(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】焦点調節装置及び方法、及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 7/28 20210101AFI20241127BHJP
G03B 13/32 20210101ALI20241127BHJP
G03B 13/36 20210101ALI20241127BHJP
H04N 23/67 20230101ALI20241127BHJP
H04N 23/611 20230101ALI20241127BHJP
H04N 23/667 20230101ALI20241127BHJP
【FI】
G02B7/28 N
G03B13/32
G03B13/36
H04N23/67 100
H04N23/611
H04N23/667
(21)【出願番号】P 2020157676
(22)【出願日】2020-09-18
【審査請求日】2023-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本宮 英育
(72)【発明者】
【氏名】友定 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】浅野 元透
(72)【発明者】
【氏名】横関 誠
【審査官】岡田 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-170645(JP,A)
【文献】国際公開第2014/109124(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/28-7/40
H04N 5/222-5/257
H04N 23/00
H04N 23/40-23/76
H04N 23/90-23/959
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像手段により撮影光学系を介して入射する光を光電変換して、繰り返し出力される画像信号から、主被写体の候補となる主被写体候補を検出する検出手段と、
前記主被写体候補から、前記主被写体を選択する選択手段と、
前記撮影光学系に含まれるフォーカスレンズの位置を移動させるための操作手段の操作情報を取得する取得手段と、
オートフォーカスモードが設定され、前記操作手段が操作されていない場合に、前記選択手段により選択された前記主被写体に合焦するように前記フォーカスレンズを制御する焦点調節手段と、を有し、
前記選択手段は、前記操作手段が操作されている場合に、
前記フォーカスレンズの合焦位置に基づいて前記主被写体を選択するとともに、選択した前記主被写体を固定し、
前記操作手段が操作されておらず、且つ、主被写体が固定されていない場合とは異なる条件に基づいて主被写体を選択
し、
前記検出手段は、前記操作手段が操作されているか否かに応じたパラメータ設定に基づいて、主被写体の候補となる主被写体候補を検出する
ことを特徴とする焦点調節装置。
【請求項2】
前記選択手段は、前記操作手段が操作されている場合に、前記フォーカスレンズの合焦位置に最も近い主被写体候補を、前記主被写体として選択することを特徴とする請求項1に記載の焦点調節装置。
【請求項3】
前記選択手段は、前記操作手段が操作され、且つ、選択されている前記主被写体の合焦状態が、前記フォーカスレンズの焦点深度に基づいて設定された状態より低い場合に、主被写体を選択し直すことを特徴とする請求項1または2に記載の焦点調節装置。
【請求項4】
前記取得手段は、前記操作手段の操作による前記フォーカスレンズの合焦位置の移動方向を取得し、
前記選択手段は、前記合焦位置の移動方向に存在する主被写体候補から、前記主被写体を選択し直す
ことを特徴とする請求項3に記載の焦点調節装置。
【請求項5】
撮像手段により撮影光学系を介して入射する光を光電変換して、繰り返し出力される画像信号から、主被写体の候補となる主被写体候補を検出する検出手段と、
前記主被写体候補から、前記主被写体を選択する選択手段と、
前記撮影光学系に含まれるフォーカスレンズの位置を移動させるための操作手段の操作情報を取得する取得手段と、
オートフォーカスモードが設定され、前記操作手段が操作されていない場合に、前記選択手段により選択された前記主被写体に合焦するように前記フォーカスレンズを制御する焦点調節手段と、を有し、
前記検出手段は、前記操作手段が操作されているか否かに応じたパラメータ設定に基づいて、主被写体の候補となる主被写体候補を検出し、
前記選択手段は、前記操作手段が操作されている場合に、前記フォーカスレンズの合焦位置に基づいて前記主被写体を選択するとともに、選択した前記主被写体を固定する
ことを特徴とする焦点調節装置。
【請求項6】
前記選択手段は、前記操作手段が操作されている場合に、前記フォーカスレンズの合焦位置に最も近い主被写体候補を、前記主被写体として選択することを特徴とする請求項5に記載の焦点調節装置。
【請求項7】
前記選択手段は、前記操作手段が操作され、且つ、選択されている前記主被写体の合焦状態が、前記フォーカスレンズの焦点深度に基づいて設定された状態より低い場合に、主被写体を選択し直すことを特徴とする請求項5または6に記載の焦点調節装置。
【請求項8】
前記取得手段は、前記操作手段の操作による前記フォーカスレンズの合焦位置の移動方向を取得し、
前記選択手段は、前記合焦位置の移動方向に存在する主被写体候補から、前記主被写体を選択し直す
ことを特徴とする請求項7に記載の焦点調節装置。
【請求項9】
撮像手段により撮影光学系を介して入射する光を光電変換して、繰り返し出力される画像信号から、主被写体の候補となる主被写体候補を検出する検出手段と、
前記主被写体候補から、前記主被写体を選択する選択手段と、
前記撮影光学系に含まれるフォーカスレンズの位置を移動させるための操作手段の操作情報を取得する取得手段と、
オートフォーカスモードが設定され、前記操作手段が操作されていない場合に、前記選択手段により選択された前記主被写体に合焦するように前記フォーカスレンズを制御する焦点調節手段と、を有し、
前記選択手段は、前記操作手段が操作されている場合に、
前記フォーカスレンズの合焦位置に基づいて前記主被写体を選択するとともに、選択した前記主被写体を固定し、
前記操作手段が操作されておらず、且つ、主被写体が固定されていない場合とは異なる条件に基づいて主被写体を選択し、
前記検出手段は、
前記画像信号から、第1の特徴を有する第1の領域を検出する第1の検出手段と、
前記画像信号から、前記第1の領域に関係し、第2の特徴を有する第2の領域を検出する第2の検出手段と、を有し、
前記操作手段が操作されている場合、前記第1の領域が検出できていなくても、前記第2の領域が検出できていれば、前記第2の領域を前記主被写体候補とし、
前記操作手段が操作されていない場合、前記第1の領域が検出できていなくても、以前に前記第1の領域が検出できていれば、前記第2の領域を前記主被写体候補とする
ことを特徴とす
る焦点調節装置。
【請求項10】
前記第1の検出手段は、顔領域を検出し、前記第2の検出手段は、頭部領域を検出することを特徴とする請求項9に記載の焦点調節装置。
【請求項11】
撮像手段により撮影光学系を介して入射する光を光電変換して、繰り返し出力される画像信号から、主被写体の候補となる主被写体候補を検出する検出手段と、
前記主被写体候補から、前記主被写体を選択する選択手段と、
前記撮影光学系に含まれるフォーカスレンズの位置を移動させるための操作手段の操作情報を取得する取得手段と、
オートフォーカスモードが設定され、前記操作手段が操作されていない場合に、前記選択手段により選択された前記主被写体に合焦するように前記フォーカスレンズを制御する焦点調節手段と、を有し、
前記選択手段は、
前記操作手段が操作されている場合に、
前記フォーカスレンズの合焦位置に基づいて前記主被写体を選択するとともに、選択した前記主被写体を固定し、
前記操作手段が操作されておらず、且つ、主被写体が固定されていない場合とは異なる条件に基づいて主被写体を選択し、
前記検出手段は、
前記画像信号から、第1の特徴を有する第1の領域を検出する第1の検出手段と、
前記画像信号から、前記第1の領域に関係し、第2の特徴を有する第2の領域を検出する第2の検出手段と、を有し、
前記第1の領域および前記第2の領域の情報に基づいて、前記主被写体候補を検出し、
前記第1の検出手段は、前記操作手段が操作されている場合と、操作されていない場合とで、検出のし易さが異なるパラメータ設定にて前記第1の領域を検出する
ことを特徴とす
る焦点調節装置。
【請求項12】
前記パラメータ設定は大きさを含み、前記操作手段が操作されている場合に、前記操作手段が操作されていない場合よりも、前記第1の領域として検出する領域の大きさの下限を小さくすることを特徴とする請求項
11に記載の焦点調節装置。
【請求項13】
前記パラメータ設定は前記第1の領域を検出する画像の範囲を含み、前記第1の検出手段は、前記操作手段が操作されている場合に、前記操作手段が操作されていない場合よりも、より広い範囲で前記第1の領域を検出することを特徴とする請求項
11または
12に記載の焦点調節装置。
【請求項14】
前記パラメータ設定は信頼性を含み、前記操作手段が操作されている場合に、前記操作手段が操作されていない場合よりも、前記第1の領域として検出する領域の信頼性の下限を低くすることを特徴とする請求項
11乃至
13のいずれか1項に記載の焦点調節装置。
【請求項15】
前記検出手段は、前記操作手段が操作されている場合に、前記第1の領域および前記第2の領域の少なくともいずれか一方に含まれる被写体を主被写体候補として検出し、前記操作手段が操作されていない場合に、前記第1の領域に含まれる被写体および過去に主被写体候補として検出された前記第2の領域に含まれる被写体を主被写体候補として検出することを特徴とする請求項
9乃至
14のいずれか1項に記載の焦点調節装置。
【請求項16】
前記撮像手段から出力された画像信号に基づいて、画像を表示する表示手段を更に有し、
オートフォーカスモードが設定され、且つ、前記操作手段が操作されていない場合に、前記表示手段に表示された画像上に、前記選択手段により選択された主被写体を示す第1の表示を行い、
前記操作手段が操作されている場合に、前記表示手段に表示された画像上に、前記第1の表示と、前記検出手段により検出された主被写体候補を示す第2の表示とを行う
ことを特徴とする請求項1乃至
15のいずれか1項に記載の焦点調節装置。
【請求項17】
前記検出手段により前記主被写体候補として検出されてから、前記第2の表示を行う時間を、前記主被写体候補ごとにそれぞれ設定する設定手段を更に有することを特徴とする請求項
16に記載の焦点調節装置。
【請求項18】
請求項1乃至
17のいずれか1項に記載の焦点調節装置と、
前記撮像手段と
を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項19】
前記撮影光学系を更に有することを特徴とする請求項
18に記載の撮像装置。
【請求項20】
前記撮影光学系が着脱可能であることを特徴とする請求項
