者の股間部に当接する排尿域と、長手方向両端部と、に配置された、前記高吸収性ポリマー及び/又は前記袋体を有する、上記(1)の吸収性物品。
(3)ハンディ圧縮機KES-G5による圧縮エネルギーWCが2.0gf・cm/cm2以上8.0gf・cm/cm2以下であり、圧縮回復性RCが35%以上65%以下である、上記(1)又は(2)の吸収体。
(4)前記基体不織布の前記起毛面の前記繊維間に固着担持された前記高吸収性ポリマーの坪量が200g/m2以上1200g/m2以下である、上記(1)~(3)のいずれかの吸収体。
(5)前記袋体は、長さが30mm以上110mm以下、幅が9mm以上30mm以下である、上記(1)~(4)のいずれかの吸収体。
(6)前記袋体1個当たりの前記高吸収性ポリマーの含有量が、0.03g以上0.3g以下である、上記(1)~(5)のいずれかの吸収体。
(7)前記高吸収性ポリマーが前記基体不織布の起毛した部分の繊維間にホットメルト接着剤により固着担持され、かつ前記袋体が前記基体不織布の前記起毛面に前記ホットメルト接着剤により固着担持され、前記ホットメルト接着剤が前記基体不織布の前記起毛面に10g/m2以下の割合で存在する、上記(1)~(6)のいずれかの吸収体。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、SAPを任意の部位に配置することができ、部位に応じた吸収性能、特に排尿部や端部に高吸収領域を付与しつつ、SAPの漏れ、ずれ、移動やゲルブロッキングが生じにくく、吸収性能及び着用感の良好な吸収体及び該吸収体を備える吸収性物品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る吸収性物品の構成を模式的に示す平面図である。
【
図2】
図1に示すX
1-X
1切断線における幅方向の模式断面図である。
【
図3】高吸収性シートの一実施形態の構成を模式的に示す斜視図である。
【
図4】
図3に示す高吸収性シートの幅方向の模式断面図である。
【
図5】
図1に示す点線で囲まれた領域Aを拡大して示す模式平面図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る吸収体の構成を模式的に示す断面図である。
【
図7】本発明の第3実施形態に係る吸収体の構成を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において、吸収性物品の着用とは、体液の吸収前後を問わず、吸収性物品を身体に装着した状態をいう。吸収性物品において、長手方向とは吸収性物品を身体に着用したときに着用者の股間部を介して身体の前後に亘る、図中Yで示す方向であり、幅方向とは長手方向に対して直交する、図中Xで示す方向であり、厚み方向とは各構成部材を積層する、図中Zで示す方向である。肌側面とは、吸収性物品の着用時において、着用者の肌に当接する表面又は肌を臨む表面であり、非肌側面とは、着用者の衣服に接触する表面又は衣服を臨む表面である。体液とは、尿や血液、軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体をいう。
【0015】
<吸収性物品>
以下、図面を参照しつつ、本実施形態について説明する。
図1~
図2は第1実施形態に係る吸収性物品50を示す。
図3~
図4は、高吸収性シート15を示す。
図5は、吸収性物品50の要部を拡大して示す。
図6は、第2実施形態に係る吸収体10を示す。
図7は、第3実施形態に係る吸収体10Aを示す。これらの図面は本実施形態の吸収性物品中の各構成部材の形状や寸法、大小関係等を規定するものではない。
【0016】
本実施形態の吸収性物品50は、ベビー用又は成人用を問わず種々の吸収性物品として使用できるが、代表的には、軽失禁パッド、尿吸収パッド、パンツ型紙おむつ、テープ止め紙おむつ等が挙げられる。アウターとしての各種紙おむつと、インナーとしての吸収性物品50とを組み合わせてもよい。吸収性物品50の、長さ方向の寸法、及び幅方向の寸法はいずれも特に限定されないが、例えば、100mm以上800mm以下の範囲、及び50mm以上500mm以下の範囲である。吸収性物品50の寸法を前記の範囲に調整することで、種々の用途の吸収性物品が得られる。
【0017】
吸収性物品50は、
図1及び
