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特許7594374ネガ型感光性樹脂組成物、パターン形成方法及び積層フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】ネガ型感光性樹脂組成物、パターン形成方法及び積層フィルム
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20241127BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20241127BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
G03F7/004 503Z
G03F7/038 503
G03F7/004 512
G03F7/20 501
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020117686
(22)【出願日】2020-07-08
(65)【公開番号】P2022015071
(43)【公開日】2022-01-21
【審査請求日】2023-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000106139
【氏名又は名称】サンアプロ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】中尾 拓人
(72)【発明者】
【氏名】柴垣 智幸
(72)【発明者】
【氏名】中村 友治
(72)【発明者】
【氏名】山形 憲一
(72)【発明者】
【氏名】近藤 崇弘
(72)【発明者】
【氏名】増島 正宏
(72)【発明者】
【氏名】今井 洋文
【審査官】川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-178492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004
G03F 7/038
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ基含有樹脂(A)とカチオン重合開始剤(I)とを含有するネガ型感光性樹脂組成物であって、
前記カチオン重合開始剤(I)は、下記一般式(I0)で表されるスルホニウム塩(I0)を含む、ネガ型感光性樹脂組成物。
【化1】
[式(I0)中、R1がチオキサントニル基かつR2が置換基(t)で置換されていてもよい炭素数6~30のアリール基である。この置換基(t)は、炭素数1~18のアルキル基である。R3~R5はそれぞれアルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アシロキシ基、アリールチオ基、アルキルチオ基、アリール基、複素環式炭化水素基、アリールオキシ基、ヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基、又はハロゲン原子である。k、m及びnはR3、R4及びR5の数を表し、kは、mは、nは1~4の整数である。nが2以上の場合、複数のR5は互いに同一であってもよく異なっていてもよい。Aは-S-で表される基であり、Oは酸素原子、Sは硫黄原子であり、Xは一価の多原子アニオンを表す。]
【請求項2】
前記一般式(I0)中のR5が、炭素数1~18のアルキル基である、請求項1に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記一般式(I0)中のXが、
(Rf)PF6-b 、又はR BY4-c
{Rfは、水素原子の80モル%以上がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。Rは、水素原子の一部が少なくとも1個のハロゲン原子又は電子求引基で置換されたフェニル基を表す。Yは、ハロゲン原子を表す。bは、1~5の整数である。cは、1~4の整数である。}
で表されるアニオンである、請求項1又は2に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記スルホニウム塩(I0)の含有量は、前記エポキシ基含有樹脂(A)100質量部に対して0.1~5質量部である、請求項1~のいずれか一項に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記エポキシ基含有樹脂(A)は、その構造中にグリシジルエーテル基を有する樹脂を含む、請求項1~のいずれか一項に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記エポキシ基含有樹脂(A)は、ノボラック型エポキシ樹脂とビスフェノールA型エポキシ樹脂とを併有する、請求項1~のいずれか一項に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載のネガ型感光性樹脂組成物を用いて、支持体上に感光性樹脂膜を形成する工程と、
前記感光性樹脂膜を露光する工程と、
前記露光後の感光性樹脂膜を、有機溶剤を含有する現像液で現像してネガ型パターンを形成する工程と、
を有するパターン形成方法。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載のネガ型感光性樹脂組成物により構成される感光性樹脂組成物層と、
支持フィルムと
が積層された、積層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネガ型感光性樹脂組成物、パターン形成方法及び積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品の小型化及び高密度化に伴い、例えば表面弾性波(SAW)フィルター等の、中空封止構造を有する電子部品、に用いられる感光性樹脂組成物への要求が高まっている。この電子部品の中空封止構造の形成においては、感光性樹脂組成物を硬化した硬化膜の薄膜化及び強度が必要になる。
【0003】
また、感光性樹脂組成物は、半導体ウェーハと透明基板との間のスペーサ(壁材)にも用いられる。例えばネガ型感光性樹脂組成物を用いて、半導体ウェーハ等の表面に感光性樹脂膜を形成し、該感光性樹脂膜に対して光、電子線等の放射線による選択的露光を行い、現像処理を施してパターンを形成した後、透明基板(例えばガラス基板)等と圧着してスペーサとされる。この感光性樹脂膜においては、フォトリソグラフィー法により、現像処理を施した際に、スペーサに必要とされる厚さの膜が形成され、かつ、良好な形状で残渣等がなく高解像度のパターニングが可能であることが必要になる。
【0004】
前記感光性樹脂膜を形成する感光性材料としては、従来、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、アルカリ可溶性樹脂及びカチオン重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2012/176750号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
中空封止構造を有する電子部品の小型化及び高密度化がますます進むなか、中空封止構造の形成においては、厚膜であり、微細な寸法のパターン形成が重要となる。
しかしながら、特許文献1に記載のものなど、従来の感光性樹脂組成物においては、前記中空封止構造のスペーサとなるパターンの微細化を試みた場合、解像不良が問題となる。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、解像性がより高められたネガ型感光性樹脂組成物、当該ネガ型感光性樹脂組成物を用いたパターン形成方法及び当該ネガ型感光性樹脂組成物を用いた積層フィルムを提供すること、を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用した。
すなわち、本発明の第1の態様は、エポキシ基含有樹脂(A)とカチオン重合開始剤(I)とを含有するネガ型感光性樹脂組成物であって、前記カチオン重合開始剤(I)は、下記一般式(I0)で表されるスルホニウム塩(I0)を含むことを特徴とする、ネガ型感光性樹脂組成物である。
【0009】
【化1】
[式(I0)中、R1及びR2はそれぞれ炭素数6~30のアリール基、炭素数4~30の複素環式炭化水素基、又は炭素数1~30のアルキル基を表し、これらのアリール基、複素環式炭化水素基又はアルキル基の水素原子の一部が置換基(t)で置換されていてもよい。この置換基(t)は、炭素数1~18のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素数1~18のアルコキシ基、炭素数2~18のアルキルカルボニル基、炭素数7~11のアリールカルボニル基、炭素数2~19のアシロキシ基、炭素数6~20のアリールチオ基、炭素数1~18のアルキルチオ基、炭素数6~10のアリール基、炭素数4~20の複素環式炭化水素基、炭素数6~10のアリールオキシ基、HO(-RO)q-{ROはエチレンオキシ基及び/又はプロピレンオキシ基、qは1~5の整数を表す。}で表されるヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる少なくとも一種である。R3~R5はそれぞれアルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アシロキシ基、アリールチオ基、アルキルチオ基、アリール基、複素環式炭化水素基、アリールオキシ基、ヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基、又はハロゲン原子である。k、m及びnはR3、R4及びR5の数を表し、kは0~4の整数、mは0~3の整数、nは1~4の整数である。k、m及びnがそれぞれ2以上の場合、複数のR3、R4及びR5は互いに同一であってもよく異なっていてもよい。Aは-S-、-O-、-SO-、-SO-、又は-CO-で表される基であり、Oは酸素原子、Sは硫黄原子であり、Xは一価の多原子アニオンを表す。]
【0010】
本発明の第2の態様は、前記第1の態様に係るネガ型感光性樹脂組成物を用いて、支持体上に感光性樹脂膜を形成する工程と、前記感光性樹脂膜を露光する工程と、前記露光後の感光性樹脂膜を、有機溶剤を含有する現像液で現像してネガ型パターンを形成する工程と、を有することを特徴とする、パターン形成方法である。
【0011】
本発明の第3の態様は、前記第1の態様に係るネガ型感光性樹脂組成物により構成される感光性樹脂組成物層と、支持フィルムとが積層された、積層フィルムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、解像性がより高められたネガ型感光性樹脂組成物、これを用いたパターン形成方法及び当該ネガ型感光性樹脂組成物を用いた積層フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書及び本特許請求の範囲において、「脂肪族」とは、芳香族に対する相対的な概念であって、芳香族性を持たない基、芳香族性を持たない化合物等を意味するものと定義する。
「アルキル基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状及び環状の1価の飽和炭化水素基を包含するものとする。アルコキシ基中のアルキル基も同様である。
「アルキレン基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状及び環状の2価の飽和炭化水素基を包含するものとする。
「ハロゲン化アルキル基」は、アルキル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基であり、該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
「フッ素化アルキル基」は、アルキル基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された基をいう。
「構成単位」とは、高分子化合物(樹脂、重合体、共重合体)を構成するモノマー単位(単量体単位)を意味する。
「置換基を有していてもよい」と記載する場合、水素原子(-H)を1価の基で置換する場合と、メチレン基(-CH-)を2価の基で置換する場合と、の両方を含む。
「露光」は、放射線の照射全般を含む概念とする。
【0014】
(ネガ型感光性樹脂)
本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物(以下単に「感光性組成物」ということがある)は、エポキシ基含有樹脂(A)とカチオン重合開始剤(I)とを含有する。以下、これらの各成分をそれぞれ(A)成分、(I)成分ともいう。
かかる感光性組成物を用いて感光性樹脂膜を形成し、該感光性樹脂膜に対して選択的に露光を行うと、該感光性樹脂膜の露光部では、(I)成分のカチオン部が分解して酸が発生し、該酸の作用により(A)成分中のエポキシ基が開環重合して、有機溶剤を含有する現像液に対する該(A)成分の溶解性が減少する一方で、該感光性樹脂膜の未露光部では、有機溶剤を含有する現像液に対する該(A)成分の溶解性が変化しないため、感光性樹脂膜の露光部と未露光部との間で、有機溶剤を含有する現像液に対する溶解性の差が生じる。そのため、該感光性樹脂膜を、有機溶剤を含有する現像液で現像すると、未露光部が溶解除去されて、ネガ型のパターンが形成される。
【0015】
<エポキシ基含有樹脂(A)>
エポキシ基含有樹脂((A)成分)は、特に限定されず、露光によってパターンを形成するのに充分なエポキシ基を1分子中に有する樹脂であればよい。
(A)成分としては、例えば、その構造中にグリシジルエーテル基を有する樹脂を用いることができる。
また、(A)成分としては、例えば、ノボラック型エポキシ樹脂(Anv)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(Abp)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、アクリル樹脂(Aac)が挙げられる。
【0016】
≪ノボラック型エポキシ樹脂(Anv)≫
ノボラック型エポキシ樹脂(Anv)としては、下記一般式(A1)で表される樹脂(A1)(以下「(A1)成分」ともいう)が好適に挙げられる。
【0017】
【化2】
[式中、Rp1及びRp2は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基である。複数のRp1は、互いに同一であってもよく異なっていてもよい。複数のRp2は、互いに同一であってもよく異なっていてもよい。nは、1~5の整数である。REPは、エポキシ基含有基である。複数のREPは、互いに同一であってもよく異なっていてもよい。]
【0018】
前記式(A1)中、Rp1、Rp2の炭素数1~5のアルキル基は、例えば炭素数1~5の直鎖状、分岐鎖状、又は環状のアルキル基である。直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられ、環状のアルキル基としては、シクロブチル基、シクロペンチル基等が挙げられる。
なかでもRp1、Rp2としては、水素原子又は直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、水素原子又は直鎖状のアルキル基がより好ましく、水素原子又はメチル基が特に好ましい。
式(A1)中、複数のRp1は、互いに同一であってもよく異なっていてもよい。複数のRp2は、互いに同一であってもよく異なっていてもよい。
【0019】
式(A1)中、nは、1~5の整数であり、好ましくは2又は3であり、より好ましくは2である。
【0020】
式(A1)中、REPは、エポキシ基含有基である。
EPのエポキシ基含有基としては、特に限定されるものではなく、エポキシ基のみからなる基;脂環式エポキシ基のみからなる基;エポキシ基又は脂環式エポキシ基と、2価の連結基とを有する基が挙げられる。
脂環式エポキシ基とは、3員環エーテルであるオキサシクロプロパン構造を有する脂環式基であって、具体的には、脂環式基とオキサシクロプロパン構造とを有する基である。
脂環式エポキシ基の基本骨格となる脂環式基としては、単環であっても多環であってもよい。単環の脂環式基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。また、多環の脂環式基としては、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロノニル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基等が挙げられる。また、これら脂環式基の水素原子は、アルキル基、アルコキシ基、水酸基等で置換されていてもよい。
