IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ JFE建材株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-支柱及び支柱の設置方法 図1
  • 特許-支柱及び支柱の設置方法 図2
  • 特許-支柱及び支柱の設置方法 図3
  • 特許-支柱及び支柱の設置方法 図4
  • 特許-支柱及び支柱の設置方法 図5
  • 特許-支柱及び支柱の設置方法 図6
  • 特許-支柱及び支柱の設置方法 図7
  • 特許-支柱及び支柱の設置方法 図8
  • 特許-支柱及び支柱の設置方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】支柱及び支柱の設置方法
(51)【国際特許分類】
   E04H 17/22 20060101AFI20241127BHJP
【FI】
E04H17/22
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020145677
(22)【出願日】2020-08-31
(65)【公開番号】P2022040797
(43)【公開日】2022-03-11
【審査請求日】2023-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】丸島 茜
(72)【発明者】
【氏名】土井 彰
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-113056(JP,A)
【文献】特開平08-158708(JP,A)
【文献】特開2003-321914(JP,A)
【文献】特開2019-190001(JP,A)
【文献】米国特許第09097017(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 17/00-17/26
E04F 11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置面に取り付けられる基礎部材及び、前記基礎部材に立設されるベースポストとからなるベースプレートと、
前記ベースポストに外嵌し、複数の締結部材によって固定されると共に、高さ方向に一様な内径を備える柱部材と、を備えた支柱において、
前記ベースポストには、高さ方向に間隔を開けて前記締結部材と螺合する螺着部が形成され、
前記柱部材には、前記螺着部に対応する位置に貫通孔が形成され、
前記ベースプレートに組付けられた前記柱部材の傾きを調整する傾き調整機構として、
前記ベースポストの上端位置における外径と前記柱部材の内径との差に相当する第1の傾き調整用クリアランス
前記締結部材の径と前記貫通孔の径との差に相当する第2の傾き調整用クリアランスを有し、
前記基礎部材と前記柱部材の下端面との間には隙間が形成され、
前記第2の傾き調整用クリアランスは、前記第1の傾き調整用クリアランスよりも大きく形成され、
前記柱部材は、前記柱部材の径方向片側から前記締結部材により固定されることを特徴とする支柱。
【請求項2】
請求項1に記載する支柱において、
前記ベースポスト及び前記柱部材は、中空円柱からなることを特徴とする支柱。
【請求項3】
請求項1又は2に記載する支柱において、
前記ベースポストには、下端の外径に対し上端の外径が小さいテーパ面が形成される
ことを特徴とする支柱。
【請求項4】
支柱の設置方法であって、
前記請求項1から3のいずれか1項に記載の支柱を準備し、
勾配を有する設置面に前記基礎部材を設置する工程と、
前記第1の傾き調整用クリアランスを用いて、設置された前記基礎部材に立設する前記ベースポストに対して、重力方向に平行になるように前記柱部材を外嵌する工程と、
前記第2の傾き調整用クリアランスを用いて、前記締結部材により柱部材をベースポストに締結する工程と、を含み、
前記基礎部材と前記柱部材の下端面との間には隙間が形成され、
前記第2の傾き調整用クリアランスは、前記第1の傾き調整用クリアランスよりも大きく形成され、
