(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-26
(45)【発行日】2024-12-04
(54)【発明の名称】電力供給装置、システム、露光装置および物品製造方法
(51)【国際特許分類】
H02J 1/00 20060101AFI20241127BHJP
H02J 1/10 20060101ALI20241127BHJP
H01L 21/02 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
H02J1/00 304E
H02J1/10
H01L21/02 Z
(21)【出願番号】P 2020193758
(22)【出願日】2020-11-20
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】茂木 泰弘
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0319545(US,A1)
【文献】特開2004-104018(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 1/00
H02J 1/10
H01L 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のユニットに対して電力を供給するための複数の電力供給端子を有する電力供給装置であって、
各ユニットは、前記複数の電力供給端子のいずれかから電力の供給を受ける受電部と、前記受電部に対して電力の供給を受けることなく、当該ユニットの消費電力に関する情報を含む制御情報を前記電力供給装置に提供するデバイスとを含み、
前記電力供給装置は、
複数の電源と、
前記複数の電力供給端子を通して前記複数のユニットに電力が供給されていない状態において前記複数のユニットのそれぞれの前記デバイスから前記制御情報を取得し、前記制御情報に基づいて前記複数のユニットの少なくとも1つ
のユニットに対して前記複数の電力供給端子のいずれかを通して電力を供給するための電源を前記複数の電源から選択
し、選択された電源を示す接続先情報を前記少なくとも1つのユニットの前記デバイスに供給する制御部と、を備える、
ことを特徴とする電力供給装置。
【請求項2】
前記接続先情報が供給された前記少なくとも1つのユニットの前記デバイスの前記制御情報は、前記接続先情報を含むように更新され、
前記制御部は、前記状態において前記複数のユニットのいずれかのユニットから取得した前記制御情報が前記接続先情報を含む場合は、前記接続先情報に基づいて、当該ユニットと前記接続先情報によって示される電源とを接続する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電力供給装置。
【請求項3】
前記複数のユニットが、前記複数の電源のいずれから電力が供給されるかが既に決定された少なくとも1つの第1ユニットと、前記複数の電源のいずれから電力が供給されるかが未だ決定されていない少なくとも1つの第2ユニットと、を含む状態において、
前記制御部は、前記複数の電源のうち前記第1ユニットに電力を供給する電源の余剰電力と、前記第2ユニットの前記制御情報とに基づいて、前記複数の電源のうち前記第2ユニットに対して電力を供給するための電源を前記複数の電源から選択する、
ことを特徴とする請求項1
又は2に記載の電力供給装置。
【請求項4】
複数のユニットに対して電力を供給するための複数の電力供給端子を有する電力供給装置であって、
各ユニットは、前記複数の電力供給端子のいずれかから電力の供給を受ける受電部と、前記受電部に対して電力の供給を受けることなく、当該ユニットの消費電力に関する情報を含む制御情報を前記電力供給装置に提供するデバイスとを含み、
前記電力供給装置は、
複数の電源と、
前記複数の電力供給端子を通して前記複数のユニットに電力が供給されていない状態において前記複数のユニットのそれぞれの前記デバイスから前記制御情報を取得し、前記制御情報に基づいて前記複数のユニットの少なくとも1つに対して前記複数の電力供給端子のいずれかを通して電力を供給するための電源を前記複数の電源から選択する制御部と、
1つの電力供給端子に1つのメモリが対応するように前記複数の電力供給端子にそれぞれ対応する複数のメモリ素子と
、を備え、
前記複数のユニットの各々は、前記複数の電力供給端子のうちの1つの電力供給端子に接続されたときに、前記複数のメモリ素子のうち前記1つの電力供給端子に対応するメモリ素子に接続され、
前記複数のメモリ素子の各々は、前記複数の電力供給端子のうち対応する電力供給端子を識別する識別情報を含
み、前記複数の電力供給端子のうち対応する前記電力供給端子に接続されたユニットの前記デバイスに前記識別情報を供給する、
ことを特徴とす
る電力供給装置。
【請求項5】
前記複数のメモリ素子の各々は、前記複数の電力供給端子のうち対応する前記電力供給端子に接続されたユニットの前記デバイスから電力の供給を受けて動作し、前記識別情報を前記デバイスに供給する、
ことを特徴とする請求項
4に記載の電力供給装置。
【請求項6】
前記複数のユニットのうち前記複数の電力供給端子に接続されたユニットの前記デバイスに電力を供給する機能を有する通信インターフェースを更に備える、
ことを特徴とする請求項1乃至
5のいずれか1項に記載の電力供給装置。
【請求項7】
前記デバイスは、前記制御情報を格納する不揮発性メモリを含み、
前記制御部は、前記不揮発性メモリに格納された前記制御情報を取得する、
ことを特徴とする請求項1乃至
6のいずれか1項に記載の電力供給装置。
【請求項8】
前記不揮発性メモリに格納された前記制御情報は、任意または所定のタイミングで更新され、
前記制御部は、更新された前記制御情報を取得する、
ことを特徴とする請求項
7に記載の電力供給装置。
【請求項9】
前記複数の電源の仕様および状態、および、前記複数のユニットの消費電力の少なくとも1つを示す情報を出力する出力部を更に備える、
ことを特徴とする請求項1乃至
