IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サンデン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-車両用空調装置 図1
  • 特許-車両用空調装置 図2
  • 特許-車両用空調装置 図3
  • 特許-車両用空調装置 図4
  • 特許-車両用空調装置 図5
  • 特許-車両用空調装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/32 20060101AFI20241127BHJP
   B60H 1/00 20060101ALI20241127BHJP
   E02F 9/16 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
B60H1/32 613K
B60H1/00 102T
B60H1/32 614Z
E02F9/16 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020157477
(22)【出願日】2020-09-18
(65)【公開番号】P2022051154
(43)【公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 太一
【審査官】町田 豊隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-276707(JP,A)
【文献】特開2000-198348(JP,A)
【文献】特開2016-078797(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2004-0072068(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/32
B60H 1/00
E02F 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の床面に沿った空気流路を有する空調ユニットを備え、
前記空調ユニットは、底部に水受け部が設けられると共に、該水受け部の周囲に排水溝部が設けられ、
前記水受け部は、内壁面に、平面視で局部的に上凸状の頂部から前記排水溝部に向けて下向きに傾斜する傾斜面を有し、
前記排水溝部には、当該排水溝部内に設けられた排水口に向けて水を流す流路が形成され、
前記頂部は、前記水受け部の中心に対してオフセットした位置であって、前記水受け部の平面視対角位置に設けられている2つの前記排水口を結ぶ対角線に対して前記排水溝部側に設けられていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記排水溝部は、前記傾斜面における外縁の交差する2辺の周囲に設けられ、前記傾斜面における外縁の他の辺は、前記排水溝部の1つに向けて下向きに傾斜していることを特徴とする請求項1記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記空調ユニットには、前記空気流路内に、空気の流れ方向に対して傾斜した吸熱用熱交換器が配備され、
前記水受け部は、前記吸熱用熱交換器の下面に対向して設けられ、
前記排水溝部は、前記床面より下側に突出して配備されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記傾斜面は、異なる傾斜角度で複数設けられ、傾斜した前記吸熱用熱交換器の下部が対面する傾斜面が他の傾斜面に比べて最も急峻になっていることを特徴とする請求項3記載の車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両に対して略水平方向に延びる空気通路を有する空調ユニットを備え、空気通路内に吸熱用熱交換器(エバポレータ)と放熱用熱交換器(ヒータコア)とを空気の流れ方向に順に配置し、吸熱用熱交換器を、空気通路の延設方向に対し15~30度の角度範囲内で傾斜配置するとともに、放熱用熱交換器も同じ方向に傾斜した車両用空調装置が知られている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-276707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の車両用空調装置は、吸熱用熱交換器の傾斜を立てすぎる(傾斜角度を大きくしすぎる)と、空調ユニットの薄型化の効果が薄れることになり、吸熱用熱交換器の傾斜を寝かせすぎる(傾斜角度を小さくしすぎる)と、凝縮水の水切れ性が不十分になり、また、空気通路の通気抵抗が大きくなりすぎる。
【0005】
このため、吸熱用熱交換器の傾斜は適切な範囲に設定されており、吸熱用熱交換器で発生した凝縮水は、吸熱用熱交換器の傾斜を伝って流下し、空調ユニットにおける吸熱用熱交換器下に設けた排水案内溝を通ってドレン口から排水される。この際、排水案内溝は、内壁面上で空気通路幅方向両側に空気通路長手方向に沿って延びるように設けられており、両排水案内溝間の内壁面には、中央が高くなるように空気通路内に張り出した水受け面(ドレインパン)が設けられている。
【0006】
このような車両用空調装置において、車両自体が大きく傾斜した場合には、凝縮水の水切れ性を得るための吸熱用熱交換器の傾斜が不十分になる場合があり、水受け面や排水案内溝においても、ドレン口への排水流路を形成するのに十分な傾斜が確保できない場合がある。
【0007】