前記柱部材は、前記柱部材の径方向片側から前記締結部材により固定されることを特徴とする支柱の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェンスに用いられる支柱を重力方向に平行となるように設置する支柱及び、この支柱の設置方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、敷地境界部に沿って取り付けられるフェンス等に用いられる支柱を設置する場合には、コンクリート基礎を用いて支柱下端部を埋没するものや、板状の基礎となる部品に柱部材の下端部を溶接し、コンクリート面等の設置面に固定される方法等が用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、設置面に取り付けられるベース部と、ベース部に立設される筒状部と、筒状部に外嵌される支柱本体からなり、ベース部に設けられたリング状の溝部と、溝部の外縁部に沿って立設されたガイド部によって、支柱本体の下端部を支え、簡易な構造で強固に固定することができる支柱が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-190281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなフェンス等に用いられる支柱を設置する際には、後にフェンスパネルを取付ける寸法を確保するため、また審美的な観点から、重力方向に平行となるように支柱を設置することが必須とされるが、特許文献1に示すような支柱においては、設置面に傾斜が生じている場合や、設置面の表面に砂利等の異物が存在する場合等に、支柱を重力方向に平行に設置するのが難しかった。また、特許文献1に示す支柱とは別に、板状の基礎となる部品に柱部材を溶接して立設する支柱の設置方法等がこれまで考えられてきたが、設置面の勾配に合わせて柱部材の角度をそれぞれ調節し溶接する必要があり、作業者の負担軽減や、設置作業の時間短縮が求められていた。
【0006】
そこで、本発明は上記の事項に鑑みてなされたものであり、設置面の傾斜に合わせて、容易な構造で柱部材の傾き調整をすることができる支柱及び支柱の設置方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記課題を達成するためになされたものであって、下記を特徴とするものである。
【0008】
本発明に係る支柱は、設置面に取り付けられる基礎部材及び、前記基礎部材に立設されるベースポストとからなるベースプレートと、前記ベースポストに外嵌し、複数の締結部材によって固定されると共に、高さ方向に一様な内径を備える柱部材と、を備えた支柱において、前記ベースポストには、高さ方向に間隔を開けて前記締結部材と螺合する螺着部が形成され、前記柱部材には、前記螺着部に対応する位置に貫通孔が形成され、前記ベースプレートに組付けられた前記柱部材の傾きを調整する傾き調整機構として、前記ベースポストの上端位置における外径と前記柱部材の内径との差に相当する第1の傾き調整用クリアランス、前記締結部材の径と前記貫通孔の径との差に相当する第2の傾き調整用クリアランスを有し、前記基礎部材と前記柱部材の下端面との間には隙間が形成され、前記第2の傾き調整用クリアランスは、前記第1の傾き調整用クリアランスよりも大きく形成され、前記柱部材は、前記柱部材の径方向片側から前記締結部材により固定されることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る支柱において、前記ベースポスト及び前記柱部材は、中空円柱からなると好適である。
【0010】
本発明に係る支柱において、前記ベースポストには、下端の外径に対し上端の外径が小さいテーパ面が形成されると好適である。
【0011】
本発明に係る支柱の設置方法は、前記の支柱を準備し、勾配を有する設置面に前記基礎部材を設置する工程と、前記第1の傾き調整用クリアランスを用いて、設置された前記基礎部材に立設する前記ベースポストに対して、重力方向に平行になるように前記柱部材を外嵌する工程と、前記第2の傾き調整用クリアランスを用いて、前記締結部材により柱部材をベースポストに締結する工程と、を含み、前記基礎部材と前記柱部材の下端面との間には隙間が形成され、前記第2の傾き調整用クリアランスは、前記第1の傾き調整用クリアランスよりも大きく形成され、前記柱部材は、前記柱部材の径方向片側から前記締結部材により固定されることを特徴とする。
【0012】