8のいずれか1項に記載の電力供給装置。
【請求項10】
複数のユニットに対して電力を供給するための
複数の電源および複数の電力供給端子を有する電力供給装置の前記複数の電力供給端子のいずれかに接続され前記電力供給装置から
供給される電力によって動作するユニットであって、
当該ユニットの消費電力に関する情報、および、前記複数の電源のうち当該ユニットのために前記電力供給装置によって選択された電源を示す接続先情報、を含む制御情報を格納するデバイスと、
前記複数の電力供給端子のいずれかから電力の供給を受ける受電部と、
前記受電部に対して電力の供給を受けることなく
前記制御情報を前記電力供給装置に提供する通信部
と、
を備え
ることを特徴とするユニット。
【請求項11】
当該ユニットのための電源が前記電力供給装置によって選択されるまでは、前記接続先情報として、電源が未確定であることを示す情報が前記デバイスに格納されている、
ことを特徴とする請求項10に記載のユニット。
【請求項12】
複数のユニットに対して電力を供給するための複数の電源および複数の電力供給端子を有する電力供給装置の前記複数の電力供給端子のいずれかに接続され前記電力供給装置から供給される電力によって動作するユニットであって、
制御情報を格納するデバイスと、
前記複数の電力供給端子のいずれかから電力の供給を受ける受電部と、
前記受電部に対して電力の供給を受けることなく前記制御情報を前記電力供給装置に提供する通信部と、を備え、
前記電力供給装置は、1つの電力供給端子に1つのメモリが対応するように前記複数の電力供給端子にそれぞれ対応する複数のメモリ素子を有し、前記複数のメモリ素子の各々は、前記複数の電力供給端子のうち対応する電力供給端子を識別する識別情報を含み、
当該ユニットが前記複数の電力供給端子のうちの1つの電力供給端子に接続されたときに、前記デバイスは、前記複数のメモリ素子のうち前記1つの電力供給端子に対応するメモリ素子に接続され、前記メモリ素子から前記識別情報を取得し、前記識別情報を含むように前記制御情報を更新する、
ことを特徴とするユニット。
【請求項13】
複数のユニットと、前記複数のユニットに対して電力を供給するための複数の電力供給端子を有する電力供給装置と、を備えるシステムであって、
各ユニットは、前記複数の電力供給端子のいずれかから電力の供給を受ける受電部と、前記受電部に対して電力の供給を受けることなく、当該ユニットの消費電力に関する情報を含む制御情報を前記電力供給装置に提供するデバイスとを含み、
前記電力供給装置は、
複数の電源と、
前記複数の電力供給端子を通して前記複数のユニットに電力が供給されていない状態において前記複数のユニットのそれぞれの前記デバイスから前記制御情報を取得し、前記制御情報に基づいて前記複数のユニットの少なくとも1つ
のユニットに対して前記複数の電力供給端子のいずれかを通して電力を供給するための電源を前記複数の電源から選択
し、選択された電源を示す接続先情報を前記少なくとも1つのユニットの前記デバイスに供給する制御部と、を備える、
ことを特徴とするシステム。
【請求項14】
前記接続先情報が供給された前記少なくとも1つのユニットの前記デバイスの前記制御情報は、前記接続先情報を含むように更新され、
前記制御部は、前記状態において前記複数のユニットのいずれかのユニットから取得した前記制御情報が前記接続先情報を含む場合は、前記接続先情報に基づいて、当該ユニットと前記接続先情報によって示される電源とを接続する、
ことを特徴とする請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
複数のユニットと、前記複数のユニットに対して電力を供給するための複数の電力供給端子を有する電力供給装置と、を備えるシステムであって、
各ユニットは、前記複数の電力供給端子のいずれかから電力の供給を受ける受電部と、前記受電部に対して電力の供給を受けることなく、当該ユニットの消費電力に関する情報を含む制御情報を前記電力供給装置に提供するデバイスとを含み、
前記電力供給装置は、
複数の電源と、
前記複数の電力供給端子を通して前記複数のユニットに電力が供給されていない状態において前記複数のユニットのそれぞれの前記デバイスから前記制御情報を取得し、前記制御情報に基づいて前記複数のユニットの少なくとも1つに対して前記複数の電力供給端子のいずれかを通して電力を供給するための電源を前記複数の電源から選択する制御部と、
1つの電力供給端子に1つのメモリが対応するように前記複数の電力供給端子にそれぞれ対応する複数のメモリ素子と、を備え、
前記複数のユニットの各々は、前記複数の電力供給端子のうちの1つの電力供給端子に接続されたときに、前記複数のメモリ素子のうち前記1つの電力供給端子に対応するメモリ素子に接続され、
前記複数のメモリ素子の各々は、前記複数の電力供給端子のうち対応する電力供給端子を識別する識別情報を含み、前記複数の電力供給端子のうち対応する前記電力供給端子に接続されたユニットの前記デバイスに前記識別情報を供給する、
ことを特徴とするシステム。
【請求項16】
複数のユニットと、前記複数のユニットに対して電力を供給するための複数の電力供給端子を有する電力供給装置と、を備える露光装置であって、
各ユニットは、前記複数の電力供給端子のいずれかから電力の供給を受ける受電部と、前記受電部に対して電力の供給を受けることなく、当該ユニットの消費電力に関する情報を含む制御情報を前記電力供給装置に提供するデバイスとを含み、
前記電力供給装置は、
複数の電源と、
前記複数の電力供給端子を通して前記複数のユニットに電力が供給されていない状態において前記複数のユニットのそれぞれの前記デバイスから前記制御情報を取得し、前記制御情報に基づいて前記複数のユニットの少なくとも1つ
のユニットに対して前記複数の電力供給端子のいずれかを通して電力を供給するための電源を前記複数の電源から選択
し、選択された電源を示す接続先情報を前記少なくとも1つのユニットの前記デバイスに供給する制御部と、を備える、
ことを特徴とする露光装置。
【請求項17】
