(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】整流装置
(51)【国際特許分類】
B62D 37/02 20060101AFI20241127BHJP
【FI】
B62D37/02
(21)【出願番号】P 2020128750
(22)【出願日】2020-07-30
【審査請求日】2023-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100100413
【氏名又は名称】渡部 温
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 直人
(72)【発明者】
【氏名】堂ヶ平 雄作
【審査官】西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0297634(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0342985(US,A1)
【文献】再公表特許第2011/126069(JP,A1)
【文献】特開2018-058488(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 35/00、37/02
H05H 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一部が車体から下方に突出した状態で配置された前輪を有する車両に設けられる整流装置であって、
前記前輪の前方側において前記車体から下方に突出したフラップと、
誘電体を挟んで配置された少なくとも一対の電極を有し、前記車体の下部であって前記前輪に対して車幅方向内側かつ前記車体の車幅方向の中心よりも前記前輪側に設けられ、気流を発生するプラズマアクチュエータと
を備え、
前記フラップの車幅方向内側の端は、前記プラズマアクチュエータよりも車幅方向外側に位置し、
前記プラズマアクチュエータは、前記フラップよりも車両後方側において、当該プラズマアクチュエータが発生する気流における速度が最大となる主流成分が車幅方向内側かつ車両後方側に向い、かつ前記主流成分が前記車体の下面に沿って進行するように、配置されることを特徴とする整流装置。
【請求項2】
前記フラップは、前記フラップの車幅方向内側の端が、前記前輪の車幅方向内側の端よりも車幅方向外側に位置し、かつ前記フラップの車幅方向外側の端が、前記前輪の車幅方向外側の端よりも車幅方向内側に位置するように配置されること
を特徴とする請求項1に記載の整流装置。
【請求項3】
前記プラズマアクチュエータは、車両の前後方向に分散して複数配置されること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の整流装置。
【請求項4】
複数の前記プラズマアクチュエータの少なくとも一部は、前記前輪の車軸よりも車両後方側に配置されること
を特徴とする請求項3に記載の整流装置。
【請求項5】
複数の前記プラズマアクチュエータのうち、最も車両前方側に配置される前記プラズマアクチュエータは、前記前輪の車両前方側の端よりも車両後方側であって、かつ前記前輪
の車軸よりも車両前方側に配置されること
を特徴とする請求項3又は請求項4に記載の整流装置。
【請求項6】
複数の前記プラズマアクチュエータは、車両前方側から車両後方側にかけて、車幅方向における位置が順次車幅方向内側に寄っていくように配置されること
を特徴とする請求項3から請求項5までのいずれか1項に記載の整流装置。
【請求項7】
複数の前記プラズマアクチュエータのうちの車幅方向の同じ側に配置されているものは、それぞれが発生する気流の前記主流成分の向きが互いに平行となるように配置されること
を特徴とする請求項3から請求項6までのいずれか1項に記載の整流装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車体下部と路面との間における気流を整流する整流装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば四輪の自動車においては、車体下部において車輪に衝突した気流が流れ場を乱すと、空気抵抗、空力騒音、空力振動などの悪化要因となることから、車輪周辺での気流の乱れを抑制することが要求される。
車輪周辺部の整流の関する従来技術として、例えば特許文献1には、ホイールハウスの前方において車体から下方に突出したフラップにより車輪への走行風の衝突を抑制し、車両全体としての抗力を低下させる整流装置が記載されている。
また、近年、積極的に気流を発生させる手段を用いて車体周辺の整流を行うことが提案されている。
