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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】自動通報機能を有する車両
(51)【国際特許分類】
   G08B 25/08 20060101AFI20241127BHJP
   G08B 25/10 20060101ALI20241127BHJP
   G08B 25/04 20060101ALI20241127BHJP
   G08B 21/02 20060101ALI20241127BHJP
   B60R 21/00 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
G08B25/08 A
G08B25/10 D
G08B25/04 K
G08B21/02
B60R21/00 340
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020145306
(22)【出願日】2020-08-31
(65)【公開番号】P2022040539
(43)【公開日】2022-03-11
【審査請求日】2023-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【弁理士】
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 正広
(74)【代理人】
【識別番号】100182051
【弁理士】
【氏名又は名称】松川 直宏
(74)【代理人】
【識別番号】100179280
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 育郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180747
【弁理士】
【氏名又は名称】小森 剛彦
(72)【発明者】
【氏名】長澤 勇
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-227369(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0252431(US,A1)
【文献】特開2002-279567(JP,A)
【文献】特開2015-169985(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 21/00-31/00
B60R 21/00-21/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の緊急時の緊急情報を、緊急出動を要請するためのサーバ装置へ送信する第一通信装置と、
前記車両の緊急の際に前記第一通信装置を用いて前記サーバ装置へ緊急情報を自動的に送信する制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記緊急情報を送信する際に、
前記車両に乗車している複数の乗員についての複数の携帯端末が登録されている場合、複数の乗員についての傷害の可能性順を判断し、
判断した可能性順にて、複数の乗員の携帯端末へ順番に試験通信を行い、
前記車両に乗車している乗員の携帯端末の連絡先情報を、前記第一通信装置から前記サーバ装置へ送信する、
自動通報機能を有する車両。
【請求項2】
前記第一通信装置とは別に、前記車両に存在する携帯端末を認証して通信するために前記車両に設けられる第二通信装置、を有し、
前記制御部は、前記第二通信装置により認証されている携帯端末の連絡先情報を、前記第一通信装置から前記サーバ装置へ送信する、
請求項1記載の、自動通報機能を有する車両。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第二通信装置に認証情報が登録されている携帯端末について、前記車両の緊急事態が発生した後に前記第二通信装置により通信可能であるか否かを確認し、
通信可能と確認された携帯端末の連絡先情報を、前記第一通信装置から前記サーバ装置へ送信する、
請求項2記載の、自動通報機能を有する車両。
【請求項4】
前記制御部は、前記車両に乗車している乗員の携帯端末について順番に通信し、通信に対する応答結果を、前記第一通信装置から前記サーバ装置へ送信する、
請求項2または3記載の、自動通報機能を有する車両。
【請求項5】
前記制御部は、
前記連絡先情報として、前記車両に乗車している乗員の携帯端末を、傷害の可能性が高い乗員の順番にソートしたリスト情報であって、推定される傷害の可能性の内容や程度の情報、または試験通信に対する応答の有無の情報、を含むものを送信する、
請求項1から4のいずれか一項記載の、自動通報機能を有する車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動通報機能を有する車両に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車といった車両では、事故が発生した場合に、発生した事故を緊急通報することが考えられる。たとえば自動車では、自動緊急通報システムが実用化されている。自動緊急通報システムでは、事故に遭った自動車は、自動車に設けられる自動通報装置を用いて、事故時の乗員保護装置の動作状態、位置、事故での衝撃の入力方向および強さといった事故時情報を、コールセンタのサーバ装置へ送信する(特許文献1)。コールセンタではサーバ装置が受信した事故時情報を確認し、ドクターヘリや救急の出動部隊に対して出動を要請する。これにより、ドクターヘリや救急車が出動するまでのリードタイムを短縮できる。事故にあった人を救うことができる可能性が高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-216588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このように事故に遭った自動車から自動車の事故に関する事故時情報を送信したとしても、救護にとって必ずしも十分なものとはならない。