前記接続先情報が供給された前記少なくとも1つのユニットの前記デバイスの前記制御情報は、前記接続先情報を含むように更新され、
前記制御部は、前記状態において前記複数のユニットのいずれかのユニットから取得した前記制御情報が前記接続先情報を含む場合は、前記接続先情報に基づいて、当該ユニットと前記接続先情報によって示される電源とを接続する、
ことを特徴とする請求項16に記載の露光装置。
【請求項18】
複数のユニットと、前記複数のユニットに対して電力を供給するための複数の電力供給端子を有する電力供給装置と、を備える露光装置であって、
各ユニットは、前記複数の電力供給端子のいずれかから電力の供給を受ける受電部と、前記受電部に対して電力の供給を受けることなく、当該ユニットの消費電力に関する情報を含む制御情報を前記電力供給装置に提供するデバイスとを含み、
前記電力供給装置は、
複数の電源と、
前記複数の電力供給端子を通して前記複数のユニットに電力が供給されていない状態において前記複数のユニットのそれぞれの前記デバイスから前記制御情報を取得し、前記制御情報に基づいて前記複数のユニットの少なくとも1つに対して前記複数の電力供給端子のいずれかを通して電力を供給するための電源を前記複数の電源から選択する制御部と、
1つの電力供給端子に1つのメモリが対応するように前記複数の電力供給端子にそれぞれ対応する複数のメモリ素子と、を備え、
前記複数のユニットの各々は、前記複数の電力供給端子のうちの1つの電力供給端子に接続されたときに、前記複数のメモリ素子のうち前記1つの電力供給端子に対応するメモリ素子に接続され、
前記複数のメモリ素子の各々は、前記複数の電力供給端子のうち対応する電力供給端子を識別する識別情報を含み、前記複数の電力供給端子のうち対応する前記電力供給端子に接続されたユニットの前記デバイスに前記識別情報を供給する、
ことを特徴とする露光装置。
【請求項19】
請求項
16乃至18のいずれか1項に記載の露光装置を用いて基板を露光する露光工程と、
前記露光工程を経た前記基板を現像する現像工程と、
前記現像工程を経た前記基板を処理して物品を得る処理工程と、
を含むことを特徴とする物品製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力供給装置、システム、露光装置および物品製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
産業機器には、基本仕様を満たす標準ユニット群と顧客が選択可能な機能拡張を提供するオプションユニット群とを備えるものがある。また、産業機器には、それに加えて、顧客の個別の要望に沿って開発されたユニットを備えるものもある。更には、産業機器をベンダーが顧客へ納めた後も、基本仕様に対してアップグレードさせるハードウエアおよび/またはソフトウエアを提供することもなされうる。一方で、種々の組み合わせが採用されうるユニット構成の全てに対応可能な電源を個別に用意することは困難である。
【0003】
まず、産業機器に含まれる複数のユニットの全体の消費電力を正確に把握することは困難である。例えば、半導体露光装置やFPD露光装置のような超高精密な産業機器の場合は、同じユニット構成であっても、設置先によっては設置環境(周囲温度、湿度、高度)や設備(冷却水温度、電源電圧入力)等の影響により環境制御に使用される消費電力が変化しる。また、産業機器の設置場所の床強度に応じて制振制御のために使用される消費電力が変化しうる。
【0004】
また、設置環境の違いによる影響だけでなく、露光シーケンスにおけるワークの搬入からアライメント計測、スキャン露光の繰り返し、ワークの搬出までの過程で各ユニットの役割が異なりうる。よって、露光シーケンスによって、消費する電力のピークのタイミングが異なりうる。例えば、アライメントスコープおよびオフアクシススコープのような計測系は、計測時には電力を多く消費するが露光時はほとんど消費しない。原版を駆動する原版駆動機構および基板を駆動する基板駆動機構については、その逆で、計測時には電力はほとんど消費しないが露光時は大電力を消費する。このような各ユニットの特徴を把握した上で負荷が均一になるような電源供給が可能であることが望ましい。
【0005】
上記の事情を踏まえ、標準構成だけのユニットであれば各ユニットの消費電力仕様と産業機器を制御するソフトウエアが実行するシーケンス制御を考慮した設計データをベースとして、それに適した電力供給を用意することは可能である。ところが、すべてのオプションを使用する前提で産業機器の電源システムを構築すると、オプション構成がない産業機器の場合は電源の余剰電力が大きい。余剰電力が大きい構成は、電源効率が落ちるので、省エネの観点で望ましくない。また、オプション構成がある場合とない場合とでは標準ユニットの動作も異なるため、標準ユニット自体の消費電力も変動しうる。
【0006】
上記のように産業機器は、特性がわかっている標準ユニットおよびオプションユニットの組み合わせが多いだけでも、消費電力を正確に把握することが難しい。これに加えて、顧客との商談の上で仕様が確定する特注ユニットが電源システムに追加で接続されることや、顧客へ産業機器を納めた後に性能または機能をアップグレードすることにより消費電力が増えることもある。このような場合に対して、予め用意されていた産業機器の電源システムで対応することは極めて困難である。最悪の場合、電源システムの容量を超えて、産業機器がダウンする可能性もある。
【0007】
そこで、ユニットの追加あるいは機能の追加があった場合には、それに応じて電源を増設するか、改修規模が大きな配線工事を行う必要があった。その結果、非効率的な電源システムが構築され、これにより、電力損失が増えたり、設置面積が必要以上に増えたりするといった問題が発生しうる。また、配線工事は、メインブレーカをオフしてから行われるので、産業機器のダウンタイムが大きくなりうる。
【0008】