上記発明の概要は、本発明に必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた発明となり得る。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ベースポスト外面と柱部材内面との間に作られる第1の傾き調整用クリアランスと、締結部材と柱部材に設けられた貫通孔との間に作られる第2の傾き調整用クリアランスによって、容易に支柱を重力方向に平行に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る支柱を用いて設置されたフェンスの一形態を示す正面図
図2】本実施形態に係る支柱を用いて設置されたフェンスの一形態を示す図1の部分拡大図X
図3】本実施形態に係るベースプレートを示す斜視図
図4】本実施形態に係るベースプレートを示す図3のY-Y断面図
図5】本実施形態に係る支柱を示す分解斜視図
図6】本実施形態に係る支柱を水平な設置面に設置した状態を示す斜視図
図7】本実施形態に係る支柱を水平な設置面に設置した状態を示す図6のZ-Z断面図
図8】本実施形態に係る柱部材の加工例を示す斜視図
図9】本実施形態に係る支柱を傾斜を持つ設置面に設置した状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0016】
図1は、本実施形態に係る支柱を用いて設置されたフェンスの一形態を示す正面図、図2は、本実施形態に係る支柱を用いて設置されたフェンスの一形態を示す図1の部分拡大図X図3は、本実施形態に係るベースプレートを示す斜視図、図4は、本実施形態に係るベースプレートを示す図3のY-Y断面図、図5は、本実施形態に係る支柱を示す分解斜視図、図6は、本実施形態に係る支柱を水平な設置面に設置した状態を示す斜視図、図7は、本実施形態に係る支柱を水平な設置面に設置した状態を示す図6のZ-Z断面図、図8は、本実施形態に係る柱部材の加工例を示す斜視図、図9は、本実施形態に係る支柱を傾斜を持つ設置面に設置した状態を示す断面図である。
【0017】
本実施形態に係る支柱1は、図1に示すように、柱継手3を介してフェンスパネル2を固定し、フェンス100を構成する。図1において、フェンスパネル2は、一例として線材を格子状に接合したメッシュ状のパネルを示すが、フェンスパネル2の形状はこれに限らず、フェンス100によって敷地境界部を仕切ることができ、その境界部を容易に乗り越えることができないものであればよく、例えば鋼板等の平板状のパネルからなり、パネル全面に渡って複数のスリットを等間隔に施したもの等であっても構わない。
【0018】
一例として図1に示すフェンスパネル2は、例えば鉄線からなり、縦方向に配される複数の縦線材と、横方向に配される複数の横線材とが、正面視において格子状に配置され、縦線材と横線材の交差部を溶接し接合されている。また、フェンスパネル2の上下端部は、縦線材が側面視において略円形に屈曲され、フェンスパネル2の上下縁を成しフェンスパネル2全体の剛性を高めている。フェンスパネル2の表面には、錆等による腐食を防ぐために、亜鉛メッキや、ポリエステル樹脂をベース塗料とする静電粉体塗装等が施されると好適である。また、縦線材と横線材の線径は同じでなくてもよく、材料の入手性や、強度上問題のない範囲において適宜決定される。例えば、図1に示すフェンスパネル2では、横線材に対して本数の多い縦線材の線径は、横線材の線径に対して細く設定することができる。
【0019】
柱継手3は、図2に示すように、支柱1と当接する支柱用当接部と、フェンスパネル2と当接するパネル用当接部を有する。柱継手3は、継手用締結具によって支柱用当接部が支柱1に固定され、図示しないパネル取付け用金具を介して、パネル用当接部がフェンスパネル2に接続される。
【0020】
支柱1は、図5に示すように、設置面に設置されるベースプレート10と、複数の締結部材30によってベースプレート10に固定される柱部材20によって構成される。
【0021】