図2に示すように、吸収性物品50を着用したときに相対的に肌側に位置する、液透過性のトップシート25と、トップシート25に対向して配置され、吸収性物品50を着用したときに相対的に非肌側に位置する液不透過性のバックシート30と、トップシート25とバックシート30との間に配置された吸収体10と、トップシート25の肌側表面に設けられた一対の立体ギャザー40と、を備える。吸収体10はトップシート25とバックシート30との間に挟まれた構造となり、尿等の体液はトップシート25を通して吸収体10に吸収及び保持される。吸収性物品50の用途やタイプに応じて、レッグギャザー、ウエストギャザー、サイドフラップ等を適宜設けることができる。
【0018】
本実施形態の吸収体10は、本実施形態の、フラッフパルプを含有しない高吸収性シート15が親水性シート20で包まれた構造を有し、さらに高吸収性シート15は、トップシート25を臨む起毛面11aを有する基体不織布11と、基体不織布11の起毛面11aの起毛繊維11x間に固着担持された高吸収性ポリマー12と、基体不織布11の起毛面11a表面に固着担持され、袋体本体中に高吸収性ポリマー12が封入された袋体60と、を含むものである。
【0019】
本実施形態によれば、前述の構成を有する吸収体10を用いることにより、吸収体10の任意の領域に高吸収性ポリマー12及び/又は袋体60、特に袋体60を配置することを容易に実施できるようになる。その結果、吸収体10の部位に応じて、体液の吸収性能、特に着用者の股間部にトップシート25を介して当接する排尿域や長手方向両端部等に高吸収領域を付与することが可能になる。そして、高吸収性ポリマー12及び袋体60が基体不織布11の起毛面11aの起毛繊維11x間又は起毛面11a表面に固着され、高吸収性ポリマー12の周囲には体液を吸収して膨張可能な空間が形成され、また、起毛面11aがふんわりとした触感を有することから、高吸収性ポリマー12の漏れ、ずれ、移動やゲルブロッキングを低減することができ、体液を繰り返し複数回吸収しても、体液拡散性、吸収量や吸収速度等の吸収性能及び着用感を良好に維持しながら、従来の高吸収性シートでは得られない部位に応じた高吸収領域を設定することが可能となり、液戻りや尿漏れを防止した吸収性物品50が得られる。
【0020】
以下、シート状又は板状の各構成部材について、トップシート25、吸収体10、バックシート30及び立体ギャザー40の順でさらに詳しく説明する。なお、これらの構成部材は、シート状及び板状以外の立体構造を有していてもよい。
【0021】
(トップシート)
トップシート25は、吸収体10に向けて体液を速やかに通過させる液透過性のシート状部材であり、吸収体10を挟んで、バックシート30に対向して配置される。トップシート25は、着用者の肌に当接する場合があることから、柔らかな感触で、肌に刺激を与えないような性質を有する基材が好ましい。該基材としては、例えば、親水性不織布、同種又は異種の親水性不織布の積合体である複合不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム等が挙げられる。親水性不織布は、例えば、ポリプロピレンやポリエチレン等の合成樹脂からなる合成繊維、レーヨン等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いて、エアスルー法、サーマルボンド法、スパンレース法、スパンボンド法等の公知の方法で加工することにより得られる。
【0022】
また、トップシート25には、液透過性を向上させるために、表面にエンボス加工や穿孔加工を施してもよい。これらのエンボス加工や穿孔加工を施すための方法としては、公知の方法を制限なく実施することができる。また、肌への刺激を低減させるため、トップシート25には、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を含有させてもよい。
【0023】
強度、加工性及び液戻り量の観点から、トップシート25の坪量は、15g/m2以上40g/m2以下であることが好ましい。トップシート25の形状は特に制限されず、漏れがないように体液を吸収体10へと誘導するために必要とされる、吸収体10を覆う形状であればよい。
【0024】
(吸収体)
図1では吸収体10を簡略化して示し、
図6で吸収体10の構成要素を明確に示している。本実施形態の吸収体10は、
図1~
図6に示すように、本実施形態の高吸収性シート(以下「SAPシート」ともいう)15と、基体不織布11の起毛面11a表面に固着担持され、内部に高吸収性ポリマー(不図示)が封入された袋体60(特に