エポキシ基又は脂環式エポキシ基と、2価の連結基とを有する基の場合、式中の酸素原子(-O-)に結合した2価の連結基を介してエポキシ基又は脂環式エポキシ基が結合することが好ましい。
【0021】
ここで、2価の連結基としては、特に限定されないが、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基、ヘテロ原子を含む2価の連結基等が好適なものとして挙げられる。
【0022】
置換基を有していてもよい2価の炭化水素基について:
かかる2価の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。
2価の炭化水素基における脂肪族炭化水素基は、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、通常は飽和であることが好ましい。
該脂肪族炭化水素基として、より具体的には、直鎖状若しくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、又は構造中に環を含む脂肪族炭化水素基等が挙げられる。
【0023】
前記直鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素数が1~10であることが好ましく、1~6がより好ましく、1~4がさらに好ましく、1~3が最も好ましい。直鎖状の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基[-CH-]、エチレン基[-(CH-]、トリメチレン基[-(CH-]、テトラメチレン基[-(CH-]、ペンタメチレン基[-(CH-]等が挙げられる。
前記分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素数が2~10であることが好ましく、2~6がより好ましく、2~4がさらに好ましく、2又は3が最も好ましい。分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、-CH(CH)-、-CH(CHCH)-、-C(CH-、-C(CH)(CHCH)-、-C(CH)(CHCHCH)-、-C(CHCH-等のアルキルメチレン基;-CH(CH)CH-、-CH(CH)CH(CH)-、-C(CHCH-、-CH(CHCH)CH-、-C(CHCH-CH-等のアルキルエチレン基;-CH(CH)CHCH-、-CHCH(CH)CH-等のアルキルトリメチレン基;-CH(CH)CHCHCH-、-CHCH(CH)CHCH-等のアルキルテトラメチレン基などのアルキルアルキレン基等が挙げられる。アルキルアルキレン基におけるアルキル基としては、炭素数1~5の直鎖状のアルキル基が好ましい。
【0024】
前記構造中に環を含む脂肪族炭化水素基としては、脂環式炭化水素基(脂肪族炭化水素環から水素原子を2個除いた基)、脂環式炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合した基、脂環式炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基などが挙げられる。前記直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、前記と同様のものが挙げられる。
前記脂環式炭化水素基は、炭素数が3~20であることが好ましく、3~12であることがより好ましい。
前記脂環式炭化水素基は、多環式基であってもよく、単環式基であってもよい。単環式の脂環式炭化水素基としては、モノシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素数3~6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。
多環式の脂環式炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては、炭素数7~12のものが好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0025】
2価の炭化水素基における芳香族炭化水素基は、芳香環を少なくとも1つ有する炭化水素基である。この芳香環は、(4n+2)個のπ電子をもつ環状共役系であれば特に限定されず、単環式でも多環式でもよい。芳香環の炭素数は、5~30であることが好ましく、5~20がより好ましく、6~15がさらに好ましく、6~12が特に好ましい。芳香環として具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。芳香族複素環として具体的には、ピリジン環、チオフェン環等が挙げられる。
芳香族炭化水素基として具体的には、前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環から水素原子を2つ除いた基(アリーレン基またはヘテロアリーレン基);2以上の芳香環を含む芳香族化合物(例えばビフェニル、フルオレン等)から水素原子を2つ除いた基;前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環から水素原子を1つ除いた基(アリール基またはヘテロアリール基)の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基、2-ナフチルエチル基等のアリールアルキル基におけるアリール基から水素原子をさらに1つ除いた基)等が挙げられる。前記アリール基またはヘテロアリール基に結合するアルキレン基の炭素数は、1~4であることが好ましく、1~2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
【0026】
2価の炭化水素基は、置換基を有していてもよい。
2価の炭化水素基としての、直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、置換基を有していてもよく、有していなくてもよい。該置換基としては、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1~5のフッ素化アルキル基、カルボニル基等が挙げられる。
【0027】
2価の炭化水素基としての、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基における脂環式炭化水素基は、置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。該置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、カルボニル基等が挙げられる。
前記置換基としてのアルキル基としては、炭素数1~5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基であることが最も好ましい。
前記置換基としてのアルコキシ基としては、炭素数1~5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、tert-ブトキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基が最も好ましい。
前記置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
前記置換基としてのハロゲン化アルキル基としては、前記アルキル基の水素原子の一部または全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
脂環式炭化水素基は、その環構造を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子を含む置換基で置換されてもよい。該ヘテロ原子を含む置換基としては、-O-、-C(=O)-O-、-S-、-S(=O)-、-S(=O)-O-が好ましい。
【0028】
2価の炭化水素基としての、芳香族炭化水素基は、当該芳香族炭化水素基が有する水素原子が置換基で置換されていてもよい。例えば当該芳香族炭化水素基中の芳香環に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよい。該置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基等が挙げられる。
前記置換基としてのアルキル基としては、炭素数1~5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基であることが最も好ましい。
前記置換基としてのアルコキシ基、ハロゲン原子およびハロゲン化アルキル基としては、前記脂環式炭化水素基が有する水素原子を置換する置換基として例示したものが挙げられる。
【0029】
ヘテロ原子を含む2価の連結基について:
ヘテロ原子を含む2価の連結基におけるヘテロ原子とは、炭素原子および水素原子以外の原子であり、例えば酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0030】
ヘテロ原子を含む2価の連結基において、該連結基として好ましいものとしては、-O-、-C(=O)-O-、-C(=O)-、-O-C(=O)-O-;-C(=O)-NH-、-NH-、-NH-C(=O)-O-、-NH-C(=NH)-(Hはアルキル基、アシル基等の置換基で置換されていてもよい。);-S-、-S(=O)-、-S(=O)-O-、一般式-Y21-O-Y22-、-Y21-O-、-Y21-C(=O)-O-、-C(=O)-O-Y21、-[Y21-C(=O)-O]m”-Y22-または-Y21-O-C(=O)-Y22-で表される基[式中、Y21およびY22はそれぞれ独立して置換基を有していてもよい2価の炭化水素基であり、Oは酸素原子であり、m”は0~3の整数である。]等が挙げられる。
前記へテロ原子を含む2価の連結基が-C(=O)-NH-、-NH-、-NH-C(=O)-O-、-NH-C(=NH)-の場合、そのHはアルキル基、アシル等の置換基で置換されていてもよい。該置換基(アルキル基、アシル基等)は、炭素数が1~10であることが好ましく、1~8であることがさらに好ましく、1~5であることが特に好ましい。
式-Y21-O-Y22-、-Y21-O-、-Y21-C(=O)-O-、-C(=O)-O-Y21-、-[Y21-C(=O)-O]m”-Y22-または-Y21-O-C(=O)-Y22-中、Y21およびY22は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基である。該2価の炭化水素基としては、上述した2価の連結基としての説明で挙げた「置換基を有していてもよい2価の炭化水素基」と同様のものが挙げられる。
21としては、直鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましく、直鎖状のアルキレン基がより好ましく、炭素数1~5の直鎖状のアルキレン基がさらに好ましく、メチレン基またはエチレン基が特に好ましい。
22としては、直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましく、メチレン基、エチレン基またはアルキルメチレン基がより好ましい。該アルキルメチレン基におけるアルキル基は、炭素数1~5の直鎖状のアルキル基が好ましく、炭素数1~3の直鎖状のアルキル基がより好ましく、メチル基が最も好ましい。
式-[Y21-C(=O)-O]m”-Y22-で表される基において、m”は0~3の整数であり、0~2の整数であることが好ましく、0または1がより好ましく、1が特に好ましい。つまり、式-[Y21-C(=O)-O]m”-Y22-で表される基としては、式-Y21-C(=O)-O-Y22-で表される基が特に好ましい。なかでも、式-(CHa’-C(=O)-O-(CHb’-で表される基が好ましい。該式中、a’は、1~10の整数であり、1~8の整数が好ましく、1~5の整数がより好ましく、1または2がさらに好ましく、1が最も好ましい。b’は、1~10の整数であり、1~8の整数が好ましく、1~5の整数がより好ましく、1または2がさらに好ましく、1が最も好ましい。
【0031】
なかでも、REPにおけるエポキシ基含有基としては、グリシジル基が好ましい。
【0032】
また、ノボラック型エポキシ樹脂(Anv)としては、下記一般式(anv1)で表される構成単位を有する樹脂も好適に挙げられる。
【0033】
【化3】
[式中、REPは、エポキシ基含有基であり、Ra22、Ra23は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~5のアルキル基又はハロゲン原子である。]
【0034】
式(anv1)中、Ra22、Ra23の炭素数1~5のアルキル基は、前記式(A1)中のRp1、Rp2の炭素数1~5のアルキル基と同様である。Ra22、Ra23のハロゲン原子は、塩素原子又は臭素原子であることが好ましい。
式(anv1)中、REPは、前記式(A1)中のREPと同様であって、グリシジル基が好ましい。
【0035】
以下に前記式(anv1)で表される構成単位の具体例を示す。
【0036】
【化4】
【0037】
ノボラック型エポキシ樹脂(Anv)は、前記構成単位(anv1)のみからなる樹脂であってもよく、構成単位(anv1)と他の構成単位とを有する樹脂であってもよい。この他の構成単位としては、例えば、下記一般式(anv2)~(anv3)でそれぞれ表される構成単位が挙げられる。
【0038】
【化5】
[式中、Ra24は、置換基を有していてもよい炭化水素基である。Ra25~Ra26、Ra28~Ra30は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~5のアルキル基又はハロゲン原子である。Ra27は、エポキシ基含有基又は置換基を有していてもよい炭化水素基である。]
【0039】
式(anv2)中、Ra24は、置換基を有していてもよい炭化水素基である。置換基を有していてもよい炭化水素基としては、直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、又は環状の炭化水素基が挙げられる。
該直鎖状のアルキル基は、炭素数が1~5であることが好ましく、1~4がより好ましく、1または2がさらに好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基またはn-ブチル基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましい。
【0040】
該分岐鎖状のアルキル基は、炭素数が3~10であることが好ましく、3~5がより好ましい。具体的には、イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,1-ジエチルプロピル基、2,2-ジメチルブチル基等が挙げられ、イソプロピル基であることが好ましい。
【0041】
a24が環状の炭化水素基となる場合、該炭化水素基は、脂肪族炭化水素基でも芳香族炭化水素基でもよく、また、多環式基でも単環式基でもよい。
単環式基である脂肪族炭化水素基としては、モノシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素数3~6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。
多環式基である脂肪族炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては、炭素数7~12のものが好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0042】
a24の環状の炭化水素基が芳香族炭化水素基となる場合、該芳香族炭化水素基は、芳香環を少なくとも1つ有する炭化水素基である。
この芳香環は、4n+2個のπ電子をもつ環状共役系であれば特に限定されず、単環式でも多環式でもよい。芳香環の炭素数は5~30であることが好ましく、5~20がより好ましく、6~15がさらに好ましく、6~12が特に好ましい。芳香環として具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。芳香族複素環として具体的には、ピリジン環、チオフェン環等が挙げられる。