たとえば、事故による乗員の怪我の状態が、通常よりも悪い可能性がある。
また、自動車の事故に対する乗員の保護は、必ずしも常に類型的となるものでもない。正面衝突であっても、その入力位置が左右へずれるだけで、衝撃に対する自動車の保護は変化する。
このため、サーバ装置を管理するコールセンタでは、事故に遭った自動車に対して通話して、自動車の乗員の状態を電話などにより直接に確認をすることが考えられる。電話での通話の状態や応答の有無により、コールセンタの職員は、乗員の状態を把握することができる。
その一方で、事故に遭った自動車の乗員は、事故直後に自動車から直ちに避難するような状況に置かれる可能性がある。事故により車両火災などが発生する可能性がある場合、乗員は、車外へ直ちに出て、自動車から離れるように避難する必要がある。コールセンタの職員は、事故に遭った自動車に対して通話しても、このように避難している乗員についてその状態を正しく把握できなくなる。
【0005】
このように車両の自動緊急通報システムでは、乗員の救急のために改善が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る自動通報機能を有する車両は、車両の緊急時の緊急情報を、緊急出動を要請するためのサーバ装置へ送信する第一通信装置と、前記車両の緊急の際に前記第一通信装置を用いて前記サーバ装置へ緊急情報を自動的に送信する制御部と、を有し、前記制御部は、前記緊急情報を送信する際に、前記車両に乗車している複数の乗員についての複数の携帯端末が登録されている場合、複数の乗員についての傷害の可能性順を判断し、判断した可能性順にて、複数の乗員の携帯端末へ順番に試験通信を行い、前記車両に乗車している乗員の携帯端末の連絡先情報を、前記第一通信装置から前記サーバ装置へ送信する、
自動通報機能を有する車両。
【0007】
好適には、前記第一通信装置とは別に、前記車両に存在する携帯端末を認証して通信するために前記車両に設けられる第二通信装置、を有し、前記制御部は、前記第二通信装置により認証されている携帯端末の連絡先情報を、前記第一通信装置から前記サーバ装置へ送信する、とよい。
【0008】
好適には、前記制御部は、前記第二通信装置に認証情報が登録されている携帯端末について、前記車両の緊急事態が発生した後に前記第二通信装置により通信可能であるか否かを確認し、通信可能と確認された携帯端末の連絡先情報を、前記第一通信装置から前記サーバ装置へ送信する、とよい。
【0009】
好適には、前記制御部は、前記車両に乗車している乗員の携帯端末について順番に通信し、通信に対する応答結果を、前記第一通信装置から前記サーバ装置へ送信する、とよい。
【0010】
好適には、前記制御部は、前記連絡先情報として、前記車両に乗車している乗員の携帯端末を、傷害の可能性が高い乗員の順番にソートしたリスト情報であって、推定される傷害の可能性の内容や程度の情報、または試験通信に対する応答の有無の情報、を含むものを送信する、とよい。

【発明の効果】
【0011】
本発明では、車両の緊急の際に第一通信装置を用いてサーバ装置へ緊急情報を自動的に送信する。そして、緊急情報には、車両の事故についての事故時情報とともに、車両に乗車している乗員の携帯端末自体の連絡先情報、例えば乗員の携帯端末自体の電話番号が含まれる。これにより、コールセンタの職員などは、サーバ装置が受信した緊急情報に含まれる乗員の携帯端末の連絡先情報に基づいて、事故に遭った車両の乗員と連絡をとることができる。コールセンタの職員などは、乗員の安否、傷害の状態、などについて直接に確認することができる。また、連絡に対して応じていない乗員については、重度の傷害が発生している可能性があることを推定できる。
しかも、本発明においてコールセンタの職員などは、自動車の第一通信装置に対して連絡をするのではなく、乗員の携帯端末に対して連絡をとる。このため、乗員が、緊急避難などのために事故に遭った車両から外へ脱出しているとしても、その乗員と連絡をとることができる。また、現場に急行した救急隊員は、携帯電話の連絡先情報に基づいて、反応がない乗員についてもその乗員を特定することができる。また、第一通信装置による緊急情報に乗員の携帯端末自体の連絡先情報が含まれているため、乗員が乗車していた車両などを特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の第一実施形態に係る自動緊急通報システムの一例の説明図である。
図2図2は、図1において事故といった緊急状態が生じ得る自動車の、自動通報装置として機能可能な制御系の説明図である。
図3図3は、図1のコールセンタで使用されるサーバ装置の説明図である。
図4図4は、図1の出動部隊で使用されるクライアント端末の説明図である。
図5図5は、図1の自動緊急通報システムにおいて、事故に遭った自動車がサーバ装置へ直接に自動緊急通報する場合での処理の流れを示すシーケンスチャートである。
図6図6は、本発明の第二実施形態に係る自動緊急通報システムにおける図5のステップST14の端末情報収集処理の流れを示すシーケンスチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0014】
[第一実施形態]
図1は、本発明の第一実施形態に係る自動緊急通報システム1の一例の説明図である。
図1の自動緊急通報システム1は、自動車10などによる道路の事故を管理する機関のコールセンタで使用するサーバ装置2、消防などの救命出動部隊で使用するクライアント端末3、複数の自動車10に設けられる自動通報装置4、および、これらに通信回線を提供する無線通信ネットワーク5、を有する。無線通信ネットワーク5は、自動通報装置4などの無線端末と通信するためにたとえば道路に沿って地域に分散して設けられる基地局6、複数の基地局6を接続する通信網7、を有する。基地局6は、通信可能なゾーン内の複数の無線端末が接続されるアクセスポイントとして機能する。図1の通信網7には、コールセンタのサーバ装置2、救命出動部隊のクライアント端末3、が接続される。