図5)と、これらを包む親水性シート20と、を含む。吸収体10の全面又は一部の表面にエンボス加工等を施してもよい。袋体60は、例えば、ホットメルト接着剤により起毛面11a表面に固着担持される。ここで袋体60が起毛面11aに配置される方向は、
図2、
図3、
図6等に示されるように不規則でよく又は規則的でもよい。
【0025】
本実施形態の吸収体10は、圧縮エネルギーWCが2.0gf・cm/cm2以上8.0gf・cm/cm2以下の範囲又は2.4gf・cm/cm2以上6.6gf・cm/cm2以下の範囲であり、圧縮回復性RCが35%以上65%以下の範囲又は40%以上58%以下の範囲である実施形態を包含する。圧縮エネルギーWCを前述の範囲に調整することで、吸収性物品50のクッション性が一層良好になる。圧縮エネルギーWCは、数値が高いほど圧縮され易いことを意味する。吸収体10の圧縮回復性RCを前述の範囲に調整することで、吸収性物品50に適度な弾力性が付与され、着用感が向上する。圧縮回復性RC(%)は、圧縮に対する弾性を示すもので、数値が高いほど圧縮に対する反発性を有することを意味する。圧縮エネルギーWC及び圧縮回復性RCは、例えば、吸収体10に含まれる各構成要素の材質、厚み、坪量等を適宜選択することにより調整できる。
【0026】
(圧縮エネルギーWC及び圧縮回復性RC)
吸収体10の圧縮エネルギーWC及び圧縮回復性RCは、例えば、ハンディ圧縮試験機を用いて測定できる。ハンディ圧縮試験機としては、商品名:KES-G5(カトーテック(株)製)等が挙げられる。吸収体10の、ハンディ圧縮試験機KES-G5による、圧縮エネルギーWC及び圧縮回復性RCの測定方法は、以下のとおりである。まず、吸収体10の着用者股間部に当接する領域から10cm×10cmの試料を切り取って試験台に置き、次いで、面積2cm2の円形平面をもつ銅製の加圧子を試料上方から、速度0.01cm/秒、最大圧縮応力20gf/cm2の条件で試料に押し込み圧縮し、データを測定する。得られたデータから、数値処理により圧縮エネルギーWC及び圧縮回復性RCを算出する。
【0027】
本実施形態の吸収体10の平面形状は特に限定されず、例えば、砂時計状、略長方形状(矩形状)、I字状、長円形状、楕円形状、長方形の4角が丸まった角丸四角形等の形状とすることができる。また、本実施形態の吸収体10は、長手方向寸法(又は長手方向最大寸法)及び幅方向寸法(又は幅方向最大寸法)は特に限定されず、吸収性物品50の用途や形態等に応じて適宜選択できるが、長手方向寸法は、例えば、100mm以上800mm以下の範囲、又は150mm以上500mm以下の範囲であり、また、吸収体10の幅方向寸法は、例えば、50mm以上500mm以下の範囲、又は60mm以上400mm以下の範囲である。
以下、吸収体10の各構成要素である高吸収性シート15、袋体60、及び親水性シート20に次のような構成を有している。
【0028】
(高吸収性シート)
本実施形態の高吸収性シート15は、トップシート25を臨む起毛面11aを有する基体不織布11と、基体不織布11の起毛面11aの起毛繊維11x間に固着担持された高吸収性ポリマー12と、高吸収性ポリマー12を固着担持した基体不織布11をそのバックシート30(非肌側面)から覆う親水性シート20と、含む。高吸収性ポリマー12は、例えばホットメルト接着剤により起毛面11aの起毛繊維11x間に固着担持される。本実施形態では、基体不織布11は、トップシート25側(又は肌側)面が起毛面11aであり、バックシート30側(又は非肌側)面が非起毛面11bであるが、これに限定されず、吸収性物品50の着用感をさらに向上させる観点等から、バックシート30側面をも起毛面にしてもよい。また、本実施形態の高吸収性シート15は単層であるが、これに限定されず、複数層の高吸収性シート15の積層体を親水性シート20で包んで用いてもよい。
【0029】
(基体不織布)
図2及び
図3に示すように、基体不織布11の片側表面11aは、基体不織布11を構成する繊維11xが起毛した状態である。そのため、不織布本来の嵩高さに加えて、高吸収性シート15に適度な厚みと柔らかさが付与されることにより、適度なクッション性が発生し、着用時の着用感及びフィット感を向上させることができる。また、基体不織布11を上記のように起毛させることにより、基体不織布11の起毛繊維11x間に高吸収性ポリマー12を分散させて固着担持させ得るとともに、高吸収性ポリマー12の周囲に体液の吸収による膨潤が可能な空間を付与することができる。基体不織布11の片側表面11aを起毛させる方法としては、回転ノコ刃により毛羽立たせる方法、ニードルパンチにより毛羽立たせる方法等が挙げられ、インラインでの生産性やコストの観点から回転ノコ刃により毛羽立たせる方法を用いることが好ましい。