特許文献1には、電源振分制御回路およびサーバ振分制御回路が記載されている。電源振分制御回路は、サーバ装置から電力予測値を入手すると、消費電力が少ないサーバ装置に対しては、内蔵電源を外部出力させる切替指示を送り、消費電力が多いサーバ装置に対しては、外部出力された内蔵電源を受け取らせる切替指示を送る。サーバ振分制御回路は、余剰電力をどのサーバにどのくらい割り振るかを示す振分情報を生成し、サーバ電源振分回路に送る。しかし、サーバ装置は、電力が供給されサーバ装置として動作している状態でなければ、電力予測値を電源振分制御回路に送ることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、複数のユニットに対して電力を供給する電力供給装置の再構成を容易にするために有利な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の1つの側面は、複数のユニットに対して電力を供給するための複数の電力供給端子を有する電力供給装置に係り、各ユニットは、前記複数の電力供給端子のいずれかから電力の供給を受ける受電部と、前記受電部に対して電力の供給を受けることなく、当該ユニットの消費電力に関する情報を含む制御情報を前記電力供給装置に提供するデバイスとを含み、前記電力供給装置は、複数の電源と、前記複数の電力供給端子を通して前記複数のユニットに電力が供給されていない状態において前記複数のユニットのそれぞれの前記デバイスから前記制御情報を取得し、前記制御情報に基づいて前記複数のユニットの少なくとも1つのユニットに対して前記複数の電力供給端子のいずれかを通して電力を供給するための電源を前記複数の電源から選択し、選択された電源を示す接続先情報を前記少なくとも1つのユニットの前記デバイスに供給する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数のユニットに対して電力を供給する電力供給装置の再構成を容易にするために有利な技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】産業機器における電力供給装置の構成を例示する図。
【
図2】IoTデバイスの不揮発性メモリに格納されたユニット電力情報を例示する図。
【
図4】電力供給制御部が産業機器における電力リソースを動的に割り当てる割当シーケンスを例示する図。
【
図5】追加されたユニットに内蔵電源を割り当てる動作を例示する図。
【
図6】産業機器に組み込まれるユニットの構成を例示する図。
【
図7】産業機器における電力供給装置を利用したオンラインシステムの構成を例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0015】
図1には、一実施形態の産業機器IEにおける電力供給装置1の構成が示されている。産業機器IEは、電力供給装置1を含むシステムの一例である。産業機器IEは、複数のユニット200、201、202、203を備えうる。複数のユニット200、201、202、203は、受電部230、231、232、233をそれぞれ含みうる。複数のユニット200、201、202、203は、IoTデバイス210、211、212、213をそれぞれ含みうる。電力供給装置1は、複数のユニット200、201、202、203の受電部230、231、232、233に対して電力を供給するための複数の電力供給端子110、111、112、113、114を備えうる。また、電力供給装置1は、複数の内蔵電源(電源)100、101、102、103を備えうる。
【0016】
複数の内蔵電源100、101、102、103には、外部電源から電力PWRが供給されうる。一例において、複数の内蔵電源100、101、102、103のうち内蔵電源103は、予備の内蔵電源であり、複数の電力供給端子110~114のうち電力供給端子114は、予備の電力供給端子でありうる。電力供給装置1は、電力供給制御部130を備えうる。電力供給制御部130は、複数のユニット200~203の少なくとも1つに対して複数の電力供給端子110~114のいずれかを通して電力を供給するための内蔵電源を複数の内蔵電源100~103の中から選択するように構成されうる。また、電力供給装置1は、PoEハブ131を備えうる。PoEハブ131は、複数のユニット200~203のうち複数の電力供給端子110~114に接続されたユニットのIoTデバイスに電力を供給する機能を有する通信インターフェースの一例である。電力供給装置1は、更に、複数の内蔵電源100~103の少なくとも1つと複数の電力供給端子110~114の少なくとも1つとの接続を決定するスイッチ回路132を備えうる。なお、
図1の例では、スイッチ回路132は、複数の内蔵電源100~103の少なくとも1つと電力供給端子113、114の少なくとも1つとの接続を決定するように配置されている。接続の決定とは、接続を行うこと、および、その接続を解除することを含む。
【0017】
複数の電力供給端子110、111、112、113、114には、複数のICメモリ(メモリ素子)120、121、122、123、124がそれぞれ割り当てられている。複数のICメモリ120、121、122、123、124の各々には、複数の電力供給端子110、111、112、113、114のうち対応する電力供給端子のロケーション情報(識別情報)が格納される。電力供給制御部130は、複数の内蔵電源100~103を管理する機能、スイッチ回路132を制御する機能、および、産業機器制御部150とPoEハブ131を介して通信する機能を備えうる。
【0018】
電力供給制御部130は、複数の内蔵電源100~103の各々に制御信号を送ることによって、複数の内蔵電源100~103を動作状態(ON)にしたり、停止状態(OFF)にしたりすることができる。また、電力供給制御部130は、複数の内蔵電源100~103から、例えば、それらの仕様(例えば、定格出力電力、出力電圧)および/または状態(例えば、エラー状態)等の情報を任意または所定のタイミングで取得しうる。電力供給制御部130には、外部電源から電力PWRが供給されうる。電力供給制御部130は、外部電源から電力供給制御部130に電力PWRが供給されることにより、又は、不図示のスイッチが操作されることより、又は、起動コマンド等の起動信号が入力されることにより、起動されうる。複数の内蔵電源100~103は、電力供給制御部130からの制御信号あるいは起動信号によって起動されうる。複数の内蔵電源100~103は、起動されることによって、電力PWRに基づいて、それぞれの仕様に応じた電圧を出力しうる。