【0015】
このような事故発生時の自動緊急通報システム1には、たとえばAACN(Advanced Automatic Collision Notification)がある。AACNでは、事故に遭った自動車10からコールセンタのサーバ装置2へ即時的に自動的な事故時情報が送信され、コールセンタの出動要請に基づいて救命出動部隊が救急車11やドクターヘリを出動させる。コールセンタは、事故の状況に応じた救命出動部隊を選択して出動要請を出すことができる。救急車11やドクターヘリは、事故の状況を把握している状態で、事故現場へ向かって出動できる。これにより、事故の当事者に対して、適切な救命処理を、短いリードタイムで即座的に提供することが可能となる。事故にあった人を救うことができる可能性が高くなる。
なお、図1の自動緊急通報システム1は、複数の組織が連携して使用する例を示しているが、自動車10などが通行可能な道路を含む地域を管理するたとえば警察、消防、役所、病院、医療機関、警備会社、管理会社などが単独で使用してもよい。
また、図1には、GNSS衛星110が図示されている。図1の各装置は、複数のGNSS衛星110の緯度、経度の位置情報および時刻情報を含む電波を受信することにより、自身の位置および時刻を得ることが可能である。そして、複数の装置は、互いに協働している複数のGNSS衛星110から電波を受信することにより、それぞれの現在時刻などを高い精度で一致させることができる。共通の時刻を使用することができる。
【0016】
ところで、このように事故に遭った自動車10から自動車10の事故に関する事故時情報を送信したとしても、救護にとって必ずしも十分なものとはならない。
たとえば、事故による乗員の怪我の状態が、自動車10の事故の状態から通常推定され得るものより悪くなっている可能性がある。
また、自動車10の事故に対する乗員の保護は、必ずしも常に類型的となるものではない。正面衝突であっても、その入力位置が自動車10の中央から左右へ少しずれるだけで、衝撃に対する自動車10の反応や、乗員の保護の程度が変化する。
このため、サーバ装置2を管理するコールセンタでは、事故に遭った自動車10の乗員と通話して、自動車10に乗っている乗員の状態を電話などにより直接に確認をすることが考えられる。電話での通話の状態や応答の有無により、コールセンタの職員は、乗員の状態を把握することができる。
その一方で、事故に遭った自動車10の乗員は、事故直後に自動車10から直ちに避難するような状況に置かれる可能性がある。事故により自動車10火災などが発生する可能性がある場合、乗員は、車外へ直ちに出て、自動車10から離れるように避難する必要がある。その際、避難を開始する前にコールセンタから電話での呼び出しを行うことで、乗員が自動車10から離れる前に自身の携帯端末121の存在や、事故の衝撃で手元から離れた携帯端末121の位置を認識し、乗員が携帯端末121を確実に車外へ持ち出すことが期待できる。これにより、自動車10を通じて乗員の状態が認識できなくなっても、携帯端末121を通じてコールセンタは引き続き情報の取得が可能となる。
本実施形態は、乗員のコールセンタからの呼び出しに対する応答により、事故による乗員の傷害の程度をより正確に把握可能であると共に、乗員が自動車10から避難する場合に携帯端末121を自動車10に置き忘れることを防止し、乗員の自動車10からの避難後もコールセンタの情報の取得の両立を図るものである。
【0017】
図2は、図1において事故といった緊急状態が生じ得る自動車10の、自動通報装置4として機能可能な制御系20の説明図である。
図2の自動車10の制御系20は、複数の制御装置が、それぞれに組み込まれる制御ECU(Electronic Control Unit)により代表して示されている。制御装置は、制御ECUの他に、たとえば制御プログラムおよびデータを記録するメモリ、制御対象物またはその状態検出装置と接続される入出力ポート、時間や時刻を計測するタイマ、およびこれらが接続される内部バス、を有してよい。
図2に示される制御ECUは、具体的にはたとえば、駆動ECU21、操舵ECU22、制動ECU23、走行制御ECU24、運転操作ECU25、検出ECU26、外通信ECU27、内通信ECU28、UI操作ECU29、乗員保護ECU30、である。自動車10の制御系20は、図示しない他の制御ECUを備えてよい。
【0018】
複数の制御ECUは、自動車10で採用されるたとえばCAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)といった車ネットワーク36に接続される。車ネットワーク36は、複数の制御ECUを接続可能な複数のバスケーブル37と、複数のバスケーブル37が接続される中継装置としてのセントラルゲートウェイ(CGW)38と、で構成されてよい。複数の制御ECUには、互いに異なる識別情報としてのIDが割り当てられる。制御ECUは、基本的に周期的に、他の制御ECUへデータを出力する。データには、出力元の制御ECUのIDと、出力先の制御ECUのIDとが付加される。他の制御ECUは、バスケーブル37を監視し、出力先のIDがたとえば自らのものである場合、データを取得し、データに基づく処理を実行する。セントラルゲートウェイ38は、接続されている複数のバスケーブル37それぞれを監視し、出力元の制御ECUとは異なるバスケーブル37に接続されている制御ECUを検出すると、そのバスケーブル37へデータを出力する。このようなセントラルゲートウェイ38の中継処理により、複数の制御ECUは、それぞれが接続されているバスケーブル37とは異なるバスケーブル37に接続されている他の制御ECUとの間でデータを入出力できる。
【0019】