例えば、特許文献2には、車両のフロントウインドウを払拭するワイパ装置のワイパアームに、気流を噴出するプラズマアクチュエータを設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012- 56499号公報
【文献】特開2019-111965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前輪の直前に設けられるフラップに衝突した気流は前輪を避けて 左右に分流し、比較的乱れが少なく、かつ、流速が速い状態で前輪の左右を車両後方側へ進行する。
一方、フラップの下方側において、車輪と直接衝突した気流は、比較的大きな乱れ(渦)を有する乱流となり、かつ、流速が遅い状態で車両の床下側を進行(以下、「緩行」)する。
ここで、フラップに衝突した気流と、フラップの下方で車輪と衝突した気流とが合流すると、フラップに衝突した気流が車輪に衝突した気流に巻き込まれ、乱流化するとともに流速が低下する。これによって、空気抵抗、空力振動、空力騒音が悪化してしまう。
上述した問題に鑑み、本発明の課題は、車体下部と路面との間の気流を適切に整流する整流装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下のような解決手段により、上述した課題を解決する。
本発明の第一の発明は、一部が車体から下方に突出した状態で配置された車輪を有する車両に設けられる整流装置であって、前記車輪の前方側において前記車体から下方に突出したフラップと、前記車体の下部であって前記車輪に対して車幅方向内側に設けられ、車幅方向内側かつ車両後方側へ、車両前後方向に対して斜行する気流を発生する気流発生部とを備えることを特徴とする整流装置である。
これによれば、車体下部と路面との間における上方の領域において、フラップに衝突して車幅方向内側に分離した比較的乱れが小さくかつ流速が速い気流を、車輪との衝突の影響を受けずさらに流速が速い車両中央側を流れる気流に合流させ、加速させて車両後方側へ排出することができる。
このため、フラップに衝突した気流が、下方側の領域で車輪に直接衝突した低速の乱流に巻き込まれることを抑制し、車両の空気抵抗、空力騒音、空力振動を改善することができる。
【0006】
本発明の第二の発明は、前記気流発生部が発生する気流において速度が最大となる主流成分は、前記車体の下面に沿って進行することを特徴とする第一の発明の整流装置である。
これによれば、気流発生部が発生する気流が車体の下面に沿って流れることにより、その下方を緩行する低速の乱流に巻き込まれることをより確実に抑制できる。
【0007】
本発明の第三の発明は、前記気流発生部は、車両の前後方向に分散して複数配置されることを特徴とする第一又は第二の発明の整流装置である。
これによれば、フラップとの衝突により車輪の車幅方向内側へ分離して拡散しながら流れる気流を確実に偏向させ、上述した効果を確保することができる。
【0008】
本発明の第四の発明は、前記気流発生部の少なくとも一部は、前記車輪の車軸よりも車両後方側に配置されることを特徴とする第一、第二又は第三の発明の整流装置である。
これによれば、車輪の後方側で拡散しながら進む気流を効果的に車両中央側に偏向させ、上述した効果を確実に得ることができる。
【0009】
本発明の第五の発明は、前記気流発生部は、誘電体を挟んで配置された少なくとも一対の電極及び前記電極に電圧を印加する電源を有するプラズマアクチュエータを有することを特徴とする第一、第二、第三又は第四の発明の整流装置である。
これによれば、可動部分を持たないシンプルな構成により、応答性よく気流を発生することができる。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明によれば、車体下部と路面との間の気流を適切に整流する整流装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明を適用した整流装置の第1実施形態を有する車両の車体前部の模式的側面視図である。
【
図2】第1実施形態の車両を下方側から見た状態を示す模式図である。
【
図3】第1実施形態の整流装置に設けられる2極式のプラズマアクチュエータの模式的断面図である。
【
図4】第1実施形態の整流装置におけるプラズマアクチュエータの制御システムの構成を示すブロック図である。
【
図5】本発明を適用した整流装置の第2実施形態を有する車両を下方側から見た状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
以下、本発明を適用した整流装置の第1実施形態について説明する。
第1実施形態の整流装置は、例えば、車室前方にエンジンルームが設けられる、いわゆる2ボックス又は3ボックスの車型を有する乗用車等の自動車(移動体)に設けられるものである。