【0019】
電力供給制御部130は、複数の内蔵電源100~103のそれぞれの仕様(例えば、定格出力電力、出力電圧)と、複数のユニット200~203の仕様(例えば、消費電力、入力電圧)および接続先(電力供給端子)に基づいてスイッチ回路132を制御しうる。これは、複数のユニット200~203の各々に対して電力を供給する内蔵電源を複数の内蔵電源100~103から選択することを意味する。電力供給制御部130は、複数のユニット200~203にそれぞれ設けられたIoTデバイス210~213から複数のユニット200~203の仕様(例えば、消費電力、入力電圧)および接続先(電力供給端子)に関する情報を取得することができる。電力供給制御部130は、複数の内蔵電源100~103の仕様および状態、および、複数のユニット200~203の消費電力の少なくとも1つを示す情報を出力する出力部を備えてもよい。該出力部は、例えば、表示部および通信部の少なくとも1つを含みうる。
【0020】
図2(a)、(b)には、ユニットに設けられたIoTデバイスの不揮発性メモリ(後述のフラッシュROM306)に格納されたユニット電力情報の例が模式的に示されている。この例では、ユニット200は、標準ユニット(産業機器IEに標準で組み込まれるユニット)であり、ユニット203は、オプションユニット(ユーザの選択によって産業機器IEに標準で組み込まれるユニット)である。
図2(a)には、標準ユニットであるユニット200のIoTデバイス210に格納されたユニット電力情報の例が模式的に示されている。
図2(b)には、オプションユニットであるユニット203のIoTデバイス213に格納されたユニット電力情報の例が模式的に示されている。
【0021】
1行目には、ユニット名称、接続された電力供給端子、接続された内蔵電源、入力電圧の情報が含まれる。ユニットが標準ユニットである場合は、接続計画が確定している負荷であるので、全ての情報が設置の当初から存在しうる。一方、ユニットがオプションユニット等の接続が未確定のユニットである場合、接続された電力供給端子および接続された内蔵電源に関する情報は設置の当初は存在しない。
図2(b)の例では、接続先が未確定の電力供給端子はXで示され、接続先が未確定の内蔵電源はYで示されている。Xについては、電力供給端子のロケーション情報が含まれるICメモリから取得され、これについては、
図3を参照して説明される。Yについては、電力供給制御部130が電力リソース(内蔵電源100~103)を動的に割り当てるための割当シーケンスを実行中することによって決定され、これについては、
図4を参照して説明される。
【0022】
2行目には、産業機器IEの動作状態に応じた複数の消費電力情報が格納あるいは記録される。
図2の例では、産業機器IEが半導体露光装置またはFPD露光装置等の露光装置である場合の例である。露光装置では、イニシャライズ時、アイドル時、計測時、露光時で各ユニットの消費電力の変動が顕著に現れるので、
図2の例では、これらの4つ例が示されている。動作状態の種類は、産業機器IEの特性に応じて定義され、また、その数は増減されうる。動作状態をより細かく分類すれば、電力供給制御部130は、全体的な負荷(消費電力)をより正確に推定することができる。例えば、イニシャライズのシーケンスは、産業機器制御部150が管理し計画的に実行する複数の動作を含むことができ、これらの複数の動作毎に消費電力情報が取得され、ユニット電力情報の一部としてIoTデバイスに格納されてもよい。電力供給装置1の電力供給制御部130は、PoEハブ131を介して、ユニットのIoTハブの不揮発性メモリに格納されたユニット電力情報を取得することができる。
【0023】
図3には、
図1に示された産業機器IEの一部の詳細が例示されている。
図3では、複数のユニット200~203のうちユニット200が示されているが、他のユニットも同様の構成を含みうる。IoTデバイス210は、例えば、LAN通信部300、受電インターフェース301、送電インターフェース302、通信デバイス303、プロセッサ304、メモリ305、フラッシュROM306、インターフェース307およびバス308を含みうる。ユニット200は、ユニット制御部220の他、不図示の複数の構成要素を備えることができ、該複数の構成要素は、ユニット制御部220によって制御されうる。ユニット制御部220は、インターフェース307を介してIoTデバイス210と通信することができる。ユニット200が接続された電力供給端子110に割り当てられたICメモリ120は、受電回路310、フラッシュROM311および通信デバイス312を含みうる。他のICメモリ121~124も同様の構成を含みうる。
【0024】
ユニット200は、電力供給装置1の複数の電力供給端子110~114のいずれかから電力の供給を受ける受電部231を備え、受電部231が受けた電力を使って動作する。受電部231が電力供給装置1の複数の電力供給端子110~114のいずれかから受けた電力は、ユニット制御部220の他、前述の不図示の複数の構成要素に供給される。
【0025】