UI操作ECU29には、たとえば乗車している乗員とのユーザインタフェース機器として、表示デバイス41、操作デバイス42、が接続される。表示デバイス41は、たとえば液晶デバイス、映像投影デバイス、でよい。操作デバイス42は、たとえばタッチパネル、キーボード、非接触操作検出デバイス、でよい。表示デバイス41および操作デバイス42は、たとえば乗員が乗る車室の内面に設置されてよい。UI操作ECU29は、車ネットワーク36からデータを取得し、表示デバイス41に表示する。UI操作ECU29は、操作デバイス42に対する操作入力を、車ネットワーク36へ出力する。また、UI操作ECU29は、操作入力に基づく処理を実行し、その処理結果をデータに含めてよい。UI操作ECU29は、たとえば、表示デバイス41に目的地などを設定するためのナビ画面を表示し、操作入力により選択した目的地までの経路を探索し、その経路データをデータに含めてよい。経路データには、現在地から目的地までの移動に使用する道路のたとえばレーンなどの属性情報が含まれてよい。
【0020】
運転操作ECU25には、乗員が自動車10の走行を制御するために操作部材として、たとえば不図示のハンドル、ブレーキペダル、アクセルペダル、シフトレバー、などが接続される。操作部材が操作されると、運転操作ECU25は、操作の有無、操作量などを含むデータを、車ネットワーク36へ出力する。また、運転操作ECU25は、操作部材に対する操作についての処理を実行し、その処理結果をデータに含めてよい。運転操作ECU25は、たとえば自動車10の進行方向に他の移動体や固定物がある状況においてアクセルペダルが操作された場合、その異常操作を判断し、その判断結果をデータに含めてよい。
【0021】
検出ECU26には、自動車10の走行状態を検出するための検出部材として、たとえば自動車10の速度を検出する速度センサ51、自動車10の加速度を検出する3軸加速度センサ52、自動車10の外側の周囲を撮像するたとえばステレオカメラ53、車室の乗員を撮像する車内カメラ54、車内外の音をデータ化するマイクロホン55、自動車10の位置を検出するGNSS受信機56、などが接続される。GNSS受信機56は、複数のGNSS衛星110からの電波を受信し、自車の現在位置である緯度、経度、および現在時刻を得る。検出ECU26は、検出部材から検出情報を取得し、検出情報を含むデータを、車ネットワーク36へ出力する。また、検出ECU26は、検出情報に基づく処理を実行し、その処理結果をデータに含めてよい。たとえば、検出ECU26は、3軸加速度センサ52が衝突検出の閾値を超える加速度を検出した場合、衝突検出を判断し、衝突検出結果をデータに含めてよい。検出ECU26は、ステレオカメラ53の画像に基づいて自車の周囲に存在する歩行者や他の自動車10、街路樹や電柱、ガードレールといった対象物を抽出し、対象物の種類や属性を判断し、画像中の対象物の位置や大きさや変化に応じて対象物の相対方向、相対距離、移動している場合は移動方向を推定し、これらの推定結果を含む他の対象物との衝突の予測情報をデータに含めて車ネットワーク36へ出力してよい。
【0022】
外通信ECU27には、外通信デバイス61、が接続される。外通信デバイス61は、自動車10の近くにある無線通信ネットワーク5の基地局6と無線通信する。外通信ECU27は、外通信デバイス61と基地局6との無線通信を使用して、無線通信ネットワーク5を通じてサーバ装置2との間でデータを送受する。これらにより、自動車10に設けられる外通信端末60が構成される。外通信端末60は、自動車10に設けられる送信装置であり、無線端末の一種である。
【0023】
内通信ECU28には、内通信デバイス71、が接続される。内通信デバイス71は、自動車10の車内にある乗員の携帯端末121と近距離の無線通信を実行する。内通信ECU28は、内通信デバイス71と乗員の携帯端末121との近距離の無線通信を使用して、車内の乗員の携帯端末121との間でデータを送受する。これらにより、自動車10において外通信端末60とは別に設けられる内通信端末70が構成される。なお、携帯端末121は、基本的に、近くにある無線通信ネットワーク5の基地局6と無線通信できるものでよい。
そして、このような車内の乗員の携帯端末121と通信する内通信端末70は、たとえばIEEE802.15.1などの規格に基づいて、携帯端末121と無線通信するものでよい。IEEE802.15.1などの規格では、携帯端末121についての認証情報は、最初の通信の際に内通信端末70に登録される。携帯端末121の認証情報は、内通信ECU28に接続されている不図示のメモリに記録されてよい。内通信端末70と携帯端末121とのその後の通信では、内通信ECU28は、予め登録されている認証情報により携帯端末121を自動的に認証して接続する。これにより、乗員の携帯端末121は、乗員が自動車10に乗り込むことにより、自動的に内通信端末70と接続され、内通信端末70と通信可能な状態となる。
【0024】
走行制御ECU24は、自動車10の走行を制御する。走行制御ECU24は、たとえば、車ネットワーク36を通じて外通信ECU27、検出ECU26、運転操作ECU25などからデータを取得し、自動車10の走行を自動運転または手動運転支援の制御を実行する。走行制御ECU24は、取得したデータに基づいて自動車10の走行を制御するための走行制御データを生成し、駆動ECU21、操舵ECU22、および制動ECU23へ出力する。駆動ECU21、操舵ECU22、および制動ECU23は、入力される走行制御データに基づいて、自動車10の走行を制御する。
【0025】
乗員保護ECU30には、複数のシートベルト装置、複数のエアバッグ装置、乗員保護メモリ87、が接続される。シートベルト装置には、たとえば、自動車10を運転する乗員についての運転側シートベルト装置81、自動車10を同乗する乗員についての同乗側シートベルト装置82、がある。エアバッグ装置には、たとえば、自動車10を運転する乗員の前で展開する運転側フロントエアバッグ装置83、自動車10を運転する乗員の外側で展開する運転側カーテンエアバッグ装置84、自動車10を同乗する乗員の前で展開する同乗側フロントエアバッグ装置85、自動車10を同乗する乗員の外側で展開する同乗側カーテンエアバッグ装置86、がある。これらにより、乗員保護装置80が構成される。