特に、車両が建設機械である場合には、作業時に水平に対して大きく角度がついた車両姿勢になることが想定される。建設機械の業界では、水平に対して左右前後に最大30度の傾斜が生じることを想定して機械の設計がなされており、それに搭載される車両用空調装置は、このような車両の傾斜に対して問題の生じない排水性が要求されている。
【0008】
本発明は、このような事情に対処することを課題としている。すなわち、車両用空調装置において、車両が左右前後に傾斜した場合にも良好な排水性を確保できるようにすることなどが、本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するために、本発明は、以下の構成を具備するものである。
車両の床面に沿った空気流路を有する空調ユニットを備え、前記空調ユニットは、底部に水受け部が設けられると共に、該水受け部の周囲に排水溝部が設けられ、前記水受け部は、内壁面に、平面視で局部的に上凸状の頂部から前記排水溝部に向けて下向きに傾斜する傾斜面を有し、前記排水溝部には、当該排水溝部内に設けられた排水口に向けて水を流す流路が形成され、前記頂部は、前記水受け部の中心に対してオフセットした位置であって、前記水受け部の平面視対角位置に設けられている2つの前記排水口を結ぶ対角線に対して前記排水溝部側に設けられていることを特徴とする車両用空調装置。
【発明の効果】
【0010】
このような特徴を備えた本発明は、車両が左右前後に傾斜した場合にも、水受け部に落下した水(凝縮水)は、最終的に水受け部周囲の排水溝部に流れて、排水溝部における流路を経由して排水口に向かって流れるので、良好な排水性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る車両用空調装置を示した説明図(平面斜視図)。
図2】本発明の実施形態に係る車両用空調装置を示した説明図(底面斜視図)。
図3】本発明の実施形態に係る車両用空調装置を示した説明図(側面図)。
図4】車両用空調装置の水受け部と排水溝部を示した説明図(斜視図)。
図5】車両用空調装置の水受け部と排水溝部を示した説明図(平面図)。
図6】車両用空調装置の水受け部と排水溝部を示した説明図(図5におけるX1-X1断面図)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。また、各図における矢印のZ方向が車両用空調装置の厚さ方向であり、矢印のX,Y方向は、互いに直交し且つZ方向に直交する方向を示している。
【0013】
図1図3に示すように、車両用空調装置1は、図示省略した車両の床面に沿った空気流路を内部に有する空調ユニット10を備えている。空調ユニット10は、図示の例では、送風機収容部10A、吸熱用熱交換器収容部10B、放熱用熱交換器収容部10C、吹き出し流路形成部10Dを備えており、内部には吸気口10Pから吹き出し口10Qに至る空気流路が形成されている。
【0014】
空調ユニット10は、車両の床面F(図3参照)上に支持される支持面11を外底面に有している。車両用空調装置1は、例えば、建設機械車両に搭載されるものであり、図示のX,Y方向に沿った床面Fと図示省略した座席シート下のスペースに配備されるように、空調ユニット10が図示Z方向に薄厚化されており、空調ユニット10内の空気流路は、図示X-Y面に沿って形成されている。
【0015】
空調ユニット10の吸熱用熱交換器収容部10Bに配備される吸熱用熱交換器(エバポレータ)20は、図3に示すように、空調ユニット10における空気流路内に、空気の流れ方向に対して傾斜した状態で配備されている。図示の例では、吸熱用熱交換器20は、下部20Aが空気流路の風上側になるように、傾斜配備されている。
【0016】
空調ユニット10の吸熱用熱交換器収容部10Bには、水受け部30と排水溝部40が設けられている。水受け部30と排水溝部40は、図4及び図5に示すように、空調ユニット10から部分的に着脱自在な一体部品で構成されている。水受け部30は、吸熱用熱交換器20で生じた凝縮水を受けるように、吸熱用熱交換器20の下面に対向して設けられ、排水溝部40は水受け部30の周囲に設けられている。
【0017】
水受け部30は、外底部が床面Fに対する支持面11になっており、排水溝部40は、床面F(支持面11)より下側に突出して配備されている。このように、排水溝部40を床面Fより下側に突出させることで、空調ユニット10の床面上の厚さに影響することなく、排水溝部40の傾斜を大きくすることができ、床面Fと座席シートとの間のスペースに十分な容積の空気流路を形成しながら、排水溝部40の傾斜を大きくして良好な排水性を確保することができる。
【0018】
水受け部30は、空気流路側の内壁面に、上凸状の頂部31から排水溝部40に向けて下向きに傾斜する傾斜面32を有している。図示の例では、傾斜面32は、複数設けられおり、図5に示した矢印の方向に向けて低くなるように傾斜32A,32B,32C,32Dが区分されている。
【0019】
水受け部30の周囲に設けられている排水溝部40は、図示の例では、傾斜面32における外縁の交差する2辺の周囲に設けられ、傾斜面32における外縁の他の辺は、排水溝部40の1つに向けて下向きに傾斜している。また、傾斜面32における排水溝部40の無い外縁には、その外側に水を堰き止める立ち壁部33が設けられている。
【0020】
排水溝部40は、溝内に排水口(ドレン口)41が設けられている。排水溝部40の溝内の傾斜は、排水口41が最も低くなるようになっており、排水溝部40の溝内に水が入ると排水口41に向けて水が流れる流路が形成されている。図示の例では、排水口41は、水受け部30の平面視対角位置に複数(2個)設けられている。
