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特許7594381切開電極、外科用器具、および切開電極を製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】切開電極、外科用器具、および切開電極を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20241127BHJP
【FI】
A61B18/14
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020135169
(22)【出願日】2020-08-07
(65)【公開番号】P2021041152
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2023-01-30
(31)【優先権主張番号】19191757
(32)【優先日】2019-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】592245823
【氏名又は名称】エルベ エレクトロメディジン ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Erbe Elektromedizin GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス・ケルナー
【審査官】鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-007542(JP,A)
【文献】米国特許第04315444(US,A)
【文献】特開昭57-11030(JP,A)
【文献】特開平3-214744(JP,A)
【文献】特開2001-320152(JP,A)
【文献】特開2011-021246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用器具(11)用、特に融合切開器具用の切開電極(23)を製造する方法であって、
材料ブランク(29)を設けるステップと、
前記材料ブランク(29)に配置され、前記材料ブランク(29)を一時的なハンドリングにのみ役立つ第1部分(31)と第2部分(32)とに分離する定格破断位置(30)を設けるステップと、
前記定格破断位置(30)が設けられた前記材料ブランク(29)を、前記第1部分(31)を接触保持し、かつ前記第2部分の周りに、前記定格破断位置(30)で面一に終端する中空スペース(40)を画定する彫込部を有する金型(37)に挿入するステップと、
前記第2部分(32)を取り囲むプラスチック本体(42)を形成するプラスチックを前記金型(37)に注入するステップと、
前記金型(37)を開き、前記材料ブランク(29)が保持された前記プラスチック本体(42)を取り外すステップと、
前記定格破断位置(30)に沿って、前記第1部分(31)を前記第2部分(32)から折り取るステップとを含み、
前記第1部分(31)には、前記材料ブランク(29)を前記金型(37)内の正しい位置に位置決めするための少なくとも1つの位置決め孔(35、36)が設けられる、
方法。
【請求項2】
前記第1部分(31)は、前記第2部分(32)と少なくとも同じ大きさである、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金型(37)に挿入するステップの前に、前記材料ブランク(29)には、電気接続導体(43)が設けられる
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記定格破断位置は、材料厚さの薄い線状の領域として構成される
請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記材料厚さの薄い領域は、前記材料ブランク(29)の少なくとも一方の平坦面に配置される少なくとも1つの溝(33、34)によって形成される
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記溝(33、34)は、エッチング工程によって形成される
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法により製造される切開電極であって、
覆われずに残る破断エッジ(44)を有する電極(26)が埋め込まれるプラスチック本体(42)を備える
切開電極。
【請求項8】
前記プラスチック本体(42)は、可撓性プラスチック、特に弾性プラスチック、特にシリコーンからなる
請求項7に記載の切開電極。
【請求項9】
前記電極(26)は、均一な一定の厚さを有し、前記破断エッジ(44)に隣接してテーパー部分(45)が形成されるように前記破断エッジ(44)のすぐ近くの厚さが薄くなっている
請求項7または8に記載の切開電極。
【請求項10】
前記プラスチック本体(42)は、前記テーパー部分(45)の手前まで延在する
請求項9に記載の切開電極。