18に記載の撮像装置。
【請求項21】
撮像手段により撮影光学系を介して入射する光を光電変換して、繰り返し出力される画像信号から、主被写体の候補となる主被写体候補を検出する検出工程と、
前記主被写体候補から、前記主被写体を選択する選択工程と、
前記撮影光学系に含まれるフォーカスレンズの位置を移動させるための操作手段の操作情報を取得する取得工程と、
オートフォーカスモードが設定され、前記操作手段が操作されていない場合に、前記選択工程で選択された前記主被写体に合焦するように前記フォーカスレンズを制御する焦点調節工程と、を有し、
前記選択工程では、前記操作手段が操作されている場合に、
前記フォーカスレンズの合焦位置に基づいて前記主被写体を選択するとともに、選択した前記主被写体を固定し、
前記操作手段が操作されておらず、且つ、主被写体が固定されていない場合とは異なる条件に基づいて主被写体を選択
し、
前記検出工程では、前記操作手段が操作されているか否かに応じたパラメータ設定に基づいて、主被写体の候補となる主被写体候補を検出する
ことを特徴とする焦点調節方法。
【請求項22】
撮像手段により撮影光学系を介して入射する光を光電変換して、繰り返し出力される画像信号から、主被写体の候補となる主被写体候補を検出する検出工程と、
前記主被写体候補から、前記主被写体を選択する選択工程と、
前記撮影光学系に含まれるフォーカスレンズの位置を移動させるための操作手段の操作情報を取得する取得工程と、
オートフォーカスモードが設定され、前記操作手段が操作されていない場合に、前記選択工程で選択された前記主被写体に合焦するように前記フォーカスレンズを制御する焦点調節工程と、を有し、
前記検出工程では、前記操作手段が操作されているか否かに応じたパラメータ設定に基づいて、主被写体の候補となる主被写体候補を検出し、
前記選択工程では、前記操作手段が操作されている場合に、前記フォーカスレンズの合焦位置に基づいて前記主被写体を選択するとともに、選択した前記主被写体を固定する
ことを特徴とする焦点調節方法。
【請求項23】
撮像手段により撮影光学系を介して入射する光を光電変換して、繰り返し出力される画像信号から、主被写体の候補となる主被写体候補を検出する検出工程と、
前記主被写体候補から、前記主被写体を選択する選択工程と、
前記撮影光学系に含まれるフォーカスレンズの位置を移動させるための操作手段の操作情報を取得する取得工程と、
オートフォーカスモードが設定され、前記操作手段が操作されていない場合に、前記選択工程で選択された前記主被写体に合焦するように前記フォーカスレンズを制御する焦点調節工程と、を有し、
前記選択工程では、前記操作手段が操作されている場合に、
前記フォーカスレンズの合焦位置に基づいて前記主被写体を選択するとともに、選択した前記主被写体を固定し、
前記操作手段が操作されておらず、且つ、主被写体が固定されていない場合とは異なる条件に基づいて主被写体を選択し、
前記検出工程は、
前記画像信号から、第1の特徴を有する第1の領域を検出する第1の検出工程と、
前記画像信号から、前記第1の領域に関係し、第2の特徴を有する第2の領域を検出する第2の検出工程と、を有し、
前記操作手段が操作されている場合、前記第1の領域が検出できていなくても、前記第2の領域が検出できていれば、前記第2の領域を主被写体候補とし、
前記操作手段が操作されていない場合、前記第1の領域が検出できていなくても、以前に前記第1の領域が検出できていれば、前記第2の領域を前記主被写体候補とする
ことを特徴とする焦点調節方法。
【請求項24】
撮像手段により撮影光学系を介して入射する光を光電変換して、繰り返し出力される画像信号から、主被写体の候補となる主被写体候補を検出する検出工程と、
前記主被写体候補から、前記主被写体を選択する選択工程と、
前記撮影光学系に含まれるフォーカスレンズの位置を移動させるための操作手段の操作情報を取得する取得工程と、
オートフォーカスモードが設定され、前記操作手段が操作されていない場合に、前記選択工程で選択された前記主被写体に合焦するように前記フォーカスレンズを制御する焦点調節工程と、を有し、
前記選択工程では、前記操作手段が操作されている場合に、
前記フォーカスレンズの合焦位置に基づいて前記主被写体を選択するとともに、選択した前記主被写体を固定し、
前記操作手段が操作されておらず、且つ、主被写体が固定されていない場合とは異なる条件に基づいて主被写体を選択し、
前記検出工程は、
前記画像信号から、第1の特徴を有する第1の領域を検出する第1の検出工程と、
前記画像信号から、前記第1の領域に関係し、第2の特徴を有する第2の領域を検出する第2の検出工程と、
前記第1の領域および前記第2の領域の情報に基づいて、前記主被写体候補を検出する第3の検出工程と、を有し、
前記第1の検出工程では、前記操作手段が操作されている場合と、操作されていない場合とで、検出のし易さが異なるパラメータ設定にて前記第1の領域を検出する
ことを特徴とする焦点調節方法。
【請求項25】
コンピュータを、請求項1乃至
17のいずれか1項に記載の焦点調節装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【請求項26】
請求項
25に記載のプログラムを記憶したコンピュータが読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焦点調節装置及び方法、及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のオートフォーカス(AF)制御において、合焦したい被写体に対して、ユーザーがAF枠を指定しなければならないことがあった。しかしながら、例えば、取材等で使用される肩担ぎタイプのカメラ等では、AF枠を操作するための操作装置を操作者が操作し易い場所に設置することが難しいことがある。
【0003】
そこで、特許文献1には、操作者が行うマニュアルフォーカス(MF)操作によってピントが合わせられた被写体に対して、AF枠を自動で設定する技術が開示されている。
【0004】
さらに、特許文献2には、操作者が行うマニュアルフォーカス操作の結果、ピントが合わせられた位置が顔検出領域内であれば、顔が検出されれば顔に、顔が検出されなければ顔以外の被写体にAF枠を設定して、自動追尾及びAFを行う技術が開示されている。
【0005】
一方、画像から特定の被写体を自動的に検出する画像処理が知られている。例えば、デジタルカメラやデジタルビデオカメラでは、撮影画像から特に人物の顔を検出し、その検出結果を制御対象として、焦点や露出を最適化させることが行われている。しかしながら、一般的な顔検出技術では、人物が後ろ向きや顔に装飾品を付けている場合等、顔の特徴が十分に得られない場合は、安定した検出ができなくなる。
【0006】
そこで、特許文献3では、画像から人物の上半身や頭部部分を検出し、人物の上半身や頭部の領域、あるいはこれらの検出結果から推定した顔の領域を制御対象とする方法が提案されている。この方法であれば、人物が後ろ向きや顔に装飾品を付けている場合であっても、人物の顔領域を安定して特定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2010-97167号公報
【文献】特許第5474528号公報
【文献】特開2017-126915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、MF操作で、ピント合わせを行うには、熟練した技術が必要であり、合焦位置まで滑らかにフォーカスレンズを移動させるのは難しい。さらに、近年、画素数の増加により、4K、8Kの解像度になってきており、カメラに付属されたモニタで合焦位置を確認するのは、非常に困難になっている。そのため、特許文献2に記載された技術のように、操作者がマニュアルフォーカス操作を行い、顔に対して略合焦状態になるまで操作するのは、ピント合わせの技術という点と、解像度によるボケの発生という点で、動画の品位が低下する可能性がある。
【0009】
一方、特許文献3に記載された顔検出技術を用いて被写体追従を行う方法では、ユーザーが画面内の追尾被写体と異なる任意の被写体に合焦させたい場合に、変更することができない。
【0010】
本発明は上記問題点を鑑みてなされたものであり、焦点を合わせる主被写体を自動的に決定すると共に、ユーザーの意図に応じて柔軟に主被写体を変更できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の焦点調節装置は、撮像手段により撮影光学系を介して入射する光を光電変換して、繰り返し出力される画像信号から、主被写体の候補となる主被写体候補を検出する検出手段と、
前記主被写体候補から、前記主被写体を選択する選択手段と、
前記撮影光学系に含まれるフォーカスレンズの位置を移動させるための操作手段の操作情報を取得する取得手段と、
オートフォーカスモードが設定され、前記操作手段が操作されていない場合に、前記選択手段により選択された前記主被写体に合焦するように前記フォーカスレンズを制御する焦点調節手段と、を有し、前記選択手段は、前記操作手段が操作されている場合に、前記フォーカスレンズの合焦位置に基づいて前記主被写体を選択するとともに、選択した前記主被写体を固定し、前記操作手段が操作されておらず、且つ、主被写体が固定されていない場合とは異なる条件に基づいて主被写体を選択し、
前記検出手段は、前記操作手段が操作されているか否かに応じたパラメータ設定に基づいて、主被写体の候補となる主被写体候補を検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、焦点を合わせる主被写体を自動的に決定すると共に、ユーザーの意図に応じて柔軟に主被写体を変更することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1の実施形態におけるデジタ
ルビデオ
カメラシステムの構成を示すブロック図。
【
図2】第1の実施形態における
焦点調節処理のフローチャート。
【
図3】第1の実施形態における
パラメータ設定処理のフローチャート。
【
図4】第1の実施形態における焦点検出枠設定処理を説明する図。
【
図5】第1の実施形態における主被写体候補判定処理のフローチャート。
【
図6】第1の実施形態における主被写体変更処理のフローチャート。
【
図7】第1の実施形態における切り替わり被写体特定処理のフローチャート。
【
図8】第1の実施形態における主被写体ロック判定処理のフローチャート。
【
図9】第1の実施形態におけるMF操作中とMF操作中でない場合に検出される被写体を示す枠表示の一例を示す概念図。
【
図10】第1の実施形態におけるMF操作中とMF操作中でない場合の主被写体と主被写体候補を示す枠表示の一例を示す概念図。
【
図11】第1の実施形態における主被写体候補及び主被写体を示す枠表示の例を示す概念図。
【
図12】第2の実施形態における主被写体候補判定処理のフローチャート。
【
図13】第2の実施形態における主被写体候補リセット時間設定処理を示すフローチャート。
【
図14】第2の実施形態における主被写体用リセット時間調整処理を示すフローチャート。