検出ECU26からの他の対象物との衝突の予測情報、または衝突検出結果の情報に基づき、乗員保護ECU30はシートベルト装置やエアバッグ装置を作動させる、または制御する。
乗員保護メモリ87は、コンピュータ読取可能な記録媒体であり、乗員保護ECU30が実行するプログラム、設定値、などが記録される。乗員保護メモリ87には、乗員保護ECU30による制御内容の情報が記録されてよい。乗員保護ECU30は、乗員保護メモリ87からプログラムを読み込んで実行する。これにより、乗員保護ECU30は、自動車10の乗員保護制御部として機能し得る。
自動車10の乗員保護制御部としての乗員保護ECU30は、衝突を検出すると、乗員の保護制御を実行する。そして、乗員保護ECU30は、自動車10の事故による緊急情報を、外通信端末60を用いて、緊急出動を要請するためのサーバ装置2へ自動的に送信する。これにより、乗員保護ECU30は、自動車10の緊急の際に第一通信装置としての外通信端末60を用いてサーバ装置2へ緊急情報を自動的に送信できる。
【0026】
図3は、図1のコールセンタで使用されるサーバ装置2の説明図である。
図3のサーバ装置2は、サーバ通信デバイス91、サーバメモリ92、サーバCPU93、サーバGNSS受信機94、サーバモニタ95、サーバ通話デバイス96、および、これらが接続されるサーババス97、を有する。
【0027】
サーバ通信デバイス91は、無線通信ネットワーク5の通信網7に接続される。サーバ通信デバイス91は、無線通信ネットワーク5を通じて、他の装置、たとえば自動車10の無線端末としての外通信端末60、クライアント端末3との間でデータを送受する。
サーバGNSS受信機94は、GNSS衛星110の電波を受信して、現在時刻を得る。サーバ装置2は、サーバGNSS受信機94の現在時刻により校正される不図示のサーバタイマを備えてよい。
サーバモニタ95は、サーバ装置2の情報を表示する。サーバモニタ95は、たとえば、事故などに遭った自動車10からサーバ装置2が受信する緊急情報を表示する。
サーバ通話デバイス96は、コールセンタの職員が、サーバ通信デバイス91を用いて接続されている携帯端末121のユーザとの間で通話するために使用される。
サーバメモリ92は、コンピュータ読取可能な記録媒体であり、サーバCPU93が実行するプログラム、設定値、などが記録される。サーバメモリ92には、サーバCPU93による制御内容の情報が記録されてよい。サーバCPU93は、サーバメモリ92からプログラムを読み込んで実行する。これにより、サーバ装置2には、サーバ制御部が実現される。サーバ制御部としてのサーバCPU93は、サーバ装置2の全体的な動作を管理する。
【0028】
図4は、図1の出動部隊で使用されるクライアント端末3の説明図である。
図4のクライアント端末3は、クライアント通信デバイス101、クライアントメモリ102、クライアントCPU103、クライアント報知デバイス104、クライアントGNSS受信機105、クライアントモニタ106、クライアント通話デバイス107、および、これらが接続されるクライアントバス108、を有する。
【0029】
クライアント通信デバイス101は、無線通信ネットワーク5の通信網7に接続される。クライアント通信デバイス101は、無線通信ネットワーク5を通じて、他の装置、たとえば自動車10の無線端末としての外通信デバイス61、サーバ装置2との間でデータを送受する。
クライアントGNSS受信機105は、GNSS衛星110の電波を受信して、現在時刻を得る。クライアント端末3は、クライアントGNSS受信機105の現在時刻により校正される不図示のサーバタイマを備えてよい。
クライアントモニタ106は、クライアント端末3の情報を表示する。クライアントモニタ106は、たとえば、サーバ装置2から受信する出動要請などを表示する。
クライアント報知デバイス104は、出動部隊の隊員に対して、出動要請音を出力する。
クライアント通話デバイス107は、出動部隊の隊員が、クライアント通信デバイス101を用いて接続されている携帯端末121のユーザとの間で通話するために使用される。
クライアントメモリ102は、コンピュータ読取可能な記録媒体であり、クライアントCPU103が実行するプログラム、設定値、などが記録される。クライアントメモリ102には、クライアントCPU103による制御内容の情報が記録されてよい。クライアントCPU103は、クライアントメモリ102からプログラムを読み込んで実行する。これにより、クライアント端末3には、クライアント制御部が実現される。クライアント制御部としてのクライアントCPU103は、クライアント端末3の全体的な動作を管理する。
【0030】
図5は、図1の自動緊急通報システム1において、事故に遭った自動車10がサーバ装置2へ直接に自動緊急通報する場合での一連の処理の流れを示すシーケンスチャートである。
図5には、自動車10の自動通報装置4としての制御系20、コールセンタのサーバ装置2、出動部隊のクライアント端末3、が示されている。時間は、上から下へ流れる。
【0031】
ステップST11において、自動車10の検出ECU26は、自動車10の衝突を検出する。検出ECU26は、たとえば3軸加速度センサ52により検出される加速度の大きさが、所定の閾値より大きい場合に衝突を検出する。衝突を検出しない場合、検出ECU26は、本処理を繰り返す。衝突を検出すると、検出ECU26は、衝突検出情報を乗員保護ECU30へ伝達し、処理をステップST4へ進める。なお、検出ECU26は、本処理を開始後一定時間経過後に、衝突が検出されない場合、本処理を終了してもよい。
なお、検出ECU26は、衝突を検出する前に、衝突が不可避であることを予測してよい。また、乗員保護ECU30は、衝突が不可避であることを予測したことに基づいて、衝突を検出する前に、乗員保護のための事前処理を実行してよい。乗員保護ECU30は、事前処理として、たとえば、シートベルト装置のシートベルトの余りを巻き取ってプリテンション状態としたり、その他の処理を実行したりしてもよい。たとば、乗員保護ECU30は、エアバッグ装置についてのプリ展開などを実行してよい。
