(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】画像読取装置
(51)【国際特許分類】
H04N 1/04 20060101AFI20241127BHJP
H04N 1/191 20060101ALI20241127BHJP
G03B 27/62 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
H04N1/04 106A
H04N1/191
G03B27/62
(21)【出願番号】P 2020172136
(22)【出願日】2020-10-12
【審査請求日】2023-07-28
(31)【優先権主張番号】P 2019207356
(32)【優先日】2019-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 諭史
【審査官】渡部 幸和
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-075600(JP,A)
【文献】特開2010-118911(JP,A)
【文献】特開2018-203450(JP,A)
【文献】特開2019-134348(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00
G03B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿が載置される原稿トレイと、
前記原稿トレイに設けられ、前記原稿が搬送される搬送方向に直交する幅方向における前記原稿の位置を規制する規制部と、
前記原稿トレイに載置された原稿を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段によって搬送された原稿の画像を読み取る読取手段と、
前記搬送方向における前記原稿の先端側の辺の前記幅方向に対する傾き角度に対応する傾き量を、前記読取手段が前記原稿の画像を読み取ることによって得られた読取画像に基づいて決定する第1決定手段と、
前記原稿の前記搬送方向における長さを決定する第2決定手段と、
前記第1決定手段により決定された前記傾き量に応じて、前記読取手段により読み取った画像の前記傾き量を低減するように画像の傾き補正を行う補正手段と、を備え、
前記読取手段により読み取った原稿の画像の前記第2決定手段によって決定された長さが
所定値以上である第1の長さであり、且つ前記第1決定手段により決定された前記傾き量が第1の値よりも小さい場合
、前記補正手段は前記読み取った原稿の画像に前記傾き補正を行って画像を出力し、
前記読み取った原稿の画像の前記第2決定手段によって決定された長さが前記所定値以上である第1の長さであり、且つ前記第1決定手段により決定された前記傾き量が前記第1の値よりも大きい場合
、前記補正手段は前記読み取った原稿の画像に前記傾き補正を行
わずに画像を出力し、
前記読み取った原稿の画像の前記第2決定手段によって決定された長さが
前記所定値未満である第2の長さであり、且つ前記第1決定手段により決定された前記傾き量が前記第1の値より大きい第2の値よりも小さい場合
、前記補正手段は読み取った原稿の画像には前記傾き補正を行
って画像を出力し、
前記読み取った原稿の画像の前記第2決定手段によって決定された長さが前記所定値未満である第2の長さであり、且つ前記第1決定手段により決定された前記傾き量が前記第2の値よりも大きい場合
、前記補正手段は読み取った原稿の画像に前記傾き補正を行わ
ずに画像を出力することを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記画像読取装置は、
光を出射する光源と、
前記読取手段が前記原稿の画像を読み取る読取位置において、前記原稿が搬送される搬送路に対して前記読取手段とは反対側に設けられた対向部材と、を更に有し、
前記第1決定手段は、前記光源から出射される光と前記搬送される原稿とによって前記対向部材に生じる影の画像に基づいて、前記傾き量を決定することを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記対向部材は白色の部材であることを特徴とする請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記画像読取装置は、前記原稿トレイに載置された原稿の有無を検知するセンサを有し、
前記第2決定手段は、前記センサの検知結果に基づいて、前記原稿の前記搬送方向における長さを決定することを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送される原稿の画像を読み取る画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動原稿搬送装置(Auto Document Feeder、以下ADF)によって原稿トレイ上に載置された原稿を搬送し、そのADFによって搬送されている原稿の画像を読み取る原稿読取装置が知られている。