a24における芳香族炭化水素基として具体的には、前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環から水素原子を1つ除いた基(アリール基またはヘテロアリール基);2以上の芳香環を含む芳香族化合物(例えばビフェニル、フルオレン等)から水素原子を1つ除いた基;前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基、2-ナフチルエチル基等のアリールアルキル基など)等が挙げられる。前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環に結合するアルキレン基の炭素数は、1~4であることが好ましく、1~2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
【0043】
式(anv2)、(anv3)中、Ra25~Ra26、Ra28~Ra30は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~5のアルキル基又はハロゲン原子であって、炭素数1~5のアルキル基、ハロゲン原子は、それぞれ前記Ra22、Ra23と同様である。
【0044】
式(anv3)中、Ra27は、エポキシ基含有基又は置換基を有していてもよい炭化水素基である。Ra27のエポキシ基含有基は、前記式(A1)中のREPと同様であり、Ra27の置換基を有していてもよい炭化水素基は、Ra24と同様である。
【0045】
以下に、前記式(anv2)~(anv3)でそれぞれ表される構成単位の具体例を示す。
【0046】
【化6】
【0047】
ノボラック型エポキシ樹脂(Anv)が、構成単位(anv1)に加えて他の構成単位を有する場合、樹脂(Anv)中の各構成単位の割合は、特に限定されるものではないが、樹脂(Anv)を構成する全構成単位の合計に対して、エポキシ基を有する構成単位の合計が10~90モル%が好ましく、20~80モル%がより好ましく、30~70モル%がさらに好ましい。
【0048】
≪ビスフェノールA型エポキシ樹脂(Abp)≫
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(Abp)としては、下記一般式(abp1)で表されるエポキシ樹脂が挙げられる。
【0049】
【化7】
[式中、REPは、エポキシ基含有基であり、Ra31、Ra32はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基であり、na31は1~50の整数である。]
【0050】
式(abp1)中、Ra31、Ra32の炭素数1~5のアルキル基は、前記式(A1)中のRp1、Rp2の炭素数1~5のアルキル基と同様である。なかでもRa31、Ra32としては、水素原子又はメチル基が好ましい。
EPは、前記式(A1)中のREPと同様であって、グリシジル基が好ましい。
【0051】
≪脂肪族エポキシ樹脂、アクリル樹脂(Aac)≫
脂肪族エポキシ樹脂、アクリル樹脂(Aac)としては、例えば、下記一般式(a1-1)~(a1-2)でそれぞれ表されるエポキシ基含有単位を有する樹脂が挙げられる。
【0052】
【化8】
[式中、Rは水素原子、炭素数1~5のアルキル基又は炭素数1~5のハロゲン化アルキル基である。Va41は、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基である。na41は0~2の整数である。Ra41、Ra42はエポキシ基含有基である。na42は0又は1である。Wa41は(na43+1)価の脂肪族炭化水素基である。na43は1~3の整数である。]
【0053】
前記式(a1-1)中、Rは、水素原子、炭素数1~5のアルキル基または炭素数1~5のハロゲン化アルキル基である。
Rの炭素数1~5のアルキル基は、直鎖状または分岐鎖状が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。
Rの炭素数1~5のハロゲン化アルキル基は、前記炭素数1~5のアルキル基の水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換された基である。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。
Rとしては、水素原子、炭素数1~5のアルキル基又は炭素数1~5のフッ素化アルキル基が好ましく、工業上の入手の容易さから、水素原子又はメチル基が最も好ましい。
【0054】
前記式(a1-1)中、Va41は、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基であって、前記式(A1)中のREPにおいて説明した、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基と同様の基が挙げられる。
上記の中でも、Va41の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基が好ましく、直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基がより好ましく、直鎖状の脂肪族炭化水素基がさらに好ましく、直鎖状のアルキレン基が特に好ましい。
【0055】
式(a1-1)中、na41は、0~2の整数であり、0又は1が好ましい。
【0056】
式(a1-1)、(a1-2)中、Ra41、Ra42は、エポキシ基含有基であって、前記式(A1)中のREPと同様である。
【0057】
式(a1-2)中、Wa41における(na43+1)価の脂肪族炭化水素基は、芳香族性を持たない炭化水素基を意味し、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、通常は飽和であることが好ましい。前記脂肪族炭化水素基としては、直鎖状もしくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基、又は、直鎖状もしくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基と構造中に環を含む脂肪族炭化水素基とを組み合わせた基が挙げられる。
【0058】
式(a1-2)中、na43は、1~3の整数であり、1又は2が好ましい。
【0059】
以下に前記式(a1-1)又は(a1-2)で表される構成単位の具体例を示す。
【0060】
【化9】
【0061】
【化10】
【0062】
【化11】
【0063】
【化12】
【0064】
上記式中、Rαは、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。
a51は、炭素数1~8の2価の炭化水素基を示す。Ra52は、炭素数1~20の2価の炭化水素基を示す。Ra53は、水素原子又はメチル基を示す。na51は、0~10の整数である。
a51、Ra52、Ra53は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0065】
さらに、アクリル樹脂(Aac)は、物理的、化学的特性を適度にコントロールする目的で他の重合性化合物から誘導される構成単位を有してもよい。このような重合性化合物としては、公知のラジカル重合性化合物や、アニオン重合性化合物が挙げられる。このような重合性化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のジカルボン酸類;2-メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2-メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、2-メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2-メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等のカルボキシル基及びエステル結合を有するメタクリル酸誘導体類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アリールエステル類;マレイン酸ジエチル、フマル酸ジブチル等のジカルボン酸ジエステル類;スチレン、α-メチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルトルエン、ヒドロキシスチレン、α-メチルヒドロキシスチレン、α-エチルヒドロキシスチレン等のビニル基含有芳香族化合物類;酢酸ビニル等のビニル基含有脂肪族化合物類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジオレフィン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有重合性化合物類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩素含有重合性化合物;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド結合含有重合性化合物類;等が挙げられる。
【0066】
脂肪族エポキシ樹脂、アクリル樹脂(Aac)が他の構成単位を有する場合、当該樹脂におけるエポキシ基含有単位の含有比率は、5~40モル%であることが好ましく、10~30モル%であることがより好ましく、15~25モル%であることが最も好ましい。
【0067】
また、脂肪族エポキシ樹脂としては、下記一般式(m1)で表される部分構造を含む化合物(以下「(m1)成分」ともいう)も好適に挙げられる。
【0068】
【化13】
[式中、nは、1~4の整数である。*は結合手を示す。]
【0069】
式(m1)中、nは、1~4の整数であり、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは2である。
【0070】
(m1)成分としては、2価の連結基又は単結合を介して、上記一般式(m1)で表される部分構造の複数が結合した化合物が挙げられる。この中でも、2価の連結基を介して、上記一般式(m1)で表される部分構造の複数が結合した化合物が好ましい。
ここでの2価の連結基としては、特に限定されないが、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基、ヘテロ原子を含む2価の連結基等が好適なものとして挙げられる。置換基を有していてもよい2価の炭化水素基、ヘテロ原子を含む2価の連結基については、上記式(A1)中のREP(エポキシ基含有基)において説明した、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基、ヘテロ原子を含む2価の連結基と同様であり、この中でもヘテロ原子を含む2価の連結基が好ましく、-Y21-C(=O)-O-で表される基、-C(=O)-O-Y21-で表される基がより好ましい。Y21としては、直鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましく、直鎖状のアルキレン基がより好ましく、炭素数1~5の直鎖状のアルキレン基がさらに好ましく、メチレン基またはエチレン基が特に好ましい。
【0071】
さらに、脂肪族エポキシ樹脂としては、下記一般式(m2)で表される化合物(以下「(m2)成分」ともいう)も好適に挙げられる。
【0072】
【化14】
[式中、REPは、エポキシ基含有基である。複数のREPは、互いに同一であってもよく異なっていてもよい。]
【0073】
式(m2)中、REPは、エポキシ基含有基であって、前記式(A1)中のREPと同様である。
【0074】
(A)成分としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(A)成分には、その構造中にグリシジルエーテル基を有する樹脂を用いることが好ましい。
(A)成分は、ノボラック型エポキシ樹脂(Anv)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(Abp)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、及びアクリル樹脂(Aac)からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含むことが好ましい。
これらの中でも、(A)成分は、ノボラック型エポキシ樹脂(Anv)及びビスフェノールA型樹脂(Abp)からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含むことがより好ましい。
この中でも、(A)成分は、ノボラック型エポキシ樹脂(Anv)とビスフェノールA型樹脂(Abp)とを併有することがさらに好ましく、前記一般式(A1)で表される樹脂(A1)と前記一般式(abp1)で表されるエポキシ樹脂とを併有することが特に好ましい。
【0075】
ノボラック型エポキシ樹脂(Anv)とビスフェノールA型樹脂(Abp)とを併有する場合、ノボラック型エポキシ樹脂(Anv)とビスフェノールA型樹脂(Abp)との比率は、(Anv)成分/(Abp)成分で表される質量比として、5/95~50/50であることが好ましく、10/90~40/60であることがより好ましく、10/90~30/70であることがさらに好ましい。
かかる質量比が前記の好ましい範囲内であれば、解像性がより高められ、かつ、基板への密着も優れたものとなる。
【0076】
(A)成分が、ノボラック型エポキシ樹脂(Anv)及びビスフェノールA型樹脂(Abp)からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含む場合、硬化膜の強度と柔軟性とのバランスの点から、(A)成分に占めるノボラック型エポキシ樹脂(Anv)の含有割合は、(A)成分の総質量(100質量%)に対して5~50質量%が好ましく、10~30質量%がより好ましい。
(A)成分に占めるビスフェノールA型樹脂(Abp)の含有割合は、(A)成分の総質量(100質量%)に対して50~95質量%が好ましく、70~90質量%がより好ましい。
ノボラック型エポキシ樹脂(Anv)とビスフェノールA型樹脂(Abp)との合計の含有割合は、(A)成分の総質量(100質量%)に対して50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、100質量%でもよい。
【0077】
(A)成分のポリスチレン換算質量平均分子量は、好ましくは100~300000であり、より好ましくは200~200000であり、さらに好ましくは300~200000である。このような質量平均分子量とすることにより、支持体との剥離が生じにくくなり、形成される硬化膜の強度が充分に高められる。
【0078】
また、(A)成分は、分散度が1.05以上であることが好ましい。このような分散度とすることにより、パターン形成において、リソグラフィー特性がより向上する。
ここでいう分散度とは、質量平均分子量を数平均分子量で除した値をいう。
【0079】
(A)成分の市販品としては、例えば、ノボラック型エポキシ樹脂(Anv)として、JER-152、JER-154、JER-157S70、JER-157S65(以上、三菱ケミカル株式会社製)、EPICLON N-740、EPICLON N-740、EPICLON N-770、EPICLON N-775、EPICLON N-660、EPICLON N-665、EPICLON N-670、EPICLON N-673、EPICLON N-680、EPICLON N-690、EPICLON N-695、EPICLON HP5000(以上、DIC株式会社製)、EOCN-1020(以上、日本化薬株式会社製)等が挙げられる。
【0080】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(Abp)としては、JER-827、JER-828、JER-834、JER-1001、JER-1002、JER-1003、JER-1055、JER-1007、JER-1009、JER-1010(以上、三菱ケミカル株式会社製)、EPICLON860、EPICLON1050、EPICLON1051、EPICLON1055(以上、DIC株式会社製)等が挙げられる。
【0081】
ビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、JER-806、JER-807、JER-4004、JER-4005、JER-4007、JER-4010(以上、三菱ケミカル株式会社製)、EPICLON830、EPICLON835(以上、DIC株式会社製)、LCE-21、RE-602S(以上、日本化薬株式会社製)等が挙げられる。