ステップST12において、衝突を検出した自動車10の乗員保護ECU30は、衝突検出情報に基づいて、乗員の保護処理を実行する。乗員保護ECU30は、選択したシートベルト装置およびエアバッグ装置を動作させる。これにより、シートに着座する乗員は、シートに対して拘束され、シートから外れてしまう場合でもその衝撃をエアバッグにより吸収することができる。
なお、本実施形態では、乗員保護ECU30は、ステップST11で衝突を検出した後に乗員保護制御を実行しているが、衝突検出前の衝突予測に基づいて乗員保護処理を実施しても良い。
ステップST13において、自動車10の乗員保護ECU30は、事故情報を収集する。事故情報は、基本的に、上述したAACNで収集する情報でよい。AACNでは、事故時の乗員保護装置80の動作状態、位置、事故での衝撃の入力方向および強さといった事故時情報を収集する。
ステップST14において、自動車10の内通信ECU28は、端末情報を収集する。内通信ECU28は、たとえば内通信端末70に認証して登録されている携帯端末121の連絡先情報を、収集する。
ステップST15において、自動車10の外通信ECU27は、乗員保護ECU30により収集された事故時情報と内通信ECU28により収集された携帯端末121の連絡先情報とを、緊急情報として外通信端末60からサーバ装置2へ送信する。これにより、自動車10は、事故による緊急事態についての緊急情報を、自動的に通報する。
なお、事故時情報と携帯端末121の連絡先情報は、外通信ECU27により収集されてもよい。
また、事故時情報は、事故後の乗員の状態に関する情報、例えば事故後の車内の映像などであっても良い。
【0032】
ステップST16において、コールセンタのサーバ装置2のサーバ通信デバイス91は、事故に遭った自動車10から自動通報の情報を受信する。サーバ通信デバイス91が受信した自動通報の情報は、サーバメモリ92に記録されてよい。
ステップST17において、コールセンタのサーバ装置2のサーバCPU93は、サーバ通信デバイス91が受信した自動通報の情報をサーバモニタ95に表示する。コールセンタの職員は、サーバモニタ95に表示されている事故情報に基づいて、自動車10の事故の状況を確認できる。
【0033】
ステップST18において、コールセンタのサーバ装置2のサーバCPU93は、事故に遭った自動車10の乗員との通話を実行する。サーバCPU93は、サーバ通信デバイス91を用いて、たとえば自動車10の通信端末と通信して通話の回線を確立する。ステップST19において、自動車10の乗員保護ECU30は、音声通話に応答する。乗員保護ECU30は、サーバ装置2からの音声を不図示のスピーカから出力し、マイクロホン55で車内の音声を集めて、サーバ装置2へ送信する。これにより、コールセンタの職員は、事故後の車内に残っている乗員と音声により話をして、乗員の怪我の程度といった状態を把握することができる。
また、自動車10の通信端末において応答がない場合、サーバCPU93は、事故に遭った自動車10から受信した連絡先リストに基づいて、携帯端末121との通話を実現する。携帯端末121は、音声通話に応答する。これにより、コールセンタの職員は、事故後の車内に残っている乗員と音声により話をして、乗員の怪我の程度といった状態を把握することができる。
また、乗員が自動車10からの避難が必要な場合、避難を開始する前にコールセンタから電話での呼び出しを行うことで、乗員が自動車10から離れる前に自身の携帯端末121の存在や、事故の衝撃で手元から離れた携帯端末121の位置を認識し、乗員が携帯端末121を確実に車外へ持ち出すことが期待できる。これにより、乗員の自動車10からの避難により自動車10を通じて衝突後の乗員の状態が認識できなくなっても、携帯端末121を通じてコールセンタは引き続き情報の取得が可能となる。
そして、これらのいずれにおいても応答が得られない場合、サーバCPU93は、本処理を終了する。コールセンタの職員は、確認結果を、サーバ装置2に入力してよい。
このような処理により、サーバ制御部としてのサーバCPU93は、緊急情報に含まれている自動車10に乗車している乗員の携帯端末121自体の連絡先情報を用いて、携帯端末121のユーザである乗員の怪我の程度といった状態を把握することができる。
【0034】
ステップST20において、コールセンタのサーバ装置2のサーバCPU93は、状況を推定する。サーバCPU93は、サーバ通信デバイス91が受信した自動通報の情報と、コールセンタの職員の入力情報とに基づいて、状況を推定してよい。サーバCPU93は、過去の事故情報と照合して、人工知能的な処理により、状況を推定してよい。また、コールセンタの職員が、状況を総合的に勘案して状況を推定し、推定結果をサーバ装置2へ入力してもよい。
ステップST21において、コールセンタのサーバ装置2のサーバCPU93は、出動を手配する。サーバCPU93は、サーバ通信デバイス91を用いて、出動部隊のクライアント端末3へ出動要請を送信する。サーバCPU93は、コールセンタの職員の操作に基づいて、出動要請を送信してもよい。
【0035】
ステップST22において、出動部隊のクライアント端末3のクライアント通信デバイス101は、サーバ装置2から出動要請を受信する。クライアント通信デバイス101が受信した出動要請は、クライアントメモリ102に記録されてよい。
ステップST23において、出動部隊のクライアント端末3のクライアントCPU103は、出動を報知する。クライアントCPU103は、クライアント通信デバイス101が出動要請を受信したことに基づいて、クライアント報知デバイス104から出動要請音を出力する。また、クライアントCPU103は、クライアントモニタ106に、出動要請の画面を表示してよい。出動要請の画面には、自動通報の情報や、コールセンタの職員の入力情報が、表示されてよい。