【0003】
ADFでは、原稿の分離圧やトレイの摺動抵抗、原稿の搬送時に用いるローラの製造誤差などに起因して、搬送方向における原稿の先端側の辺が搬送方向に直交する主走査方向に対して傾いた状態で原稿が搬送されることがある。原稿の先端側の辺が主走査方向に対して傾いた状態で原稿が搬送されると、当該原稿の画像を読み取った際に得られる画像データが示す画像が主走査方向に対して傾いてしまう。
【0004】
特許文献1は、搬送方向における原稿の先端側の辺(先端エッジ)に起因して発生する影を画像データに基づいて検出し、検出された影に基づいて先端エッジを検出する構成を記載している。さらに前記特許文献1は、検出された先端エッジに基づいて、先端エッジの主走査方向に対する傾き量を検出する構成を開示している。さらに前記特許文献1は、検出された傾きが低減されるように画像データを回転補正する構成を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、ADFによって搬送される原稿の先端に切れ目や破れなどのダメージがあると、当該ダメージがある領域に対応する影が、ダメージがない領域に対応する影に対して主走査方向において不連続になってしまう。この結果、先端エッジを検出する精度が低下してしまう。その結果、検出された先端エッジの主走査方向に対する傾き量が、実際の原稿の先端エッジの主走査方向に対する傾き量とは異なってしまう。例えば、検出された傾き量が実際の原稿の傾き量よりも大きい場合に、検出された傾き量に基づいて画像データが補正されると、補正後の画像が補正前の画像の主走査方向に対する傾き方向とは逆方向に傾いてしまう。
【0007】
上記課題に鑑み、本発明は、傾き補正後の画像が、当該補正前の画像の傾き方向とは逆方向に傾いてしまうことを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明の一態様に係る画像読取装置は以下のような構成を備える。即ち、
原稿が載置される原稿トレイと、
前記原稿トレイに設けられ、前記原稿が搬送される搬送方向に直交する幅方向における前記原稿の位置を規制する規制部と、
前記原稿トレイに載置された原稿を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段によって搬送された原稿の画像を読み取る読取手段と、
前記搬送方向における前記原稿の先端側の辺の前記幅方向に対する傾き角度に対応する傾き量を、前記読取手段が前記原稿の画像を読み取ることによって得られた読取画像に基づいて決定する第1決定手段と、
前記原稿の前記搬送方向における長さを決定する第2決定手段と、
前記第1決定手段により決定された前記傾き量に応じて、前記読取手段により読み取った画像の前記傾き量を低減するように画像の傾き補正を行う補正手段と、を備え、
前記読取手段により読み取った原稿の画像の前記第2決定手段によって決定された長さが所定値以上である第1の長さであり、且つ前記第1決定手段により決定された前記傾き量が第1の値よりも小さい場合、前記補正手段は前記読み取った原稿の画像に前記傾き補正を行って画像を出力し、
前記読み取った原稿の画像の前記第2決定手段によって決定された長さが前記所定値以上である第1の長さであり、且つ前記第1決定手段により決定された前記傾き量が前記第1の値よりも大きい場合、前記補正手段は前記読み取った原稿の画像に前記傾き補正を行わずに画像を出力し、
前記読み取った原稿の画像の前記第2決定手段によって決定された長さが前記所定値未満である第2の長さであり、且つ前記第1決定手段により決定された前記傾き量が前記第1の値より大きい第2の値よりも小さい場合、前記補正手段は読み取った原稿の画像には前記傾き補正を行って画像を出力し、
前記読み取った原稿の画像の前記第2決定手段によって決定された長さが前記所定値未満である第2の長さであり、且つ前記第1決定手段により決定された前記傾き量が前記第2の値よりも大きい場合、前記補正手段は読み取った原稿の画像に前記傾き補正を行わずに画像を出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、読み取られた画像を表す画像データを精度よく補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る原稿読取装置の断面図。
【
図2】実施形態に係る原稿読取装置のコントローラの構成を説明するブロック図。
【