【請求項11】
前記プラスチック本体(42)は、前記テーパー部分(45)を越えて延在する
請求項9に記載の切開電極。
【請求項12】
前記切開電極(23)は、プラスチックが浸透する孔(41)を有する
請求項7~11のいずれか1項に記載の切開電極。
【請求項13】
前記破断エッジ(44)の幅は、前記電極(26)の厚さより小さく、好ましくは、前記電極(26)の厚さの半分以下である
請求項7~12のいずれか1項に記載の切開電極。
【請求項14】
請求項7~13のいずれか1項に記載の切開電極(23)を備える器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外科用器具用、特に融合切開器具用の切開電極を製造する方法と、その方法によって製造された、切開電極と、それぞれの切開電極を備える外科用器具とに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、血管をシールおよび切断するための、すなわち組織の融合および切開のための外科用器具が開示されており、組織シールも組織切開も電気的に行われる。2つの顎部材のフランジ間に挟まれた組織に電流を流すことで組織を加熱して凝固させる、フランジに規定されたシール電極が、組織シールに役立つ。このようにして、器具で挟んだ血管を閉じることができる。これにより、顎部材の一方に収容された切開電極は、血管切開に役立つ。切開電極は、切開電極の狭い面と、平坦面の一部だけがアクセス可能であるように、実施形態に応じて深さの異なる絶縁材に埋め込むことができる。
【0003】
特許文献2には、メスのような電気外科用器具が示されており、平坦かつヘラ状の電極の2つの平坦面には、厚い絶縁被膜が設けられる。この被膜は、狭い面も覆うが比較的薄い。したがって、器具からの無線周波数電流は、主に、器具の端を流れる。
【0004】
このような器具は、特許文献3からも知られている。その器具は、切開電極が設けられた上顎部材内に絶縁本体を備え、絶縁本体は、対向する顎部材のカウンタ支持部に向かって位置合わせされた狭壁部を中央に含む。切開電極は、この壁部の狭い面に埋め込まれる。
【0005】
切開電極を有する絶縁本体の構成も、基本的に、特許文献4から明らかである。切開電極は、異なるオーム抵抗を有する複数の狭い帯状金属部分によって形成される。
【0006】
さらなる先行技術が、特許文献5によって形成される。この明細書では、切開電極の平坦面を覆い、切開電極の狭い面を覆わずに残す2つの絶縁要素間に、切開電極を支持することが提案されている。
【0007】
外科用器具に見られる傾向はフィリグリーであるが、非常に強力で、信頼性のある手術器具である。このような器具は、短時間にできるだけ正確に切断を行わなければならない。これは、同時に組織凝固を行うことができるように、できるだけ低い電流で行う。特に、凝固電極および切開電極に同一の発電機から限られた電力が同時に供給される場合、省エネ削減を実現することが、ある程度重要になり得る。
【0008】
これにより、切開電極およびその絶縁材の形状が決め手となることが分かった。しかしながら、対応する切開電極は、製造するのが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許第8470901号明細書
【文献】欧州特許第0852480号明細書
【文献】欧州特許出願公開第3132765号明細書
【文献】米国特許出願公開第2016/0249975号明細書
【文献】米国特許第8394094号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
それらを起点とし、本発明の目的は、切開電極を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、請求項1に記載の方法で解決される。
【0012】
本発明の方法は、導電性材料の平坦な材料ブランク、好ましくは、次の電極を形成する部分と、ハンドリングにのみに役立つ部分とを含む金属板ブランクを提供することに基づく。材料ブランクには、材料ブランクを第1部分と第2部分とに分離する定格破断位置が設けられる。第1部分はハンドリングにのみ役立ち、第2部分は次の電極を形成する。材料ブランクは、例えば、薄い金属板であり、その厚さは、用途に応じて1/10mm~1/10mmの倍数の分数の範囲を有し得る。好ましい実施形態では、厚さは0.1mmである。金属は、鋼にすることができ、鋼は、延性のないこと、特に塑性変形可能でないことが好ましい。
【0013】
定格破断位置は、板金ブランクの厚さを薄くした線状ゾーンによって形成されることが好ましい。厚さの薄い部分は、材料ブランクの一方の平坦面に沿って、好ましくは一方の端から他方の端まで延在する、直線溝または円弧溝によって形成することができる。あるいは、さらに、材料ブランクの2つの対向する平坦面に配置され、かつ同じ位置および同じ経路を有する2つの切欠部または溝を設けることもできる。言いかえれば、それらは、互いに平行に方向付けられ、材料ブランクの平坦面に直交する領域を画定する。