【
図15】第2の実施形態における主被写体候補用リセット時間調整処理を示すフローチャート。
【
図16】第2の実施形態における主被写体用リセット時間及び主被写体候補用リセット時間を調整するエリア及び被写体間の距離を示す概念図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0015】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の実施形態では、撮像装置としてデジタルビデオカメラシステムを例に説明するが、これに限定されるものではない。
【0016】
図1は、本発明の実施形態におけるレンズ交換式のデジタルビデオカメラシステムの構成を示すブロック図である。本実施形態におけるカメラシステムは、レンズユニット10及びカメラ本体20から構成され、レンズユニット10全体の動作を統括制御するレンズ制御部106と、カメラシステム全体の動作を統括するカメラ制御部207がデータを通信している。本実施形態において、カメラ制御部207は、CPU、MPU等のプロセッサとメモリ等の記憶手段とで構成される。また、カメラ制御部207は演算回路を備え、該演算回路でプロセッサが行う一部の演算機能を実行してもよい。なお、本実施形態ではレンズユニット10がカメラ本体20から着脱可能なレンズ交換式のカメラシステムを例に説明するが、レンズと一体型のカメラにおいても本発明を適用可能である。
【0017】
まず、レンズユニット10の構成について説明する。レンズユニット10は、固定レンズ101、ズームレンズ108、絞り102、フォーカスレンズ103を備えて構成される撮影光学系を有する。絞り102は、絞り駆動部104によって駆動され、後述する撮像素子201への入射光量を制御する。フォーカスレンズ103は、フォーカスレンズ駆動部105によって駆動され、焦点調節を行う。ズームレンズ108は、ズームレンズ駆動部109によって駆動されることにより、ズーム倍率の調節を行う。なお、ズーム機能が無いレンズユニット10を用いてもよい。
【0018】
絞り駆動部104、フォーカスレンズ駆動部105、ズームレンズ駆動部109はレンズ制御部106によって制御され、絞り102の開口量や、フォーカスレンズ103及びズームレンズ108の位置が決定される。ユーザーによりレンズ操作部107を介して絞りやフォーカス、ズーム等の操作が行われた場合には、レンズ制御部106がユーザー操作に応じた制御を行う。また、レンズ制御部106は、後述するカメラ制御部207から受信した制御命令及び制御情報に応じて、絞り駆動部104やフォーカスレンズ駆動部105、ズームレンズ駆動部109の制御を行う。更に、レンズ制御部106は、レンズ情報(例えば、MF操作情報や撮影光学系についての情報)をカメラ制御部207に送信する。
【0019】
次に、カメラ本体20の構成について説明する。カメラ本体20は、レンズユニット10の撮影光学系を通過した光束から、画像信号及びAF用信号を取得可能に構成されている。撮像素子201は、CCDやCMOSセンサ等を用いて構成される。撮影光学系を通過した光束が撮像素子201の受光面上に入射し、形成された被写体像がフォトダイオードによって入射光量に応じた電荷に変換(光電変換)される。各フォトダイオードに蓄積された電荷は、カメラ制御部207の指令に従ってタイミングジェネレータ209から与えられる駆動パルスに基づいて、電荷に応じた電圧信号が、画像信号及びAF用信号として撮像素子201から順次読み出される。
【0020】
撮像素子201から読み出された画像信号及びAF用信号は、CDS/AGC回路202に入力され、リセットノイズを除去する為の相関二重サンプリング、ゲインの調節、信号のデジタル化が行われる。そして、CDS/AGC回路202は、得られた画像データをカメラ信号処理部203、顔領域検出部210及び頭部領域検出部211に、AF用データをAF信号処理部204にそれぞれ出力する。
【0021】
カメラ信号処理部203は、CDS/AGC回路202から出力された画像データを表示部205に送信する。表示部205は、LCDや有機EL等を用いて構成される表示デバイス(表示部材)であり、画像データに基づく画像を表示する。また、画像の記録を行うモードの時には、画像データは記録部206に記録される。
【0022】
AF信号処理部204は、CDS/AGC回路202から出力されたAF用データに基づいて、公知の手法により、焦点状態と信頼性に関する情報を算出する。信頼性に関する情報としては、コントラスト情報、飽和情報、キズ情報等、また、いわゆる像面位相差方式に対応した撮像素子201である場合には、二像一致度、二像急峻度等を用いることができる。そして、算出した焦点状態と信頼性情報とをカメラ制御部207へ出力する。
【0023】
顔領域検出部210(第1の検出手段)は、CDS/AGC回路202から出力された画像データに対して公知の顔検出処理を施し、撮影画面内の人物の顔領域(第1の領域)を検出する。すなわち、顔領域検出部210は、画像データから予め定められた被写体(ここでは顔)を検出する。得られた顔検出結果はカメラ制御部207に送信される。顔領域検出部210が行う顔検出処理としては、例えば、画像データで表される各画素の階調色から肌色領域を抽出し、予め用意した顔の輪郭プレートとのマッチング度で顔を検出する方法がある。他に、周知のパターン認識技術を用いて、目、鼻、口等の顔の特徴点を抽出することで顔検出を行う方法等があるが、本発明は顔検出処理の方法により制限されるものではなく、どのような方法を用いてもよい。また、顔に限るものではなく、人物の顔以外の被写体であってもよい。
【0024】
頭部領域検出部211(第2の検出手段)は、目的とする被写体領域を顔領域検出部210により検出する顔領域(第1の領域)に関係した領域である頭部領域(第2の領域)として、画像中から検出する。すなわち、頭部領域検出部211は、画像データから、顔領域検出部210により検出した予め決められた被写体に関係した、予め定められた被写体(ここでは頭部)を検出する。本実施形態における頭部領域検出では、学習データに基づいて画像データから頭部領域を検出し、検出結果はカメラ制御部207に送信される。
【0025】
カメラ制御部207は、顔領域検出部210の顔検出結果及び頭部領域検出部211の頭部検出結果に基づき、撮影画面内の顔領域及び頭部領域を含む位置に焦点検出領域を設定するようにAF信号処理部204へ情報を送信する。本第1の実施形態では、顔が検出されている場合は、顔領域の位置及びサイズに基づいて焦点検出領域を設定する。一方、顔が検出されておらず、頭部領域のみ検出されている場合は、頭部領域の位置及びサイズに基づいて焦点検出領域を設定する。なお、頭部領域のみ検出されている場合は、頭部検出結果から被写体の顔領域の位置及びサイズを推定し、その推定位置及びサイズに基づいて焦点検出領域を設定するようにしてもよい。
【0026】
また、カメラ制御部207は、カメラ本体20内の各構成と情報をやり取りして制御を行うと共に、カメラ本体20内の処理だけでなく、カメラ操作部208からの入力に応じて、ユーザーが操作したカメラ機能を実行する。ユーザーにより操作されるカメラの機能は、例えば、電源のON/OFF、設定の変更、記録の開始、AF(オートフォーカス)/MF(マニュアルフォーカス)制御の切り替え、記録画像の確認等を含む。また、上述したように、カメラ制御部207は、レンズユニット10内のレンズ制御部106と情報をやり取りし、撮影光学系の制御命令や制御情報を送ったり、レンズユニット10内の情報を取得したりする。また、レンズ制御部106からのレンズユニット10内の情報と、AF信号処理部204からの焦点状態と信頼性情報とを用いて、合焦状態にするためのフォーカスレンズ103の駆動量を算出する処理も行う。
【0027】
また、カメラ制御部207は、主被写体候補判定部220、主被写体ロック部221、主被写体候補リセット判定部222を備える。主被写体候補判定部220は、顔領域検出部210により得られた顔検出結果及び頭部領域検出部211により得られた頭部検出結果に基づき、主被写体の候補となり得るかどうかを判定する。そして、主被写体の候補と判定した被写体の中から、後述する主被写体決定処理により主被写体を選択するとともに、主被写体及び主被写体候補であることを示す枠表示を撮影画像上に重畳させる処理を行い、表示部205等に表示する。
【0028】
次に、第1の実施形態における焦点調節処理について、
図2を用いて説明する。第1の実施形態における焦点調節処理は、顔領域検出部210及び頭部領域検出部211による顔領域及び頭部領域の検出結果に基づいた制御に特徴がある。なお、この焦点調節処理は、カメラ制御部207内に格納されたコンピュータプログラムに従って実行される。また、以下に説明する一連の焦点調節処理は、撮像周期に同期して行うシステムを想定しているが、これに限らなくてもよい。
【0029】
まずS201において、顔領域検出部210は、被写体検出に使用するパラメータを設定する、被写体検出用のパラメータ設定処理を行う。なお、パラメータ設定処理の詳細については、
図3を用いて後述する。そして、AFかMFかに応じて、設定されたパラメータを用いて、顔領域検出部210による顔領域の検出及び頭部領域検出部211による頭部領域の検出を行う。その後、S202に遷移する。
【0030】
次に、S202において、AF信号処理部204は、CDS/AGC回路202から出力されたAF用信号に対して焦点検出枠を設定する、焦点検出枠設定処理を行うと共に、設定した焦点検出枠毎に焦点状態を検出する。なお、ここで行われる焦点検出枠設定処理については、
図4を用いて後述する。その後、S203に遷移する。
【0031】
S203では、顔領域検出部210による顔検出結果、頭部領域検出部211による頭部検出結果、及び追尾探索結果を取得し、被写体情報を生成して、S204に遷移する。なお、ここで生成する被写体情報は、検出ID、顔検出結果、頭部検出結果、追尾探索結果、被写体領域の位置及びサイズ、主被写体候補フラグ、主被写体フラグ、主被写体ロックフラグ、焦点検出結果の情報を含む。
【0032】
検出IDは、カメラ制御部207が、取得した顔検出結果と頭部検出結果に基づいて被写体を検出し、検出した被写体に付与するものである。その際に、カメラ制御部207は、顔領域と頭部領域を判定し、同じ被写体のものと判定された顔領域と頭部検出結果に同じ検出IDを割り当てる。更に、現フレームで検出された被写体と同じ被写体が、前フレームでも検出されているかどうかを判断する追尾探索処理を行う。この追尾探索処理は、例えば、前フレームの画像を用いて、テンプレートマッチングやヒストグラムマッチング等の公知の手法を用いて行うことができる。追尾探索処理の結果、前フレームの画像中に同じ被写体があると判断された場合、その被写体に付与した検出IDと同じ検出IDを現フレームで検出された被写体に割り当てる。
【0033】
顔検出結果は、顔領域検出部210により検出された顔領域の位置及びサイズに関する情報、頭部検出結果は、頭部領域検出部211により検出された頭部領域の位置及びサイズに関する情報である。なお、顔検出結果及び頭部検出結果の代わりに、該当する情報が存在するか否かを示す情報と、存在する場合に該当する情報にアクセスするためのリンクを保持するようにしてもよい。