【0082】
脂肪族エポキシ樹脂としては、ADEKA RESIN EP-4080S、同EP-4085S、同EP-4088S(以上、株式会社ADEKA製)、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド2083、セロキサイド2085、セロキサイド8000、セロキサイド8010、EHPE-3150、EPOLEAD PB 3600、同PB 4700(以上、株式会社ダイセル製)、デナコール EX-211L、EX-212L、EX-214L、EX-216L、EX-321L、EX-850L(以上、ナガセケムテックス株式会社製)、TEPIC-VL(日産化学株式会社製)等が挙げられる。
【0083】
実施形態の感光性組成物中の(A)成分の含有量は、形成しようとする感光性樹脂膜の膜厚等に応じて調整すればよい。
【0084】
<カチオン重合開始剤(I)>
カチオン重合開始剤((I)成分)には、下記一般式(I0)で表されるスルホニウム塩(I0)(以下「(I0)成分」という)を含むものが用いられる。
【0085】
【化15】
[式(I0)中、R1及びR2はそれぞれ炭素数6~30のアリール基、炭素数4~30の複素環式炭化水素基、又は炭素数1~30のアルキル基を表し、これらのアリール基、複素環式炭化水素基又はアルキル基の水素原子の一部が置換基(t)で置換されていてもよい。この置換基(t)は、炭素数1~18のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素数1~18のアルコキシ基、炭素数2~18のアルキルカルボニル基、炭素数7~11のアリールカルボニル基、炭素数2~19のアシロキシ基、炭素数6~20のアリールチオ基、炭素数1~18のアルキルチオ基、炭素数6~10のアリール基、炭素数4~20の複素環式炭化水素基、炭素数6~10のアリールオキシ基、HO(-RO)q-{ROはエチレンオキシ基及び/又はプロピレンオキシ基、qは1~5の整数を表す。}で表されるヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる少なくとも一種である。R3~R5はそれぞれアルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アシロキシ基、アリールチオ基、アルキルチオ基、アリール基、複素環式炭化水素基、アリールオキシ基、ヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基、又はハロゲン原子である。k、m及びnはR3、R4及びR5の数を表し、kは0~4の整数、mは0~3の整数、nは1~4の整数である。k、m及びnがそれぞれ2以上の場合、複数のR3、R4及びR5は互いに同一であってもよく異なっていてもよい。Aは-S-、-O-、-SO-、-SO-、又は-CO-で表される基であり、Oは酸素原子、Sは硫黄原子であり、Xは一価の多原子アニオンを表す。]
【0086】
≪(I0)成分≫
前記式(I0)において、R3~R5のうち、アルキル基としては、炭素数1~18の直鎖状アルキル基(メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-オクチル、n-デシル、n-ドデシル、n-テトラデシル、n-ヘキサデシル及びn-オクタデシル等)、炭素数1~18の分岐鎖状アルキル基(イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、イソヘキシル及びイソオクタデシル)、及び炭素数3~18のシクロアルキル基(シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル及び4-デシルシクロヘキシル等)等が挙げられる。
【0087】
R3~R5のうち、アルコキシ基としては、炭素数1~18の直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基(メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ヘキシルオキシ、デシルオキシ、ドデシルオキシ及びオクタデシルオキシ等)等が挙げられる。
【0088】
R3~R5のうち、アルキルカルボニル基としては、炭素数2~18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキルカルボニル基(アセチル、プロピオニル、ブタノイル、2-メチルプロピオニル、ヘプタノイル、2-メチルブタノイル、3-メチルブタノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル及びオクタデカノイル等)等が挙げられる。
【0089】
R3~R5のうち、アリールカルボニル基としては、炭素数7~11のアリールカルボニル基(ベンゾイル及びナフトイル等)等が挙げられる。
【0090】
R3~R5のうち、アシロキシ基としては、炭素数2~19の直鎖状又は分岐鎖状のアシロキシ基(アセトキシ、エチルカルボニルオキシ、プロピルカルボニルオキシ、イソプロピルカルボニルオキシ、ブチルカルボニルオキシ、イソブチルカルボニルオキシ、sec-ブチルカルボニルオキシ、tert-ブチルカルボニルオキシ、オクチルカルボニルオキシ、テトラデシルカルボニルオキシ及びオクタデシルカルボニルオキシ等)等が挙げられる。
【0091】
R3~R5のうち、アリールチオ基としては、炭素数6~20のアリールチオ基(フェニルチオ、2-メチルフェニルチオ、3-メチルフェニルチオ、4-メチルフェニルチオ、2-クロロフェニルチオ、3-クロロフェニルチオ、4-クロロフェニルチオ、2-ブロモフェニルチオ、3-ブロモフェニルチオ、4-ブロモフェニルチオ、2-フルオロフェニルチオ、3-フルオロフェニルチオ、4-フルオロフェニルチオ、2-ヒドロキシフェニルチオ、4-ヒドロキシフェニルチオ、2-メトキシフェニルチオ、4-メトキシフェニルチオ、1-ナフチルチオ、2-ナフチルチオ、4-[4-(フェニルチオ)ベンゾイル]フェニルチオ、4-[4-(フェニルチオ)フェノキシ]フェニルチオ、4-[4-(フェニルチオ)フェニル]フェニルチオ、4-(フェニルチオ)フェニルチオ、4-ベンゾイルフェニルチオ、4-ベンゾイル-2-クロロフェニルチオ、4-ベンゾイル-3-クロロフェニルチオ、4-ベンゾイル-3-メチルチオフェニルチオ、4-ベンゾイル-2-メチルチオフェニルチオ、4-(4-メチルチオベンゾイル)フェニルチオ、4-(2-メチルチオベンゾイル)フェニルチオ、4-(p-メチルベンゾイル)フェニルチオ、4-(p-エチルベンゾイル)フェニルチオ4-(p-イソプロピルベンゾイル)フェニルチオ及び4-(p-tert-ブチルベンゾイル)フェニルチオ等)等が挙げられる。
【0092】
R3~R5のうち、アルキルチオ基としては、炭素数1~18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキルチオ基(メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、イソブチルチオ、sec-ブチルチオ、tert-ブチルチオ、ペンチルチオ、イソペンチルチオ、ネオペンチルチオ、tert-ペンチルチオ、オクチルチオ、デシルチオ、ドデシルチオ及びイソオクタデシルチオ等)等が挙げられる。
【0093】
R3~R5のうち、アリール基としては、炭素数6~10のアリール基(フェニル、トリル、ジメチルフェニル及びナフチル等)等が挙げられる。
【0094】
R3~R5のうち、複素環式炭化水素基としては、炭素数4~20の複素環式炭化水素基(チエニル、フラニル、ピラニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、インドリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、キノリル、イソキノリル、キノキサリニル、キナゾリニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、キサンテニル、チアントレニル、フェノキサジニル、フェノキサチイニル、クロマニル、イソクロマニル、ジベンゾチエニル、キサントニル、チオキサントニル及びジベンゾフラニル等)等が挙げられる。
【0095】
R3~R5のうち、アリールオキシ基としては、炭素数6~10のアリールオキシ基(フェノキシ及びナフチルオキシ等)等が挙げられる。
【0096】
R3~R5のうち、ヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基としては、式(2)で表されるヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基等が挙げられる。
HO(-RO)q- (2)
Oはエチレンオキシ基及び/又はプロピレンオキシ基、qは1~5の整数を表す。
【0097】
R3~R5のうち、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられる。
【0098】
R3~R5は、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、一部異なっていてもよい。後述のk、m及びnがそれぞれ2以上の場合、複数のR3は互いに同一であってもよく異なっていてもよい。複数のR4は互いに同一であってもよく異なっていてもよい。複数のR5は互いに同一であってもよく異なっていてもよい。
【0099】
kは、R3の数を表し、0~4の整数であり、好ましくは0~2、さらに好ましくは0又は1、特に好ましくは0である。
また、mは、R4の数を表し、0~3の整数であり、好ましくは0又は1、特に好ましくは0である。
また、nは、R5の数を表し、1~4の整数であり、工業原料入手の観点から好ましくは1または2であり、さらに溶解性の観点から2が特に好ましい。
【0100】
R5の結合位置は、制限はないが、C-S結合に対してオルト位であるとスルホニウム塩の光感応性がより良好となる。
【0101】
前記式(I0)において、Aは-O-、-S-、-SO-、-SO-、又は-CO-で表される基であり、好ましくは-S-である。
【0102】
前記式(I0)において、R1及びR2はそれぞれ炭素数6~30のアリール基、炭素数4~30の複素環式炭化水素基、炭素数1~30のアルキル基より選ばれ、これらアリール基、複素環式炭化水素基、アルキル基の水素原子の一部は、置換基(t)で置換されていてもよい。
この置換基(t)は、炭素数1~18のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素数1~18のアルコキシ基、炭素数2~18のアルキルカルボニル基、炭素数7~11のアリールカルボニル基、炭素数2~19のアシロキシ基、炭素数6~20のアリールチオ基、炭素数1~18のアルキルチオ基、炭素数6~10のアリール基、炭素数4~20の複素環式炭化水素基、炭素数6~10のアリールオキシ基、ヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる少なくとも一種である。この置換基(t)としては、R3~R5について説明した置換基と同様である。
【0103】
R1及びR2のうち、炭素数6~30のアリール基としては、単環式アリール基及び縮合多環式アリール基が含まれる。
単環式アリール基としては、フェニル、ヒドロキシフェニル、トルイル、ジメチルフェニル、トリメチルフェニル、エチルフェニル、ジエチルフェニル、トリエチルフェニル、n-プロピルフェニル、イソプロピルフェニル、n-ブチルフェニル、イソブチルフェニル、sec-ブチルフェニル、tert-ブチルフェニル、メトキシフェニル、エトキシフェニル、n-プロポキシフェニル、イソプロポキシフェニル、n-ブトキシフェニル、イソブトキシフェニル、sec-ブトキシフェニル、tert-ブトキシフェニル、アセチルフェニル、ベンゾイルフェニル、ナフトイルフェニル、フェニルチオフェニル、ナフチルチオフェニル、ビフェニルイル、フェノキシフェニル、ナフトキシフェニル、ニトロフェニル、フルオロフェニル、クロロフェニル及びブロモフェニル等が挙げられる。
【0104】
縮合多環式アリール基としては、ナフチル、アントラセニル、フェナンスレニル、ピレニル、クリセニル、ナフタセニル、ベンゾアントラセニル、アントラキノリル、フルオレニル、ナフトキノリル、ヒドロキシナフチル、メチルナフチル、エチルナフチル、メトキシナフチル、エトキシナフチル、アセチルナフチル、ベンゾイルナフチル、フェニルチオナフチル、フェニルナフチル、フェノキシナフチル、ニトロナフチル、フルオロナフチル、クロロナフチル、ブロモナフチル、ヒドロキシアントラセニル、メチルアントラセニル、エチルアントラセニル、メトキシアントラセニル、エトキシアントラセニル、アセチルアントラセニル、ベンゾイルアントラセニル、フェニルチオアントラセニル、フェノキシアントラセニル、ニトロアントラセニル、フルオロアントラセニル、クロロアントラセニル及びブロモアントラセニル等が挙げられる。
【0105】
R1及びR2のうち、炭素数4~30の複素環式炭化水素基としては、1~3個のヘテロ原子(酸素原子、窒素原子及び硫黄原子等)を環内に含む環状炭化水素基が含まれ、単環式複素環式炭化水素基及び縮合多環式複素環式炭化水素基が含まれる。
【0106】
単環式複素環式炭化水素基としては、チエニル、フラニル、ピラニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、ヒドロキシチエニル、メチルチエニル、エチルチエニル、メトキシチエニル、アセチルチエニル、ベンゾイルチエニル、フェニルチオチエニル、フェノキシチエニル、ニトロチエニル、フルオロチエニル、クロロチエニル、ブロモチエニル、ヒドロキシフラニル、メチルフラニル、エチルフラニル、メトキシフラニル、アセチルフラニル、ベンゾイルフラニル、フェニルチオフラニル、フェノキシフラニル、ニトロフラニル、フルオロフラニル、クロロフラニル及びブロモフラニル等が挙げられる。
【0107】
縮合多環式複素環式炭化水素基としては、インドリル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾチエニル、イソベンゾチエニル、キノリル、イソキノリル、キノキサリニル、キナゾリニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、キサンテニル、チアントレニル、フェノキサジニル、フェノキサチイニル、クロマニル、イソクロマニル、ジベンゾチエニル、キサントニル、チオキサントニル、ジベンゾフラニル、ヒドロキシキサンテニル、メチルキサンテニル、エチルキサンテニル、メトキシキサンテニル、アセチルキサンテニル、ベンゾイルキサンテニル、フェニルチオキサンテニル、フェノキシキサンテニル、ニトロキサンテニル、フルオロキサンテニル、クロロキサンテニル、ブロモキサンテニル、ヒドロキシチアントレニル、メチルチアントレニル、エチルチアントレニル、メトキシチアントレニル、ベンゾイルチアントレニル、フェニルチオチアントレニル、フェノキシチアントレニル、ニトロチアントレニル、フルオロチアントレニル、クロロチアントレニル、ブロモチアントレニル、ヒドロキシキサントニル、メチルキサントニル、ジメチルキサントニル、エチルキサントニル、ジエチルキサントニル、n-プロピルキサントニル、イソプロピルキサントニル、メトキシキサントニル、アセチルキサントニル、ベンゾイルキサントニル、フェニルチオキサントニル、フェノキシキサントニル、アセトキシキサントニル、ニトロキサントニル、フルオロキサントニル、クロロキサントニル、ヒドロキシチオキサントニル、メチルチオキサントニル、ジメチルチオキサントニル、エチルチオキサントニル、ジエチルチオキサントニル、n-プロピルチオキサントニル、イソプロピルチオキサントニル、メトキシチオキサントニル、アセチルチオキサントニル、ベンゾイルチオキサントニル、フェニルチオチオキサントニル、フェノキシチオキサントニル、アセトキシチオキサントニル、ニトロチオキサントニル、フルオロチオキサントニル、クロロチオキサントニル及びブロモチオキサントニル等が挙げられる。
【0108】