【0030】
本実施形態における起毛の状態は特に限定されず、目視で起毛状態が確認できればそれでよいが、より具体的には、基体不織布11の起毛率は5%以上90%以下が好ましく、8%以上80%以下であることがより好ましい。なお、起毛率とは、起毛加工による基体不織布11の厚さの増加率を意味する。例えば、起毛前の基体不織布11の厚さをT1、起毛後の基体不織布11の厚さをT2としたとき、起毛率(%)は、[(T2―T1)/T1]×100で表すことができる。上記厚さは、ハイトゲージ((株)ミツトヨ製)を用いて無荷重下の厚さを測定することで求められる。
【0031】
基体不織布11としては、例えば、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布等の不織布や、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布を積層した複合不織布等が挙げられる。これらの不織布の中でも、嵩を高くする観点等から、エアスルー不織布が好ましい。
【0032】
基体不織布11の厚さは特に限定されないが、着用感及び吸収性能のバランスの観点から、0.3mm以上11.0mm以下の範囲、0.5mm以上5.0mm以下の範囲又は0.5mm以上2.0mm以下の範囲である。また、基体不織布11の坪量は特に限定されないが、例えば、20g/m2以上200g/m2以下の範囲、20g/m2以上160g/m2以下の範囲、又は20g/m2以上80g/m2以下の範囲である。
【0033】
基体不織布11としてエアスルー不織布を用いる場合、エアスルー不織布の坪量が20g/m2以上200g/m2以下の範囲であり、厚みが0.3mm以上11.0mm以下の範囲であり、エアスルー不織布を構成する繊維の太さが1.6dtex以上14dtex以下の範囲、1.8dtex以上9.0dtex以下の範囲又は2.0dtex以上6.0dtex以下の範囲である。前述の範囲でエアスルー不織布を構成する繊維の太さを調整することにより、エアスルー不織布の起毛繊維11x間に高吸収性ポリマー12を分散させて固着担持させやすくなり、起毛面11aにおける高吸収性ポリマー12の均一分散性が向上する。
【0034】
(高吸収性ポリマー)
高吸収性ポリマー12としては、体液を吸収及び保持し、体液の逆流を防止できる各種ポリマーを特に限定なく使用でき、例えば、ポリアクリル酸塩、ポリアスパラギン酸塩、(デンプン・アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸・ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン・無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等の、カルボキシル基含有モノマーを構成単位として含む重合体が挙げられる。高吸収性ポリマー12は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。これらの中でも、重量当たりの体液吸収量の観点から、ポリアクリル酸塩が好ましく、ポリアクリル酸ナトリウムがより好ましい。
【0035】
高吸収性ポリマー12の形態は特に限定されないが、ゲルブロッキング等の発生を抑制する観点から、好ましくは粒子状であり、より好ましくは中位粒子径を有する粒子状である。高吸収性ポリマー12の中位粒子径は、例えば、50μm以上600μm以下の範囲又は50μm以上550μm以下の範囲である。また、基体不織布11の起毛面11aにおける高吸収性ポリマー12の坪量は、吸収体10の体液吸収能力(体液吸収量等)と繰り返し体液を吸収した後の着用感とのバランス等の観点から、例えば200g/m2以上1200g/m2以下の範囲である。
【0036】