【0034】
追尾探索結果は、上述した追尾探索処理により前フレームの画像中に同じ被写体があったか否かの情報を示す。
【0035】
被写体領域は、顔検出結果及び頭部検出結果に基づいて判断された、被写体の位置及びサイズに関する情報を示す。
【0036】
主被写体候補フラグは、後述するS204における主被写体候補判定処理によって、付加される情報を示す。主被写体フラグは、後述するS206で行われる主被写体変更処理、及び、S208で行われる主被写体ロック判定処理によって付加される情報であり、1つの被写体に対してのみ設定される。主被写体ロックフラグも、後述するS206で行われる主被写体変更処理、及び、S208で行われる主被写体ロック判定処理によって付加される情報であり、主被写体フラグを固定するときに使うフラグである。なお、これらのフラグの情報は、前フレームの画像中に同じ被写体がある場合に、同じ検出IDにおける情報がS203において引き継がれる。
【0037】
焦点検出結果は、S202において検出された焦点状態を示す。
【0038】
S204では、カメラ制御部207において、S203で検出された被写体のうち、主被写体の候補を判定して主被写体候補フラグを設定する、主被写体候補判定処理を行う。この処理は、
図5を用いて後述する。その後、S205に遷移する。
【0039】
S205では、MF操作中かどうかを判断する。MFの操作情報は、レンズ操作部107またはカメラ操作部208によって取得でき、基本的に以下に示す3つのパターンがある。
【0040】
(1)MFに設定して、レンズユニット10を直接操作するパターン
レンズ操作部107によって、レンズユニット10につけられた、不図示のAFとMFのスイッチを切り替えること、または、カメラ操作部208によってカメラのメニューから不図示のAFモード(オートフォーカスモード)とMFモード(マニュアルフォーカスモード)とを切り替えることで、レンズをMF操作可能にした状態に設定する。その状態で、レンズ操作部107を直接操作して、フォーカスレンズ駆動部105を駆動させる。
【0041】
(2)MFに設定して、カメラ本体20からレンズユニット10を操作するパターン
カメラ操作部208から、カメラ本体20のメニューを通して、不図示のMFモードへの切り替えを行い、レンズユニット10をMF操作可能にした状態に設定する。その状態で、ユーザーがマニュアル操作の駆動情報を設定し、その情報を、カメラ制御部207を介して、レンズ制御部106に送信することで、フォーカスレンズ駆動部105を駆動させる。
【0042】
(3)AF設定のまま、レンズユニット10を直接操作するパターン
レンズユニット10及びカメラ本体20はAF設定のまま、レンズ操作部107を直接操作することで、フォーカスレンズ駆動部105を駆動させる。なお、この状態の場合、操作が終了するとAFに戻る。
【0043】
MF操作中である場合は、S206に遷移し、そうでない場合は、S207に遷移する。
【0044】
S206では、主被写体候補フラグが設定された被写体の中から、ユーザーが撮影したい被写体を特定して主被写体フラグを設定する、主被写体変更処理を行う。この処理については、
図6を用いて後述する。その後、S211に遷移する。
【0045】
一方、S207では、カメラ操作部208からユーザーの被写体指定指示があったか否かを判断する。被写体指定指示があったと判断した場合はS208に遷移し、そうでない場合は、S209に遷移する。なお、被写体指定方法としては、例えば、タッチパネルにより指定する方式や、十字キーのように方向や押し込みを検出することで指定する方法が考えられる。
【0046】
S208では、主被写体ロック部221による主被写体ロック処理を行う。主被写体ロック処理は、S204で決定した主被写体候補の結果に拠らず、ユーザー指示に基づいて主被写体を決定する処理である。なお、この処理は、
図8を用いて後述する。その後、S211に遷移する。
【0047】
S209では、S208において後述する処理により設定される主被写体ロックフラグの有無を判定することにより、主被写体がロックされていないかどうかを判定する。主被写体がロックされていない場合はS210に遷移し、ロックされている場合は、S211に遷移する。
【0048】
S210では、S204における主被写体候補判定処理において決定された主被写体候補の中から、人物の位置やサイズに基づいて主被写体を決定する。なお、主被写体を決定するためのパラメータとして、位置やサイズだけでなく、顔検出及び頭部検出の結果の信頼度や向き、顔及び頭部の両方が検出されているか、いずれか一方のみ検出されているか等に応じて決定してもよい。また、主被写体候補の中から公知のアルゴリズムを用いて主被写体を決定してもよい。
【0049】
S211では、表示部205に、主被写体候補フラグが設定された被写体に枠を表示し、ユーザーに通知する枠表示処理を行う。具体的には、S206、S208、S210で決定した主被写体に対して、主被写体であることを示す主被写体枠を顔または頭部部分に表示する。また、主被写体候補フラグがONである被写体の中で、主被写体フラグがONでない顔または頭部部分に、主被写体候補であることを示す候補枠を表示する。さらに、主被写体ロックフラグがONの場合には、主被写体枠のみを表示し、主被写体以外の主被写体候補フラグがONの顔または頭部部分に候補枠を表示しない。
【0050】
S212では、MFが設定されているか、またはMF操作中であるかどうかを判断する。MFが設定されているか、MF操作中の場合、S213に進んで主被写体フラグがONである主被写体の焦点検出結果に基づいて、レンズ制御部106にフォーカスレンズ103の駆動命令を送るレンズ制御処理を行う。主被写体フラグがONの被写体が無い場合は、例えば、画面中央に焦点検出枠を設定し、その焦点検出結果等に基づいてレンズ制御処理を行う。なお、焦点検出方法及びレンズ制御処理に関しては、従来の方法を用いればよいため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0051】
なお、MFが設定されている場合、またはMF操作中の場合は、ユーザーがフォーカスレンズ103を操作しているため、そのまま処理を終了する。
【0052】
続いて、
図3を用いて、S201で行われるパラメータ設定処理について説明する。パラメータ設定処理は、顔領域検出部210において参照されるパラメータを設定する処理である。本実施形態では、MF操作中とMF操作中でない場合とで閾値の設定を異ならせ、MF操作中は、ユーザーが狙った被写体を検出させるために、小さい顔や信頼度が低い顔でも検出し易くする。
【0053】
まず、S301において、MF操作中か否かを判断する。なお、ここでの判断は、上述した3つのパターンのいずれかによる操作が行われているかどうかを判断することにより行う。MF操作中であればS302に遷移し、そうでない場合はS305に遷移する。
【0054】
S302では、検出できる最小顔サイズの閾値FaceTh1を設定する。例えば、撮像素子201上の画素サイズで設定した場合、15ピクセル以上の顔を検出したい場合は、「15」と設定する。
【0055】
次にS303では、顔検出の信頼度の閾値RelianceTh1を設定する。例えば、顔検出結果の信頼度が10段階で出力される場合であって、信頼度が3以上の顔を検出したい場合は、「3」と設定する。
【0056】
そして、S304において顔検出の範囲の閾値AreaTh1を設定し、処理を終了する。例えば、顔検出の対象範囲を画面の90%で検出したい場合は、「90」と設定する。
【0057】
一方、S301でMF操作中ではないと判断された場合にはS305に遷移して、検出できる最小顔サイズの閾値FaceTh2を設定する。例えば、撮像素子201上の画素サイズで設定した場合、25ピクセル以上の顔を検出したい場合は、「25」と設定する。
【0058】
次に、S306では、顔検出の信頼度の閾値RelianceTh2を設定する。例えば、顔検出結果の信頼度が10段階で出力される場合であって、信頼度が6以上の顔を検出したい場合は、「6」と設定する。
【0059】
そして、S307において顔検出の範囲の閾値AreaTh2を設定し、処理を終了する。例えば、顔検出の対象範囲を画面の80%で検出したい場合は、「80」と設定する。
【0060】
なお、上記の閾値の関係は、FaceTh1<FaceTh2、RelianceTh1<RelianceTh2、AreaTh1>AreaTh2として、MF時に顔検出をよりし易い設定にする。このように、MF操作中は、MF操作中でない場合よりも、最小顔サイズの下限を小さくし、顔検出の信頼度の下限を低くし、顔検出範囲を広くする。
【0061】
上記のようにパラメータを設定した場合に得られる被写体検出結果について、
図9を用いて説明する。
図9(a)は、MF操作中でなく、画面に被写体901、902を含む場合を示している。この場合、被写体901は被写体検出により検出されるが、被写体902は、S305で設定される最小顔サイズの閾値FaceTh2よりも顔が小さいため検出されない。更に、被写体902は、画面周辺に位置しており、S307で設定される顔検出の範囲の閾値AreaTh2よりも外側にある場合には、そもそも主被写体になる可能性が低いため、被写体検出自体が行われないように制限される。
【0062】
このような被写体検出結果に基づいて、S208またはS210における処理により、被写体901が主被写体として判定された場合、S211において、被写体901に主被写体であることを示す主被写体枠903が表示される。一方、被写体902には、枠表示はなされない。また、被写体901のみが焦点検出処理の対象となる。
【0063】
図9(b)は、同じ被写体で、MF操作中である場合を示している。MF操作中の場合、ユーザーが意図的に、被写体902に対して、フォーカス操作を行う可能性がある。そのため、顔検出の閾値を下げ、顔検出範囲を広げて、顔検出がし易い状態に変更することで、被写体901及び902が共に検出される。
【0064】
このような被写体検出結果に基づいて、S206における処理により、被写体901が主被写体として判定された場合、S211において、被写体901に主被写体を示す主被写体枠903が表示される。また、被写体902には、候補枠904が表示されると共に、被写体901及び902が共に焦点検出処理の対象となる。このように、MF操作中は、MF操作中でない場合に主被写体の候補にしていなかった被写体に対しても焦点検出処理の対象とすることで、ユーザーの意図を反映させた主被写体の切り替えが可能になる。
【0065】
続いて、
図4を用いて、S202で行われる焦点検出枠設定処理について説明する。焦点検出枠
設定処理は、撮像面上に、メッシュ状に焦点検出枠を設定する処理であり、その各々の枠から得られるAF用信号に基づいて、焦点検出が行われる。
【0066】
本実施形態では、MF操作中かMF操作中でないかにより焦点検出枠の設定方法が異なる。S202では、上述したパターン(1)から(3)のうち、いずれかのパターンによるMF操作が検出されるとMF操作中と判断し、MF操作中とそうでない場合とでそれぞれに対応した焦点検出枠を設定する。