ステップST24において、出動部隊の隊員は、出動する。出動部隊の隊員は、出動要請音および出動要請の画面により、自隊に向けて出動要請があったことを把握して、ドクターヘリや救急車11を用いて緊急出動することができる。
【0036】
以上のように、本実施形態では、自動車10の緊急の際に第一通信装置としての外通信端末60を用いてサーバ装置2へ緊急情報を自動的に送信する。そして、緊急情報には、自動車10の事故についての事故時情報とともに、自動車10に乗車している乗員の携帯端末121のたとえば電話番号やSMSアカウントといった連絡先情報が含まれる。これにより、コールセンタの職員などは、ステップST19において、自動車10ではなく、サーバ装置2が受信した緊急情報に含まれる乗員の携帯端末121の連絡先情報に基づいて、事故に遭った自動車10の乗員と連絡をとることが可能になる。コールセンタの職員などは、自動車10から外へ避難している乗員について、その安否、傷害の状態などについて推定することができる。また、連絡に対して応じていない乗員については、重度の傷害が発生している可能性があることを推定できる。
【0037】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る自動緊急通報システム1について説明する。本実施形態では、上述した実施形態と同様の構成については同一の符号を使用して図示および説明を省略する。以下の説明では、主に上述した実施形態との相違点について説明する。
図6は、本発明の第二実施形態に係る自動緊急通報システム1における図5のステップST14の端末情報収集処理の流れを示すシーケンスチャートである。
自動車10は、事故の際に緊急情報を送信するために、図6の処理を実行する。
【0038】
ステップST1において、内通信端末70の内通信ECU28は、内通信デバイス71から、携帯端末121の情報を取得する。内通信端末70には、通常、少なくとも自動車10に普段から乗っている乗員の携帯端末121の認証情報が登録されている。これらの乗員は、今回の緊急事態が発生したタイミングにおいても、自動車10に乗っている可能性が高い。内通信ECU28は、基本的に、このような認証済みの携帯端末121の情報を、内通信端末70から取得してよい。
ここで、内通信ECU28は、車内カメラ54の撮像画像に基づいて、走行中といった衝突前または衝突後に乗車している乗員を特定し、特定できた乗員の携帯端末121の情報のみを取得してよい。なお、内通信端末70は、携帯端末121の情報について、その時点で認証はしていないが、電波の検出に基づいて認識できている携帯端末121の情報を可能な限り含めてよい。これにより、内通信ECU28が取得する携帯端末121の情報は、衝突時に乗車している複数の乗員に対して好適に対応するものとなる。内通信ECU28が取得する携帯端末121の情報は、乗車していない人の携帯端末121の情報が余分に含まれ難くなる。
【0039】
ステップST2において、検出ECU26は、車内カメラ54の撮像画像に基づいて走行中といった衝突前または衝突後に乗車している複数の乗員の乗車位置を判断し、それら複数の乗員についての傷害の可能性順を推定する。自動車10が事故に遭った場合、乗っているすべての乗員が同じ傷害を負うとは限らない。このため、検出ECU26は、たとえば衝突の入力部位からそれぞれの乗員の着座位置までの距離の順番で、複数の乗員についての傷害程度を推定してよい。この場合、衝突の入力部位に最も近い着座位置の乗員は、それよりも遠い位置に着座する他の乗員より、傷害が発生している可能性が高いと推定される。この他にもたとえば、自動車10における衝突の入力部位と大きさと、乗員保護装置の動作状態とに基づいて、複数の乗員についての傷害程度を推定してよい。この場合、乗員保護装置が入力に対して良好に作用したと推定される乗員は、それよりも有効に作用していないと推定される乗員より、傷害が発生している可能性が低いと推定される。乗員保護ECU30は、これらの衝突状況、保護装置の作動状況、および乗車位置に基づいて、複数の乗員についての傷害の可能性順を推定する。
【0040】
ステップST3において、乗員保護ECU30は、携帯端末121との試験通信のために、ステップST1で取得した複数の携帯端末121の情報から、1つの携帯端末121を選択する。乗員保護ECU30は、試験通信を試みていない携帯端末121を1つ選択する。乗員保護ECU30は、ステップST3の処理を最初に実行する際には、たとえばステップST1で取得した複数の携帯端末121の情報を、ステップST2の傷害の可能性が高い乗員の所有する携帯端末121の順番でソートして、そのソートした端末リストにおいて最初の携帯端末121をまず選択してよい。
【0041】
ステップST4において、内通信ECU28は、内通信端末70を用いて、選択した携帯端末121への試験通信を行う。内通信端末70は、たとえば、選択した携帯端末121を呼び出して着信音を鳴らす。携帯端末121のユーザである乗員は、意識がある場合には、携帯端末121の呼び出しに応答できる。内通信ECU28は、試験通信において呼び出しができるか否か、または試験通信への応答の有無により、携帯端末121のユーザである乗員の傷害の程度などを大まかに仮判断できる。これにより、内通信ECU28は、緊急情報を送信する際に、第二通信装置としての内通信端末70に認証情報が登録されている携帯端末121について、自動車10の緊急事態が発生した後に内通信端末70により通信可能であるか否かを確認できる。
【0042】
ステップST5において、内通信ECU28は、取得した携帯端末121のすべてについて試験通信が終了したか否かを判断する。すべての携帯端末121に対する試験通信が終了していない場合、内通信ECU28は、処理をステップST3へ戻す。内通信ECU28は、ステップST3からステップST5の処理を繰り返して、試験通信を試みていない携帯端末121を新たに選択して試験通信を試みる。内通信ECU28は、取得した携帯端末121のすべてについての試験通信が終了するまで、ステップST3からステップST5までの処理を繰り返して、すべての携帯端末121への試験通信を実行する。取得した携帯端末121のすべてについての試験通信が終了していると、内通信ECU28は、処理をステップST6へ進める。