一実施形態では、高吸収性ポリマー12及び袋体60は、ホットメルト接着剤により、それぞれ基体不織布11の起毛面11aの起毛繊維11x間、及び起毛面11aに固着担持される。基体不織布11の坪量が比較的低い場合に、高吸収性ポリマー12の固着担持を補強するために、ホットメルト接着剤は特に有効に機能する。なお、高吸収性ポリマー12や袋体60の体液吸収性を阻害せず、かつ、着用時の肌触りを損なわないという観点から、起毛面11a全体におけるホットメルト接着剤の量は例えば10g/m2以下の範囲である。ホットメルト接着剤としては融点が100℃以上180℃以下のものを特に限定なく使用でき、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレン系共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン系共重合体等の合成ゴム系ホットメルト接着剤、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のオレフィン系ホットメルト接着剤等が挙げられる。ホットメルト接着剤の塗布方法としては、ノズルから溶融状態のホットメルト接着剤を非接触式で塗布するカーテンコート法やスパイラル法、接触式で塗布するスロット法等、公知の方法が利用できる。
【0037】
(袋体)
本明細書では、親水性不織布から構成された袋体本体と、袋体本体の内部に密閉された高吸収性ポリマーと、を含んで構成される本実施形態の袋体を、SAP袋体ともいう。
【0038】
図1~
図5に示すSAP袋体60は、略円柱状の立体形状を有し、袋体本体と、袋体本体の内部に密閉された粒子状の高吸収性ポリマー(不図示)と、を含む。ここで袋体本体には、坪量10g/m
2以上50g/m
2以下の親水性不織布が用いられる。坪量が前述の範囲にあることにより、体液を円滑に吸収できる。なお、SAP袋体60は、一般的には
図3に示すように不規則に固着されているが、
図1及び
図2では、SAP袋体60の存在を強調するため、規則的に配置されているように示した。ただし、SAP袋体60は規則的に配置されていてもよい。
【0039】
SAP袋体60は、例えば、親水性不織布から構成され、一部(例えば長手方向の一端面、該端面は糊代を有する)がSAP充填用に未接着の状態の袋体本体を用意し、その内部に高吸収性ポリマーを充填し、所定の領域を接着し、内部に高吸収性ポリマーを密封することにより作製できる。接着は、例えば、ヒートシール、超音波溶着、ホットメルト接着剤を用いた接着等により実施できる。また、親水性不織布を2つ折りにし、その内部に高吸収性ポリマーを充填し、折り返し部分を除く3辺を接着することによってもSAP袋体60を作製できる。なお、SAP袋体60の立体形状は扁平形状でもよい。
【0040】
SAP袋体60は、長辺の寸法が30mm以上110mm以下の範囲又は30mm以上70mm以下の範囲であり、短辺(又は直径又は幅)の寸法が9mm以上30mm以下の範囲又は9mm以上20mm以下の範囲である。また、SAP袋体60の厚みは特に限定されないが、前述のように長辺及び短辺を従来の吸収体よりも著しく小型化する観点等から、例えば1.0mm以上2.5mm以下の範囲である。
【0041】
長辺寸法が30mm未満及び/又は短辺寸法が9mm未満であると、袋体本体内に密封できる高吸収性ポリマーの量が減少し、所望の体液吸収量を確保するために、SAP袋体60を多く使用することが必要になり、SAP袋体60の小寸化により得られる長所が損なわれる傾向がある。長辺寸法が110mmを超え及び/又は短辺寸法が20mmを超えると、1つのSAP袋体60内に密封される高吸収性ポリマーの量が多くなりすぎ、SAP袋体60内で局所的なゲルブロッキング等が発生し、体液吸収量や繰り返し体液を吸収したときの体液吸収速度等が低下する傾向がある。
【0042】
SAP袋体60は、前述のように、親水性不織布からなる非常に小寸の袋体本体10に高吸収性ポリマーを密封することで、フラッフパルプを含まず、超小型、薄型、軽量であり、かつ全方位からの体液吸収可能なものとなる。また、SAP袋体60は、使用前にSAPが漏出することがなく、超小型で、それ自体が単独の存在であり、体液を全方位から吸収できることから、吸収性物品50中又は吸収体10のどの層又はどの位置に配置してもよく、配置する方向も関係ない。また、SAP袋体60を使用することで、吸収体10内における繊細なスリット構造(例えば微細なスリット構造)や立体構造も実現できる。さらに、SAP袋体60は、体液吸収後も柔軟性を保持し、吸収性物品50の良好な着用感を維持する。
【0043】