【0014】
定格破断位置は、研削、フライス加工、エッチング、エンボス加工、ローラバニシング加工、または材料ブランクの厚さを局部的に薄くするのに適切な同様の方法によって、形成することができる。さらに、一連の穿孔もしくはスロット、または局部的な材料変更、例えば、局部的な材料脆化によって、定格破断位置を形成することも可能である。局部的な材料脆化は、例えば、局部的なレーザ焼入れによって、熱により引き起こすことができる。
【0015】
次のステップにおいて、定格破断位置を有する材料ブランクは、第2部分が金型の空洞または中空スペースに突出するように、第1部分を接触して取り囲む金型の彫込部に挿入される。これにより、金型は、定格破断位置が中空スペースの端に正確に位置するように構成されることが好ましい。次のステップでは、プラスチックが、第2部分の周りを流れて第2部分に設けられた穿孔に浸透し得るように、金型に注入される。このように、プラスチック本体と第2部分との間の形状嵌合が得られる。好ましい成形工程は、射出成形である。
【0016】
金型を開き、材料ブランクが保持されたプラスチック本体を取り外した後、例えば、手で、または鉗子もしくは別の適切なツールで、材料ブランクの第1部分を第2部分の定格破断位置で破断させる。プラスチック本体の縁に沿って、完成した切断エッジとして材料ブランクの第2部分が覆われずに残る破断エッジが形成される。
【0017】
したがって、切断エッジは破断のため粗く、後処理を必要としない。後の処理ステップによるプラスチック本体の損傷または応力が最小となる。切開電極の金属板は、プラスチック本体内に対称的に配置されることが好ましい。
【0018】
本方法は、切開電極の平坦面の複数の部分が覆われずに残らなければならないという必要性はなく、導電性を有し、ほぼ線状で、金属であることが好ましい、1つまたは複数の部品からなる形態で構成され得る切断エッジを、プラスチック本体に直接生成することを可能にする。第1部分の分離には、表面領域が把持具、鉗子などでアクセス可能である必要はない。切断エッジは、プラスチック本体と面一に終端するか、プラスチック本体を越えて極めてわずかに突出することができ、またはプラスチック本体の隣接した表面のやや下方で終端することもできる。したがって、製造は単純であり、工程に信頼性のある方法で高品質を可能にし、切開電極の狭い破断エッジへの電流を制限することにより、最も高い切断品質を生み出すことができる。これにより、切開電極は、金属または導電性セラミックからなることができる。本発明の方法は、電極の両側のプラスチック壁が同じ厚さを有するように電極がプラスチック本体内の中央に埋め込まれている切開電極の特に精密な製造を可能にする。
【0019】
材料ブランクの第1部分が第2部分と少なくとも同じ大きさである場合、製造中のハンドリング、および次の、プラスチック本体でオーバーモールドされた残りの第2部分からの第1部分の分離は、非常に容易にかつ手で行うことができる。
【0020】
第1部分が、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つのピンによって金型内の正しい位置に位置決めされる場合、金型内への材料ブランクの特に信頼性のある位置決めが得られる。
【0021】
定格破断位置は、材料厚さの薄い狭い帯状、すなわち線状の領域として構成されることが好ましい。これは、材料ブランクの片側または両側を、研削、ローラバニシング加工もしくはエッチングによって、または他の方法で形成することができる。その材料厚さの薄い領域は、溝になり得る。溝は、円形、矩形、台形、三角形または円弧状の断面を有することができる。その形状とは無関係に、溝は、材料ブランクの厚さの好ましくは少なくとも3分の1、さらに好ましくは半分の深さである。溝の深さおよび材料ブランクの厚さは、材料厚さの一方の平坦面に直交して測定されなければならない。溝が両側から材料ブランクに挿入される場合、それらの深さは、材料ブランクの厚さの1/6~1/4であることが好ましい。
【0022】
上述した本発明の方法で作られる切開電極は、材料ブランクの第2部分から現れる電極が埋め込まれているプラスチック本体を備える。切開電極は、電気切断エッジを形成する覆われていない破断エッジを備える。
【0023】
プラスチック本体は、可撓性プラスチック、特に、例えばシリコーンなどの弾性プラスチックから、または、シリコーンのようなプラスチックもしくはエラストマーなどからなることが好ましい。
【0024】
電極は、均一な一定の厚さを有し、破断エッジに隣接してテーパーゾーンが形成されるように破断エッジのすぐ近くの厚さが薄くなり得ることが好ましい。このテーパーゾーンは、迅速かつ適切な切断が実現され得るように切断エッジにおける電流集中に寄与する。
【0025】
プラスチック本体は、好ましくは、電極の覆われていない破断面が切開電極の断面より大きくないように、好ましくは、少なくともテーパーゾーンの手前まで延在し、さらに好ましくは、テーパーゾーン内、またはテーパーゾーンを越えて延在する。これは、電極の側面が、破断エッジの手前までプラスチックで覆われることが好ましいことを意味する。