R1及びR2のうち、炭素数1~30のアルキル基としては、直鎖状アルキル基(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、オクチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクダデシル、ベンジル、ジフェニルメチル、ナフチルメチル、アントラセニルメチル、フェナシル(-CHCOC)、ナフトイルメチル、アントイルメチル等)、分岐鎖状アルキル基(イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル及びイソヘキシル等)及びシクロアルキル基(シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシル等)等が挙げられる。
【0109】
R1及びR2は、水素原子の一部が置換基(t)で置換されていてもよい炭素数6~30のアリール基及び水素原子の一部が置換基(t)で置換されていてもよい炭素数4~30の複素環式炭化水素基が好ましく、さらに好ましくはR1又はR2のうち、少なくとも一方が炭素数4~30の複素環式炭化水素基であり、特に好ましくは、光感応性および溶解性の観点から、R1がチオキサントニル基かつR2が置換基(t)で置換されていてもよい炭素数6~30のアリール基である。
【0110】
置換基(t)としては、炭素数1~18のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素数1~18のアルコキシ基、炭素数2~18のアルキルカルボニル基又は炭素数7~11のアリールカルボニル基が好ましく、より好ましくはアルキル基又はアルコキシ基であり、特に好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基(n-プロピル、イソプロピル)、ブチル基(n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル)、メトキシ基、エトキシ基である。
【0111】
前記(I0)成分におけるカチオン部としては、前記一般式(I0)中のAが-S-又は-O-で表される基であり、k及びmがそれぞれ0、nが1~4の整数であるカチオンが好ましい。
あるいは、前記(I0)成分におけるカチオン部としては、前記一般式(I0)中のR1又はR2が、それぞれ炭素数6~30のアリール基又は炭素数4~30の複素環式炭化水素基(これらのアリール基又は複素環式炭化水素基の水素原子の一部が前記置換基(t)で置換されていてもよい。)であるカチオンが好ましい。
あるいは、前記(I0)成分におけるカチオン部としては、前記一般式(I0)中のR1又はR2が、水素原子の一部が前記置換基(t)で置換されていてもよいチオキサントニル基であり、k及びmがそれぞれ0、nが1又は2であり、Aが-S-で表される基であるカチオンが好ましい。
【0112】
前記(I0)成分におけるカチオン部として具体的には、以下に示すカチオンが挙げられる。
【0113】
【化16】
【0114】
【化17】
【0115】
前記式(I0)において、Xは、一価の多原子アニオンであれば制限がなく、スルホニウム塩(I0)に活性エネルギー線(可視光、紫外線、電子線及びX線等)を照射することにより発生する酸(HX)に対応するアニオンである。
としては、MY 、(Rf)PF6-b 、R BY4-c 、R GaY4-c 、RSO 、(RSO又は(RSOで表されるアニオンが挙げられる。
【0116】
Mは、リン原子、ホウ素原子又はアンチモン原子を表す。
Yは、ハロゲン原子を表し、フッ素原子が好ましい。
【0117】
Rfは、水素原子の80モル%以上がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。
フッ素置換によりRfとするアルキル基としては、炭素数1~8のアルキル基が好ましく、直鎖状アルキル基(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル及びオクチル等)、分岐鎖状アルキル基(イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル及びtert-ブチル等)及びシクロアルキル基(シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシル等)等が挙げられる。
Rfにおいて、これらのアルキル基の水素原子がフッ素原子に置換されている割合は、もとのアルキル基が有していた水素原子のモル数に基づいて、80モル%以上が好ましく、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは100%である。フッ素原子による置換割合がこれら好ましい範囲にあると、スルホニウム塩の光感応性がさらに良好となる。
特に好ましいRfとしては、CF-、CFCF-、(CFCF-、CFCFCF-、CFCFCFCF-、(CFCFCF-、CFCF(CF)CF-及び(CFC-が挙げられる。
b個のRfは、相互に独立であり、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0118】
Pは、リン原子を表し、Fは、フッ素原子を表す。
【0119】
は、水素原子の一部が少なくとも1個の元素又は電子求引基で置換されたフェニル基を表す。そのような1個の元素の例としては、ハロゲン原子が含まれ、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子等が挙げられる。電子求引基としては、トリフルオロメチル基、ニトロ基及びシアノ基等が挙げられる。これらのうち、1個の水素原子がフッ素原子又はトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基が好ましい。
c個のRは、相互に独立であり、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0120】
Bは、ホウ素原子を表し、Gaは、ガリウム原子を表す。
【0121】
は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のパーフルオロアルキル基又は炭素数6~20のアリール基を表し、アルキル基及びパーフルオロアルキル基は直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれでもよく、アルキル基又はアリール基は無置換であっても、置換基を有していてもよい。
【0122】
Sはイオウ原子、Oは酸素原子、Cは炭素原子、Nは窒素原子を表す。
【0123】
aは4~6の整数を表す。
bは、1~5の整数が好ましく、さらに好ましくは2~4、特に好ましくは2又は3である。
cは、1~4の整数が好ましく、さらに好ましくは4である。
【0124】
MY で表されるアニオンとしては、SbF 、PF 及びBF で表されるアニオン等が挙げられる。
【0125】
(Rf)PF6-b で表されるアニオンとしては、(CFCFPF 、(CFCFPF 、((CFCF)PF 、((CFCF)PF 、(CFCFCFPF 、(CFCFCFPF 、((CFCFCFPF 、((CFCFCFPF 、(CFCFCFCFPF 及び(CFCFCFCFPF で表されるアニオン等が挙げられる。これらのうち、(CFCFPF 、(CFCFCFPF 、((CFCF)PF 、((CFCF)PF 、((CFCFCFPF 及び((CFCFCFPF で表されるアニオンが好ましい。
【0126】
BY4-c で表されるアニオンとしては、(C、((CF、(CF、(CBF 、CBF 及び(Cで表されるアニオン等が挙げられる。これらのうち、(C及び((CFで表されるアニオンが好ましい。
【0127】
GaY4-c で表されるアニオンとしては、(CGa、((CFGa、(CFGa、(CGaF 、CGaF 及び(CGaで表されるアニオン等が挙げられる。これらのうち、(CGa及び((CFGaで表されるアニオンが好ましい。
【0128】
SO で表されるアニオンとしては、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ペンタフルオロエタンスルホン酸アニオン、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸アニオン、ノナフルオロブタンスルホン酸アニオン、ペンタフルオロフェニルスルホン酸アニオン、p-トルエンスルホン酸アニオン、ベンゼンスルホン酸アニオン、カンファースルホン酸アニオン、メタンスルホン酸アニオン、エタンスルホン酸アニオン、プロパンスルホン酸アニオン及びブタンスルホン酸アニオン等が挙げられる。これらのうち、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ノナフルオロブタンスルホン酸アニオン、メタンスルホン酸アニオン、ブタンスルホン酸アニオン、カンファースルホン酸アニオン、ベンゼンスルホン酸アニオン及びp-トルエンスルホン酸アニオンが好ましい。
【0129】
(RSOで表されるアニオンとしては、(CFSO、(CSO、(CSO及び(CSOで表されるアニオン等が挙げられる。
【0130】
(RSOで表されるアニオンとしては、(CFSO、(CSO、(CSO及び(CSOで表されるアニオン等が挙げられる。
【0131】
一価の多原子アニオンとしては、MY 、(Rf)PF6-b 、R BY4-c 、R GaY4-c 、RSO 、(RSO又は(RSOで表されるアニオン以外に、過ハロゲン酸イオン(ClO 、BrO 等)、ハロゲン化スルホン酸イオン(FSO 、ClSO 等)、硫酸イオン(CHSO 、CFSO 、HSO 等)、炭酸イオン(HCO 、CHCO 等)、アルミン酸イオン(AlCl 、AlF 等)、ヘキサフルオロビスマス酸イオン(BiF )、カルボン酸イオン(CHCOO、CFCOO、CCOO、CHCOO、CCOO、CFCOO等)、アリールホウ酸イオン(B(C 、CHCHCHCHB(C 等)、チオシアン酸イオン(SCN)及び硝酸イオン(NO )等が使用できる。
【0132】
これらのXのうち、MY 、(Rf)PF6-b 、R BY4-c 、R GaY4-c 、RSO 、(RSO又は(RSOで表されるアニオンが好ましい。
【0133】
例えば、カチオン重合性が高い点で、SbF 、PF 、(CFCFPF 、(C、((CF、(CGa、((CFGaが好ましい。
また、レジストの解像度、パターン形状がよくなる点で、(CFCFPF 、(C、((CF、(CGa、((CFGa、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ノナフルオロブタンスルホン酸アニオン、メタンスルホン酸アニオン、ブタンスルホン酸アニオン、カンファースルホン酸アニオン、ベンゼンスルホン酸アニオン、p-トルエンスルホン酸アニオン、(CFSO及び(CFSOが好ましい。
さらに、カチオン重合性化合物およびレジスト組成物への相溶性が良い点で、(CFCFPF 、ノナフルオロブタンスルホン酸アニオン、(C及び((CF、(CFSOが特に好ましい。
また、(CGaは、耐熱透明性に優れる点で更に好ましい。
【0134】
特に、本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物において、(I0)成分のアニオン部としては、パターンの解像性がより高められやすい点から、(Rf)PF6-b 、R BY4-c が好ましい。
【0135】
以下に好適な(I0)成分の具体例を挙げる。
【0136】
【化18】
【0137】
【化19】
【0138】
【化20】
【0139】
【化21】
【0140】
【化22】
【0141】
【化23】
【0142】
【化24】
【0143】
【化25】
【0144】
【化26】
【0145】
【化27】
【0146】
【化28】
【0147】
【化29】
【0148】
(I0)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(I0)成分としては、上記の化合物(I0-01)~(I0-48)からなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、この中でも化合物(I0-25)~(I0-48)からなる群より選択される少なくとも一種がより好ましく、化合物(I0-41)~(I0-48)からなる群より選択される少なくとも一種がさらに好ましい。
本実施形態の感光性組成物において、(I0)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.1~5質量部であることが好ましく、0.3~4.5質量部であることがより好ましく、0.5~4質量部であることがさらに好ましい。
(I0)成分の含有量が、前記の好ましい範囲の下限値以上であると、充分な感度が得られて、パターンの解像性がより向上する。加えて、硬化膜の強度がより高められる。一方、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、感度が適度に制御され、良好な形状のパターンが得られやすくなる。
【0149】
[スルホニウム塩(I0)の製造方法]
本実施形態におけるスルホニウム塩(I0)は、以下に述べる製造方法で製造できる。
【0150】
下記の反応式で示される方法(例えば、第4版実験化学講座24巻、1992年、丸善株式会社発行、376頁、特開平7-329399号公報、特開平8-165290号公報、特開平10-212286号公報又は特開平10-7680号公報等に記載されている方法)。
【0151】
【化30】
【0152】
上記の反応式中、R1~R5、A、S、O、X、k、m及びnは、上記一般式(I0)におけるR1~R5、A、S、O、X、k、m及びnの定義に同じである。Hは水素原子を表す。
HX’は、一価の多原子アニオンの共役酸を表す。HX’としては、入手しやすさ、酸の安定性及び反応収率の観点から、メタンスルホン酸、パーフルオロメタンスルホン酸及び硫酸が好ましい。
脱水剤は、例えば、無水リン酸、無水酢酸又は濃硫酸等を表す。
一価の多原子アニオン(X’)は、例えば、上記のように複分解反応により、他のアニオン(X)に交換することができる。
MXは、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム及びカリウム等)カチオンと、前記他のアニオン{例えば、MY 、(Rf)PF6-b 、R BY4-c 、R GaY4-c 、RSO 、(RSO又は(RSO等で示されるアニオン}との塩を表す。
【0153】
上記反応式中、第1段目の反応は、無溶剤下で行ってもよいし、必要により有機溶媒(アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エタノール、アセトン等)中で行ってもよい。反応温度は20~105℃程度である。
【0154】
第2段目の反応は、第1段目の反応に引き続いて行ってもよいし、反応中間体(G2)を単離(必要に応じて精製)してから行ってもよい。
反応中間体(G2)と、アルカリ金属カチオンと前記他のアニオンとの塩(MX)の水溶液と、を混合・撹拌して、複分解反応を行い、析出する固体をろ別するか、又は分離した油状物を有機溶媒で抽出して有機溶媒を除去することにより、スルホニウム塩(I0)が固体あるいは粘調な液体として得られる。得られる固体又は粘稠液体は、必要に応じて適当な有機溶媒で洗浄するか、再結晶法もしくはカラムクロマトグラフィー法により精製することができる。
【0155】
スルホニウム塩(I0)の化学構造は、一般的な分析手法(例えば、H-、11B-、13C-、19F-、31P-核磁気共鳴スペクトル、赤外吸収スペクトル及び/又は元素分析等)によって同定することができる。
【0156】
≪(I0)成分以外のカチオン重合開始剤≫
本実施形態の感光性組成物において、(I)成分としては、(I0)成分に加えて、さらに(I0)成分以外のカチオン重合開始剤を併用してもよい。
(I0)成分以外のカチオン重合開始剤としては、特に制限されず、例えば、上記(I0)成分におけるカチオン部が異なるカチオン重合開始剤が挙げられる。
【0157】
上記(I0)成分におけるカチオン部と異なるカチオンとしては、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオンが好適に挙げられ、下記の一般式(ca-1)~(ca-5)でそれぞれ表される有機カチオンが特に好ましい。
【0158】
【化31】
[式中、R201~R207、およびR211~R212は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアルケニル基を表す。R201~R203、R206~R207、R211~R212は、相互に結合して、式中のイオウ原子と共に環を形成してもよい。R208~R209は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~5のアルキル基を表す。R210は、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、又は置換基を有していてもよい-SO-含有環式基である。L201は、-C(=O)-または-C(=O)-O-を表す。Y201は、それぞれ独立に、アリーレン基、アルキレン基またはアルケニレン基を表す。xは、1または2である。W201は、(x+1)価の連結基を表す。]