図1は、第1実施形態の整流装置を有する車両の車体前部の模式的側面視図である。
車両1は、フロントシールド10、フロントピラー20、ルーフ30、フロントドア40、フード50、フェンダ60、バンパフェイス70、フロントコンビネーションランプ80、フラップ90等を有して構成されている。
【0013】
フロントシールド10は、車室前部に設けられたウインドウガラスである。
フロントシールド10は、ほぼ矩形状に形成されるとともに、上端部11が下端部12に対して車両後方側となるように後傾して配置されている。
フロントシールド10の側端部13は、フロントピラー20に沿って配置されている。
フロントシールド10は、車両前方側が凸となるように湾曲(ラウンド)して形成された2次曲面の合わせガラスである。
【0014】
フロントピラー(Aピラー)20は、フロントシールド10の側端部13に沿って延在する車体構造部材である。
フロントピラー20の後縁部は、フロントドア40上部のフロントドアガラスの周囲に形成されたサッシュ部と隣接して配置されている。
【0015】
ルーフ30は、車室の上面部を構成するパネル状の部分である。
ルーフ30は、フロントシールド10の上端部から車両後方側へ延在している。
フロントドア40は、車室前部の側面部に設けられた開閉扉である。
フロントドア40は、前端部に設けられた図示しないヒンジ回りに揺動して開閉する。
【0016】
フード50は、エンジンルームの上部を覆って設けられる外装部材であって、開閉式の蓋状体として構成されている。
フード50の後縁部51は、フロントシールド10の下端部12の前方側に、車両前後方向に間隔を隔てて配置されている。
後縁部51は、平面視において車両前方が凸となる曲線状に形成されている。
フード50の側縁部52は、フェンダ60の上面部61の車幅方向内側の端縁と、不可避的に設けられる隙間を介して隣接して配置されている。
【0017】
フェンダ60は、エンジンルームの側面部等を構成する車両の外装部材である。
フェンダ60は、上面部61、側面部62等を有して構成されている。
上面部61は、フード50の側縁部52の側端部と隣接する領域であって、フード50の表面部を形成する曲面を車幅方向外側に延長した曲面にほぼ沿って形成されている。
側面部62は、上面部61の車幅方向外側の端部近傍から、下方へ延びて形成されている。
また、側面部62には、前輪FWが収容されるホイールハウスの開口63が形成されている。
【0018】
バンパフェイス70は、車両前端部の下部に設けられる樹脂製の外装部材である。
バンパフェイス70は、フェンダ60における開口63の前方側に設けられている。
フロントコンビネーションランプ80は、前照灯、車幅灯、ターンシグナル灯などの各種灯火装置を、共通のハウジング内に収容しユニット化したものである。
フロントコンビネーションランプ80は、車両前端部においてフード50の下方側であってバンパフェイス70の上方側に配置されている。
【0019】
フラップ90は、車体下面における前輪FWの前方側の領域から下方に突出した板状の部材である。
フラップ90は、車両前方側から床下側に流入する走行風Wを左右に振り分けるよう整流し、前輪FWへの衝突を抑制する機能を有する。
【0020】
第1実施形態の整流装置は、以下説明するプラズマアクチュエータ100を有する。
図2は、第1実施形態の車両を下方側から見た状態を示す模式図である。
図2に示すように、車両1の車体下部には、複数のプラズマアクチュエータ100が設けられている。
プラズマアクチュエータ100は、電源装置から電力を供給されることにより、気流Fを発生する気流発生部である。
プラズマアクチュエータ100は、例えば、車体本体(例えば、フロントサイドフレームやフロアパネル等)又はこれに取り付けられる部品(アンダーカバー、サブフレーム等)のうち、車両下方側へ露出したものに貼付する構成とすることができる。
【0021】
プラズマアクチュエータ100は、車両1の下部における左右の前輪FWよりも車幅方向内側の領域に、車両前後方向に沿って複数(例えば、
図2の場合には3つ)が配列されている。
また、プラズマアクチュエータ100は、左右対称に配置されている。
各プラズマアクチュエータ100は、車両1の下面視において、車両1に対して後方側かつ車幅方向内側へ、車両前後方向及び車幅方向に対して斜行して進行する気流Fをそれぞれ発生する。
気流Fの流速が最大となる主流成分は、車両1の下面であるフロアパネルFPの下面に沿って進行する。
また、複数のプラズマアクチュエータ100のうち少なくとも一部は、前輪FWの車軸よりも車両後方側に配置されている。