【0026】
プラスチック本体は、破断エッジの両側に表面を有し、その幅は、電極の厚さ(幅)の2倍よりも小さいことが好ましい。これにより、組織挫傷および機械的分離が回避され、確実に、所望の切断が完全にまたは主に電気的だが機械的ではなく行われる。
【0027】
本発明の好ましい実施形態のさらなる詳細は、図面、明細書または特許請求の範囲から生じる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、例示的構成の外科用器具の簡略化された斜視図である。
図2図2は、図1による器具で支持されたツールの簡略化された垂直切断図である。
図3図3は、図2によるツールの切開電極の簡略化された斜視図である。
図4図4は、切開電極を製造するための材料ブランクの側面図である。
図5図5は、材料ブランクを備えた金型の、金型の分離面に直交して切断された分解図である。
図6図6は、定格破断位置の領域における材料ブランクの部分切断図である。
図7図7は、定格破断位置の領域における材料ブランクの別の実施形態の部分切断図である。
図8図8は、切開電極を製造するためのプラスチック本体が設けられた材料ブランクである。
図9図9は、第1実施形態における切開電極の垂直部分切断図である。
図10図10は、変更形態における切開電極の図9に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、特に患者を腹腔鏡処置するための外科用器具11を示す。器具11は、ハンドル13およびハンドレバー14が設けられた筐体12を備える。ツール17は、筐体12から遠ざかるように延在するシャンク15の遠位端16で支持される。ツールは、第1顎部材18および第2顎部材19を含み、それらの少なくとも一方は、組織を顎部材間に挟むことができるように、ハンドレバー14を作動させることによって他方に向かって、および他方から遠ざかるように可動である。
【0030】
顎部材18、19は、組織シールおよび/または組織切開のために構成される鉗子のようなツール17を形成する。このために、顎部材18、19は、電圧源の異なる極に接続することができるため、例えば、特許文献3から一般に知られているように、その脚部間に凝固ギャップ20、21を画定することができる。これらの凝固ギャップ20と21との間に、好ましくは弾性を有するカウンタ支持部22が配置され、対向する顎部材19内に、切開電極23が配置される。切開電極23は、取付部またはベース部24および壁部25を含み、両者はプラスチック、好ましくは弾性プラスチックからなり、好ましくは金属からなる電極26が、壁部25に埋め込まれ、該当する場合は、少なくとも部分的にベース部24内にも延在する。表面側27では、電極26の狭いエッジ28だけが覆われずに残る。それを除けば、電極26は、電気的に絶縁されるように壁部25およびベース部24に埋め込まれる。
【0031】
ツール17は、また、別の器具、例えば、内視鏡的な方法で使用することができる器具、または、観血手術用途に構成された器具の一部にもなり得る。
【0032】
切開電極23の製造は、以下のとおりである。
【0033】
図4に示すように、製造は、材料ブランク29で始める。材料ブランク29は、適切な電極材料、例えば鋼合金、チタン合金から、または導電性セラミックからなる。材料ブランク29は、ばね弾性材料ではあるが、著しい塑性変形性をもたらさないばね弾性材料からなることが好ましい。特に、先の塑性変形を伴わずに破断点に達する材料が好ましい。
【0034】
材料ブランク29には、材料ブランク29の第1部分31を第2部分32から分離する、好ましくは線状の定格破断位置30が設けられる。第2部分32は次の電極26を形成し、第1部分31は一時的なハンドリングにのみ役立つ。定格破断位置30は、例えば、図7から明らかなように材料ブランク29に製造された溝33による、材料ブランク29の材料の線状脆弱部である。材料ブランク29の一方の平坦面にのみ設けられる1つの溝33の代わりに、図6に示すように、互いに反対向きの材料ブランク29の平坦面に互いに平行に設けられる2つの溝33、34によって、定格破断位置30を形成することもできる。これにより、2つの溝33、34は、同じ経路に沿って延在し、同じ位置に配置される。
【0035】
1つの溝33のみが設けられるか、2つの溝33、34が設けられるかにかかわらず、溝は、任意の適切な方法、例えば、研削、フライス加工、エンボス加工、ローラバニシング加工、またはエッチングによって製造することができる。溝33、34の断面は、選択された方法と、円形、角のある形、三角形、四角形もしくは台形のような、または定義されていない形の所望のエッジ形状とに応じて、特にエッチング法によって形成することができる。しかしながら、溝の深さおよび幅もエッチング法によって画定される。
【0036】
第1部分31には、例えば、位置決め孔35、36の形態の1以上の位置決め構造体を設けることができる。それらは、例えば、図5から明らかなように、2つの金型半体38、39を有する金型37内に材料ブランク29を位置決めするのに役立ち得る。