【0021】
水受け部30と排水溝部40について更に詳細に説明する。水受け部30の内壁面に設けられる頂部31は、水受け部30を平面視した中心に対してオフセットした位置に設けられており、頂部31から下向きに傾斜した各傾斜面32A,32B,32C,32D,32Eは異なる傾斜角度になっている。
【0022】
より具体的には、頂部31は、水受け部30の平面視対角位置に2個設けられている排水口41(41A,41B)を結ぶ対角線Gに対して、排水溝部40(40A,40B)側にオフセットしており、排水溝部40(40A)に直接向かう傾斜面32Aが最も急峻になっている。そして、排水溝部40(40B)に直接向かう傾斜面32B,32Cがその次に急傾斜になっている。これに対して、排水溝部40(40A,40B)に直接向かわない傾斜面32D,32Eは、比較的緩やかな傾斜になっており、傾斜面32Dの外縁では排水溝部40(40B)に向かう下向きの傾斜が付いており、傾斜面32Eの外縁では排水溝部40(40A)に向かう下向きの傾斜が付いている。
【0023】
このような傾斜面32を有する水受け部30は、その内壁面上の何処に水が落下したとしても、最終的には、排水溝部40(40A,40B)に水が流れ込むことになり、水受け部30の外側に水が漏れ出ることはない。
【0024】
具体的には、傾斜面32A,32B,32C上の何れかに落下した水は、直接排水溝部40(40A,40B)に流れ込むことになる。この際、傾斜面32Bと傾斜面32Cから排水溝部40(40B)に至る箇所には、更に急な斜面となる崖部34が設けられている。このような崖部34を設けることで、傾斜面32B,32Cに落下した水を直接排水溝部40(40B)に流し込み易くしている。
【0025】
傾斜面32D上に落下した水は、一端傾斜面32Dの外縁に向けて流れる水があるが、その外縁を伝って排水溝部40(40B)に向けて流れることになる。傾斜面32E上に落下した水は、一端傾斜面32Eの外縁に向けて流れる水があるが、その外縁を伝って排水溝部40(40A)に向けて流れることになる。傾斜面32D,32Eの外縁には、その外側に水を堰き止める立ち壁部33が設けられているので、立ち壁部33の内側が排水溝部40(40A,40B)に向けて水を流す流路になっている。
【0026】
排水溝部40(40A,40B)は、溝内の排水口41(41A,41B)が最も低い位置にあり、それに向けて傾斜する流路が形成されている。排水溝部40(40A,40B)における溝内の傾斜は、排水溝部40(40A,40B)を床面Fより下に突出させていることで、床面Fより上側のスペースの制約を受けることなく、より急な傾斜にすることができる。これによって良好な排水性が確保されている。
【0027】
水受け部30の上に配備される吸熱用熱交換器20は、図6に示すように、支持面11(床面F)に対して傾斜した状態で配備されているが、傾斜している吸熱用熱交換器20の下部20Aが対面する傾斜面32が最も急峻な傾斜面32Aになっている。傾斜した吸熱用熱交換器20の下部20Aは、凝縮水が流下する主流になるので、下部20Aの下端が排水溝部40(40A)に直接臨むように、急峻な傾斜面32A上に近接した状態で対面している。
【0028】
このような車両用空調装置1は、車両が水平に対して前後左右に30度程度傾斜し、空調ユニット10内に配備される吸熱用熱交換器20の傾斜が水平に対して緩やかになり、凝縮水を特定の流路で落下させることができなくなった場合にも、水受け部30は、傾斜面32上の何れかで水を受けて、排水溝部40を介して排水口41に水を導くことができる。傾斜面32の傾斜角度は、車両の前後左右の傾斜を想定した上で、傾斜面32上の何処に水が落下したとしても、滞ることなく水を排水溝部40に流すことができるように適宜設定される。
【0029】
傾斜面32は、水受け部30の中心に対してオフセットした位置に頂部31を設けて、頂部31から異なる角度の傾斜面32A~32Eを形成している。これによって、頂部31をそれほど高くしなくても、効果的に排水溝部40に至る水の流れを形成することができることになり、頂部31を高くしないことで、空調ユニット10内に大きな通風路を確保することができる。
【0030】
そして、排水溝部40を床下に突出させることで、床上のスペースでは、空調ユニット10における空気流路を通気抵抗の増加無く確保することができ、床下のスペースを利用して排水溝部40における流路の傾斜を大きくすることができる。これにより、床上の狭スペースに搭載される車両用空調装置1の空調性能を良好に維持しながら、車両傾斜に対する排水性確保の問題を解消することができる。更には、排水口41自体の数は、従来技術に対して増やすことなく、排水経路の工夫で対応しているので、製品コストを悪化させることなく、車両傾斜時の排水性確保を実現することができる。
【0031】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0032】
1:車両用空調装置,10:空調ユニット,
10A:送風機収容部,10B:吸熱用熱交換器収容部,
10C:放熱用熱交換器収容部,10D:吹き出し流路形成部,
10P:吸気口,10Q:吹き出し口,11:支持面,
20:吸熱用熱交換器,20A:下部,
30:水受け部,31:頂部,
32(32A,32B,32C,32D,32E):傾斜面,
33:立ち壁部,34:崖部,
40(40A,40B):排水溝部,41(41A,41B):排水口,
F:床面,G:対角線
図1
図2
図3
図4
図5
図6