図2に示す例においては、車両前方側から1列目のプラズマアクチュエータ100は、車両前後方向における位置が前輪FWの車軸(図示しないハブベアリングの中心軸)の直前に配置され、2列目、3列目のプラズマアクチュエータ100は車軸の後方側に配置されている。
【0022】
図3は、第1実施形態の整流装置に設けられる2極式のプラズマアクチュエータの模式的断面図である。
2極式のプラズマアクチュエータ100は、誘電体110、上部電極120、下部電極130、絶縁体140等を有して構成されている。
【0023】
誘電体110は、例えばポリテトラフルオロエチレンなどのフッ化炭素樹脂などからなるシート状の部材である。
上部電極120、下部電極130は、例えば銅などの金属薄膜からなる導電テープにより構成されている。
上部電極120は、誘電体110の表面側(車体等に取り付けた際、外部に露出する側)に貼付されている。
下部電極130は、誘電体110の裏面側に貼付されている。
上部電極120と下部電極130とは、誘電体110の面方向にオフセットして配置されている。
絶縁体140は、プラズマアクチュエータ100の基部となるシート状の部材であって、誘電体110の裏面側に、下部電極130を覆って設けられている。
【0024】
プラズマアクチュエータ100の上部電極120と下部電極130に、電源PSによって所定の波形を有する交流電圧を印加すると、電極間にプラズマ放電Pが発生する。
印加電圧は絶縁破壊が生じてプラズマ放電Pが発生する程度の高圧とする必要があり、例えば、1乃至10kV程度とすることができる。
また、印加電圧の周波数は、例えば、1乃至10kHz程度とすることができる。
このとき、プラズマアクチュエータ100の表面側の空気がプラズマ放電Pに誘引され、壁面噴流状の気流Fが発生する。
また、プラズマアクチュエータ100は、印加される交流電圧の波形を制御することにより、気流Fの方向を逆転することも可能となっている。
【0025】
第1実施形態の整流装置は、上述したプラズマアクチュエータ100に駆動電力を供給して気流Fを発生させ、車体下部と路面との間を流れる走行風、空気流の整流を行うため、以下説明する制御システムを備えている。
図4は、第1実施形態の整流装置におけるプラズマアクチュエータの制御システムの構成を示すブロック図である。
制御システムは、整流制御ユニット200、車速センサ210等を備えている。
整流制御ユニット200は、電源PSを制御してプラズマアクチュエータ100の作動、停止、及び、作動させる場合の強度(風量、風速)を制御するものである。
整流制御ユニット200は、例えば、CPU等の情報処理部、RAMやROM等の記憶部、入出力インターフェイス、及び、これらを接続するバス等を有するマイコンとして構成されている。
【0026】
車速センサ210は、車両1の走行速度を検出するものである。
車速センサ210は、前輪FW、後輪RWを回転可能に支持するハブベアリングハウジングに設けられ、車輪の回転速度に応じた車速信号を出力する。
【0027】
整流制御ユニット200は、車速センサ210が検出した車速が所定の閾値以上である場合に、プラズマアクチュエータ100を作動させて車両後方側かつ車幅方向内側へ進行(斜行)する気流Fを発生させる。
この気流Fは、車両1の床面(フロアパネルFP)に沿ってほぼ水平に進行する。
また、気流Fの強度は、車速センサ210が検出した車速の増加に応じて増加するよう設定される。
【0028】
以下、第1実施形態の効果について説明する。
図1、
図2に太線の矢印によって図示するように、車両1の前進走行時には、車両1の前方側から車体に対して相対的に後方側へ流れる気流(いわゆる走行風)が発生する。
車体の床下側(車体下部と路面との間)の前輪FW周辺部に流入した走行風Wのうち、比較的上方の領域でフラップ90に衝突する部分は、フラップ90において左右方向(車幅方向)に分離して空気流Wuとなり、前輪FWの左右側部を車両後方側へ流れる。
【0029】
一方、走行風Wが空気流Wuよりも下方側(路面側)の領域において、前輪FWの下部に直接衝突する部分は、左右方向に分離して空気流Wlとなり、前輪FWの左右側部を車両後方側に流れる。
この下方側の空気流Wlは、上方側の空気流Wuに対して、回転する前輪FWのタイヤやホイールと衝突するため、比較的乱れ(渦)が大きくかつ低速となる。
ここで、上方の空気流Wuが下方の空気流Wlと合流すると、速度が損なわれかつ乱れが発生するために、車両1の空気抵抗、空力騒音、空力振動が悪化してしまう。
【0030】
この点、第1実施形態によれば、プラズマアクチュエータ100が気流Fを発生(噴出)し、上方の空気流Wuのうち、前輪FWの車幅方向内側を流れる成分を、下方の空気流Wlに巻き込まれることを抑制して加速しつつ車幅方向中央側に偏向させることができる。