【0159】
201~R207、およびR211~R212におけるアリール基としては、炭素数6~20の置換又は無置換のアリール基が挙げられ、フェニル基、ナフチル基が好ましい。
201~R207、およびR211~R212におけるヘテロアリール基としては、前記アリール基を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されたものが挙げられる。
ヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。このヘテロアリール基として、9H-チオキサンテンから水素原子を1つ除いた基;置換ヘテロアリール基として、9H-チオキサンテン-9-オンから水素原子を1つ除いた基などが挙げられる。
201~R207、およびR211~R212におけるアルキル基としては、鎖状又は環状のアルキル基であって、炭素数1~30のものが好ましい。
201~R207、およびR211~R212におけるアルケニル基としては、炭素数が2~10であることが好ましい。
201~R207、およびR210~R212が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、カルボニル基、シアノ基、アミノ基、オキソ基(=O)、アリール基、下記式(ca-r-1)~(ca-r-10)でそれぞれ表される基が挙げられる。
【0160】
【化32】
[式中、R’201は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基である。]
【0161】
前記の式(ca-r-1)~(ca-r-10)中、R’201は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基である。
【0162】
置換基を有していてもよい環式基:
該環式基は、環状の炭化水素基であることが好ましく、該環状の炭化水素基は、芳香族炭化水素基であってもよく、環状の脂肪族炭化水素基であってもよい。脂肪族炭化水素基は、芳香族性を持たない炭化水素基を意味する。また、脂肪族炭化水素基は、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、通常は飽和であることが好ましい。
【0163】
R’201における芳香族炭化水素基は、芳香環を有する炭化水素基である。該芳香族炭化水素基の炭素数は3~30であることが好ましく、5~30であることがより好ましく、5~20がさらに好ましく、6~15が特に好ましく、6~10が最も好ましい。ただし、該炭素数には、置換基における炭素数を含まないものとする。
R’201における芳香族炭化水素基が有する芳香環として具体的には、ベンゼン、フルオレン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ビフェニル、もしくはこれらの芳香環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環、又は、これらの芳香環もしくは芳香族複素環を構成する水素原子の一部がオキソ基などで置換された環が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。
R’201における芳香族炭化水素基として具体的には、前記芳香環から水素原子を1つ除いた基(アリール基:たとえば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基など)、前記芳香環の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(たとえば、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基、2-ナフチルエチル基等のアリールアルキル基など)、前記芳香環を構成する水素原子の一部がオキソ基などで置換された環(たとえばアントラキノン等)から水素原子を1つ除いた基、芳香族複素環(たとえば9H-チオキサンテン、9H-チオキサンテン-9-オンなど)から水素原子を1つ除いた基等が挙げられる。前記アルキレン基(アリールアルキル基中のアルキル鎖)の炭素数は、1~4であることが好ましく、1~2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
【0164】
R’201における環状の脂肪族炭化水素基は、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基が挙げられる。
この構造中に環を含む脂肪族炭化水素基としては、脂環式炭化水素基(脂肪族炭化水素環から水素原子を1個除いた基)、脂環式炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合した基、脂環式炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基などが挙げられる。
前記脂環式炭化水素基は、炭素数が3~20であることが好ましく、3~12であることがより好ましい。
前記脂環式炭化水素基は、多環式基であってもよく、単環式基であってもよい。単環式の脂環式炭化水素基としては、モノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素数3~6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。多環式の脂環式炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては、炭素数7~30のものが好ましい。中でも、該ポリシクロアルカンとしては、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等の架橋環系の多環式骨格を有するポリシクロアルカン;ステロイド骨格を有する環式基等の縮合環系の多環式骨格を有するポリシクロアルカンがより好ましい。
【0165】
なかでも、R’201における環状の脂肪族炭化水素基としては、モノシクロアルカンまたはポリシクロアルカンから水素原子を1つ以上除いた基が好ましく、ポリシクロアルカンから水素原子を1つ除いた基がより好ましく、アダマンチル基、ノルボルニル基が特に好ましく、アダマンチル基が最も好ましい。
【0166】
脂環式炭化水素基に結合してもよい、直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素数が1~10であることが好ましく、1~6がより好ましく、1~4がさらに好ましく、1~3が最も好ましい。
直鎖状の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基[-CH-]、エチレン基[-(CH-]、トリメチレン基[-(CH-]、テトラメチレン基[-(CH-]、ペンタメチレン基[-(CH-]等が挙げられる。
分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、-CH(CH)-、-CH(CHCH)-、-C(CH-、-C(CH)(CHCH)-、-C(CH)(CHCHCH)-、-C(CHCH-等のアルキルメチレン基;-CH(CH)CH-、-CH(CH)CH(CH)-、-C(CHCH-、-CH(CHCH)CH-、-C(CHCH-CH-等のアルキルエチレン基;-CH(CH)CHCH-、-CHCH(CH)CH-等のアルキルトリメチレン基;-CH(CH)CHCHCH-、-CHCH(CH)CHCH-等のアルキルテトラメチレン基などのアルキルアルキレン基等が挙げられる。アルキルアルキレン基におけるアルキル基としては、炭素数1~5の直鎖状のアルキル基が好ましい。
【0167】
置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基:
R’201の鎖状のアルキル基としては、直鎖状又は分岐鎖状のいずれでもよい。
直鎖状のアルキル基としては、炭素数が1~20であることが好ましく、1~15であることがより好ましく、1~10が最も好ましい。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デカニル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基等が挙げられる。
分岐鎖状のアルキル基としては、炭素数が3~20であることが好ましく、3~15であることがより好ましく、3~10が最も好ましい。具体的には、例えば、1-メチルエチル基、1-メチルプロピル基、2-メチルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基などが挙げられる。
【0168】
置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基:
R’201の鎖状のアルケニル基としては、直鎖状又は分岐鎖状のいずれでもよく、炭素数が2~10であることが好ましく、2~5がより好ましく、2~4がさらに好ましく、3が特に好ましい。直鎖状のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基(アリル基)、ブチニル基などが挙げられる。分岐鎖状のアルケニル基としては、例えば、1-メチルビニル基、2-メチルビニル基、1-メチルプロペニル基、2-メチルプロペニル基などが挙げられる。
鎖状のアルケニル基としては、上記の中でも、直鎖状のアルケニル基が好ましく、ビニル基、プロペニル基がより好ましく、ビニル基が特に好ましい。
【0169】
R’201の環式基、鎖状のアルキル基またはアルケニル基における置換基としては、たとえば、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、カルボニル基、ニトロ基、アミノ基、オキソ基、上記R’201における環式基、アルキルカルボニル基、チエニルカルボニル基等が挙げられる。
【0170】
なかでも、R’201は、置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基が好ましい。
【0171】
201~R203、R206~R207、R211~R212は、相互に結合して式中のイオウ原子と共に環を形成する場合、硫黄原子、酸素原子、窒素原子等のヘテロ原子や、カルボニル基、-SO-、-SO-、-SO-、-COO-、-CONH-または-N(R)-(該Rは炭素数1~5のアルキル基である。)等の官能基を介して結合してもよい。形成される環としては、式中のイオウ原子をその環骨格に含む1つの環が、イオウ原子を含めて、3~10員環であることが好ましく、5~7員環であることが特に好ましい。形成される環の具体例としては、たとえばチオフェン環、チアゾール環、ベンゾチオフェン環、チアントレン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、9H-チオキサンテン環、チオキサントン環、チアントレン環、フェノキサチイン環、テトラヒドロチオフェニウム環、テトラヒドロチオピラニウム環等が挙げられる。
【0172】
前記式(ca-3)中、R208~R209は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~5のアルキル基を表し、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基が好ましく、アルキル基となる場合、相互に結合して環を形成してもよい。
【0173】
前記式(ca-3)中、R210は、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、又は置換基を有していてもよい-SO-含有環式基である。
210におけるアリール基としては、炭素数6~20の無置換のアリール基が挙げられ、フェニル基、ナフチル基が好ましい。
210におけるアルキル基としては、鎖状又は環状のアルキル基であって、炭素数1~30のものが好ましい。
210におけるアルケニル基としては、炭素数が2~10であることが好ましい。
【0174】
前記の式(ca-4)、式(ca-5)中、Y201は、それぞれ独立に、アリーレン基、アルキレン基又はアルケニレン基を表す。
201におけるアリーレン基は、R’201における芳香族炭化水素基として例示したアリール基から水素原子を1つ除いた基が挙げられる。
201におけるアルキレン基、アルケニレン基は、R’201における鎖状のアルキル基、鎖状のアルケニル基として例示した基から水素原子を1つ除いた基が挙げられる。
【0175】
前記の式(ca-4)、式(ca-5)中、xは、1または2である。
201は、(x+1)価、すなわち2価または3価の連結基である。
201における2価の連結基としては、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基が好ましく、上記式(A1)中のREPで例示した置換基を有していてもよい2価の炭化水素基と同様の基が好ましい。W201における2価の連結基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、環状であることが好ましい。なかでも、アリーレン基の両端に2個のカルボニル基が組み合わされた基、又はアリーレン基のみからなる基が好ましい。アリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられ、フェニレン基が特に好ましい。
201における3価の連結基としては、前記W201における2価の連結基から水素原子を1個除いた基、前記2価の連結基にさらに前記2価の連結基が結合した基などが挙げられる。W201における3価の連結基としては、アリーレン基に2個のカルボニル基が結合した基が好ましい。
【0176】
(I0)成分以外のカチオン重合開始剤におけるアニオン部としては、スルホン酸アニオンが好ましい。このスルホン酸アニオンとしては、例えば、上記RSO で表されるアニオンが挙げられ、特にカンファースルホン酸アニオンが好ましい。
【0177】
本実施形態の感光性組成物において、(I0)成分以外のカチオン重合開始剤を併用する場合の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.1~10質量部であることが好ましく、0.3~5質量部であることがより好ましく、0.5~2質量部であることがさらに好ましい。
【0178】
<その他成分>
本実施形態の感光性樹脂組成物は、上述した(A)成分及び(I)成分以外に、必要に応じてその他成分を含有してもよい。
実施形態の感光性樹脂組成物には、所望により、混和性のある添加剤、例えば金属酸化物(M)、シランカップリング剤、増感剤成分、溶剤、膜の性能を改良するための付加的樹脂、溶解抑制剤、塩基性化合物、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤などを適宜、添加含有させることができる。
【0179】
≪金属酸化物(M)≫
本実施形態の感光性樹脂組成物は、(A)成分及び(I)成分に加えて、強度が高められた硬化膜が得られやすいことから、さらに、金属酸化物(M)(以下「(M)成分」ともいう)を含有してもよい。また、(M)成分を併有することで、良好な形状で高解像のパターンを形成し得る。
(M)成分としては、例えば、ケイ素(金属ケイ素)、チタン、ジルコニウム、ハフニウム等の金属の酸化物が挙げられる。これらの中でも、ケイ素の酸化物が好ましく、この中でもシリカを用いることが特に好ましい。
【0180】
また、(M)成分の形状は、粒子状であることが好ましい。
かかる粒子状の(M)成分としては、体積平均粒子径が5~40nmの粒子群からなるものが好ましく、体積平均粒子径が5~30nmの粒子群からなるものがより好ましく、体積平均粒子径が10~20nmの粒子群からなるものがさらに好ましい。
(M)成分の体積平均粒子径が、前記の好ましい範囲の下限値以上であると、硬化膜の強度が高められやすくなる。一方、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、パターンの形成において、残渣が生じにくくなり、より高解像のパターンが形成されやすくなる。加えて、樹脂膜の透明性が高められる。