図3】実施形態に係るコントローラのエッジ抽出部における処理を説明する図。
【
図4】実施形態に係る表面レジストレーション算出部におけるレジストレーションの算出方法を説明する図。
【
図5】実施形態に係るレジストレーション補正部によるレジストレーション補正処理を説明する図。
【
図6】原稿の副走査方向のサイズ(原稿の搬送方向の長さ)と斜行角度の関係を示すグラフ図。
【
図7】実施形態に係るコントローラにおける斜行補正制御を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これら複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一もしくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。尚、実施形態では、原稿読取装置を例に本発明に係る画像読取装置の一例を説明する。この画像読取装置は、スキャナ等の画像を読み取る装置だけでなく、例えば複写機などの画像形成装置、ファクシミリ装置等の通信装置にも適用できる。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る原稿読取装置100の断面図である。原稿読取装置100は、原稿101を搬送するADF130と、ADF130により搬送される原稿101の画像を読み取るリーダ131とを備える。ADF130は、不図示のヒンジにより、リーダ301に対して回動可能に、リーダ131の筐体に取り付けられる。リーダ131は、表面読取部109Aを備え、原稿101の第1面(表面)の画像を読み取る。リーダ131は、裏面読取部109Bを備え、原稿101の第2面(裏面)の画像を読み取る。
【0013】
ADF130は、原稿101を載置する原稿トレイ102を具備している。原稿トレイ102には、原稿101を複数枚載置することが可能であり、最も上に載置されている原稿から順に1枚ずつピックアップローラ103の回転によって装置内に給送される。尚、ピックアップローラ103は図示しないモータによって回転駆動されている。このピックアップローラ103によって複数枚同時に原稿が給送されてしまうことがある。分離ローラ104及び分離ローラ105は、原稿を1枚ずつに分離する。尚、実施形態では、分離ローラ104は原稿を搬送する方向に回転駆動され、分離ローラ105は回転駆動されない。原稿トレイ102には、原稿101の搬送方向に直交する幅方向で原稿101のエッジに当接し、原稿101の幅方向における位置を規制するサイド規制板(規制部)123が両側に設けられている。
【0014】
分離ローラ104及び分離ローラ105によって1枚に分離された原稿101は、1対の前搬送ローラ106によって下流側に搬送される。その後、原稿101は、1対のリードローラ107によって原稿101の表面読み取り位置Aまで搬送される。表面読み取り位置Aには透明な表面流し読みガラス108が配置されており、表面流し読みガラス108の下に停止している表面読取部109Aによって、搬送されている原稿101の表面が読み取られる。
【0015】
表面読取部109Aには、LED(光源)110、イメージセンサ111、光学部品群112が備わっており、LED110から出射される光で原稿101の表面を照明し、その反射光を光学部品群112で反射、集光し、イメージセンサ111で読み取っている。イメージセンサ111は、複数の光電変換素子(受光素子)が上記の幅方向に並んで構成される。光電変換素子が並べられる方向(幅方向)が主走査方向となる。表面読取部109Aは、主走査方向において1ラインずつ原稿101の画像を読み取る。複数の光電変換素子は、反射光を受光し、受光した反射光を光電変換した電気信号を生成する。尚、実施形態では、表面読取部109Aは、図示しないA/D変換器(出力部)を具備しており、イメージセンサ111が出力したアナログの電気信号をデジタルの画素データ(画像データ)に変換して後述するコントローラ200(
図2)に出力する。画素データは、光電変換素子(画素)の受光結果を表すデータに対応する。即ち、原稿101の画像は、複数の画素データによって構成されている。
【0016】
原稿101が搬送される搬送路上の表面読み取り位置Aの上流には、原稿101の先端を検知する原稿検知センサ113が配置されており、コントローラ200は、原稿検知センサ113が原稿の先端を検知してから、原稿101の先端が表面読取位置Aに到達するまでの間の所定のタイミングで表面読取部109Aによる画像の読み取りを開始する。また、コントローラ200は、原稿検知センサ113が原稿101の先端を検知してから当該原稿の後端が原稿検知センサ113を通過するまでの時間と原稿が搬送される搬送速度とに基づいて、原稿の副走査方向のサイズ(原稿の搬送方向の長さ)を検知する。