【0037】
金型半体38、39にはそれぞれ彫込部が設けられ、彫込部は、金型37が閉じて、2つの金型半体38、39が第1部分31で二次元的に当接する場合に、材料ブランク29が第1部分31で保持されるような形状および深さで材料ブランクの第1部分31の領域に構成される。特に、第1部分31を保持する金型半体38、39の部位は、定格破断位置30で略面一に終端する。金型37が閉じると、第2部分32が片持ち梁状に延在する中空スペース40が、第2部分32の周りに形成される。しかしながら、この中空スペース40は、定格破断位置30で面一に終端する。
【0038】
金型37を閉じて切開電極23を製造するために、部分32は、適切なプラスチック、例えばシリコーンで充填され、これにより、そのプラスチックは、プラスチックを材料ブランクに形状嵌合固定するために第2部分32に構成され得る孔41を通過することもできる。孔の形状は、丸く、または角のあるものにすることができる。
【0039】
プラスチックが硬化し、金型37を開いた後、プラスチック本体42が形成された材料ブランク29を、金型37から取り外すことができる。図8に示すように、ここで定格破断位置30は、壁部25の上端にすぐ隣接する。該当する場合、材料ブランク29の部分32に取り付けられたケーブル43が、プラスチック本体42から外に延在する。
【0040】
切開電極23を完成させるために、ここで、プラスチック本体42に対して矢印Pが示す方向に前後に第1部分31を動かすことによって、定格破断位置30で第1部分31が折れて第2部分から取れる。これにより、図9に示すように破断エッジ44が形成される。プラスチック本体に埋め込まれた第2部分32の厚さより小さい幅を破断エッジ44が有するように、テーパー部分45が上述した溝から形成される。第2部分32の厚さと同様に、破断エッジ44の幅は、図9において水平に、すなわち、いずれの場合も、第2部分32の平坦面に直交して測定される。
【0041】
壁部25は、その表面側27において破断エッジ44の両側に、平面的または丸みを帯びた表面部分46、47を有し、それらの幅は、いずれの場合も、第2部分32の厚さの好ましくは10倍以下、さらに好ましくは3倍以下または2倍以下である。
【0042】
壁部25は、図9に示すように、表面側でテーパー部分45にすぐ隣接し得るが、図10により、テーパー部分45もプラスチックで部分的または完全に覆うことができ、かつ破断エッジ44だけが覆われずに残るように、テーパー部分45内に延在することもできる。その際に、特に高い電流集中が得られる。
【0043】
破断エッジ44は、破断により粗くすることができ、後処理する必要はない。図8によれば、オーバーモールドされた第2部分32から第1部分31を折り取った後、切開電極23が完成し、図1による器具に取り付けることができる。破断エッジにおいて、粗さにより切開中に局所的な電流集中が生じ、切開を助ける。しかしながら、例えば、研磨、特に電解研磨によって、破断エッジを後処理することも可能である。
【0044】
図5および図8図10に関連して述べた詳細は、図6による材料ブランク29および図7による材料ブランク29に同様に当てはまる。
【0045】
本発明の方法は、外科用器具11用の切開電極を製造するのに役立ち、この方法により、プラスチック本体を切開電極23に取り付けた後に、切開電極23の断面を分離する力を加えずに済む。切開電極23を製造するために、製造は、定格破断位置30が設けられる材料ブランク29で始める。材料ブランク29は、その分離が、プラスチック本体でも伝え得るような特に非常に小さい、小さな力で可能であるように寸法付けられる。定格破断位置30は、材料ブランク29を、もっぱらハンドリングおよび金型37への材料ブランク29の位置決めに役立つ第1部分31と、金型中空スペース40内に自己支持的に突出し、プラスチックでオーバーモールドされる第2部分32とに分離する。
【0046】
取り外した後、第1部分31は、切開電極23から容易に折り取ることができる。形成された破断エッジ44は、理想的な切断エッジを形成する。
【符号の説明】
【0047】
11 器具
12 筐体
13 ハンドル
14 ハンドレバー
15 シャンク
16 シャンク15の遠位端
17 ツール
18 顎部材
19 顎部材
20 凝固ギャップ
21 凝固ギャップ
22 カウンタ支持部
23 切開電極
24 ベース部
25 壁部
26 電極
27 表面側
28 切断エッジ
29 材料ブランク
30 定格破断位置
31 第1部分
32 第2部分
33 溝
34 溝
35 位置決め孔
36 位置決め孔
37 金型
38 金型半体
39 金型半体
40 中空スペース
41 孔
42 プラスチック本体
43 ケーブル
44 破断エッジ
45 テーパー部分
46 表面部分
47 表面部分
P 矢印
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10