(M)成分の粒子径は、露光光源に応じて適宜選択すればよい。一般的に、光の波長に対して、1/10以下の粒子径を持つ粒子は、光散乱の影響はほぼ考えなくてよいとされている。このため、例えばi線(365nm)でのフォトリソグラフィーにより微細構造を形成する場合、(M)成分としては、1次粒子径(体積平均値)10~20nmの粒子群(特に好ましくはシリカ粒子群)を用いることが好ましい。
【0181】
(M)成分としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(M)成分を含む場合の含有量は、(A)成分100質量部に対して、5~50質量部であることが好ましく、10~40質量部であることがより好ましい。
(M)成分の含有量が、前記の好ましい範囲の下限値以上であると、硬化膜の強度がより高められる。一方、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、樹脂膜の透明性がより高められる。
【0182】
≪シランカップリング剤≫
本実施形態の感光性樹脂組成物は、基板との接着性を向上させるため、さらに接着助剤を含有していてもよい。この接着助剤としては、シランカップリング剤が好ましい。
シランカップリング剤としては、例えばカルボキシ基、メタクリロイル基、イソシアナート基、エポキシ基等の反応性置換基を有するシランカップリング剤が挙げられる。具体例としては、トリメトキシシリル安息香酸、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
シランカップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
シランカップリング剤を含む場合の含有量は、(A)成分100質量部に対して、2.5~20質量部であることが好ましく、3~15質量部であることがより好ましく、3~10質量部であることがさらに好ましい。
シランカップリング剤の含有量が、前記の好ましい範囲であると、硬化膜の強度がより高められる。加えて、硬化膜と基板との接着性がより強められる。
【0183】
≪増感剤成分≫
本実施形態の感光性樹脂組成物は、さらに、増感剤成分を含有してもよい。
増感剤成分としては、露光によるエネルギーを吸収して、そのエネルギーを他の物質に伝達し得るものであれば特に限定されるものではない。
増感剤成分として具体的には、ベンゾフェノン、p,p’-テトラメチルジアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン系光増感剤、カルバゾール系光増感剤、アセトフェン系光増感剤、1,5-ジヒドロキシナフタレン等のナフタレン系光増感剤、フェノール系光増感剤、9-エトキシアントラセン等のアントラセン系光増感剤、ビアセチル、エオシン、ローズベンガル、ピレン、フェノチアジン、アントロン等の公知の光増感剤を用いることができる。
増感剤成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
増感剤成分を含む場合の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.1~15質量部であることが好ましく、0.3~10質量部であることがより好ましく、0.5~5質量部であることがさらに好ましい。
増感剤成分の含有量が前記の好ましい範囲であると、感度及び解像性がより高められる。
【0184】
≪溶剤≫
本実施形態の感光性樹脂組成物は、さらに、溶剤(以下「(S)成分」ということがある)を含有してもよい。
(S)成分としては、例えば、γ-ブチロラクトン等のラクトン類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、メチル-n-ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2-ヘプタノンなどのケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどの多価アルコール類;2-メトキシブチルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、4-メトキシブチルアセテート、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、またはジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物、前記多価アルコール類または前記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテルまたはモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体[これらの中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が好ましい];ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン等の芳香族系有機溶剤、ジメチルスルホキシド(DMSO)等が挙げられる。
(S)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。
【0185】
(S)成分を含む場合の使用量は、特に限定されず、感光性組成物を基板等に液垂れが無く塗布可能な濃度で、塗布膜厚に応じて適宜設定される。
たとえば、固形分濃度が50質量%以上となるように(S)成分を使用することができ、60質量%以上となるように(S)成分を使用することができる。
また、(S)成分を実質的に含まない態様(すなわち、固形分濃度が100質量%である態様)も採用できる。
【0186】
以上説明した本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物においては、一般式(I0)で表されるスルホニウム塩(I0)を含むため、エポキシ基含有樹脂(A)との相溶性が高まり、g線及びh線に対して高感度化(従来のものに比べ低露光量でパターン形成が可能)が図られる。これにより、パターン形成の際の解像性がより高められる。
かかる実施形態のネガ型感光性樹脂組成物によれば、中空封止構造の形成において、スペーサに必要とされる厚さの膜を形成でき、かつ、良好な形状で残渣等がなく高解像度のパターニングが可能である。
【0187】
また、本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物は、厚膜で膜を形成した場合にも同様に前記パターニングが可能であり、良好な特性を得られるものである。これより、本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物は、感光性ドライフィルムレジスト用としても有用なものである。
【0188】
(積層フィルム)
本実施形態の積層フィルムは、上述した実施形態のネガ型感光性樹脂組成物により構成される感光性樹脂組成物層と、支持フィルムとが積層されたものである。
なお、当該積層フィルムは、ネガ型感光性樹脂組成物を用いて形成された感光性樹脂組成物層の、支持フィルムが存在する側とは反対側にカバーフィルム、が配されていてもよい。
【0189】
本実施形態の積層フィルムは、例えば、支持フィルム上に、上述した実施形態のネガ型感光性樹脂組成物を塗布し、乾燥させて感光性樹脂組成物層を形成した後、その感光性樹脂組成物層上にカバーフィルムを積層することにより製造できる。
基材フィルム上へのネガ型感光性樹脂組成物の塗布は、ブレードコーター、リップコーター、コンマコーター、フィルムコーター等による適宜の方法を用いて行えばよい。
感光性樹脂組成物層の厚さは、100μm以下が好ましく、より好ましくは5~50μmである。
【0190】
支持フィルムは、公知のものを使用でき、例えば熱可塑性樹脂フィルム等が用いられる。この熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート等のポリエステルが挙げられる。基材フィルムの厚さは、好ましくは2~150μmである。
カバーフィルムには、公知のものを使用でき、例えばポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等が用いられる。カバーフィルムとしては、感光性樹脂組成物層との接着力が、支持フィルムよりも小さいフィルムが好ましい。カバーフィルムの厚さは、好ましくは2~150μm、より好ましくは2~100μm、さらに好ましくは5~50μmである。
支持フィルムとカバーフィルムとは、同一のフィルム材料であってもよいし、異なるフィルム材料を用いてもよい。
【0191】
(パターン形成方法)
本実施形態のパターン形成方法は、上述した実施形態のネガ型感光性樹脂組成物を用いて、支持体上に感光性樹脂膜を形成する工程(以下「膜形成工程」という)と、前記感光性樹脂膜を露光する工程(以下「露光工程」という)と、前記露光後の感光性樹脂膜を、有機溶剤を含有する現像液で現像してネガ型パターンを形成する工程(以下「現像工程」という)と、を有する。
本実施形態のパターン形成方法は、例えば以下のようにして行うことができる。
【0192】
[膜形成工程]
まず、支持体上に、上述した実施形態のネガ型感光性樹脂組成物を、スピンコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法等の公知の方法で塗布し、ベーク(ポストアプライベーク(PAB))処理を、例えば50~150℃の温度条件にて2~60分間施し、感光性樹脂膜を形成する。
なお、当該膜形成工程は、前述の積層フィルムのうち、感光性樹脂組成物層を支持体上に配することでも行うことが可能である。
【0193】
支持体としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができ、例えば、電子部品用の基板や、これに所定の配線パターンが形成されたもの等が挙げられる。より具体的には、シリコン、窒化シリコン、チタン、タンタル、タンタル酸リチウム(LiTaO)、ニオブ、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、パラジウム、チタンタングステン、銅、クロム、鉄、アルミニウムなどの金属製の基板や、ガラス基板等が挙げられる。配線パターンの材料としては、例えば銅、アルミニウム、ニッケル、金等が使用可能である。
【0194】
本実施形態のパターン形成方法は、特に、通信端末に搭載されるSAWデバイス用途のタンタル酸リチウム(LiTaO)基板、ニオブ酸リチウム(LiNbO)基板に有用な方法である。
【0195】
ネガ型感光性樹脂組成物により形成される感光性樹脂膜の膜厚は、特に限定されるものではないが、10~100μm程度が好ましい。上述した実施形態のネガ型感光性樹脂組成物は、厚膜で膜を形成した場合にも良好な特性を得られるものである。
【0196】
[露光工程]
次に、形成された感光性樹脂膜に対し、公知の露光装置を用いて、所定のパターンが形成されたマスク(マスクパターン)を介した露光又はマスクパターンを介さない電子線の直接照射による描画等による選択的露光を行った後、必要に応じてベーク(ポストエクスポージャーベーク(PEB))処理を、たとえば80~150℃の温度条件にて40~1200秒間、好ましくは40~1000秒間、より好ましくは60~900秒間施す。
【0197】
露光に用いる波長は特に限定されず、放射線、例えば波長が300~500nmの紫外線、i線(波長365nm)又は可視光線を選択的に照射(露光)する。これらの放射線の線源としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、アルゴンガスレーザーなどを用いることができる。
ここで放射線とは、紫外線、可視光線、遠紫外線、X線、電子線などを意味する。放射線照射量は、組成物中の各成分の種類、配合量、塗膜の膜厚などによって異なるが、例えば超高圧水銀灯使用の場合、100~2000mJ/cmである。
【0198】
感光性樹脂膜の露光方法は、空気や窒素等の不活性ガス中で行う通常の露光(ドライ露光)であってもよく、液浸露光(Liquid Immersion Lithography)であってもよい。
【0199】
露光工程後の感光性樹脂膜は、透明性が高く、例えばi線(波長365nm)を照射した際のヘーズ値が、好ましくは3%以下、より好ましくは1.0~2.7%である。
このように、上述した実施形態のネガ型感光性樹脂組成物を用いて形成された感光性樹脂膜は、透明性が高い。このため、パターン形成における露光の際、光透過性が高まり、良好なリソグラフィー特性のネガ型パターンが得られやすい。
かかる露光工程後の感光性樹脂膜のヘーズ値は、JIS K 7136(2000)に準拠した方法を用いて測定される。
【0200】
[現像工程]
次に、前記露光後の感光性樹脂膜を、有機溶剤を含有する現像液(有機系現像液)で現像する。現像の後、好ましくはリンス処理を行う。必要に応じてベーク処理(ポストベーク)を行ってもよい。
【0201】
有機系現像液が含有する有機溶剤としては、(A)成分(露光前の(A)成分)を溶解し得るものであればよく、公知の有機溶剤の中から適宜選択できる。具体的には、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、ニトリル系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤等の極性溶剤、炭化水素系溶剤等が挙げられる。
【0202】
ケトン系溶剤としては、例えば、1-オクタノン、2-オクタノン、1-ノナノン、2-ノナノン、アセトン、4-ヘプタノン、1-ヘキサノン、2-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、イソホロン、プロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、メチルアミルケトン(2-ヘプタノン)等が挙げられる。これらの中でも、ケトン系溶剤としては、メチルアミルケトン(2-ヘプタノン)が好ましい。
【0203】
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、メトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、2-メトキシブチルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、4-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-エチル-3-メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、2-エトキシブチルアセテート、4-エトキシブチルアセテート、4-プロポキシブチルアセテート、2-メトキシペンチルアセテート、3-メトキシペンチルアセテート、4-メトキシペンチルアセテート、2-メチル-3-メトキシペンチルアセテート、3-メチル-3-メトキシペンチルアセテート、3-メチル-4-メトキシペンチルアセテート、4-メチル-4-メトキシペンチルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル、炭酸エチル、炭酸プロピル、炭酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、ピルビン酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、メチル-3-メトキシプロピオネート、エチル-3-メトキシプロピオネート、エチル-3-エトキシプロピオネート、プロピル-3-メトキシプロピオネート等が挙げられる。これらの中でも、エステル系溶剤としては、酢酸ブチル又はPGMEAが好ましい。
【0204】
ニトリル系溶剤としては、例えば、アセトニトリル、プロピオ二トリル、バレロニトリル、ブチロ二トリル等が挙げられる。
【0205】
有機系現像液には、必要に応じて公知の添加剤を配合できる。該添加剤としては、例えば界面活性剤が挙げられる。界面活性剤としては、特に限定されないが、例えばイオン性や非イオン性のフッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤等を用いることができる。
界面活性剤としては、非イオン性の界面活性剤が好ましく、非イオン性のフッ素系界面活性剤、又は非イオン性のシリコン系界面活性剤がより好ましい。
界面活性剤を配合する場合、その配合量は、有機系現像液の全量に対して、通常0.001~5質量%であり、0.005~2質量%が好ましく、0.01~0.5質量%がより好ましい。
【0206】