【0017】
原稿101の姿勢が不安定な状態で当該原稿101の画像を読み取ると、表面読取部109Aと原稿101との間の距離が安定せず、後述する原稿の先端側の辺の影が安定しなくなるため、上流側押さえローラ114と下流側押さえローラ115によって原稿101を表面流し読みガラス108に向かって押さえている。そして、上流側押さえローラ114と下流側押さえローラ115の間の表面読取部109Aと正対する位置に、白色の表面ガイド板(対向部材)116が配置されている。
【0018】
表面読み取り位置Aを通過した原稿101は、1対の後搬送ローラ117によって裏面読み取り位置Bまで搬送される。裏面読み取り位置Bには、透明な裏面流し読みガラス118が配置されている。裏面流し読みガラス118に対して搬送路とは反対側には、原稿101の裏面を読み取る裏面読取部109Bが設けられている。尚、本実施形態における裏面読取部109Bは、表面読取部109Aと同じハードウェア構成である。
【0019】
裏面読取部109Bは、コントローラ200によって制御され、コントローラ200は原稿検知センサ113が原稿の先端を検知してから、原稿101の先端が裏面読取位置Bに到達するまでの間の所定のタイミングで裏面読取部109Bによる画像の読み取りを開始する。この裏面読取部109Bに正対する位置には白色の裏面ガイド板(対向部材)119が配置されている。裏面読み取り位置Bを通過した原稿101は、1対の排紙ローラ120で装置の外に排紙される。こうして排紙された原稿101は、排紙トレイ121に積載される。また、表面流し読みガラス108の図中右側には、シェーディングデータを取得する際の基準読取部材である白色基準板122が配置されている。
【0020】
図2は、実施形態に係る原稿読取装置100のコントローラ200の構成を説明するブロック図である。
【0021】
コントローラ200には、前述した表面読取部109A、裏面読取部109B、原稿検知センサ113の他に、原稿を搬送するために前述した各ローラを回転駆動させるための搬送モータ201、ユーザから、各種指示を受け付けるための操作部202が接続される。
【0022】
コントローラ200は、表面読取部109A及び裏面読取部109Bを含む原稿読取装置100及び、後述する各画像処理部を制御するCPU203を有している。CPU203は、不揮発メモリ209に格納されているプログラムをRAM211に展開して実行することにより、この原稿読取装置100の動作を制御する。RAM211は、CPU203の制御の際にワークエリアを提供して、各種データを一時的に保存する。CPU203は、操作部202からの指示に応じて原稿読取装置100の制御を開始する。操作部202から読み取りの指示がなされると、CPU203は搬送モータ201を駆動して原稿101を搬送するとともに、表面読取部109Aと裏面読取部109Bを駆動する。表面読取部109A及び裏面読取部109Bは、CPU203から駆動指示がなされるとLED110を点灯し、その反射光に基づいてデジタルの画像データに変換してコントローラ200に送信する。このデジタル画像データは、反射光の強度が大きいほど高い数値を示す。このレベルを以後、輝度レベルと表現する。
【0023】
尚、実施形態に係るイメージセンサ111は、R(赤)、G(緑)、B(青)の3色の光を受光する画素をそれぞれ主走査方向に7500個有している。
【0024】
表面読取部109Aから出力されたデジタル画像データは、コントローラ200の表面シェーディング回路204Aに入力され、裏面読取部109Bから出力されたデジタル画像データは裏面シェーディング回路204Bに入力される。表面シェーディング回路204A及び裏面シェーディング回路204Bは、入力されたデジタル画像データに対して加減算や乗除算を施すことで、LED110の光量の不均一性や、イメージセンサ111の画素毎の感度ムラの影響を補正(シェーディング補正)して、主走査方向に均一な画像データを生成する。こうしてシェーディング補正が施された表面の画像データは、所定のタイミングで画像メモリ205に格納される。
【0025】
裏面の画像データは、画像メモリ205に格納する前に画像反転回路210を通過する。実施形態における裏面読取部109Bは、表面読取部109Aと同じ構成であり、裏面読取部109Bは表面読取部109Aに対して、主走査方向の向きは変えずに、上下反転させた形で取り付けられている。そのため、裏面読取部109Bで読み取った画像データは、表面読取部109Aで得られた画像データに対して主走査方向に反転した画像データとなる。よって、裏面読取部109Bで読み取った画像データは、画像メモリ205に格納する前に画像反転回路210で主走査方向に更に反転されて画像メモリ205に格納される。
【0026】