袋体本体を構成する親水性不織布としては特に限定されず、例えば、エアスルー不織布、サーマルボンド不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、パルプ含有不織布等が挙げられる。これらの不織布は、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の合成樹脂からなる繊維、レーヨン等の再生繊維、綿等の天然繊維等の1種又は2種以上を含んで構成される。これらの中でも、体液吸収性及び強度、柔軟性、成形性等の観点から、エアスルー不織布、パルプ含有不織布等が好ましい。親水性不織布の坪量は前述のように10g/m2以上50g/m2以下の範囲である。
【0044】
パルプ含有不織布とは、例えば、米国特許第5284703号明細書に開示されているような、不織布の少なくとも一方の表面にパルプ繊維ウェブを積層したものである。その一例をあげれば、不織布の一方の表面において不織布を構成する繊維とパルプ繊維とが絡み合ってパルプ繊維ウェブが一体化されると共に、パルプ繊維の一部が不織布を厚み方向に突き抜けて他方の面に露出した状態になっており、不織布とパルプ繊維ウェブとが極めて強固に結合し、一体化したものである。ここで、「一体化」とは、吸収性物品50を使いきるまでの間に、不織布とパルプ繊維ウェブとが、パルプ含有不織布の機能を低下させる程度に剥離しないことを意味する。前述のパルプ含有不織布は、例えば、不織布に対してパルプ繊維を水流交絡法により吹き付けることにより製造できる。
【0045】
パルプ含有不織布中の不織布としては特に限定されないが、好ましくはスパンボンド不織布、より好ましくはポリプロピレン繊維を含むスパンボンド不織布、さらに好ましくはポリプロピレン繊維からなるスパンボンド不織布である。また、パルプ繊維としては特に限定されないが、例えば、ラジアータパイン、スラッシュパイン、サザンパイン、ロッジポールパイン、スプルースおよびダグラスファー等の針葉樹晒クラフトパルプ(以下「NBKP」ともいう)が挙げられる。NBKPは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。不織布の坪量は7g/m2以上30g/m2以下の範囲であり、パルプ繊維ウェブの坪量は例えば30g/m2以上50g/m2以下の範囲である。これにより、パルプ含有不織布の坪量を10g/m2以上50g/m2以下の範囲に調整しやすくなる。一実施形態では、パルプ繊維ウェブが袋体本体の内側を向き、不織布が袋体本体の外側を向くように構成される。
【0046】
パルプ含有不織布において、不織布とパルプ繊維ウェブとの重量割合(不織布/パルプ繊維ウェブ)は、例えば40/60重量%以上10/90重量%以下の範囲である。パルプ繊維ウェブの含有量が60質量%未満であると、パルプ含有不織布が風合いや汗の吸収に乏しく蒸れやすくなる傾向があり、90質量%を超えるとパルプ含有不織布が硬くなる傾向がある。
【0047】
袋体本体に密封される高吸収性ポリマーとしては、基体不織布11の起毛面11aに固着担持される高吸収性ポリマー12と同じものを使用できる。高吸収性ポリマー12については前述したとおりである。
【0048】
SAP袋体60の一実施形態は、高吸収性ポリマーをそのまま袋体本体内に密封したものである。SAP袋体60の他の実施形態は、高吸収性ポリマーをティシュ、吸収紙、エアレイド不織布等のキャリアシートに包んだ状態で袋体本体内に密封したものである。他の実施形態において、高吸収性ポリマーをキャリアシート表面に両面テープや接着剤等で固定してもよい。また、高吸収性ポリマーは粒子状の形態で袋体本体内に密封することが好ましい。このとき、高吸収性ポリマーの粒径は特に限定されないが、例えば中位粒子径として50μm以上600μm以下の範囲である。
【0049】
SAP袋体60の1個当たりの高吸収性ポリマーの封入量は、0.03g以上0.3g以下の範囲又は0.05g以上0.15g以下の範囲である。高吸収性ポリマーの封入量を前記の範囲とすれば、体液吸収後も高吸収性ポリマーが膨潤してゴツゴツした感触が生じることがなく、SAP袋体60の厚みの増加もほとんどない。したがって、SAP袋体60を吸収体10中に含む吸収性物品50の体液吸収後の風合いや着用感、フィット感を向上させることができる。
【0050】