ベースプレート10は、図4に示すように、設置面に固定される板状の基礎部材11と、基礎部材11に立設する円筒状のベースポスト14とを有しており、基礎部材11の略中央に設けられた貫通孔12にベースポスト14を挿入し、接続部に隅肉溶接を施し、ベースポスト14を基礎部材11に対して垂直に接合される。ベースポスト14を貫通孔12に挿入する際には、基礎部材11の板厚の略半分まで挿入する。また、隅肉溶接は、ベースポスト14の側面と基礎部材11の上面を溶接する上部溶接部17及び、ベースポスト14の下端面と貫通孔12の側面を溶接する下部溶接部18の2か所について、全周に渡って施されると好適である。本実施形態における隅肉溶接の溶接個所及び脚長等は図4に示す通りであるが、溶接部の形状はこれに限らず、接合部の許容応力が、母材である基礎部材11及びベースポスト14の許容応力と同等以上であればよい。但し、上部溶接部17のベースポスト14側面の脚長寸法D’は、柱部材20をベースプレート10に組付けた際に、柱部材20と上部溶接部17との干渉を避けるため、後述する寸法Dよりも小さくする必要がある。また、下部溶接部18における貫通孔12の側面の脚長は、基礎部材11の下面からはみ出さない長さとする。なお、溶接組み立て後のベースプレート10には、錆等による腐食を防ぐために、亜鉛メッキ等が施されると好適である。
【0022】
基礎部材11は、平面視において略矩形状の鋼板からなり、図2に示すように、アンカーボルト5によって設置面に固定された際に、外力を受けた状態であっても、変形や破損の恐れのない厚みを有し、尚且つ一般的に流通している板厚の材料を用いられると好適である。例えば、本実施形態においては、一般構造用圧延鋼材等が用いられる。また、基礎部材11には、図4に示すように、平面視において中央部に位置し板厚方向に貫通する貫通孔12と、図3に示すように、平面視において四隅に位置し板厚方向に貫通するアンカー孔13が形成される。
【0023】
貫通孔12は、図4に示すように、ベースポスト14の円筒部外径よりもわずかに大きい径に形成される。また貫通孔12にはベースポスト14が挿入されるため、貫通孔12の内面には、ベースポスト14を挿入する際に障害となるようなバリ等を除去する処置が施されていると好適である。
【0024】
アンカー孔13は、図3に示すように、本実施形態においては、基礎部材11の四隅に1つずつ設けられているが、ベースプレート10を設置面に強固に固定することができればよく、アンカー孔13の形成数は特に限定されるものではない。また、アンカー孔13はアンカーボルト5の軸径よりも大きい径に形成され、図2に示す設置面に配された雌ねじアンカー4のずれを吸収することができる。なお、アンカー孔13の形状はこれに限らず、雌ねじアンカー4のずれが吸収できればよく、例えば長孔状に形成してもよい。
【0025】
ベースポスト14は、図4に示すように、円筒状の鋼材からなり、側面には、基礎部材11の上面近くに位置する螺着部15a、ベースポスト14の上端近くに位置する螺着部15bが、長手方向に間隔を開けて配される。また、螺着部15aと螺着部15bとの間には、柱継手用貫通孔16が形成される。ここで、図4に示すように、ベースポスト14が基礎部材11に溶接された状態において、基礎部材11の上面から螺着部15aの中心までの距離を寸法A、螺着部15aと螺着部15bの中心間の距離を寸法B、基礎部材11の上面からベースポスト14の上端までの距離を寸法Lとする。
【0026】
螺着部15a、15bは、ベースポスト14の円筒断面中心を通る直線に対して、片側の側面を貫く貫通孔であって、貫通孔の側面に雌ねじの山を形成したものである。螺着部15a、15bの軸は、ベースポスト14の長手方向の軸に対して垂直であって、ベースポスト14の円筒断面中心に向かう。また、螺着部15a、15bは平面視において同一角度に形成される。例えば、図2が示す面を正面としたときに、螺着部15a、15bの軸は、共に正面に対して直交する。螺着部15a、15bのねじ山は、円筒状のベースポスト14の側面の肉厚を利用して形成されるため、ベースポスト14には、ねじ山が十分確保できる程度の肉厚が必要である。例えば一般的に流通している材料を使用する場合には、高圧配管用炭素鋼鋼管等の比較的厚みのある鋼管が用いられると好適である。
【0027】
柱継手用貫通孔16は、図4に示すように、長手方向において螺着部15a、15bの中間に位置し、ベースポスト14の円筒断面中心を通る直線に対して両側の側面を貫く貫通孔であって、図示しない継手用締結具の軸径より大きな径に形成される。柱継手用貫通孔16の軸は、ベースポスト14の長手方向の軸に対して垂直であって、ベースポスト14の円筒断面中心を通る。また、本実施形態において柱継手用貫通孔16の軸は、平面視において螺着部15a、15bの軸と同一角度に形成されているが、柱継手用貫通孔16の平面視における角度はこれに限らず、フェンスパネル2を固定する柱継手3の形状に合わせて、例えば平面視において螺着部15a、15bの軸と直角に形成してもよい。