図3は、実施形態に係るコントローラ200のエッジ抽出部206における処理を説明する図である。
【0027】
図3(A)は、表面読取部109Aで原稿を読み取って得られたデジタル画像データの一部を示す図である。
図3は、表面読取位置Aによる画像の読み取りが開始されてから所定の時間毎に表面読取部109Aによって得られた主走査方向における画素の列を副走査方向に結合させた画像を示している。前述したように表面読取位置Aによる画像の読み取りは原稿の先端が表面読取位置Aに到達する前のタイミングから開始されるため、表面読取部109Aによる画像の読み取りが開始されると、まず白色のガイド板116が読み取られる。その後、原稿が搬送されるにつれて原稿の画像が読み取られる。つまり、エッジ検出部206に入力される表面画像データは、ガイド板116を示す画像データ及び原稿101の先端側の辺(先端エッジ)を示す画像データを含む。
【0028】
エッジ抽出部206は、画像データに対して、主走査3画素×副走査3画素の9画素分の領域を1つのブロックとして2値化処理を実施する。尚、
図3(A)では、主走査方向の画素位置をn(1≦n≦7500)、副走査の画素位置をm(1≦m≦12000)と表記し、各画素の輝度値をpx(x=0~8)とする。エッジ抽出部206は、これら各ブロックの9画素分の輝度値の最大値pmaxと最小値pminの差分を算出する。
【0029】
図中の300で示すように、9画素全てがガイド板(白色)の箇所では9画素全てが白画素となるためpmaxとpminの差は小さい値となる。一方で、図中の301のように、ガイド板(白色)と原稿の先端の影(グレー)との境目では、9画素の中に白画素とグレー画素が混在するため、pmaxとpminの差が大きくなる。よって、エッジ抽出部206は、このpmaxとpminの差が所定の閾値pthよりも大きい場合に、ブロック内に原稿の先端側の辺(先端エッジ)の候補となる画素(以下、エッジ候補画素と称する)があると判定する。具体的には、エッジ抽出部206は、以下の式(1)を満たした場合に、中央画素(座標(n,m)の画素)をエッジ候補画素と判定する。
【0030】
pmax-pmin≧pth …式(1)
エッジ抽出部206は、この判定処理をn=1、n=7500、m=1、m=12000を除く各n、mに対して行うことで原稿101の先端エッジを判定する。
【0031】
図3(B)は、
図3(A)の画像データをpth=14で2値化した画像データを示している。白色で示した画素が上記式(1)を満たしたエッジ候補画素である。
図3(B)に示す複数のエッジ候補画素の内、副走査方向において最も先端側にある主走査方向のエッジ候補画素の列(副走査方向において最初にエッジ候補画素と判定された主走査方向の画素列)が、原稿の先端エッジとして検出される。
【0032】
エッジ抽出部206から出力された2値化データは、表面レジストレーション算出部207に入力される。表面レジストレーション算出部207では、2値化データから、原稿のレジストレーション情報を算出する。
【0033】
図4は、実施形態に係る表面レジストレーション算出部207におけるレジストレーション情報の算出方法を説明する図である。表面レジストレーション算出部207に入力される2値化データが示す画像は、
図4の点線で示す範囲の画像であり、原稿101を包含するものである。この点線の範囲は、n=1~7500、m=1~12000である。表面レジストレーション算出部207は、入力される2値化データに基づきレジストレーション情報を算出する。ここで、表面レジストレーション情報は、表面画像における原稿の位置及び角度を含む情報である。なお、原稿101の位置とは、原稿101の所定の第1位置の表面画像内における位置(x1,y1)である。実施形態では、この第1位置を、原稿101の先端エッジの2つの端部の内の一方(
図4の左側)の端部とする。また、原稿101の角度とは、表面画像内における原稿101の所定の辺の表面画像の基準方向に対する角度である。実施形態では、当該所定の辺を原稿101の先端エッジとし、基準方向を主走査方向とする。つまり、原稿101の角度は、
図4のθ1である。なお、搬送方向において先端エッジが位置(x1,y1)よりも上流側に傾く場合、角度θ1は負の値をとり、先端エッジが位置(x1,y1)よりも下流側に傾く場合、角度θ1は正の値をとるものとする。また、表面レジストレーション算出部207は、原稿101の先端エッジの2つの端部の主走査方向における距離(幅)Wを算出する。そして、表面レジストレーション算出部207は、レジストレーション情報と、幅WをCPU203に出力する。
【0034】