一方、IoTデバイス210は、電力供給装置1のPoEハブ131から電力の供給を受けて動作しうる。IoTデバイス210は、ユニット200の受電部231が電力供給装置1の複数の電力供給端子110~114のいずれからも電力が供給されていない状態において、電力供給装置1のPoEハブ131から電力の供給を受けて動作しうる。受電インターフェース301は、PoEハブ131から供給される電力に基づいて送電インターフェース302に電力を供給する。受電インターフェース301が送電インターフェース302に供給する電圧は、PoEハブ131から受電インターフェース301に供給される電圧と同じであってもよいし、異なってもよい。送電インターフェース302は、ユニット200が接続された電力供給端子110に割り当てられたICメモリ120の受電回路310に電力を供給する。受電回路310は、送電インターフェース302から電力が供給されると、その電力に基づいてフラッシュROM311および通信デバイス312に電力を供給する。フラッシュROM311には、ICメモリ120が割り当てられた電力供給端子110のロケーション情報(識別情報)が格納されていて、そのロケーション情報が通信デバイス312を介してIoTデバイス210の通信デバイス303に送信される。ロケーション情報は、フラッシュROM306にユニット電力情報の一部として格納あるいは記録される。電力供給装置1の電力供給制御部130は、PoEハブ131およびLAN通信部300を介して、フラッシュメモリ306に格納されたユニット電力情報を取得することができる。
【0026】
PoEハブ131からIoTデバイス210に電力を供給する構成は、電力供給端子110(あるいは、111~114)からユニット200に電力が供給される前にIoTデバイス210に電力を供給することを可能にする。換言すれば、PoEハブ131からIoTデバイス210に電力を供給する構成は、電力供給端子110(あるいは、111~114)からユニット200に電力が供給されていない状態でIoTデバイス210に電力を供給することを可能にする。PoEハブ131の代わりに電力供給装置1からIoTデバイス210に直接(即ち、電力供給端子110~114を介することなく)電力を供給する構成が採用されてもよい。あるいは、IoTデバイス210に対して(IoTデバイス210内、又は、ユニット200内の)電池から電力を供給する構成が採用されてもよい。このような構成においては、PoEハブ131は不要であり、電力供給機能を有しないハブが使用されてもよい。
【0027】
あるいは、電力供給装置1とユニット200~204との距離が近く、無線通信が可能である場合がある。この場合、IoTデバイス210~214を無線タイプのICタグとし、電力供給制御部130とICタグとの通信手段としてPoE HUB 131の代わりにRFIDリーダ/ライタを用いてもよい。
【0028】
一例において、通信デバイス312および通信デバイス303は、通信デバイス312をスレーブノードとし、通信デバイス303をマスターノードとして、シリアル通信を行うように構成されうる。通信デバイス312から通信デバイス303に伝送される電力供給端子のロケーション情報がフラッシュROM306に格納あるいは記録されることによって、
図2を参照して説明したXの情報が確定する。IoTデバイス210は、ロケーション情報がフラッシュROM306へ格納されたことが確認されると、送電インターフェース302をOFFしうる。そして、IoTデバイス210は、次にPoEハブ131から受電インターフェース301に電力が供給するまではICメモリ120と通信を行わないように構成されうる。
【0029】
産業機器の動作状態に応じた複数の消費電力情報(例えば、イニシャライズ時、アイドル時、計測時、露光時の消費電力情報)は、ユニット制御部220からIoTデバイス210のインターフェース307を経由することでフラッシュROM306に格納されうる。消費電力情報の初期値としては、例えば、ユニット200の出荷時の検査等において、所定のシーケンス条件の下で測定されたものが用いられうる。
【0030】
以上のように、各ユニットは、受電部231に対して電力の供給を受けることなく、当該ユニットの消費電力に関する情報を含む制御情報(ユニット制御情報)を電力供給装置1に提供するデバイス(IoTデバイス)を含みうる。電力供給装置1は、複数の電力供給端子110~114を通して複数のユニット200~204に電力が供給されていない状態において複数のユニット200~204のそれぞれのデバイス(IoTデバイス)から該制御情報(ユニット制御情報)を取得しうる。電力供給装置1は、該制御情報に基づいて複数のユニット200~204の少なくとも1つに対して複数の電力供給端子110~114のいずれかを通して電力を供給するための内蔵電源を複数の内蔵電源100~103から選択しうる。
【0031】
図4には、電力供給装置1の電力供給制御部130が産業機器IEにおける電力リソース(内蔵電源100~103)を動的にユニットに割り当てる割当シーケンスが例示されている。ここでは、ユニット203がオプションユニットであり、ユニット203のIoTデバイス213に格納された制御情報にYが存在するものとする。また、内蔵電源103は、予備の内蔵電源であるものとする。ステップS401では、電力供給制御部(以下、制御部)130は、複数の内蔵電源100~103の全てがOFFであるかどうかを確認し、複数の内蔵電源100~103の全てがOFFであれば、ステップS402に進む。ステップS402では、制御部130は、電源スイッチの操作あるいは起動コマンドによって内蔵電源100~103をONさせることを禁止する。次いで、ステップS403では、制御部130は、PoEハブ131を介したLAN通信によりユニット200~204のIoTデバイス210~214の制御情報(ユニット制御情報)を取得する。
【0032】
次いで、ステップS404では、制御部130は、内蔵電源100~103の出力電圧および出力電力上限とステップS403で取得した制御情報のうち接続先情報と消費電力情報とに基づいて、内蔵電源100~103の各々の余剰電力を計算する。なお、制御部130は、内蔵電源100~103の出力電圧および出力電力上限を示す情報を予め取得している。
図5には、内蔵電源100~103の余剰電力が模式的に示されている。「INIT.」はイニシャル時の消費電力、「IDOL」はアイドル時の消費電力、「計測」は計測時の消費電力、「露光」は露光時の消費電力を示す。また、クロスハッチングが付された部分は、既に当該内蔵電源が割り当てられているユニットの消費電力を示す。ニット200には内蔵電源100が既に割り当てられ、ユニット201には内蔵電源101が既に割り当てられ、ユニット202には内蔵電源102が既に割り当てられている。クロスハッチングが付された部分の上端と出力電力上限との差分が余剰電力である。