現像処理は、公知の現像方法により実施することが可能であり、例えば、現像液中に支持体を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、支持体表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止する方法(パドル法)、支持体表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している支持体上に一定速度で現像液塗出ノズルをスキャンしながら現像液を塗出し続ける方法(ダイナミックディスペンス法)等が挙げられる。
【0207】
リンス液を用いたリンス処理(洗浄処理)は、公知のリンス方法により実施できる。該リンス処理の方法としては、たとえば一定速度で回転している支持体上にリンス液を塗出し続ける方法(回転塗布法)、リンス液中に支持体を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、支持体表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)等が挙げられる。
リンス処理は、有機溶剤を含有するリンス液を用いることが好ましい。
【0208】
上述した膜形成工程、露光工程及び現像工程により、パターンを形成できる。
【0209】
上述した実施形態のパターン形成方法においては、上述した第1の態様であるネガ型感光性樹脂組成物が用いられているため、解像性がより高められたパターンを形成することができる。加えて、実施形態のパターン形成方法によれば、高感度化が図れ、残渣が低減されて良好な形状のパターンを形成することができる。
【0210】
(硬化膜)
本実施形態の硬化膜は、上述した実施形態のネガ型感光性樹脂組成物を硬化したものである。
【0211】
(硬化膜の製造方法)
本実施形態の硬化膜の製造方法は、上述した実施形態のネガ型感光性樹脂組成物を用いて、支持体上に感光性樹脂膜を形成する工程(i)と、前記感光性樹脂膜を硬化させて硬化膜を得る工程(ii)と、を有する。
工程(i)の操作は、上述した[膜形成工程]と同様にして行うことができる。ベーク処理は、例えば温度80~150℃の温度条件にて40~600秒間の条件で行うことができる。
工程(ii)での硬化処理は、例えば温度100~250℃、0.5~2時間の条件で行うことができる。
実施形態の硬化膜の製造方法は、工程(i)及び工程(ii)以外に、その他工程を有してもよい。例えば、工程(i)と工程(ii)との間に、上述した[露光工程]を有してもよく、工程(i)で形成された感光性樹脂膜に対して選択的露光を行い、必要に応じてベーク(PEB)処理が施された感光性樹脂膜(プレ硬化膜)を硬化させて、硬化膜を得ることもできる。
上述した実施形態の硬化膜の製造方法によれば、マスクパターンを忠実に再現した硬化膜が容易に製造できる。
【実施例
【0212】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。各製造例の説明中の「部」は質量部を意味する。
【0213】
<スルホニウム塩の製造>
(製造例1)
[2-tert-ブチル-5-メチル-4-(2-チオキサントニルチオ)フェニル](5-tert-ブチル-2-メチルフェニル)(2-チオキサントニル)スルホニウム メタンスルホネート(化合物(I0-41))の合成
【0214】
【化33】
【0215】
2-[(5-tert-ブチル-2-メチルフェニル)スルフィニル]チオキサントン1.0部、2-[(5-tert-ブチル-2-メチルフェニル)チオ]チオキサントン1.0部、無水酢酸5.0部及びメタンスルホン酸1.9部を均一混合し、65℃で6時間反応させた。反応溶液を室温まで冷却し、イオン交換水10部中に投入し、ジクロロメタン10部で抽出した。水層を除去し、再度イオン交換水10部を投入し、有機層を洗浄した。この有機層の洗浄操作を水層のpHが中性になるまで実施した。その後、有機層にシクロヘキサン15部を加え、撹拌した後、30分間静置してから上層を除く操作を3回行い、未反応の原料を除去した。下層をロータリーエバポレーターに移して溶媒を留去することにより、化合物(I0-41)1.5部を得た。
得られた化合物(I0-41)はH-NMR、LC-MSにて同定した。
【0216】
H-NMR:d6-ジメチルスルホキシド,δ(ppm)8.7(1H,s),8.2~8.5(4H,m),7.7~8.0(8H,m),7.5~7.6(3H,m),7.2(2H,d),7.0(1H,s)2.4(3H,s),2.3(3H,s)2.2(3H,s),1.3(9H,s),1.1(9H,s)
LC-MS:(positive)m/z=779.00,(negative)m/z=94.98
【0217】
(製造例2)
[2-tert-ブチル-5-メチル-4-(2-チオキサントニルチオ)フェニル](5-tert-ブチル-2-メチルフェニル)(2-チオキサントニル)スルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート(化合物(I0-46))の合成
【0218】
【化34】
【0219】
製造例1で合成した化合物(I0-41)1.0部をジクロロメタン5.8部に溶解させ、そこへトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロリン酸カリウム0.59部と、イオン交換水5.1部とを加え、室温下1時間撹拌した。有機層をイオン交換水5部で5回洗浄し、これをロータリーエバポレーターに移して溶媒を留去することにより、化合物(I0-46)1.26部を得た。
得られた化合物(I0-46)はH-NMR、19F-NMRにて同定した。
【0220】
H-NMR:d6-ジメチルスルホキシド,δ(ppm)8.7(1H,s),8.2~8.5(4H,m),7.7~8.0(8H,m),7.5~7.6(3H,m),7.2(2H,d),7.0(1H,s)2.4(3H,s),2.2(3H,s),1.3(9H,s),1.1(9H,s)
19F-NMR:d6-ジメチルスルホキシド,δ(ppm)-42.0(1F,d),-79.9(3F,s),-81.2(6F,s),-87.9(2F,d),-115.0~-116.2(6F,m)
【0221】
(製造例3)
[2-tert-ブチル-5-メチル-4-(2-チオキサントニルチオ)フェニル](5-tert-ブチル-2-メチルフェニル)(2-チオキサントニル)スルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(化合物(I0-45))の合成
【0222】
【化35】
【0223】
製造例2において、「トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロリン酸カリウム0.59部」を「ナトリウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート0.85部」に変更したこと以外は、製造例2と同様にして化合物(I0-45)1.5部を得た。
得られた化合物(I0-45)はH-NMR、19F-NMRにて同定した。
【0224】
H-NMR:d6-ジメチルスルホキシド,δ(ppm)8.7(1H,s),8.2~8.5(4H,m),7.7~8.0(8H,m),7.5~7.6(3H,m),7.2(2H,d),7.0(1H,s)2.4(3H,s),2.2(3H,s),1.3(9H,s),1.1(9H,s)
19F-NMR:d6-ジメチルスルホキシド,δ(ppm)-132.1(8F,s),-161.8(4F,s),-166.0(8F,s)
【0225】
(製造例4)
化合物(H1-TF)の合成
【0226】
【化36】
【0227】
2-(フェニルチオ)チオキサントン4.3部、2-[(フェニル)スルフィニル]チオキサントン4.5部、無水酢酸4.1部及びアセトニトリル110部を40℃で撹拌しながら、これにトリフルオロメタンスルホン酸2.4部を徐々に滴下し、40~45℃で1時間反応させた後、反応溶液を室温(約25℃)まで冷却し、蒸留水150部中に投入し、クロロホルムで抽出し、水相のpHが中性になるまで水で洗浄した。クロロホルム相をロータリーエバポレーターに移して溶媒を留去した後、トルエン50部を加えて超音波洗浄器でトルエン中に分散し約15分間静置してから上澄みを除く操作を3回繰り返して、生成した固体を洗浄した。ついで、固体をロータリーエバポレーターに移して、溶媒を留去することにより、化合物(H1-TF)を得た。
【0228】
(製造例5)
化合物(H1-FP)の合成
【0229】
【化37】
【0230】
化合物(H1-TF)1.0部をジクロロメタン6.4部に溶解させ、そこへトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロリン酸カリウム0.60部、イオン交換水5.7部を加え、室温下1時間撹拌した。有機層をイオン交換水6部で5回洗浄し、これをロータリーエバポレーターに移して溶媒を留去することにより、化合物(H1-FP)1.2部を得た。得られた化合物(H1-FP)はH-NMR、19F-NMRにて同定した。
【0231】
H-NMR:d6-ジメチルスルホキシド,δ(ppm)8.7(1H,d),8.5(1H,d),8.4(2H,m),8.2(1H,d),8.1(1H,dd),8.0(1H,d),7.7~7.9(12H,m),7.6(2H,m),7.5(2H,d)
19F-NMR:d6-ジメチルスルホキシド,δ(ppm)-42.0(1F,d),-79.9(3F,s),-81.2(6F,s),-87.9(2F,d),-115.0~-116.2(6F,m)
【0232】
(製造例6)
化合物(H1-B)の合成
【0233】
【化38】
【0234】
製造例5において、「トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロリン酸カリウム0.60部」を「ナトリウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート0.93部」に変更したこと以外は、製造例5と同様にして化合物(H1-B)1.5部を得た。
得られた化合物(H1-B)はH-NMR、19F-NMRにて同定した。
【0235】
H-NMR:d6-ジメチルスルホキシド,δ(ppm)8.7(1H,d),8.5(1H,d),8.4(2H,m),8.2(1H,d),8.1(1H,dd),8.0(1H,d),7.7~7.9(12H,m),7.6(2H,m),7.5(2H,d)
19F-NMR:d6-ジメチルスルホキシド,δ(ppm)-132.1(8F,s),-161.8(4F,s),-166.0(8F,s)
【0236】
<ネガ型感光性樹脂組成物の調製>
(実施例1~2、比較例1~2)
表1に示す各成分を混合して溶解し、PTFEフィルター(孔径1μm、PALL社製)を用いて濾過を行い、各例のネガ型感光性樹脂組成物(固形分65質量%溶液)をそれぞれ調製した。
【0237】
【表1】
【0238】
表1中、各略号はそれぞれ以下の意味を有する。[ ]内の数値は、各成分の配合量(質量部;固形分換算)である。
(A)-1:下記一般式(A11)で表されるノボラック型エポキシ樹脂。商品名「JER157S70」、三菱ケミカル株式会社製。
【0239】
【化39】
【0240】
(A)-2:下記一般式(A21)で表されるビスフェノールA型エポキシ樹脂。商品名「EPICLON 1055」、DIC株式会社製。式(A21)中、nは、( )内の構造の繰り返し数である。
【0241】
【化40】
【0242】
(I)-1:上記の化合物(I0-46)。
(I)-2:上記の化合物(I0-45)。
【0243】
(I)-3:上記の化合物(H1-B)。すなわち、下記化学式(I1-1)で表されるカチオン重合開始剤。
(I)-4:上記の化合物(H1-FP)。すなわち、下記化学式(I2-1)で表されるカチオン重合開始剤。
【0244】
【化41】
【0245】
(I)-5:下記化学式(I3-1)で表されるカチオン重合開始剤。
【0246】
【化42】
【0247】
(S)-1:メトキシブチルアセテート
【0248】
<パターン形成(1)>
膜形成工程:
厚さ0.35mmのタンタル酸リチウム(LiTaO)基板上に、各例のネガ型感光性樹脂組成物をそれぞれ、スピンナーを用いて塗布し、ホットプレート上で、温度115℃で5分間のプレベーク(PAB)処理を行い、乾燥することにより、膜厚20μmの感光性樹脂膜を形成した。
【0249】
露光工程:
次に、前記感光性樹脂膜に対し、350mJ/cmの照射量でghi線を照射した。その後、90℃のホットプレート上で、15分間の露光後加熱を行った。
【0250】
現像工程:
次に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を用いて、180秒間の現像を行い、ネガ型パターンの形成を試みた。
【0251】
<パターン形成(2)>
膜形成工程:
厚さ0.35mmのニオブ酸リチウム(LiNbO)基板上に、各例のネガ型感光性樹脂組成物をそれぞれ、スピンナーを用いて塗布し、ホットプレート上で、温度115℃で5分間のプレベーク(PAB)処理を行い、乾燥することにより、膜厚20μmの感光性樹脂膜を形成した。
【0252】
露光工程:
次に、前記感光性樹脂膜に対し、フォトマスクを介して、ghiブロードバンドの露光機にてi線換算で350mJ/cmの露光を行った。
その後、90℃のホットプレート上で、15分間の露光後加熱を行った。
【0253】
現像工程:
次に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を用いて、30秒間の現像を行い、ネガ型パターンの形成を試みた。
【0254】
[マスク再現性]
上記のパターン形成(1)及びパターン形成(2)により、露光量350mJ/cmにて、ターゲットサイズをホール直径20μmとしたコンタクトホール(C/H)パターンの形成を行った。その結果は以下のとおりであった。
【0255】
パターン形成(1)の場合:タンタル酸リチウム(LiTaO)基板
実施例1:ホール直径19.418μmのC/Hパターンが形成された。
実施例2:ホール直径17.887μmのC/Hパターンが形成された。
比較例1:像が形成されなかった(解像不良)。
比較例2:像が形成されなかった(解像不良)。
【0256】
パターン形成(2)の場合:ニオブ酸リチウム(LiNbO)基板
実施例1:ホール直径20.356μmのC/Hパターンが形成された。
実施例2:ホール直径19.944μmのC/Hパターンが形成された。
比較例1:ホール直径17.540μmのC/Hパターンが形成された。
比較例2:ホール直径16.582μmのC/Hパターンが形成された。
【0257】
[限界解像性]
上記のパターン形成(1)及びパターン形成(2)における各露光工程で、露光量を250~600mJ/cmの範囲で50mJ/cmずつ変化させてC/Hパターンの形成を行い、各露光量で解像する最小のパターンの寸法を、走査型電子顕微鏡S-9380(日立ハイテクノロジー社製)を用いて求めた。
露光量350mJ/cmでの結果を以下に示した。
【0258】
パターン形成(1)の場合:タンタル酸リチウム(LiTaO)基板
実施例1:ホール直径10μmのC/Hパターンまでが形成された。
実施例2:ホール直径15μmのC/Hパターンまでが形成された。
比較例1:像が形成されなかった(解像不良)。
比較例2:ホール直径40μmのC/Hパターンまでが形成された。
【0259】
また、実施例1のネガ型感光性樹脂組成物については、露光量が350~450mJ/cmの範囲で、ホール直径10μmのC/Hパターンまでを形成することができた。
実施例2のネガ型感光性樹脂組成物については、露光量が300~400mJ/cmの範囲で、ホール直径15μmのC/Hパターンまでを形成することができた。
これより、実施例1及び2のネガ型感光性樹脂組成物は、露光余裕度に優れることが確認できる。
【0260】
パターン形成(2)の場合:ニオブ酸リチウム(LiNbO)基板
実施例2:ホール直径10μmのC/Hパターンまでが形成された。
比較例1:ホール直径20μmのC/Hパターンまでが形成された。
【0261】
また、実施例2のネガ型感光性樹脂組成物については、露光量が250~300mJ/cmの範囲で、ホール直径5μmのC/Hパターンまでを形成することができた。
これより、実施例2のネガ型感光性樹脂組成物は、解像性の点で特に優れることが確認できる。
【0262】
以上の評価結果より、本発明を適用した実施例1及び2のネガ型感光性樹脂組成物は、本発明の範囲外である比較例1及び2のネガ型感光性樹脂組成物に比べて、解像性がより高められていることが確認できる。