CPU203は、表面レジストレーション算出部207で算出された原稿先端角度θ1、角度の方向、左上座標(x1,y1)をレジストレーション補正部208に送信する。レジストレーション補正部208は、原稿先端角度θ1、角度の方向、左上座標(x1,y1)を用いて、原稿先端角度θ1が低減されるように画像データを回転させることによって、画像の傾きを補正(低減)する。即ち、レジストレーション補正部208は、原稿先端角度θ1、角度の方向、左上座標(x1、y1)を用いて、画像メモリ205に格納されている第1面(表面)の画像データをレジストレーション補正しながら読み出す。具体的には、レジストレーション補正は、例えば、左上座標(x1、y1)から原稿画像の先端側の辺に沿って(原稿先端角度θ1の方向に沿って)画像データが画像メモリ205から読み出されることによって行われる。なお、レジストレーション補正は、例えば、一般的なアフィン変換等により行われてもよい。
【0035】
図5は、実施形態に係るレジストレーション補正部208によるレジストレーション補正処理を説明する図である。
【0036】
図5(A)は、画像データが、
図4の画像を示す場合において、原稿101の先端の辺が主走査方向と平行になる様に変換した状態を示している。
図5(B)は、原稿の第1位置が基準位置となる様に、
図5(A)の画像を平行移動させた状態を示している。
【0037】
この処理により、画像データは、原稿101の第1位置が画像の基準位置(0,0)になり、斜行も補正された状態になる。レジストレーション補正部208は、レジストレーション補正を行った画像データを、例えば、図示しないメモリ等に出力する。
【0038】
図6は、原稿の副走査方向のサイズ(原稿の搬送方向の長さ)と原稿の先端エッジの傾き量(斜行角度)との関係を示すグラフ図である。このグラフの横軸は原稿の副走査方向のサイズ、縦軸は原稿の斜行角度を示している。
【0039】
図6のプロットの数値は、様々な原稿を複数回、読み取った時の平均値の3σの数値である。点線は、これらプロットの近似曲線である。このグラフが示すように、原稿の副走査方向のサイズが大きい(搬送方向の長さが長い)ほど、原稿が斜行しにくいことが分かる。これは、原稿の搬送方向の長さが長いほど、搬送されている当該原稿の後端側がサイド規制板123によって規制された状態で、原稿が搬送されるためである。つまり原稿の搬送方向の長さが長いほど、サイド規制板による原稿の幅方向における位置の規制が働くため、原稿が斜行しにくくなる。
【0040】
図7は、実施形態に係るコントローラ200における斜行補正制御を説明するフローチャートである。尚、このフローチャートで示す処理は、CPU203がRAM211に展開したプログラムを実行することにより実現される。
【0041】
このフローチャートで示す処理は、原稿の読取開始指示が入力されることにより開始され、まずS701でCPU203は、原稿トレイ102上の原稿101を1枚ずつ搬送する。次にS702に進みCPU203は、原稿検知センサ113がオンしたかどうかを、即ち、原稿検知センサ113が原稿の先端を検知したかどうか判定する。原稿検知センサ113がオンするとS703に進む。S703でCPU203は、原稿の副走査方向の長さの測定を開始する。次にS704に進みCPU203は、原稿検知センサ113がオンしてから所定時間t1を計測し、t1が経過するとS705に移行する。この所定時間t1は、原稿検知センサ113が原稿の先端を検知してから当該原稿の先端が表面読取位置Aに到達するまでの時間よりも短い時間である。尚、この所定時間の計時は、CPU203が有する不図示のタイマにより行われる。
【0042】
S705でCPU203は、表面読取部109Aにより、その原稿の画像の読み取りを開始する。そしてS706に進みCPU203は、所定時間t2を計測し、t2が経過するとS707に移行する。S707では、エッジ抽出部206による先端エッジの検出が開始される。更にはレジストレーション算出部207によるレジストレーション情報の算出が実行され、原稿先端角度θ1、角度の符号、左上の座標(X1、Y1)、幅Wの算出が完了し、これらがCPU203に送信される。よって、所定時間t2は、レジストレーション算出部207によるレジストレーション情報の算出が実行されるまでの待機時間である。
【0043】
次にS708に進みCPU203は、S703で原稿検知センサ113がオンになってからオフになる(原稿の後端が原稿検知センサ113を通過する)までの時間と原稿の搬送速度とに基づいて、原稿の副走査方向の長さを決定する。そして、S709において、CPU203は、原稿の副走査方向の長さが250mm以上(所定長以上)かどうか判定する。ここで原稿の副走査方向の長さが250mm以上であると判定するとS710に進み、原稿の副走査方向の長さが250mm未満であると判定するとS714に遷移する。
【0044】