【0033】
ステップS405では、制御部130は、ステップS403で取得した制御情報のうち接続先情報に基づいて、接続先の内蔵電源が決定されていないIoTデバイス(換言すれば、そのIoTデバイスに対応するユニット)が存在するかどうかを判断する。接続先の内蔵電源が決定されていないIoTデバイス(ここでは、IoTデバイス213)は、制御情報に
図2で説明したYが存在するIoTデバイスである。接続先の内蔵電源が決定されていないIoTデバイスが存在する場合は、制御部130は、ステップS406に進み、そのようなIoTデバイスが存在しない場合は、ステップS410に進む。
【0034】
ステップS410では、制御部130は、制御部130は、電源スイッチの操作あるいは起動コマンドによって内蔵電源100~103をONさせることを許可し、これにより割当シーケンスが終了する。
【0035】
以下、接続先の内蔵電源が決定されていないIoTデバイスが存在する場合の動作を説明する。テップS406では、制御部130は、IoTデバイス213に格納された制御情報から得られるユニット203の消費電力と、ステップS404で計算した内蔵電源100~103の余剰電力とを比較する。
図5の例では、内蔵電源100は、ユニット203に電力を供給するための余剰電力を有し、内蔵電源101は、ユニット203に電力を供給するための余剰電力を有せず、予備の内蔵電源103は、ユニット203に電力を供給するための余剰電力を有する。なお、内蔵電源102は、その出力電圧が48Vであり、入力電圧が24Vであるユニット203には適合しない。
【0036】
ステップS407では、制御部130は、複数の内蔵電源100~103の中に出力電圧がユニット203に適合し、かつ、ユニット203に対して電力を供給するための余剰電力を有するものがあるかどうかを判断する。そして、そのような内蔵電源が存在しない場合には、制御部130は、ステップS411においてエラー通知を行う。その場合は、エラーの原因を取り除く作業が必要になる。例えば、産業機器制御部150の稼働計画を見直すことによりユニット200~202の消費電力を低くした後に、ユニット側のIoTデバイス200a~202aへ消費電力情報を書き換えるなどの対策をとる必要がある。より具体的な例としては、産業機器制御部150の稼働計画を見直すことによりユニット200~202の消費電力を低くした後に、ユニット200~202のIoTデバイス210~212の消費電力情報を書き換えるような対策が採られうる。
【0037】
一方、複数の内蔵電源100~103の中に出力電圧がユニット203に適合し且つユニット203に対して電力を供給するための余剰電力を有するものがある場合、ステップS408において、制御部130は、ユニット203に割り当てる内蔵電源を決定する。ここで、制御部130は、既にいずれかのユニットに割り当てられた内蔵電源、即ち、内蔵電源100を予備の内蔵電源103によりも優先順位が高い割り当て候補とすることができる。余剰電力を有する内蔵電源が予備の内蔵電源103のみである場合には、制御部130は、予備の内蔵電源103をユニット203に割り当てうる。制御部130は、スイッチ回路132を制御することによってユニット203に対して内蔵電源100を割り当てる。換言すると、制御部130は、スイッチ回路132を制御することによってユニット203に対して割り当てる内蔵電源100を決定するとも言える。
【0038】
ステップS409では、制御部130は、ユニット203のIoTデバイス213に、接続された内蔵電源が内蔵電源100であることを示す接続先情報を格納する。ステップS409を実行することにより、制御部130は、追加されたユニット203を固定の負荷として管理することが可能になるため、次に割当シーケンスが実行される際に、その実行に要する時間が短縮される。ステップS409の後、処理はステップS404に戻る。
【0039】
上記のケースでは、複数のユニットは、複数の内蔵電源のいずれから電力が供給されるかが既に決定された少なくとも1つの第1ユニットと、複数の内蔵電源のいずれから電力が供給されるかが未だ決定されていない少なくとも1つの第2ユニットとを含む。制御部130は、複数の内蔵電源のうち第1ユニットに電力を供給する電源の余剰電力と、第2ユニットの制御情報とに基づいて、複数の内蔵電源のうち第2ユニットに対して電力を供給するための内蔵電源を前記複数の電源から選択しうる。
【0040】
上記の電力供給装置1を含むシステムを使用して余剰電力を有効利用するためには各ユニットの実消費電力を正確に把握することが望ましい。産業機器IEの設置先の環境条件等で同じ動作シーケンスの場合でも産業機器IEの消費電力は異なりうる。したがって、ユニット200~203を管理するIoTデバイス210~213に格納される消費電流値は、出荷時等に設定された初期値のままではなく、随時更新されることが好ましい。例えば、産業機器IEの設置後に、定期的に又は任意のタイミングで、ユニット200~203の消費電流を測定し、IoTデバイス210~213に格納された消費電流値を更新することが好ましい。
【0041】
図6には、産業機器IEにおいて、電力供給装置1に接続されるユニット200の構成例が示されている。他のユニット201~203も同様の構成を有しうる。ユニット200は、上記と同様に、電力情報を格納するIoTデバイス210、ユニット制御部220、および、電力供給装置1から供給される電力を受ける受電部230を備えうる。また、ユニット200は、電力供給装置1から供給される電流を測定するための電流センサ261、メモリ260、受電回路262、電源回路263、計測部264、駆動部265を備えうる。
【0042】