高吸収性ポリマーの封入量が0.03g未満では、SAP袋体60の1個当たりの体液吸収量が低下し、前述のSAP袋体60の長所が損なわれる傾向がある。高吸収性ポリマーの封入量が0.3gを超えると、SAP袋体60中でのゲルブロッキングが起こり易くなり、体液吸収量や体液を繰り返し吸収した後の吸収速度が低下する傾向がある。
【0051】
吸収体10中でのSAP袋体60の個数は特に限定されないが、例えば、吸収体10の長手方向寸法を300mm以上550mm以下の範囲、幅方向寸法を100mm以上200mm以下の範囲とした場合は、例えば5個以上100個以下の範囲又は10個以上50個以下の範囲である。この個数を目安として、吸収体10の長手方向寸法及び/又は幅方向寸法の増減に応じて、SAP袋体60の個数を適宜選択できる。なお、この個数はSAP袋体60に限定されるものではなく、長手方向寸法及び/又は幅方向寸法の異なるSAP袋体、立体形状の異なるSAP袋体等の他のSAP袋体の個数の目安となる。
【0052】
(親水性シート)
第1実施形態の親水性シート20は、基体不織布11の非起毛面11b、その幅方向両端面、及び高吸収性シート15の幅方向両端部周辺を覆い、その幅方向両端20a、20bが高吸収性シート15とトップシート25との層間で対向するように、内三つ折りされた立体形状を有し、吸収体10となる(
図6)。第2実施形態の親水性シート20は、基体不織布11の非起毛面11b、その幅方向両端面、及び基体不織布11の起毛面11aとそれに固着担持された袋体60を覆い、その幅方向両端がトップシート25と基体不織布11との層間で重なり合うように、内三つ折りされた立体形状を有し、吸収体10Aとなる(
図7)。高吸収性シート15及び袋体60をこのように包むことにより、高吸収性ポリマー12や袋体60の基体不織布11からの脱落がより一層防止され、吸収体10の強度も増す。
【0053】
親水性シート20としては、例えば、ティシュペーパー、吸収紙や、スパンボンド不織布、エアレイド不織布、エアスルー不織布、パルプ含有不織布等の親水性不織布等が挙げられる。これらの中でも、親水性不織布が好ましく、エアスルー不織布、パルプ含有不織布等がより好ましい。パルプ含有不織布としては前述のものを使用できる。また、親水性シート20の坪量は、例えば、7g/m2以上45g/m2以下の範囲である。高吸収性シート15(又は基体不織布11)の非起毛面11bと親水性シート20とを固着する際には、ホットメルト接着剤や熱エンボス加工により固着することが好ましい。
【0054】
(第2実施形態の吸収体)
図7に示す吸収体10Aは、吸収体10の変形例である。吸収10Bは、吸収体10と同じ基体不織布11、高吸収性ポリマー12、及び親水性シート20を使用しており、親水性シート20の幅方向の両端20a、20bを更に幅方向に延伸し、基体不織布11のトップシート25側で重なり合うように構成している。親水性シート20の重なり合う部分(以下「重なり領域」ともいう)の存在により、吸収体10Aは、重なり領域の存在による着用感、フィット感の低下を起こさず、吸収体10と同等又はそれ以上の効果を示すだけでなく、吸収体10Aの剛性がさらに向上し、体液の吸収能力が向上する。また、体液の拡散速度及び吸収速度がより一層高くなる。さらに、吸収体10Aの強度が一層向上し、体液吸収後に身体から取り外すときの吸収体10Aの破れや破損が一層防止され、また、繰返し吸収回数をさらに多くすることができる。
【0055】
吸収体10Aにおける重なり領域の幅寸法は、例えば、吸収体10Aの幅寸法の5%以上50%以下の範囲である。5%未満では、重なり領域を設けても、体液の拡散速度、及び吸収速度の向上効果が不十分になる傾向がある。また、50%を超えると、体液の拡散速度、及び吸収速度が向上しない一方で吸収体の固さが増して着用感やフィット感が悪くなる傾向がある。
【0056】
<吸収体の製造方法>
吸収体10の製造方法としては、特に制限はないが、以下の方法が一例として挙げられる。基体不織布11の片側表面を回転ノコ刃又はニードルパンチを用いて、起毛させる。その後、高吸収性ポリマー12及びSAP袋体60をホットメルト接着剤等により、それぞれ基体不織布11の起毛面11aの起毛繊維11x間及び起毛面11a表面に固着担持させる。その後、基体不織布11の起毛面11a側と親水性シート20とをホットメルト接着剤等で接着し、吸収体10を得ることができる。
【0057】
(バックシート)