【0028】
柱部材20は、図5に示すように、中空円柱の材料からなり、例えば一般構造用炭素鋼鋼管等が用いられ、表面には錆等による腐食を防ぐために、亜鉛メッキや、ポリエステル樹脂をベース塗料とする静電粉体塗装等が施されると好適である。また、柱部材20の上端には、図1に示すように、外部からの雨水等の進入を防ぐためにキャップを備える。
【0029】
柱部材20の内径は、支柱1を構築する際にベースポスト14に外嵌可能なように、ベースポスト14の外径より大きく形成される。ここで、図7に示すように、柱部材20をベースポスト14に外嵌した際に発生する、柱部材20の内径とベースポスト14の外径とのクリアランスを、後述する柱部材20の傾きを調整するために使用する第1の傾き調整用クリアランスEとする。例えば本実施形態においては、柱部材20の内径はφ46.2mmとし、ベースポスト14の外径はφ42.7mmとしたとき、第1の傾き調整用クリアランスEは3.5mmとなる。
【0030】
柱部材20の素材の全長は、図8に示すように、必要長さに対し十分に長い状態で準備されており、フェンス100の設置現場にて、不要端部25を切り落とし、柱部材20の必要な長さに形成される。このため、高さの異なるフェンス100のバリエーションに対して、柱部材20の素材を兼用して使用することができ、異なる長さの柱部材20をあらかじめ在庫として所有する必要がなくなる。なお、柱部材20の切断面には、不要なバリ等を処理する加工が施されると好適である。
【0031】
柱部材20の下端部の側面には、上記同様、フェンス100の設置現場にて、柱部材20の下端部近くに位置する締結用貫通孔21aと、その上方に長手方向に間隔を開けて締結用貫通孔21bが形成される。また、締結用貫通孔21aと締結用貫通孔21bの間には、柱継手取付孔22が形成される。ここで、図7に示すように、柱部材20の下端部から締結用貫通孔21aの中心までの距離を寸法Cとする。なお、寸法Cは、基礎部材11の上面から螺着部15aの中心までの寸法Aよりも短く設定される。また、締結用貫通孔21a、21bの位置は、ベースポスト14の螺着部15a、15bの位置に対応しており、締結用貫通孔21aと締結用貫通孔21bの中心間の距離は、螺着部15aと螺着部15bの中心間の距離と同じく寸法Bだけ離れている。
【0032】
締結用貫通孔21a、21bは、図5に示すように、柱部材20の円筒断面中心を通る直線に対して片側の側面を貫く貫通孔であって、締結部材30の軸径よりも大きな径で形成される。支柱1を構築する際に、締結部材30を締結用貫通孔21a、21bに貫通させ、柱部材20をベースポスト14に固定するが、図7に示すように、ここで発生する締結部材30の軸径と、締結用貫通孔21a、21bの穴径とのクリアランスを、後述する柱部材20の傾きを調整するために使用する第2の傾き調整用クリアランスFとする。なお、締結用貫通孔21a、21bの径は、第2の傾き調整用クリアランスFが第1の傾き調整用クリアランスE以上の大きさになるような径であり、且つ図5に示すワッシャ32の外径よりも小さい径であると好適である。例えば本実施形態においては、締結部材30の軸径はφ8mmとし、締結用貫通孔21a、21bの穴径はφ12mmとしたとき、第2の傾き調整用クリアランスFは4mmとなり、第1の傾き調整用クリアランスEである3.5mmよりも大きくなる。また、ワッシャ32の外径はφ17であり、締結用貫通孔21a、21bの穴径はワッシャ32の外径よりも小さい。
【0033】
柱継手取付孔22は、柱部材20の円筒断面の中心を通る直線に対して両側の側面を貫く貫通孔であって、柱部材20をベースプレート10に固定する際に、ベースポスト14の柱継手用貫通孔16に対応した位置に形成される。
【0034】
次に、上記のような特徴を備える支柱1を設置面に立設する設置方法について説明する。
【0035】