【0067】
図4において、被写体401、402、403は、S201で設定されたパラメータを用いて、S202において顔領域検出部210及び頭部領域検出部211により検出された被写体の例を示す。
図4(a)は、MF操作中でない場合の焦点検出枠の設定方法を示しており、被写体401、402、403に対して、被写体の大きさに応じた焦点検出枠405、406、407を設定する。この設定方法は、以下のメリットを有する。
・被写体以外の不要部分を排除した効率の良い焦点検出処理が可能。
・被写体のサイズに応じて、枠のサイズを可変にしているため、小さい顔に対して、大きな焦点検出枠を設定することなく、枠内の遠近競合を低減することで、安定した焦点検出結果が得られる。
【0068】
なお、
図4(a)に示す例では、説明のため焦点検出枠をそれぞれの被写体に対して設定しているが、MF操作中でない場合、主被写体フラグがONになっている被写体に対してのみ焦点調整を行うので、焦点検出枠は1つ設定すれば良い。
【0069】
図4(b)は、MF操作中の焦点検出枠の設定方法を示す。MF操作中の場合、被写体検出結果にかかわらず、画面中央を中心としてメッシュ状の枠408を設定する。この設定方法は、以下のメリットを有する。
・複数の被写体の焦点検出結果を1度に取得できる。
・被写体検出により検出される被写体数が増えた場合でも、焦点検出枠数が増えることが無い。
【0070】
このように、MF操作中とそうでない場合とで、焦点検出枠の設定方法を変更することで、MF操作中でない場合には、安定した焦点調節が可能になる。一方、MF操作中は複数の被写体の焦点検出結果を効率よく取得することで、主被写体の切り替わりに素早く対応できる。
【0071】
次に、
図5を用いて、S204で行われる主被写体候補判定処理について説明する。この処理は、カメラ制御部207において、S203で検出された被写体のうち、主被写体の候補となる被写体に主被写体候補フラグを設定する処理である。主被写体候補フラグは、検出された結果から主被写体になる可能性のある被写体を意味するフラグである。
【0072】
まず、S203で取得した被写体情報の内、1つの検出IDについて、S501において、顔検出結果の有無を判定する。顔検出結果がある場合はS502に遷移し、無い場合は、S503に遷移する。S502では、被写体領域の情報として、顔領域の位置及びサイズを記憶する。その後、S510に遷移する。
【0073】
S503では、MF操作中か否かを判定する。MF操作中の場合は、S504に遷移し、そうでない場合は、S506に遷移する。
【0074】
S504では、頭部検出結果の有無を判定する。頭部検出結果がある場合は、S505に遷移する。一方、頭部検出結果が無い場合には、S512に遷移して主被写体候補フラグをOFFにした後、S517に進む。
【0075】
S505では、被写体領域の情報として、被写体の頭部領域の位置及びサイズを記憶する。このように、MF操作中は、顔が検出できていなくても、頭部領域が検出できていればそれを被写体領域の情報として記憶して、S510に遷移する。
【0076】
S506では、主被写体候補フラグがONかどうかの判定を行う。これは、前フレームの同じ検出IDを有する被写体に主被写体候補フラグが設定されていればONであり、それ以外の場合にはOFFである。主被写体候補フラグがONの場合には、S505に遷移して、被写体領域の情報として、被写体の頭部領域の位置及びサイズを記憶する。このように、過去に同じ被写体の顔領域が検出されているか、MF操作中に頭部領域が検出されて、主被写体候補フラグがONとなっていれば、現フレームで顔領域が検出されなくとも、頭部領域の情報が被写体領域の情報として記憶される。
【0077】
一方、主被写体候補フラグがOFFの場合には、S512に遷移して、主被写体候補フラグをOFFにした後、S517に進む。
【0078】
S510では、主被写体候補フラグをONにして、S513に遷移する。
【0079】
S513では、MF操作中か否かを判定し、MF操作中の場合は、S514に遷移し、そうでない場合は、S516に遷移する。
【0080】
S514では、主被写体候補フラグがONとされた当該処理中の被写体の焦点検出枠上の位置を特定する。この処理では、処理中の被写体の中心位置が、メッシュ状に配置された
図4(b)の焦点検出枠408のどのエリアに位置しているかを特定する。これは、MF操作中に、どの主被写体候補に対して、合焦させたいかを特定するために必要な処理である。その後、S515に遷移する。
【0081】
S515では、S514で特定された位置の焦点検出枠408内のAF用信号に基づいて焦点検出を行い、焦点検出結果を記憶して、S517に遷移する。
【0082】
一方、S516では、S502、S505、S509のいずれかにおいて被写体領域に記憶された位置及びサイズ内のAF用信号に基づいて焦点検出を行い、焦点検出結果を記憶する。ここでは、MF操作中ではないため、
図4(a)の焦点検出枠405、406、407のように、被写体ごとに設定された焦点検出枠の焦点検出結果を取得する。その後、S517に遷移する。
【0083】
S517では、未処理の被写体(検出ID)があるかどうかを判定し、すべての検出結果に対して、主被写体候補フラグの設定処理や、焦点検出結果の格納が終わっていれば、処理を終了する。処理していない被写体(検出ID)がある場合にはS501に戻り、上述した処理を繰り返して行う。
【0084】
このように、本実施形態では、MF操作中とそうでない場合とで、頭部検出の結果に対する判定を変える。すなわち、MF操作中は、ユーザーが狙った被写体を検出させるために、目や鼻が検出できないような小さい顔や前向きではない顔でも主被写体の候補としてフラグを設定する。一方、MF操作中でない場合は、目や鼻が検出できないような小さい顔や前向きではない顔は、一般的には、主被写体になる可能性が低いので、主被写体の候補としてフラグを設定しない。しかしながら、顔検出ができていた被写体の顔検出ができなくなった場合においては、頭部検出結果が有効であれば、引き続き、主被写体候補フラグを設定する。これにより、MF操作中は、ユーザーの狙った被写体を捉え易くし、そうでない場合は、主被写体である可能性が大きい顔に対して焦点調節制御を行うことが可能になる。
【0085】
上記のように主被写体候補フラグを設定する場合の一例について、
図9(c)及び(d)を用いて説明する。
【0086】
図9(c)は、MF操作中ではなく、画面に被写体905、906を含む場合を示している。被写体905は、顔領域が検出されているため、主被写体候補フラグがONとなる。一方、被写体906は、顔領域が検出されていないが、頭部領域が検出されている場合を示している。この場合、1フレーム前の主被写体候補フラグがOFFであれば、引き続き、主被写体候補フラグはOFFとなる。これは、被写体906が頭部領域の検出のみで、過去にも顔検出がされていない状態の被写体が主被写体になる可能性が低いからである。
【0087】
このように設定された主被写体候補フラグに基づいて、S208またはS210における処理により、被写体905が主被写体として判定された場合、S211において、被写体905に主被写体であることを示す主被写体枠907が表示される。一方、被写体906には、枠表示はなされない。また、被写体905のみが焦点検出処理の対象となる。
【0088】
図9(d)は、同じ被写体で、MF操作中の場合を示している。被写体905は、顔領域が検出されているため、主被写体候補フラグがONとなる。また、被写体906も、顔領域は検出されていないが、頭部領域が検出されているので、主被写体候補フラグがONとなる。
【0089】
このように設定された主被写体候補フラグに基づいて、S206における処理により、被写体905が主被写体として判定された場合、S211において、被写体905に主被写体を示す主被写体枠907が表示される。また、被写体906には、候補枠908が表示されると共に、被写体905及び906が共に焦点検出処理の対象となる。
【0090】
この状態でユーザーが意図的に被写体906に対してフォーカス操作を行った場合、被写体906を主被写体にしたいと考えている可能性がある。よって、顔検出がされていない状態でも、頭部検出結果がある場合は、候補枠908を表示すると共に、焦点検出処理の対象とする。このように、MF操作中は、MF操作中でない場合に主被写体の候補にしていなかった被写体に対しても焦点検出処理の対象とすることで、ユーザーの意図を反映させた主被写体の切り替えが可能になる。
【0091】
次に、
図2のS206で行われる主被写体変更処理について、
図6を用いて説明する。この処理は、MF操作中である場合に実行される。
【0092】
S601では、主被写体候補フラグがONの被写体が1つ以上あるかを判定する。主被写体候補フラグがONの被写体が1つ以上ある場合はS604に遷移し、1つも無い場合はS602に遷移する。
【0093】
S602では、検出されたすべての被写体の主被写体ロックフラグをOFFに設定し、S603に遷移する。S603では、検出されたすべての被写体の主被写体フラグをOFFに設定して、主被写体変更処理を終了する。この場合、S211において主被写体枠も候補枠も表示されないことになる。
【0094】
一方、S604において、主被写体候補フラグがONの被写体が2つ以上あるかを判定する。主被写体の切り替えを行うためには、最低でも2つ以上の被写体が必要である。従って、2つ以上ある場合はS606に遷移し、そうでない場合はS605に遷移する。
【0095】
S605では、主被写体候補フラグがONである被写体が1つしかいないため、当該被写体の主被写体フラグをONに設定し、主被写体変更処理を終了する。
【0096】
S606では、レンズユニット10の操作情報と焦点検出結果とから、主被写体の切り替わりを特定する、切り替わり被写体特定処理を行い、S607に遷移する。なお、S606の処理に関しては、
図7を用いて後述する。
【0097】
S607では、主被写体の切り替わりが発生したか否かを判定する。切り替わりが発生している場合はS608に遷移し、そうでない場合はS610に遷移する。
【0098】
S608では、S606において特定された切り替わり先の被写体に対して、主被写体ロックフラグをONにし、更に、S609において、S606において特定された切り替わり先の被写体の主被写体フラグをONにして、主被写体変更処理を終了する。
【0099】
S610では、主被写体の切り替わりが発生していないため、前回の主被写体と同じ検出IDを有する被写体の主被写体フラグをONにし、主被写体変更処理を終了する。
【0100】
以上のように、MF操作中に主被写体の切り替わりが発生した場合、その被写体に対してロックフラグをONにすることにより、MF操作終了後のAF設定時に、主被写体が切り替わるのを防ぐことができる。これにより、ユーザーがMF操作により意図した被写体を主被写体として、継続的に合焦し続けることが可能となる。
【0101】
次に、
図7を用いて、S606で行われる切り替わり被写体特定処理について説明する。