受電回路262および電源回路263は、電力供給装置1から供給される電力を受電部230および電流センサ261を介して受けて、ユニット制御部220、計測部264、駆動部265に対して、それぞれに要求される電圧を生成し供給する。ユニット制御部220は、電流センサ261の出力に基づいてユニット200の消費電流を検出する。
【0043】
ユニット制御部220は、イニシャライズ、アイドル、計測、露光それぞれの制御を管理する産業機器制御部150からのコマンドを受けて、計測部264および駆動部265を制御する。この際、ユニット制御部220は、イニシャライズ、アイドル、計測、露光それぞれのシーケンス毎に定期的に電流センサ261からユニット200の消費電流値を収集しメモリ260に保存する。ユニット制御部220は、メモリ260に所定数の消費電流値が蓄積された後に、該消費電流値に基づいてユニット200の実消費電力を決定し、IoTデバイス210の消費電力情報を上書きしうる。このようにユニット単位で設置後も消費電力を管理し消費電力情報を更新することにより、電力供給制御部130は、常に各内蔵電源の余剰電力を正確に把握できる。
【0044】
また、ユニット制御部220は、ビックデータを扱えるような処理能力が高いCPUを搭載しもよい。そのような場合、ユニット制御部220は、実消費電力を電流センサ261からの測定電流値の情報だけで決定するのではなく、計測部264、駆動部265の状態などのデータを従属変数として関連付けた機械学習で消費電力を予測した値で決定してもよい。環境の変化やユニットの計時変化などによる消費電力変動を動的に捉えた予測値を用いた方が、電力供給制御部130が各内蔵電源の余剰電力をよりリアルタイムに把握できる。これにより、電力供給制御部130は、各ユニットに対する内蔵電源の割り当てを動的かつ適切に行うことができる。
【0045】
電力供給制御部130は、産業機器制御部150に対して電力情報を出力(あるいは伝送)する機能を有しうる。この機能の目的は大きく2つあり、一つは産業機器制御部150が各ユニットの消費電力の計時変化を把握することであり、もう一つは産業機器制御部150が各内蔵電源の消費電力の明細と余剰電力を把握することである。
【0046】
前者、即ちユニットの消費電力の計時変化を示す情報については、産業機器制御部150は、ユニットの予知保全、異常検知等のための状態管理のデータとして使うことができる。また、故障予知だけでなく性能維持のためのデータとしても活用が可能である。例えば、露光装置のような高精密産業機器は少しの温度変化が直接的に性能に悪影響を与えるが、消費電力の変化から熱量の変化を予測しユニットの温調の制御パラメータを変更することで、露光装置内の温調性能悪化の影響を最小限に抑えられることができる。
【0047】
後者、即ち各内蔵電源の消費電力の明細と余剰電力の情報について、産業機器制御部150がこれらを把握することにより、イニシャライズ時、アイドル時、計測時、露光時の稼働計画を性能アップや省エネの観点で柔軟に見直すことができる。
【0048】
また、各内蔵電源の消費電力の明細と余剰電力の情報は、産業機器が顧客へ納められた後も、基本仕様に対してアップグレードさせるハードウエア、ソフトウエアを提供するために利用されうる。このような情報は、オンラインで産業機器に提供されてもよい。
【0049】
図7は、産業機器の電力供給装置を一元管理するためのオンラインシステムのブロック図である。顧客工場600に複数台の産業機器601が設置されている。複数台の産業機器601は、イーサネットスイッチ602を介しサーバ603に定期的にデータを出力しうる。サーバ603のデータは、ファイアウォールで守られたネットワーククラウドを介し、産業機器メーカオフィスのサーバ611によって共有され、管理者がデータサーバ612へデータを保存することにより端末613でデータを閲覧できるようになる。このデータに
図1~
図5で説明した各内蔵電源の余剰電力情報を含めることにより、顧客工場600に設置される各産業機器601内の電源の余剰電力が正確に把握できる。
【0050】
産業機器メーカは、このような情報に基づいて、設置後の産業機器601に関して追加で個別要望に沿った特別オーダーを受注した場合に、余剰電力を考慮して開発が可能となり、余計な電源を搭載しなくてもよいというメリットがある。また、万が一、設置後に基本仕様に対して性能をアップグレードさせるハードウエア、ソフトウエアを提供する上で余剰電力がないことが把握した場合でも、電力不足の電源が特定できる。そのため、必要容量の電源に交換を行うなど必要最小限の改修で済むというメリットがある。これらのメリットは、設置面積の縮小や納期短縮や改修時のダウンタイム短縮につながり、顧客満足度の高いサービスを提供することにつながる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態によれば、産業機器において設置後も正確な電力を把握し、且つ、接続先負荷の動作に制限をかけることなく、且つ、ユニット増設にも柔軟に対応可能になる。もちろん、本発明は、産業機器以外のシステムに適用されうる。
【0052】
上記の産業機器を露光装置として構成した場合の応用例として物品製造方法を説明する。該物品製造方法は、該露光装置を用いて基板を露光する露光工程と、前記露光工程を経た前記基板を現像する現像工程と、前記現像工程を経た前記基板を処理して物品を得る処理工程と、を含みうる。露光装置に提供される基板には、感光材(フォトレジスト)が塗布されている。露光工程によって、原版のパターンが潜像パターンとして感光材に転写される。現像工程において、この潜像パターンが物理的なデバイスパターンに変換される。処理工程は、例えば、デバイスパターンを使ってその下地の層をパターニングする工程を含みうる。処理工程はまた、基板をダイシングする工程を含んでもよい。
【0053】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0054】
1:電力供給装置、200~203:ユニット、111~114:電力供給端子、210~213:IoTデバイス、100~103:内蔵電源(電源)、130:電力供給制御部(制御部)