車幅方向中央側に誘導された空気流Wuは、前輪FWの影響が小さく比較的流速が速い車両中央部の空気流Wcに合流し、迅速に車体後方側へ排出される。
【0031】
以上説明したように、第1実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)車体下部と路面との間における上方の領域において、フラップ90に衝突して車幅方向内側に分離した比較的乱れが小さくかつ流速が速い空気流Wuを、プラズマアクチュエータ100が発生する気流Fで吹き流すことにより、前輪FWとの衝突の影響を受けずさらに流速が速い車両中央側を流れる空気流Wcに合流させ、加速させて車両後方側へ排出することができる。
このため、フラップ90に衝突した空気流Wuが、下方側の領域で前輪FWに直接衝突した低速の乱流を含む空気流Wlに巻き込まれることを抑制し、車両1の空気抵抗、空力騒音、空力振動を改善することができる。
(2)プラズマアクチュエータ100が発生する気流FがフロアパネルFPの下面に沿って流れることにより、その下方を緩行する低速の乱流を含む空気流Wlに巻き込まれることをより確実に抑制できる。
(3)プラズマアクチュエータ100を車両の前後方向に分散して複数配置することにより、フラップ90との衝突により前輪FWの車幅方向内側へ分離して拡散しながら流れる空気流Wuを確実に偏向させ、上述した効果を確保することができる。
(4)プラズマアクチュエータ100の少なくとも一部を、前輪FWの車軸の後方側に配置することにより、前輪FWの後方側で拡散しながら進む空気流Wuを効果的に車両中央側に偏向させ、上述した効果を確実に得ることができる。
(5)気流発生部としてプラズマアクチュエータ100を用いることにより、可動部分を持たないシンプルな構成により、応答性よく気流Fを発生させることができる。
【0032】
<第2実施形態>
次に、本発明を適用した整流装置の第2実施形態について説明する。
上述した第1実施形態と共通する箇所には同じ符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
図5は、第2実施形態の車両を下方側から見た状態を示す模式図である。
第2実施形態の整流装置は、車両前後方向に配列された複数のプラズマアクチュエータ100を、車両前方側から車両後方側にかけて、車幅方向における位置が順次内側に寄っていくよう、車両前後方向に対して傾斜した方向に沿って配列したものである。
以上説明した第2実施形態によれば、上述した第1実施形態の効果と同様の効果に加えて、車両前方側に配列されたプラズマアクチュエータ100が発生する気流により誘導された空気流を、その後方側に配列されたプラズマアクチュエータ100によってさらに加速することが可能となり、上述した効果をさらに促進することができる。
【0033】
(変形例)
本発明は、以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
(1)車両及び整流装置の構成は、上述した実施形態に限定されず、適宜変更することが可能である。
例えば、車両の車種や車形は実施形態に限定されず、適宜変更することができる。
(2)実施形態における気流発生部(プラズマアクチュエータ)の配置、個数は一例であって、適宜変更することができる。
(3)実施形態において、整流装置は前輪側に設けられているが、後輪側に設けてもよい。
(4)実施形態では、気流発生部としてプラズマアクチュエータを用いているが、プラズマアクチュエータ以外の手法により気流を発生させてもよい。
また、プラズマアクチュエータの構成も、実施形態のものに限定されず、適宜変更することができる。
(5)実施形態では、プラズマアクチュエータの電極間に交流電圧を印加しているが、これに代えて、直流電圧を印加する構成としてもよい。例えば、直流電圧を所定の周波数でパルス状に印加してもよい。また、直流電圧を印加する場合には、気流の発生方向を制御するため、極性をスイッチング可能とすることができる。
【符号の説明】
【0034】
1 車両 10 フロントシールド
11 上端部 12 下端部
13 側端部 20 フロントピラー
30 ルーフ 40 フロントドア
50 フード 51 後縁部
52 側縁部 60 フェンダ
61 上面部 62 側面部
63 開口 70 バンパフェイス
80 フロントコンビネーションランプ
90 フラップ FP フロアパネル
FW 前輪 RW 後輪
100 プラズマアクチュエータ 110 誘電体
120 上部電極 130 下部電極
140 絶縁体 PS 電源
200 整流制御ユニット 210 車速センサ
F 気流 P プラズマ放電
Wu 上方の空気流 Wl 下方の空気流
Wc 中央部の空気流