まず、S701において、主被写体フラグがONである主被写体の焦点検出結果を取得し、DEF_Mainとして保持し、S702に遷移する。
【0102】
S702では、レンズ制御部106から取得できる情報から焦点深度を計算し、焦点深度のN倍を切り替え閾値DEF_Thとして設定する。この切り替え閾値DEF_Thは、つまり、主被写体のボケ量が深度のN倍以上になった場合に、ユーザーが被写体を切り替えたいと判断するための閾値である。なお、この閾値は、一例であり、主被写体の切り替わりを検知できる値であれば他の値であっても良い。
【0103】
S703では、主被写体フラグがONの被写体を除く、主被写体候補フラグがONの被写体の焦点検出結果があるかどうかの判定を行うことで、切り替え先となる可能性がある他の被写体の焦点検出結果が出ているかどうかの判定を行う。焦点検出結果がある場合はS704に遷移し、無い場合はS706に遷移する。
【0104】
S704では、主被写体フラグがONである主被写体の焦点検出結果DEF_Mainと、切り替え閾値DEF_Thとを比較する。DEF_Main>DEF_Thである場合は、ユーザーによる切り替えが発生したと判断して、S705に遷移する。切り替えが発生していない場合は、S712に遷移し、主被写体の切り替わりは無しと判断して処理を終了する。
【0105】
S705では、主被写体候補フラグがONである被写体の中で、ボケ量が最も小さい被写体を新たな主被写体として選択する。
【0106】
一方、S706では、フォーカスリングの操作方向を取得して、レンズ制御部106から取得できるフォーカスレンズ103の合焦位置の移動方向(至近/無限遠方向)の情報を取得し、S707に遷移する。S707では、主被写候補フラグがONである被写体のサイズから、カメラシステムからの相対的な距離を判断する。ここでは、顔のサイズから、主被写体よりも至近側にいるのか、無限遠側にいるのかを判断する。主被写体のサイズと比較し、基本的に、サイズが大きい場合は至近側にある被写体、サイズが小さい場合は無限遠側にある被写体と判定する。その後、S708に遷移する。
【0107】
S708では、主被写体フラグがONである主被写体の焦点検出結果DEF_Mainと切り替え閾値DEF_Thを比較する。DEF_Main>DEF_Thである場合は、ユーザーによる切り替えが発生したと判断して、S709に遷移する。切り替えが発生していない場合は、S712に遷移し、主被写体の切り替わりは無しと判断して処理を終了する。
【0108】
S709では、レンズの操作方向が至近方向か否かを判定する。S706で取得した操作方向が至近方向の場合は、S710に遷移し、そうでない場合は、S711に遷移する。
【0109】
S710では、至近側の被写体の中から主被写体を特定する。これにより、被写体のサイズが小さかったり、撮影条件によっては、焦点検出結果が得られなかった被写体の中から、主被写体を選択することが可能になる。フォーカスレンズの操作方向にある被写体のうち、いずれかを選択し、主被写体と特定する。特定方法としては、前述のように、顔のサイズや位置に基づき、主被写体の可能性が高い被写体を選択することとする。
【0110】
S711では、無限遠側の被写体の中から主被写体を特定する。S710と処理の内容は同様であるため、説明を割愛する。その後、切り替わり被写体特定処理を終了する。
【0111】
これにより、MF操作中に被写体の焦点検出結果を取得し、焦点検出結果の変化を監視することで、MF操作中の主被写体の自動切換えが可能となる。また、撮影条件によっては、焦点検出結果が取得できない場合があるため、そのような場合でもレンズの操作方向と顔サイズとに基づいて、主被写体の切り替わりを判定することが可能になる。
【0112】
ここで、S704でYESとなった場合の主被写体の切り替わりについて、
図10を用いて説明する。
【0113】
図10(a)は、MF操作前の表示状態の一例を示しており、第1の被写体1001(非合焦)と、第2の被写体1002(合焦)の2人の被写体がいる場合を示している。ここでは、第2の被写体1002の主被写体フラグがONであるため、
図2のS211では、第2の被写体1002上に主被写体であることを示す主被写体枠1004が表示される。一方、第1の被写体1001は、主被写体候補フラグがONであるため、主被写体候補であることを示す候補枠1003が表示される。
【0114】
図10(b)は、MF操作により、第2の被写体1002に合焦している状態から、第1の被写体1001の方向にフォーカスレンズ103を駆動した場合を示している。第2の被写体1002の焦点検出結果DEF_Mainが切り替え閾値DEF_Thより大きくなると、主被写体フラグがOFFとなる。従って、S211では主被写体であることを示す主被写体枠1004の代わりに、主被写体候補であることを示す候補枠1006が表示される。一方、第1の被写体1001は、主被写体フラグがONになったため、主被写体であることを示す主被写体枠1005が表示される。
【0115】
図10(c)は、上記の状態を時系列に説明する図である。
図10(c)において、縦軸は、焦点検出結果を表し、0が合焦した状態とする。横軸は時間を表している。また、第1の被写体1001の焦点検出結果を、曲線10
08に示し、第2の被写体1002の焦点検出結果を、曲線1007に示す。
【0116】
図10(a)に示す状態が、時刻t1での焦点検出結果に基づく状態であり、その状態から、フォーカスレンズ103を駆動することにより、第1の被写体1001の焦点検出結果1008は減少する一方、第2の被写体1002の焦点検出結果1007は向上する。焦点検出結果1007が、切り替わり閾値DEF_Thを超える点1012(時刻t2)で、ユーザーは第1の被写体1001に合焦させたいとカメラが判断し、主被写体を切り変える(
図10(b)に示す状態)。
【0117】
このように、フォーカスレンズを駆動している途中で、主被写体を切り替えることにより、ユーザーのフォーカスレンズの操作を簡略化することが可能になる。つまり、AFを設定することにより、ユーザーは、主被写体を示す主被写体枠1005が表示された時点で、フォーカスリングの操作を停止しても、その被写体に対してAF制御が行われるため、MF操作からの連続した焦点調整が可能となる。
【0118】
次に、
図8を参照して、
図2のS208で行われる主被写体ロック判定処理について説明する。
【0119】
主被写体以外の人物にも顔領域がわかるような枠を重畳表示する場合、意図しない被写体に対しても枠が表示され続けると煩わしいことがある。ただし、撮影する状況によってはある程度の時間、被写体を追従した方がよいシーンもある。例えば、撮影したい人物が画面内に複数いる場合では、主被写体以外の被写体を主被写体候補としてある程度の時間追従し続けていれば、主被写体がいなくなる等して追従できなくなったときに、それ以外の被写体に主被写体が切り替わることで、背景にピントや露出が合ってしまうことを抑制できる。
【0120】
そこで、この処理では、主被写体が見えなくなった状況における主被写体の追従性能の向上を図りつつ、撮影する状況に応じた適切な主被写体を選択するように制御する。
【0121】
まずS801では、S207においてカメラ操作部208から受け付けた被写体指定指示による被写体の位置(例えば、タッチ位置)から所定範囲内に、S204で判定された主被写体候補フラグがONの被写体があるか否かを判定する。上述した所定範囲は、被写体情報の被写体領域に記憶された顔領域や頭部領域のサイズでも良いし、顔領域や頭部領域のサイズの例えば2倍の距離以内等でも良い。所定範囲内に主被写体候補の被写体がある場合には処理をS802に進め、無い場合には処理をS809に進める。
【0122】
S802では、タッチ位置の所定範囲内に主被写体候補の被写体が複数あるか否かを判断し、1人のみであると判断した場合には処理をS803に進め、複数人であると判断した場合には処理をS804に進める。
【0123】
S803では、タッチ位置の所定範囲内にあると判断された主被写体候補の被写体の被写体領域に記憶された顔領域または頭部領域の信頼度が、予め決められあ閾値以上であるか否かを判断する。閾値以上であると判断した場合は処理をS805に進め、閾値未満であると判断した場合には処理をS806に進める。
【0124】
一方、S804では、タッチ位置の所定範囲内にあると判断されたすべての主被写体候補の被写体の顔領域または頭部領域のサイズが閾値以下か否かを判断する。閾値以下であると判断した場合には処理をS807に進め、閾値より大きいサイズの被写体があると判断された場合は処理をS808に進める。
【0125】
次に、S805及びS808では、タッチした位置の範囲内にあるタッチ位置に最も近い主被写体候補の被写体をロックする。
【0126】
一方、S806、S807、S809では、タッチ位置に基づいて被写体の特徴を抽出して人物の顔または頭部以外のモノを追尾する(以降、「モノ追尾」と呼ぶ。)。
【0127】
次にS810において、ロックされた主被写体候補を主被写体に決定し、ロックされた主被写体の主被写体候補フラグをONにする。そしてS811において、ロックされた主被写体以外の被写体の主被写体候補フラグをOFFにすることで、ロックされた主被写体以外の被写体が主被写体候補とならないようにして処理を終了する。
【0128】
なお、S803で信頼度が閾値未満であると判断されたときにS806でモノ追尾を行う理由は、例えば、頭部の一部がフレームアウトしている場合等、頭部検出の信頼度が低い場合は検出位置やサイズが不安定になり、AFが不安定になる可能性があるためである。そのため、検出された顔領域や、頭部領域の信頼度が低い場合は、タッチ時の色情報や輝度情報を用いた追尾による領域指定を行い、ユーザーが指定した位置にある被写体を一時的にモノとして追尾する。そして、追尾中に近くに顔や信頼度の高い頭部が検出されたら追尾の対象を顔または頭部に切り替えることによって、AFが不安定になることを軽減することができる。
【0129】
また、S804において、タッチ位置の所定範囲内にサイズが小さい顔や頭部の検出結果が複数人分ある場合にモノ追尾を行う理由は、ユーザーが指定した位置がタッチ位置のずれ等によって複数の人物のうち意図しない人物が追尾対象となってしまう可能性があるためである。そのため、ユーザーが指定した位置にある被写体を一時的にモノとして追尾し、その後、所定範囲内に所定サイズ以上の顔または頭部が検出された場合に追尾の対象を顔または頭部に切り替えることで、意図しない人物にピントを合わせてしまうことを軽減できる。
【0130】
上述した処理について、
図11を用いて説明する。
図11(a)は、MF操作されていない場合に、人物1101が一人、かつ後ろ向きでフレームインしてきたシーンを示している。この場合、
図5のS512により人物1101は主被写体候補フラグがOFFとなるため、枠表示を行わない。
【0131】
図11(b)は、
図11(a)に示す状態から、同じ人物1101が正面を向いた場合である。この場合、
図5のS510において主被写体候補フラグがONとなると共に、主被写体候補は1人のみなので、