先ず、図3に示すように、アンカーボルト5をスプリングワッシャ及びワッシャに通し、基礎部材11のアンカー孔13に貫通させ、アンカーボルト5をコンクリート面等の設置面に配された雌ねじアンカー4に締結させ、ベースプレート10を設置面に固定する。次に、図5に示すように、柱部材20をベースポスト14に外嵌させ、締結部材30をスプリングワッシャ31及びワッシャ32に通し、柱部材20の締結用貫通孔21a、21bに貫通させ、ベースポスト14の螺着部15a、15bに締結して、柱部材20とベースプレート10を固定する。このとき、前述の通り、寸法Cは寸法Aよりも短いことから、図7に示すように、柱部材20の下端と基礎部材11の上面との間には隙間が形成される。ここで、柱部材20の下端と基礎部材11の上面との隙間の距離を寸法Dとする。
【0036】
設置面が水平である場合には、上記の方法で支柱1を重力方向と平行に立設することができ、その後、柱継手3を介してフェンスパネル2を固定し、フェンス100を構築する。
【0037】
次に、傾斜角θの角度をもつ設置面に、支柱1を立設する方法について説明する。
【0038】
先ず、上記で説明した水平な設置面に支柱1を立設する方法と同様に、アンカーボルト5にてベースプレート10を設置面に固定する。この時、ベースポスト14は、図9に示すように設置面に対して垂直に立設しており、重力方向に対して傾斜角θの傾きを持っている。次に、柱部材20をベースポスト14に外嵌させると、前述の通り、柱部材20とベースポスト14との間には、第1の傾き調整用クリアランスEが形成され、図9に示すように、第1の傾き調整用クリアランスEを利用し、柱部材20が重力方向に平行となるよう角度調節を行う。この時、柱部材20の下端と基礎部材11の上面との間には寸法Dの隙間があり、上部溶接部17の脚長寸法D’は寸法D以下であるため、柱部材20は上部溶接部17と干渉することなく傾けることができる。次に、柱部材20の角度を維持したまま、締結部材30をスプリングワッシャ31及びワッシャ32に通し、柱部材20の締結用貫通孔21a、21bに貫通させ、ベースポスト14の螺着部15a、15bに締結する。この時、前述の通り、第2の傾き調整用クリアランスFは第1の傾き調整用クリアランスEよりも大きいため、締結部材30は締結用貫通孔21a、21bと干渉することなく柱部材20をベースプレート10に固定することができる。このようにして、柱部材20とベースプレート10を固定した後、前述と同じく、柱継手3を介してフェンスパネル2を固定し、フェンス100を構築する。
【0039】
以上のように、本実施形態によれば、フェンス正面から見て左右方向に傾斜をもつ設置面において、支柱1を重力方向と平行に立設することができる。
【0040】
また、支柱1を重力方向に平行に立設させることが可能である設置面の最大傾斜角θは、本実施形態においては、第1の傾き調整用クリアランスEが3.5mm、ベースポスト14の寸法Lが144mmのとき約1.4度となる。この最大傾斜角θを拡大するには、第1の傾き調整用クリアランスEを大きくする、またはベースポスト14の寸法Lを小さくすればよいが、本実施形態については、支柱1の強度確保と角度調整とのバランスを考慮し最大傾斜角度を約1.4度とした。
【0041】
なお、上記ではベースポスト14及び柱部材20は中空円柱の場合についての説明を行ったが、ベースポスト14及び柱部材20の形状はこれに限らず、例えば断面が中空矩形状に成形された管状部品であっても構わない。また、上記ではベースポスト14は一様な径をもつ中空円筒の場合についての説明を行ったが、ベースポスト14の形状はこれに限らず、柱部材20の最大傾斜角度を大きくするため、ベースポスト14の側面には、下端の外径に対し上端の外径が小さいテーパ面が形成されていてもよい。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0042】
1 支柱
2 フェンスパネル
3 柱継手
4 雌ねじアンカー
5 アンカーボルト
10 ベースプレート
11 基礎部材
12 貫通孔
13 アンカー孔
14 ベースポスト
15a、15b 螺着部
16 柱継手用貫通孔
17 上部溶接部
18 下部溶接部
20 柱部材
21a、21b 締結用貫通孔
22 柱継手取付孔
30 締結部材
31 スプリングワッシャ
32 ワッシャ
E 第1の傾き調整用クリアランス
F 第2の傾き調整用クリアランス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9