【0043】
ステップST6において、外通信ECU27は、以上の処理により収集した情報に基づいて、サーバ装置2へ送信するための端末情報を生成する。たとえば、外通信ECU27は、端末情報として、事故の際に自動車10に乗車している乗員の携帯端末121のリスト情報を生成する。リスト情報において、複数の携帯端末121の情報は、傷害の可能性が高い乗員の順番にソートされてよい。各携帯端末121の情報には、たとえば、携帯端末121の電話番号やSMSアカウントといった連絡先の情報、推定される傷害の可能性の内容や程度の情報、試験通信に対する応答の有無の情報、が含まれてよい。これにより、サーバ装置2へ送信する端末情報には、乗員が通信可能と確認されている携帯端末121の連絡先情報が含まれる。
【0044】
以上のように、本実施形態では、自動車10の緊急の際に第一通信装置としての外通信端末60を用いてサーバ装置2へ緊急情報を自動的に送信する。そして、緊急情報には、自動車10の事故についての事故時情報とともに、自動車10に乗車している乗員の携帯端末121のたとえば電話番号やSMSアカウントといった連絡先情報が含まれる。これにより、コールセンタの職員などは、ステップST19において、自動車10ではなく、サーバ装置2が受信した緊急情報に含まれる乗員の携帯端末121の連絡先情報に基づいて、事故に遭った自動車10の乗員と連絡をとるよりも前に、自動車10の乗員の傷害の程度を推定することが可能になる。コールセンタの職員などは、自動車10から外へ避難している乗員について、その安否、傷害の状態などについて推定することができる。また、連絡に対して応じていない乗員については、重度の傷害が発生している可能性があることを推定できる。
しかも、本実施形態においてコールセンタの職員などは、乗員の携帯端末121により直接乗員と連絡を取る前に、外通信端末60による緊急情報により、内通信ECU28が行った、試験通信において呼び出しができるか否か、または試験通信への応答の有無により、携帯端末121のユーザである乗員の傷害の程度などの大まかな仮判断を認識することができる。
更に、コールセンタの職員などによる乗員の携帯端末121への呼び出しより前に、乗員が自動車10からの避難が必要な場合、避難を開始する前に内通信ECU28による試験通信での呼び出しを行うことで、乗員が自動車10から離れる前に自身の携帯端末121の存在や、事故の衝撃で手元から離れた携帯端末121の位置を認識し、乗員が携帯端末121を確実に車外へ持ち出すことが可能となる。
【0045】
以上の実施形態は、本発明の好適な実施形態の例であるが、本発明は、これに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形または変更が可能である。
【0046】
上述した実施形態では、自動車10においてECUが複数に分かれて存在していたが、そのうちの一部あるいは全てが一つのECUに統合されていても良い。
【0047】
上述した実施形態では、自動車10の自動通報装置4の乗員保護ECU30は、事故による衝撃を検出した後に、事故時情報と端末情報とを収集し、これらをまとめてサーバ装置2へ送信している。
この他にもたとえば、自動車10の自動通報装置4の乗員保護ECU30は、事故による衝撃を検出した後において、事故時情報と端末情報とを別々に、サーバ装置2へ送信してよい。図5であれば、ステップST13とステップST14との間に、事故時情報の自動通報処理を追加すればよい。このように複数回に分けて緊急情報が送信されるとしても、サーバ装置2は、それらの情報に含まれる各自動車10に固有の識別情報などにより情報を関連付けることができる。しかも、乗員保護ECU30は、端末情報の収集時間により遅延してしまうことなく、事故を検出したら即時的に事故時情報を事故の第一報として送信することができる。また、乗員保護ECU30は、第一報の遅延を考慮することなく、複数の携帯端末についての試験通信を実行できる。乗員保護ECU30は、サーバ装置2が設けられるコールセンタにおいて職員が第一報に基づいて事故対応を始めた後に、遅滞なく複数の乗員の携帯端末の情報を送信することが可能である。
【符号の説明】
【0048】
1…自動緊急通報システム、2…サーバ装置、4…自動通報装置、5…無線通信ネットワーク、6…基地局、7…通信網、10…自動車(車両)、11…救急車、20…制御系、21…駆動ECU、22…操舵ECU、23…制動ECU、24…走行制御ECU、25…運転操作ECU、26…検出ECU、27…外通信ECU、28…内通信ECU、29…UI操作ECU、30…乗員保護ECU、36…車ネットワーク、37…バスケーブル、38…セントラルゲートウェイ、41…表示デバイス、42…操作デバイス、51…速度センサ、52…3軸加速度センサ、53…ステレオカメラ、54…車内カメラ、55…マイクロホン、56…GNSS受信機、60…外通信端末、61…外通信デバイス、70…内通信端末、71…内通信デバイス、80…乗員保護装置、81…運転側シートベルト装置、82…同乗側シートベルト装置、83…運転側フロントエアバッグ装置、84…運転側カーテンエアバッグ装置、85…同乗側フロントエアバッグ装置、86…同乗側カーテンエアバッグ装置、87…乗員保護メモリ、91…サーバ通信デバイス、92…サーバメモリ、93…サーバCPU、94…サーバGNSS受信機、95…サーバモニタ、96…サーバ通話デバイス、97…サーババス、101…クライアント通信デバイス、102…クライアントメモリ、103…クライアントCPU、104…クライアント報知デバイス、105…クライアントGNSS受信機、106…クライアントモニタ、107…クライアント通話デバイス、108…クライアントバス、110…GNSS衛星、121…携帯端末

図1
図2
図3
図4
図5
図6