図6のS605で自動的に人物1101が主被写体として選択され、主被写体枠1102が表示される。
【0132】
図11(c)は、人物1101が
図11(b)に示す正面向きの状態から後ろを向いた場合である。この場合、人物1101は一度正面を向いているため、主被写体候補フラグがONであると共に、頭部領域が検出されているため、
図5のS510で主被写体候補フラグはONとなる。また、
図6のS605で自動的に人物1101が主被写体として選択され、主被写体枠1102が表示され続ける。主被写体候補として設定し続けることによって人物1101へのピント合わせが継続し、意図しない領域へピントや明るさを合わせてしまうことを防止することができる。
【0133】
図11(d)は、MF操作されていない場合に、人物が複数人(人物1103と人物1105)いる場合のシーンを示している。この場合、正面を向いている人物1103は
図5のS510で主被写体候補
フラグがONとなると共に、主被写体候補は1人のみなので、
図6のS605で自動的に人物1103が主被写体として選択され、主被写体枠1104が表示される。一方、人物1105は後ろ向きのままであるため、S512で主被写体候補フラグがOFFとなり、枠表示は行われない。
【0134】
図11(e)は、
図11(d)に示す状態から、人物1105が正面を向いた場合である。この場合、人物1105の顔領域が検出され、
図5のS510で主被写体候補フラグがONとなり、候補枠1106が表示される。この場合、人物1105も主被写体となり得るが、MF操作による変更(S206)、被写体指定指示による変更(S208)、自動判定による主被写体の変更(S210)が無ければ、すでに主被写体として選択されている人物1103が当面の間、主被写体となり続ける。
【0135】
図11(f)は、人物1105が
図11(e)の正面向きの状態から後ろを向いた場合である。この場合、人物1105は一度正面を向いており、主被写体候補フラグがONとなっていると共に、頭部領域が検出されているため、
図5のS510において主被写体候補フラグは引き続きONとなる。このように、主被写体候
補として設定し続けることによって、人物1103がフレームアウトした時に即座に人物1105を主被写体とすることができる。
【0136】
図11(g)~(i)は、人物が複数人(人物1103と人物1105)おり、それぞれ
図11(d)~(f)の状態からユーザーがタッチにより人物1105を指定した場合を示している。
【0137】
図11(g)の場合、人物1105は被写体として検出されていないため、タッチ位置に最も近い人物1103が引き続き主被写体として選択され、主被写体枠1104が表示され続ける。
【0138】
また、
図11(h)及び(i)の場合、顔領域または頭部領域の信頼度が高ければ、S801、S802、S803、S805、S810、S811の処理によって主被写体として人物1105が主被写体領域としてロックされ、人物1105が主被写体として選択される。また、主被写体枠1109が表示される。また、S811により、人物1103の被写体候補フラグがOFFとなるため、人物1103に表示されていた主被写体枠1104が消去される。
【0139】
上述したように、後ろ向きの人物をタッチした場合、タッチした位置に頭部検出結果があれば、すでに主被写体候補領域として設定されている場合でも未設定の場合でも頭部検出結果を用いて被写体のロックを行う。まだ主被写体領域及び主被写体候補領域になっていない人物をタッチした場合、タッチによる指定位置に頭部検出結果がある場合は、頭部検出結果を用いて主被写体領域としてロックすることにより、被写体の形状変化や明るさ変化に強い追従が行えるようになる。
【0140】
上記の通り第1の実施形態によれば、合焦位置までレンズを駆動させなくても、合焦対象の被写体の切り替えが可能になる。さらに、AF設定時は、代表的な被写体を主被写体として選択することで汎用性の高いAFを実現し、MF操作をトリガに、主被写体の選択方法を変更することで、ユーザーが狙った被写体を主被写体として選択することで、ユーザーの趣旨に沿ったAFが可能になる。そして、MF操作により選択された被写体を、MF操作後にも、AF対象として継続して焦点調整が可能になる。また、簡単に主被写体を切り替えることが可能になる。
【0141】
また、第1の実施形態が備える焦点検出装置は、予め設定されているAF枠の範囲において、被写体の位置に応じて合焦駆動に使用する焦点検出領域を変えることで、広い範囲で被写体に合焦したまま維持することができ、さらに背景等の主被写体以外の被写体(以下、「雑被写体」と呼ぶ。)に合焦している場合に、至近側に現れる新しい主被写体に合焦しにくくなることを防ぐことができる。
【0142】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0143】
第1の実施形態に記載された方法により主被写体を決定する場合、例えば、操作者が撮影したい人物が決まっていて、顔が見えない状況になってもその人物をずっと追従してピントや露出を合わせたい場合には非常に有用ではある。しかしながら、基本は人物を主被写体として撮影しつつ、人物以外の被写体や風景にも撮影モードを切り替えずにピントや露出を合わせて撮影したい場合、顔が見えなくなっても人物に追従し続けると、画面内に人物がいる限り、人物以外の被写体や風景にピントや露出が合わせられない。
【0144】
また、顔が見えなくなるとすぐに主被写体の候補から外した場合、次のような問題があった。即ち、操作者が撮影しようとしている人物とは別の意図していない人物が画面内に入ってきた後、画面内に留まってしまった場合には、いつまでも主被写体の候補から外れず、意図しない人物を主被写体として選択してしまい、ピントや露出が変わってしまう。
【0145】
そのため、上述した第1の実施形態では、顔が検出できなくとも、頭部領域が検出できる場合は主被写体候補として追従し続け、指定方法に従って主被写体を決定し、焦点調節や露出調節を行うものとして説明した。しかしながら、人物中心の撮影で主被写体が後ろを向いたりして一時的に顔が見えなくなる状況においては主被写体候補としてなるべく長く残したいが、人物以外も撮影したい場合や複数の人物が写りこむ場合には、主被写体候補として残したい場合と、残したくない場合とが撮影の状況によって変わってくる。
【0146】
そこで、第2の実施形態では、第1の実施形態に加え、主被写体候補として残す時間を主被写体候補毎に設定し、さらに主被写体を含む被写体の状況に応じて、その時間を変更する。以下、第2の実施形態における処理について、
図12~
図16を用いて説明する。なお、第2の実施形態においても、
図1に示すデジタルビデオカメラシステムを用いるため、説明を省略する。
【0147】
図12は、第2の実施形態における主被写体
候補判定処理を示すフローチャートであり、
図5に示す処理の代わりに行われる。この処理は、
図5を参照して上述した第1の実施形態における主被写体候補判定処理に、第2の実施形態の特徴である、顔領域が検出できなくなってから主被写体候補フラグをOFFするまでの時間を被写体毎に設定する処理S1201~S1203を加えたものである。それ以外の処理は
図5に示す処理と同じなので、同じステップ番号を付し、説明を割愛する。
【0148】
S1201では、顔領域が検出できなくなってから主被写体候補フラグをOFFにするまでのリセット時間RT(>0)を設定する。リセット時間RTは、被写体毎に条件に応じて設定するものとし、詳細については
図13を用いて後述する。
【0149】
S1202では、顔領域が検出できなかった場合に、S1201で設定したリセット時間RTをデクリメントする。S1203では、主被写体候補リセット判定部222が、リセット時間RTが0より大きいか否かを判定し、主被写体候補判定部220は、0より大きい場合は、S511にて主被写体候補フラグをONにする。一方、0以下である場合はS1201で設定した主被写体候補フラグをOFFするまでの時間が満了したとして、S512にて主被写体候補フラグをOFFにする。
【0150】
S1201~S1203の処理により、顔検出ができている間は条件に応じたリセット時間RTを常に設定しておいて、顔が検出できない状況がリセット時間RT分続くと、主被写体候補から除外することができる。これは、一般的な動画撮影において、顔が長い間見えない人物は、焦点調節制御や露出制御をする対象、つまり主被写体として選択するにはあまりふさわしくない状況やシーンが多いため、ある程度の時間が経過すると主被写体候補からは除外したほうがいいと考えられるためである。ただし、撮影する人物が一人の場合や、複数の人物でも画面中央付近にいる場合には、顔が見えない状況でも主被写体として選択し続けたい場合もある。そのため、リセット時間RTを状況に応じて変更することにより、調節する。
【0151】
図13は、
図12のS1201における主被写体候補リセット時間RTの設定処理の詳細を示すフローチャートである。S1301では、検出した被写体の数nが1か否かを判定し、1の場合はS1302へ、1より多い場合はS1303へと遷移する。S1302では、リセット時間RTとして、MainTimer1の値を設定する。ここでMainTimer1の値は、撮影画面内に主被写体のみがいる状況での設定時間であるため、比較的長い時間を設定するのが好ましいが、本実施形態では、一例として、10秒に設定するものとして説明する。
【0152】
S1303では、処理中の被写体が、検出されている複数の被写体のうち、主被写体決定処理において主被写体として選択されているか否かを判定し、主被写体として選択されている場合はS1304へ、選択されていない場合はS1305へと遷移する。S1304では、リセット時間RTとして、MainTimer2の値を設定する。ここでMainTimer2の値は、撮影画面内に複数の人物が写っている状況において、処理中の被写体を主被写体として設定し続ける時間であり、一人の場合と比較すると他の主被写体候補が主被写体となり得る可能性が高いため、一人の場合より短い時間を設定してもよいし、一人の場合と同じ時間を設定してもよい。本実施形態では、一例として、MainTimer1と同様に10秒に設定するものとする。
【0153】
S1305では、検出した被写体の数nが閾値NumThより少ないか否かを判定し、少ない場合はS1306へ、多い場合はS1307へと遷移する。S1306及びS1307では、主被写体候補をどれだけ追従するかの時間を設定するものであり、主被写体を追従する時間MainTimer1及びMainTimer2より短い時間を設定する。これは、主被写体候補の被写体は主被写体よりは撮影対象である可能性が低く、主被写体候補として長く設定しすぎることで意図せず主被写体が切り替わってしまうことを防止するためである。S1306では、リセット時間RTとして、SubTimer1の値を設定する。ここでSubTimer1の値は、比較的人数が少ない場合における主被写体候補として設定し続ける時間であり、本実施形態では、一例として、3秒に設定するものとして説明する。
【0154】