S710でCPU203は、斜行補正を行うための閾値を第1の所定値(例えば1.5°)に設定する。S711でCPU203は、S707で取得した原稿先端の斜行角度θ1が第1の所定値以下かどうか判定し、原稿先端の斜行角度θ1が1.5°以下であればS712に進み、原稿先端の斜行角度θ1が1.5°よりも大きければS713に遷移する。S712でCPU203はレジストレーション補正を行うと決定し、S707で取得した原稿先端の斜行角度θ1が低減するように、レジストレーション補正を行い、レジストレーション補正を行った画像データを出力してS718に進む。一方、S713でCPU203は、レジストレーション補正を行わずに画像データを出力してS718に進む。なお、第1の所定値は、例えば、副走査方向の長さが250mm以上である原稿が搬送された場合に生じ得る斜行角度よりも大きい値に設定される。副走査方向の長さが250mm以上である原稿が搬送された場合に生じ得る斜行角度は予め実験によって算出される。
【0045】
またS714でCPU203は、斜行補正を行うための閾値を第2の所定値(例えば3°)に設定する。次にS715に進みCPU203は、原稿先端の斜行角度θ1が第2の所定値以下であるか否か判定し、原稿先端の斜行角度θ1が3°以下であれば、S716に遷移し、原稿先端の斜行角度θ1が3°よりも大きければS717に遷移する。S716でCPU203はレジストレーション補正を行うと決定し、S707で取得した原稿先端の斜行角度θ1が低減するように、上述したようにレジストレーション補正を行い、レジストレーション補正を行った画像データを出力してS718に進む。なお、第2の所定値は、例えば、副走査方向の長さが250mm未満である原稿が搬送された場合に生じ得る斜行角度よりも大きい値に設定される。副走査方向の長さが250mm未満である原稿が搬送された場合に生じ得る斜行角度は予め実験によって算出される。
【0046】
一方、S717でCPU203は、レジストレーション補正を行わずに画像データを出力してS718に進む。S718でCPU203は、画像メモリ205に格納された画像データの読み出しが完了したかどうか判定し、読み出しが完了するとS719に進む。S719でCPU203は、原稿トレイ102に次の原稿が載置されているかどうか判定し、次の原稿が載置されているときはS701に遷移し、原稿が載置されていないと判定した場合は、この処理を終了する。
【0047】
尚、上記説明で使用した原稿の副走査方向の長さ、斜行角度の第1の所定値及び第2の所定値の数値はあくまでも一例であり、ADFの搬送部の構成に合わせて変更するのが良い。また実施形態では、第2の所定値は第1の所定値の2倍の数値としたが、1.5~3倍程度の値であってもよい。
【0048】
以上説明したように実施形態によれば、原稿の搬送方向の長さに応じて、原稿を読み取って得られた画像データのレジストレーション補正を行うかどうかの斜行角度の閾値(設定値)を決める。これにより、例えば、原稿のダメージや破れ等によって、原稿の斜行角度が誤検知された場合でも、画像データに対して過度なレジストレーション補正することなく、適切な画像データを提供することができる。即ち、読み取られた画像を表す画像データを精度よく補正することができる傾き補正後の画像が、当該補正前の画像の傾き方向とは逆方向に傾いてしまうことを抑制することができる)。
【0049】
なお、本実施形態では、
図7におけるS713及びS717において、レジストレーション補正を行わなかったが、この限りではない。例えば、S713及びS717において、S712及びS716よりも小さい所定の角度だけレジストレーション補正が行われてもよい。
【0050】
また実施形態では、搬送路に設けられて原稿の有無を検知する原稿検知センサ113の検知結果に基づいて原稿の搬送方向における長さが決定(取得)されたが、この限りではない。例えば、原稿トレイ102に設けられた、原稿の搬送方向の長さを検知するセンサの検知結果に基づいて、原稿の搬送方向における長さが決定(取得)されてもよい。
【0051】
(その他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0052】
本発明は上記実施形態に制限されるものではなく、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、本発明の範囲を公にするために、以下の請求項を添付する。
【符号の説明】
【0053】
109A…表面読取部、109B…裏面読取部、113…原稿先端検知センサ、200…コントローラ、202…操作部、204A…表面シェーディング回路、204B…裏面シェーディング回路、205…画像メモリ、206…エッジ抽出部、207…表面レジストレーション算出部、208…レジストレーション補正部