バックシート30は、吸収体10が保持している体液が衣類を濡らさないような液不透過性を備えた基材を用いて形成されればよく、樹脂フィルムや、樹脂フィルムと不織布とを積層した複合シートといった材料から形成される。複合シートに用いられる不織布としては、製法を特に限定せず、例えば、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布の積層体である複合不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布の積層体である複合不織布及びこれらの複合材料が挙げられる。また、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンとの複合フィルム等が挙げられる。
【0058】
強度及び加工性の点から、バックシート30の坪量は、15g/m2以上40g/m2以下であることが好ましい。また、装着時の蒸れを防止するため、バックシート30には、通気性を持たせることが好ましい。バックシート30に通気性を備えさせるためには、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合したり、バックシート30に穿孔のためにエンボス加工を施したりすればよい。なお、フィラーとしては炭酸カルシウムを挙げることができ、その配合方法は、公知の方法を制限なく行うことができる。
【0059】
(立体ギャザー)
また、吸収性物品50は、
図1に示すように、使用者の排泄した体液の横漏れを防止するため、吸収性物品50の長手方向に沿って、トップシート25の肌側面の両側端部に、一対の立体ギャザー40を備えている。吸収性物品50の幅方向における立体ギャザー40の幅方向一端は、バックシート30の肌側面の両側端部付近(又は非肌側面の両側端部付近)に固定され、その幅方向途中部はトップシート25の肌側面の両側端部付近に固定され、その幅方向他端はトップシート25に固定されない自由端40aとなるように、立体ギャザーシートが配される。この自由端40a付近に立体ギャザー用弾性伸縮部材(不図示)を長手方向に沿って設けることで、立体ギャザー40の自由端40aに起立性を付与し、着用者の体型に合わせて変形可能なものとなる。立体ギャザー40の幅方向一端の固定位置は、例えば、バックシート30の非肌側面の幅方向両端、トップシート25とバックシート30とを部分的又は全体的に接合した袋体の幅方向両端、トップシート25の肌側面の幅方向両端等が挙げられる。なお、本実施形態の吸収性物品50は、立体ギャザーを含まない実施形態をも包含する。
【0060】
立体ギャザー用弾性部材としては、例えば、ポリウレタン糸、帯状のポリウレタンフィルム、糸状又は帯状の天然ゴム等が使用され、立体ギャザーシートとしては、疎水性繊維にて形成された撥水性又は液不透過性の不織布、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布の積層体である複合不織布等が使用される。
【0061】
<吸収性物品の製造方法>
吸収性物品50は、公知の製造方法により製造できるが、例えば、吸収体10をトップシート25とバックシート30との間に配置する工程と、トップシート25とバックシート30とを一部又は全周に亘ってホットメルト接着剤やヒートエンボス、超音波エンボス、高周波エンボス等を用いて固定する工程と、バックシート30及び/又はトップシート25の所定位置に立体ギャザー40を設置する工程と、を含む製造方法が挙げられる。そして、吸収性物品50が尿取りパッドや軽失禁パッドである場合は、これを包装体に個別包装した後、長手方向に3つ折りにして折りたためばよい。また、レッグギャザー、ウエストギャザー、サイドフラップ等を必要に応じて設けることができる。
【0062】
以上、本発明を、実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施形態に記載の発明の範囲には限定されないことは言うまでもなく、上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0063】
10、10A 吸収体
15 高吸収性シート
11 基体不織布
11a 起毛面
11b 非起毛面
11x 起毛繊維
12 高吸収性ポリマー
20 親水性シート
20a、20b 親水性シートの幅方向両端
25 トップシート
30 バックシート
40 立体ギャザー
40a 立体ギャザーの自由端
50 吸収性物品
60 袋体(SAP袋体)