一方、S1307では、リセット時間RTとして、SubTimer2の値を設定する。ここでSubTimer2の値は、撮影画面内に写っている人数が多い場合における主被写体候補として設定し続ける時間であり、ユーザーの意図しない被写体が写りこんでいる可能性が高いため、SubTimer1より短い時間を設定する。本実施形態では、一例として、1秒に設定するものとして説明する。
【0155】
S1308では、S1302またはS1304で設定した、主被写体として設定し続ける時間を条件に応じてさらに長くしたり、短くしたり調整する処理を行う。S1309では、S1308と同様に、S1306及びS1307で設定した主被写体候補として設定し続ける時間を条件に応じて調整する処理を行う。S1308またはS1309の終了後、
図12の処理に戻る。
【0156】
次に、S1308における処理の詳細について、
図14を用いて説明する。
図14は、主被写体を追従する時間を条件に応じて調整する処理を示すフローチャートである。S1401では、後述するS1403において主被写体が画面内の所定エリアにいるか否かを判定するためのエリアを設定する。なお、所定エリアの考え方については
図16を用いて後述する。
【0157】
S1402では、S1404において主被写体の顔領域及び頭部領域のサイズがある程度大きいか否かを判定するためのサイズの閾値SizeThを設定する。これは、人物を主被写体として撮影する場合は、ある程度顔を大きく写すことが多く、小さい顔はユーザーの意図しない人物、つまり主被写体ではない可能性が高いと考えられるからである。
【0158】
S1403では、S1401で設定した所定エリア内に主被写体が存在するか否かを判定し、存在すると判定した場合はS1404へ、存在しないと判定した場合は処理を終了する。
【0159】
S1404では、S1402で設定したサイズの閾値SizeThより、顔領域及び頭部領域のサイズが大きいか否かを判定し、大きいと判定した場合はS1405へ、小さいと判定した場合は処理を終了する。
【0160】
S1405では、
図13のS1302及びS1304で設定した主被写体の追従をリセットするまでの時間RTをMainTimer1及びMainTimer2より長い時間に設定し直して、処理を終了する。
【0161】
ここで、所定エリアについて
図16を用いて説明する。
図16は、撮影画面内に被写体となる人物がいるシーンを表した模式図であり、
図16(a)~(c)は、被写体が一人のみ、つまり主被写体のみを撮影し、主被写体の顔が見えなくなった場合を表し、
図16(d)~(f)は、被写体が複数人いる場合を表している。
【0162】
動画撮影において人物を主被写体として撮影する場合は、一般的に画面の中央付近に被写体をフレーミングすることが多いため、被写体が画面中央付近に検出されているのであれば、その被写体はユーザーが撮影したい人物である可能性が高いと考えられる。そこで、
図16の破線で示すエリア1601内に検出した被写体の顔領域及び頭部領域があるかどうかを判定して、ある場合には、顔が見えなくなってもより長い時間追従し続けるようにする。すなわち、
図13のS1302及びS1304で設定した主被写体の追従をリセットするまでの時間RTをMainTimer1及びMainTimer2より長い時間に設定し直す。
【0163】
本実施形態では、一例として15秒を設定するものとして説明するが、これに限らず、例えば30秒や無限(検出及び追尾の両方ができなくなるまで追従し続ける)に設定してもよいし、MainTimer1及びMainTimer2の時間のままにしてもよい。なお、
図16(a)は顔領域が見えている場合、
図16(b)は主被写体が後ろを向いて顔領域が見えなくなった場合を表し、どちらもエリア1601の領域内にいるので被写体の追従をリセットするまでの時間RTは15秒になる。ただし、被写体がエリア1601の境界付近にいて、エリア1601に頻繁に出入りする場合は、設定時間が10秒になったり、15秒になったり安定しなくなってしまう。そこで、一度エリア1601内に主被写体が入った場合は、
図16(c)のエリア1602に示すようにエリアを1601より大きく拡張し、エリア1602の外に出るまで時間を延長してもよい。このようにすれば、エリアの境界付近で設定時間が不安定になるのを防ぐことができる。
【0164】
また、
図14に示す処理では、MainTimerを延長する条件について説明したが、主被写体を長く追従しないほうがいいような場合には、主被写体をリセットするまでの時間を短くするようにしても構わない。例えば、カメラのパンニングを検出したら主被写体を変えようとしている意図があると判断し、顔が見えない主被写体を除外するために時間を短くしてもよい。
【0165】
また、本実施形態では、エリア1601として、画面中央を中心に所定サイズの矩形の領域を設定したが、画面上部の領域は主被写体がいる可能性が高いことを考え、中心位置を上方向にずらすようにしてもよいし、上方向に拡張してもよい。さらにそのエリアをカメラの向きに応じて変えるようにしてもよい。また、本実施形態では、エリア内に被写体が入っているか否かで時間を調整するようにしているが、これに限らず、像高に応じて変えるようにしてもよい。
【0166】
次に、S1309における処理の詳細について、
図15を用いて説明する。
図15は、主被写体候補を追従する時間を条件に応じて調整する処理を示すフローチャートである。S1501では、後述するS1503において主被写体候補が画面内の所定エリアにいるか否かを判定するためのエリアを設定する。本実施形態では、このエリアは
図16(a)~(c)のエリア1601と同じエリアを設定するものとして説明するが、主被写体の場合より狭く設定してもよいし、広く設定してもよい。
【0167】
S1502では、主被写体として選択された被写体領域との検出位置の差Dを算出する。これはS1504にて検出されている主被写体候補毎に主被写体に近いか否かを判定するために、
図16(d)及び(e)に示すように、画面上での顔領域及び頭部領域の中心位置の距離を求める。
【0168】
S1503では、S1501で設定した所定エリア内に主被写体候補の被写体が存在するか否かを判定し、存在すると判定した場合はS1504へ、存在しないと判定した場合はS1505へと進める。
【0169】
S1504では、S1502で算出した、主被写体との検出位置の差Dが所定値DTh以下か否かを判定し、以下である場合は主被写体との距離が近いと判断してS1507へ、大きい場合は主被写体から離れていると判断してS1505へと処理を進める。なお、所定値DThは予め決められた固定の値でもよいし、顔領域及び頭部領域のサイズを基準に算出するようにしてもよい。
【0170】
S1507では、
図13のS1306及びS1307で設定した主被写体候補の被写体の追従をリセットするまでの時間RTをSubTimer1及びSubTimer2より長い時間に設定し直して、処理を終了する。
【0171】
上述したように、被写体が画面中央付近に検出されているのであれば、その被写体はユーザーが撮影したい人物である可能性が高いと考えられる。また、主被写体の近くに存在する主被写体候補の被写体であれば、主被写体が検出できなくなった場合の次の主被写体の候補としての可能性が高いと考えられる。そのため、これらの条件に当てはまる被写体には、顔が見えなくなってもより長い時間追従し続けた方がいいと考えられるからである。本実施形態では、一例として5秒を設定するものとして説明するが、これに限らず、SubTimer1及びSubTimer2の時間のままにしてもよい。
【0172】
なお、
図16(d)は顔領域が見えている主被写体の近くでエリア1601内に顔領域が見えない被写体が一人、エリア1601外に顔領域が見えない被写体が一人いる場合を表している。また、
図16(e)は顔領域が見えない被写体がエリア1601内には一人いるが、主被写体から離れている場合を表している。
図16(d)の場合は、顔領域が見えない被写体は所定エリア1601内で、かつ主被写体の近くにいるため、被写体の追従をリセットするまでの時間RTは5秒になるが、
図16(e)の場合は顔領域が見えない被写体は主被写体から離れているため、被写体の追従をリセットするまでの時間RTは延長せず、3秒のままとする。
【0173】
また、
図16(f)は、画面内に多くの人物が写っているシーンを表しており、被写体が多いと意図せず主被写体が切り替わってしまうことが起きやすくなるため、主被写体候補の被写体をあまり長く追従しないようにした方がよい。
図13のS1305で検出数が所定数NumThより多く、S1307にて短い時間を設定する場合がそれに当たる。
【0174】
S1505では、過去に主被写体として選択されたことがあるか否かを判定し、選択されたことがある場合は、ユーザーが撮影したい人物である可能性が高いため、S1507へと進み、被写体の追従をリセットするまでの時間を調整し、選択されたことがない場合は、S1506へと進む。
【0175】
S1506では、顔検出ができていた時間が所定時間より長いか否かを判定し、長い場合はユーザーが画面内に意図的にフレーミングしている被写体である可能性が高く、主被写体候補としてある程度の時間は追従させた方が良いと考えられる。そのため、S1507へと進み、被写体の追従をリセットするまでの時間を調整する。一方、短い場合は、被写体が一瞬画面内に写って後ろを向いてしまった場合等、ユーザーの意図しない人物である可能性が高いため、時間の調整はしないで処理を終了する。
【0176】
なお、
図15のフローチャートでは、SubTimerを延長する条件について説明したが、主被写体と同様に主被写体候補の被写体を長く追従しないほうがいいような場合には、被写体をリセットするまでの時間を短くするようにしても構わない。例えば、カメラのパンニングを検出したら被写体を変えようとしている意図があると判断し、顔が見えない被写体を主被写体候補から除外するために時間を短くしてもよい。
【0177】
上記の通り本第2の実施形態によれば、顔検出ができなくなってから被写体の追従をリセットするまでの時間を被写体毎に設定する。特に主被写体は長く追従し、それ以外の被写体は主被写体の追従時間より短くするようにする。これにより、顔が見えなくなった状況における主被写体の追従性能の向上を図りつつ、撮影する状況に応じた適切な主被写体選択を実現することが可能となる。
【0178】
なお、上述した実施形態では、人物の顔領域と頭部領域の検出結果を用いて説明したが、人物の顔領域と体領域や、動物の顔領域と頭部領域あるいは体領域等の組み合わせでもよい。
【0179】
<他の実施形態>
また、本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0180】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0181】
10:レンズユニット、20:カメラ本体、103:フォーカスレンズ、105:フォーカスレンズ駆動部、106:レンズ制御部、107:レンズ操作部、201:撮像素子、204:AF信号処理部、205:表示部、207:カメラ制御部、208:カメラ操作部、210:顔領域検出部、211:頭部領域検出部、220:主被写体候補判定部、S221:主被写体ロック部、222:主被写体候補リセット判定部